説明

撹拌装置

【課題】粘度が異なる二種以上の処理物を混合する場合でも混合特性が良好となる撹拌装置の提供。
【解決手段】撹拌槽1の内壁に沿って断続的なヘリカル状に配設され、それぞれサポートアーム6を介して撹拌軸2に取り付けられる複数の撹拌翼7,…と、該撹拌翼7,…と干渉しない位置にて撹拌槽1の内壁から延出するそれぞれサポートアーム8に取り付けられ、撹拌翼7,…よりも中心側に配設される複数のバッフル9,…とを備え、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7の幅W1が撹拌槽1の内径(直径)の10〜20%の範囲内に設定され、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1及び撹拌槽1の径方向における撹拌翼7とバッフル9との間のクリアランスC2のそれぞれが撹拌槽1の内径(直径)の3%以下の範囲内に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学分野に限らず、薬品、食品、金属鉱業、素材産業全般における混合を目的とした撹拌処理用の撹拌装置に関し、高粘度の撹拌処理物の混合は言うまでもなく、粘度が著しく異なる撹拌処理物の混合にも有用である。尚、撹拌処理物の混合は、液体同士の混合に限らず、固体(あるいは粉体)と液体との混合、固体(あるいは粉体)同士の混合、通気をした状態での液体同士の混合などを含む。
【背景技術】
【0002】
高粘度の撹拌処理物の混合を目的とした撹拌処理用の撹拌装置としては、撹拌槽の上下方向の撹拌特性が良好であるヘリカルリボン翼(中でも特にダブルヘリカルリボン翼)が適していると言われている(特許文献1〜3)。
【0003】
この種の撹拌装置は、ヘリカルリボン翼の上面にて吐出力を作用させる方向に回転駆動、即ち、ヘリカルリボン翼の送り方向が上向きとなるように回転駆動(以下、これを「掻き上げ回転」という)することにより、中心側で上方より撹拌処理物が吸い込まれて撹拌槽の底部に沿って中心側から外周側へと送られ、そして、撹拌槽の内壁に沿って上方に送られた後、撹拌処理物の表面近くで中心側に吸い込まれて下向きに下降し、再び吸い込まれるという一連の循環流を発生させて混合を行う。
【0004】
一方、ヘリカルリボン翼の下面にて吐出力を作用させる方向に回転駆動、即ち、ヘリカルリボン翼の送り方向が下向きとなるように回転駆動(以下、これを「掻き下げ回転」という)すれば、中心側で下方より撹拌処理物が吸い込まれて撹拌処理物の表面近くで中心側から外周側へと送られ、そして、撹拌槽の内壁に沿って下方に送られた後、撹拌槽の底部に沿って中心側に吸い込まれて上向きに上昇し、再び吸い込まれるという一連の循環流を発生させて混合を行うこともできる。
【0005】
但し、ヘリカルリボン翼だけでは、翼よりも中心側に撹拌処理物の流動が生じない不動点が発生し、全体としての混合が十分に行われないことがあるとして、撹拌槽の内壁に沿って断続的なヘリカル状に配設され、それぞれサポートアームを介して撹拌軸に取り付けられる複数の撹拌翼と、該撹拌翼と干渉しない位置にて撹拌槽の内壁から延出するそれぞれサポートアームに取り付けられ、撹拌翼よりも中心側に配設される複数のバッフルとを備える撹拌装置が提案されている(特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特許第2649131号公報
【特許文献2】特開2000−317292号公報
【特許文献3】特開平8−266881号公報
【特許文献4】特公平5−59782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献4に記載の撹拌装置は、撹拌槽の径方向における撹拌翼の幅が撹拌槽の内径(直径)の5〜10%の範囲内に設定されている。即ち、特許文献4に記載の撹拌装置は、撹拌槽の断面で見れば、撹拌翼が回転して通過する撹拌槽の外周領域、即ち、撹拌翼による上向き(掻き上げ回転の場合)又は下向き(掻き下げ回転の場合)の吐出力が直接的に作用する撹拌槽の外周領域が約19〜36%と狭く、撹拌翼が通過しない撹拌槽の中心領域、即ち、撹拌翼による吐出力が直接的に作用しない撹拌槽の中心領域が約64〜81%と広くなっている。そのため、特許文献4に記載の撹拌装置は、撹拌槽の中心側において、流動(掻き上げ回転であれば、下向きの流動(下降流)、掻き下げ回転であれば、上向きの流動(上昇流))が十分に発生しにくい。この事実は、中粘度(10〜200poise)の撹拌処理物を対象とする特許文献4に記載の撹拌装置にとっては問題とならないが、高粘度(200〜poise)の撹拌処理物を混合する場合は、撹拌槽内の全体に亘って十分に上下方向の循環流が発生しないという結果を生み、全体としての混合特性が良好とならないという問題が残る。
【0008】
