説明

撹拌具

【課題】 生クリームをホイップしたり、卵を溶いたり、卵白でのメレンゲを作成したり、ホットケーキやお好み焼きの粉や具を混ぜたりする際に、撹拌し易く、撹拌効果を簡単に得ることができ、安価で簡単に成形できるようにすることにある。
【解決手段】 柄2の先端に深皿形状の掬い部3を連設し、この掬い部3に、先端に向かってU字形状に湾曲した溝孔4を、掬い部3の周縁に沿って複数本、同心状に切り欠くことにより、複数の線条5をU字形状に残存形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生クリームをホイップしたり、卵を溶いたり、卵白でのメレンゲを作成したり、ホットケーキやお好み焼きの粉や具を混ぜたりするための撹拌具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生クリームや卵、水で溶いた小麦粉などを混ぜたりする撹拌具として泡立て具が周知であり、以下の如き構成が典型例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−131205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1の発明「撹拌具」は、折り返し湾曲させた金属線材の複数を相互にずらして仮想バルーン形状を形成し、この各金属線材の端部を集合させて棒状の柄の先端に固定した構成である。
【0005】
しかしながらこの構成の撹拌具は、先ず、金属線材の加工及び組み付け固定に手間がかかるので成形費が嵩み、ステンレスなどの金属製であるために材料費も嵩むものになる。
【0006】
また同じく金属製であるが故に、線材ではあるものの、柄を含めた重量も嵩むため撹拌操作が行いにくく、非力な女性にとっては大きな負担となるものであった。
【0007】
或いは、例えば菓子の材料としてバターと砂糖とを撹拌混合したような場合、線材に付着した混合物をボウル内に戻すため、ボウルの縁に線材或いは柄を打ち付けると、付着物は反動でむしろ跳ね上がってしまい、周囲を汚す結果となる。特に仮想バルーン形状の線材の内側に付着した混合物は、例えばスプーンの如き他の道具を用いてさえ、かき落としにくいものである。そしてお好み焼きの料理では、小麦粉などの撹拌物にキャベツ等の具を入れて更に撹拌するのであるが、この具が仮想バルーン形状内に入り込んでしまって取り出しにくいこともある。
【0008】
更には、クリーム状に撹拌した混合物をボウル内でかき集めて他の容器に移し替える場合、或いはお好み焼きやてんぷらの材料を撹拌して調理のために鉄板、鍋等に移し替える場合等でも、上記の構成の撹拌具では線材なので具材が掬いにくく、スプーン等の別の用具を使用せざるを得ない。
【0009】
また、生クリームをホイップさせるために泡立て具として使用するような場合、線材であるために相互の隙間が大きく、液体状の生クリームがからみつきにくいために泡立つのに時間がかかる欠点もある。
【0010】
そして使用後の洗浄の際も、仮想バルーン形状内の付着物の除去が完全にできない。特に線材の端部が集中する柄の先端では除去しにくく、極めて不衛生であった。
【0011】
よって本発明は、上述した従来技術の欠点、不都合、不満を解消するべく開発された撹拌具であって、撹拌し易く、撹拌効果を簡単に得ることができ、安価で簡単に成形できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の撹拌具は、柄の先端に深皿形状の掬い部を連設し、この掬い部に、先端に向かって湾曲した溝孔を、前記した掬い部の周縁に沿って複数本、同心状に切り欠くことにより、複数の線条を残存形成したことを特徴とする。
【0013】
この場合、線条の断面を下方に突出する三角形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明にあって、深皿形状の掬い部では、複数の線条と湾曲した複数の溝孔とが交互に形成され、複数の線条は掬い部が深皿形状であるために擂り鉢状の階段形態になっている。従って、線条はその幅分及び掬い部の肉厚分の太さを有し、各線条間の隙間は溝孔の幅程度の細さとなる。即ち、ここでの線条の太さは、前記した従来の仮想バルーン形状の撹拌具の線材よりも充分に大きくとることができ、且つ各線条間の隙間は従来の各線材の隙間よりも充分に小さくすることができる。
【0015】
そこでボウルに入れた例えば生クリーム等の材料を掬うようにしながらかき混ぜると、線条が太いために材料がからみつき易く、また線条間の隙間(溝孔の幅)が細いので小さな気泡が形成され易く、短時間の作業でキメの細かいホイップを得ることができる。
