説明

支持ケージ付きフィルター

本発明は、外輪郭が一方の側で開放したシリンダを画成する支持ケージ(3)と、支持ケージ(3)の内側に当接するフィルター(10)とを備えるクロマトグラフのカラム(1)用フィルター要素に関する。また、本発明は、このようなフィルター要素(3、10)が挿入された、一端が開放しており他端に先細り出口(11)を備える注射器型カラム要素(2)を有するクロマトグラフの分離カラムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にクロマトグラフの分離カラム及びかかるクロマトグラフのカラム用フィルターに関する。この種の装置は、例えば核酸を分離するために使用される。
【背景技術】
【0002】
核酸を分離する方法及び汎用型のフィルター装置を有する前記方法を行う装置が、例えば特許文献1により公知である。より正確には、この文献には、実質的にクロマトグラフ材料と、該クロマトグラフ材料の上流に配置されたフィルター材料とが配設されるプラスチック製カラムからなる分離装置が開示されている。そして、フィルター材料は、プラスチック部品を用いずに紙製材料を適切に折り畳むことにより、プラスチック製カラムに挿入され使用後には再び除去可能な略シリンダ状本体を形成する。折り畳んだ紙製シリンダは寸法安定性に劣るが、分離カラムの内側を略充填する。
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第10201858A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、寸法安定性の劣る(紙製)フィルター材料を少量使用した場合でもフィルター材料を正しく位置決めできるように、上記公知の汎用型分離装置を改良することを目的とする。
【0004】
より正確には、上記目的は、独立請求項の特徴により達成され、従属請求項は本発明を特に有利な態様で発展させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面によれば、一方の側で開放したシリンダを画成する輪郭を有する支持ケージと、支持ケージの内側に接して一方の側で開放した中空部を画成するフィルターとを備えたクロマトグラフのカラム用フィルター要素が提供される。
【0006】
支持ケージは、その開放端に略環状の鍔部を有してもよい。
【0007】
支持ケージは、好ましくは、鍔部に隣接する部分に、外径が支持ケージの外輪郭を超えて延出する、閉塞した外表面を有するスリーブ状部を有してもよい。
【0008】
支持ケージは、プラスチック材料から製造してもよい。
【0009】
支持ケージの外輪郭は、縦支柱及び少なくとも1つの環状支柱により画成してもよい。
【0010】
支持ケージの端面は、少なくとも1つの横支柱により画成してもよい。
【0011】
フィルターは、支持ケージの内側に固定結合、特に接着結合してもよい。
【0012】
フィルターは、単層で支持ケージの内輪郭を裏打ちする紙製材料から製造してもよい。
【0013】
他の側面によれば、上記の型のフィルター要素が挿入され、一端で開放し他端に先細り出口を備える注射器型カラム要素を有するクロマトグラフの分離カラムが提供される。
【0014】
そして、支持ケージは、その外表面の少なくとも一部がカラム要素の内側に接するような大きさであってもよい。
【0015】
支持ケージの外表面の少なくとも一部、特にスリーブ状部が、カラム要素の内壁に摩擦係合して当接してもよく、外表面の残りの部分はカラム要素の内壁から離間している。
【0016】
支持ケージの鍔部は、カラム要素の開放端又はそこに設けたフランジに載置してもよく、フィルター要素は支持ケージの閉塞端面とカラム要素の出口との間に間隙が形成されるような長さとする。
【0017】
クロマトグラフ材料を間隙に設置してもよい。
【0018】
支持ケージは、その開放端の一部で、別体のシール要素又は支持ケージに結合したシール要素により、気密にカラム要素に直接又は間接に結合してもよい。
【0019】
更に、本発明の他の側面によれば、上記の型の分離カラムと分離カラムの出口を部分的に真空にする装置とを備えたクロマトグラフ装置が提供される。
【0020】
最後に、一端で開放し他端に先細り出口を設けた注射器型カラム要素と、カラム要素に挿入され、扁平であり、カラム要素の開放端の方向における一方の側で開放した中空部を画成するフィルターとを備えたクロマトグラフのカラムが提案される。