そこで、本発明は、撹拌槽内の全体に亘って十分に上下方向の循環流を発生させることができ、その結果、高粘度の撹拌処理物であっても全体としての混合特性が良好となる撹拌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る撹拌装置は、円筒形の撹拌槽1と、該撹拌槽1の中心部に配設されて槽外から回転可能な撹拌軸2と、撹拌槽1の内壁に沿って断続的なヘリカル状に配設され、それぞれサポートアーム6を介して撹拌軸2に取り付けられる複数の撹拌翼7,…と、該撹拌翼7,…と干渉しない位置にて撹拌槽1の内壁から延出するそれぞれサポートアーム8に取り付けられ、撹拌翼7,…よりも中心側に配設される複数のバッフル9,…とを備える撹拌装置において、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7の幅W1が撹拌槽1の内径(直径)の10〜20%の範囲内に設定され、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1及び撹拌槽1の径方向における撹拌翼7とバッフル9との間のクリアランスC2のそれぞれが撹拌槽1の内径(直径)の3%以下の範囲内に設定されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る撹拌装置によると、撹拌槽1の断面で見れば、撹拌翼7,…が回転して通過する撹拌槽1の外周領域、即ち、撹拌翼7,…による上向き(掻き上げ回転の場合)又は下向き(掻き下げ回転の場合)の吐出力が直接的に作用する撹拌槽1の外周領域が約36〜64%と従来に比べて広くなり、一方、撹拌翼7,…が通過しない撹拌槽1の中心領域、即ち、撹拌翼7,…による吐出力が直接的に作用しない撹拌槽1の中心領域が約36〜64%と従来に比べて狭くなり、しかも、両者の差も小さくなるか無くなる。そのため、撹拌槽1の中心側において、流動(掻き上げ回転であれば、下向きの流動(下降流)、掻き下げ回転であれば、上向きの流動(上昇流))が十分に発生し、その結果、撹拌槽1内の全体に亘って十分に上下方向の循環流を発生させることができる。
【0011】
また、粘度が異なる二種以上の撹拌処理物を混合(より詳しくは、高粘度の撹拌処理物中に低粘度の撹拌処理物を投入して両者を混合)する場合、掻き上げ回転であれば、撹拌処理物の表面の中心側が流動の生じにくい不動点となり、低粘度の撹拌処理物が高粘度の撹拌処理物とうまく混合せずに撹拌処理物の表面の中心側に溜まる(いわゆる「溜まり」)現象が起きて混合不良が発生するという問題が生じ得るが、本発明に係る撹拌装置によると、掻き上げ回転において、回転撹拌翼7,…による上向きの吐出力が従来に比べて大きくなり、その結果、撹拌処理物の表面における外周側から中心側への流動が大きくなるため、「溜まり」を解消することができる。
【0012】
さらに、粘度が異なる二種以上の撹拌処理物を混合(より詳しくは、高粘度の撹拌処理物中に低粘度の撹拌処理物を投入して両者を混合)する場合、掻き下げ回転であれば、低粘度の撹拌処理物が高粘度の撹拌処理物とうまく混合せずに撹拌槽の内壁に沿って分布し、それに囲まれた高粘度の撹拌処理物が塊状のまま撹拌翼の回転に伴って回転する(いわゆる「スリップ」)現象が起きて混合不良が発生するという問題が生じ得るが、本発明に係る撹拌装置によると、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1が撹拌槽1の内径(直径)の3%以下の範囲内に設定され、両者の隙間が小さくなっており、その結果、掻き下げ回転において、撹拌翼7,…による吐出力が撹拌槽1の内壁に好適に作用するため、「スリップ」を解消することができる。
【0013】
但し、撹拌翼7の幅W1が撹拌槽1の内径(直径)の20%を越えると、撹拌翼7,…が回転して通過する撹拌槽1の外周領域の占める割合が大きくなり過ぎるため、上下方向の流動バランスが崩れ、均一混合が阻害されて好ましくない。
【0014】
ここで、本発明に係る撹拌装置は、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7の幅W1、撹拌槽1の径方向におけるバッフル9の幅W2、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7とバッフル9との間のクリアランスC2、の四つの和が撹拌槽1の内径(直径)の15〜30%の範囲内に設定されるのが好ましい。
【0015】
かかる構成によると、上下方向の流動バランスを適正にすることができる。
【0016】
また、本発明に係る撹拌装置は、バッフル9が、撹拌翼7の傾斜角度αに対して−10〜90度の角度範囲、より好ましくは、撹拌翼7の傾斜角度αに対して−10〜15度の角度範囲となるよう配設される構成を採用することができる。
【0017】
かかる構成によると、バッフル効果が好適に作用し、掻き上げ回転であれば、「溜まり」の解消効果をより高めることができ、掻き下げ回転であれば、「スリップ」の解消効果をより高めることができる。
【0018】
また、本発明に係る撹拌装置は、撹拌翼7又はバッフル9の上端が撹拌槽1に装填される撹拌処理物の表面から突出するような構成、即ち、撹拌翼7又はバッフル9が撹拌処理物の表面にかかるような構成を採用することができる。
【0019】
かかる構成によると、撹拌槽1に装填される撹拌処理物の表層に対して、撹拌翼7とバッフル9の何れかが表面から突出することにより、撹拌処理物の表層におけるせん断力が有効に作用するため、高粘度の撹拌処理物中に低粘度の撹拌処理物を投入する操作において、低粘度の撹拌処理物が好適に分散され、その結果、掻き上げ回転であれば、「溜まり」がより効果的に解消され、掻き下げ回転であれば、「スリップ」がより効果的に解消されることとなり、掻き上げ回転、掻き下げ回転を問わず、より良好な異粘度混合を実現することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る撹拌装置は、撹拌槽1の底部に沿って配設され、垂直、又は、撹拌翼7,…と同じ方向に傾斜させて撹拌軸2に取り付けられるボトムパドル翼11をさらに備えることや、撹拌槽1の底部に沿って配設され、垂直、又は、撹拌翼7,…と同じ方向に傾斜させて撹拌軸2に取り付けられる、ダブルヘリカルからなるボトムリボン翼14をさらに備えることが可能である。
