説明

操舵角切替制御装置

【課題】 ハンドル操舵時に鞍乗型車両を安定して走行させる操舵角切替制御装置を提供する。
【解決手段】 フレーム2と、フレーム2に対して回転する操舵部6と、を備えた操舵部6の最大操舵角を切り替える操舵角切替制御装置において、操舵部6と共に回転する移動部材61と、移動部材61を移動させるアクチュエータ62と、フレーム2に設けられ移動部材61の回転角度を規制する規制部2bと、操舵部6の操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段101と、走行環境を検出する走行環境検出手段103,104,105と、走行環境検出手段103,104,105の検出した検出値及び操舵角速度検出手段101の検出した操舵角速度に応じて、アクチュエータ62を制御し、移動部材61が規制部2bによって規制されるまでの角度を変化させる制御部110と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵角切替制御装置に関し、特に、鞍乗型車両の操舵角切替制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗型車両において、ハンドルの操舵角を規制するストッパを設ける技術があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−182116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明の構造では、規制する操舵角が一定であるため、急ハンドルをした場合に予想以上にハンドルが回転し、車両が不安定になるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、ハンドル操舵時に鞍乗型車両を安定して走行させる操舵角切替制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、フレームと、前記フレームに対して回転する操舵部と、を備えた前記操舵部の最大操舵角を切り替える操舵角切替制御装置において、前記操舵部と共に回転する移動部材と、前記移動部材を移動させるアクチュエータと、前記フレームに設けられ前記移動部材の回転角度を規制する規制部と、前記操舵部の操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、走行環境を検出する走行環境検出手段と、前記走行環境検出手段の検出した検出値及び前記操舵角速度検出手段の検出した角速度に応じて、前記アクチュエータを制御し、前記移動部材が前記規制部によって規制されるまでの角度を変化させる制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記制御部は、前記操舵部の操舵角速度が速いほど、前記移動部材が前記規制部によって規制されるまでの角度を小さくすることを特徴とする。
【0008】
また、前記走行環境検出手段は、横加速度を検出する横加速度検出手段からなり、前記制御部は、前記横加速度検出手段の検出した横加速度が所定の値より小さい場合、前記アクチュエータを制御しないことを特徴とする。
【0009】
また、前記操舵部は、ハンドル及び前記ハンドルと共に回転するフロントフォークを含み、前記走行環境検出手段は、前記操舵部の前記ハンドル側のトルクを検出するハンドル側トルク検出手段と、前記操舵部の前記フロントフォーク側のトルクを検出するフロントフォーク側トルク検出手段と、からなり、前記制御部は、前記ハンドル側トルク検出手段の検出した前記ハンドル側トルクが前記フロントフォーク側トルク検出手段の検出した前記フロントフォーク側トルクよりも大きい場合、前記アクチュエータを制御しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、フレームと、前記フレームに対して回転する操舵部と、を備えた前記操舵部の最大操舵角を切り替える操舵角切替制御装置において、前記操舵部と共に回転する移動部材と、前記移動部材を移動させるアクチュエータと、前記フレームに設けられ前記移動部材の回転角度を規制する規制部と、前記操舵部の操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、走行環境を検出する走行環境検出手段と、前記走行環境検出手段の検出した検出値及び前記操舵角速度検出手段の検出した角速度に応じて、前記アクチュエータを制御し、前記移動部材が前記規制部によって規制されるまでの角度を変化させる制御部と、を有するので、走行環境に対して細かく対応することができ、ハンドルの操舵時の車両の不安定な状態を低減することが可能となる。
【0011】
