撹拌機
【課題】水処理施設に使用する製品重量が軽く、しかも維持管理が容易な撹拌機を提供する。
【解決手段】水処理施設で使用される撹拌機1の主軸10と、主軸10に接続されるアーム20と、アーム20に接続される撹拌翼30とに、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用した。また、主軸10とアーム20との接合部11であって、主軸10の内部に補強材12を内設すると共に、前記撹拌翼30の断面形状をコの字形とした。
【解決手段】水処理施設で使用される撹拌機1の主軸10と、主軸10に接続されるアーム20と、アーム20に接続される撹拌翼30とに、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用した。また、主軸10とアーム20との接合部11であって、主軸10の内部に補強材12を内設すると共に、前記撹拌翼30の断面形状をコの字形とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理施設で使用される撹拌機に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理施設においては、混和池において投入された凝集剤及び滅菌剤・酸化剤・アルカリ剤等を拡散させ、濁質を微小なフロックに凝集させるための急速撹拌機(ミキサ)と、凝集剤により生成されたフロックを大きく成長させるため緩やかに撹拌する緩速撹拌機(フロキュレータ)と、2種類の撹拌機が使用されている(下記特許文献1参照)。従来、これらの撹拌機を構成している部品は、緩速撹拌機の撹拌翼が合成木材で成形されている以外、鉄若しくはステンレスによって成形されていた。しかし、凝集剤や薬品等の腐食性により鉄やステンレスに錆が発生し、また合成木材は耐光性が悪く紫外線による劣化が生じ、そのため製造時及び設置した後は定期的に塗装する必要が生じ、維持管理に多大な労力を要するとの不具合があった。
【0003】
また、水処理施設に使用される撹拌機は、大型設備で一品一様なので設置する場所にて部品を組み立て製品とする必要があるが、鉄やステンレスは比重が大きいので部品重量及び製品重量が重く、輸送、搬入・搬出、据付工事に大きなコスト、労力、エネルギーが掛るとの不具合があった。
【0004】
更に、横型の緩速撹拌機では、組立後の製品重量が重いため軸受部に掛る荷重が大きく軸受材の摩耗が早いとの不具合があった。
【0005】
尚、材質として比重の小さいアルミニウムを使用することも検討されるが、加工が難しく、耐腐食性が悪く、しかも強度・曲げ剛性共に低いので耐久性が劣り、コストも高いので代替する材質として妥当でなかった。また、従来のガラス繊維強化プラスチックは、鉄やステンレスよりも強度・耐腐食性は優っていたが、回転作用を有する部品に使用するには曲げ剛性が充分でないと考えられ、採用されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2008−68232
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の不具合点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、耐腐食性・耐光性等に優れて維持管理が容易で、しかも製品としての重量を軽くすることができる撹拌機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る撹拌機は、水処理施設で使用される主軸と、前記主軸に接続されるアームと、前記アームに接続される撹拌翼とを備える撹拌機において、前記主軸・前記アーム・前記撹拌翼の中の少なくともいずれか一にカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用したことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る撹拌機は、水処理施設で使用される主軸と、前記主軸に接続される撹拌翼とを備える撹拌機において、前記主軸・前記撹拌翼の中の少なくともいずれかにカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る撹拌機は、請求項1に記載の撹拌機であって、前記アームと接続される前記主軸の接合部の内部に補強材を内設したことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る撹拌機は、請求項1乃至3のいずれかに記載の撹拌機であって、前記撹拌翼の断面形状がコの字形であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る撹拌機は、請求項1乃至4のいずれかに記載の撹拌機であって、前記カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックは、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を備えた本発明の撹拌機は、主軸、アームが備えてある場合にはアーム、及び撹拌翼の中の少なくともいずれか一に使用されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックが、従来品に使用されている鉄・ステンレス若しくは合成木材に比較して強度が高く、曲げ剛性も鉄・ステンレスに対して優れ合成木材に対しても劣らないので、個々の部品の耐久性が向上し製品寿命を延長することができる。更に、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックは、鉄・ステンレスに比較し比重が小さいので、部品及び製品の重量を大幅に軽減することができ、輸送、搬入・搬出、据付工事を容易に行うことができると共に、据付工事に掛るコストを低減することができる。また、横型の緩速撹拌機では製品重量が軽減されるので、軸受部に係る荷重が低減し軸受材の交換間隔を延長することができ、維持管理を容易にすることができる。
