説明

操作監視システムおよび操作監視プログラム

【課題】操作が行われた環境を判断し、その操作が誤操作である誤操作の可能性を判定する技術を提供する。
【解決手段】端末Cにおける操作及び処理を示す操作情報を記録する操作情報記録部21を備え、操作検出部22が端末Cから送信される操作情報から所定の操作を検出すると、環境情報生成部23が操作情報記録部21から端末Cにおいて前記所定の操作が行われた時点以前の操作情報を抽出し、その抽出した操作情報を用いることにより、所定の操作が行われた時点の端末Cの操作環境を特定して、その操作環境に関する情報である環境情報を生成する。誤操作判定部24は、所定の操作の操作情報と環境情報とに基づいて、所定の操作による誤操作の可能性を判定し、制御部25がその判定結果に基づき所定の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに接続された端末における操作を監視する技術に関し、特に端末にける誤操作の可能性を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理装置の普及に伴い、様々な用途にコンピュータを始めとする情報処理装置が利用され、利便性が向上している。その反面、様々なレベルのコンピュータリテラシーのユーザがコンピュータ等を利用するようになり、誤操作や不正操作等の問題が発生している。誤操作や不正操作は、情報漏洩や情報の消滅につながるため、企業等にとっては非常重大な問題となっている。
【0003】
このような問題を解決するために、誤操作や不正操作を検出する技術に関する様々な検討が行われている。例えば、利用者からの操作を受け付ける操作受付手段と、利用者識別手段で識別された利用者毎の操作履歴を蓄積する履歴蓄積手段と、該履歴蓄積手段で蓄積された過去の操作履歴に基づいて、前記操作受付手段で受け付けた操作が過去の操作履歴と異なるか否かを判定する操作判定手段と、該操作判定手段での判定の結果、過去の操作履歴と異なった場合に、前記操作受付手段で受け付けた操作が誤操作であるとみなし、前記利用者に報知する報知手段とを備えたデータ処理装置が提案されている(特許文献1参照)。このデータ処理装置では、ユーザから受け付けた操作と当該ユーザの過去の操作とが比較され、これらが異なる場合には、受け付けた操作が誤操作であると判定し、ユーザにその旨が報知される。
【0004】
また、特定のイベントが発生したことを検知した際に、そのイベントの前後に発生したイベントの系列と予め設定した不正操作等のイベントの系列とを比較することにより、不正イベントを検出するシステム監査装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−229652号公報(段落番号0012、0021、図2)
【特許文献2】特開2005−222216号公報(段落番号0006、0008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、受け付けた操作と過去の操作履歴とが一致するか否かのみに基づいて誤操作が判定されているため、正確に誤操作を判定することは困難である。また、過去に行っていない操作は誤操作と判定されるため、正規の操作であっても過去に行っていない操作は誤操作と判定されてしまう。
【0007】
また、特許文献2の技術では、管理者が予め不正操作等のイベント系列を設定しておく必要がある。さらに、設定したイベント系列と異なるイベント系列の不正操作等を検出することができない。
【0008】
本発明の課題は、上記実状に鑑み、操作が行われた環境を判断し、その操作が誤操作である可能性を判定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の操作監視システムは、端末における操作に係るイベント及び/または処理を示す操作情報を用いて誤操作を監視する操作監視システムであって、前記操作情報を記録する操作情報記録部と、前記操作情報から所定の操作を検出する操作検出部と、前記操作情報記録部から前記端末において前記所定の操作が行われる前の操作情報を抽出し、当該抽出した操作情報を用いることにより、前記所定の操作が行われた際の端末の操作環境を特定して、当該操作環境に関する情報である環境情報を生成する環境情報生成部と、前記所定の操作の操作情報と前記環境情報とに基づいて、前記所定の操作による誤操作の可能性を判定する誤操作判定部と、前記誤操作判定部による判定結果に応じた所定の制御を行う制御部と、を備えている。
