説明

支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法及びシステム

【課題】現金自動機の操作時に操作者が変装したり帽子を被ったりしている場合はキャッシュカードの不正使用であるとしてATM支払い処理に制限を加えることが考えられ、ATM支払い処理に制限を加えることで、キャッシュカードCを不正使用した現金支払い等処理による損害を防止し或いは極力少なくすることができる。
【解決手段】コンピュータシステムによって実行され、キャッシュカードCを用いて現金自動機を操作する際、操作者Oの顔面に付加されている顔面付加物についての付加物情報と、キャッシュカード正当使用者によって予め登録された操作者Oの顔面に付加される顔面付加物についての登録情報から、操作者の顔面に顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないかを判定し、非顔面付加物が付加されている場合、現金自動機の取り扱い金額に制限を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法及びシステムに関し、特に、キャッシュカードを用いた現金自動機による支払い操作時に操作者が正当操作者であることが確認できない場合、支払い時の金額制御を行う支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャッシュカードを用いた操作により現金を自動的に引き出すことができる、現金自動預払い機(Automated Teller Machine:ATM)や現金自動支払機(Cash Dispenser:CD)等の支払機能を備えた現金自動機が知られている。
このような支払機能を備えた現金自動機においては、キャッシュカードの読み込みと共に暗証番号入力等の必要な操作を行えば、簡単・便利に現金の引き出し等ができるので、キャッシュカードの名義人に成り済ましてのカード名義人以外によるキャッシュカードの不正使用によっても現金の引き出しが可能である。
【0003】
そこで、キャッシュカードを用いたATM不正操作による現金の不正引き出し防止対策として、カード名義人に成り済ましてのカード不正使用を監視するため、ATMの操作時に操作者の顔面像を撮影し記録する撮影録画装置の設置が進んでいる。このようなカード不正使用対策として、例えば、ATM利用者の顔認識によってキャッシュカード使用の認証を得る「顔認識によるセキュリティ方法」(特許文献1参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−196516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現金自動機の操作時に操作者の顔面像を撮影し記録する撮影録画装置が設置してあると、カード不正使用者は、撮影録画装置を意識してマスクや色眼鏡や付け髭等を付加して変装したり或いは帽子を被ったりして、カード不正使用時に撮影された顔面像によるカード不正使用者の特定を困難にする傾向がある。
一方、近年、画像処理技術の発達により、撮影画像中の顔面を画像処理装置により処理して得られた顔面像と予め登録された顔面像とを照合し、照合結果に基づいてゲート開閉を行う顔認証システム、或いは内部に同様な画像処理装置を組み込み笑顔を認識することで自動的にシャッタを切るカメラ等、従来、実現困難であった高度な画像処理技術が安価に利用することができる状況にある(例えば、特開2005−128156号公報、特開2006−33437号公報参照)。
【0006】
このため、高度な画像処理技術を用いて、現金自動機の操作時に撮影した操作者の顔面像から操作者が変装したり帽子を被ったりしていることを認識し、操作者が変装したり帽子を被ったりしている場合はキャッシュカードの不正使用であるとしてATM支払い処理に制限を加えることが考えられる。ATM支払い処理に制限を加えることで、キャッシュカードを不正使用した現金支払い等処理による損害を防止し或いは極力少なくすることができる。
【0007】
