撮像装置
【課題】携帯用情報機器に設置することが可能な厚さの小さい指認証装置を可能にする撮像装置を実現する。
【解決手段】被写体から出射した光束は可視光カットフィルタ20を通って前段レンズアレイ11に入射する。前段レンズアレイ11は、光束をマイクロ絞りアレイ15の開口部に集束する。マイクロ絞りアレイ15を通過した光束は発散するが、後段レンズアレイ13によって光検出素子30に集束する。このような構成によって解像度を維持しつつ、厚さの薄い撮像装置を得ることが出来、携帯用情報機器に設定可能な指認証装置を実現することが出来る。
【解決手段】被写体から出射した光束は可視光カットフィルタ20を通って前段レンズアレイ11に入射する。前段レンズアレイ11は、光束をマイクロ絞りアレイ15の開口部に集束する。マイクロ絞りアレイ15を通過した光束は発散するが、後段レンズアレイ13によって光検出素子30に集束する。このような構成によって解像度を維持しつつ、厚さの薄い撮像装置を得ることが出来、携帯用情報機器に設定可能な指認証装置を実現することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
モバイル機器の情報セキュリティに適用可能な撮像素子およびこれを使用した指静脈認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、モバイル情報機器の情報セキュリティを確保するため、生体認証が益々重要になってきている。指静脈認証等の生体認証装置では一組の光学レンズで画像をイメージセンサに投影して撮像する方式が主流であるが、この方式では装置の小型、薄型化に限界がある。
【0003】
一方、生体認証装置の大幅な小型、薄型化のために、イメージセンサの各画素に対応してマイクロレンズを設けて生体を撮像する方式も提案されているが、この方式では各画素に入る光のうち大きな入射角の光を遮蔽しなければ、指静脈等を解像できないという問題がある。小型、薄型で安価な指静脈認証装置を実現するためには、イメージセンサ各画素への光の集束手段と入射角制限手段を設ける必要があり、そのための作製が容易な構造の考案と製造法の確立が重要である。
【0004】
このような技術に関するものとして、「特許文献1」〜「特許文献4」および「非特許文献1」〜「非特許文献4」を挙げることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−2137号公報
【特許文献2】特開2005−312749号公報
【特許文献3】特開2006−213009号公報
【特許文献4】特開平3−157602号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】天野 啓、「光学部品成形用金型の超精密加工技術」、応用物理学会 日本光学会主催 第41回サマーセミナー(2007)予稿論文
【非特許文献2】吉川武尚、他、「ダイヤモンド切削による微小レンズアレイ金型の超精密加工−ピエゾアクチュエータを用いた高速加工の検討」、2006年度精密学会春季大会学術講演会講演論文集、pp.1043−1044、
【非特許文献3】吉川武尚、他、「ダイヤモンド切削による微小レンズアレイ金型の超精密加工(第3報)−ロール金型への高精度レンズアレイによる微細パターン加工」、2007年度精密学会春季大会学術講演会講演論文集、pp.679−680、
【非特許文献4】伊藤 嘉則、「ナノインプリント技術の応用展開 〜 光学デバイスへの応用事例〜」応用物理学会 日本光学会主催 第41回サマーセミナー(2007)予稿論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
指静脈認証装置には、LED等からの近赤外光の透過光を用いるものと、散乱光を用いるものがある。透過光を用いる例は「特許文献1」、散乱光を用いる例は「特許文献2」に記載されている。透過光を用いる指静脈認証装置は散乱光を用いるものより装置が大掛かりになるという問題があり、携帯情報機器の情報セキュリティの向上には散乱光を用いた小型、薄型の指静脈認証装置の実用化が望まれている。
【0008】
図23に散乱光を用いた指静脈認証装置の概要と処理の一例を示す。LED等の近赤外光光源105から出た光は指内部の生体組織によって散乱され、その散乱光を可視光カットの光学フィルタ101、紫外線カットフィルタ102を通して近赤外の波長に制限して、一組の光学レンズ103でイメージセンサ104上に集束させて撮像する。ただし、この方式では、十分な解像度と感度を得るため光学レンズの口径をある程度大きくする必要があり、そのため装置の外面(指接触面)からイメージセンサまでの距離が長くなり、装置が厚くなってしまうという問題があった。これでは薄型携帯情報機器に適用することは難しい。
【0009】
この問題を解決するためには、イメージセンサの各画素に対応させてマイクロレンズを配して、各光検出素子に光を集光させ、同時に入射角の大きな光遮るための遮光スペーサを設けたイメージセンサを用いることも提案されている(「特許文献3」)。このような光学系は例えば「特許文献4」にあり、図24にその光学系の概要を示す。図24は「特許文献4」の第1図を再現したものである。このマイクロレンズアレイ202と円筒状の細長い微小開口のアレイとの組み合わせを採用すれば、生体認証用の2次元イメージセンサ(エリアセンサ)を実現することは原理的には可能なはずである。なお、図24において、201はレンズアレイ板、203は遮光スペーサ、204は黒色塗料(光吸収面)、205は光検出素子である。
【0010】
しかし、この円筒状の細長い微小開口のアレイの板(マイクロ穴アレイ遮光板)を用いた光学系はファクシミリ用の1次元イメージセンサ206(ラインセンサ)に用いることを想定しており、明細書に開示されている製造法では1次元イメージセンサの作り方が記載されているだけである。この方式を2次元イメージセンサ用として工業製品として製造するのは困難である。なぜなら、例えばマイクロ穴アレイを反転した金型を製作し、射出成型やUV硬化樹脂等でマイクロ穴アレイ遮光板を製作しようとしても、切り立ったマイクロ穴アレイを金型から抜くこと、つまり離型は難しいという問題があるからである。
【0011】
本発明の課題は、薄型で小型の指認証システムを可能とする撮像素子の構成およびその製造方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、離型の問題が重大ではなく、製造が比較的容易で被写体からの光の集束作用と入射角の大きな光の遮断作用を有する光学系を発明した。本発明の構成の要点は前段のマイクロレンズアレイと絞りアレイとを対向させ、前段のマイクロレンズアレイの被写体からの光の焦点近傍に絞りアレイの絞りを設けて、更に後段のマイクロレンズアレイによって光の集束も同時に行うことにある。前段のマイクロレンズアレイと絞りアレイとで、イメージセンサへの入射角の大きな光を絞りアレイによって遮って、画像検出に必要な入射角の小さな光だけを小さな光検出素子に集束する。
【発明の効果】
【0013】
本発明ではイメージセンサの各画素に対応したマイクロレンズの口径は非常に小さく、光の遮光手段もコンパクトとなるため、指静脈認証装置に用いる光学系を小さくし、小型・薄型の指静脈認証装置を実現することが出来る。
【0014】
また、本発明によって指静脈認証装置を携帯電話やモバイルPCにも容易に搭載できるようになり、モバイル情報機器の情報セキュリティの向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による撮像装置を示す断面模式図である。
【図2】前段レンズアレイの断面図である。
【図3】光学設計のためのパラメータを記載した表である。
【図4】光軸上の一点から射出した光の軌跡を示す図である。
【図5】前段が球面レンズで後段が非球面レンズの場合の光の軌跡を示す図である。
【図6】前段も後段も球面レンズである場合の光の軌跡を示す図である。