【0021】
これらの構成によると、掻き上げ回転、掻き下げ回転を問わず、ボトムパドル翼11やボトムリボン翼14が撹拌槽1の底部に停滞沈着する撹拌処理物を強制的に上方に押し上げることで、高粘度の撹拌処理物や粘度が異なる二種以上の撹拌処理物の混合特性がさらに良好となる。
【0022】
次に、本発明に係る撹拌方法は、上記何れかの撹拌装置を用いて沸騰重合を行う際に、その単位体積あたりの撹拌動力を0.2〜5.0kW/m3、好ましくは0.3〜3.0kW/m3として撹拌することを特徴とするものであったり、上記何れかの撹拌装置を用いて、高粘度の撹拌処理物中にその粘度差が1万倍を超える低粘度の撹拌処理物を投入して分散混合をする際に、その単位体積あたりの撹拌動力を0.2〜5.0kW/m3、好ましくは0.3〜3.0kW/m3として撹拌することを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係る撹拌方法によると、動力範囲を上記範囲に設定することによって、効率的に撹拌することができるばかりでなく、混合効果に対するエネルギロスを抑えることができる。
【0024】
また、本発明に係る撹拌方法は、撹拌処理物が200〜10000poiseの粘度のものを採用することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上、本発明に係る撹拌装置によると、撹拌槽内の全体に亘って十分に上下方向の循環流を発生させることができ、その結果、高粘度の撹拌処理物であっても全体としての混合特性が良好となるばかりでなく、粘度が異なる二種以上の撹拌処理物を混合する場合においては、低粘度の撹拌処理物の「溜まり」や撹拌処理物間の「スリップ」を効果的に抑制することができ、その結果、混合不良が発生するのを防止できて全体としての混合特性が良好となる。従って、本発明に係る撹拌装置であれば、撹拌処理物が200poiseを超える粘度での沸騰重合、又は、高粘度の撹拌処理物中に低粘度の撹拌処理物を投入する操作における1万倍を超える粘度差での均一な分散混合が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<第一実施形態>
以下、本発明の一実施形態に係る撹拌装置について図1〜図4を参酌しつつ説明する。
【0027】
本実施形態に係る撹拌装置は、図1に示す如く、撹拌槽1と、該撹拌槽1の中心部に配設されて槽外から回転可能な撹拌軸2と、撹拌槽1の内壁に沿って断続的なヘリカル状に配設され、それぞれサポートアーム6を介して撹拌軸2に取り付けられる複数の撹拌翼7,…と、該撹拌翼7,…と干渉しない位置に配設されるそれぞれサポートアーム8を介して撹拌槽1の内壁に取り付けられ、撹拌翼7,…よりも中心側に配設される複数のバッフル(インナーバッフル)9,…と、撹拌槽1の底部に沿って配設され、それぞれサポートアーム10を介して撹拌軸2に取り付けられる一対のボトムパドル翼11,11とを備える。
【0028】
撹拌槽1は、円筒形撹拌槽で、円筒状の直胴部と、該直胴部の下端に取り付けられる断面形状が半楕円形の底部と、直胴部の上端に取り付けられる頂部とからなり、軸芯が垂直となるように保持される。駆動装置を撹拌槽1の底部の下方に配設する場合は、撹拌軸2は、撹拌槽1の頂部に設けられる軸受3を介して上端が支持され、撹拌槽1の底部の下方に配設される駆動装置にカップリングを介して下端が接続される。また、駆動装置は撹拌槽1の頂部の上方にカップリングを介して配設することもできる。その場合は、軸受3は撹拌槽1の底部に設け、撹拌軸2の下端が支持される。
【0029】
撹拌翼7は、撹拌槽1の直胴部の中間に一対配設され(上段における一対の撹拌翼7A1,7B1)、該上段における撹拌翼7とボトムパドル翼11との間に一対配設される(下段における一対の撹拌翼7A2,7B2)。より具体的には、各段において、一対のサポートアーム6,6が相反する方向に延出して一対の撹拌翼7,7が180度の位相差となると共に、上段における一対の撹拌翼7,7と下段における一対の撹拌翼7,7とが90度の位相差となって、各撹拌翼7が配設される。撹拌翼7は、円弧帯状の平板である、いわゆるパドル翼である。
【0030】
また、撹拌翼7は、図2にも示す如く、回転方向に対して傾斜してサポートアーム6に支持される。より具体的には、撹拌翼7は、回転方向一方側(図2においては、反時計回り側)が下となるよう傾斜し、回転方向に対する傾斜角度αは30度である。従って、上段における撹拌翼7A1と、該撹拌翼7A1よりも(90度の位相差で)回転方向に先行する下段における撹拌翼7A2とが撹拌槽1の内壁に沿った断続的なヘリカルを構成し(第1のヘリカル)、上段における撹拌翼7B1と、該撹拌翼7B1よりも(90度の位相差で)回転方向に先行する下段における撹拌翼7B2とが撹拌槽1の内壁に沿って断続的なヘリカルを構成し(第2のヘリカル)、二つのヘリカルラインが180度の位相差となる、いわゆるダブルヘリカルリボン翼に類似した形態となる。