【0010】
誤操作はその操作が行われる環境(以下、操作環境と称する)に起因して生じることが多い。そのため、この構成では、所定の操作を検出すると、その所定の操作の際の端末の操作環境を表す環境情報が生成され、所定の操作の操作情報と環境情報により誤操作の可能性が判定される。これにより、その操作が行われた操作環境に基づき、的確に誤操作の可能性を判定することができる。
【0011】
誤操作の生じる可能性は、操作対象の視認性や操作性に影響されることがある。例えば、表示されているウィンドウが小さい場合や他のウィンドウと重なっている等の場合には、視認性や操作性が低下するために、誤操作が生じやすくなる。そのため、本発明の操作監視システムの好適な実施形態の一つでは、前記操作情報には処理を実行するアプリケーションの表示態様を表すウィンドウ情報が含まれ、前記環境情報生成部は、前記ウィンドウ情報に基づき前記環境情報を生成する。なお、本発明における表示態様とは、座標、サイズ、面積、形状、前面/背面等の表示状態を表すものである。
【0012】
この構成では、誤操作を生じさせる要因の一つであるアプリケーションのウィンドウ情報に基づき環境情報が生成されるため、ウィンドウの位置や大きさ等を誤操作の判定に反映させることができる。
【0013】
さらに、本発明の操作監視システムの好適な実施形態の一つでは、前記環境情報生成部は、前記操作情報に基づき、完結していない作業を検出し、当該検出結果に応じて前記環境情報を生成する。
【0014】
誤操作は、一連の操作の途中での割り込み操作が原因になることがある。このような場合、操作者の思考や記憶の混乱や誤認識により操作を誤ることが多い。つまり、中途半端な操作が多い場合や似ている操作環境が多い場合などにより誤操作が高まるといえる。そのため、この構成では、環境情報は、操作情報に基づいて検出された完結していない作業に応じて生成され、完結していない作業がある操作環境を誤操作の判定に反映させることで、より的確に誤操作を判定することができる。
【0015】
上述した本発明による操作監視システムの技術的特徴は、同様の操作監視プログラムにも適用可能である。例えば、端末における操作に係るイベント及び/又は処理を示す操作情報を記録する操作情報記録部を備え、端末における誤操作を監視する操作監視システムのための操作監視プログラムであって、前記操作情報から所定の操作を検出する操作情報検出機能と、前記操作情報記録部から前記端末において前記所定の操作が行われる前の操作情報を抽出し、当該抽出した操作情報を用いることにより、前記所定の操作が行われた際の端末の操作環境を特定して、当該操作環境に関する情報である環境情報を生成する環境情報生成機能と、前記所定の操作の操作情報と前記環境情報とに基づいて、前記所定の操作による誤操作の可能性を判定する誤操作判定機能と、前記判定結果に応じた所定の制御を行う制御機能と、をコンピュータに実現する。当然ながら、このような操作監視プログラムも上述した操作監視システムで述べた作用効果を得ることができ、さらに上述した付加的技術を組み込むことも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。本実施形態における本発明の操作監視システムは、図1に示すように、汎用コンピュータでなるサーバSと汎用コンピュータでなる端末CとがネットワークNを介して接続されることにより構成されている。サーバSおよび端末Cはそれぞれ、ディスプレイ2、5や入力機器3、6(キーボード3a、6aやマウス3b、6b等)を備えている。
【0017】
図2は、本発明の操作監視システムを構成するサーバSおよび端末Cの機能ブロック図を示している。端末Cは、端末における操作や処理の内容を表す操作情報を生成し、ネットワークI/F10を介してサーバSに送信する操作情報生成部11を備えている。
【0018】