【図7】光の射出点が光軸から0.04mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図8】光の射出点が光軸から0.05mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図9】光の射出点が光軸から0.06mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図10】図1における可視光カットフィルタから光の射出点の位置までの距離が1mm短くなり、かつ、光の射出点が光軸上の場合の光の軌跡を示す図である。
【図11】図1における可視光カットフィルタから光の射出点の位置までの距離が1mm短くなり、かつ、光の射出点が光軸から0.05mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図12】図1における可視光カットフィルタから光の射出点の位置までの距離が1mm長くなり、かつ、光の射出点が光軸上の場合の光の軌跡を示す図である。
【図13】図1における可視光カットフィルタから光の射出点の位置までの距離が1mm長くなり、かつ、光の射出点が光軸から0.06mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図14】マイクロレンズアレイ用金型の切削方法を示す模式図である。
【図15】光集束・遮蔽素子の製造方法を示す前段フローチャートである。
【図16】光集束・遮蔽素子の製造方法を示す後段フローチャートである。
【図17】レンズセルに平行光を入射した場合の光の軌跡を示す図である。
【図18】絞り面近傍における水平方向の照度分布を示す図である。
【図19】絞り面近傍における対角方向の照度分布を示す図である。
【図20】絞り面における照度分布を示す鳥瞰図である。
【図21】絞り面における照度分布を示す等高線である。
【図22】前段レンズアレイの配列を示す他の例である。
【図23】従来例における指認証システムを示す断面模式図である。
【図24】従来例における厚さを小さくした光学系を指認証システムに適用する可能性を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施例により本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に本発明の実施例とその原理を模式的に示す。なお、図1には示していないが、図23の場合と同様に指静脈認証装置として用いる場合は、イメージセンサ側から指に向けて近赤外線を射出するLED等の光源が必要であり、指内で散乱した光を利用して指静脈の認証を行う。図1の物面は指静脈認証装置では指内部の生体組織、指紋認証装置では指表面、ファクシミリでは紙面と考えればよい。
【0018】
物面から散乱された近赤外光と通常光(外光)は距離a隔てて設けた厚さbの可視光カットフィルタ20、空気層を通過して、光集束・遮蔽アレイ板10に到達する。この光集束・遮蔽アレイ板10は前段レンズアレイ11、前段レンズ基板12、絞りアレイ15、後段レンズ基板13、後段レンズアレイ14から構成されている。後段レンズアレイ14と対向して基板ガラス31に形成された光検出素子30が配置されている。
【0019】
設計の主な寸法パラメータはaからfの寸法と、各部材の屈折率である。光集束・遮蔽アレイ板では物面の一点から射出した光線束は絞り近傍で、最小錯乱円を持つように(つまり光線束の径が最小になるように)設計されている。実線で示した光学軸の延長上の物点から射出された光線で射出角の小さい光は絞り近傍では集束され小さい径に収まっているため絞り開口を通過できるが、破線で示した光学軸から偏心した点から射出した光は絞り近傍でも偏心しているため開口内に収まらなく遮蔽される。
【0020】
このことによって、イメージセンサから多少離れたところに物面があっても、物面内でセンサ画素ピッチ程度の位置の変化に対する輝度の変化を各光検出素子30が検出でき、読み込まれた画像はイメージセンサ画素ピッチに対応した解像度を有することができる。本発明ではこのレンズと絞りの組み合わせを微小にアレイ状に並べ、更に後段にもマイクロレンズアレイを設けて、一度発散した光線を小さな光検出素子に集束させ、十分な照射光量を得ている。
【0021】
なお、このイメージセンサでは、画素のピッチは0.1mm程度としており、通常のCMOSやCCDのイメージセンサに比べてかなり大きくなっている。一般にイメージセンサの光検出素子は光導電膜を透明電極と金属電極で挟んだコンデンサとみなすことができる。その結果、光検出素子の面積を大きくすると前置増幅初段デバイスに対する並列容量も大きくなり、センサのS/N比が劣化して感度が悪くなるという問題がある。そのため光検出素子30は小さくして光検出素子の浮遊容量を小さくすることが撮像装置のS/N比と感度の確保には重要である。一方、光検出素子30を小さくすれば、同じ照度では十分な照射光量を確保できないので、後段のレンズアレイは小さい光検出素子30に絞り開口を通過した光を集束して十分な照射光量を確保するために設けられている。
【0022】
図2には、本発明の前段レンズアレイとして用いたハエの目レンズアレイの水平垂直断面と画素対角断面図を示す。ハエの目レンズアレイのレンズ面は球面とする必要はなく、回転対称放物面を持つようにもできる。なお、前段のレンズアレイは基板の平坦部が露出していないようにレンズ面が隙間なく稠密に配置することが重要であり、これによって入射角の大きな光線の遮光の効果を最大限に実現できる。なぜなら、レンズ曲面が形成されていない平坦部があれば、平坦部に斜めに入射した光線はレンズ作用を受けずに直接絞り開口に入射し、迷光となって光検出素子のどれかを照射して撮像画像の解像度やコントラストの劣化を引き起こすからである。
【0023】
なお、図2に示したように矩形稠密なレンズでは水平、垂直方向(x、y)のx-z、y-z断面での高低差よりも、対角方向(u,v)のu-z,v-z断面での高低差が大きい。金型を用いて平板の基板上にUV硬化樹脂でレンズアレイを作る場合は対角の4隅の点がレンズアレイの金型とレンズ基板が接する点となる。従って、レンズの高さHを規定する際には、レンズアレイの最も深い対角の4隅の点から頂上までの高さを用いる。
【0024】
以上は本発明の光集束・遮蔽アレイ板のアイデアの概念的な説明であるが、以下では設計した光学系について具体的な説明を行う。イメージセンサを0.1mm角の矩形配列、センサの光検出素子の大きさをその1/10の0.01mm角の矩形として、光学設計を行っている。
【0025】
図3に光学系の各寸法、屈折率等の基本的な設計仕様を記載した。後段レンズのレンズ面は回転対称放物面で直径は0.08mmとした。レンズ直径DがレンズピッチLPより小さいため、後段レンズの境界線は円形で、その円形が格子状に水平垂直に等間隔に並んだレンズアレイとなっている。後段のレンズアレイでもレンズ間の平坦部は少ない方が好ましいが、多少の平坦部は残っていても遮光機能は働くのでレンズアレイはレンズ面が隙間無く稠密に並ぶことは必須では無い。
【0026】
以下では図3の寸法、屈折率等の基本条件を元に、光学シミュレーションを用いて本発明の効果を更に具体的に説明する。図4には基本条件で、光の射出点が可視光カットフィルタの表面から6mm離れた光学軸(z軸)上の一点から射出した光線の軌道と各光学面のx−z断面の関係を示す。光の軌道は対向するレンズに入射する発散角の範囲で描画した。指静脈認証用イメージセンサとしては、接触面である可視光カットフィルタから5〜7mm程度の位置の静脈を読み取ることを想定し、光の射出点から可視光カットフィルタの表面までの基本的距離を6mmとしている。
【0027】
図4でx方向での描画拡大率がz方向の描画拡大率に比べて非常に大きいためレンズ面が曲面に見えにくいが、実際は曲面であることを注意しておく。この図から、一点から射出した光線は前段レンズの作用によって絞り面近傍で集束され6μmの直径とした絞りの開口を全ての光線が通過していること、絞り近傍の集束点から光線は再度発散して後段のレンズの作用によって再度光検出素子中央に集束している様子が分かる。
