説明

支柱位置調整工具及び当該支柱位置調整工具を用いた支柱位置調整方法

【課題】アンカーボルトの損耗状態を調査するに際し、重機を用いず、人力により照明柱のベースプレートを移動させて、アンカーボルト外周とベースプレートのボルト孔内周との接触の切り離しが容易に出来る支柱位置調整工具を提供する。
【解決手段】外周断面が角型形状で、内周がネジ孔となり、一方の端部の外周を先細のテーパー形状にした特殊ナット1を設け、アンカーボルトCの頭部からナットを外し、特殊ナット1を螺着して、アンカーボルトCの頭部の下部まで進め、特殊ナット1のテーパー形状の一端をベースプレートDのボルト孔21内部に進入させ、特殊ナット1の先細の先端部がアンカーボルトCの頭部の外周とベースプレートDのボルト孔21の内周との隙間に均等に入り込んでベースプレートDとともにボルト孔21の位置を移動させてアンカーボルトCの頭部の外周とボルト孔21の内周の接触を切り離す支柱位置調整工具Aとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の照明柱や標識柱等の下端に設けたベースプレートをコンクリート製基礎上に固定しているアンカーボルトの腐食減肉具合を検査する方法において、当該アンカーボルトを挿通している前記ベースプレートの孔の位置を適切な位置に移動させる支柱位置調整工具及び当該支柱位置調整工具を用いた支柱位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の照明柱や標識柱等の支柱23の多くは、図11に示す様に、その下端に設けた鋼製の略四角形状のベースプレートDの四隅にボルト孔21を設け、これらのボルト孔21にコンクリート製基礎Eから突出しているアンカーボルトCを挿通して、その上からナット22を螺着して道路上に固定されている。ところが、これらのアンカーボルトCは永年の滞水、乾燥などによって、腐食が進行し損耗(減肉)することがある。この様な照明柱等の支柱23のベースプレートDを固定しているアンカーボルトCが損耗すると、当該照明柱等の支柱23が倒壊する恐れが発生し、安全上問題と成る。
【0003】
しかし、照明柱や標識柱等を撤去しなければ、前記アンカーボルトの損耗を調べることが出来ない。いちいち照明柱や標識柱等を撤去するのは大掛かりな工事となり、容易に前記アンカーボルトの損耗状態を調べることが出来ない。
【0004】
そのために、最近は、前記アンカーボルトの損耗状態を調査する方法として、特許文献1に記載された方法が行われている。この方法は、ベースプレートのボルト孔から露出しているアンカーボルトの頭部を打撃振動させ、この時に発せられる振動音をマイクで収録し、この振動音を予め測定されている正常なアンカーボルトの固有振動数と比較して、当該アンカーボルトの損耗(減肉)状態を診断すると言うものである。
【特許文献1】特許第4190340号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の方法を行おうとした場合、アンカーボルトの頭部の外周がベースプレートのボルト孔の内周と接触していることがある。この様な場合、重機等を用いて、アンカーボルトとベースプレートが接触しないように支柱位置を調整するか、一時的に、照明柱等の支柱を撤去するなどの方法があるが、これらは大掛かりなものとなる。その一方、アンカーボルトの頭部の外周とベースプレートのボルト孔の内周とが接触していると言っても強固なものではない。
【0006】
この発明は、これらの点に鑑みて為されたもので、アンカーボルトの損耗状態を調査するに際し、重機等を用いず、人力により前記照明柱等の支柱のベースプレートを移動させて、アンカーボルト外周とベースプレートのボルト孔内周との接触の切り離しが容易に出来る支柱位置調整工具及び当該支柱位置調整工具を用いた支柱位置調整方法を提供して前記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトの頭部にナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に当該接触を切り離す工具において、外周断面が角型形状で、内周がネジ孔となり、一方の端部の外周を先細のテーパー形状にした特殊ナットを設け、前記アンカーボルトの頭部から前記ナットを外し、前記特殊ナットを螺着して、当該アンカーボルトの頭部の下部まで進め、前記特殊ナットのテーパー形状の一端を前記ベースプレートのボルト孔内部に進入させ、当該特殊ナットの先細の先端部がアンカーボルトの頭部の外周とベースプレートのボルト孔の内周との隙間に均等に入り込んで前記ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて当該アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離す支柱位置調整工具とした。