【0014】
更に、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックは、酸化作用が強い凝集剤や薬品等が混和した水に常時接触していても錆が発生せず耐光性も良いので、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用した撹拌機は、製造時及び設置した後であっても塗装する必要がなく維持管理を容易にすることができる。
【0015】
また、主軸にカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックが使用されている場合、アームと接続される主軸の接合部の内部に補強材を内設すると、応力が集中する接合部の耐久性が向上し、製品寿命を延長することができる。
【0016】
また、撹拌翼にカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックが使用されている場合、撹拌翼の断面形状をコの字形とすると、曲げ剛性を従来品と同等に確保しつつ撹拌翼の厚さを従来品より薄くすることができる。
【0017】
また、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用すると、比重が1.8で鉄に対し1/4.4になるので、主軸、アームが備えてある場合にはアーム、及び撹拌翼の全てにカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用すると、製品重量を撹拌翼が合成木材で成形されている以外鉄若しくはステンレスで成形されている緩速撹拌機に対し約40%低減でき、全て鉄若しくはステンレスで成形されている急速撹拌機に対し約70%低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示して説明する。ただし、この発明の範囲は、特に限定的記載がない限り、この実施の形態に記載されている内容に限定する趣旨のものではない。
【0019】
第1実施形態:
本発明の第1実施形態に係る撹拌機は、混和池で形成したフロックを、相互に衝突を繰り返させて集塊させるための横型の緩速撹拌機(横軸フロキュレータ)であって、図1は、説明図であり、図2は、図1のAの部分拡大図であり、図3は、図1のB―Bの位置で切断した断面図である。
【0020】
本発明に係る横型の緩速撹拌機1は、主軸10と、アーム20と、撹拌翼30とを備えている。
【0021】
主軸10は、筒状であって軸受部40により支持され回転するようになっている。図2に示す通り、主軸10の内部であって、後述するアーム20との接合部11には鉄製の補強材12が内設されている。従って、L字型結合部42を介して主軸10とアーム20とを結合させるため螺子41でL字型結合部42と主軸10を結合させる場合に、螺子41が補強材12と螺合するようになっている。主軸10の材質は、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックであって、通常使用されるガラス繊維を含む繊維で補強された繊維体積率が30乃至60%のガラス繊維強化プラスチックの繊維部分の一部をカーボン繊維に置き換えたもので、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているものである。
【0022】
アーム20は、後述する撹拌翼30が結合される部材であって、長手方向に対し直角断面形状が矩形であって、主軸10の回転により撹拌翼30と共に回転するようになっている。アーム20の材質は、主軸10と同じでカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックである。
【0023】
図3に示す通り、撹拌翼30は、主軸10の回転でアーム20と共に回転してフロックを成長させる機能を有するので、回転方向Xに対し広い面積を有するように形成されており、板厚を薄くしたときでも水の圧力に抗しうるように長手方向に対し直角断面形状がコの字形状をしている。撹拌翼30の材質は、主軸10と同じでカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックである。
【0024】
上記構成の横型の緩速撹拌機1は、図5乃至図8に示す通り、主軸10、アーム20及び撹拌翼30の材質がすべて同じ材質であって、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックで成形されているので、従来品の撹拌翼が合成木材で成形され、主軸及びアームが鉄若しくはステンレスで成形されている緩速撹拌機と比較し、緩速撹拌機1の製品重量を約40%低減することが可能となる。従って、輸送、搬入・搬出、据付工事を容易に行うことができると共に、据付工事に掛るコストの低減が可能になる。また、軸受部40に係る荷重を低減することができ軸受部40の部材の交換間隔を1.5倍に延長することができ、維持管理を容易にすることが可能となる。
【0025】
更に、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチック製としたので錆が発生せず、耐光性も良好であるので、耐腐食性向上のため主軸10、アーム20及び撹拌翼30への塗装が不要となり、維持管理を容易にすることが可能となる。
【0026】
また、アーム20と接続される主軸10の接合部11の内部に補強材12が内設されているので、L字型結合部42を主軸10に結合させるときに、L字型結合部42を螺子41で補強材12と螺合結合させることができ、応力が集中する接合部11に亀裂が生じる等の不具合が発生するのを防止し、製品寿命を延長することが可能となる。