サーバSは、ネットワークI/F20を介して端末Cから送信される操作情報を保存する操作情報保存部21、端末Cから送信された操作情報から所定の操作に係るものを検出する操作検出部22、端末Cの所定の操作が行われる前の操作情報を抽出し、前記所定の操作が行われた際の端末Cの操作環境を表す環境情報を生成する環境情報生成部23、操作検出部22により検出された所定の操作の操作情報と環境情報生成部23により生成された操作情報とに基づき、所定操作の誤操作の可能性を判定する誤操作判定部24と、誤操作判定部24の判定結果に基づき所定の制御を行う制御部25、および後述する各種評価テーブルを記憶している評価値記憶部30を備えている。
【0019】
通常、操作情報生成部11、操作検出部22、環境情報生成部23、誤操作判定部24および制御部25は、その処理を実行する手段(プログラムやモジュール等)がハードウェアに読み込まれることでその処理が実行されるが、これらをハードウェアとの組み合わせにより構成しても良いし、ロジック等を組み合わせたハードウェアのみで構成しても構わない。
【0020】
操作情報生成部11は、所定のタイミングで端末Cにおける操作や処理の内容を表す操作情報を生成し、ネットワークI/F10を介してサーバSに送信する。なお、所定のタイミングは任意でよく、一定間隔毎、所定の操作や処理の都度、様々なタイミングを用いることができる。また、生成された操作情報をサーバSに送信するタイミングも、操作情報を生成する都度、所定時間分の操作情報を一時記憶しておき、所定時間経過後送信する等、適宜変更が可能である。
【0021】
本実施形態における操作情報とは、端末Cにおけるユーザの明示的な操作に基づき発生するイベント(通知や要求等)を表す操作イベント情報と、その通知や要求に従って実行された処理や操作による通知や要求以外に起因し端末C内で実行された処理を表す操作ログ情報とを含む概念である。例えば、ユーザがファイルアイコンをダブルクリックしたとすると、ダブルクリックされたことの通知を表す操作イベント情報やダブルクリックされたファイルアイコンに対応するファイルを開く要求を表す操作イベント情報が生成され、そのファイルを開いたことを表す操作ログ情報が生成される。すなわち、操作イベント情報により処理が実行される前の情報を知ることができ、操作ログ情報により実行された処理の内容を知ることができる。
【0022】
また、操作イベント情報には、端末識別情報、ユーザ識別情報、日時情報、イベント内容等が含まれ、操作ログ情報には、端末識別情報、ユーザ識別情報、日時情報、処理内容等が含まれている。端末識別情報とは、操作イベント情報や操作ログ情報が生成された端末Cを一意に特定可能な情報であり、IPアドレス、MACアドレス、端末名、端末C毎に排他的に割り当てられた数値等を用いることができる。ユーザ識別情報とは、操作イベント情報や操作ログ情報が生成された際に端末Cを操作したユーザを一意に特定可能な情報であり、ユーザ名、ユーザ毎に排他的に割り当てられた数値等を用いることができる。また、日時情報とは、操作イベント情報や操作ログ情報が生成された日時を表すものであり、日時を表す文字列や特定日時(例えば、1970年1月1日午前0時)からの経過時間を表す数値等を用いることができる。なお、各項目の要否は、処理の内容や構成等の各種条件に応じて適宜変更可能である。
【0023】
イベント内容とは、通知や要求の内容を表すものであり、例えば、マウスクリックに起因するイベント情報の場合には、マウスクリックが行われた旨、クリックされた座標等を含めることができ、ファイルを開く要求を表すイベント情報の場合には、ファイルを開く旨、ファイル名等を含めることができる。当然ながら、イベント内容は、その通知や要求に応じて適宜変更可能である。
【0024】
一方、処理内容とは、実行された処理の内容を示すものであり、例えば、ファイルを開く要求に対する処理の場合には、ファイルを開いた旨、ファイルを開いたアプリケーション名、ファイル名等を含めることができる。当然ながら、処理内容は、その処理に応じて適宜変更可能である。
【0025】
なお、以下の説明では、特に断りがない限り、操作情報とは操作イベント情報と操作ログ情報を指し、操作内容とはイベント内容または処理内容を指すものとする。
【0026】
操作情報保存部21は、端末Cから送信される操作情報を記録保存する。
【0027】
操作検出部22は、端末Cから送信される操作情報から所定の操作に係る操作情報を検出する。所定の操作情報を検出した際には、その操作情報を特定操作情報として環境情報生成部23および誤操作判定部24に送る。
【0028】
