説明

攪拌・脱泡装置

【課題】簡素な構成で容器の重心位置の変動により発生する振動を小さく抑えることができる攪拌・脱泡装置を提供する。
【解決手段】被処理物を収容する容器4を備え、該容器4は、公転又は自転あるいはそれら両方ができるように構成された攪拌脱泡装置であって、前記容器4の公転による遠心力によって重心が移動するバランス調整装置Vを備え、前記バランス調整装置Vは、移動体25を有し、該移動体25は、径方向内側に付勢され、前記容器4の公転による遠心力によって該付勢力に抗して外方へ移動する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収容した被処理物を攪拌・脱泡することができる攪拌・脱泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の攪拌・脱泡装置としては、被処理物を収容する容器を回転テーブル上に備え、容器は、公転の他、自転もできるように構成され、回転テーブルの回転による容器の公転に伴い、被処理物が収容された容器重量との重量バランスをとるために設けられた錘を備えたものが既に提案されている。そして、前記のように錘の容器重量との重量バランスをとることによって、容器の回転により発生する振動を小さく抑制することができるようになっている。
【0003】
そして、容器重量に応じて容器重量との重量バランスを調整すべく、錘の位置を変更することができる構成が既に提案されている。これは、テーブルの回転径方向に沿って棒状の螺子部材を設け、この螺子部材に螺合するように円板状の錘の中心に螺子孔を形成して、錘を回転させることにより螺子部材の長手方向に錘を移動させることで錘の位置を変更している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、被処理物を収容する容器を回転フレームの一方側に備え、回転フレームの他方側に、容器に収容される被処理物の重量とのバランスを維持できるようにした重錘装置を搭載し、ハンドルを回動することにより重錘装置の重錘を移動させることで容器重量との重量バランスをとることで容器の回転により発生する振動を小さく抑制することができるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、他の例として、容器の回転に伴い、振動センサにより検出した振動によってアンバランスキャッチ式クラッチ内の接触板を公転軸に接触させ、容器を公転させる動力を利用して錘移動用ボールネジを回転させる。このボールネジの回転によりボールネジ上のバランス調整用錘を外側方向に移動させて、容器の回転により発生する振動を小さく抑制することができるようにしている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−290642号公報(図1、図6参照)
【特許文献2】特開2008−93540号公報(図1、図2参照)
【特許文献3】特開平6−71110号公報(図1、図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2では、テーブルが回転する前において容器に収容される被処理物の重量とのバランスをとっているが、以下のような不都合がある。つまり、容器の公転に伴って容器が遠心力を受けることになり、該遠心力の大きさなどによっては、容器内の被処理物が容器内面に沿って競り上がる。これにより、被処理物が入った容器の重心が移動してしまい、錘と容器との重量バランスが崩れ、振動が発生してしまう。しかしながら、特許文献1及び特許文献2の攪拌・脱泡装置では、被処理物が入った容器の重心が移動してしまうことまで考慮されていないため、発生した振動を回避する手立てがなく、容器の重心の移動により発生した振動を抑えることができない不都合があった。
【0008】
また、特許文献3では、容器の重心の移動により発生した振動を小さく抑えることができるものの、振動センサやアンバランスキャッチ式クラッチの他、それらを制御するコントローラなどが必要になり、コスト高になる不都合があった。
【0009】
そこで、本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであって、その解決しようとするところは、簡素な構成で容器の重心位置の変動により発生する振動を小さく抑えることができる攪拌・脱泡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の攪拌・脱泡装置は、前述の課題解決のために、被処理物を収容する容器を備え、該容器は、公転又は自転あるいはそれら両方ができるように構成された攪拌脱泡装置であって、前記容器の公転による遠心力によって重心が移動するバランス調整装置を備えたことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、容器の公転に伴って容器が遠心力を受けて、容器内の被処理物が容器内面に沿って競り上がると、被処理物が入った容器の重心が移動することになるが、容器が遠心力を受けた時点で、バランス調整装置の重心も自ずと移動することによって、容器の重心位置とバランス調整装置の重心位置とがバランスして、振動の発生を小さく抑制することができる。