【0028】
図5には基本条件、つまり前段が球面レンズで後段が回転対称放物面レンズ(非球面レンズ)の組み合わせの場合、図6には前段・後段共に球面レンズの場合の、光集束・遮蔽アレイ板、光検出素子近傍での光線追跡図を示す。共に最小錯乱円位置が光検出素子上に来るように後段レンズの高さを調整している。図5の場合には2重集束レンズ系の球面収差は小さく光検出素子上では光線がほぼ一点に集束しているが、図6の場合には2重集束レンズ系の球面収差が大きいため光線は光検出素子上ではかなり広がっていることが分かる。つまり、2重集束レンズ系の球面収差は前段が球面レンズで後段が回転対称放物面レンズ(非球面レンズ)の組み合わせの方が、どちらも球面とした場合よりもかなり小さくなり、光学的には優れている。
【0029】
図7、図8、図9には光の射出点がx方向に40,50,60μmだけ偏心した場合の光線追跡結果を示す。図7の射出点の偏心が40μmの場合には、レンズ面に向かった光線は絞り開口近傍で集束して、光学軸から偏心しているものの、全ての光線が絞りを通過し、絞り近傍から発散しながらも後段のレンズの作用によって再度光検出素子で集束していることが分かる。
【0030】
なお、図3の下に記したように前段のレンズの像倍率M1は0.059、後段のレンズの像倍率M2は0.99でトータルの2重集束系の像倍率M=M1×M2は0.058となっている。この像倍率から、第1集束点、つまり絞り面近傍では、40μmの偏心は40×0.059=2.4μmに縮小され、絞り開口の半径3μmより小さいことより、全ての光線が抜けたことが分かる。
【0031】
また、後段のレンズの像倍率はほぼ1であるため、絞り面近傍の光線の偏心2.4μmはそのまま光検出素子でも保持されている。つまり、絞りを通過した光は発散されるものの、後段レンズの集束作用によって約10μm角の光検出素子に収まっており、指静脈の画像情報の含まれた入射角の小さな光は有効に利用されていることが分かる。
【0032】
図8の射出点の偏心がレンズのピッチの半分の50μmの場合には、絞り面での偏心は50×0.059=3.0μmであり、絞りの開口の半径と同等であることから、光線の一部は絞りによって吸収されて、残りの光線が光検出素子に集束して到達していることが分かる。
【0033】
図9の射出点の偏心がレンズピッチの半分より大きな60μmの場合には、絞り面での偏心は60×0.059=3.5μmであり、絞りの開口の半径より大きいことから、光線は絞りによって全て吸収されていることが分かる。つまり、各レンズの光学軸からレンズのピッチの約半分以上偏心した点からの光線は絞り面で吸収され、光検出素子には到達しにくくなっている。
【0034】
以上のように、光の射出点が可視光カットフィルタの表面から6mm離れているにも拘わらず、各マイクロレンズの光学軸近傍の物面位置の光しか光検出素子には到達しないことから、本発明の光集束・遮蔽アレイ板ではイメージセンサの解像度を確保できることが分かる。
【0035】
図10、図11、図12、図13には可視光カットフィルタの表面から光射出点までの距離を1mm減少した場合と1mm増加した場合について記載している。図10および図12は射出点の偏心が無い場合,図11および図13は射出点の偏心がある場合について光線追跡図を示した。可視光カットフィルタの表面から光射出点までの距離が長くなれば、より大きな偏心量で光線が絞りによって蹴られるようになるものの、光射出位置が光学軸方向に多少変化しても、本発明の光集束・遮蔽アレイ板は有効に機能することが分かる。従って、本発明を用いた生体認証装置においては、被写界深度は深く、多少厚みある生体の認証も可能であることが分かる。以上が本発明の光集束・遮蔽アレイ板の原理的な説明である。
【0036】
次にこの光集束・遮蔽アレイ板の製造法に関して、主に(1)レンズアレイの金型製作法と(2)レンズアレイと絞りアレイの目合わせ方法について説明する。図3に示したようにレンズ基板はポリカーボネイト(屈折率:1.5696)とし、その基板上にほぼ同じ屈折率のUV硬化樹脂を金型で挟んで光を照射して硬化させ、金型から離すことによってレンズ面を形成している。レンズ基板は前段と後段の2枚のレンズ基板を用いて2枚のレンズアレイ板をあらかじめ作って、前段のレンズ基板に絞りアレイを形成し、2つのレンズアレイ板を接着させて光集束・遮蔽アレイ板を形成している。
【0037】
上記(1)のマイクロレンズアレイの金型製作法には大きく分けて2種類の手法が知られている。一つは、ピエゾアクチュエータ(ピエゾ素子を用いた振動子)を用いたダイヤモンドバイトによる切削加工で、もう一つは、半導体プロセスに用いる露光(フォトリソ)によるものである。それぞれの金型を作る手法は例えば「非特許文献1」から「非特許文献4」に開示されており、既知の製造法で製造が可能である。
【0038】
ピエゾアクチュエータ60を用いたダイヤモンドバイト50によるマイクロレンズアレイ金型の切削加工では、図14に示したように円筒または平板の銅70が円筒の場合は円筒を回転させながら、平板の場合は平板を固定したワークを平行移動させながら、上下に単振動するピエゾアクチュエータ60の先端に取り付けたダイヤモンドバイト50によって銅を切削加工することによってレンズアレイの金型原版が得られる。この原版をニッケル鍍金して金型として用いればよい。ダイヤモンドバイト50には厚みがあるため、バイト50と切削面との間には多少の「逃げ」が必要で、銅板70または銅シリンダー70との接触角は25°以下でなければピエゾアクチュエータ60を用いたダイヤモンドバイト50による切削加工は難しいことが知られている。
【0039】
ところで、rをレンズ中心からの距離、zをレンズの光学軸方向の距離とすれば矩形稠密の場合のレンズ曲面は、球面の場合ではレンズ曲面は(式1)で表され、
【0040】
【数1】
【0041】
回転対称放物面の場合には(式2)で表される。
【0042】
【数2】
【0043】
従って、ダイヤモンドバイトの接触角θの正接(tangent)はレンズ面が矩形稠密の球面の場合には(式3)で表され、
【0044】
【数3】
【0045】
回転対称放物面の場合には(式4)で表される。
【0046】
【数4】
【0047】
(式3)(式4)にLP=100μm、H=13.5μmを代入すれば、接触角θは球面の場合は22°、回転対称放物面の場合は21°を得る。つまり、レンズ面が球面でも回転対称放物面でも前段レンズの金型の接触角θは25°以下であるので、ピエゾアクチュエータとダイヤモンドバイトによる切削加工で金型原版は製作可能である。
【0048】
一方、後段のレンズは矩形稠密ではなく、レンズ直径DはレンズピッチLPをより小さく、レンズ曲面は球面の場合は(式5)で表される。
【0049】
【数5】
【0050】
回転対称放物面の場合には(式6)で表される。
【0051】
【数6】
【0052】
この場合のダイヤモンドバイトの接触角θの正接(tangent))は球面の場合は(式7)で表される。
【0053】
【数7】
【0054】
回転対称放物面の場合には(式8)で表される。
【0055】
【数8】
【0056】
(式7)(式8)にD=80μm、H=20μmを代入すれば、接触角θは球面の場合は50°、回転対称放物面の場合は45°を得る。接触角θは25°以上なので、後段のレンズアレイについてはレンズ面が球面でも回転対称放物面でも切削加工によっての金型の製作は困難である。
【0057】
この場合は後段のレンズアレイの金型製作には半導体プロセスに用いる露光によって製作する。このフォトリソの方法で樹脂のドットを形成してそれを熱で溶かせば、回転対称放物面状のレンズアレイ原版が形成できる。これを用いて電鋳金型を作れば後段のマイクロレンズアレイの金型ができる。前段の球面レンズと後段の回転対称放物面レンズ(非球面レンズ)の組み合わせでは、2重集束レンズ系の球面収差は球面レンズだけの組み合わせよりも著しく低減されるという副次的な効果もある。
