説明

攪拌処理装置

【課題】攪拌羽根、特に攪拌羽根のボス部及び羽根部の根元部分に対する被処理物の付着を抑制又は防止する。
【解決手段】流入孔5a5を介してチャンバC1に流入した温調水は、羽根部4の往路4c及びこれに連通した復路4dを流通して、隣接するチャンバC2に流入する。チャンバC2に流入した温調水は、隣接するチャンバC3に流入し、同様の態様で羽根部4の往路4c及び復路4dを流通して隣接するチャンバC4に流入する。チャンバC4に流入した温調水は、チャンバC5に流入し、同様の態様で羽根部4の往路4c及び復路4dを流通して隣接するチャンバC6に流入する。そして、チャンバC6に流入した温調水は、チャンバC6から排出孔5a6を介して流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化学薬品、食品、農薬、飼料、化粧品、ファインケミカル等の製造分野において、粉粒体の混合、造粒又はコーティング等の処理を行う攪拌処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の攪拌処理装置は、通常、被処理物(粉粒体)の攪拌混合を行う攪拌羽根を処理容器の底部に配置すると共に、クロススクリュー(又はチョッパー)と呼ばれる解砕羽根を処理容器の側部に配置して構成される(例えば下記の特許文献1、2)。
【0003】
攪拌羽根は、処理容器の底部の中心部に位置し、回転駆動軸に連結されたボス部と、ボス部の外周に接続された複数の羽根部とで構成され、回転駆動軸の回転に伴い、ボス部に接続された各羽根部が処理容器の底部内面と側部内面との間に僅かなクリアランスを維持しながら回転して被処理物の混合攪拌を行う。また、処理容器の温度を管理するために、処理容器の外面をジャケットで覆い、処理容器の外面とジャケットの内面との間に形成される空間(ジャケット部)に温調水を流通させるようにする場合もある。
【0004】
さらに、下記の特許文献3には、チョコレートのコーティングや成形に用いる攪拌処理装置において、処理容器のジャケット部に加え、攪拌羽根の羽根部の内部に加温水を流通させて、処理容器の内面や羽根部の外表面にチョコレートが付着するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−236号公報
【特許文献2】特開2007−307447号公報
【特許文献3】特開2007−300861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被処理物の処理時、攪拌羽根の羽根部の外周側部分は常に被処理物と接触しており、被処理物へのせん断作用や遠心力が強く働くため、被処理物の付着は起こりにくいが、回転中心にあるボス部やその付近の羽根部の根元部分はせん断作用や遠心力が弱く、被処理物が一旦付着してしまうと、その状態が維持され、製品として排出できなくなる。そのため、製品の収率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、攪拌羽根、特に攪拌羽根のボス部及び羽根部の根元部分に対する被処理物の付着を抑制又は防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、被処理物が収容される処理容器と、処理容器の底部に回転自在に配設された攪拌羽根とを備えた攪拌処理装置において、攪拌羽根は、回転駆動軸に連結されたボス部と、ボス部の外周に接続された複数の羽根部と、攪拌羽根の内部に温度調整された流体を流通させる流通路とを備え、流通路は、羽根部の内部に設けられ、上記流体を羽根部の長手方向に沿って往復流通させる往路及び復路と、ボス部の外周内部に設けられ、羽根部の往路と連通孔を介して連通する往路側チャンバと、羽根部の復路と連通孔を介して連通する復路側チャンバとを有する構成を提供する。ここで、上記流体は、水等の液体又は空気等の気体である。
【0009】
上記構成において、往路側チャンバと復路側チャンバを、各羽根部に対してそれぞれ設けると共に、ボス部の円周方向に交互に配列するようにしても良い。
【0010】
また、円周方向に隣接する所定の往路側チャンバと復路側チャンバのうち、一方を上記流体の流入孔と連通させ、他方を上記流体の排出孔と連通させ、その他の往路側チャンバと復路側チャンバとを円周方向に相互に連通させるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、攪拌羽根の羽根部の内部に設けた往路及び復路と、ボス部の外周内部に設けたチャンバに温度調整された流体を流通させているので、攪拌羽根の外表面、特にせん断作用や遠心力が弱く、被処理物の付着が起こり易いボス部及び羽根部の根元部分への被処理物付着を効果的に防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る攪拌処理装置の全体構成を概念的に示す一部断面図である。
