説明

撹拌式脱硫装置

【課題】脱硫がスラグスキマーによる除滓が行われる除滓位置A及びBの二ポジションで行えるようにして脱硫位置と除滓位置の間で取鍋を台車により移動させなくてもよいようにして台車移動によるスペースを不要にし、脱硫装置の周りの省スペース化を図る。
【解決手段】支柱21と、支柱21に水平方向に旋回可能に支持され、モータ32を駆動源として旋回するアーム22と、アーム22より垂直にクランク状に立ち上がる支軸23と、支軸23に昇降可能に取付けられ、ウインチ33によるチェーン等37の巻取り或いは巻き戻しにより昇降するデッキ24と、デッキ24の先端部に防振ゴム25を介して連結される円筒状の筒体26と、筒体26に回転可能に支持され、シャフト28と、シャフト下端に着脱可能に取付けられるインペラ29を有し、脱硫時にはアーム22を旋回させてインペラ29を除滓位置A又はBに切換え、脱硫後、同位置で除滓する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑の脱硫に用いる撹拌式脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のこの種撹拌式脱硫装置について示すもので、架台1に固定支持されるガイド枠2には、キャリッジ3が昇降可能に支持され、キャリッジ3はチェーンやワイヤー等(以下、単にチェーン等4という)に吊持されて、ウインチ5によるチェーン等4の巻取り或いは巻戻しによってガイド枠2に案内されて昇降するようになっており、左右両側及び上下には油圧クランプ装置6が設けられ、適当高さでガイド枠2に固定できるようになっている。
【0003】
キャリッジ3には、モータ7より減速機を介して回転駆動されるシャフト8が軸支され、シャフト下端にはインペラ9が着脱可能に取付けられている。この種のインペラを備えた撹拌式脱硫装置が下記特許文献1にも開示されている。
【0004】
架台1にはまた図示していないが、脱硫剤入りのホッパーと、該ホッパーより切り出された脱硫剤を搬送するコンベアと、該コンベアより送り出された脱硫剤を取鍋11に送り込むシュートが設けられている。
【0005】
溶銑の脱硫時には、ウインチ5によりキャリッジ3を上昇させ、インペラ9を持ち上げた状態で台車12に装着された取鍋11がインペラ下に運ばれる。取鍋11がインペラ下に達すると、図示しないホッパーから切り出された脱硫剤が一定量取鍋内に投入されると共に、ウインチ5によりキャリッジ3を降下させ、インペラ9を取鍋内の溶銑に浸漬させる。そしてモータ7によりインペラ9を回転駆動して溶銑と脱硫剤を撹拌混合し、溶銑の脱硫を行う。一定時間脱硫後、取鍋11は台車12にてスラグスキマーに運ばれ、そこで傾動されてスラグスキマーにより除滓される。
【0006】
図2は、全体を符号14で示す上述の脱硫装置と、その両側に配置されるスラグスキマー15のレイアウトを示すもので、一対の台車12が脱硫装置14による脱硫位置と、スラグスキマー15による除滓位置とに交互に移動し、一方の台車12が脱硫装置にあるときは他方の台車12が除滓位置に切換わるようにしてあり、除滓位置では台車12に装着される取鍋11を傾動させた状態でスラグスキマー15によりスラグがスラグポット台車16に装着されるスラグポット17に掻き出されるようにしてある。
【特許文献1】特開2002−363627号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の脱硫装置は固定で、脱硫はワンポジションで行われるようになっている。
本発明は脱硫がツーポジションの各除滓位置で行えるようにして取鍋を脱硫位置と除滓位置とに移動させなくてもすむようにし、もって取鍋を両位置の間で移動させるための台車を不要にして、台車の移動に要するスペースを省き、以てその分の省スペース化を図ることができるようにした撹拌式脱硫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の撹拌式脱硫装置は、支柱と、該支柱に水平方向に旋回可能に支持されるアームと、該アームを旋回させる旋回手段と、アームに昇降可能に支持される支持手段と、該支持手段を昇降させる昇降手段と、支持手段に垂直に回転可能に支持されるシャフトと、該シャフトを回転駆動する回転駆動手段と、シャフト下端に着脱可能に取着されるインペラを有し、前記アームの旋回により支柱を回転中心として円弧軌跡を描くインペラは、円弧軌跡上の二か所に設定される除滓位置のいずれかに切換えられ、切換後、該位置に待機する取鍋内に降下して溶銑の撹拌を行うようにしたものである。