環境情報生成部23は、取得した特定操作情報に基づき、操作情報保存部21から操作情報を抽出する。具体的には、特定操作情報の端末識別情報と同一の端末識別情報を持ち、特定操作情報のユーザ識別情報と同一のユーザ識別情報を持ち、特定操作情報の日時情報以前の日時情報を持つ操作情報が抽出される。これにより、特定操作情報に係る端末(以下、特定端末と称する)Cにおいて、特定操作情報に係る操作(以下、特定操作と称する)が行われた以前の操作情報が抽出されることとなる。
【0029】
次に、環境情報生成部23は、抽出した操作情報に基づき、特定操作が行われた時点の特定端末Cの操作環境を表す環境情報を生成する。なお、本実施形態では、操作環境とは、端末Cのハードウェア環境およびソフトウェア環境を含んでいる。生成された環境情報は、誤操作判定部24に送られる。
【0030】
特定操作情報と環境情報を取得した誤操作判定部24は、特定操作情報の評価値と環境情報の評価値を取得し、これらの評価値に基づき特定操作の誤操作の可能性を示す誤操作評価値を判定する。判定された誤操作評価値は、制御部25に送られる。
【0031】
誤操作評価値を取得した制御部25は、誤操作評価値と所定の閾値THとを比較し、誤操作評価値が閾値THよりも大きければ、所定の制御を行う。なお、所定の閾値THを超えた場合にのみ制御を行うのではなく、誤操作評価値に応じた制御内容を定めておき、取得した誤操作評価値に応じて制御を行う構成とすることもできる。
【0032】
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施形態の処理の流れを説明する。なお、以下の処理の実行に先立ち、各端末Cから送信された操作情報がサーバSの操作情報保存部21に保存されているものとする。また、本実施形態では、操作イベント情報および操作ログ情報が保存されているが、いずれか一方のみを保存する構成としても構わない。
【0033】
端末Cから送信された操作情報は、ネットワークI/F20を介して、操作情報保存部21および操作検出部22に渡される(#01)。操作情報保存部21では、取得した操作情報は記録保存される。一方、操作検出部22では、取得した操作情報の操作内容が所定の操作であるか否かを判定する(#02)。本実施形態では、所定の操作として「ファイルコピー」「ファイル削除」「ファイル貼り付け」等のファイル操作や「文字列コピー」「文字列貼り付け」等のクリップボード操作等を用いるが、他の操作を所定の操作としても構わない。操作検出部22により、取得された操作情報が所定の操作に係るものであると判定されると(#02のYes分岐)、その操作情報は特定操作情報として、環境情報生成部23および誤操作判定部24に送られる。
【0034】
特定操作情報を取得した環境情報生成部23は、特定操作情報に基づき環境情報を生成するための操作情報を操作情報保存部21から抽出する(#03)。上述したように、環境情報とは、特定操作が行われた時点の特定端末Cのハードウェアおよびソフトウェアの環境を表す情報である。したがって、環境情報生成部23は、操作情報保存部21から、特定操作情報の端末識別情報と同一の端末識別情報を持ち、特定操作情報のユーザ識別情報と同一のユーザ識別情報を持ち、特定操作情報の日時情報以前の日時情報を持つ操作情報を抽出する。なお、このとき、操作ログ情報のみを抽出すると実行された処理に基づき環境情報を生成できるため、好適である。
【0035】
上述の処理により操作情報を抽出した環境情報生成部23は、抽出した操作情報に基づき、環境情報を生成する(#04)。上述したように、本実施形態における操作環境とは、特定操作が行われた際の端末Cのハードウェアおよびソフトウェア環境を意味しており、所定の過去の日時から特定操作時点の間で、抽出した操作情報の操作内容を確認することにより、特定操作時に使用されているソフトウェアやハードウェアの情報から操作環境を特定することができる。例えば、USBメモリ等の外部記録媒体、通信カード等の通信機器を始めとする様々なハードウェアの使用状況、ファイルの使用状況(編集中等)、アプリケーションの使用状況等、さらには、それらの使用における付加情報等をも含めて操作環境として用いることができる。
【0036】
例えば、USBメモリが端末Cに接続された際には、「USBメモリの挿入」(開始処理)から「USBメモリの取り外し」(終了処理)までが一連の処理であると考えられ、また、アプリケーションの使用に関しては、「アプリケーションの起動」(開始処理)から「アプリケーションの終了」(終了処理)までが一連の処理であると考えられる。