【図2】攪拌羽根を示す一部平面図である。
【図3】羽根部の横断面を示す断面図である。
【図4】ボス部の側面図{図4(a)}、断面図{図4(b)}である。
【図5】基部の平面図{図4(a)}、断面図{図4(b)、(c)}である。
【図6】攪拌羽根内の温調水の流通態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、この実施形態に係る攪拌処理装置1の全体構成を概念的に示している。
【0015】
処理容器2は底部2aと側部2bとで構成され、側部2bの下方部分は円筒状、上方部分は上方に向かって漸次縮径した円錐筒状に形成されている。処理容器2の外面側をジャケットで覆い、ジャケットの内面と処理容器の外面との間に形成される空間部に温度調整された流体(流体又は気体)、例えば水(加温水又は冷却水)を流通させて、処理容器2の温度を制御するようにしても良い。
【0016】
処理容器2の側部2bは上端が開口し、上端開口部に蓋部材が適宜の開閉機構により開閉自在に装着される(図示省略)。また、蓋部材には、結合剤液や膜剤液等を供給する液供給手段の挿入口、処理容器2内の空気を排気するための排気部、熱風の供給口や点検窓、必要に応じて、洗浄液供給手段の挿入口などが設置される。さらに、側部2bには、必要に応じて、クロススクリュー(又はチョッパー)と呼ばれる解砕羽根が水平方向の軸線回りに回転自在に配設される(図示省略)。
【0017】
処理容器2の底部2aには、攪拌羽根3が回転自在に配設されている。攪拌羽根3は、底部2aの内面と側部2bの内面との間に僅かなクリアランスを維持しながら回転する複数(この実施形態では3枚)の羽根部4と、複数の羽根部4が放射状に接続されたボス部5とを備えている。攪拌羽根3の回転駆動軸6はボス部5に連結され、底部2aの中心部に固定された環状のブッシュ7を鉛直方向下方に貫通して減速機8に連結されている。減速機8には、図示されていないモータから回転動力が入力される。
【0018】
図2に示すように、各羽根部4は、ボス部5の外周から半径方向に延びた基部4aと、基部4aから回転方向前方に所定角度で屈曲した先端部4bとで構成される。基部4aと先端部4bは、回転方向前方に下り勾配となるように所定角度傾斜で傾斜している。
【0019】
図3に示すように、各羽根部4は中空状に形成され、その内部が長手方向に沿って空間部4c、4dに区画されている。空間部4cと空間部4dは、羽根部4の外径端部で相互に連通し、また、後述するボス部5の連通孔5b1、5b2とそれぞれ連通する。
【0020】
図4に示すように、ボス部5は、外観形状が概ね円錐台形状をなし、中心側の基部5aと、基部5aを外周側から覆うカバー部5bとで構成される。
【0021】
基部5aは、回転駆動軸6の上端部が嵌合される軸穴部5a1と、環状のブッシュ7に嵌合される嵌合部5a2を有している。軸穴部5a1には、円周溝5a3、5a4が上下方向に離隔して形成され、円周溝5a3、5a4はそれぞれ半径方向の貫通孔5a5、5a6と連通している。この実施形態において、貫通孔5a5、5a6は、それぞれ、円周方向に近接した3箇所に設けられている(図5参照)。また、カバー部5bは、羽根部4の空間部4cと連通する連通孔5b1と、羽根部4の空間部4dと連通する連通孔5b2を有している。尚、連通孔5b1と連通孔5b2は、各羽根部4に対してそれぞれ設けられている。
【0022】
図5に示すように、基部5aの外周には、外径側に所定寸法だけ突出した複数の仕切壁Dが設けられている。仕切壁Dは、上下方向の高さが相対的に大きい複数の第1仕切壁D1と、上下方向の高さが相対的に小さい複数の第2仕切壁D2とで構成され、第1仕切壁D1と第2仕切壁D2は所定の間隔で円周方向に配列されている。第1仕切壁D1及び第2仕切壁D2の外周はカバー部5bの内周と適合する形状及び寸法を有し、カバー部5bを基部5aに溶接等の適宜の手段で固定すると、カバー部5bの内周と基部5aの外周との間に第1仕切壁D1及び第2仕切壁D2で仕切られた複数の空間部C1〜C6が形成される。高さの大きい第1仕切壁D1を介して円周方向に隣接する空間部C1とC2、C3とC4、C5とC6、C6とC1は、第1仕切壁D1によって相互に分離され、高さの小さい第2仕切壁D2を介して円周方向に隣接する空間部C2とC3、C4とC5は、第2仕切壁D2の頂部上方の連通空間を介して相互に連通する。また、空間部C1には貫通孔5a5が開孔し、空間部C6には貫通孔5a6が開孔している。さらに、この実施形態では、第2仕切壁D2と同じ形状及び高さで、第2仕切壁D2よりも幅寸法が小さい第3仕切壁D3を第1仕切壁D1の近くに設け、空間C1、C3、C5内に位置させている。尚、この第3仕切壁D3は省略しても良い。以下、空間C1〜C6を「チャンバC1〜C6」、貫通孔5a5を「流入孔5a5」、貫通孔5a6を「排出孔5a6」と呼ぶ。