【0058】
上記(2)の小さな開口を持つ絞りアレイとマイクロレンズアレイを精密に位置決めして重ね合わせる問題については、カラーブラウン管のブラックマトリクス、蛍光体の露光に用いていた方法を適用すれば解決できる。カラーブラウン管では製造ばらつきのあるシャドウマスクを用いブラックマトリクス、蛍光体を露光しているが、光集束・遮蔽アレイ板でも同様にマイクロレンズアレイを用いて絞りアレイの開口を露光すればよい。
【0059】
その詳しい説明を図15に示す。先ず、厚さの一様性の高い基板12の上にレンズ高さの一様性の高いマイクロレンズアレイ11をUV硬化樹脂であらかじめ形成しておく。前段のレンズアレイ11の基板12のレンズ形成面とは反対側の平面が絞り面と一致するように基板12の板厚を設定しておき、図15(a)から(d)および図16(e)から(g)のプロセスを実行すれば、光集束・遮蔽アレイ板は比較的容易に製造できる。
【0060】
(a)前段レンズアレイ11の基板12のレンズ形成面とは反対側の平面にネガ型フォトレジスト膜を形成する。
(b)レンズ形成面側からレンズアレイの面に垂直に平行光を照射させる。可視光カットフィルタの表面から光射出点までの距離が6mmのときに、絞り面位置での光線束の最小錯乱円位置が絞り面位置に来るように設計したため、平行光を入射すれば光束は絞り面位置の手前で集束し、絞り面では照度分布は多少の広がりを持つ。この光線束の広がりで絞り面の開口のアレイを露光する(これについては光学解析に基づいた補足説明を最後に行う)。
(c)露光されたレジスト部は残し、非露光部を取り除く。
(d)Cr等をスパッタ等でレジスト面に付着させて黒化膜を形成する。
(e)化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing) 等を用いて、露光突出部を研磨して、露光レジスト部をむき出しにして開口を形成する。黒化膜と開口によって、マイクロ絞りアレイ15が形成される。
(f)露光レジスト部を除去する(露光レジスト部が透明の場合は除去は不要)。
(g)UV硬化樹脂を介して2枚のレンズアレイを挟んで、UV拡散光を照射して2枚のレンズアレイを接着して一体化する。
【0061】
このようにして製作した光集束・遮蔽アレイ板を光検出素子が並んだ基板ガラスと可視光カットフィルタの板とで適切なスペーサを介して挟んで接着する。以上のプロセスで、可視光カットフィルタ機能、各画素への光集束アレイ、遮光アレイを有する生体認証用の撮像素子が完成する。
【0062】
最後に、上記(b)で述べた光学解析に基づいた補足説明をする。図17にレンズセルに平行光線を入射したときの絞り面近傍での光線追跡図を示す。この図から平行光線を入射したとき、光線は絞り面の手前で集束し、その結果絞り面では広がっていることが分かる。この広がりを利用して絞り開口を露光する。
【0063】
図18および図19には絞りが無いものとして、水平・垂直方向(x、y方向)の照度分布(図18)、対角方向(u,v方向)の照度分布(図19)を計算した結果を示す。絞り面位置とその前後のΔZ=±10μm、±20μmの位置での照度分布を表示している。これらの図から絞り面での照度分布はピーク値の40%程度の照度から急峻に0%まで落ちていること、絞り面位置の変化に対して照度分布の幅は急峻に変化すること、が分かる。
【0064】
絞り面位置ではx、y方向のピーク値の20%照度径は6μm程度、対角u,v方向は12μm程度である。設計の光学系では絞り開口の径が6から12μm程度と想定していたが、この開口は平行光線をレンズアレイに照射して露光した径と同程度の径になっている。また、これらの図から、絞り面位置の光軸方向±5μm程度の誤差でも、20%照度径の誤差が1μm程度発生することが分かる。従って、各レンズ基板の厚さはこの程度の精度は要する。
【0065】
図20および図21には絞り面での照度分布を鳥瞰図(図20)、等高線(図21)で示す。この図から、露光時間を変えれば、例えば照度の等高線のピークの10%から70%まで、露光のされる範囲を変えることはできる。例えば40%以上の照度の部分を残せば絞り開口はほぼ円形で径は6μm程度、10%以上の照度の部分を残せば、絞り開口は糸巻き歪状の矩形で径は水平、垂直6.5μm、対角11μmとなる。露光時間によって開口の径をある程度の範囲で調整できる。
【0066】
以上のように本発明は製造が容易な光集束・遮蔽アレイ板を提供し、指静脈認証装置の小型、薄型化に有利なイメージセンサの実現に役立つものである。
【0067】
図22には本発明の別の実施例の前段レンズアレイのレンズ配列を示す。前段レンズは矩形稠密ではなく、六方稠密であり、それに応じてイメージセンサの光検出素子の配置もデルタ配列となっている。通常の矩形配置ではxとy方向への並進は同じ周期で繰り返しがあり、x、yの2方向の解像度が同じであるが、対角方向は√2倍の周期でこの方向の解像度は劣る。しかし、このデルタ配列ではイメージセンサの解像度は図22に示した3つの方向e1,e2,e3で等しく、解像度等方性の確保に有利な配列である。
【符号の説明】
【0068】
10…光集束・遮蔽素子、 11…前段レンズアレイ、 12…前段レンズ基板、 13…後段レンズ基板、 14…後段レンズアレイ、 15…マイクロ絞りアレイ、 20…可視光カットフィルタ、 30…光検出素子、 31…基板ガラス、 50…ダイヤモンドバイト、 60…ピエゾアクチュエータ、 70…円筒または平板の銅、 101…光学フィルタ、 102…紫外線カットフィルタ、 103…光学レンズ、 104…イメージセンサ、 105…近赤外光光源、 201…レンズアレイ板、 202…マイクロレンズ、 203…遮光スペーサ、 204…黒色塗料、 205…光検出素子、 206…密着イメージセンサ。
【技術分野】
【0001】
モバイル機器の情報セキュリティに適用可能な撮像素子およびこれを使用した指静脈認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、モバイル情報機器の情報セキュリティを確保するため、生体認証が益々重要になってきている。指静脈認証等の生体認証装置では一組の光学レンズで画像をイメージセンサに投影して撮像する方式が主流であるが、この方式では装置の小型、薄型化に限界がある。
【0003】
一方、生体認証装置の大幅な小型、薄型化のために、イメージセンサの各画素に対応してマイクロレンズを設けて生体を撮像する方式も提案されているが、この方式では各画素に入る光のうち大きな入射角の光を遮蔽しなければ、指静脈等を解像できないという問題がある。小型、薄型で安価な指静脈認証装置を実現するためには、イメージセンサ各画素への光の集束手段と入射角制限手段を設ける必要があり、そのための作製が容易な構造の考案と製造法の確立が重要である。
【0004】
このような技術に関するものとして、「特許文献1」〜「特許文献4」および「非特許文献1」〜「非特許文献4」を挙げることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−2137号公報
【特許文献2】特開2005−312749号公報
【特許文献3】特開2006−213009号公報
【特許文献4】特開平3−157602号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】天野 啓、「光学部品成形用金型の超精密加工技術」、応用物理学会 日本光学会主催 第41回サマーセミナー(2007)予稿論文
【非特許文献2】吉川武尚、他、「ダイヤモンド切削による微小レンズアレイ金型の超精密加工−ピエゾアクチュエータを用いた高速加工の検討」、2006年度精密学会春季大会学術講演会講演論文集、pp.1043−1044、
【非特許文献3】吉川武尚、他、「ダイヤモンド切削による微小レンズアレイ金型の超精密加工(第3報)−ロール金型への高精度レンズアレイによる微細パターン加工」、2007年度精密学会春季大会学術講演会講演論文集、pp.679−680、