【0031】
そして、撹拌翼7及びサポートアーム6の先端部には、締結手段としてのボルト(図示しない)を挿通するための貫通孔(図示しない)が設けられ、撹拌翼7は、ボルト・ナットの締結によりサポートアーム6の先端部に取り付けられる。しかも、貫通孔は、ボルトのネジ部よりも大径となっており、サポートアーム6に対する撹拌翼7の取り付け位置を可変にして撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスを調整可能としている。
【0032】
バッフル9は、撹拌翼7との相互作用により撹拌処理物に対してせん断力を生じさせて、混合を促進させるためのもので、撹拌翼7と逆向きに傾斜するよう配設され、上段における撹拌翼7の上位、上段における撹拌翼7と下段における撹拌翼7との間、そして、下段における撹拌翼7の下位(即ち、下段における撹拌翼7とボトムパドル翼11との間)、に三段配設される(上位から下位にかけて三つのバッフル9A1,9A2,9A3)。バッフル9は、パイプバッフルからなり、上段、中段のバッフル9が同じ長さで、これより下段のバッフル9が(下端部が下方に突き出るようにして)長く形成される。
【0033】
バッフル9が上記のように設けられるので、バッフル9を取り付けるサポートアーム8は、上段における撹拌翼7(を取り付けるサポートアーム6)の上位、上段における撹拌翼7(を取り付けるサポートアーム6)と下段における撹拌翼7(を取り付けるサポートアーム6)との間、そして、下段における撹拌翼7(を取り付けるサポートアーム6)の下位(即ち、下段における撹拌翼7(を取り付けるサポートアーム6)とボトムパドル翼11(を取り付けるサポートアーム10)との間)、の三箇所位置にて撹拌槽1の内壁に取り付けられる。
【0034】
従って、上段における撹拌翼7は、上半分が上段のバッフル9、該バッフル9を取り付けるサポートアーム8及び撹拌槽1の内壁で囲まれる領域を回転時に通過し、下半分が中段のバッフル9、該バッフル9を取り付けるサポートアーム8及び撹拌槽1の内壁で囲まれる領域を回転時に通過し、一方、下段における撹拌翼7は、上半分が中段のバッフル9、該バッフル9を取り付けるサポートアーム8及び撹拌槽1の内壁で囲まれる領域を回転時に通過し、下半分が下段のバッフル9、該バッフル9を取り付けるサポートアーム8及び撹拌槽1の内壁で囲まれる領域を回転時に通過することとなる。
【0035】
そして、バッフル9及びサポートアーム8の先端部には、締結手段としてのボルト(図示しない)を挿通するための貫通孔(図示しない)が設けられ、バッフル9は、ボルト・ナットの締結によりサポートアーム8の先端部に取り付けられる。しかも、貫通孔は、ボルトのネジ部よりも大径となっており、サポートアーム8に対するバッフル9の取り付け位置を可変にして撹拌翼7とバッフル9との間のクリアランスを調整可能としている。
【0036】
図1に戻り、ボトムパドル翼11は、撹拌槽1の底部に一対配設される(一対の撹拌翼11A,11B)。より具体的には、撹拌軸2の下端部において、一対のサポートアーム10,10が相反する方向に延出し、一対の撹拌翼11A,11Bが180度の位相差で取り付けられる。また、一対のボトムパドル翼11,11を取り付ける一対のサポートアーム10,10は、下段における一対の撹拌翼7,7を取り付ける一対のサポートアーム6,6と90度の位相差で撹拌軸2に取り付けられるため、下段における一対の撹拌翼7,7と一対のボトムパドル翼11,11とは90度の位相差となる。
【0037】
また、ボトムパドル翼11は、図3にも示す如く、回転方向に対して傾斜してサポートアーム10に支持される。より具体的には、ボトムパドル翼11は、回転方向一方側(図3においては、反時計回り側)が下となるよう傾斜し、回転方向に対する傾斜角度βは45度である。従って、撹拌軸2の下端部から180度の位相差で延出する一対のサポートアーム10,10に対し、一対のボトムパドル翼11,11は、90度の交差角度で取り付けられる。
【0038】
しかも、ボトムパドル翼11は、上記の如くであるので、上段における撹拌翼7A1と下段における撹拌翼7A2とは、該撹拌翼7A2よりも(90度の位相差で)回転方向に先行するボトムパドル翼11Aを含めて上記第1のヘリカルを構成し、一方、上段における撹拌翼7B1と下段における撹拌翼7B2とは、該撹拌翼7B2よりも(90度の位相差で)回転方向に先行するボトムパドル翼11Bを含めて上記第2のヘリカルを構成し、撹拌槽1の直胴部から底部にかけて、二つのヘリカルラインが180度の位相差となる、いわゆるダブルヘリカルリボン翼に類似した形態となる。
【0039】
さらに、ボトムパドル翼11は、下端縁が撹拌槽1の底部の断面形状に沿った平板である、いわゆるパドル翼であり、回転時に下段のバッフル9の下端部が通過するのを許容する凹部11aを上方に備え、下段のバッフル9、該バッフル9を取り付けるサポートアーム8及び撹拌槽1の内壁で囲まれる領域を回転時に通過する延在部11bを径外方に備え、回転時に撹拌槽1の底部から内部に突出する温度センサ(図示しない)が通過するのを許容する切り欠き11cを下方に備える。
【0040】