【0037】
環境情報生成部23により図4に示す操作情報が抽出されたとする。なお、この図では、上から下に向かって時間情報の昇順に整列しており、操作内容(処理の内容、アプリケーション名、操作対象名、付加情報)のみを記載している。このとき、No.14の操作情報の直後に特定操作が行われたとすると、No.14からNo.1に向けて操作情報の操作内容が確認され、No.13は操作の内容が「メーラ起動」(開始処理)であるが、それ以降に「メーラ終了」(終了処理)がないため、「メーラの使用」は完了していないと判定され、操作環境として「メーラ(アプリケーション)使用中」を特定できる。同様に、No.3は操作の内容が、「USBメモリ挿入」(開始処理)であるが、それ以降に「USBメモリ取り外し」(終了処理)がないため、「USBメモリの使用」は完了しておらず、操作環境として「USBメモリ使用中」を特定できる。一方、No.10は操作内容が「アプリケーションX」に対する「アプリケーション終了」(終了処理)であり、No.6は操作内容が「アプリケーションX」に対する「アプリケーション起動」(開始処理)であるため、「アプリケーションXの使用」は完了しており、操作環境としては特定されない。
【0038】
また、アプリケーションの起動中において、完了していない特定の作業を操作環境として特定することもできる。例えば、ワードプロセッサソフトウェアや表計算ソフトウェア等では、操作環境としてあるファイルが編集中であることを特定することができ、メーラではメールを作成中であることを特定することができる。No.14は「メール新規作成」(開始処理)であるが、それ以降に対応する「メール送信」(終了処理)がないため、「メール作成」作業は完了しておらず、操作環境として「メール作成中」が特定される。一方、No.9が「ファイルD」に対する「ファイルを閉じる」(終了処理)であり、No.7が「ファイルD」に対する「ファイルを開く」(開始処理)であるため、「ファイルDの編集」は完了しており、操作環境としては特定されない。なお、操作環境の特定方法は上述の方法に限定されるものではなく、他の方法を用いても構わない。
【0039】
環境情報生成部23は、上述のように特定操作が行われた際の端末Cの操作環境を特定し、特定した操作環境に基づき環境情報を生成する(#04)。一般的には、特定操作が行われた際の操作環境は複数あるため、各々の操作環境について環境情報(以下、個別環境情報と称する)を求め、それらを統合した情報を環境情報として用いる。
【0040】
本実施形態では、評価値記憶部30が、操作環境と操作環境の評価値(以下、環境評価値と称する)を関連付けたテーブル(以下、環境評価値テーブルと称する。図5、6参照)を保持しており、特定した操作環境に基づき、環境評価値テーブルから取得した環境評価値を個別環境情報とする。例えば、操作環境が「USBメモリ使用」の場合には、図5の環境評価値テーブルから、環境評価値として3が取得される。同様に、操作環境が「メール作成中」であれば、環境評価値として3が取得される。
【0041】
なお、上述の処理により特定された操作環境だけでなく、操作環境の付加的な情報をも用いて個別環境評価値を取得することができる。図6は、操作環境とその操作環境の付加情報に基づき環境評価値を規定した環境評価値テーブルの例である。例えば、操作環境が「ファイル管理アプリケーション使用中」の場合には、開いているフォルダ数を加味した個別環境評価値を取得することができる。例えば、フォルダを5つ開いている場合には、図6の環境評価値テーブルから個別環境評価値として2が取得される。
【0042】