【非特許文献4】伊藤 嘉則、「ナノインプリント技術の応用展開 〜 光学デバイスへの応用事例〜」応用物理学会 日本光学会主催 第41回サマーセミナー(2007)予稿論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
指静脈認証装置には、LED等からの近赤外光の透過光を用いるものと、散乱光を用いるものがある。透過光を用いる例は「特許文献1」、散乱光を用いる例は「特許文献2」に記載されている。透過光を用いる指静脈認証装置は散乱光を用いるものより装置が大掛かりになるという問題があり、携帯情報機器の情報セキュリティの向上には散乱光を用いた小型、薄型の指静脈認証装置の実用化が望まれている。
【0008】
図23に散乱光を用いた指静脈認証装置の概要と処理の一例を示す。LED等の近赤外光光源105から出た光は指内部の生体組織によって散乱され、その散乱光を可視光カットの光学フィルタ101、紫外線カットフィルタ102を通して近赤外の波長に制限して、一組の光学レンズ103でイメージセンサ104上に集束させて撮像する。ただし、この方式では、十分な解像度と感度を得るため光学レンズの口径をある程度大きくする必要があり、そのため装置の外面(指接触面)からイメージセンサまでの距離が長くなり、装置が厚くなってしまうという問題があった。これでは薄型携帯情報機器に適用することは難しい。
【0009】
この問題を解決するためには、イメージセンサの各画素に対応させてマイクロレンズを配して、各光検出素子に光を集光させ、同時に入射角の大きな光遮るための遮光スペーサを設けたイメージセンサを用いることも提案されている(「特許文献3」)。このような光学系は例えば「特許文献4」にあり、図24にその光学系の概要を示す。図24は「特許文献4」の第1図を再現したものである。このマイクロレンズアレイ202と円筒状の細長い微小開口のアレイとの組み合わせを採用すれば、生体認証用の2次元イメージセンサ(エリアセンサ)を実現することは原理的には可能なはずである。なお、図24において、201はレンズアレイ板、203は遮光スペーサ、204は黒色塗料(光吸収面)、205は光検出素子である。
【0010】
しかし、この円筒状の細長い微小開口のアレイの板(マイクロ穴アレイ遮光板)を用いた光学系はファクシミリ用の1次元イメージセンサ206(ラインセンサ)に用いることを想定しており、明細書に開示されている製造法では1次元イメージセンサの作り方が記載されているだけである。この方式を2次元イメージセンサ用として工業製品として製造するのは困難である。なぜなら、例えばマイクロ穴アレイを反転した金型を製作し、射出成型やUV硬化樹脂等でマイクロ穴アレイ遮光板を製作しようとしても、切り立ったマイクロ穴アレイを金型から抜くこと、つまり離型は難しいという問題があるからである。
【0011】
本発明の課題は、薄型で小型の指認証システムを可能とする撮像素子の構成およびその製造方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、離型の問題が重大ではなく、製造が比較的容易で被写体からの光の集束作用と入射角の大きな光の遮断作用を有する光学系を発明した。本発明の構成の要点は前段のマイクロレンズアレイと絞りアレイとを対向させ、前段のマイクロレンズアレイの被写体からの光の焦点近傍に絞りアレイの絞りを設けて、更に後段のマイクロレンズアレイによって光の集束も同時に行うことにある。前段のマイクロレンズアレイと絞りアレイとで、イメージセンサへの入射角の大きな光を絞りアレイによって遮って、画像検出に必要な入射角の小さな光だけを小さな光検出素子に集束する。
【発明の効果】
【0013】
本発明ではイメージセンサの各画素に対応したマイクロレンズの口径は非常に小さく、光の遮光手段もコンパクトとなるため、指静脈認証装置に用いる光学系を小さくし、小型・薄型の指静脈認証装置を実現することが出来る。
【0014】
また、本発明によって指静脈認証装置を携帯電話やモバイルPCにも容易に搭載できるようになり、モバイル情報機器の情報セキュリティの向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による撮像装置を示す断面模式図である。
【図2】前段レンズアレイの断面図である。
【図3】光学設計のためのパラメータを記載した表である。
【図4】光軸上の一点から射出した光の軌跡を示す図である。
【図5】前段が球面レンズで後段が非球面レンズの場合の光の軌跡を示す図である。
【図6】前段も後段も球面レンズである場合の光の軌跡を示す図である。
【図7】光の射出点が光軸から0.04mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図8】光の射出点が光軸から0.05mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図9】光の射出点が光軸から0.06mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図10】図1における可視光カットフィルタから光の射出点の位置までの距離が1mm短くなり、かつ、光の射出点が光軸上の場合の光の軌跡を示す図である。
【図11】図1における可視光カットフィルタから光の射出点の位置までの距離が1mm短くなり、かつ、光の射出点が光軸から0.05mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図12】図1における可視光カットフィルタから光の射出点の位置までの距離が1mm長くなり、かつ、光の射出点が光軸上の場合の光の軌跡を示す図である。
【図13】図1における可視光カットフィルタから光の射出点の位置までの距離が1mm長くなり、かつ、光の射出点が光軸から0.06mmずれた場合の光の軌跡を示す図である。
【図14】マイクロレンズアレイ用金型の切削方法を示す模式図である。
【図15】光集束・遮蔽素子の製造方法を示す前段フローチャートである。
【図16】光集束・遮蔽素子の製造方法を示す後段フローチャートである。
【図17】レンズセルに平行光を入射した場合の光の軌跡を示す図である。
【図18】絞り面近傍における水平方向の照度分布を示す図である。
【図19】絞り面近傍における対角方向の照度分布を示す図である。
【図20】絞り面における照度分布を示す鳥瞰図である。
【図21】絞り面における照度分布を示す等高線である。
【図22】前段レンズアレイの配列を示す他の例である。
【図23】従来例における指認証システムを示す断面模式図である。
【図24】従来例における厚さを小さくした光学系を指認証システムに適用する可能性を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施例により本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に本発明の実施例とその原理を模式的に示す。なお、図1には示していないが、図23の場合と同様に指静脈認証装置として用いる場合は、イメージセンサ側から指に向けて近赤外線を射出するLED等の光源が必要であり、指内で散乱した光を利用して指静脈の認証を行う。図1の物面は指静脈認証装置では指内部の生体組織、指紋認証装置では指表面、ファクシミリでは紙面と考えればよい。
【0018】
物面から散乱された近赤外光と通常光(外光)は距離a隔てて設けた厚さbの可視光カットフィルタ20、空気層を通過して、光集束・遮蔽アレイ板10に到達する。この光集束・遮蔽アレイ板10は前段レンズアレイ11、前段レンズ基板12、絞りアレイ15、後段レンズ基板13、後段レンズアレイ14から構成されている。後段レンズアレイ14と対向して基板ガラス31に形成された光検出素子30が配置されている。
【0019】