【0008】
請求項2の発明は、基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトの頭部にナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に当該接触を切り離す支柱位置調整方法において、前記アンカーボルトの頭部に前記特殊ナットを螺着して当該特殊ナットのテーパー形状の一端を当該アンカーボルトの頭部の下部まで進め、ナットの先細の先端部がアンカーボルトの頭部の外周とベースプレートのボルト孔の内周との隙間に均等に入り込んで前記ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて当該アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離す前記請求項1の発明の支柱位置調整工具を用いた支柱位置調整方法とした。
【0009】
請求項3の発明は、基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトの頭部にナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に当該接触を切り離す工具において、適宜形状の板体に前記アンカーボルトの挿通孔及び貫通孔を設け、当該挿通孔から貫通孔までの長さは、前記ベースプレートのボルト孔からベースプレートの外縁までの長さにほぼ相応する位置として当該板体によって当て板を設け、前記アンカーボルトの頭部から前記ナットを外し、前記当て板の挿通孔を当該アンカーボルトに通して当該当て板をベースプレート上に載置し、その上から前記ナットを螺着して前記当て板をベースプレートから外れないように押え、前記当て板の貫通孔に長尺な工具の先端を差し込み、当該工具をてこの要領で倒して当該工具でベースプレートの外縁を押し、当該ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離す構成とした支柱位置調整工具とした。
【0010】
請求項4の発明は、基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトの頭部にナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に当該接触を切り離す支柱位置調整方法において、適宜形状の板体に前記アンカーボルトの挿通孔及び貫通孔を設け、当該挿通孔から貫通孔までの長さは、前記ベースプレートのボルト孔からベースプレートの外縁までの長さにほぼ相応する位置として当該板体によって当て板を設け、前記アンカーボルトの頭部から前記ナットを外し、前記当て板の挿通孔を当該アンカーボルトに通して当該当て板をベースプレート上に載置し、その上から前記ナットを螺着して前記当て板をベースプレートから外れないように押え、前記当て板の貫通孔に長尺な工具の先端を差し込み、当該工具をてこの要領で倒して当該工具でベースプレートの外縁を押し、当該ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離す構成とした前記請求項3の発明の支柱位置調整工具を用いた支柱位置調整方法とした。
【0011】
請求項5の発明は、前記当て板の前記貫通孔と異なる位置に他の貫通孔を設け、当該他の貫通孔は、前記ベースプレートのボルト孔から前記外縁に隣接する他の外縁までの長さにほぼ相応する位置に設けられている前記請求項3に記載の支柱位置調整工具とした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び2の各発明によれば、一方の端部外周を先細のテーパー形状に設けた特殊ナットをアンカーボルトの頭部から被せて下部まで螺着し、ナットの先細の先端部がアンカーボルトの頭部の外周とベースプレートのボルト孔の内周との隙間に均等に入り込んで前記ベースプレートのボルト孔の位置を移動させて当該アンカーボルトの突出部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離すので、大掛かりな重機等を用いず、人力によってアンカーボルトの頭部外周とベースプレートのボルト孔内周の接触を容易かつ確実に、切り離すことが出来る。
【0013】
また、使用する部品数も少なく、さらに、使用する場所を選ぶことも無く、狭い場所であっても問題無く使用出来るので、極めて使い勝手の良いものである。また、この支柱位置調整工具の場合、アンカーボルトの頭部の外周とベースプレートのボルト孔の内周がどの位置で接触しているかは不問で、この支柱位置調整工具では、アンカーボルトの頭部のどこの位置の接触でも切り離すことが出来る。これらのことから、前記特許文献1に記載された方法によって、速やかにアンカーボルトの損耗状態を調査することが出来る。