そして、ボトムパドル翼11は、三つの平板を組み合わせたもので、図4に示す如く、サポートアーム10に取り付けられる第1部材11Xと、該第1部材11Xの径外端部に取り付けられ、上記延在部11bを構成する第2部材Yと、第1部材11Xの下端縁に取り付けられる第3部材Zからなり、上記凹部11aは、第1部材11Xと第2部材11Yとの間に形成され、上記切り欠き11cは、第3部材11Zに形成される。
【0041】
以上、本実施形態に係る撹拌装置は、円筒形の撹拌槽1と、該撹拌槽1の中心部に配設されて槽外から回転可能な撹拌軸2と、撹拌槽1の内壁に沿って断続的なヘリカル状に配設され、それぞれサポートアーム6を介して撹拌軸2に取り付けられる複数の撹拌翼7,…と、該撹拌翼7,…と干渉しない位置にて撹拌槽1の内壁から延出するそれぞれサポートアーム8に取り付けられ、撹拌翼7,…よりも中心側に配設される複数のバッフル9,…とを備える撹拌装置において、撹拌処理物が200poiseを超える粘度での沸騰重合、又は、高粘度の撹拌処理物中に低粘度の撹拌処理物を投入する操作における1万倍を超える粘度差での均一な分散混合を可能とすべく、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7の幅W1が撹拌槽1の内径(直径)の10〜20%の範囲内に設定され、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1及び撹拌槽1の径方向における撹拌翼7とバッフル9との間のクリアランスC2のそれぞれが撹拌槽1の内径(直径)の3%以下の範囲内に設定される構成である。
【0042】
そのため、本実施形態に係る撹拌装置は、撹拌槽1の断面で見れば、撹拌翼7,…が回転して通過する撹拌槽1の外周領域、即ち、撹拌翼7,…による吐出力が直接的に作用する撹拌槽1の外周領域が約51%と大きく、且つ、撹拌翼7,…が通過しない撹拌槽1の中心領域、即ち、撹拌翼7,…による吐出力が直接的に作用しない撹拌槽1の中心領域(約49%)とほぼ等しくなっており、これに伴い、撹拌槽1の中心側において、上向き又は下向きの流動(上昇流又は下降流)が十分且つ広範囲に亘って発生し、その結果、撹拌槽1内の全体に亘って十分に上下方向の循環流を発生させることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る撹拌装置は、掻き上げ回転で、回転撹拌翼7,…による上向きの吐出力が大きく、その結果、撹拌処理物の表面における外周側から中心側への流動が大きくなるため、「溜まり」を解消することができ、しかも、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1が撹拌槽1の内径(直径)の3%以下の範囲内に設定されており、その結果、掻き下げ回転で、撹拌翼7,…による吐出力が撹拌槽1の内壁に好適に作用するため、「スリップ」を解消することができる。
【0044】
従って、本実施形態に係る撹拌装置によると、撹拌槽1内の全体に亘って十分に上下方向の循環流を発生させることができ、その結果、高粘度の撹拌処理物であっても全体としての混合特性が良好となるばかりでなく、粘度が異なる二種以上の撹拌処理物を混合する場合においては、低粘度の撹拌処理物の「溜まり」や撹拌処理物間の「スリップ」を効果的に抑制することができ、その結果、混合不良が発生するのを防止できて全体としての混合特性が良好となる。
【0045】
具体的には、特許文献4に記載の撹拌装置によると、撹拌処理物の粘度は200poiseが限度であったが、本実施形態に係る撹拌装置によると、10000poiseまでの高粘度混合が可能となる。そこで、例えば200poiseの粘度での沸騰重合が可能となる。また、特許文献4に記載の撹拌装置によると、粘度差は20万倍(例えば、20,000cp 対 0.1cp )が限度であったが、本実施形態に係る撹拌装置によると、150万倍(例えば、150,000cp 対 0.1cp)までの異粘度混合が対応可能となる。そこで、高粘度の液中に低粘度の液を投入する操作における例えば20万倍を超える粘度差での均一な分散混合が可能となる。
【0046】
また、本実施形態に係る撹拌装置は、撹拌槽1の底部に沿って配設され、撹拌翼7,…と同じく回転方向に対して傾斜させて撹拌軸2に取り付けられるボトムパドル翼11をさらに備える。そして、ボトムパドル翼11は、回転時に最下位のバッフル9A3の下端部を通過させるための凹部11aを上方に備え、最下位のバッフル9A3、該バッフル9A3を取り付けるサポートアーム8及び撹拌槽1の内壁で囲まれる領域を回転時に通過する延在部11bを径外方に備え、撹拌翼7,…のヘリカルラインの延長線上又はその近傍に配設され、且つ該ヘリカルラインの延長線に沿って傾斜する。しかも、ボトムパドル翼11の回転方向に対する傾斜角度βは、撹拌翼7の回転方向に対する傾斜角度αよりも大きくなるように設定される。これらの構成により、掻き上げ回転、掻き下げ回転を問わず、ボトムパドル翼11,11が撹拌槽1の底部に停滞沈着する撹拌処理物を強制的に上方に押し上げることで、高粘度の撹拌処理物や粘度が異なる二種以上の撹拌処理物の混合特性がさらに良好となる。
【0047】
また、本実施形態に係る撹拌装置は、少なくとも最上位のバッフル9A1は、撹拌槽1に装填される撹拌処理物の液面Rにかかるよう、最上位の撹拌翼7A1,7B1よりも上位に配設されるため、掻き下げ回転の場合、「スリップ」が解消され、掻き上げ回転の場合、「溜まり」が解消され、いずれを問わず、さらに良好な異粘度混合を実現する点で好ましい。