この発明の目的は、支払い機能を備えた現金自動機の操作時に撮影した操作者の顔面像により、キャッシュカード名義人以外によるカード不正使用であると判定された場合、現金支払い等処理による損害を防止し或いは極力少なくすることができる、支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明に係る支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法は、本人確認カードの正当使用者によって予め登録された、支払機能を備えた現金自動機を操作する前記正当使用者の顔面に付加される顔面付加物についての登録情報データベースと、前記現金自動機を操作する操作者の顔面付加物についての判定に基づき前記現金自動機の支払機能を制御するプログラムを格納するプログラム格納部と、メインメモリとCPUからなる演算処理部とを備えた、前記現金自動機を管理するコンピュータシステムによって実行される、支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法であって、前記本人確認カードを用いて前記現金自動機を操作する際、前記本人確認カードの挿入検知により、前記操作者の少なくとも顔面を含む顔領域を撮影し顔面撮影画像情報を出力する処理と、前記本人確認カードの挿入検知により、前記登録情報データベースに登録された前記顔面付加物についての登録情報を出力する処理と、前記顔面撮影画像情報から前記操作者の顔面像を切り出して顔面像情報を出力する処理と、前記顔面像情報から、前記操作者の顔面に付加されている顔面付加物についての付加物情報を出力する処理と、前記登録情報と前記付加物情報から、前記操作者の顔面に、前記正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないか否かを判定する処理と、判定の結果、前記操作者の顔面に前記非顔面付加物が付加されている場合、前記現金自動機による支払い金額に制限を加える処理とを有することを特徴としている。
【0009】
また、この発明に係る支払機能を備えた現金自動機における金額制御システムは、本人確認カードの正当使用者によって予め登録された、支払機能を備えた現金自動機を操作する前記正当使用者の顔面に付加される顔面付加物についての登録情報データベースと、前記現金自動機を操作する操作者の顔面付加物についての判定に基づき前記現金自動機の支払機能を制御するプログラムを格納するプログラム格納部と、メインメモリとCPUからなる演算処理部とを備えた、前記現金自動機を管理するコンピュータシステムによって実行される、支払機能を備えた現金自動機における金額制御システムであって、前記本人確認カードを用いて前記現金自動機を操作する操作者に対向して配置され、前記本人確認カードの挿入検知により、前記現金自動機を操作する操作者の少なくとも顔面を含む顔領域を撮影し、顔面撮影画像情報を出力する操作者撮影手段と、前記本人確認カードの挿入検知により、前記登録データベースに登録された前記顔面付加物についての登録情報を出力する登録情報管理手段と、前記顔面撮影画像情報から前記操作者の顔面像を切り出して顔面像情報を出力する顔面像情報出力手段と、前記顔面像情報から、前記操作者の顔面に付加されている顔面付加物についての付加物情報を出力する付加物情報出力手段と、前記登録情報と前記付加物情報から、前記操作者の顔面に、前記正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないか否かを判定して判定結果を出力する非顔面付加物判定手段と、前記判定結果から、前記操作者の顔面に前記非顔面付加物が付加されている場合、前記現金自動機による支払い金額に制限を加える金額制限情報を出力する金額制限手段とを有することを特徴としている。
【0010】
また、この発明の他の態様に係る支払機能を備えた現金自動機における金額制御システムは、前記登録情報管理手段、前記非顔面付加物判定手段、及び前記金額制限手段は、前記正当使用者が口座を開設した金融機関に備えられ、前記操作者撮影手段、前記顔面像情報出力手段、及び前記付加物情報出力手段は、前記現金自動機或いは前記現金自動機の近傍に備えられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法によれば、現金自動機を操作する際、操作者の少なくとも顔面を含む顔領域を撮影し顔面像を切り出して得られた、操作者の顔面に付加されている顔面付加物についての付加物情報と、予め登録情報データベースに登録された顔面付加物についての登録情報から、操作者の顔面に、正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないか否かを判定して、操作者の顔面に前記非顔面付加物が付加されている場合、現金自動機による支払い金額に制限を加えることを、現金自動機を管理するコンピュータシステムによって実行されるので、支払い機能を備えた現金自動機の操作時に撮影した操作者の顔面像により、キャッシュカード名義人以外によるカード不正使用であると判定された場合、現金支払い等処理による損害を防止し或いは極力少なくすることができる。