【0014】
また、請求項3及び4の各発明によれば、アンカーボルトの頭部から当て板の挿通孔を被せ、その上からナットを螺着してベースプレートに当て板を仮止めし、当て体の貫通孔に長尺な工具の先端を差し込み、当該工具をてこの要領で倒して前記ベースプレートのボルト孔の位置を移動させて当該アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を開放するので、大掛かりな重機等を用いず、人力によってアンカーボルトの頭部外周とベースプレートの孔内周の接触を容易かつ確実に、切り離すことが出来る。
【0015】
また、使用する部品数も少なく、さらに、使用する場所を選ぶことも無く、狭い場所であっても問題無く使用出来るので、極めて使い勝手の良いものである。これらのことから、前記特許文献1に記載された方法によって、速やかにアンカーボルトの損耗状態を調査することが出来る。
【0016】
さらに、請求項5の発明によれば、前記当て板の前記貫通孔と異なる位置に他の貫通孔を設け、当該他の貫通孔は、前記ベースプレートのボルト孔から前記外縁に隣接する他の外縁までの長さにほぼ相応する位置に設けられていることとしたので、貫通孔が1つしか設けられていないものと比べ、当て板の位置を変えてベースプレートの角部の外縁を押す必要が無く、作業が速やかに終了し、使い勝手の良いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトにナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に、当該接触を切り離す工具において、外周断面が角型形状で、内周がネジ孔となり、一方の端部の外周を先細のテーパー形状にした特殊ナットを設け、前記アンカーボルトの頭部から前記ナットを外し、前記特殊ナットを螺着して、当該アンカーボルトの頭部の下部まで進め、前記特殊ナットのテーパー形状の一端を前記ベースプレートのボルト孔内部に進入させ、当該特殊ナットの先細の先端部がアンカーボルトの頭部の外周とベースプレートのボルト孔の内周との隙間に均等に入り込んで前記ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて当該アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離す。
【0018】
これにより、大掛かりな重機等を用いず、人力によってアンカーボルトの頭部外周とベースプレートのボルト孔内周の接触を容易かつ確実に、切り離すことが出来る。
【実施例1】
【0019】
以下、この発明の実施例1の支柱位置調整工具Aを図に基づいて説明する。図1は、この発明の実施例1の支柱位置調整工具AをベースプレートDのボルト孔21から突出しているアンカーボルトCの頭部に被せて螺着し、当該アンカーボルトCの頭部とベースプレートDのボルト孔21の接触を切り離した状態を示す断面図である。図2は、同支柱位置調整工具Aの断面図である。図3は、同支柱位置調整工具Aの底面図である。図4は、アンカーボルトCの頭部の右側外周とベースプレートDのボルト孔21の右側内周が接触している状態を示す概念図である。図5は、この発明の実施例1の支柱位置調整工具AをベースプレートDのボルト孔21から突出しているアンカーボルトCの頭部に被せて螺着した状態を示す外観斜視図である。図6は、前記図5の状態からレンチ24を使用して支柱位置調整工具Aを回している状態を示す外観斜視図である。図7は、この実施例1の支柱位置調整工具Aによって、前記図4におけるアンカーボルトCの頭部の右側外周とベースプレートDのボルト孔21の右側内周の接触を切り離した状態の概念図である。
【0020】
この発明の実施例1の支柱位置調整工具Aは、図2及び図3に示す様に、外周断面が六角形状で、内周にねじ切り部2を有するネジ孔が形成され、一方の端部の外周を略30度の角度で先細のテーパー部3にした特殊ナット1より形成される。
【0021】
次に、この実施例1の支柱位置調整工具Aを使用する手順を説明する。図11に示す様に、路面上に設置されている照明灯等の支柱23は、コンクリート製基礎Eの上に、支柱23の下端に設けたベースプレートDをのせ、前記コンクリート製基礎Eから埋設した複数のアンカーボルトCの頭部をベースプレートDに予め穿った複数のボルト孔21に通し、ベースプレートD上に突出した各アンカーボルトCの頭部にナット22を螺着して固定している。
【0022】