【0016】
本発明の撹拌具は、合成樹脂で一体成形することができるので、成形が容易であるばかりでなく材料費を含む成形費を低廉に抑えることができ、軽量であるため撹拌操作も極めて容易である。
【0017】
撹拌操作後に付着した混合物は、掬い部を反転させてボウルの縁に柄を打ち付けるだけでボウル内に確実かつ容易に戻すことができ、溝孔を含む各部分に大きな付着物が残存することはないので、スプーンの如き他の道具を用いる必要もない。
【0018】
また、掬い部は基本的には深皿形状であるので、クリーム状に撹拌した混合物をボウルから他の容器に容易に移し替えることができ、或いは撹拌したお好み焼きやてんぷらの材料を調理のために鉄板、鍋等に移し替えるのも容易である。
【0019】
そして使用後の洗浄も、単に深皿を洗うが如き操作で溝孔部分まで充分に付着物を除去することができて衛生的である等、多くの優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】撹拌具の斜視図である。
【図2】撹拌具の平面図である。
【図3】撹拌具の軸方向に沿った断面図である。
【図4】使用状態を示す斜視である。
【図5】水平に載置した状態の正面図である。
【図6】他の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の撹拌具1は、比較的硬質の合成樹脂で一体成形されるもので、柄2の先端に深皿形状の掬い部3を連設した構成であるが、この掬い部3には、先端に向かってU字形状に湾曲した溝孔4が複数本、同心状に貫通切り欠かれている。このU字形状は、掬い部3の周縁に沿って形成されるものであり、この複数本は、掬い部3の基端から先端にかけての軸芯と同心状に形成されている。
【0022】
そしてこの複数本の溝孔4を設けることにより、掬い部3に複数の線条5をU字形状に残存形成するのである。
【0023】
また、線条5の断面を下方に突出する三角形状とする。従って、例えばゆで卵をボウルAの内面との間で押し潰すことが可能である。
【実施例1】
【0024】
成形材料の合成樹脂としてはいかなる材質でも良いが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン等が望ましく、軽量であるので撹拌作業が容易であり、階段状に形成される各線条5に或る程度の弾撥力を付与することになるので、図4の如くボウルAの内面に押し付けるように沿って撹拌する場合、弾性変形して操作し易いばかりでなく、ボウルA内面との間に形成される僅かの隙間により、撹拌材料に細かな気泡の形成を生じさせることができる。
【0025】
掬い部3に貫通切り欠きする溝孔4は、図示実施例では四本であり、従って残存形成される線条5も四本であるが、泡立ち効果をより高めるために本数を多くしても良いものである。また、具をより確実に掬うための目的で、溝孔4の幅を小さくすると共に線条5の幅を大きくしても良い。
【0026】
尚、柄2の下部背面には突起6が付設されてあり、撹拌具1をテーブル上に置いた際に、柄2の基端とこの突起6とにより全体を支持し、先端の掬い部3が浮き上がるようになっている(図5参照)。これは、撹拌作業の途中で他の具を追加するために中断しなければならないような場合、掬い部3に付着した混合物が直接テーブル面に接しないようにするためである。
【実施例2】
【0027】
図6は掬い部3の他の形態を示すもので、各線条5を、掬い部3のほぼ中心から放射状に延出するプレート7で連結している。このプレート7により、各線条5の姿勢が安定するばかりでなく、掬い部3の左右方向への動きに伴い材料がプレート7にもからみつくので、更にキメの細かいホイップを得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 撹拌具
2 柄
3 掬い部
4 溝孔
5 線条
6 突起
7 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄(2)の先端に深皿形状の掬い部(3)を連設し、該掬い部(3)に、先端に向かって湾曲した溝孔(4)を、前記掬い部(3)の周縁に沿って複数本、同心状に切り欠くことにより、複数の線条(5)を残存形成したことを特徴とする撹拌具。
【請求項2】
線条(5)の断面を下方に突出する三角形状としたことを特徴とする請求項1に記載の撹拌具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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