【0048】
また、本実施形態に係る撹拌装置は、撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1を調整可能とすべく、サポートアーム6に対する撹拌翼7の取り付け位置が可変とされる。クリアランスC1が広いと、動力不足、流動停滞、伝熱低下を引き起こし、一方、クリアランスC1が狭いと、オーバーロードを引き起こすおそれがあるが、かかる構成によると、クリアランスC1を適正な状態に調整することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る撹拌装置は、撹拌翼7とバッフル9との間のクリアランスC2を調整可能とすべく、サポートアーム8に対するバッフル9の取り付け位置が可変とされる。この点によるメリットは、撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1を調整可能とする上記構成と同様である。
【0050】
尚、本実施形態に係る撹拌装置は、次の実施形態においても同様であるが、沸騰重合を行う場合は、撹拌処理物の送り方向が上向きとなる掻き上げ回転で行うことが好ましい。これは、撹拌軸2の周辺で発生した気泡を撹拌槽1内に留めることがないばかりでなく、発生した気泡を撹拌のせん断力により細かくすることができ、その結果、撹拌処理物の突沸を防止できるからである。ここで、沸騰重合とは、撹拌処理物を沸騰させつつ重合させる方法である。撹拌処理物は沸騰させることで重合熱を除去することができ、重合を安定して行うことができる。さらに、沸騰重合を行う場合には、撹拌槽1の直径と高さの比、即ち、図1(及び図5)を参照して、撹拌槽1の内径(直径)Dに対する液面高さHの比を0.6〜1.5とすると効率的である。沸騰重合で重合させることができる撹拌処理物としては、特に限定するものではないが、スチレン、アクリルエステル、メタクリルエステルなどの単量体や、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのゴム、及びこれらの共重合体などが挙げられる。
【0051】
また、本実施形態に係る撹拌装置は、これも同じく次の実施形態においても同様であるが、その撹拌動力を0.2〜5.0kW/m3とすることが好ましい。この範囲に設定することによって、効率的に撹拌することができるばかりでなく、混合効果に対するエネルギロスを抑えることができる。逆に、0.2を下回ると、十分に発達した上下方向の循環流が得られず、所望の性能が得られないという問題があり、一方、5.0を上回ると、入力エネルギ増加に見合うだけの混合性能の改善は見られず、経済的に好ましくなく、しかも、動力が増加された分だけ撹拌による発熱が起こり、熱収支が成立しづらくなるため、機器として成立が難しくなるという問題がある。
【0052】
<第二実施形態>
以下、本発明の他実施形態に係る撹拌装置について図5〜図8を参酌しつつ説明する。尚、本実施形態に係る撹拌装置と第一実施形態に係る撹拌装置とが異なる点は、ボトム翼の種類であり、それ以外については基本的は同じであるため、同じ構成については同じ符号を採番し、且つその説明を割愛する。
【0053】
本実施形態に係る撹拌装置のボトム翼は、撹拌槽1の底部に対応するボトムリボン翼14であり、撹拌軸2の下端部から突設されるサポートアーム15にボトムリボン翼14の先端(下端)上面が取り付けられる。ボトムリボン翼14は、ヘリカル面を形成し、撹拌槽1の底部中心側に延びるようにして設けられるヘリカルリボン翼である。言い換えれば、ボトムリボン翼14は、撹拌槽1の直胴部と底部との境界位置に位置する最下位のサポートアーム10の先端部から始まり、底部中心近傍に至る区間に配設される。
【0054】
また、ボトムリボン翼14は、先端に向かって漸次径内方向に変位し且つ先端に向かって漸次幅狭となる平板状のリボン14’(図8(イ)を参照)に対し、幅方向における外側が下となり且つ先端に向かって漸次ひねり角度が大きくなるようにしてひねりを加えた形状(図8(ロ)を参照)からなる。因みに、ボトムリボン翼14の先端(下端)におけるひねり角度(最終的なひねり角度)は45度に設定される。
【0055】
サポートアーム15は、最下位のサポートアーム10と同じ高さ位置であって、90度の位相差で配設される。しかも、サポートアーム15は、2条のボトムリボン翼14,14(一対のボトムリボン翼14A,14B)の各先端を支持すべく、一対設けられる。即ち、一対のサポートアーム15は、撹拌軸2から相反する方向に延出して180度の位相差で且つ最下位における一対のサポートアーム10,10と90度の位相差で配設され、2条のボトムリボン翼14,14が互いに180度の位相差となるように支持する。
【0056】
しかも、ボトムリボン翼14は、上記の如くであるので、上段における撹拌翼7A1と下段における撹拌翼7A2とは、該撹拌翼7A2よりも(90度の位相差で)回転方向に先行するボトムリボン翼14Aを含めて上記第1のヘリカルを構成し、一方、上段における撹拌翼7B1と下段における撹拌翼7B2とは、該撹拌翼7B2よりも(90度の位相差で)回転方向に先行するボトムリボン翼14Bを含めて上記第2のヘリカルを構成し、撹拌槽1の直胴部から底部にかけて、二つのヘリカルラインが180度の位相差となる、いわゆるダブルヘリカルリボン翼に類似した形態となる。