このベースプレートDが振動等により移動して、図4に示す様に、前記アンカーボルトCの頭部の外周と前記ボルト孔21の内周が接触している場合、前記特許文献1のアンカーボルトCの損耗調査は出来ない。そこで、最初に、前記ベースプレートDを固定しているアンカーボルトCのナット22を外す。その場合、他のアンカーボルトCのナット22は、ベースプレートDが動き易いようにやや緩めておく。
【0023】
そして、図5に示す様に、突出している前記アンカーボルトCの頭部に前記特殊ナット1を被せて、図6に示す様に、レンチ24等のナット締め付け工具によって当該アンカーボルトCの頭部の下部まで螺着し、ナットAの先細の先端部がアンカーボルトCの頭部の外周とベースプレートDのボルト孔21の内周との隙間に均等に入り込むことによって、特殊ナット1のテーパー部3がボルト孔21の内周を押してベースプレートDの位置を移動させ、図7に示す様に、アンカーボルトCの頭部の外周と前記ボルト孔21の内周の接触を切り離す。また、支柱23のベースプレートDの他のアンカーボルトCについてもナット22を外した後、当該アンカーボルトCの頭部の外周とボルト孔21の内周とが接触している場合、順に前記作業を行う。
【0024】
また、この支柱位置調整工具Aの場合、アンカーボルトCの頭部の外周とボルト孔21の内周がどの位置で接触しているかは不問で、この支柱位置調整工具Aでは、アンカーボルトCの頭部のどこの位置の接触でも切り離すことが出来る。しかも、この特殊ナット1は、ボルト孔21をアンカーボルトCと同心円上に移動させることが出来、アンカーボルトCの外周とボルト孔21とは全周にわたって均等に離れることとなる。
これにより、前記特許文献1に記載された方法によって、このアンカーボルトCの損耗状態を支障無く円滑に調査することが出来る。
【実施例2】
【0025】
次に、この発明の実施例2の支柱位置調整工具Bを図に基づいて説明する。図8は、この発明の実施例2の支柱位置調整工具Bの平面図である。図9は、同支柱位置調整工具Bを用いて、アンカーボルトCの頭部の外周と前記ボルト孔21の内周の接触を切り離している状態を示す外観斜視図である。図10は、アンカーボルトCの頭部の上側(図10において)外周とベースプレートDのボルト孔21の上側(図10において)内周が接触している状態を示す概念図である。
【0026】
この発明の実施例2の支柱位置調整工具Bは、図8に示す様に、略正方形状の板体の一方の対角線上であって、一方の角部寄りに挿通孔32を設け、前記対角線を中心に左右対称の位置であって、他方の角部の隣接する二辺と並行する位置に貫通長孔33(33a、33b)を夫々設けた当て板31から成る。この当て板31では、前記支柱のベースプレートDのボルト孔21と、その周辺のベースプレートDの外縁との位置、距離に相応する様に挿通孔32、貫通長孔33を夫々当て板31に設ける。
【0027】
次に、この実施例2の支柱位置調整工具Bを使用する手順を説明する。ベースプレートDが振動等で移動して、前記図4に示す様に、前記アンカーボルトCの頭部の外周と前記ボルト孔21の内周が接触している場合、最初に、前記ベースプレートDを固定しているアンカーボルトCのナット22を外す。
【0028】
そして、図9に示す様に、突出している前記アンカーボルトCの頭部に前記当て板31の挿通孔32を通して当て板31をベースプレートDにのせる。これにより、この当て板31の一部が前記ベースプレートDの角部の両外縁からはみ出て、前記各貫通長孔33a、33bの各内側縁と前記ベースプレートDの角部の両外縁がほぼ一致した位置にある。
【0029】
この状態で、アンカーボルトCの頭部の上からナット22を螺着して前記当て板31を前記ベースプレートDに取り付ける。この場合、ナット22の締め付けは当て板31が上方へ上がらない程度に緩めておく。また、ベースプレートDの他のアンカーボルトCのナット22も、ベースプレートDが動き易いようにやや緩めておく。この後、図9に示す様に、前記当て板31の一方の貫通長孔33aに長尺な工具、例えばバール34の先端を差し込み、このバール34の先端をベースプレートDの外縁に当てて、このバール34をてこの要領で、図9で示す白矢印1方向に倒す。すると、ベースプレートDの外縁は、バール34の先端に押されて、図9で示す白矢印2方向に移動して、このアンカーボルトCの頭部の外周と前記ボルト孔21の内周の図4における接触は切り離される。
【0030】
また、図10に示す様に、アンカーボルトCの頭部の上側(図10において)外周と前記ボルト孔21の上側(図10において)内周が接触している場合は、今度は、前記当て板31の他方の貫通長孔33bにバール34の先端を差し込み、このバール34の先端をベースプレートDの外縁に当てて、てこの要領で、図9で示す白矢印3方向に倒す。すると、ベースプレートDは、図9で示す白矢印4方向に移動して、このアンカーボルトCの頭部の外周と前記ボルト孔21の内周の図10における接触は切り離される。この様にして、ベースプレートDを二方向から移動させることにより、アンカーボルトCの外周とボルト孔21の内周とは全周にわたってほぼ均一に離隔される。