また、請求項2記載の発明によれば、前記制御部は、前記操舵部の操舵角速度が速いほど、前記移動部材が前記規制部によって規制されるまでの角度を小さくするので、車両の状態に対して細かく対応することができ、急にハンドルを操舵した場合に操舵角が小さく規制されて不安定な状態を低減することが可能となる。
【0012】
また、請求項3記載の発明によれば、前記走行環境検出手段は、横加速度を検出する横加速度検出手段からなり、前記制御部は、前記横加速度検出手段の検出した横加速度が所定の値より小さい場合、前記アクチュエータを制御しないので、横加速度が所定の値より小さい場合、車両は安定していると判断し、操舵角速度が生じたとしてもそのハンドルの操舵は路面状態等の走行環境に対応する一時的なものと考え、無駄な制御をしないようにすることが可能となる。
【0013】
また、請求項4記載の発明によれば、前記操舵部は、ハンドル及び前記ハンドルと共に回転するフロントフォークを含み、前記走行環境検出手段は、前記操舵部の前記ハンドル側のトルクを検出するハンドル側トルク検出手段と、前記操舵部の前記フロントフォーク側のトルクを検出するフロントフォーク側トルク検出手段と、からなり、前記制御部は、前記ハンドル側トルク検出手段の検出した前記ハンドル側トルクが前記フロントフォーク側トルク検出手段の検出した前記フロントフォーク側トルクよりも大きい場合、前記アクチュエータを制御しないので、フロントフォーク側ステアリングトルクがハンドル側ステアリングトルクよりも小さい場合、車両は安定していると判断し、操舵角速度が生じたとしてもそのハンドル6の操舵は路面状態等の走行環境に対応する一時的なものと考え、無駄な制御をしないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る実施形態の操舵角切替機構を用いた三輪車両を示す正面図である。
【図2】本発明に係る実施形態の操舵角切替機構を用いた三輪車両を示す側面図である。
【図3】図1のC−C断面を矢印方向から見た図である。
【図4】図1のD−D断面を矢印方向から見た図である。
【図5】後輪が傾斜した状態を示す図である。
【図6】図2のE部分を拡大した本実施形態の操舵角切替機構付近を示す図である。
【図7】図6を正面から見た図である。
【図8】図6の操舵軸SAを含み、モータ軸MAに直交する面の断面図である。
【図9】直進状態時における操舵軸SA及びモータ軸MAを含む面の断面図である。
【図10】図9のJ−J断面の模式図である。
【図11】ハンドルを操舵してもモータが作動しない場合の操舵角切替機構を示す図である。
【図12】図11のK−K断面の模式図である。
【図13】ハンドルを操舵してモータが作動した場合の操舵角切替機構を示す図である。
【図14】図13のモータ軸MA及び操舵軸SAを含む面での断面図である。
【図15】図13及び図14のL−L断面の模式図である。
【図16】操舵角切替機構制御に対応したブロック図である。
【図17】操舵角切替機構制御の第1実施形態のフローチャートである。
【図18】ハンドル側トルクセンサ及びフロントフォーク側トルクセンサを示す図である。
【図19】操舵角切替機構制御の第2実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例としての実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び図2は本実施形態の操舵角切替機構を用いた三輪車両を示す図であり、図1は三輪車両の正面図、図2は三輪車両の側面図である。なお、図1の矢印Aの方向を幅方向、図2の矢印Bの方向を前方、その反対を後方とする。
【0017】
まず、三輪車両1について説明する。
【0018】
三輪車両1は、車体フレーム2の前方に操舵部としてのフロントフォーク3を介して前輪4を有し、車体フレーム2の後方の幅方向中心線を挟んで両側に二つの後輪5a,5bを有している。車体フレーム2の前方には、前輪4を操作する操舵部としてのハンドル6を有し、ハンドル6とフロントフォーク3を連結する操舵部としてのハンドルポスト6aの前方にはフロントカウル7を設け、後方にはハンドルポストカバー8を設けている。ハンドルポストカバー8の後方には、低床式フロアー9が設けられ、低床式フロアー9の後方にシートカウル10が立ち上がる。シートカウル10には、シート11が置かれる。また、シート11には、背もたれ12が設けられ、背もたれ12から後方に向けて車体フレーム2に連結された荷台13が延びている。また、低床式フロアー9の下方からは、連結部材21を介して車体フレーム2に対してピッチ方向あるいは上下方向に回転可能に連結された後方フレーム22が設けられている。後方フレーム22は、低床式フロアー9の下方から荷台13の下方に延び、後輪5を支持している。