【0009】
ここでアームの旋回手段は、例えば従来の実施形態に示されるように、モータを駆動源とする遊星歯車機構よりなるものである。
【0010】
支持手段は、図1に示す従来の撹拌式脱硫装置と同様、アームに固定されるガイド枠と、該ガイド枠に昇降可能に支持されるキャリッジよりなるもの、後述の実施形態に示されるように、アームよりクランク状に立ち上がる支軸と、該支軸に昇降可能に取付けられるデッキと、該デッキに固定支持される筒体よりなるもの等を例示することができ、
支持手段の昇降手段は、ウインチと、該ウインチよりシーブを介して支持手段に連結されるチェーン等よりなり、ウインチによるチェーン等の巻取り或いは巻戻しにより支持手段を昇降させるもの、特許文献1に開示されるようにクレーンを含み、クレーン操作によりチェーン等を介して支持手段を昇降させるもの等を例示することができる。
【0011】
シャフトの回転駆動手段としては、例えば後述の実施形態に示されるように、支持手段に取付けられるモータと、該モータとシャフトを連結し、モータを駆動源としてシャフトを回転駆動させる歯車伝動機構よりなるものが例示される。
【0012】
除滓位置では、取鍋内に供給された脱硫剤と溶銑をインペラで撹拌することにより脱硫が行われ、脱硫後、除滓位置に配置されたスラグスキマーにより除滓が行われる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明の撹拌式脱硫装置によると、除滓位置で脱硫が行われ、従来のように取鍋を台車で脱硫位置と除滓位置の間で移動させる必要がないため、両位置間での台車の移動に要するスペースが不要となって、その分省スペースを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の撹拌式脱硫装置について図面により説明する。
図3に示す撹拌式脱硫装置20は、支柱21と、支柱21上端に水平方向に旋回可能に支持されるアーム22と、アーム22より垂直にクランク状に立ち上がる支軸23、基部が支軸23に昇降可能に取付けられ、図示しない油圧クランプ装置により適当位置で固定可能なデッキ24及び図4に示すようにデッキ24の先端部に振動吸収材としての防振ゴム25を介して連結される円筒状の筒体26よりなる支持手段と、筒体26の軸心に配置され、上下のベアリング27により筒体26に回転可能に支持されるシャフト28と、シャフト28下端部に着脱可能に取付けられるインペラ29と、支柱側のフランジ31aに取付けられるモータ32を駆動源として回転する歯車及びアーム側のフランジ31bに形成される内歯車よりなる遊星歯車機構(図示省略)からなる前記アーム22の旋回手段と、アーム22上に取付けられるウインチ33及び一端がウインチ33に連結され、支軸上端より横向きに張り出す張出部34上に取付けられるシーブ35及びデッキ24に取付けられるシーブ36を介して他端が張出部34に連結されるチェーン37よりなる昇降手段と、デッキ24上に取付けられるモータ38及び該モータ38とシャフト28を連結する歯車伝動機構39よりなるシャフト28の回転駆動手段とを有し、デッキ24上には更に図示していないが、脱硫剤が入れられるホッパーと、該ホッパーより切り出された脱硫剤を搬送するコンベアと、該コンベアにより搬送された脱硫剤を取鍋42に送り込むシュートが設けられている。
【0015】
図5は、上述する撹拌式脱硫装置20と、その両側に設定される除滓位置A、Bに配置されるスラグスキマー41のレイアウトを示すもので、各除滓位置A、Bには取鍋42の取付台43が設けられ、図示しない台車で運ばれた溶銑入りの取鍋42がクレーン操作により取付台43に装着されるようになっている。
【0016】