【0031】
この様に、この支柱位置調整工具Bでは、アンカーボルトCの頭部の外周とボルト孔21の内周の接触している位置によって、バール34の先端を差し込む貫通長孔33(33a、33b)を変えれば良いが、バール34を差し込む貫通長孔33(33a、33b)はどちらか一方と言うのではなく、双方の貫通長孔33(33a、33b)を上手に使用して効果的に前記接触を開放すれば良い。また、当て板31に貫通長孔33が一つしか設けていない場合、当て板31の位置を変えてベースプレートDの角部の両側の外縁を押すこととなる。
これにより、前記特許文献1に記載された方法によって、このアンカーボルトCの損耗状態を支障無く円滑に調査する事が出来る。
【0032】
前記実施例1では、ナット1の外周を断面六角形状としたが、ナット1の外周断面は六角形状に限定するものではなく、他の角型形状でももちろん良く、また、テーパー部を略30度の角度で形成しているがこの角度は30度に限定するものではなく、最も効果的な角度にすれば良い。さらに、ナット1の締め付け工具としてレンチ24を用いたが、レンチの他、スパナ、モンキーなど何を使用しても良い。
【0033】
前記実施例2の支柱位置調整工具Bでは、当て板31の角部の貫通孔として二つの貫通長孔33(33a、33b)を夫々設けているが、貫通孔の数は2つに限定するものではなく、1つ又は、使い勝手の良い様に2つ以上設けても良く、例えば、各辺に2つの孔を並列するなどさせてもよい。従って、貫通孔の形状も問わない。要はバール等の工具が入るものであれば良い。また、貫通長孔33に差し入れて動かす長尺な工具としてバール34を使用しているが、使用する工具としてはバールに限るものではなく、使用出来るものなら何でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施例1の支柱位置調整工具をベースプレートのボルト孔から突出しているアンカーボルトの頭部に被せて螺着し、当該アンカーボルトの頭部とベースプレートのボルト孔の接触を切り離した状態を示す断面図である。
【図2】この発明の実施例1の支柱位置調整工具の断面図である。
【図3】この発明の実施例1の支柱位置調整工具の底面図である。
【図4】この発明の実施例1において、アンカーボルトの頭部の右側外周とベースプレートのボルト孔の右側内周が接触している状態を示す概念図である。
【図5】この発明の実施例1において、支柱位置調整工具をベースプレートのボルト孔から突出しているアンカーボルトの頭部に被せて螺着した状態を示す外観斜視図である。
【図6】前記図5の状態からレンチを使用して支柱位置調整工具を回している状態を示す外観斜視図である。
【図7】この発明の実施例1の支柱位置調整工具によって、前記図4におけるアンカーボルトの頭部の右側外周とベースプレートのボルト孔の右側内周の接触を切り離した状態の概念図である。
【図8】この発明の実施例2の支柱位置調整工具の平面図である。
【図9】この発明の実施例2の支柱位置調整工具を用いて、アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離している状態を示す外観斜視図である。
【図10】この発明の実施例2のアンカーボルトの頭部の上側(図10において)外周とベースプレートの孔の上側(図10において)内周が接触している状態を示す概念図である。
【図11】従来、道路の照明柱等の支柱が道路上に固定されている状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
A 支柱位置調整工具 B 支柱位置調整工具
C アンカーボルト D ベースプレート
E コンクリート製基礎
1 特殊ナット 2 ねじ切り部
3 テーパー部
21 ボルト孔 22 ナット
23 支柱 24 レンチ
31 当て板 32 挿通孔
33 貫通長孔 33a 貫通長孔
33b 貫通長孔 34 バール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトの頭部にナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に当該接触を切り離す工具において、
外周断面が角型形状で、内周がネジ孔となり、一方の端部の外周を先細のテーパー形状にした特殊ナットを設け、
前記アンカーボルトの頭部から前記ナットを外し、前記特殊ナットを螺着して、当該アンカーボルトの頭部の下部まで進め、前記特殊ナットのテーパー形状の一端を前記ベースプレートのボルト孔内部に進入させ、