【0021】
もしフィルター材料が適切な強度を有するなら、支持ケージは任意に省略することが可能であり、もしフィルター材料が十分な寸法安定性を有するなら、支持ケージの機能が導入可能である。スリーブ形状のフィルター材料は、例えば上述したようなプラスチック材の鍔部に端縁で結合(例えば、溶接又は接着結合)してもよく、これによりカラムに対して正確な位置決めを保証する。
【0022】
必要であれば、ケージの部分要素、すなわち、強化リングや支柱によりさらに確実にフィルターの形状を保持するようにしてもよい。従って、ケージの全体を構築する必要なない。
【0023】
次に、更なる特徴、利点、特性を、添付図面を参照してより詳細に説明する。図は、支持ケージ付きフィルター要素を有する、本発明によるクロマトグラフの分離カラムの模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図から明らかなように、本発明によるクロマトグラフのカラム1の主要な構成要素は、実質的に支持ケージ3とフィルター10とからなるフィルター要素と、クロマトグラフ材料12と、フィルター要素が挿入された略注射器型カラム要素2である。
【0025】
支持ケージ3の形状、特に支持ケージの支柱間の間隙の寸法は、使用されるフィルター材料の強度(剛性、保持力など)によって選択される。
【0026】
既に述べたように、フィルター要素は、実質的に、例えばプラスチック材料を射出成型して製造される支持ケージ3からなる。例えば単層の紙製材料などの扁平な材料からなるフィルター10は、フィルター10が端面16の内側と略シリンダ状支持ケージ3の外表面とを裏打ちするように支持ケージ3の中に挿入されている。フィルター10は、支持ケージ3を形成する縦支柱7及び横リング8,9の内表面に、例えば接着結合により固定結合してもよい。このようにして、フィルター操作中に、単層紙製フィルター層が、フィルター材料と比べて剛性がある支持ケージ3の形状により規定される位置に常時正しく保持されることが保証される。
【0027】
もちろん、フィルター材料が複数層であることも可能であり、数層が互いに結合していることも可能である。少なくとも最外層は支持ケージ3に結合されるべきである。
【0028】
扁平なフィルター材料は、平滑で実質的に折り畳まれないように支持ケージに保持され、一方の側で開放した中空部分を画成する。
【0029】
図に模式的に示すように、上記縦支柱7及び横支柱8,9により形成される実際のケージ部分17は、実際のケージ部分17と異なり外表面が閉塞されたスリーブ状部6に続いている。また、スリーブ状部6の外輪郭は、ケージ部分17よりも大きい直径を有する。
【0030】
更に、スリーブ状部6に隣接して、鍔部4が設けられる。
【0031】
フィルター材料10が端面においても正しい位置に保持されるように、縦支柱9に加えて、フィルター材料を端面で支持し得る対角支柱(図示せず)を設けることも可能である。
【0032】
支持ケージ3とフィルター10とからなる上記フィルター要素は、注射器型プラスチック製カラム2にその開放端から挿入することができる。図に示す挿入状態では、フィルター要素は、プラスチック製カラム2の開放端から鍔部4で吊設されており、図に示す(符号5参照)ように、その端部をフランジ状に拡大することが可能である。
【0033】
フィルター要素のスリーブ状部6は、フィルター要素がこの部分でプラスチック製カラム2の内壁に摩擦係合して当接するような外径を有することが好ましい。更に、フィルター要素は、スリーブ状部6及び/又は鍔部4の部分でプラスチック製カラム2により実質的に気密に終端することが可能である。これは、別体のシール要素(Oリング15)又はフィルター要素3と一体に形成されたシール要素を任意に使用して達成するようにしてもよい。
【0034】
図から明らかなように、支持ケージ3は、鍔部4と拡大スリーブ状部6の部分でのみ、プラスチック製カラム2と接している。他方、支持ケージ3の残りの部分、特に環状支柱8,9及び縦支柱7付きの実際のケージ部分17は、プラスチック製カラム2の内壁から離間している。
【0035】