【0027】
また、撹拌翼30の断面形状をコの字形としたので、従来形状より撹拌翼30の厚さを低減することが可能となると共に、撹拌翼30の形状を幅100mm、フランジ部25mm、板厚6mmとした場合であっても撹拌翼30の曲げ剛性を合成木材で成形されている従来品と同程度に確保することが可能となる。
【0028】
第2実施形態:
本発明の第2実施形態に係る撹拌機は、混和池に凝集剤及び滅菌剤・酸化剤・アルカリ剤等の薬品を添加し、これらを急速かつ均一に混和するための急速撹拌機(ミキサ)であって、第1実施形態とは異なりアームがなく、構成が異なる部分について主に以下説明する。
【0029】
本発明に係る急速撹拌機1は、図4に示す通り、主軸10と、撹拌翼30とを備えている。
【0030】
主軸10は、円柱状であって、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックで成形されている。
【0031】
撹拌翼30は、主軸10の末端に結合している円盤部31と円盤部31の周縁に付設されている羽根部32より形成されていて、材質は、主軸10と同じカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックである。
【0032】
上記構成の急速撹拌機1は、図9乃至図11に示す通り、主軸10及び撹拌翼30の材質がすべて同じ材質であって、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックで成形されているので、主軸及び撹拌翼が鉄若しくはステンレスで成形されている従来品に比較して、急速撹拌機1の製品重量を約70%低減することが可能となる。従って、輸送、搬入・搬出、据付工事を容易に行うことができ、据付工事に掛るコストの低減が可能となる。
【0033】
更に、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックとしたので錆が発生しないため、耐腐食性向上のため主軸10及び撹拌翼30への塗装が不要となり、維持管理を容易にすることが可能となる。
【0034】
尚、上記実施形態1及び2においては、主軸10、アーム20が備えてある場合にはアーム20、撹拌翼30を全てカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックで成形した場合を説明した。しかし、主軸10だけをカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックにした場合には、主軸10の重量を55%低減することが可能となり、アーム20だけをカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックにした場合には、アーム20の重量を40%低減することが可能となる。また、緩速撹拌機において、撹拌翼30だけをカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックにした場合、合成木材で成形されている従来品に対し重量を低減することはできないが、塗装が不要となり維持管理を容易とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る緩速撹拌機の概略説明図である。
【図2】図1のAの位置での拡大断面図である。
【図3】図1のB―Bの位置で切断した断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る急速撹拌機の概略説明図である。
【図5】本発明に係る緩速撹拌機の性能比較表である。
【図6】本発明に係る緩速撹拌機の部品である主軸の性能比較表である。
【図7】本発明に係る緩速撹拌機の部品であるアームの性能比較表である。
【図8】本発明に係る緩速撹拌機の部品である撹拌翼の性能比較表である。
【図9】本発明に係る急速撹拌機の性能比較表である。
【図10】本発明に係る急速撹拌機の部品である主軸の性能比較表である。
【図11】本発明に係る急速撹拌機の部品である撹拌翼の性能比較表である。
【符号の説明】
【0036】
1 撹拌機
10 主軸
11 接合部
12 補強材
20 アーム
30 撹拌翼
31 円盤部
32 羽根部
40 軸受部
41 螺子
42 L字型結合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理施設で使用される撹拌機に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理施設においては、混和池において投入された凝集剤及び滅菌剤・酸化剤・アルカリ剤等を拡散させ、濁質を微小なフロックに凝集させるための急速撹拌機(ミキサ)と、凝集剤により生成されたフロックを大きく成長させるため緩やかに撹拌する緩速撹拌機(フロキュレータ)と、2種類の撹拌機が使用されている(下記特許文献1参照)。従来、これらの撹拌機を構成している部品は、緩速撹拌機の撹拌翼が合成木材で成形されている以外、鉄若しくはステンレスによって成形されていた。しかし、凝集剤や薬品等の腐食性により鉄やステンレスに錆が発生し、また合成木材は耐光性が悪く紫外線による劣化が生じ、そのため製造時及び設置した後は定期的に塗装する必要が生じ、維持管理に多大な労力を要するとの不具合があった。
【0003】
また、水処理施設に使用される撹拌機は、大型設備で一品一様なので設置する場所にて部品を組み立て製品とする必要があるが、鉄やステンレスは比重が大きいので部品重量及び製品重量が重く、輸送、搬入・搬出、据付工事に大きなコスト、労力、エネルギーが掛るとの不具合があった。