当該特殊ナットの先細の先端部がアンカーボルトの頭部の外周とベースプレートのボルト孔の内周との隙間に均等に入り込んで前記ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて当該アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離すことを特徴とする、支柱位置調整工具。
【請求項2】
基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトの頭部にナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に当該接触を切り離す支柱位置調整方法において、
前記アンカーボルトの頭部に前記特殊ナットを螺着して当該特殊ナットのテーパー形状の一端を当該アンカーボルトの頭部の下部まで進め、ナットの先細の先端部がアンカーボルトの頭部の外周とベースプレートのボルト孔の内周との隙間に均等に入り込んで前記ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて当該アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離すことを特徴とする、前記請求項1の発明の支柱位置調整工具を用いた支柱位置調整方法。
【請求項3】
基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトの頭部にナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に当該接触を切り離す工具において、
適宜形状の板体に前記アンカーボルトの挿通孔及び貫通孔を設け、当該挿通孔から貫通孔までの長さは、前記ベースプレートのボルト孔からベースプレートの外縁までの長さにほぼ相応する位置として当該板体によって当て板を設け、
前記アンカーボルトの頭部から前記ナットを外し、前記当て板の挿通孔を当該アンカーボルトに通して当該当て板をベースプレート上に載置し、その上から前記ナットを螺着して前記当て板をベースプレートから外れないように押え、前記当て板の貫通孔に長尺な工具の先端を差し込み、当該工具をてこの要領で倒して当該工具でベースプレートの外縁を押し、当該ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離す構成としたことを特徴とする、支柱位置調整工具。
【請求項4】
基礎面から突出した複数のアンカーボルトの頭部を、支柱の下端に設けたベースプレートに穿った複数のボルト孔に通してベースプレートの上面のアンカーボルトの頭部にナットを螺着して固定した支柱の、前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ベースプレートのボルト孔の内周とが接触している場合に当該接触を切り離す支柱位置調整方法において、
適宜形状の板体に前記アンカーボルトの挿通孔及び貫通孔を設け、当該挿通孔から貫通孔までの長さは、前記ベースプレートのボルト孔からベースプレートの外縁までの長さにほぼ相応する位置として当該板体によって当て板を設け、
前記アンカーボルトの頭部から前記ナットを外し、前記当て板の挿通孔を当該アンカーボルトに通して当該当て板をベースプレート上に載置し、その上から前記ナットを螺着して前記当て板をベースプレートから外れないように押え、前記当て板の貫通孔に長尺な工具の先端を差し込み、当該工具をてこの要領で倒して当該工具でベースプレートの外縁を押し、当該ベースプレートとともにボルト孔の位置を移動させて前記アンカーボルトの頭部の外周と前記ボルト孔の内周の接触を切り離す構成としたことを特徴とする、前記請求項3の発明の支柱位置調整工具を用いた支柱位置調整方法。
【請求項5】
前記当て板の前記貫通孔と異なる位置に他の貫通孔を設け、当該他の貫通孔は、前記ベースプレートのボルト孔から前記外縁に隣接する他の外縁までの長さにほぼ相応する位置に設けられていることを特徴とする、前記請求項3に記載の支柱位置調整工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−256596(P2011−256596A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131832(P2010−131832)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(510036311)中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社 (1)
【出願人】(000225201)那須電機鉄工株式会社 (22)
【Fターム(参考)】