説明

擬似容量キャパシタ

【課題】水系電解液を用いた擬似容量キャパシタにおいて、水の電気分解の理論電圧を超えた作動電圧で充放電できる。
【解決手段】評価セル10は、正極側集電体12と負極側集電体14との間に樹脂製のケース16が配置され、このケース16の中心孔16a内にキャパシタ構造20を備えたものである。キャパシタ構造20は、中心孔16aの上部に配置された正極22と、中心孔16aの下部に配置された負極24と、中心孔16aの段差16bに配置された固体電解質板26と、Liイオンを含む水系電解液が充填された第1液室28、Liイオンを含む非水系電解液が充填された第2液室30とを備えている。正極22はレドックス変化が可能な金属酸化物を含む電極であり、負極24はLiイオンを吸蔵・放出可能な電極であり、固体電解質板26はLiイオン伝導性を有し、水系電解液と負極24との接触を妨げる役割を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似容量キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気化学キャパシタとして、電気二重層容量を利用したいわゆる電気二重層キャパシタが実用化されているが、活物質のレドックス反応により貯蔵される容量(擬似容量)を利用した擬似容量キャパシタの開発も種々検討されている。電気二重層キャパシタは、エネルギー密度(単位:Whkg-1)は低いが、瞬間的に電荷を貯蔵・放出することができるため、出力密度(単位:Wkg-1)は極めて高い。これに対して、電極上の活物質のレドックス反応により電荷を蓄えることのできる擬似容量キャパシタは、電気二重層キャパシタに比べると、エネルギー密度が高く、出力密度も比較的高い。
【0003】
近年、擬似容量キャパシタとしては、電極による高容量化を図ったものがいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、ルテニウム酸化物の代わりに水酸化ルテニウム水和物を炭素電極に高分散させた電極を用いることが提案されている。また、特許文献2には、マンガン酸化物に導電性ポリマーを混合した電極を用いることが提案され、特許文献3には、マンガン−亜鉛複合酸化物を含む電極を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−36441号公報
【特許文献2】特開2005−223089号公報
【特許文献3】特開2009−182079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般にキャパシタのエネルギー密度WはW=1/2CV2で表されることから、エネルギー密度Wを向上させるには、静電容量Cの向上のほかに、作動電圧Vの向上も考えられる。しかしながら、特許文献1〜3の擬似容量キャパシタは、水系の電解液を用いているため、水が電気分解を起こさない電圧範囲でしか利用することができず、作動電圧を大きくすることができないという課題があった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、水系電解液を用いた擬似容量キャパシタにおいて、水の電気分解の理論電圧を超えた作動電圧で充放電できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、水酸化リチウム水溶液にMnO2を含む正極を浸漬し、リチウム塩が溶解した疎水性のイオン液体に金属Liからなる負極を浸漬し、水酸化リチウム水溶液と疎水性のイオン液体とを二相に分液した擬似容量キャパシタを作製したところ、3Vを超える電圧で充放電可能なことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第1の擬似容量キャパシタは、
リチウムイオンを含む水系電解液に浸漬され、可逆的なレドックス変化が可能な金属酸化物を含む正極と、
リチウムイオンを含む非水系電解液に浸漬され、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、
を含み、
前記水系電解液と前記非水系電解液とは分液された状態で存在しているか又はリチウムイオン伝導性の固体電解質板で隔離されている
ものである。
【0009】
また、本発明の第2の擬似容量キャパシタは、
リチウムイオンを含む水系電解液に浸漬され、可逆的なレドックス変化が可能な金属酸化物を含む正極と、
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、
を含み、
前記水系電解液と前記負極とはリチウムイオン伝導性と非透水性を持つ固体電解質板で隔離されている
ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1又は第2の擬似容量キャパシタでは、正極側で金属酸化物の可逆的なレドックス変化が起こり、負極側でリチウムイオンが吸蔵・放出される反応が生じることにより、充放電される。このため、電気二重層キャパシタに比べて、理論上大きな容量が期待される。また、正極側には水が存在するものの負極側には水が存在しないため、水の電気分解の理論電圧(約1.2V)を超えた作動電圧で充放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】評価セル10の構成を表す断面図。
【図2】評価セル60の構成を表す断面図。
【図3】水系電解液と非水系電解液とが分液している様子を表す写真。
【図4】実施例1の充放電曲線。
【図5】実施例1のサイクル特性曲線。
【図6】実施例4の充放電曲線。