設計の主な寸法パラメータはaからfの寸法と、各部材の屈折率である。光集束・遮蔽アレイ板では物面の一点から射出した光線束は絞り近傍で、最小錯乱円を持つように(つまり光線束の径が最小になるように)設計されている。実線で示した光学軸の延長上の物点から射出された光線で射出角の小さい光は絞り近傍では集束され小さい径に収まっているため絞り開口を通過できるが、破線で示した光学軸から偏心した点から射出した光は絞り近傍でも偏心しているため開口内に収まらなく遮蔽される。
【0020】
このことによって、イメージセンサから多少離れたところに物面があっても、物面内でセンサ画素ピッチ程度の位置の変化に対する輝度の変化を各光検出素子30が検出でき、読み込まれた画像はイメージセンサ画素ピッチに対応した解像度を有することができる。本発明ではこのレンズと絞りの組み合わせを微小にアレイ状に並べ、更に後段にもマイクロレンズアレイを設けて、一度発散した光線を小さな光検出素子に集束させ、十分な照射光量を得ている。
【0021】
なお、このイメージセンサでは、画素のピッチは0.1mm程度としており、通常のCMOSやCCDのイメージセンサに比べてかなり大きくなっている。一般にイメージセンサの光検出素子は光導電膜を透明電極と金属電極で挟んだコンデンサとみなすことができる。その結果、光検出素子の面積を大きくすると前置増幅初段デバイスに対する並列容量も大きくなり、センサのS/N比が劣化して感度が悪くなるという問題がある。そのため光検出素子30は小さくして光検出素子の浮遊容量を小さくすることが撮像装置のS/N比と感度の確保には重要である。一方、光検出素子30を小さくすれば、同じ照度では十分な照射光量を確保できないので、後段のレンズアレイは小さい光検出素子30に絞り開口を通過した光を集束して十分な照射光量を確保するために設けられている。
【0022】
図2には、本発明の前段レンズアレイとして用いたハエの目レンズアレイの水平垂直断面と画素対角断面図を示す。ハエの目レンズアレイのレンズ面は球面とする必要はなく、回転対称放物面を持つようにもできる。なお、前段のレンズアレイは基板の平坦部が露出していないようにレンズ面が隙間なく稠密に配置することが重要であり、これによって入射角の大きな光線の遮光の効果を最大限に実現できる。なぜなら、レンズ曲面が形成されていない平坦部があれば、平坦部に斜めに入射した光線はレンズ作用を受けずに直接絞り開口に入射し、迷光となって光検出素子のどれかを照射して撮像画像の解像度やコントラストの劣化を引き起こすからである。
【0023】
なお、図2に示したように矩形稠密なレンズでは水平、垂直方向(x、y)のx-z、y-z断面での高低差よりも、対角方向(u,v)のu-z,v-z断面での高低差が大きい。金型を用いて平板の基板上にUV硬化樹脂でレンズアレイを作る場合は対角の4隅の点がレンズアレイの金型とレンズ基板が接する点となる。従って、レンズの高さHを規定する際には、レンズアレイの最も深い対角の4隅の点から頂上までの高さを用いる。
【0024】
以上は本発明の光集束・遮蔽アレイ板のアイデアの概念的な説明であるが、以下では設計した光学系について具体的な説明を行う。イメージセンサを0.1mm角の矩形配列、センサの光検出素子の大きさをその1/10の0.01mm角の矩形として、光学設計を行っている。
【0025】
図3に光学系の各寸法、屈折率等の基本的な設計仕様を記載した。後段レンズのレンズ面は回転対称放物面で直径は0.08mmとした。レンズ直径DがレンズピッチLPより小さいため、後段レンズの境界線は円形で、その円形が格子状に水平垂直に等間隔に並んだレンズアレイとなっている。後段のレンズアレイでもレンズ間の平坦部は少ない方が好ましいが、多少の平坦部は残っていても遮光機能は働くのでレンズアレイはレンズ面が隙間無く稠密に並ぶことは必須では無い。
【0026】
以下では図3の寸法、屈折率等の基本条件を元に、光学シミュレーションを用いて本発明の効果を更に具体的に説明する。図4には基本条件で、光の射出点が可視光カットフィルタの表面から6mm離れた光学軸(z軸)上の一点から射出した光線の軌道と各光学面のx−z断面の関係を示す。光の軌道は対向するレンズに入射する発散角の範囲で描画した。指静脈認証用イメージセンサとしては、接触面である可視光カットフィルタから5〜7mm程度の位置の静脈を読み取ることを想定し、光の射出点から可視光カットフィルタの表面までの基本的距離を6mmとしている。
【0027】
図4でx方向での描画拡大率がz方向の描画拡大率に比べて非常に大きいためレンズ面が曲面に見えにくいが、実際は曲面であることを注意しておく。この図から、一点から射出した光線は前段レンズの作用によって絞り面近傍で集束され6μmの直径とした絞りの開口を全ての光線が通過していること、絞り近傍の集束点から光線は再度発散して後段のレンズの作用によって再度光検出素子中央に集束している様子が分かる。
【0028】
図5には基本条件、つまり前段が球面レンズで後段が回転対称放物面レンズ(非球面レンズ)の組み合わせの場合、図6には前段・後段共に球面レンズの場合の、光集束・遮蔽アレイ板、光検出素子近傍での光線追跡図を示す。共に最小錯乱円位置が光検出素子上に来るように後段レンズの高さを調整している。図5の場合には2重集束レンズ系の球面収差は小さく光検出素子上では光線がほぼ一点に集束しているが、図6の場合には2重集束レンズ系の球面収差が大きいため光線は光検出素子上ではかなり広がっていることが分かる。つまり、2重集束レンズ系の球面収差は前段が球面レンズで後段が回転対称放物面レンズ(非球面レンズ)の組み合わせの方が、どちらも球面とした場合よりもかなり小さくなり、光学的には優れている。
【0029】
図7、図8、図9には光の射出点がx方向に40,50,60μmだけ偏心した場合の光線追跡結果を示す。図7の射出点の偏心が40μmの場合には、レンズ面に向かった光線は絞り開口近傍で集束して、光学軸から偏心しているものの、全ての光線が絞りを通過し、絞り近傍から発散しながらも後段のレンズの作用によって再度光検出素子で集束していることが分かる。
【0030】
なお、図3の下に記したように前段のレンズの像倍率M1は0.059、後段のレンズの像倍率M2は0.99でトータルの2重集束系の像倍率M=M1×M2は0.058となっている。この像倍率から、第1集束点、つまり絞り面近傍では、40μmの偏心は40×0.059=2.4μmに縮小され、絞り開口の半径3μmより小さいことより、全ての光線が抜けたことが分かる。
【0031】
また、後段のレンズの像倍率はほぼ1であるため、絞り面近傍の光線の偏心2.4μmはそのまま光検出素子でも保持されている。つまり、絞りを通過した光は発散されるものの、後段レンズの集束作用によって約10μm角の光検出素子に収まっており、指静脈の画像情報の含まれた入射角の小さな光は有効に利用されていることが分かる。
【0032】
図8の射出点の偏心がレンズのピッチの半分の50μmの場合には、絞り面での偏心は50×0.059=3.0μmであり、絞りの開口の半径と同等であることから、光線の一部は絞りによって吸収されて、残りの光線が光検出素子に集束して到達していることが分かる。
【0033】
図9の射出点の偏心がレンズピッチの半分より大きな60μmの場合には、絞り面での偏心は60×0.059=3.5μmであり、絞りの開口の半径より大きいことから、光線は絞りによって全て吸収されていることが分かる。つまり、各レンズの光学軸からレンズのピッチの約半分以上偏心した点からの光線は絞り面で吸収され、光検出素子には到達しにくくなっている。
【0034】
以上のように、光の射出点が可視光カットフィルタの表面から6mm離れているにも拘わらず、各マイクロレンズの光学軸近傍の物面位置の光しか光検出素子には到達しないことから、本発明の光集束・遮蔽アレイ板ではイメージセンサの解像度を確保できることが分かる。
【0035】
