説明

支持碍子

【課題】 長期間使用しても部分放電の生じ難い支持碍子を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂よりなる樹脂碍子本体2と、樹脂碍子本体2の複数個所に埋設されたアルミニウム、黄銅、軟鉄などからインサート金属部6と、このインサート金属部6に被支持物を支持する締付手段とを備えた支持碍子1において、樹脂碍子本体2に埋設されるインサート金属部6と対向する樹脂碍子本体2との境界面に導電性シール層7を設け、インサート金属部6と樹脂碍子本体2との間にギャップGが生じても、導電性シールド層7により、導電性シールド層7間にのみ電界が印加され、ギャップに部分放電が発生せず、樹脂の炭化が無くなるので、支持碍子1の寿命を長くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体などの被支持物を電気的に絶縁して支持する支持碍子に関する。
【背景技術】
【0002】
支持碍子は、高電圧・高電流回路に使用される導体、例えば平帯状導体を絶縁支持するのに使用される。
支持碍子は、例えばエポキシ樹脂などの絶縁樹脂によって樹脂碍子本体を形成し、この樹脂碍子本体に、例えば導体などの被支持物を電気的に絶縁して支持するインサート金属部を、例えば2箇所など複数箇所に埋設する。前記インサート金属部はエポキシ樹脂により被覆されていないその挿入端面より内部に向かってネジ穴が設けられている。
【0003】
支持碍子を基礎面例えば金属板に設置し、該金属板の貫通穴より挿入したボルトを支持碍子の一方のインサート金属部のネジ穴に螺合し、ボルトを締付けて金属板に支持碍子を固定する。平板状などの導体に設けた貫通穴に挿入したボルトを支持碍子の他方のインサート金属部のネジ穴に挿通し、ボルトを締付けて導体を支持碍子に支持する。
【0004】
支持碍子は、大気中で使用する場合、空気の耐電圧が低いので、樹脂碍子本体の外表面の絶縁耐圧は、埋設されたインサート金属部とインサート金属部との間の絶縁耐圧より低い状態で使用されている。これにより、支持碍子に高電圧を印加すると、常に樹脂碍子本体の外表面で放電が起こる。
【0005】
ここで言う前記外表面とは、金属板と導体との間の樹脂碍子本体の沿面に沿った部分を外表面を意味する。
更に定義すれば、樹脂碍子本体の上端面と下端面との間を外表面と言うこともできる。
【0006】
前記支持碍子において、支持碍子の大きさは、空気の低い耐電圧と外表面の距離で決められ、大きくしている。一方、ネジ穴の深さで決まるインサート金属部は小さいために、インサート金属部とインサート金属部との間の絶縁の距離が大きくなり、この間の電界強度は低い状態である。更に、支持碍子のインサート金属部に使用される絶縁物はエポキシ樹脂が主体であり、エポキシ樹脂は金属との強力な接着材として使用される。インサート金属部の材質、例えばアルミニウム,黄銅、軟鉄の表面とこのエポキシ樹脂とは良好に接着し、更にインサート金属部表面に微小な凹凸を付ける工夫を加えるなどにより、従来はインサート金属部表面とエポキシ樹脂との間には剥離によるギャップは生じないと言われている。
【0007】
近年、支持碍子はSF6,圧縮空気などの耐電圧が高い雰囲気状態で使用されるようになってきた。そうすると、支持碍子の外表面の絶縁耐圧が高くなり、内部のインサート金属部とインサート金属部との間の印加耐圧も高くなるので電界強度が高まり、この間の僅かな瑕疵が致命的欠陥と成り得るようになってきた。
支持碍子に導体を使用している技術として特許文献1を挙げることが出来る。
【特許文献1】特開昭56−12809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、エポキシ樹脂とインサート金属部とでは熱膨張率が互いに異なる別材料であるから、初期使用時ではエポキシ樹脂とインサート金属部とが良く接着していても、例えば悪い条件の下で20年以上のように長期間経過すると、エポキシ樹脂とインサート金属部とが剥離し、ギャップが発生するという不具合が近年判ってきた。
【0009】
悪い条件の例としては、導体の急激な温度変化がある。これは導体に流れる電流が電気負荷に応じて増減し、電流のジュール熱の増減に伴い温度が上下する影響でエポキシ樹脂及びインサート金属部が膨張収縮を繰り返すことで、互いの接触面にギャップが生じてしまうこととなる。
【0010】
また、野外で使用された時には、周囲温度の変化により、エポキシ樹脂及びインサート金属部が熱膨張収縮を繰り返し、その結果、エポキシ樹脂とインサート金属部との間にギャップが生じてしまう。
更には、長期間導体の交流周波数によるエポキシ樹脂の特性劣化により接着性能が劣化して剥離が生じ、ギャップが発生することもある。
【0011】
このギャップ部分で部分放電が一旦生じてしまうと、部分放電熱によるエポキシ樹脂の炭化現象が発生して、以後徐々にエポキシ樹脂の炭化現象(=絶縁破壊)が進行して、地絡や短絡事故になる。ギャップが生じると支持碍子の寿命が短くなり、寿命に対する信頼性が損なわれる。