【図7】比較例1の充放電曲線。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の擬似容量キャパシタは、リチウムイオンを含む水系電解液に浸漬され、可逆的なレドックス変化が可能な金属酸化物を含む正極と、リチウムイオンを含む非水系電解液に浸漬され、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、を含み、前記水系電解液と前記非水系電解液とは分液された状態で存在しているか又はリチウムイオン伝導性の固体電解質板で隔離されているものである。また、本発明の第2の擬似容量キャパシタは、リチウムイオンを含む水系電解液に浸漬され、可逆的なレドックス変化が可能な金属酸化物を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、を含み、前記水系電解液と前記負極とはリチウムイオン伝導性と非透水性を持つ固体電解質板で隔離されているものである。
【0013】
本発明の第1及び第2の擬似容量キャパシタにおいて、正極は、可逆的なレドックス変化が可能な金属酸化物と、導電材と、結着材とを混合し、その混合物を成形装置を用いてシート化したものを集電体の表面に押しつけて形成したものか、あるいは、その混合物に適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用してもよい。
【0014】
ここで、可逆的なレドックス変化が可能な金属酸化物としては、例えば、Ru,Mn,W,Co,Ni,Sn,Mo,In,Ti及びVからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられる。このうち、Ru,Mn,W及びCoからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物が好ましい。導電材としては、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材としては、炭素材料粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
【0015】
本発明の第1及び第2の擬似容量キャパシタにおいて、負極は、例えば金属リチウムをそのまま適当な大きさに加工して使用してもよい。あるいは、リチウム化合物(リチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、リチウム遷移金属酸化物など)と導電材と結着材とを混合し、その混合物を成形装置を用いてシート化したものを集電体の表面に押しつけて形成たものか、あるいは、その混合物に適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用してもよい。あるいは、リチウム化合物の代わりに炭素材を用いてもよい。
【0016】
ここで、リチウム合金としては、リチウム−アルミニウム合金やリチウム−亜鉛合金、リチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金などが挙げられる。リチウム遷移金属窒化物又はリチウム遷移金属酸化物に含まれる遷移金属としては、Fe,Co,Ni,Cuなどが挙げられるが、このうちCoが好ましい。炭素材としては、リチウムイオンをインターカレートできるものであれば特に限定されないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類などが挙げられる。このうち、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛類や高比表面積を示す活性炭類などが好ましい。また、導電材や結着材は、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
【0017】
本発明の第1及び第2の擬似容量キャパシタにおいて、リチウムイオンを含む水系電解液としては、例えば、水酸化リチウム又はリチウム塩が溶解した水溶液などが挙げられる。リチウム塩としては、例えば硝酸リチウムや硫酸リチウム、酢酸リチウムなどが挙げられる。
【0018】
本発明の第1の擬似容量キャパシタにおいて、リチウムイオンを含む非水系電解液としては、例えば、リチウム塩が溶解した非水系電解液が挙げられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このリチウム塩は、非水系電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。また、非水系電解液は疎水性であることが好ましい。疎水性の非水系電解液としては、疎水系のイオン液体などが挙げられ、例えばカウンターアニオンがTFSI((トリフルオロメタンスルホニル)イミド)のイオン液体が挙げられる。具体的には、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略称:PP13TFSI)、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略称:EMITFSI)、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略称:TMPATFSI)、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられる。このうち、PP13TFSIが好ましい。
【0019】
本発明の第1及び第2の擬似容量キャパシタにおいて、リチウムイオン伝導性の固体電解質板としては、Li1+XTi2SiX3-X12・AlPO4(略称:LICGC,オハラガラス)やLi1.5Al0.5Ge1.5(PO43(略称:LAGP)のほか、ガーネット型酸化物Li7La3Zr212 やLiPONなどが挙げられる。また、本発明の第2の擬似容量キャパシタでは、負極として金属リチウムやリチウム合金を用いる場合、こうした固体電解質板の一面に負極を蒸着、スパッタ、CVDなどの成膜技術により積層してもよい。