【0004】
更に、横型の緩速撹拌機では、組立後の製品重量が重いため軸受部に掛る荷重が大きく軸受材の摩耗が早いとの不具合があった。
【0005】
尚、材質として比重の小さいアルミニウムを使用することも検討されるが、加工が難しく、耐腐食性が悪く、しかも強度・曲げ剛性共に低いので耐久性が劣り、コストも高いので代替する材質として妥当でなかった。また、従来のガラス繊維強化プラスチックは、鉄やステンレスよりも強度・耐腐食性は優っていたが、回転作用を有する部品に使用するには曲げ剛性が充分でないと考えられ、採用されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2008−68232
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の不具合点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、耐腐食性・耐光性等に優れて維持管理が容易で、しかも製品としての重量を軽くすることができる撹拌機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る撹拌機は、水処理施設で使用される主軸と、前記主軸に接続されるアームと、前記アームに接続される撹拌翼とを備える撹拌機において、前記主軸・前記アーム・前記撹拌翼の中の少なくともいずれか一にカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用したことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る撹拌機は、水処理施設で使用される主軸と、前記主軸に接続される撹拌翼とを備える撹拌機において、前記主軸・前記撹拌翼の中の少なくともいずれかにカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る撹拌機は、請求項1に記載の撹拌機であって、前記アームと接続される前記主軸の接合部の内部に補強材を内設したことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る撹拌機は、請求項1乃至3のいずれかに記載の撹拌機であって、前記撹拌翼の断面形状がコの字形であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る撹拌機は、請求項1乃至4のいずれかに記載の撹拌機であって、前記カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックは、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を備えた本発明の撹拌機は、主軸、アームが備えてある場合にはアーム、及び撹拌翼の中の少なくともいずれか一に使用されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックが、従来品に使用されている鉄・ステンレス若しくは合成木材に比較して強度が高く、曲げ剛性も鉄・ステンレスに対して優れ合成木材に対しても劣らないので、個々の部品の耐久性が向上し製品寿命を延長することができる。更に、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックは、鉄・ステンレスに比較し比重が小さいので、部品及び製品の重量を大幅に軽減することができ、輸送、搬入・搬出、据付工事を容易に行うことができると共に、据付工事に掛るコストを低減することができる。また、横型の緩速撹拌機では製品重量が軽減されるので、軸受部に係る荷重が低減し軸受材の交換間隔を延長することができ、維持管理を容易にすることができる。
【0014】
更に、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックは、酸化作用が強い凝集剤や薬品等が混和した水に常時接触していても錆が発生せず耐光性も良いので、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用した撹拌機は、製造時及び設置した後であっても塗装する必要がなく維持管理を容易にすることができる。
【0015】
また、主軸にカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックが使用されている場合、アームと接続される主軸の接合部の内部に補強材を内設すると、応力が集中する接合部の耐久性が向上し、製品寿命を延長することができる。
【0016】
また、撹拌翼にカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックが使用されている場合、撹拌翼の断面形状をコの字形とすると、曲げ剛性を従来品と同等に確保しつつ撹拌翼の厚さを従来品より薄くすることができる。
【0017】
また、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用すると、比重が1.8で鉄に対し1/4.4になるので、主軸、アームが備えてある場合にはアーム、及び撹拌翼の全てにカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用すると、製品重量を撹拌翼が合成木材で成形されている以外鉄若しくはステンレスで成形されている緩速撹拌機に対し約40%低減でき、全て鉄若しくはステンレスで成形されている急速撹拌機に対し約70%低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示して説明する。ただし、この発明の範囲は、特に限定的記載がない限り、この実施の形態に記載されている内容に限定する趣旨のものではない。
【0019】