【0019】
次に、後輪5付近の構成について説明する。図3は図1のD−D断面を矢印D方向から見た図、図4は図1のE−E断面を矢印E方向から見た図、図5は後輪が傾斜した状態を示す図である。
【0020】
図3に示すように、支持部材は、後方フレーム22と、後方フレーム22の図2に示した荷台13の前方側から下方に延びる第1支持部材としての第1支持フレーム23と、後方フレーム22の下方で第1支持フレーム23と連結され前後方向に伸びる第2支持部材としての第2支持フレーム24と、後方フレーム22の荷台13の後方側及び第1支持フレーム23の後方から下方に延び第2支持フレーム24と連結される第3支持部材としての第3支持フレーム25と、を有する。なお、第2支持フレーム24及び第3支持フレーム25は一体に形成されてもよい。
【0021】
後方フレーム22には、後輪傾斜用のモータ連結部材30により後輪傾斜用のモータ31のケース等の固定部31aが連結固定されている。後輪傾斜モータ31の回転部31bは、前方で減速機32を介して第1リンク部材としてのシャフト一体リンク部材33に連結される。後輪傾斜モータ31の回転は、減速機32で減速され、シャフト一体リンク部材33に出力される。
【0022】
三輪車両1は、図4に示すように、シャフト一体リンク部材33と、第2リンク部材28と、第3リンク部材及び第4リンク部材としての左右のホイールモータブラケット42とで形成されるリンク機構Lを有する。
【0023】
シャフト一体リンク部材33は、前方で第1支持フレーム23に第1ベアリング35を介して回転可能に支持され、後輪傾斜モータ31及び減速機32を貫通し、後方で第3支持フレーム25に第2ベアリング36を介して回転可能に支持されていると共に、後方第1リンク部材26に回転可能に連結されている軸部33aを有する。
【0024】
また、図4に示すように、シャフト一体リンク部材33は、軸部33aと一体に設けられ三輪車両1が直進状態の時に車体幅方向に延びるリンク部33bと、軸部33aの軸方向に対して直交する方向に突出したフランジ部33cとを有する。
【0025】
軸部33aとリンク部33bとを一体に設けることにより、部品点数を少なくすることができ、低コスト化が可能となる。また、部品点数を少なくすることで、スペース及び質量を小さくすることが可能となる。さらに、部品同士を連結する部分のガタを低減することが可能となる。
【0026】
なお、軸部33aは必ずしも後輪傾斜モータ31及び減速機32を貫通する必要はない。この場合、後方第1リンク部材26は、第3支持フレーム25に回転可能に支持されていればよい。
【0027】
また、シャフト一体リンク部材33と後方第1リンク部材26は、それぞれ車両幅方向の一端で第1ホイールモータ41Rを支持する第1車輪支持部材としての第1ホイールモータブラケット42Rの上方と第1連結軸27Rを介して回動可能に連結され、他端で第2ホイールモータ41Lを支持する第2車輪支持部材としての第2ホイールモータブラケット42Lの上方と第2連結軸27Lを介して回動可能に連結されている。
【0028】
第2リンク部材としての前方第2リンク部材28aは、車両幅方向の中央部分で、第2支持フレーム24の前方側と回動可能に連結されている。また、後方第2リンク部材28bは、第2支持フレーム24の後方側と回動可能に連結されている。
【0029】
また、前方第2リンク部材28aと後方第2リンク部材28bは、それぞれ車両幅方向の一端側で第1ホイールモータ41Rを支持する第3リンク部材としての第1ホイールモータブラケット42Rの下方と第3連結軸29Rを介して回動可能に連結され、他端側で第2ホイールモータ41Lを支持する第4リンク部材としての第2ホイールモータブラケット42Lの下方と第4連結軸29Lを介して回動可能に連結されている。
【0030】
図5は、後輪傾斜モータ31の動力により後輪5が傾斜した状態を示す図である。後輪傾斜モータ31の前方から見て反時計方向に回転したとすると、後輪傾斜モータ31の回転は、図3で示した減速機32で減速され、シャフト一体リンク部材33に伝達され、シャフト一体リンク部材33を反時計方向に回転させる。シャフト一体リンク部材33が反時計方向に回転すると、反作用により第1支持フレーム23がシャフト一体リンク部材33と逆方向に時計方向に回転すると共に、リンク機構Lが作動する。
【0031】
図5に示すように、リンク機構Lは、シャフト一体リンク部材33及び図示しない後方第1リンク部材26と前方第2リンク部材28a及び図示しない後方第2リンク部材28bが前方から見て反時計方向に回転し、第1ホイールモータブラケット42R及び第2ホイールモータブラケット42Lが時計方向に回転する。そして、後輪5は傾斜する。第1ホイールモータブラケット42R及び第2ホイールモータブラケット42Lと共に、時計方向に回転し、後輪5が傾斜する。