【0020】
本発明の第1及び第2の擬似容量キャパシタの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
【0021】
ここで、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は本発明の第1の擬似容量キャパシタの一例である評価セル10の断面図、図2は本発明の第2の擬似容量キャパシタの一例である評価セル60の断面図である。
【0022】
評価セル10は、SUS製でリング状の正極側集電体12とSUS製で円盤状の負極側集電体14との間に樹脂製で円筒形状のケース16が配置され、このケース16の中心孔16a内にキャパシタ構造20を備えたものである。キャパシタ構造20は、中心孔16aの上部開口を閉鎖する正極22と、負極側集電体14上であって中心孔16aの下部開口内に位置する負極24と、中心孔16aの中段の段差16bに保持された固体電解質板26と、中心孔16aのうち正極22と固体電解質板26との間に形成され水系電解液が充填された第1液室28と、中心孔16aのうち負極24と固体電解質板26との間に形成され非水系電解液が充填された第2液室30とを備えている。正極22は、レドックス変化が可能な金属酸化物を含む電極であり、外周縁がケース16と正極側集電体12とによって挟み込まれている。負極24は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な電極であり、外周縁が負極側集電体14上に固着されている。固体電解質板26は、リチウムイオンを伝導する役割を果たすほか、水系電解液と負極24との接触を妨げる役割も果たすものであり、シール材を兼用する押さえリング17によって押さえられている。水系電解液は、リチウムイオンを含む水溶液であり、非水系電解液は、リチウムイオンを含み、疎水性で水と混ざらない有機溶媒又はイオン液体であることが好ましい。なお、水系電解液と非水系電解液とが混ざり合わず分液する場合には、固体電解質板26を省略してもよい。また、図示しないが、正極側集電体12と負極側集電体14とは互いに接近する方向に押圧されている。
【0023】
この評価セル10によれば、正極側で金属酸化物の可逆的なレドックス変化が起こり、負極側でリチウムイオンが吸蔵・放出されることにより、充放電されるため、電気二重層キャパシタに比べて、理論上大きな容量が期待される。また、正極側には水が存在するものの負極側には水が存在しないため、水の電気分解の理論電圧(約1.2V)を超えた作動電圧で充放電することができる。
【0024】
評価セル60は、評価セル10と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。この評価セル60では、負極24は固体電解質板76の裏面に蒸着されて一体化されている。また、中心孔16a内には第2液室は存在せず、第1液室78が正極22と固体電解質板76との間に形成されている。この第1液室78には、水系電解液(リチウムイオンを含む水溶液)が充填されている。固体電解質板76は、リチウムイオンを伝導する役割を果たすほか、水系電解液と負極24との接触を妨げる役割も果たす。
【0025】
この評価セル60でも、正極側で金属酸化物の可逆的なレドックス変化が起こり、負極側でリチウムイオンが吸蔵・放出されることにより、充放電されるため、電気二重層キャパシタに比べて、理論上大きな容量が期待される。また、正極側には水が存在するものの負極側には水が存在しないため、水の電気分解の理論電圧(約1.2V)を超えた作動電圧で充放電することができる。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
実施例1の評価セルとして、評価セル10(図1参照)から固体電解質板26を省略した構造を持つものを作製した。正極22としてMnO2電極、負極24として金属Li電極、水系電解液として0.3M LiOH水溶液、非水系電解液として0.3M LiTFSI/PP13TFSIを使用した。また、事前に水系電解液と非水系電解液とを同一容器に入れ、両者が混合しないことを確認した(図3参照)。
【0028】
MnO2電極は、以下のようにして作製した。まず、0.25Mの酢酸マンガン水溶液1Lに、0.5M蓚酸水溶液0.5Lを攪拌しながら滴下し、蓚酸マンガンスラリーを作製した。その後、濾過、洗浄、乾燥し、270℃で熱処理して二酸化マンガン粉末を得た。得られた粉末を、アセチレンブラック、PVDF粉末と共に、75:15:10の割合で混合、乳鉢で混練、成形装置を用いてシート化した後、パンチで打ち抜き、φ12mmの円板シートを作成した。最後に、このシートをステンレスメッシュに押し付け、MnO2電極とした。また、金属Li電極は、以下のようにして作製した。即ち、Li金属板(本城金属)をパンチでパンチで打ち抜き、φ12mmの円板シート状の金属Li電極とした。
【0029】
実施例1の評価セルにつき、表1に示すように0.1mA/cm2の電流密度で充放電を行ったところ、図4に示すように3.4Vまでは直線性が良好に維持された。また、3.6Vまで充電を行うと、やや直線性が失われたものの、特に問題は見られなかった。このように、作動電圧は、水が電気分解を起こす理論電圧(約1.2V)を大きく超えた3.4〜3.6V程度まで上げることができることがわかった。一般にキャパシタのエネルギー密度WはW=1/2CV2で表されることから、実施例1の評価セルのエネルギー密度Wは従来の水系電解液を用いた擬似容量キャパシタに比べて高いといえる。また、電流密度0.1mA/cm2、電圧3.4Vでの充放電を12回繰り返したところ、図5に示すように、ほとんど特性は変化せず、良好なサイクル特性を示した