また、この発明に係る支払機能を備えた現金自動機における金額制御システムにより、上記支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施の形態に係る支払機能を備えた現金自動機における金額制御システムの構成を機能ブロックで示す説明図である。
【図2】図1の支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法による金額制御処理の流れを示す説明図(その1)である。
【図3】図1の支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法による金額制御処理の流れを示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、この発明の一実施の形態に係る支払機能を備えた現金自動機における金額制御システムの構成を機能ブロックで示す説明図である。図1に示すように、金額制御システム10は、撮影カメラ(操作者撮影手段)11、顔認識部(顔面像情報出力手段)12、付加物識別部(付加物情報出力手段)13、付加物判定部(非顔面付加物判定手段)14、カード名義人情報管理部(登録情報管理手段)15、及び金額制限部(金額制限手段)16を有しており、現金自動預払い機(ATM)や現金自動支払機(CD)等の現金支払機能を備えた現金自動機17を利用した、現金の支払い及び現金の支払いに準ずる各種処理(例えば、振り込み等、以下、現金支払い等処理という)における支払金額の制御を行う。
【0014】
現金自動機17を操作して現金支払い等処理を行う場合、現金自動機17の操作者Oは、本人確認のためのカードであるキャッシュカードCをカード挿入口17aに挿入して暗証番号を入力する一連の操作を行い、その結果、当該キャッシュカードCの認証が行われ、暗証番号の一致が確認されると、当該キャッシュカードCの使用がカードの正当使用であると認められ、要求された金額の現金支払い等処理が行われる。
なお、キャッシュカードCは、金融機関が発行したキャッシュカードに限らず、クレジットカード会社が発行するキャッシング機能を備えたクレジットカード等、支払機能を備えた現金自動機17において現金支払い等処理ができる機能を備えた各種カードを含むものである。
【0015】
撮影カメラ11、顔認識部12、及び付加物識別部13は、それぞれ個別に或いは一体化して、現金自動機17の内部或いは外面部或いは近傍に備えられており、付加物判定部14、カード名義人情報管理部15、及び金額制限部16は、キャッシュカードCを発行管理するカード管理会社(例えば、金融機関)に備えられたコンピュータシステム18に、その機能の一部として組み込まれている。
【0016】
コンピュータシステム18は、本人確認カードであるキャッシュカードCの正当使用者によって予め登録された、支払機能を備えた現金自動機17を操作する正当使用者の顔面に付加される顔面付加物についての登録情報データベースと、現金自動機17を操作する操作者の顔面付加物についての判定に基づき現金自動機17の支払機能を制御するプログラムを格納するプログラム格納部と、メインメモリとCPUからなる演算処理部とを備え、現金自動機17の運用を管理する。
【0017】
このコンピュータシステム18のハードディスクには、付加物判定部14、カード名義人情報管理部15、及び金額制限部16の各機能を実行するためのプログラム及びデータが格納されており、各々の機能の実行が選択されると、該当するプログラムがハードディスクからメインメモリに読み出され、CPU(Central Processing Unit)で演算処理を実行して所定の処理を行うことにより、付加物判定部14、カード名義人情報管理部15、及び金額制限部16のそれぞれが実現される。
【0018】
撮影カメラ11は、キャッシュカードCを用いて現金自動機17を操作する操作者Oの少なくとも頭部を含む顔領域全体からなる顔面像を撮影することができるように、カメラレンズ11aを操作者Oに対向させて設置している。そして、操作者Oが、キャッシュカードCを用いた現金自動機17の操作時、即ち、キャッシュカードCを現金自動機17のカード挿入口17aに挿入したことを検知したとき、操作者Oの、例えば、頭部を含む顔全体、即ち、少なくとも顔面周辺部を含む顔領域を撮影する。撮影カメラ11により撮影された顔面撮影画像情報aは、撮影カメラ11から顔認識部12へ出力される。
【0019】