脱硫時においては、図3及び図5の実線で示すように、除滓位置Aの取付台43に取鍋42を装着したのち、デッキ24を図3の実線位置に上昇させ、インペラ29を取鍋42に当たらない高さまで持上げた状態でアーム22を一点鎖線位置に旋回させ、インペラ29を除滓位置Aに切換える。ついでウインチ33によるチェーン37の巻き戻し操作によりインペラ29を図3の一点鎖線位置に降下させ、取鍋内の溶銑44に浸漬させる。同時に図示しないホッパーより一定量切出した脱硫剤をコンベア及びシュートを介して取鍋内に供給する。そしてインペラ29の回転により脱硫剤と溶銑を撹拌混合して脱硫を行う。
【0017】
一定時間脱硫後、ウインチ33によるチェーン37の巻取り操作によりインペラ29と共にデッキ24を上昇させ、図3の実線位置にインペラ29を上昇させたのち、取付台43と共に取鍋42を傾動させ、ついでスラグスキマー41によりスラグの掻き出しを行い、ノロポット台車46に装着のノロポット45に入れる。
【0018】
除滓位置Aでの脱硫中、或いは脱硫後に除滓位置Bの取付台43に新たな取鍋42が装着され、除滓位置Aで脱硫を終えた脱硫装置20はインペラ29を取鍋上に持上げ状態で図3及び図5の一点鎖線位置にアーム22を旋回させ、インペラ29を除滓位置Bに切換える。切換え後、除滓位置Bにおいて上記と同様にして脱硫が行われ、脱硫後、スラグスキマー41により除滓される。以後、上記と同様にして脱硫および除滓が繰返される。
【0019】
本実施形態の撹拌式脱硫装置においては、除滓位置A及びBにおいて、インペラ29の撹拌混合による脱硫とスラグスキマー41による除滓が行われ、従来のように脱硫位置と除滓位置の間を台車で取鍋を移動させる必要がなく、台車移動に要するスペースが不要となって脱硫装置20の周りの省スペース化を図ることができる。
【0020】
上記実施形態の脱硫装置では、支持手段が支軸23、デッキ24及び筒体26よりなり、デッキ24の昇降がウインチ33によるチェーン37の巻取り或いは巻き戻しによって行われるようになっているが、別の実施形態では、デッキ24の昇降がクレーン操作により行われ、更に別の実施形態では、支持手段が図1に示す従来の脱硫装置のように、アーム22に固定支持されるガイド枠と、ガイド枠に昇降可能に支持され、シャフト28を軸支するキャリッジとより構成され、キャリッジの昇降がウインチ或いはクレーン操作により行われるようにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の撹拌式脱硫装置の要部を示す部分断面正面図。
【図2】従来の撹拌式脱硫装置とスラグスキマーのレイアウトを示す図。
【図3】本発明に係る撹拌式脱硫装置の要部を示す側面図。
【図4】図3に示す脱硫装置の要部の断面図。
【図5】本発明に係る脱硫装置とスラグスキマーのレイアウトを示す図。
【符号の説明】
【0022】
20・・撹拌式脱硫装置
21・・支柱
22・・アーム
23・・支軸
24・・デッキ
25・・防振ゴム
26・・筒体
27・・ベアリング
28・・シャフト
29・・インペラ
31a、31b・・フランジ
32、38・・モータ
33・・ウインチ
34・・張出部
35、36・・シーブ
37・・チェーン
39・・歯車伝動機構
41・・スラグスキマー
42・・取鍋
43・・取付台
44・・溶銑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、該支柱に水平方向に旋回可能に支持されるアームと、該アームを旋回させる旋回手段と、アームに昇降可能に支持される支持手段と、該支持手段を昇降させる昇降手段と、支持手段に垂直に回転可能に支持されるシャフトと、該シャフトを回転駆動する回転駆動手段と、シャフト下端に着脱可能に取着されるインペラを有し、前記アームの旋回により支柱を回転中心として円弧軌跡を描くインペラは、円弧軌跡上の二か所に設定される除滓位置のいずれかに切換えられ、切換後、該位置に待機する取鍋内に降下して溶銑の撹拌を行うようにした撹拌式脱硫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−30086(P2009−30086A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192900(P2007−192900)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(591223149)日新工機株式会社 (26)
【Fターム(参考)】