【0030】
[実施例2]
実施例2の評価セルとして、実施例1の評価セルのMnO2電極の代わりにRuO2電極を用いたものを作製した。RuO2電極は、以下のようにして作製した。まず、塩化ルテニウム水溶液50mL(Ru20g/L)を、アンモニア水40mL(10mL/sec、滴注)で中和して、水酸化ルテニウム(pH7.7)の微粒子を調製し、得られた微粒子を洗浄、乾燥して酸化ルテニウム粉末を得た。得られた粉末を、アセチレンブラック、PVDF粉末と共に、75:15:10の割合で混合、乳鉢で混練、成形装置を用いてシート化した後、パンチで打ち抜き、φ12mmの円板シートを作成した。それをステンレスメッシュに押し付け、RuO2電極とした。
【0031】
[実施例3]
実施例3の評価セルとして、評価セル10(図1参照)を作製した。ここでは、正極22としてMnO2電極、負極24としてLiCoN電極、固体電解質板26としてLICGC(オハラガラス)、水系電解液として0.3M LiOH水溶液、非水系電解液として0.3M LiTFSI/PP13TFSIを使用した。LiCoN電極は、以下のようにして作製した。まず、Li3Nと金属Coを所定比で混合し、混合粉を坩堝に入れ、窒素雰囲気中で反応処理を行った(700℃,5h)。その後、得られた焼成体を粉砕し、窒化物粒子を得た。この窒化物粒子を用い、窒化物粒子、アセチレンブラック、PVDF粉末を85:5:10の割合で混合、混練、シート化した後、パンチで打ち抜き、φ12mmの円板シート状のLiCoN電極を作成した。尚、これらの一連の作業は、グローブボックス内で行った。また、LICGCは、水系電解液が非水系電解液や負極24に接触するのを妨げる役割も果たす。
【0032】
[実施例4]
実施例4の評価セルとして、評価セル60(図2参照)を作製した。ここでは、正極22としてMnO2電極、負極24として蒸着Li電極、固体電解質板76としてLICGC(オハラガラス)、水系電解液として0.3M LiOH水溶液を使用した。蒸着Li金属電極は、グローブボックス内で蒸着作業ができる蒸着装置を用いて、固体電解質板76の一面に金属Liを蒸着することにより作製した。また、LICGCは、水系電解液が負極24に接触するのを妨げる役割も果たす。
【0033】
[比較例1]
比較例1の評価セルとして、実施例1の評価セルの正極及び負極をMnO2電極とし、非水系電解液を用いず水系電解液(0.3M LiOH水溶液)のみを用いた以外は、実施例1の評価セルと同様のものを作製した。
【0034】
実施例2〜4及び比較例1の評価セルについて、表1に示すように電流密度0.1mA/cm2(但し実施例4では0.02mA/cm2)で充放電を行った。そうしたところ、実施例2〜4では、実施例1と同様、電圧3.4Vまで良好な結果が得られた。図6に実施例4の評価セルの充放電曲線を示す。一方、比較例1では、電圧1V付近まで充放電は可能であったが、充電曲線がやや丸みを持ち、特性低下が観察された。そのときの様子を図7に示す。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の擬似容量キャパシタは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の電源として利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 評価セル、12 正極側集電体、14 負極側集電体、16 ケース、16a 中心孔、16b 段差、20 キャパシタ構造、22 正極、24 負極、26 固体電解質板、28 第1液室、30 第2液室、60 評価セル、76 固体電解質板、78 第1液室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを含む水系電解液に浸漬され、可逆的なレドックス変化が可能な金属酸化物を含む正極と、
リチウムイオンを含む非水系電解液に浸漬され、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、
を含み、
前記水系電解液と前記非水系電解液とは分液された状態で存在しているか又はリチウムイオン伝導性の固体電解質板で隔離されている、
擬似容量キャパシタ。
【請求項2】
前記非水系電解液は、疎水性のイオン液体である、
請求項1に記載の擬似容量キャパシタ。
【請求項3】
リチウムイオンを含む水系電解液に浸漬され、可逆的なレドックス変化が可能な金属酸化物を含む正極と、
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極と、
を含み、
前記水系電解液と前記負極とはリチウムイオン伝導性と非透水性を持つ固体電解質板で隔離されている、
擬似容量キャパシタ。
【請求項4】
前記金属酸化物は、ルテニウム酸化物、マンガン酸化物、タングステン酸化物又はコバルト酸化物である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の擬似容量キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−198925(P2011−198925A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62599(P2010−62599)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】