この撮影カメラ11は、現金自動機17に直接設置される他、現金自動機17の周辺近傍に設置しても良く、キャッシュカードCを用いて現金自動機17を操作する操作者Oの顔面像を撮影することができるように、カメラレンズ11aを操作者Oに向けて、即ち、操作者Oに対向して配置されていれば良い。
顔認識部12は、顔面撮影画像情報aの入力により、顔面撮影画像情報aに基づく顔面撮影画像から操作者Oの顔面部を認識して顔面像を切り出し、操作者顔面画像、即ち、撮影カメラ11により得られた顔面撮影画像に基づく顔面像情報bを作成する。作成した操作者Oの顔面像情報bは、付加物識別部13へ出力される。
【0020】
付加物識別部13は、顔認識部12で作成された操作者Oの顔面像情報bから、操作者Oの顔面に付加されている顔面付加物(例えば、眼鏡)の有無を識別し、識別結果として付加物有り或いは付加物無しの付加物情報cを付加物判定部14へ出力する。
付加物判定部14は、付加物識別部13からの付加物情報cと、後述するカード名義人情報管理部15からの登録情報dから、キャッシュカードCを用いて現金自動機17を操作する操作者Oの顔面に、キャッシュカードCの正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないか否かを判定し、判定結果を判定結果情報eとして金額制限部16へ出力する。
【0021】
つまり、顔認識部12、付加物識別部13、及び付加物判定部14により、顔面撮影画像情報aに基づく操作者Oの撮影顔面像において、操作者Oの顔面への付加物の付加が認められた場合、その顔面付加物がカード名義人により予め登録された登録付加物であるか否かを確認する。
【0022】
カード名義人情報管理部15は、カード名義人、即ち、金融機関に口座を開設した口座開設者であるキャッシュカード正当使用者に関する情報の管理を行い、カード名義人が予め登録した、現金自動機17の操作時において操作者Oの顔面に付加される顔面付加物についての登録情報について、登録情報データベースへの登録或いは登録情報データベースからの検索取り出しを行う。操作者Oが現金自動機17を操作するとき、即ち、キャッシュカードCのカード挿入口17aへの挿入が検知されると、カード名義人情報管理部15から付加物判定部14に対し、登録情報データベースに登録された顔面付加物についての登録情報dが出力される。
【0023】
顔面に付加される顔面付加物とは、眼鏡、色眼鏡(サングラスを含む)、口髭、顎髭、帽子、或いはマスク等の、頭部を含む顔面に付加する付加物であり、顔面に付加した状態が撮影画像として認識することができるものである。そして、カード名義人が現金自動機17の操作時において、例えば、マスクを使用する場合、顔面付加物としてマスクを登録する。
【0024】
つまり、キャッシュカードCの正当使用者により予め登録された顔面付加物が、例えば、眼鏡である場合、顔面像情報から、顔面に付加されているのが、眼鏡であれば登録された顔面付加物と判定し、眼鏡以外の色眼鏡、口髭、顎髭、帽子、マスク等であれば、登録された顔面付加物以外の非顔面付加物と判定する。そして、判定結果情報eを金額制御部16へ出力する。
【0025】
顔面に付加された付加物の検出に際しては、以下に示す判定のもと行う。
顔面の目、鼻、口、輪郭を認識する技術は確立されているので、
・目が認識できなければ帽子を被っていると判定し帽子を検出する。
・目の周囲にフレームの一部が存在すれば眼鏡があると判定し眼鏡を検出する。
・眼鏡があり目の認識が困難であれば色眼鏡があると判定し色眼鏡を検出する。
・口が認識できなければマスクを付けていると判定しマスクを検出する。
・口と鼻の間に明確な付加物が確認されれば口ひげがあると判定し口ひげを検出する。
・口の下に明確な付加物が確認されれば顎髭があると判定し顎髭を検出する。
【0026】
ここで、自然に時間経過により濃くなった髭と口髭或いは顎髭との違いは、髭と髭が生えていない部分の境界の明瞭性により判定し、また、髪の毛が長くて自分の目が隠れるため帽子を被っていると判定される場合は、本人、即ち、顔面付加物を登録するキャッシュカードCの正当使用者が、自分の目が隠れないように工夫する。
顔面付加物は、カード名義人により予め登録申請されるが、登録申請を行うための付加物使用申請書の一例を、表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
付加物判定部14における非顔面付加物が付加されていないか否かの判定について、表2の付加条件判定表に基づき説明する。
【0029】
【表2】

【0030】
表2に示すように、付加物が、例えば、眼鏡であった場合、