【0032】
また、後輪傾斜モータ31が前方から見て時計方向に回転したとすると、第1ホイールモータブラケット42R及び第2ホイールモータブラケット42Lは、反時計方向に回転し、後輪5が傾斜する。
【0033】
次に、本実施形態の操舵角切替機構Sについて説明する。
【0034】
本実施形態の操舵角切替機構Sは、一般的な鞍乗型車両に適用することが可能であるが、図1〜図5に示した三輪車両又はバギー車等の車両に適用すると特に効果を奏する。二輪車等の一般的な鞍乗型車両は旋回時に車体を傾斜させて旋回するものが多いが、図1〜図5に示した三輪車両又はバギー車等の車両では、ハンドルを操舵することで旋回する。したがって、急ハンドル時に予想以上にハンドルが回転し、曲がりきれずに車両が不安定になる場合がある。本実施形態の操舵角切替機構Sは、このような場合に車両を安定に走行させることが可能となる。
【0035】
図6は、図2のE部分を拡大した本実施形態の操舵角切替機構S付近を示す図、図7は図6を正面から見た図、図8は操舵軸SAを含み、モータ軸MAに直交する面の断面図である。
【0036】
図6〜図8に示すように、ハンドル6に連結されたハンドルポスト6aは、車体フレーム2に溶接等により連結された中空のポスト受部2aに回転可能に挿通される。また、ハンドルポスト6aの下方端部は、フロントフォーク3に固着されて、図2に示した操舵部としてのハンドル6、ハンドルポスト6a及びフロントフォーク3は一体に回転する。ポスト受部2aの下方には、ハンドルポスト6aの回転角である操舵角を規制する規制部2bが設けられている。規制部2bは、フロントフォーク3の後方に間隔をあけて所定の角度だけ配置されている。
【0037】
また、フロントフォーク3には、前方に開口部3aが設けられている。開口部3aに対応したフロントフォーク3の内部には、移動部材としてのストッパ61及び軸部材としてのボールネジ63を有する。ボールネジ63は、フロントフォーク3を貫通して、外周に取り付けたアクチュエータとしてのモータ62に連結されている。ストッパ61は、ボールネジ63の作動により移動可能に取り付けられ、操舵軸SAに対して両側に第1ストッパ61aと第2ストッパ61bが1つずつ設けられる。第1ストッパ61aと第2ストッパ61bはそれぞれ開口部3aから前方に突出している。また、モータ62が一方に回転駆動すると、ボールネジ63が作動し、第1ストッパ61aと第2ストッパ61bをそれぞれ離間するように移動させる。また、モータ62が他方向に回転駆動すると、ボールネジ63が作動し、第1ストッパ61aと第2ストッパ61bをそれぞれ近づくように移動させる。
【0038】
図9は直進状態時における操舵軸SA及びモータ軸MAを含む面の断面図、図10は図9のJ−J断面の模式図である。
【0039】
図9に示すように、直進状態では、モータ62は作動せず、第1ストッパ61aと第2ストッパ61bは操舵軸SAを挟んで当接している。この状態では、図10に示すように、第1の角度αが操舵角として回転可能な角度となっている。なお、第1ストッパ61aと第2ストッパ61bは、直進状態で必ずしも当接している必要はない。
【0040】
図11はハンドルを操舵してもモータが作動しない場合の操舵角切替機構を示す図、図12は図11のK−K断面図である。
【0041】
図11に示すように、運転者がハンドル6を操舵すると、ハンドルポスト6aを介してフロントフォーク3が回転し、ストッパ61等も回転する。
【0042】
本実施形態では、ハンドル6を操舵してもモータ62が作動しない状態では、図12に示すように、フロントフォーク3は第1の角度αだけ回転すると、第2ストッパ61bが規制部2bに当接するので、ハンドル6の操舵角は第1の角度αに規制される。なお、運転者がハンドル6を逆方向に操舵すると、第1ストッパ61aが規制部2bに当接する。
【0043】
次に、ハンドル6を操舵してモータ62が作動した場合について説明する。図13はハンドル6を操舵してモータ62が作動した場合の操舵角切替機構を示す図、図14は図13のモータ軸MA及び操舵軸SAを含む面での断面図、図15は図13のL−L断面図である。
【0044】
図13に示すように、運転者が、ハンドル6を操舵してモータ62が作動した場合には、図14に示すように、モータ62が回転し、ボールネジ63を作動させることにより、ストッパ61の第1ストッパ61aと第2ストッパ61bは、操舵軸SAからそれぞれ離間するように移動する。したがって、図15に示すように、フロントフォーク3は、第2の角度βだけ回転すると、第2ストッパ61bが規制部2bに当接するので、ハンドル6の回転角度は第1の角度αよりも小さい第2の角度βに規制される。なお、運転者がハンドル6を逆方向に操舵すると、第1ストッパ61aが規制部2bに当接する。