【0057】
また、各サポートアーム15は、斜め径外方向に垂下される垂下部を有し、該垂下部の先端が回転方向に対して45度にカットされることで、ボトムリボン翼14の先端上面に当接可能な端面を有することとなり、この当接状態でボトムリボン翼14がサポートアーム15に支持される。尚、本実施形態においては、サポートアーム15は、直管を所定箇所にて屈曲することにより垂下部が形成されるが、この曲げ量は、リボン14’にひねりを加えることによって先端位置が下がったボトムリボン翼14のその高低差に対応して設定される。
【0058】
以上、本実施形態に係る撹拌装置は、第一実施形態に係る撹拌装置と同様、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7の幅W1が撹拌槽1の内径(直径)の10〜20%の範囲内に設定され、撹拌槽1の径方向における撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランスC1が撹拌槽1の内径(直径)の3%以下の範囲内に設定される構成であるため、撹拌槽1内の全体に亘って十分に上下方向の循環流を発生させることができ、その結果、高粘度の撹拌処理物であっても全体としての混合特性が良好となるばかりでなく、粘度が異なる二種以上の撹拌処理物を混合する場合においては、低粘度の撹拌処理物の「溜まり」や撹拌処理物間の「スリップ」を効果的に抑制することができ、その結果、混合不良が発生するのを防止できて全体としての混合特性が良好となる。
【0059】
また、本実施形態に係る撹拌装置は、撹拌槽1の底部に沿って配設され、撹拌翼7,…と同じく回転方向に対して傾斜させて撹拌軸2に取り付けられるボトムリボン翼14をさらに備える。そして、ボトムリボン翼14は、先端に向かって漸次径内方向に変位し且つ先端に向かって漸次幅狭となる平板状のリボン14’に対し、幅方向における外側が下となり且つ先端に向かって漸次ひねり角度が大きくなるようにしてひねりを加えた形状からなる。また、撹拌軸2の下端部からサポートアーム5が延出され、ボトムリボン翼14の先端上面にサポートアーム5が取り付けられる。これらの構成により、掻き上げ回転、掻き下げ回転を問わず、ボトムリボン翼14,14が撹拌槽1の底部に停滞沈着する撹拌処理物を強制的に上方に押し上げることで、高粘度の撹拌処理物や粘度が異なる二種以上の撹拌処理物の混合特性がさらに良好となる。
【0060】
尚、本発明に係る撹拌装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、撹拌翼7が二段で配設され、バッフル9が三段で配設されるが、これに限定されず、本発明がこれよりも多くのものを含み得るのは言うまでもない。また、段になっていることも必須ではなく、従って、二条の断続的なヘリカルである場合、一のヘリカルにおける撹拌翼7と他のヘリカルにおける撹拌翼7とが軸長方向に位置がずれていても構わない。
【0062】
また、上記実施形態においては、撹拌翼7がひねりの無い平板で構成されるが、例えば、特許文献4に係る撹拌装置のように撹拌翼がヘリカルラインに沿ってひねられた曲面板で構成されるものであってもよい。本発明に係る「ヘリカル状」とは、「平板」、「曲面板」の何れをも含む趣旨である。但し、平板の方が加工・作製が簡単となる分、コストを低減することができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、撹拌翼7の傾斜角度αが30度とされているが、これには限定されず、適宜の角度範囲から選択可能である。
【0064】
また、上記実施形態においては、最上位のバッフル9A1が撹拌槽1に装填される撹拌処理物の液面Rにかかるよう、液量が調整されるが、最上位の撹拌翼7A1,7B1及び最上位のバッフル9A1のかみ合い領域が撹拌槽1に装填される撹拌処理物の液面Rにかかるようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、複数のバッフル9,…が縦に並んで配設され、回転方向で見れば、一箇所にのみ配設されるが、回転方向に所定間隔を有して(例えば、180度の位相差となる対向位置や120度の位相差となる三等分位置)複数を配設するようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、撹拌軸2を槽外から回転駆動するための駆動装置を撹拌槽1の底部側に設けているが、撹拌槽1の頂部側に設けてもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、撹拌槽1の底部が断面形状が半楕円形のものを採用するが、皿形や、鈍角の頂角を有する円錐形の底部であってもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、撹拌槽1の底部に、ボトムパドル翼11やボトムリボン翼14を配置するようにしたが、これには限定されず、他の形態の翼を配置するようにしてもよいし、あるいは、これら翼を撹拌槽1の底部に配置しなくてもよい。
【0069】