付加物情報(撮影カメラ11による認識)が「○(有)」で、顔面付加物についての登録情報(金融機関登録情報)が「○(有)」であれば、付加物判定部14による判定は「○(OK)」となる。また、付加物情報が「○(有)」で、顔面付加物についての登録情報が「×(無)」であれば、付加物判定部14による判定は「×(NO)」となり、付加物情報が「×(無)」で、顔面付加物についての登録情報が「○(有)」であれば、付加物判定部14による判定は「○(OK)」となり、付加物情報が「×(無)」で、顔面付加物についての登録情報が「×(無)」であれば、付加物判定部14による判定は「○(OK)」となる。
【0031】
これは、付加物が、眼鏡に代えて、色眼鏡、帽子、マスク、口髭(男性)、顎髭(男性)であった場合も、判定は同様である。
一方、付加物が、口髭(女性)、顎髭(女性)であった場合、
付加物情報が「○(有)」で、顔面付加物についての登録情報が「○(有り得ない)」であれば、付加物判定部14による判定は「×(NO)」となる。また、付加物情報が「○(有)」で、顔面付加物についての登録情報が「×」であれば、付加物判定部14による判定は「×(NO)」となり、付加物情報が「×(無)」で、顔面付加物についての登録情報が「○(有り得ない)」であれば、付加物判定部14による判定は「○(OK)」となり、付加物情報が「×(無)」で、顔面付加物についての登録情報が「×(無)」であれば、付加物判定部14による判定は「○(OK)」となる。
【0032】
そして、付加物判定部14による判定の結果、操作者Oの顔面に、キャッシュカードCの正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されている場合、付加物判定部14は、非顔面付加物が付加されている、即ち、操作者OはキャッシュカードCの正当使用者ではないとして、操作者Oによる現金支払い操作は正当でない旨の判定結果情報eを、金額制限部16へ出力する。
判定結果情報eが入力した金額制限部16は、判定結果情報eに基づき、現在操作中のキャッシュカードCによる現金支払い等処理の金額に制限を加えて、取り扱い金額を0或いは所定の少額にする金額制限情報fを、現金自動機17の制御部17bへ出力する。
【0033】
このとき、金額制限部16は、制御部17bに対し金額制限情報fを出力する前に、現金自動機17の表示画面に、操作者Oに対し顔面への付加物(例えば、マスク)を取り外した状態で最初からカード操作をやり直すように要請する文言を表示しても良い。
現金自動機17の制御部17bに、金額制限情報fが入力することにより、制御部17bは、操作者Oによる現金支払い等操作に対する現金自動機17の取り扱い金額を、予め設定された少額の範囲内か、ゼロ、即ち、支払い拒否になるように制御する。
この結果、現金自動機17における、キャッシュカードCを不正使用した現金支払い等処理による損害を防止し或いは極力少なくすることができる。
【0034】
次に、金額制御システム10による支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法について、説明する。
支払機能を備えた現金自動機17からキャッシュカードCを用いて現金を引き出す等、現金自動機17において支払い操作を行う場合、操作者Oが、キャッシュカードCを現金自動機17のカード挿入口17aに挿入し、そのキャッシュカードCに対応する暗証番号を入力する。
【0035】
図2は、図1の支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法による金額制御処理の流れを示す説明図(その1)であり、図3は、図1の支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法による金額制御処理の流れを示す説明図(その2)である。図2及び図3に示すように、現金自動機17がキャッシュカードCの挿入を検知する(ステップS101)と、現金自動機17から撮影カメラ11に撮影動作指令が出力され、同時に、カード管理会社に備えられたコンピュータシステム18のカード名義人情報管理部15へ、キャッシュカードCの各種情報及び暗証番号が送信される(ステップS102)。
【0036】
撮影動作指令の入力により、カメラレンズ11aを操作者Oに向けた撮影カメラ11は、撮影動作を開始し、操作者Oの頭部を含む顔全体、即ち、少なくとも顔面を含む顔領域を撮影する顔面撮影処理を行う(ステップS103)。また、キャッシュカードCの各種情報及び暗証番号を受信したカード名義人情報管理部15は、キャッシュカードCの各種情報及び暗証番号に基づき、キャッシュカードCを用いて現金自動機17を操作している操作者Oの本人認証を行う(ステップS201)。