また、誤操作はアプリケーションの表示態様(ウィンドウの大きさや位置等)に起因する場合も考えられる。例えば、ウィンドウサイズが小さい場合、ウィンドウが他のウィンドウとオーバーラップする場合、ウィンドウ位置がディスプレイ5の周辺部に近い位置に配されている場合等には、視認性や操作性が低下すること等に起因する誤操作が生じやすくなる。そのため、本実施形態では、操作環境が「アプリケーション使用中」の場合には、アプリケーションのウィンドウ情報を加味している。例えば、図6の環境評価値テーブルでは、ウィンドウサイズが「所定サイズ以下」であれば環境評価値は2、「所定サイズ以上」であれば1となっている。この他、ウィンドウの絶対位置に基づく評価値やウィンドウの位置やサイズに基づき、他のウィンドウとのオーバーラップ面積やオーバーラップ数を求め、これらに応じた環境評価値を設定し、用いることもできる。前者の環境評価値は、ウィンドウの重心の絶対位置がディスプレイ5の中央に近いほど小さく、周辺部に近いほど大きく設定され、後者の環境評価値は、他のウィンドウとのオーバーラップ面積が大きい又はオーバーラップ数が多いほど大きくなるように設定すると好適である。また、ウィンドウのサイズは、アプリケーションの種類により適した大きさが異なるため、アプリケーションの種類毎に所定サイズを異ならせる構成としても構わない。また、ウィンドウサイズは、特定端末Cのディスプレイ5の解像度に対する相対値とすると、ディスプレイ5の解像度の影響を排除できるため好適である。
【0043】
さらに、操作環境が「ファイル編集中」であれば、編集しているファイルの保存場所を加味することもできる。また、操作環境が「メール作成中」であれば、送信先のアドレスを加味することも可能である。
【0044】
当然ながら、上述の環境評価値テーブルは例示であり、本発明の目的を達する限りにおいて、様々な操作環境や付加情報を用いることが可能である。
【0045】
環境情報生成部23は、上述のように取得された複数の個別環境情報から環境情報を生成し、誤操作判定部24に送る。本実施形態では、個別環境情報は環境評価値であるため、これらの環境評価値の最大値を環境情報として生成する。図4の例では、特定された操作環境は、「メール作成中」「USBメモリ使用中」であり、環境評価値テーブルから、これらの環境評価値は、それぞれ3、3として取得できる。したがって、この場合の環境情報は3となる。なお、環境情報の生成方法は、これに限定されるものではなく、個別環境情報の総和を用いる等、他の演算により環境情報を生成しても構わない。
【0046】
特定操作情報と環境情報を取得した誤操作判定部24は、まず、特定操作情報に基づき特定操作に係る評価値(以下、操作評価値と称する)を取得する(#05)。本実施形態では、操作内容とその評価値が操作評価値テーブル(図7参照)に記憶されており、誤操作判定部24は、特定操作情報の操作内容に基づき操作評価値テーブルから操作評価値を取得する。例えば、特定操作が「ファイルコピー」であるとすると、操作評価値は3として取得される。
【0047】
次に、誤操作判定部24は、環境情報である環境評価値と上記の処理により取得した操作評価値とに基づいて誤操作の可能性を示す誤操作評価値を判定する(#06)。本実施例では、誤操作判定部24は、図8に示す誤操作判定テーブルを保持しており、この誤操作判定テーブルに基づき誤操作評価値を判定する。上述の例では、環境情報が3、操作評価値が3であるため、誤操作評価値は3となる。なお、誤操作評価値の判定方法にこれに限定されるものではなく、操作評価値と環境評価値とから所定の演算により求めても構わないし、これらを比較することにより求めても構わないし、さらに他の方法を用いて構わない。このようにして判定された誤操作評価値は制御部25に送られる。
【0048】
誤操作評価値を取得した制御部25は、誤操作評価値と所定の閾値THとを比較し(#07)、誤操作評価値が所定の閾値を超える場合には(#07のYes分岐)、所定の制御を行う(#08)。なお、所定の制御とは、管理者や特定端末Cのユーザへの通知、特定操作の処理の中止、特定端末Cのロック(使用不可状態)、強制的なログオフ、特定操作情報に誤操作である可能性がある旨の情報を追記、アプリケーションの強制終了等、種々の形態とすることができ、これらのうちの一の形態を固定的に用いても構わないし、誤操作評価値に応じて複数の形態を選択的に用いる構成としても構わない。また、複数の制御を行っても構わない。
【0049】
なお、制御が特定操作の処理の中止の場合には、操作検出部22は、処理が完了する前に操作を検出する必要がある。そのためには、以下の構成を用いることができる。操作検出部22は、操作イベント情報に基づき特定操作を検出し、特定操作に係る処理を保留する命令を特定端末Cに送信し、処理を保留させる。その後、誤操作評価値が所定の閾値TH以下の場合に特定操作に係る処理を許可する旨の通知を特定端末Cに送信し、特定端末Cにより特定操作に係る処理が実行される。一方、誤操作評価値が閾値THよりも大きければ、誤操作の可能性がある旨を特定端末Cに送信し、特定端末Cにおいて保留していた特定操作に係る処理が破棄される。