【0045】
このような構造の操舵角切替機構の制御装置について説明する。
【0046】
図16は操舵角切替制御装置に対応したブロック図である。図16には、後述した第1実施形態〜第9実施形態のブロック要素をすべて示しているが、各実施形態はすべての要素を用いてもよいし、それぞれ必要なブロック要素を適用すればよい。また、各実施形態において、操舵角速度センサ101、横加速度センサ103,ハンドル側トルクセンサ104、フロントフォーク側トルクセンサ105及び操舵角センサ106の各検出値は大きさで判断しているが、操舵右方向を正及び操舵左方向を負、もしくはその逆に正負方向を決定し、各検出値の絶対値で判断してもよい。
【0047】
図17は操舵角切替制御の第1実施形態のフローチャートである。
【0048】
図16に示したブロック要素のうち、第1実施形態の操舵角切替制御装置は、操舵角速度検出手段としての操舵角速度センサ101が検出した角速度及び横加速度検出手段としての横加速度センサ103が検出した横加速度に応じて、制御部110がモータ62の回転を制御するものであるなお、操舵角加速度センサを用いて検出値を積分等で演算することで操舵角速度をもとめてもよい。
【0049】
図17に示すように、まず、ステップ11で、横加速度センサ103が検出した横加速度Gを取得する(ST11)。次に、ステップ12で、ステップ11において取得した横加速度Gが所定の値G2より小さいか否か判断する(ST12)。なお、横加速度Gが0か否か判断するとしてもよい。
【0050】
ステップ12において、横加速度Gが所定の値G2より小さい場合、路面の凹凸や風等の外乱により車両に発生する横加速度は小さく車両が安定していると判断して、制御を終了し、スタートに戻る。
【0051】
ステップ12において、横加速度Gが所定の値G2以上場合、ステップ13で、操舵角速度センサ101が検出した操舵部としてのハンドル6、ハンドルポスト6a又はフロントフォーク3の操舵角速度を取得する(ST13)。続いて、ステップ14において取得した操舵角速度ωが所定の値a以下であるか否か判断する(ST14)。
【0052】
ステップ14において、操舵角速度ωが所定の値a以下の場合、ステップ15で、図11及び図12に示したように、ストッパ61が規制部2bに規制される操舵角θが第1の値αよりも小さいあらかじめ定めた第2の値βとなるように、制御部110がモータ62を制御し、ストッパ61を移動させて(ST15)、制御を終了し、スタートに戻る。このため路面の凹凸や風等の外乱により車両に横加速度が発生した場合に、ストッパ61を動作させることができる。
【0053】
ステップ14において、操舵角速度ωが所定の値aより大きい場合、ステップ16で、ストッパ61が規制部2bに規制される操舵角θがあらかじめ定めた第1の値αとなるように、制御部110がモータ62を制御し(ST16)、制御を終了し、スタートに戻る。本実施形態では、モータ62を回転させず、ストッパ61を移動させない。このため基本的には路面の凹凸や風等の外乱により車両に横加速度が発生した場合に、ストッパ61を動作させるが、運転者のハンドルの入力が所定値以上あった場合にはストッパ61を動作させないことで、外乱が生じた場合にのみストッパ61を動作させることができる。
【0054】
第1実施形態の制御では、車両の状態に対して細かく対応することができ、特に路面の凹凸や風等の外乱により前輪4に大きな外力が加わることによる車両の不安定な状態を低減することが可能となる。また、横加速度が所定の値より小さい場合、車両は安定していると判断し、操舵角速度ωが生じたとしてもそのハンドル6の操舵は路面状態等の走行環境に対応する一時的なものと考え、無駄な制御をしないようにすることが可能となる。
【0055】
図18はハンドル側トルクセンサ104及びフロントフォーク側トルクセンサ105を示す図、図19は操舵角切替制御の第2実施形態のフローチャートである。
【0056】
図16に示したブロック要素のうち、第9実施形態の操舵角切替制御装置は、操舵角速度検出手段としての操舵角速度センサ101が検出した角速度、ハンドル側トルク検出手段としてのハンドル側トルクセンサ104が検出したハンドル側ステアリングトルク及びフロントフォーク側トルク検出手段としてのフロントフォーク側トルクセンサ105が検出したフロントフォーク側ステアリングトルクに応じて、制御部110がモータ62の回転を制御するものである。なお、操舵角加速度センサを用いて検出値を積分等で演算することで操舵角速度をもとめてもよい。
【0057】