第1実施形態:
本発明の第1実施形態に係る撹拌機は、混和池で形成したフロックを、相互に衝突を繰り返させて集塊させるための横型の緩速撹拌機(横軸フロキュレータ)であって、図1は、説明図であり、図2は、図1のAの部分拡大図であり、図3は、図1のB―Bの位置で切断した断面図である。
【0020】
本発明に係る横型の緩速撹拌機1は、主軸10と、アーム20と、撹拌翼30とを備えている。
【0021】
主軸10は、筒状であって軸受部40により支持され回転するようになっている。図2に示す通り、主軸10の内部であって、後述するアーム20との接合部11には鉄製の補強材12が内設されている。従って、L字型結合部42を介して主軸10とアーム20とを結合させるため螺子41でL字型結合部42と主軸10を結合させる場合に、螺子41が補強材12と螺合するようになっている。主軸10の材質は、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックであって、通常使用されるガラス繊維を含む繊維で補強された繊維体積率が30乃至60%のガラス繊維強化プラスチックの繊維部分の一部をカーボン繊維に置き換えたもので、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているものである。
【0022】
アーム20は、後述する撹拌翼30が結合される部材であって、長手方向に対し直角断面形状が矩形であって、主軸10の回転により撹拌翼30と共に回転するようになっている。アーム20の材質は、主軸10と同じでカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックである。
【0023】
図3に示す通り、撹拌翼30は、主軸10の回転でアーム20と共に回転してフロックを成長させる機能を有するので、回転方向Xに対し広い面積を有するように形成されており、板厚を薄くしたときでも水の圧力に抗しうるように長手方向に対し直角断面形状がコの字形状をしている。撹拌翼30の材質は、主軸10と同じでカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックである。
【0024】
上記構成の横型の緩速撹拌機1は、図5乃至図8に示す通り、主軸10、アーム20及び撹拌翼30の材質がすべて同じ材質であって、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックで成形されているので、従来品の撹拌翼が合成木材で成形され、主軸及びアームが鉄若しくはステンレスで成形されている緩速撹拌機と比較し、緩速撹拌機1の製品重量を約40%低減することが可能となる。従って、輸送、搬入・搬出、据付工事を容易に行うことができると共に、据付工事に掛るコストの低減が可能になる。また、軸受部40に係る荷重を低減することができ軸受部40の部材の交換間隔を1.5倍に延長することができ、維持管理を容易にすることが可能となる。
【0025】
更に、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチック製としたので錆が発生せず、耐光性も良好であるので、耐腐食性向上のため主軸10、アーム20及び撹拌翼30への塗装が不要となり、維持管理を容易にすることが可能となる。
【0026】
また、アーム20と接続される主軸10の接合部11の内部に補強材12が内設されているので、L字型結合部42を主軸10に結合させるときに、L字型結合部42を螺子41で補強材12と螺合結合させることができ、応力が集中する接合部11に亀裂が生じる等の不具合が発生するのを防止し、製品寿命を延長することが可能となる。
【0027】
また、撹拌翼30の断面形状をコの字形としたので、従来形状より撹拌翼30の厚さを低減することが可能となると共に、撹拌翼30の形状を幅100mm、フランジ部25mm、板厚6mmとした場合であっても撹拌翼30の曲げ剛性を合成木材で成形されている従来品と同程度に確保することが可能となる。
【0028】
第2実施形態:
本発明の第2実施形態に係る撹拌機は、混和池に凝集剤及び滅菌剤・酸化剤・アルカリ剤等の薬品を添加し、これらを急速かつ均一に混和するための急速撹拌機(ミキサ)であって、第1実施形態とは異なりアームがなく、構成が異なる部分について主に以下説明する。
【0029】
本発明に係る急速撹拌機1は、図4に示す通り、主軸10と、撹拌翼30とを備えている。
【0030】
主軸10は、円柱状であって、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックで成形されている。
【0031】
撹拌翼30は、主軸10の末端に結合している円盤部31と円盤部31の周縁に付設されている羽根部32より形成されていて、材質は、主軸10と同じカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックである。
【0032】
上記構成の急速撹拌機1は、図9乃至図11に示す通り、主軸10及び撹拌翼30の材質がすべて同じ材質であって、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されているカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックで成形されているので、主軸及び撹拌翼が鉄若しくはステンレスで成形されている従来品に比較して、急速撹拌機1の製品重量を約70%低減することが可能となる。従って、輸送、搬入・搬出、据付工事を容易に行うことができ、据付工事に掛るコストの低減が可能となる。
【0033】
更に、カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックとしたので錆が発生しないため、耐腐食性向上のため主軸10及び撹拌翼30への塗装が不要となり、維持管理を容易にすることが可能となる。