【0012】
また、本発明の攪拌・脱泡装置は、前記バランス調整装置は、移動体を有し、該移動体は、径方向内側に付勢され、前記容器の公転による遠心力によって該付勢力に抗して外方へ移動する構成であってもよい。
【0013】
また、本発明の攪拌・脱泡装置は、前記バランス調整装置全体が径方向内外に移動して、該バランス調整装置の設置位置を変更可能に構成してもよい。
【0014】
また、本発明の攪拌・脱泡装置は、前記バランス調整装置は、錘を有し、該錘に移動体が設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明の攪拌・脱泡装置は、前記錘が径方向内外に移動して、該錘の設置位置を変更可能に構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明における攪拌・脱泡装置にあっては、容器の公転に伴って容器が遠心力を受けて、被処理物が入った容器の重心が移動する場合であっても、バランス調整装置が自ずと移動して容器の重心位置とのバランスをとることができるから、容器の重心位置の変動により発生する振動を確実に小さく抑えることができる攪拌・脱泡装置を提供することができる。しかも、バランス調整装置の移動が自ずと行われることから、振動センサやアンバランスキャッチ式クラッチの他、それらを制御するコントローラなどを用いる構成に比べて、簡素な構成にすることができ、コスト面において有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る攪拌・脱泡装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同攪拌・脱泡装置の一部を省略した縦断面図である。
【図3】錘の位置を変更する変更手段の具体的構成を示し、(a)は上から見た斜視図、(b)は下から見た斜視図、(c)は平面図である。
【図4】変更手段を構成する操作ハンドルを段階的に回転操作した平面図であり、(a)は15度回転操作した状態を示し、(b)は33度回転操作した状態を示し、(c)は45度回転操作した状態を示し、(d)は66度回転操作した状態を示している。
【図5】錘の重心位置を調整するための調整手段の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図6】錘の重心位置を調整するための調整手段の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図7】(a)〜(f)は、バランス調整装置の別の6種類の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る攪拌・脱泡装置の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本実施形態における攪拌・脱泡装置1を示している。この攪拌・脱泡装置1は、複数の材料からなる被処理物を攪拌・脱泡処理することができる装置である。尚、被処理物は、例えば医療用材料や電子部品材料、液晶材料などの気泡を嫌う被攪拌材料である。そして、本体部3の上部に、容器4の上部と後述する錘8を移動操作する後述の回転ハンドル21とを露出させるための2つの開口9A,9Bが形成されたカバー部材9を設けている。このように回転ハンドル21をカバー部材9から上方に露出させることによって、回転ハンドル21全体を上方から容易に指で掴んで回転操作を迅速に行うことができる。
【0019】
図1に示す攪拌・脱泡装置1は、上端に開口2Kが形成された上方開放型のケーシング2と、そのケーシング2内に収容された本体部3とを備えている。本体部3は、図2に示すように、被処理物を収容する容器4を回転自在に支持するテーブル5と、容器4をテーブル5上で自転させる自転用駆動機構6と、テーブル5を回転させることにより容器4を公転させる公転用回転駆動機構7と、容器4の公転又は自転あるいはそれら両方が行われることにより発生する遠心力によって自ずと移動して容器4の重心位置とのバランスをとることができるバランス調整装置Vとを備えている。従って、テーブル5を回転させつつ、容器4をテーブル5上で自転させることによって、容器4内の被処理物を攪拌・脱泡処理しながらも、容器4の重心位置変動による振動発生を抑制することができるように構成している。
【0020】