また、上記実施形態においては、バッフル9を取り付けるサポートアーム8が撹拌槽1の内壁に取り付けられることにより、バッフル9の取り付け角度は固定であったが、図9に示す如く、サポートアーム8の取り付け角度を変更することにより、バッフル9は、撹拌翼7の傾斜角度αと平行な場合を0度として、−10度〜垂直方向(即ち、90度)の範囲内、より好ましくは、−10〜15度の範囲内で変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第一実施形態に係る撹拌装置の縦断面図を示す。
【図2】(イ)は、図1のA−A線断面図、(ロ)は、(イ)のC矢視図を示す。
【図3】(イ)は、図1のB−B線断面図、(ロ)は、(イ)のD矢視図を示す。
【図4】同撹拌装置に用いられるボトムパドル翼の分解図を示す。
【図5】第二実施形態に係る撹拌装置の縦断面図を示す。
【図6】図5のE−E線断面図を示す。
【図7】同撹拌装置の要部縦断面図であって、図5のF矢視図を示す。
【図8】同撹拌装置に用いられるヘリカルパドル翼の下部形状であって、(イ)は、ひねりを加える前の状態図、(ロ)は、ひねりを加えた後の状態図、を示す。
【図9】撹拌翼に対してバッフルがどのような角度範囲で配設されるかの状態図を示す。
【符号の説明】
【0071】
1…撹拌槽、2…撹拌軸、3…軸受、6…サポートアーム、7(7A1,7A2,7B1,7B2)…撹拌翼、8…サポートアーム、9…バッフル(9A1,9A2,9A3)、10…サポートアーム、11(11A,11B)…ボトムパドル翼、11a…凹部、11b…延在部、14(14A,14B)…ボトムリボン翼、15…サポートアーム、D…撹拌槽の内径(直径)、H…液面高さ、R…液面、W1…撹拌槽1の径方向における撹拌翼7の幅、W2…撹拌槽1の径方向におけるバッフル9の幅、C1…撹拌槽1の径方向における撹拌翼7と撹拌槽1の内壁との間のクリアランス、C2…撹拌槽1の径方向における撹拌翼7とバッフル9との間のクリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の撹拌槽(1)と、該撹拌槽(1)の中心部に配設されて槽外から回転可能な撹拌軸(2)と、撹拌槽(1)の内壁に沿って断続的なヘリカル状に配設され、それぞれサポートアーム(6)を介して撹拌軸(2)に取り付けられる複数の撹拌翼(7,…)と、該撹拌翼(7,…)と干渉しない位置にて撹拌槽(1)の内壁から延出するそれぞれサポートアーム(8)に取り付けられ、撹拌翼(7,…)よりも中心側に配設される複数のバッフル(9,…)とを備える撹拌装置において、撹拌槽(1)の径方向における撹拌翼(7)の幅(W1)が撹拌槽(1)の内径(直径)の10〜20%の範囲内に設定され、撹拌槽(1)の径方向における撹拌翼(7)と撹拌槽(1)の内壁との間のクリアランス(C1)及び撹拌槽(1)の径方向における撹拌翼(7)とバッフル(9)との間のクリアランス(C2)のそれぞれが撹拌槽(1)の内径(直径)の3%以下の範囲内に設定されることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
撹拌槽(1)の径方向における撹拌翼(7)の幅(W1)、撹拌槽(1)の径方向におけるバッフル(9)の幅(W2)、撹拌槽(1)の径方向における撹拌翼(7)と撹拌槽(1)の内壁との間のクリアランス(C1)、撹拌槽(1)の径方向における撹拌翼(7)とバッフル(9)との間のクリアランス(C2)、の四つの和が撹拌槽(1)の内径(直径)の15〜30%の範囲内に設定される請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
バッフル(9)が撹拌翼(7)の傾斜角度(α)に対して−10〜90度の角度範囲となるよう配設される請求項1又は2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
バッフル(9)が撹拌翼(7)の傾斜角度(α)に対して−10〜15度の角度範囲となるよう配設される請求項3に記載の撹拌装置。
【請求項5】
撹拌翼(7)又はバッフル(9)の上端が撹拌槽(1)に装填される撹拌処理物の表面から突出するように配設される請求項1〜4の何れか1項に記載の撹拌装置。
【請求項6】
撹拌槽(1)の底部に沿って配設され、垂直、又は、撹拌翼(7,…)と同じ方向に傾斜させて撹拌軸(2)に取り付けられるボトムパドル翼(11)をさらに備える請求項1〜5の何れか1項に記載の撹拌装置。
【請求項7】
撹拌槽(1)の底部に沿って配設され、垂直、又は、撹拌翼(7,…)と同じ方向に傾斜させて撹拌軸(2)に取り付けられる、ダブルヘリカルからなるボトムリボン翼(14,14)をさらに備える請求項1〜6の何れか1項に記載の撹拌装置。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の撹拌装置を用いて沸騰重合を行う際に、その単位体積あたりの撹拌動力を0.2〜5.0kW/m3として撹拌することを特徴とする撹拌方法。
【請求項9】
請求項1〜7に記載の撹拌装置を用いて、高粘度の撹拌処理物中にその粘度差が1万倍を超える低粘度の撹拌処理物を投入して分散混合をする際に、その単位体積あたりの撹拌動力を0.2〜5.0kW/m3として撹拌することを特徴とする撹拌方法。
【請求項10】
撹拌処理物が200〜10000poiseの粘度のものである請求項8又は9に記載の撹拌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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