図18に示すように、ハンドル側トルクセンサ104は、ハンドルポスト6aに取り付けられ、ハンドルポスト6aのトルクを検出し、フロントフォーク側トルクセンサ105は、フロントフォーク3に取り付けられ、フロントフォーク3のトルクを検出する。
【0058】
図19に示すように、まず、ステップ21で、ハンドル側トルクセンサ104が検出したハンドル側ステアリングトルクTsを取得する(ST21)。続いて、ステップ22で、フロントフォーク側トルクセンサ105が検出したフロントフォーク側ステアリングトルクTtを取得する(ST22)。次に、ステップ23で、ハンドル側ステアリングトルクTsがフロントフォーク側ステアリングトルクTtよりも大きいか否かを判断する(ST23)。
【0059】
ステップ23において、ハンドル側ステアリングトルクTsがフロントフォーク側ステアリングトルクTtよりも大きい場合、路面の凹凸や風等の外乱により車両のフロントフォークに加わる外力は小さく車両が安定していると判断して、制御を終了し、スタートに戻る。
【0060】
ステップ23において、ハンドル側ステアリングトルクTsがフロントフォーク側ステアリングトルクTtよりも大きい場合、ステップ24で、操舵角速度センサ101が検出した操舵部としてのハンドル6、ハンドルポスト6a又はフロントフォーク3の操舵角速度を取得する(ST24)。
【0061】
次に、ステップ25で、ステップ24において取得した操舵角速度ωが所定の値a以下か否か判断する(ST25)。
【0062】
ステップ25において、操舵角速度ωが所定の値a以下の場合、ステップ26で、図13〜図15に示したように、ストッパ61が規制部2bに規制される操舵角θが第1の値αよりも小さいあらかじめ定めた第2の値βとなるように、制御部110がモータ62を制御し、ストッパ61を移動させて(ST26)、制御を終了し、スタートに戻る。
【0063】
ステップ25において、操舵角速度ωが所定の値aより大きい場合、ステップ27で、図11及び図12に示したように、ストッパ61が規制部2bに規制される操舵角θがあらかじめ定めた第1の値αとなるように、制御部110がモータ62を制御し(ST27)、制御を終了し、スタートに戻る。本実施形態では、モータ62を回転させず、ストッパ61を軸方向に移動させない。このため基本的には路面の凹凸や風等の外乱により車両のフロントフォークにトルクが発生した場合に、ストッパ61を動作させるが、運転者のハンドルの入力が所定値以上あった場合にはストッパ61を動作させないことで、外乱が生じた場合にのみストッパ61を動作させることができる。
【0064】
第2実施形態の制御では、車両の状態に対して細かく対応することができ、特に路面の凹凸や風等の外乱による外力が前輪4に加わることによる車両の不安定な状態を低減することが可能となる。また、フロントフォーク側ステアリングトルクがハンドル側ステアリングトルクよりも小さい場合、車両は安定していると判断し、操舵角速度ωが生じたとしてもそのハンドル6の操舵は路面状態等の走行環境に対応する一時的なものと考え、無駄な制御をしないようにすることが可能となる。
【0065】
このように、本発明に係る実施形態によれば、フレーム2と、フレーム2に対して回転する操舵部3,6と、を備えた操舵部3,6の最大操舵角を切り替える操舵角切替制御装置において、操舵部3,6と共に回転する移動部材61と、移動部材61を移動させるモータ62と、フレーム2に設けられ移動部材61の回転角度を規制する規制部2bと、操舵部3,6の操舵角速度を検出する操舵角速度センサ101と、走行環境を検出する横加速度センサ103、もしくはハンドル側トルクセンサ104及びフロントフォーク側トルクセンサ104と、横加速度センサ103、もしくはハンドル側トルクセンサ104及びフロントフォーク側トルクセンサ104の検出した検出値及び操舵角速度センサ101の検出した角速度に応じて、モータ62を制御し、移動部材61が規制部2bによって規制されるまでの角度を変化させる制御部110と、を有するので、車両の状態に対して細かく対応することができ、ハンドル操舵時の車両の不安定な状態を低減することが可能となる。
【0066】
また、制御部110は、操舵部3,6の操舵角速度が速いほど、移動部材61が規制部2bによって規制されるまでの角度を小さくするので、車両の状態に対して細かく対応することができ、急にハンドルを操舵した場合に操舵角が小さく規制されて不安定な状態を低減することが可能となる。
【0067】
また、走行環境検出手段は、横加速度を検出する横加速度センサ103からなり、制御部110は、横加速度センサ103の検出した横加速度が所定の値より小さい場合、モータ62を制御しないので、横加速度が所定の値より小さい場合、車両は安定していると判断し、操舵角速度が生じたとしてもそのハンドルの操舵は路面状態等の走行環境に対応する一時的なものと考え、無駄な制御をしないようにすることが可能となる。