更に、支持ケージ3の縦寸法は、支持ケージ3の端面16とクロマトグラフの分離カラムの出口11との間に間隙13を形成するように構成し、その間隙13を少なくとも部分的にクロマトグラフ材料12で充填してもよい。このクロマトグラフ材料12を、例えば核酸混合物を分離するのに適したものとしてもよい。欧州特許第744025B1号明細書及び欧州特許第1242816B1号明細書に記載のクロマトグラフ材料は、この用途に特に適している。フィルター要素を完全にカラムに押し入れた状態では、支持ケージ3の端面16はクロマトグラフ材料12から十分に離間している。
【0036】
特に使用されるクロマトグラフ材料12の性質及び密度によっては、図に模式的に示すようにクロマトグラフの分離カラムを垂直に設置し、支持ケージ3とフィルター10とで形成された空間18へ被処理物質を導入するだけでよいので、重力の効果のみにより被処理物質はフィルター材料10とそれに続いてクロマトグラフ材料12とを通過することが可能である。
【0037】
しかしながら、分離カラム2の出口部分14を真空にする必要がある場合もある。特にこの場合には、スリーブ状部6及び/又は支持ケージ3の鍔部4の部分で、フィルター要素と分離カラム2の内壁との間が気密にシールされるようにしなくてはならない。
【0038】
従って、本発明によれば、選択された単層フィルター材料自体は寸法安定性に劣るとしても、支持ケージ3中のフィルター材料10固定配置と、支持ケージ3の適切な構成により確保された分離カラム12中の支持ケージ3の配置とにより、操作中のフィルター10は正しく配向される。むしろ、寸法安定性は支持ケージ3により確保される。
【0039】
従来技術(特許文献1)では、紙製フィルター材料自体が寸法安定性で劣るため、正しい位置を確保するためには、フィルターの位置を特定するための分離カラムの内側を完全に充填しなくてはならない。しかしながら、本発明では、フィルター材料及び/又は分離カラム2ではなく、支持ケージ3の形状を適切に選択することによりによりフィルターの形状を特定するので、より複雑なフィルター形状に関しても、様々な設計の可能性が開かれている。
【0040】
最後に、一端で開放し他端に先細り出口を設けた注射器型カラム要素と、カラム要素に挿入され、扁平であり、カラム要素の開放端の方向における一方の側で開放した中空部を画成するフィルターとを備えるクロマトグラフのカラムが提案される。
【0041】
もしフィルター材料が適切な強度を有するなら、支持ケージは任意に省略することが可能であり、もしフィルター材料が十分な寸法安定性を有するなら、支持ケージの機能も導入できる。スリーブ形状のフィルター材料は、例えば上述したようなプラスチック材の鍔部に端縁で結合(例えば、溶接又は接着結合)してもよく、これによりカラムに対する正確な位置づけが保証される。必要であれば、ケージの部分要素、すなわち、強化リングや支柱によりさらに確実にフィルターの形状を保持することができる。従って、ケージの全体を構築する必要なない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】支持ケージ付きフィルター要素を有する、本発明によるクロマトグラフの分離カラムの模式図
【符号の説明】
【0043】
1 クロマトグラフのカラム
2 カラム要素
3 支持ケージ
4 鰐部
5 開放端
6 スリーブ状部
7 縦支柱
8 環状支柱
9 横支柱
10 フィルター
11 先細り出口
12 クロマトグラフ材料
13 間隙
14 真空
15 シール要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側で開放したシリンダを画成する輪郭を有する支持ケージ(3)と、
支持ケージ(3)の内側に当接して一方の側で開放した中空部を画成するフィルター(10)と、
を備えたクロマトグラフのカラム(1)用フィルター要素。
【請求項2】
支持ケージ(3)はその開放端に略環状の鍔部(4)を有することを特徴とする、請求項1に記載のフィルター要素。
【請求項3】
支持ケージ(3)は、好ましくは、鍔部(4)に隣接する部分に、外径が支持ケージ(3)の外輪郭を超えて延出する、閉塞した外表面を有するスリーブ状部(6)を有することを特徴とする、請求項2に記載のフィルター要素。
【請求項4】
支持ケージ(3)はプラスチック材料から製造されたことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載のフィルター要素。
【請求項5】
支持ケージの外輪郭は縦支柱(7)及び少なくとも1つの環状支柱(8)により形成されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載のフィルター要素。