【0034】
尚、上記実施形態1及び2においては、主軸10、アーム20が備えてある場合にはアーム20、撹拌翼30を全てカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックで成形した場合を説明した。しかし、主軸10だけをカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックにした場合には、主軸10の重量を55%低減することが可能となり、アーム20だけをカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックにした場合には、アーム20の重量を40%低減することが可能となる。また、緩速撹拌機において、撹拌翼30だけをカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックにした場合、合成木材で成形されている従来品に対し重量を低減することはできないが、塗装が不要となり維持管理を容易とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る緩速撹拌機の概略説明図である。
【図2】図1のAの位置での拡大断面図である。
【図3】図1のB―Bの位置で切断した断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る急速撹拌機の概略説明図である。
【図5】本発明に係る緩速撹拌機の性能比較表である。
【図6】本発明に係る緩速撹拌機の部品である主軸の性能比較表である。
【図7】本発明に係る緩速撹拌機の部品であるアームの性能比較表である。
【図8】本発明に係る緩速撹拌機の部品である撹拌翼の性能比較表である。
【図9】本発明に係る急速撹拌機の性能比較表である。
【図10】本発明に係る急速撹拌機の部品である主軸の性能比較表である。
【図11】本発明に係る急速撹拌機の部品である撹拌翼の性能比較表である。
【符号の説明】
【0036】
1 撹拌機
10 主軸
11 接合部
12 補強材
20 アーム
30 撹拌翼
31 円盤部
32 羽根部
40 軸受部
41 螺子
42 L字型結合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理施設で使用される主軸と、前記主軸に接続されるアームと、前記アームに接続される撹拌翼とを備える撹拌機において、
前記主軸・前記アーム・前記撹拌翼の中の少なくともいずれか一にカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用したことを特徴とする撹拌機。
【請求項2】
水処理施設で使用される主軸と、前記主軸に接続される撹拌翼とを備える撹拌機において、
前記主軸・前記撹拌翼の中の少なくともいずれかにカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用したことを特徴とする撹拌機。
【請求項3】
前記アームと接続される前記主軸の接合部の内部に補強材を内設したことを特徴とする請求項1に記載の撹拌機。
【請求項4】
前記撹拌翼の断面形状がコの字形であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかにに記載の撹拌機。
【請求項5】
前記カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックは、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の撹拌機。
【請求項1】
水処理施設で使用される主軸と、前記主軸に接続されるアームと、前記アームに接続される撹拌翼とを備える撹拌機において、
前記主軸・前記アーム・前記撹拌翼の中の少なくともいずれか一にカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用したことを特徴とする撹拌機。
【請求項2】
水処理施設で使用される主軸と、前記主軸に接続される撹拌翼とを備える撹拌機において、
前記主軸・前記撹拌翼の中の少なくともいずれかにカーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックを使用したことを特徴とする撹拌機。
【請求項3】
前記アームと接続される前記主軸の接合部の内部に補強材を内設したことを特徴とする請求項1に記載の撹拌機。
【請求項4】
前記撹拌翼の断面形状がコの字形であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかにに記載の撹拌機。
【請求項5】
前記カーボン繊維入りガラス繊維強化プラスチックは、カーボン繊維が繊維体積率30乃至60%の中の少なくとも5乃至20%含有されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の撹拌機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−29828(P2010−29828A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197391(P2008−197391)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000193508)水道機工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000193508)水道機工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]