【0050】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、個別環境情報を環境評価値としたが、これに限定されるものではなく、操作環境と環境評価値の対、または、操作環境のみとすることもできる。これらの場合には、環境情報生成部23により生成される環境情報は、個別環境情報の集合となる。また、後者の場合には、誤操作判定部24により各々の操作環境の環境評価値が取得される構成となる。
【0051】
(2)上述の実施形態では、図5、6の環境評価値テーブルを用いたが、これらに代えて図9の環境評価値テーブルを用いることができる。図9の環境評価値テーブルは、特定操作の内容および操作環境と環境評価値とが関連付けられている。すなわち、図9の環境評価値テーブルでは、個別環境評価値は、操作環境と特定操作の内容に基づき、特定操作に対して誤操作を生じさせる操作環境としての影響度として決定される。例えば、操作環境がファイル編集中の場合には、ファイルコピーにおける誤操作の可能性よりも、文字列コピーにおける誤操作の可能性が高いと考えられる。そのため、図9のような環境評価値を設定している。このような環境評価値テーブルを用いることにより、操作の内容とその操作の内容に対応する操作環境の環境評価値を判定することができるため、的確に誤操作を判定することができる。なお、この環境評価値テーブルは一例であり、環境評価値、操作環境は、特定操作はユーザ(使用者)によって任意の値、内容を設定することができる。
【0052】
(3)上述の実施形態では、環境情報生成部23は、端末識別情報および日時情報に基づき操作情報を抽出したが、操作情報の抽出方法はこれに限定されるものではない。例えば、特定操作の内容に対応する操作環境が定められている場合には、操作検出部22により検出された特定操作の内容に対応する操作環境に係る操作情報のみを抽出する構成とすることができる。例えば、特定操作の内容が「文字列コピー」の場合には、開いているフォルダ数と誤操作には関連性が少ないため、この場合には、開いているフォルダ数を特定するための操作情報の抽出を行わない。一方、特定操作の内容が「ファイルコピー」の場合には、開いているフォルダ数と誤操作には関連性が大きいため、この場合には、開いているフォルダ数を特定するための操作情報を抽出する。このように構成することにより、特定操作に影響の少ない操作環境を環境情報の生成から除外することができ、的確な環境情報を生成できるため好適である。
【0053】
(4)上述の実施形態では、図8の誤操作判定テーブルを用いて誤操作評価値を取得したが、図8の誤操作判定テーブルに代えて図10の操作環境と特定操作の組み合わせから誤操作評価値を決定している誤操作判定テーブルを用いることもできる。この場合には、環境評価値テーブルや操作評価値テーブルから環境評価値や操作評価値を取得することなく、直接誤操作評価値を取得でき、さらに、誤操作判定テーブルに登録されていない環境と特定操作の組み合わせは誤操作判定から除外されるため、個別に評価された環境評価値と操作評価値とに基づき決定される誤操作評価値よりも、的確に誤操作を判定することができる。また、図10の誤操作判定テーブルに図6の付加情報を含めた形式を用いることも可能である。
【0054】
(5)上述の実施形態では、所定の操作が検知された時点で操作環境の特定処理が実行される構成としたが、操作情報を取得する都度、操作環境を特定しておく構成としても構わない。この構成では、操作環境を特定するための重複した処理を回避し、制御までの処理時間を短縮することができるため好適である。
【0055】
(6)上述の実施形態では、端末Cから操作情報を取得する都度、上述の処理が実行される構成としたが、端末Cから取得した操作情報を操作情報保存部21に保存しておき、任意のタイミングで誤操作検出処理を実行する構成とすることもできる。これにより、過去の操作情報に対する誤操作の検出が可能となり、その誤操作に起因する問題の発見にも役立てることができる。
【0056】