図10、図11、図12、図13には可視光カットフィルタの表面から光射出点までの距離を1mm減少した場合と1mm増加した場合について記載している。図10および図12は射出点の偏心が無い場合,図11および図13は射出点の偏心がある場合について光線追跡図を示した。可視光カットフィルタの表面から光射出点までの距離が長くなれば、より大きな偏心量で光線が絞りによって蹴られるようになるものの、光射出位置が光学軸方向に多少変化しても、本発明の光集束・遮蔽アレイ板は有効に機能することが分かる。従って、本発明を用いた生体認証装置においては、被写界深度は深く、多少厚みある生体の認証も可能であることが分かる。以上が本発明の光集束・遮蔽アレイ板の原理的な説明である。
【0036】
次にこの光集束・遮蔽アレイ板の製造法に関して、主に(1)レンズアレイの金型製作法と(2)レンズアレイと絞りアレイの目合わせ方法について説明する。図3に示したようにレンズ基板はポリカーボネイト(屈折率:1.5696)とし、その基板上にほぼ同じ屈折率のUV硬化樹脂を金型で挟んで光を照射して硬化させ、金型から離すことによってレンズ面を形成している。レンズ基板は前段と後段の2枚のレンズ基板を用いて2枚のレンズアレイ板をあらかじめ作って、前段のレンズ基板に絞りアレイを形成し、2つのレンズアレイ板を接着させて光集束・遮蔽アレイ板を形成している。
【0037】
上記(1)のマイクロレンズアレイの金型製作法には大きく分けて2種類の手法が知られている。一つは、ピエゾアクチュエータ(ピエゾ素子を用いた振動子)を用いたダイヤモンドバイトによる切削加工で、もう一つは、半導体プロセスに用いる露光(フォトリソ)によるものである。それぞれの金型を作る手法は例えば「非特許文献1」から「非特許文献4」に開示されており、既知の製造法で製造が可能である。
【0038】
ピエゾアクチュエータ60を用いたダイヤモンドバイト50によるマイクロレンズアレイ金型の切削加工では、図14に示したように円筒または平板の銅70が円筒の場合は円筒を回転させながら、平板の場合は平板を固定したワークを平行移動させながら、上下に単振動するピエゾアクチュエータ60の先端に取り付けたダイヤモンドバイト50によって銅を切削加工することによってレンズアレイの金型原版が得られる。この原版をニッケル鍍金して金型として用いればよい。ダイヤモンドバイト50には厚みがあるため、バイト50と切削面との間には多少の「逃げ」が必要で、銅板70または銅シリンダー70との接触角は25°以下でなければピエゾアクチュエータ60を用いたダイヤモンドバイト50による切削加工は難しいことが知られている。
【0039】
ところで、rをレンズ中心からの距離、zをレンズの光学軸方向の距離とすれば矩形稠密の場合のレンズ曲面は、球面の場合ではレンズ曲面は(式1)で表され、
【0040】
【数1】
【0041】
回転対称放物面の場合には(式2)で表される。
【0042】
【数2】
【0043】
従って、ダイヤモンドバイトの接触角θの正接(tangent)はレンズ面が矩形稠密の球面の場合には(式3)で表され、
【0044】
【数3】
【0045】
回転対称放物面の場合には(式4)で表される。
【0046】
【数4】
【0047】
(式3)(式4)にLP=100μm、H=13.5μmを代入すれば、接触角θは球面の場合は22°、回転対称放物面の場合は21°を得る。つまり、レンズ面が球面でも回転対称放物面でも前段レンズの金型の接触角θは25°以下であるので、ピエゾアクチュエータとダイヤモンドバイトによる切削加工で金型原版は製作可能である。
【0048】
一方、後段のレンズは矩形稠密ではなく、レンズ直径DはレンズピッチLPをより小さく、レンズ曲面は球面の場合は(式5)で表される。
【0049】
【数5】
【0050】
回転対称放物面の場合には(式6)で表される。
【0051】
【数6】
【0052】
この場合のダイヤモンドバイトの接触角θの正接(tangent))は球面の場合は(式7)で表される。
【0053】
【数7】
【0054】
回転対称放物面の場合には(式8)で表される。
【0055】
【数8】
【0056】
(式7)(式8)にD=80μm、H=20μmを代入すれば、接触角θは球面の場合は50°、回転対称放物面の場合は45°を得る。接触角θは25°以上なので、後段のレンズアレイについてはレンズ面が球面でも回転対称放物面でも切削加工によっての金型の製作は困難である。
【0057】
この場合は後段のレンズアレイの金型製作には半導体プロセスに用いる露光によって製作する。このフォトリソの方法で樹脂のドットを形成してそれを熱で溶かせば、回転対称放物面状のレンズアレイ原版が形成できる。これを用いて電鋳金型を作れば後段のマイクロレンズアレイの金型ができる。前段の球面レンズと後段の回転対称放物面レンズ(非球面レンズ)の組み合わせでは、2重集束レンズ系の球面収差は球面レンズだけの組み合わせよりも著しく低減されるという副次的な効果もある。
【0058】
上記(2)の小さな開口を持つ絞りアレイとマイクロレンズアレイを精密に位置決めして重ね合わせる問題については、カラーブラウン管のブラックマトリクス、蛍光体の露光に用いていた方法を適用すれば解決できる。カラーブラウン管では製造ばらつきのあるシャドウマスクを用いブラックマトリクス、蛍光体を露光しているが、光集束・遮蔽アレイ板でも同様にマイクロレンズアレイを用いて絞りアレイの開口を露光すればよい。
【0059】
その詳しい説明を図15に示す。先ず、厚さの一様性の高い基板12の上にレンズ高さの一様性の高いマイクロレンズアレイ11をUV硬化樹脂であらかじめ形成しておく。前段のレンズアレイ11の基板12のレンズ形成面とは反対側の平面が絞り面と一致するように基板12の板厚を設定しておき、図15(a)から(d)および図16(e)から(g)のプロセスを実行すれば、光集束・遮蔽アレイ板は比較的容易に製造できる。
【0060】
(a)前段レンズアレイ11の基板12のレンズ形成面とは反対側の平面にネガ型フォトレジスト膜を形成する。
(b)レンズ形成面側からレンズアレイの面に垂直に平行光を照射させる。可視光カットフィルタの表面から光射出点までの距離が6mmのときに、絞り面位置での光線束の最小錯乱円位置が絞り面位置に来るように設計したため、平行光を入射すれば光束は絞り面位置の手前で集束し、絞り面では照度分布は多少の広がりを持つ。この光線束の広がりで絞り面の開口のアレイを露光する(これについては光学解析に基づいた補足説明を最後に行う)。
(c)露光されたレジスト部は残し、非露光部を取り除く。
(d)Cr等をスパッタ等でレジスト面に付着させて黒化膜を形成する。
(e)化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing) 等を用いて、露光突出部を研磨して、露光レジスト部をむき出しにして開口を形成する。黒化膜と開口によって、マイクロ絞りアレイ15が形成される。
(f)露光レジスト部を除去する(露光レジスト部が透明の場合は除去は不要)。
(g)UV硬化樹脂を介して2枚のレンズアレイを挟んで、UV拡散光を照射して2枚のレンズアレイを接着して一体化する。
【0061】
このようにして製作した光集束・遮蔽アレイ板を光検出素子が並んだ基板ガラスと可視光カットフィルタの板とで適切なスペーサを介して挟んで接着する。以上のプロセスで、可視光カットフィルタ機能、各画素への光集束アレイ、遮光アレイを有する生体認証用の撮像素子が完成する。
【0062】
最後に、上記(b)で述べた光学解析に基づいた補足説明をする。図17にレンズセルに平行光線を入射したときの絞り面近傍での光線追跡図を示す。この図から平行光線を入射したとき、光線は絞り面の手前で集束し、その結果絞り面では広がっていることが分かる。この広がりを利用して絞り開口を露光する。
【0063】
図18および図19には絞りが無いものとして、水平・垂直方向(x、y方向)の照度分布(図18)、対角方向(u,v方向)の照度分布(図19)を計算した結果を示す。絞り面位置とその前後のΔZ=±10μm、±20μmの位置での照度分布を表示している。これらの図から絞り面での照度分布はピーク値の40%程度の照度から急峻に0%まで落ちていること、絞り面位置の変化に対して照度分布の幅は急峻に変化すること、が分かる。
【0064】