【0037】
撮影カメラ11によって撮影された顔面像の情報は、顔面撮影画像情報aとして顔認識部12へ送られ、顔認識部12で、顔面撮影画像情報aから操作者Oの顔面像を切り出す(ステップS104)。その後、顔認識部12から付加物識別部13へ、切り出した顔面像に基づく操作者Oの顔面像情報bを出力し(ステップS105)、付加物識別部13は、入力した操作者Oの顔面像情報bから、操作者Oの顔面に付加されている顔面付加物(例えば、マスク)の有無を識別し、付加物有り或いは付加物無しの付加物情報cを、付加物判定部14へ出力する(ステップS106)。
【0038】
一方、カード名義人情報管理部15において、操作者Oの本人認証が成立する(ステップS202)と、カード名義人情報管理部15から付加物判定部14へ、予め登録されているキャッシュカードCの正当使用者の顔面に付加される顔面付加物についての登録情報dが出力される(ステップS203)。
付加物判定部14に、付加物識別部13からの付加物情報c及びカード名義人情報管理部15からの登録情報dが入力する(ステップS204)と、付加物判定部14は、付加物情報cと登録情報dに基づき、キャッシュカードCを用いて現金自動機17を操作する操作者Oの顔面に、キャッシュカードCの正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないか否かを判定する(ステップS205)。
【0039】
判定の結果、付加物判定部14から金額制限部16へ判定結果情報eが出力され、金額制限部16は、判定結果情報eに基づき、操作者Oの顔面に非顔面付加物が付加されていない(Yes)場合、制御部17bに対し通常の支払い指示を出力し(ステップS206)、一方、操作者Oの顔面に非顔面付加物が付加されている(No)場合、制御部17bに対し金額制限情報fを出力する(ステップS207)。
制御部17bに通常の支払い指示が入力すると、現金自動機17は、操作者Oによる支払い操作に伴う通常の支払い処理を行い、一方、制御部17bに金額制限情報fが入力すると、現金自動機17は、カード操作による現金支払い等処理が可能な金額を予め設定された少額の範囲内にするか、ゼロ、即ち、支払い拒否にする。
【0040】
従って、カード名義人でない者がカード名義人に成り済ましてキャッシングカードCを使用するカード不正使用時、カード不正使用時に撮影された顔面像によるカード不正使用者の特定を困難にするため、マスクや色付き眼鏡や付け髭等を付加して変装したり或いは帽子を目深に被ったりして顔面を隠していれば、操作者Oの顔面画像から、カード名義人が予め登録していた顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されているとして、現金支払い等処理における取り扱い金額を少額化或いは拒否することができる。
この結果、キャッシュカードCを不正使用した現金支払い等処理による損害を防止し或いは極力少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明によれば、現金自動機を操作する際、操作者の少なくとも顔面を含む顔領域を撮影し顔面像を切り出して得られた、操作者の顔面に付加されている顔面付加物についての付加物情報と、予め登録情報データベースに登録された顔面付加物についての登録情報から、操作者の顔面に、正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないか否かを判定して、操作者の顔面に前記非顔面付加物が付加されている場合、現金自動機による支払い金額に制限を加えることを、現金自動機を管理するコンピュータシステムによって実行されるので、支払い機能を備えた現金自動機の操作時に撮影した操作者の顔面像により、キャッシュカード名義人以外によるカード不正使用であると判定された場合、現金支払い等処理による損害を防止し或いは極力少なくすることができるため、支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法及びシステムに最適である。
【符号の説明】
【0042】
10 金額制御システム
11 撮影カメラ
11a カメラレンズ
12 顔認識部
13 付加物識別部
14 付加物判定部
15 カード名義人情報管理部
16 金額制限部
17 現金自動機
17a カード挿入口
17b 制御部
18 コンピュータシステム