本発明の目的は、長期間使用しても部分放電等が生じ難い支持碍子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の目的を達成するためになされたもので、請求項1の発明にかかる支持碍子は、エポキシ樹脂よりなる樹脂碍子本体と、前記樹脂碍子本体の複数個所に埋設されたアルミニウム,黄銅、軟鉄などからなるインサート金属部と、このインサート金属部に被支持物を支持する締付手段を備えた支持碍子において、前記インサート金属部と対向する樹脂碍子本体との境界面に導電性シールド層を設けることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項2にかかる発明は、絶縁樹脂よりなる樹脂碍子本体と、前記樹脂碍子本体内の複数箇所に埋設されるインサート金属部と、前記インサート金属部に被支持物を支持する締付手段を備えた支持碍子において、前記インサート金属部と対向する樹脂碍子本体との境界面に導電性シールド層を設けることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の支持碍子において、埋設される前の前記インサート金属部の表面のすくなくとも一部に導電材とエポキシ樹脂を混合してなる導電性シールド材を塗布し、これをエポキシ樹脂と共にモールドして前記導電性シールド層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の支持碍子によれば、インサート金属部と対向する樹脂碍子本体との境界面に導電性シールド層を設けてインサート金属部をシールドするようにしたので、樹脂碍子本体とインサート金属部とが熱膨張収縮を繰り返すことによりギャップが生じたとしても、樹脂碍子本体に付着した導電性シールド層がシールドとして機能することで、ギャップに部分放電が生じ難くなり、樹脂碍子本体が炭化しないとともに、支持碍子の寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の支持碍子に関する最良の実施形態を、図1及び図2により説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1に係る支持碍子を電気機器に使用した断面図である。図2はインサート金属部上部にギャップGが生じてしまった場合を示す断面図である。
図1及び図2に示すように、支持碍子1では、樹脂碍子本体2の上端面2A及び下端面2Bに導体3及び金属板4が配設されて締付ボルト5により取付けられている。
【0018】
前記導体3及び金属板4には貫通穴3a,4aが設けられていて、締付ボルト5をこの貫通穴に挿入した後、インサート金属部6のネジ穴6Bへと螺合してから、締付ボルト5を締付けて、導体3及び金属板4を支持碍子1に固定する。Eは金属板4から地面に接地導体4Aを介して接続した接地用グランド(アース)である。
【0019】
支持碍子1の樹脂碍子本体2は、例えばエポキシ樹脂などの電気絶縁性合成樹脂により形成されている。樹脂碍子本体2の表面には、凹凸になる波型形状が、上端面2Aと下端面2Bとの間の樹脂碍子本体2の外表面2Cに複数個形成されている。
また、前記樹脂碍子本体2の上端面2Aと下端面2Bには、樹脂碍子本体2の内方に向けてインサート金属部6が設けられている。
【0020】
前記インサート金属部6には、上端面2Aと下端面2Bにそれぞれ挿入口6Aから樹脂碍子本体2内に向かって締付ボルト5が螺合されるネジ穴6Bが形成されており、このネジ穴6Bに臨む樹脂碍子本体2の上端面2Aと下端面2Bに締付ボルト5を挿入する挿入口6Aとが形成されている。
【0021】
前記インサート金属部6には、予め樹脂碍子本体2内に被支持物を締付ける締付手段、例えばネジ付ボルトを埋設したり、或いは埋設されたネジ付ボルトが樹脂碍子本体2の上端面及び下端面、又はいずれか一方の側端面とが、端面より外側、例えば上側に伸びているものも含まれる。
【0022】
後述するように、前記インサート金属部6が対向する樹脂碍子本体2の対向面には、導電性シールド層7が設けられている。導電性シールド層7は、インサート金属部6と樹脂碍子本体2との境界面の一部分にのみ設けられるようにしてもよい。
前記導電性シールド層7の材質は、親和性が良い絶縁母材であるエポキシ樹脂と導電材とを混合したものを使用する。導電材としては、炭素粒子,銀などの金属粒子などがある。
【0023】
インサート金属部6は、この導電材とエポキシ樹脂を混合したものを、少なくともその先端部表面などに予め塗布された上で埋設されている。導電材とエポキシ樹脂を混合したものを塗布した状態で埋設されたインサート金属部6をエポキシ樹脂と共にモールドし、樹脂碍子本体2が形成される。
このモールド作業のとき、その表面に導電材とエポキシ樹脂を混合したものが塗布されたインサート金属部6と接触する樹脂碍子本体2との対向境界面には導電性シールド層7が形成され、樹脂碍子本体2内にインサート金属部6が配設された図1の支持碍子1が完成する。