(7)本発明の操作監視装置の各機能部は、上述の実施形態で示したほか、サーバSと端末Cの間において種々の配置変更が可能である。また、上述の実施形態ではクライアント−サーバ型で構成したが、全ての機能部を端末Cに備えたスタンドアロン型で構成することも可能であり、複数のサーバSを設置し、機能部を分散配置することにより負荷分散を図ることも可能である。
【0057】
なお、本発明の操作監視システムは、誤操作の可能性を判定して、その操作に対する制御を行うものであるが、誤操作による情報漏洩の可能性を判定することにも利用することができる。この場合には、各評価値を情報漏洩の可能性を判定するために適した値に設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による操作監視システムのシステム構成図
【図2】本発明による操作監視システムの実施形態における機能ブロック図
【図3】本発明による操作監視システムの実施形態における処理の流れを表すフローチャート
【図4】本発明による操作監視システムの実施形態における操作情報の例
【図5】本発明による操作監視システムの実施形態における環境評価値テーブルの例
【図6】本発明による操作監視システムの実施形態における環境評価値テーブルの例
【図7】本発明による操作監視システムの実施形態における操作評価値テーブルの例
【図8】本発明による操作監視システムの実施形態における誤操作判定テーブルの例
【図9】本発明による操作監視システムの実施形態における環境評価値テーブルの例
【図10】本発明による操作監視システムの別実施形態における誤操作判定テーブルの例
【符号の説明】
【0059】
C:端末
S:サーバ
10、20:ネットワークI/F
11:操作情報生成部
21:操作情報保存部
22:操作検出部
23:環境情報生成部
24:誤操作判定部
25:制御部
30:評価値記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末における操作に係るイベント及び/または処理を示す操作情報を用いて誤操作を監視する操作監視システムであって、
前記操作情報を記録する操作情報記録部と、
前記操作情報から所定の操作を検出する操作検出部と、
前記操作情報記録部から前記端末において前記所定の操作が行われる前の操作情報を抽出し、当該抽出した操作情報を用いることにより、前記所定の操作が行われた際の端末の操作環境を特定して、当該操作環境に関する情報である環境情報を生成する環境情報生成部と、
前記所定の操作の操作情報と前記環境情報とに基づいて、前記所定の操作による誤操作の可能性を判定する誤操作判定部と、
前記誤操作判定部による判定結果に応じた所定の制御を行う制御部と、を備えた操作監視システム。
【請求項2】
前記操作情報には処理を実行するアプリケーションの表示態様を表すウィンドウ情報が含まれ、
前記環境情報生成部は、前記ウィンドウ情報に基づき前記環境情報を生成することを特徴とする請求項1記載の操作監視システム。
【請求項3】
前記環境情報生成部は、前記操作情報に基づき、完結していない作業を検出し、当該検出結果に応じて前記環境情報を生成することを特徴とする請求項1または2記載の操作監視システム。
【請求項4】
端末における操作に係るイベント及び/又は処理を示す操作情報を記録する操作情報記録部を備え、端末における誤操作を監視する操作監視システムのための操作監視プログラムであって、
前記操作情報から所定の操作を検出する操作情報検出機能と、
前記操作情報記録部から前記端末において前記所定の操作が行われる前の操作情報を抽出し、当該抽出した操作情報を用いることにより、前記所定の操作が行われた際の端末の操作環境を特定して、当該操作環境に関する情報である環境情報を生成する環境情報生成機能と、
前記所定の操作の操作情報と前記環境情報とに基づいて、前記所定の操作による誤操作の可能性を判定する誤操作判定機能と、
前記判定結果に応じた所定の制御を行う制御機能と、をコンピュータに実現する操作監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−49555(P2010−49555A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214156(P2008−214156)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(599108242)Sky株式会社 (257)
【Fターム(参考)】