前記バランス調整装置Vは、図5に示すように、前記テーブル5の回転径方向に移動自在で、かつ、回転径方向内側に付勢された移動体25と、該移動体25を移動自在に載置する台部8Aと移動体25を覆うためのカバー部8Bとからなる錘8とを備えている。ここでは、錘8を、台部8Aとカバー部8Bとから構成しているが、台部8Aのみで構成することもできる。
【0021】
前記台部8Aは、テーブル5の回転軸から離間する側(径方向外側)ほど上方に位置する傾斜面24を有している。また、台部8Aの上面と前記カバー部8Bの内面との間に、前記移動体25が該傾斜面24を移動可能な空間8Kを形成している。そして、テーブル5の回転停止時には、空間8K内に配置された前記移動体25は、自重により傾斜面24の下部に移動付勢され、テーブル5の回転数が所定回転よりも高くなる、つまり容器4の公転による遠心力が所定の大きさ以上になると、前記傾斜面24を上っていくようになっている。前記移動体25は、傾斜面24を容易に転がっていけるように球体から構成されている。従って、停止状態のテーブル5を回転させることによって、容器4の公転による遠心力を受けることで図5の実線の初期位置から矢印方向へ自ずと移動していき、バランス調整装置Vの重心位置を自動的に調整することができるようになっている。図5の2点鎖線で示す移動体25の位置が最上部の位置である。この場合、傾斜面24の傾斜角度や移動体25の重量などを変更することによって、バランス調整装置Vの重心位置の調整度合いを変更することができる。尚、図5で説明しなかった他の部分は図2と同一構成であるため、同一の符号を付すとともに説明を省略している。
【0022】
また、前記錘8内の空間8K内に移動体25の移動抵抗となる粘性流体Rを充填しており、テーブル5が一定速度の回転になるまでの間に、錘8が傾斜面24上を頻繁に上下するようなことがないようにしている。
【0023】
前記錘8は、図3(a),(b),(c)に示すように、4つの角が取れた平面視においてほぼ八角形となる塊からなっている。
【0024】
また、前記バランス調整装置V全体が、前記テーブル5の回転に伴い、被処理物が収容された容器重量との重量バランスをとるために該テーブル5上の設置位置をテーブル5が回転する前に予め変更できるように構成されている。つまり、被処理物を収容する収容量により変化する容器重量に応じてバランス調整装置V全体の位置を回転径方向で変更する変更手段18を備えている。このように容器重量との重量バランスを調整することにより、容器重量とのバランスを調整しないでテーブル5を回転させることにより振動が発生することを抑えることができるようになっている。ここで言う容器重量は、容器4の重量と被処理物の重量とを合計した重量である。
【0025】
変更手段18は、図2及び図3に示すように、錘8をテーブル5上で回転径方向に沿って直線状に移動案内するための案内部材19と、前記バランス調整装置Vを移動させるための駆動機構20とを備えている。案内部材19は、板状部材からなり、この板状部材19にバランス調整装置Vの錘8が嵌まり込んでバランス調整装置Vを回転径方向でのみ移動させることができる溝19Mを形成している。
【0026】
駆動機構20が、縦軸Z回りで回動操作自在に構成された円形の回転ハンドル21と、該回転ハンドル21の回転操作力をバランス調整装置Vの移動力へ変換するための変換機構22とを備えている。前記回転ハンドル21、バランス調整装置Vの錘8、板状部材19の3つの部材に、螺子軸でなる回転軸29を上下方向で貫通し、その回転軸29の上下の突出端にナット30を螺合することによって、3つの部材21,8,19を一体化(ユニット化)している。
【0027】
変換機構22は、バランス調整装置Vの錘8にそのバランス調整装置Vの移動方向と直交する方向に形成された長孔8Aと、回転ハンドル21に貫通して下端から突出し、その突出端21Tが長孔8A内に入り込む棒状(円柱状)の操作部材21Aとを備えている。従って、回転ハンドル21を回転させることにより、操作部材21Aが長孔8Aを押すことで錘8が案内部材19に案内されてテーブル5の回転径方向へ移動することができるようになっている。
【0028】
そして、図3(c)に示す回転ハンドル21の回転位置から回転ハンドル21を時計回りに所定角度α回転させた状態を図4(a)から(d)に示している。図4(a)は、所定角度αが15度でバランス調整装置Vが回転ハンドル21の回転中心から所定距離L(7.635mm)移動した場合を示し、図4(b)は、所定角度αが33度でバランス調整装置Vが回転ハンドル21の回転中心から所定距離L(16mm)移動した場合を示し、図4(c)は、所定角度αが45度でバランス調整装置Vが回転ハンドル21の回転中心から所定距離L(20.86mm)移動した場合を示し、図4(d)は、所定角度αが最大角度の66度でバランス調整装置Vが回転ハンドル21の回転中心から所定距離L(27mm)移動した場合を示している。この最大角度は、長孔8Aの長さによって設定変更することができる。図4においてバランス調整装置Vを、テーブル5の回転中心から離れる側(外方側)へ移動(図4では左側へ移動)させる場合を示したが、図3(c)の位置からテーブル5の回転中心へ近付く側(内方側)へ移動(図4では右側へ移動)させるように、回転ハンドル21を半時計回りに回転操作してもよい。このように回転ハンドル21を一回転もさせない角度、更には180度未満の角度範囲(ここでは66度の範囲)で回動操作するだけで、バランス調整装置Vの位置を大きくスライドさせることができる利点がある。