C キャッシュカード
O 操作者
a 顔面撮影画像情報
b 顔面像情報
c 付加物情報
d 登録情報
e 判定結果情報
f 金額制限情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本人確認カードの正当使用者によって予め登録された、支払機能を備えた現金自動機を操作する前記正当使用者の顔面に付加される顔面付加物についての登録情報データベースと、前記現金自動機を操作する操作者の顔面付加物についての判定に基づき前記現金自動機の支払機能を制御するプログラムを格納するプログラム格納部と、メインメモリとCPUからなる演算処理部とを備えた、前記現金自動機を管理するコンピュータシステムによって実行される、支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法であって、
前記本人確認カードを用いて前記現金自動機を操作する際、前記本人確認カードの挿入検知により、前記操作者の少なくとも顔面を含む顔領域を撮影し顔面撮影画像情報を出力する処理と、
前記本人確認カードの挿入検知により、前記登録情報データベースに登録された前記顔面付加物についての登録情報を出力する処理と、
前記顔面撮影画像情報から前記操作者の顔面像を切り出して顔面像情報を出力する処理と、
前記顔面像情報から、前記操作者の顔面に付加されている顔面付加物についての付加物情報を出力する処理と、
前記登録情報と前記付加物情報から、前記操作者の顔面に、前記正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないか否かを判定する処理と、
判定の結果、前記操作者の顔面に前記非顔面付加物が付加されている場合、前記現金自動機による支払い金額に制限を加える処理と
を有することを特徴とする支払機能を備えた現金自動機における金額制御方法。
【請求項2】
本人確認カードの正当使用者によって予め登録された、支払機能を備えた現金自動機を操作する前記正当使用者の顔面に付加される顔面付加物についての登録情報データベースと、前記現金自動機を操作する操作者の顔面付加物についての判定に基づき前記現金自動機の支払機能を制御するプログラムを格納するプログラム格納部と、メインメモリとCPUからなる演算処理部とを備えた、前記現金自動機を管理するコンピュータシステムによって実行される、支払機能を備えた現金自動機における金額制御システムであって、
前記本人確認カードを用いて前記現金自動機を操作する操作者に対向して配置され、前記本人確認カードの挿入検知により、前記現金自動機を操作する操作者の少なくとも顔面を含む顔領域を撮影し、顔面撮影画像情報を出力する操作者撮影手段と、
前記本人確認カードの挿入検知により、前記登録データベースに登録された前記顔面付加物についての登録情報を出力する登録情報管理手段と、
前記顔面撮影画像情報から前記操作者の顔面像を切り出して顔面像情報を出力する顔面像情報出力手段と、
前記顔面像情報から、前記操作者の顔面に付加されている顔面付加物についての付加物情報を出力する付加物情報出力手段と、
前記登録情報と前記付加物情報から、前記操作者の顔面に、前記正当使用者の顔面に付加される顔面付加物ではない非顔面付加物が付加されていないか否かを判定して判定結果を出力する非顔面付加物判定手段と、
前記判定結果から、前記操作者の顔面に前記非顔面付加物が付加されている場合、前記現金自動機による支払い金額に制限を加える金額制限情報を出力する金額制限手段と
を有することを特徴とする支払機能を備えた現金自動機における金額制御システム。
【請求項3】
前記登録情報管理手段、前記非顔面付加物判定手段、及び前記金額制限手段は、前記正当使用者が口座を開設した金融機関に備えられ、前記操作者撮影手段、前記顔面像情報出力手段、及び前記付加物情報出力手段は、前記現金自動機或いは前記現金自動機の近傍に備えられていることを特徴とする請求項2に記載の支払機能を備えた現金自動機における金額制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−81499(P2011−81499A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231640(P2009−231640)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000231925)日本コムシス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】