このように完成された前記支持碍子1は、その上端面2A及び下端面2Bの各々のインサート金属部6に導体3及び金属板4が配置されて、締付ボルト5により取り付けられる。
【0024】
導体3に通電して、インサート金属部6間に高電圧が印加された状態で長年使用していくうちに、支持碍子1は、図2に示すように、インサート金属部6と樹脂碍子本体2との間に、以下に説明するように、ギャップGが形成されてしまう。
【0025】
高電圧が印加された状態で長年使用しているうちに樹脂碍子本体2とインサート金属部6とが熱膨張収縮を繰り返すことにより変形されても、インサート金属部6に被覆された、導電材とエポキシ樹脂を混合したもので作られた導電性シールド層7は、樹脂碍子本体2と同じエポキシ樹脂が含まれているために樹脂碍子本体2に強烈に接着した状態のままにおかれ、インサート金属部6の先端部からは剥離するようになる。これにより、剥離した導電性シールド層7はインサート金属部6の外形形状に相当する形状を有し、樹脂碍子本体2の内部で、インサート金属部6の上部に移動してゆき、インサート金属部と導電性シールド層7との間にギャップGが形成されてしまう。
【0026】
このように、樹脂碍子本体とインサート金属部とが熱膨張収縮を繰り返すことでギャップGが形成されてしまっても、埋設されたインサート金属部6と樹脂碍子本体2との境界面には剥離した導電性シールド層7が配置されているので、樹脂碍子本体2の境界面にのみ電界が印加され、ギャップGは導電性シールド層7によりシールドされるので、部分放電が発生しない。これにより、樹脂碍子本体2の炭化現象がなくなる。そして、導電性シールド層7を設けることにより、支持碍子1の寿命を長くすることができるようになる。
【0027】
この実施例では、接着性の良いエポキシ樹脂について説明したが、接着性が悪いために使用できなかった安価な樹脂、例えばポリエステル樹脂などを用いて、アルミニウム,黄銅、軟鉄などから成るインサート金属部を埋設した支持碍子を構成し、SF6,圧縮空気などの雰囲気下で使用した場合でも、より一層支持碍子の寿命を長くすることができると共に、更に安価にできる。
また、本発明の支持碍子は通常の空気雰囲中で使用しても、本発明の効果を損なうものでないことは云うまでもない。
【0028】
また、親和性が良い合成樹脂と導電材とを混合したものを、予め埋設してあるインサート金属部表面の少なくとも一部に塗布し、これを母材樹脂と共にモールドして、導電性シールド層を形成したので、特殊な金型を必要とすることなく、インサート金属形状を母材樹脂に与えるので、長期間経過しても電気性能の変化が生じることなく、初期性能を維持できる。
以上のように、本発明の支持碍子は、長寿命に対する信頼性を向上させることが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例を示す支持碍子の使用例を示す断面図。
【図2】図1の支持碍子の一部を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 支持碍子
2 脂碍子本体
2A 上端面
2B 下端面
2C 外表面
3 導体
4 金属板
4A 接地導体
5 ボルト
6 インサート金属部
6A 挿入口
6B ネジ穴
7 導電性シールド層
G ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂よりなる樹脂碍子本体と、前記樹脂碍子本体の複数個所に埋設されたアルミニウム、黄銅、軟鉄などから成るインサート金属部と、このインサート金属部に被支持物を支持する締付手段とを備えた支持碍子において、前記インサート金属部と対向する樹脂碍子本体との境界面に導電性シールド層を設けたことを特徴とする支持碍子。
【請求項2】
絶縁樹脂よりなる樹脂碍子本体と、前記樹脂碍子本体内の複数箇所に埋設されたインサート金属部と、前記インサート金属部に被支持物を支持する締付手段とを備えた支持碍子において、前記インサート金属部と対向する樹脂碍子本体との境界面に導電性シールド層を設けたことを特徴とする支持碍子。
【請求項3】
埋設される前の前記インサート金属部の表面のすくなくとも一部に導電材とエポキシ樹脂を混合してなる導電性シールド材を塗布し、これをエポキシ樹脂と共にモールドして前記導電性シールド層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の支持碍子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−280712(P2007−280712A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104110(P2006−104110)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(505404183)恩良企業股▼分▲有限公司 (2)
【Fターム(参考)】