【請求項6】
支持ケージ(3)の端縁は少なくとも1つの横支柱(9)により画成されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載のフィルター要素。
【請求項7】
フィルター(2)は支持ケージ(3)の内側に固定結合、特に接着結合されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載のフィルター要素。
【請求項8】
フィルター(10)は紙製材料から製造されたことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載のフィルター要素。
【請求項9】
紙製材料は単層で支持ケージ(3)の内輪郭を裏打ちすることを特徴とする、請求項8に記載のフィルター要素。
【請求項10】
前記請求項のいずれかに記載のフィルター要素(3、10)が挿入された、一端で開放し他端に先細り出口(11)を備える注射器型カラム要素(2)を有することを特徴とする、クロマトグラフの分離カラム。
【請求項11】
支持ケージ(3)はその外表面の少なくとも一部がカラム要素(2)の内側に当接するような大きさであることを特徴とする、請求項10に記載のクロマトグラフの分離カラム。
【請求項12】
支持ケージ(3)の外表面の少なくとも一部、特にスリーブ状部(6)が、カラム要素(2)の内壁に摩擦係合して当接し、外表面の残りの部分はカラム要素の内壁から離間していることを特徴とする、請求項11に記載のクロマトグラフの分離カラム。
【請求項13】
支持ケージ(3)の鍔部(4)はカラム要素(2)の開放端(5)に載置され、フィルター要素は支持ケージ(3)の閉塞端面とカラム要素(2)の出口との間に間隙(13)が形成されるような長さであることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載のクロマトグラフの分離カラム。
【請求項14】
クロマトグラフ材料(12)を間隙(13)に設置したことを特徴とする、請求項13に記載のクロマトグラフの分離カラム。
【請求項15】
支持ケージ(3)は、その開放端の部分で、別体のシール要素(15)又は支持ケージ(3)に結合したシール要素(15)により、気密にカラム要素(2)へ直接又は間接に結合されることを特徴とする、請求項8〜14のいずれかに記載のクロマトグラフの分離カラム。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれかに記載の分離カラム(2)と、分離カラムの出口(11)を部分的に真空(14)にする装置とを有することを特徴とする、クロマトグラフの分離装置。
【請求項17】
一端で開放し他端に先細り出口(11)を備える注射器型カラム要素(2)と、
カラム要素(2)に挿入され、扁平であり、カラム要素(2)の開放端の方向における一方の側で開放した中空部を画成するフィルターと、
を備えたことを特徴とする、クロマトグラフの分離カラム。
【請求項18】
フィルターの端縁をプラスチック材の鍔部に結合したことを特徴とする、請求項17に記載の分離カラム。
【請求項19】
一端で開放し他端に先細り出口(11)を備える注射器型カラム要素(2)と、
カラム要素(2)に挿入され、支柱及び/又はリング状の寸法安定性のよい剛性要素を有するフィルターと、を備え
フィルターが扁平であり、カラム要素(2)の開放端の方向における一方の側で開放した中空部を画成することを特徴とする、クロマトグラフの分離カラム。
【請求項20】
フィルターは紙状材料から形成され、剛性要素はプラスチック材料から形成されることを特徴とする、請求項19に記載の分離カラム。

【図1】
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【公表番号】特表2007−530267(P2007−530267A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505384(P2007−505384)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003366
【国際公開番号】WO2005/105256
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506327900)
【Fターム(参考)】