【0023】
図1に示すように、処理容器2は底部2aの中心部に設けられた装着穴にブッシュ7が固定され、ブッシュ7の内周に回転駆動軸6の上部が回転自在に挿通される。そして、回転駆動軸6の上端部にボス部5の基部5aの軸受穴5a1(図4参照)を外嵌すると共に、基部5aの嵌合部5a2をブッシュ7に嵌合させた後、回転駆動軸6の上端に設けられた雄ネジにロックナットを締結して、ボス部5を回転駆動軸6に連結する。これにより、攪拌羽根3が処理容器2の底部2aに回転自在に設置される。
【0024】
回転駆動軸6の内部には、所定温度に温度調整された流体(液体又は気体)、この実施形態では所定温度に温度調整された水(以下、「温調水」という。)が供給される流入通路6aと、温調水が排出される排出通路6bとが設けられており、流入通路6aの上端開孔は基部5aの下側の円周溝5a3(図4参照)と連通し、排出通路6bの上端開孔は基部5aの上側の円周溝5a4と連通する。
【0025】
回転駆動軸6の流入通路6aに温調水(加温水又は冷却水)が供給されると、温調水は流入通路6aを流通してボス部5の基部5aの円周溝5a3に流入し、円周溝5a3から流入孔5a5を介してチャンバC1に流入する。図6に示すように、チャンバC1はその円周方向両側が第1仕切壁D1によって仕切られているので、チャンバC1に流入した温調水はカバー部5bの連通孔5b1から羽根部4の空間部4cに流入し(以下、空間部4cを「往路4c」という。)、往路4c及びこれに連通した空間部4d(以下、空間部4cを「復路4d」という。)を流通して、カバー部5bの連通孔5b2から、チャンバC1と円周方向に隣接するチャンバC2に流入する。チャンバC2に流入した温調水は、第2仕切壁D2の頂部上方の連通空間を介して隣接するチャンバC3に流入し、上記と同様の態様で羽根部4の往路4c及び復路4dを流通して隣接するチャンバC4に流入する。チャンバC4に流入した温調水は、第2仕切壁D2の頂部上方の連通空間を介して隣接するチャンバC5に流入し、上記と同様の態様で羽根部4の往路4c及び復路4dを流通して隣接するチャンバC6に流入する。そして、チャンバC6に流入した温調水は、チャンバC6から排出孔5a6を介して基部5aの円周溝5a4に入り、円周溝5a4から回転駆動軸6の排出通路6bを通って外部に流出する。
【0026】
以上のように、この実施形態の攪拌処理装置は、攪拌羽根3の各羽根部4の内部に設けた往路4c及び復路4dと、ボス部5の外周内部に設けたチャンバC1〜C6に温調水を流通させているので、攪拌羽根3の外表面、特にせん断作用や遠心力が弱く、被処理物の付着が起こり易いボス部5及び羽根部4の根元部分への被処理物付着が効果的に防止又は抑制される。
【符号の説明】
【0027】
2 処理容器
2a 底部
3 攪拌羽根
4 羽根部
4c 往路
4d 復路
5 ボス部
C1〜C6 チャンバ
5b1 連通孔
5b2 連通孔
5a5 流入孔
5a6 排出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が収容される処理容器と、該処理容器の底部に回転自在に配設された攪拌羽根とを備えた攪拌処理装置において、
前記攪拌羽根は、回転駆動軸に連結されたボス部と、該ボス部の外周に接続された複数の羽根部と、前記攪拌羽根の内部に温度調整された流体を流通させる流通路とを備え、
前記流通路は、前記羽根部の内部に設けられ、前記流体を前記羽根部の長手方向に沿って往復流通させる往路及び復路と、前記ボス部の外周内部に設けられ、前記羽根部の往路と連通孔を介して連通する往路側チャンバと、前記羽根部の復路と連通孔を介して連通する復路側チャンバとを有することを特徴とする攪拌処理装置。
【請求項2】
前記往路側チャンバと前記復路側チャンバは、前記各羽根部に対してそれぞれ設けられており、かつ、前記ボス部の円周方向に交互に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌処理装置。
【請求項3】
円周方向に隣接する所定の前記往路側チャンバと前記復路側チャンバのうち、一方は前記流体の流入孔と連通し、他方は前記流体の排出孔と連通し、その他の前記往路側チャンバと前記復路側チャンバとは円周方向に相互に連通することを特徴とする請求項2に記載の攪拌処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224446(P2011−224446A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94970(P2010−94970)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】