【0029】
図4に示す符号8Bは、バランス調整装置Vの移動時に回転ハンドル21の回転軸29を逃がすために、バランス調整装置Vの錘8にそれの移動方向に形成した長孔である。また、図4においてバランス調整装置Vに移動方向と直交する長孔8Aを2個形成することによって、操作部材21Aをいずれの長孔8A又は8Aにも入り込ませることができるが、1個の長孔のみを形成して実施してもよい。尚、前記操作部材21Aに対して回転ハンドル21の点対称となる位置に別の操作部材21Bを備えておき、いずれか一方の操作部材21A又は21Bを長孔8A又は8Aに入り込ませて実施することもできる。
【0030】
公転用回転駆動機構7は、電動モータであり、その電動モータ7から上方へ突出する駆動回転軸(図示せず)に外嵌されて一体回転する支軸10の上端に、テーブル5の中央部5Aを連結している。従って、電動モータ7を駆動することによりテーブル5を縦軸(上下軸芯)X周りで回転させることで容器4を公転させることができるようになっている。
【0031】
テーブル5は、支軸10が連結された中央部5Aと、この中央部5Aの外側に位置し、中央部よりも低くなった水平部5Bと、この水平部5Bの所定範囲において折り曲げられて回転径方向外側ほど上方に位置する傾斜面5cが形成された傾斜部5Cとを備えている。そして、テーブル5の回転中心から所定距離外側に位置する傾斜部5Cに容器4を縦軸Y回りで回転自在に取り付け、この容器4と縦軸Xを挟んで回転径方向でほぼ対称となる水平部5Bの位置に錘8を備えている。容器4の回転軸である縦軸Yは、その上端側ほどテーブル5の回転中心(縦軸X)側に位置するように傾斜している。
【0032】
容器4は、被処理物を収容する容器本体4Aと、テーブル5に回転自在に取り付けられ、該容器本体4Aが着脱自在に内装される回転部材4Bとからなり、回転部材4Bの下部に円周状の溝4Mが形成されている。
【0033】
自転用駆動機構6は、前記電動モータ7を駆動することにより支軸10と連れ回りするプーリ15と、プーリ15の回転力を伝達するべく、プーリ15と前記回転部材4Bの溝4Mとに渡って巻回された伝導ベルト17とを備えている。前記プーリ15は、上下に溝15A,15Bが形成され、上側の溝15Aに伝導ベルト17が掛け回されている。そして、下側の溝15Bに伝導機構12を介してパウダーブレーキ11が連結されている。このパウダーブレーキ11に印加する電圧を増減させることによって、プーリ15に加えられる回転負荷を可変することでプーリ15の回転数を変化させることができるようになっている。
【0034】
伝達機構12は、パウダーブレーキから水平方向へ突出する出力軸11Aに一体回転自在に取り付けられた負荷用プーリ13と、前記プーリ15の下側の溝15Bと、負荷用プーリ13と前記プーリ15とを連動連結する伝動ベルト16とを備えている。
【0035】
公転用回転駆動機構7によるテーブル5の回転数及び自転用回転駆動機構6による容器4の回転数は、予め設定されて記憶されている複数の回転数の中から被処理物に合わせてそれぞれの回転数を選択するようにしてもよいし、任意の回転数を選択して攪拌・脱泡装置1を運転するようにしてもよい。
【0036】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、図5で示したバランス調整装置Vの構成を、図6に示すように構成することができる。
つまり、錘8の内部空間8K内に、揺動自在に取り付けられた移動体26を備え、その移動体26は、枢支部27に連結された棒状のアーム部26Aと、このアーム部26Aの下端に一体形成された球状の錘部26Bとを備えている。そして、移動体26をテーブル5の回転中心側に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング28を設けている。従って、テーブル5が回転して容器4の公転による遠心力によって、移動体26がコイルスプリング28の付勢力に抗してテーブル5の回転中心から離間しつつ上方(テーブル径方向外側)へ揺動されることで、バランス調整装置Vの重心が移動して容器4の重心位置とバランス調整装置Vの重心位置とがバランスすることになる。この場合、コイルスプリング28の付勢力や移動体26の重量などを変更することによって、バランス調整装置Vの重心位置の調整度合いを変更することができる。図6の実線で示す移動体26の位置が最下部の初期位置であり、2点鎖線で示す移動体26の位置が最上部の位置である。尚、図6で説明しなかった他の部分は図2と同一構成であるため、同一の符号を付すとともに説明を省略している。