【0068】
また、操舵部は、ハンドル6及びハンドル6と共に回転するフロントフォーク3を含み、走行環境センサは、操舵部のハンドル側のトルクを検出するハンドル側トルクセンサ104と、操舵部のフロントフォーク側のトルクを検出するフロントフォーク側トルクセンサ105と、からなり、制御部110は、ハンドル側トルクセンサ104の検出したハンドル側トルクがフロントフォーク側トルクセンサ105の検出したフロントフォーク側トルクよりも大きい場合、モータ62を制御しないので、フロントフォーク側ステアリングトルクがハンドル側ステアリングトルクよりも小さい場合、車両は安定していると判断し、操舵角速度が生じたとしてもそのハンドル6の操舵は路面状態等の走行環境に対応する一時的なものと考え、無駄な制御をしないようにすることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1…三輪車両、2…車体フレーム(フレーム)、2a…ポスト受部、2b…規制部、3…フロントフォーク(操舵部)、4…前輪、5…後輪、6…ハンドル(操舵部)、6a…ハンドルポスト(操舵部)、22…後方フレーム(支持部材)、23…第1支持フレーム(支持部材)、24…第2支持フレーム(支持部材)、25…第3支持フレーム(支持部材)、28a…前方第2リンク部材(第2リンク部材)、31…後輪傾斜モータ、32…減速機、33…シャフト一体リンク部材(第1リンク部材)、41…ホイールモータ、42R…ホイールモータカバー(第3リンク部材)、42L…ホイールモータカバー(第4リンク部材)、61…ストッパ(移動部材)、62…モータ(アクチュエータ)、L…リンク機構、101…操舵角速度センサ(操舵角速度検出手段)、103…横加速度センサ(走行環境検出手段,横加速度検出手段)、104…ハンドル側トルクセンサ(走行環境検出手段,ハンドル側トルク検出手段)、105…フロントフォーク側トルクセンサ(走行環境検出手段,フロントフォーク側トルク検出手段)、110…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに対して回転する操舵部と、
を備えた前記操舵部の最大操舵角を切り替える操舵角切替制御装置において、
前記操舵部と共に回転する移動部材と、
前記移動部材を移動させるアクチュエータと、
前記フレームに設けられ前記移動部材の回転角度を規制する規制部と、
前記操舵部の操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、
走行環境を検出する走行環境検出手段と、
前記走行環境検出手段の検出した検出値及び前記操舵角速度検出手段の検出した角速度に応じて、前記アクチュエータを制御し、前記移動部材が前記規制部によって規制されるまでの角度を変化させる制御部と、
を有する
ことを特徴とする操舵角切替制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記操舵部の操舵角速度が速いほど、前記移動部材が前記規制部によって規制されるまでの角度を小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の操舵角切替制御装置。
【請求項3】
前記走行環境検出手段は、横加速度を検出する横加速度検出手段からなり、
前記制御部は、前記横加速度検出手段の検出した横加速度が所定の値より小さい場合、前記アクチュエータを制御しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の操舵角切替制御装置。
【請求項4】
前記操舵部は、ハンドル及び前記ハンドルと共に回転するフロントフォークを含み、
前記走行環境検出手段は、
前記操舵部の前記ハンドル側のトルクを検出するハンドル側トルク検出手段と、
前記操舵部の前記フロントフォーク側のトルクを検出するフロントフォーク側トルク検出手段と、
からなり、
前記制御部は、前記ハンドル側トルク検出手段の検出した前記ハンドル側トルクが前記フロントフォーク側トルク検出手段の検出した前記フロントフォーク側トルクよりも大きい場合、前記アクチュエータを制御しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の操舵角切替制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−17042(P2012−17042A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156093(P2010−156093)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】