絞り面位置ではx、y方向のピーク値の20%照度径は6μm程度、対角u,v方向は12μm程度である。設計の光学系では絞り開口の径が6から12μm程度と想定していたが、この開口は平行光線をレンズアレイに照射して露光した径と同程度の径になっている。また、これらの図から、絞り面位置の光軸方向±5μm程度の誤差でも、20%照度径の誤差が1μm程度発生することが分かる。従って、各レンズ基板の厚さはこの程度の精度は要する。
【0065】
図20および図21には絞り面での照度分布を鳥瞰図(図20)、等高線(図21)で示す。この図から、露光時間を変えれば、例えば照度の等高線のピークの10%から70%まで、露光のされる範囲を変えることはできる。例えば40%以上の照度の部分を残せば絞り開口はほぼ円形で径は6μm程度、10%以上の照度の部分を残せば、絞り開口は糸巻き歪状の矩形で径は水平、垂直6.5μm、対角11μmとなる。露光時間によって開口の径をある程度の範囲で調整できる。
【0066】
以上のように本発明は製造が容易な光集束・遮蔽アレイ板を提供し、指静脈認証装置の小型、薄型化に有利なイメージセンサの実現に役立つものである。
【0067】
図22には本発明の別の実施例の前段レンズアレイのレンズ配列を示す。前段レンズは矩形稠密ではなく、六方稠密であり、それに応じてイメージセンサの光検出素子の配置もデルタ配列となっている。通常の矩形配置ではxとy方向への並進は同じ周期で繰り返しがあり、x、yの2方向の解像度が同じであるが、対角方向は√2倍の周期でこの方向の解像度は劣る。しかし、このデルタ配列ではイメージセンサの解像度は図22に示した3つの方向e1,e2,e3で等しく、解像度等方性の確保に有利な配列である。
【符号の説明】
【0068】
10…光集束・遮蔽素子、 11…前段レンズアレイ、 12…前段レンズ基板、 13…後段レンズ基板、 14…後段レンズアレイ、 15…マイクロ絞りアレイ、 20…可視光カットフィルタ、 30…光検出素子、 31…基板ガラス、 50…ダイヤモンドバイト、 60…ピエゾアクチュエータ、 70…円筒または平板の銅、 101…光学フィルタ、 102…紫外線カットフィルタ、 103…光学レンズ、 104…イメージセンサ、 105…近赤外光光源、 201…レンズアレイ板、 202…マイクロレンズ、 203…遮光スペーサ、 204…黒色塗料、 205…光検出素子、 206…密着イメージセンサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光検出素子が配列した基板と、光集束・遮蔽素子を有する撮像装置であって、
前記光集束・遮蔽素子は第1のレンズアレイと、第2のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイの間に存在する絞りアレイを有し、
前記第1のレンズアレイは被写体側に存在し、前記第2のレンズアレイは前記光検出素子側に存在することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1のレンズアレイはマイクロレンズが稠密に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1のレンズアレイにおける前記マイクロレンズは矩形稠密または6角稠密に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2のレンズアレイにおけるマイクロレンズは非球面レンズであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
複数の光検出素子が配列した基板と、光集束・遮蔽素子を有する撮像装置であって、
前記光集束・遮蔽素子は第1のレンズアレイと、第2のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイの間に存在する絞りアレイを有し、
前記第1のレンズアレイは被写体側に存在し、前記第2のレンズアレイは前記光検出素子側に存在しており、
前記被写体の一点から出た光束が前記第1のレンズアレイによって、前記絞りアレイの開口の近傍で集束し、絞り開口を通過して発散し、さらに第2のレンズアレイの作用によって前記光検出素子に集束することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
第1の基板に第1のレンズアレイが形成され、第2の基板に第2のレンズアレイが形成され、前記第1の基板と前記第2の基板の間に絞りアレイが挟持されている光集束・遮蔽素子の製造方法であって、
前記絞りアレイは、前記第1のレンズアレイを露光マスクとして利用して、前記絞りアレイの開口を形成することを特徴とする光集束・遮蔽素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1の基板と前記第2の基板を紫外線硬化樹脂を用いて接着することを特徴とする請求項6に記載の光集束・遮蔽素子の製造方法。
【請求項1】
複数の光検出素子が配列した基板と、光集束・遮蔽素子を有する撮像装置であって、
前記光集束・遮蔽素子は第1のレンズアレイと、第2のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイの間に存在する絞りアレイを有し、
前記第1のレンズアレイは被写体側に存在し、前記第2のレンズアレイは前記光検出素子側に存在することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1のレンズアレイはマイクロレンズが稠密に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1のレンズアレイにおける前記マイクロレンズは矩形稠密または6角稠密に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2のレンズアレイにおけるマイクロレンズは非球面レンズであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
複数の光検出素子が配列した基板と、光集束・遮蔽素子を有する撮像装置であって、
前記光集束・遮蔽素子は第1のレンズアレイと、第2のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイの間に存在する絞りアレイを有し、
前記第1のレンズアレイは被写体側に存在し、前記第2のレンズアレイは前記光検出素子側に存在しており、
前記被写体の一点から出た光束が前記第1のレンズアレイによって、前記絞りアレイの開口の近傍で集束し、絞り開口を通過して発散し、さらに第2のレンズアレイの作用によって前記光検出素子に集束することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
第1の基板に第1のレンズアレイが形成され、第2の基板に第2のレンズアレイが形成され、前記第1の基板と前記第2の基板の間に絞りアレイが挟持されている光集束・遮蔽素子の製造方法であって、
前記絞りアレイは、前記第1のレンズアレイを露光マスクとして利用して、前記絞りアレイの開口を形成することを特徴とする光集束・遮蔽素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1の基板と前記第2の基板を紫外線硬化樹脂を用いて接着することを特徴とする請求項6に記載の光集束・遮蔽素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−203792(P2011−203792A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67960(P2010−67960)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】
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