【0038】
また、更に、バランス調整装置Vを、図7(a)〜(f)に示すように構成してもよい。
図7(a)では、上方が開放された容器31と、この容器31を構成する一対の縦壁31A,31Aに貫通する螺子軸32と、螺子軸32に該軸32の回転により移動自在に螺合された錘33と、螺子軸32の突出端に取り付けられたハンドル34とを備え、前記容器31は、複数個のローラ35を介して移動自在に構成され、かつ、コイルバネ36により図7(a)に示す中立位置に付勢されている。従って、ハンドル34を回転させて、螺子軸32の長手方向(テーブルの回転径方向)に移動させることによって、被処理物を収容する収容量により変化する容器重量に応じて錘33の設置位置を変更し、テーブル5を回転させて容器4の公転による遠心力によって変動する被処理物が収容された容器4の重心位置に対して容器31がコイルバネ36の付勢力に抗して図において右肩上がりになるように自ずと移動することによって、容器4の重心位置とバランス調整装置Vの重心位置とがバランスすることになる。
【0039】
図7(b)では、テーブル5の回転径方向に移動可能な錘37を複数個のローラ38を介して移動自在に構成された台部材39上に載置し、その台部材39は、図に示す中立位置にコイルバネ40により付勢されている。従って、テーブル5を回転させて容器4の公転による遠心力によって変動する被処理物が収容された容器4の重心位置に対して台部材39がコイルバネ40の付勢力に抗して図の2点鎖線にて示す右肩上がりになるように自ずと移動して容器4の重心位置とバランス調整装置Vの重心位置とがバランスすることになる。そして、錘37は、図3と同様に、被処理物を収容する収容量により変化する容器重量に応じて台部材39に対する設置位置を変更できるようになっている。尚、錘37の設置位置の変更は、ハンドル21を回転させることになる。
【0040】
図7(c)では、図5で示した移動体25を、円柱状で下端が傾斜面24と同一傾斜角度に形成された移動体41から構成し、移動体41を傾斜面24側に押し付けるコイルバネ42を備えている。従って、テーブル5を回転させて容器4の公転による遠心力によって変動する被処理物が収容された容器4の重心位置に対して、移動体41がコイルバネ42の付勢力に抗してコイルバネ42を上方へ短縮させながら右肩上がりになるように自ずと移動する。この移動によって、容器4の重心位置とバランス調整装置Vの重心位置とがバランスすることになる。尚、バランス調整装置V全体の設置位置の変更は、図3と同様に、ハンドル21を回転させることになる。
【0041】
図7(d)では、図5で示した移動体25をコイルバネ42により傾斜面24の下方側へ移動付勢している。従って、テーブル5を回転させて容器4の公転による遠心力によって変動する被処理物が収容された容器4の重心位置に対して移動体25がコイルバネ42の付勢力に抗して図において2点鎖線で示す右上へ自ずと上っていくことによって、容器4の重心位置とバランス調整装置Vの重心位置とがバランスすることになる。この場合も、図5と同様に、前記錘8が、前記テーブル5の回転に伴い、被処理物が収容された容器重量との重量バランスをとるために該テーブル5上に設置位置変更可能に設けられている。
【0042】
図7(e)では、テーブル5上にコの字状の枠43を固定し、その枠43の一対の縦壁43A,43Aに螺子軸44を貫通させるとともに、螺子軸44に該軸44の回転により移動自在に螺合された錘46と、螺子軸44の突出端に取り付けられたハンドル45とを備え、前記錘46が円弧面を有する凹部46Aを備え、その凹部46Aに円錐状で下面が凹部46Aの円弧面と同一の円弧面を有する形状に構成された移動体としての可動部材47を凹部46Aの円弧面に沿って移動自在に構成し、かつ、コイルバネ48により図に示す中立位置に移動付勢されている。従って、テーブル5を回転させて容器4の公転による遠心力によって変動する被処理物が収容された容器4の重心位置に対して、可動部材47がコイルバネ48の付勢力に抗して図において矢印方向に移動する。この移動によって、容器4の重心位置とバランス調整装置Vの重心位置とがバランスすることになる。前記ハンドル45を回転させて、螺子軸44の長手方向(テーブルの回転径方向)に移動させることによって、被処理物を収容する収容量により変化する容器重量に応じてバランス調整装置Vの設置位置を変更する。
【0043】
図7(f)では、図7(e)で示した凹部を備えた錘46が正面視において直角三角形状の錘49となり、その錘49の傾斜面49Aに移動自在な立方体でなる移動体としての可動部材50と、可動部材50を錘49の傾斜面49Aの下方に移動付勢するためのコイルバネ51を備えている。従って、テーブル5を回転させて容器4の公転による遠心力によって変動する被処理物が収容された容器4の重心位置に対して可動部材50がコイルバネ51の付勢力に抗して図において右上側へ移動していくことになる。前記ハンドル45を回転させて、螺子軸44の長手方向(テーブルの回転径方向)に移動させることによって、被処理物を収容する収容量により変化する容器重量に応じてバランス調整装置Vの設置位置を変更する。尚、図において説明しなかった他の構成は、図7(e)と同一であるため、同一の符号を付すとともに説明は、省略する。
【0044】
要するに、図5及び図6では、テーブル5を回転させる前に、被処理物を収容する収容量により変化する容器重量に応じてバランス調整装置V全体の設置位置を設定し、その後、テーブル5を回転させて容器4の公転による遠心力が所定の大きさ以上になることによって、移動体25又は26が移動する。この移動によって、変化した容器4の重心位置とバランス調整装置Vの重心位置とをバランスさせることができるのである。
【0045】
また、前記実施形態では、テーブル5を駆動回転させる電動モータ7により、容器4の自転も行う構成とし、その自転の回転数をパウダーブレーキを用いて可変させるように構成したが、テーブル5を駆動回転させる電動モータと容器を自転させる電動モータとを別々に設けて実施してもよい。尚、テーブル5を駆動させる駆動手段及び容器4を自転させる駆動手段としては、電動モータ以外のアクチュエータであってもよい。
【0046】
また、本発明の攪拌・脱泡装置を構成するバランス調整装置Vは、テーブル5の回転による容器4の公転による遠心力によって自ずと外方へ移動するようになっているが、容器4の自転を含めた公転により変化する遠心力によって自ずと外方へ移動するようにバランス調整装置Vを構成することもできる。
【0047】
また、前記実施形態では、バランス調整装置が、錘8に移動体25が設けられた一体型にて構成されたが、錘8と移動体25とを別々に設けて構成することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1…攪拌・脱泡装置、2…ケーシング、2K…開口、3…本体部、4…容器、4A…容器本体、4B…回転部材、4M…溝、5…テーブル、5A…中央部、5B…水平部、5C…傾斜部、5c…傾斜面、6…自転用駆動機構、7…公転用回転駆動機構、7…電動モータ、8…錘、8A…長孔、8K…空間、9…カバー部材、9A,9B…開口、10…支軸、11…パウダーブレーキ、11A…駆動軸、12…伝達機構、13…駆動用プーリ、15…中継用プーリ、16…伝動ベルト、17…伝動ベルト、18…変更手段、19…案内部材(板状部材)、20…駆動機構、21…回転ハンドル、21A…操作部材、22…変換機構、23…調整手段、24…傾斜面、25,26…移動体、27…枢支部、28…コイルスプリング、29…回転軸、30…ナット、31…容器、31A…縦壁、32…螺子軸、33…移動体、34…ハンドル、35…ローラ、36…コイルバネ、37…錘、38…ローラ、39…台部材、40…コイルバネ、41…移動体、42…コイルバネ、43…枠、43A…縦壁、44…螺子軸、45…ハンドル、46…錘、46A…凹部、47…可動部材、48…コイルバネ、49…錘、50…可動部材、51…コイルバネ、X,Y,Z…縦軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する容器を備え、
該容器は、公転又は自転あるいはそれら両方ができるように構成された攪拌脱泡装置であって、
前記容器の公転による遠心力によって重心が移動するバランス調整装置を備えたことを特徴とする攪拌・脱泡装置。
【請求項2】
前記バランス調整装置は、移動体を有し、該移動体は、径方向内側に付勢され、前記容器の公転による遠心力によって該付勢力に抗して外方へ移動することを特徴とする請求項1記載の攪拌・脱泡装置。
【請求項3】
前記バランス調整装置全体が径方向内外に移動して、該バランス調整装置の設置位置を変更可能に構成していることを特徴とする請求項1又は2記載の攪拌・脱泡装置。
【請求項4】
前記バランス調整装置は、錘を有し、該錘に移動体が設けられていることを特徴とする請求項2記載の攪拌・脱泡装置。
【請求項5】
前記錘が径方向内外に移動して、該錘の設置位置を変更可能に構成していることを特徴とする請求項4記載の攪拌・脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−36804(P2011−36804A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186419(P2009−186419)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000145286)株式会社写真化学 (7)
【Fターム(参考)】