説明

支柱及び支柱の設置方法

【課題】設置面に取付ける支柱の高さ調整を容易なものとなる支柱及び支柱の設置方法を提供する。
【解決手段】支柱本体1と、その下端から突出する雄ねじ部2と、雄ねじ部2に螺入された締結部材3と、雌ねじ孔42が上面から下方に向けて形成されたアンカー4と備え、設置面に埋設されたアンカー4の雌ねじ孔42に雄ねじ部2の先端を螺入させ、雄ねじ部2に螺入させた前記締結部材3を回転させてアンカー上面41に締め付けることによって、前記雄ねじ部2を前記アンカー4に固定させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられるフェンスや柵等に関し、特にこれらに用いられる支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられるフェンスや柵において、その支柱を設置する場合は、コンクリート基礎を用いて支柱下端部を埋設するものや、打ち込み装置等を用いて支柱を土面に直接打設するものや、コンクリート面等の上に支柱ホルダーを設置し、その上に支柱を立設させるもの等が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フェンスに用いられる支柱の着脱装置が提案されており、その装置は、筒状に形成した支柱と、支柱に芯材として挿入される支軸と、基礎に埋設され支軸が螺入して差し立てられるようにしたソケットとを用いたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案3063675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような支柱の着脱装置は、支柱の高さ調節が困難であった。すなわち、支軸の貫通孔が長孔なので、設置作業時に生じる僅かな誤差を吸収することができるが、支軸自体の高さ調整には不向きであって、設置面の不陸に対応するための微小な高さ調整には向いていなかった。
【0006】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、設置面に取付ける支柱の高さ調整を容易なものとなる支柱及び支柱の設置方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る支柱は、支柱本体と、その下端から下方に向けて突出する雄ねじ部と、雄ねじ部に螺入された締結部材と、雌ねじ孔が上面から下方に向けて形成されたアンカーと備え、設置面に埋設された前記アンカーの雌ねじ孔に前記雄ねじ部の先端が螺入されると共に、雄ねじ部に螺入された前記締結部材を回転させてアンカー上面に締め付けることによって、前記雄ねじ部が前記アンカーに固定されるようになされたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る支柱において、支柱本体の下部は、下方に開口した筒状となされ、前記雄ねじ部は支柱本体の内部を通って支柱本体の下端から下方に突出されると共に、前記締結部材は、雄ねじ部に沿って前記筒状の内部に進入可能となされているように構成してもよい。
【0009】
また本発明に係る支柱の設置方法は、本発明に係る前記支柱の設置方法であって、締結部材に雄ねじ部を螺入する工程と、アンカー上面の外径より径大となされた離型紙に雄ねじ部を通す工程と、アンカーの雌ねじ孔に前記雄ねじ部の先端を螺入する工程と、前記雄ねじ部に螺入された前記締結部材を回転させて、前記離型紙を間に挟んで前記締結部材をアンカー上面に締め付ける工程と、前記アンカーを設置面に設けられた埋設孔に埋設する工程と、アンカーと埋設孔との隙間に接着剤を注入する工程と、接着剤が固化した後に前記離型紙を取り外す工程とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る支柱によれば、支柱本体の下端より突出させた雄ねじ部の先端がアンカーの雌ねじ孔に螺入されると共に、雄ねじ部に螺入された締結部材を回転させてアンカー上面に締め付けることによって、前記雄ねじ部がアンカーに固定されるようになされているので、締結部材による締め付けの高さ位置を変えることにより、支柱本体の高さを容易に変えることができる。
【0011】
本発明に係る支柱において、支柱本体の下部は、下方に開口した筒状となされ、前記雄ねじ部は支柱本体の内部を通って支柱本体の下端から下方に突出されると共に、前記締結部材は、雄ねじ部に沿って前記筒状の内部に進入可能となされているように構成すれば、締結部材は、治具を用いて作業できる程度、外部に露出していればよいので、雄ねじ部の外部への露出を抑えることが可能となり、雄ねじ部のねじ山の部分の腐食を抑えることができる。
【0012】
また本発明に係る支柱の設置方法によれば、前記離型紙を間に挟んで前記締結部材をアンカー上面に締め付けた状態で、前記アンカーを設置面に設けられた埋設孔に埋設し、そしてアンカーと埋設孔との隙間に接着剤を注入するので、接着剤が締結部材とアンカーとの間に浸入せず、締結部材や雄ねじ部を可動させて支柱本体を任意の高さに合わせる設置作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る支柱を使用したフェンスの実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1の支柱下部の部分分解斜視図である。
【図3】図1の支柱を設置面への設置する際の支柱の下部付近の部分拡大図である。
【図4】図3の部分分解斜視図である。
【図5】図1の支柱を設置面への設置する方法の一形態を示す説明図である。
【図6】図1の支柱を設置面への設置する方法の一形態を示す説明図である。
【図7】図1の支柱の高さ調節方法を示す説明図である。
【図8】図1の支柱の高さ調節方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0015】
図面において、1は支柱本体、2は支柱本体1の下端から下方に突出する雄ねじ部、3は雄ねじ部2に螺入される締結部材、4は雄ねじ部2の先端が螺入されるアンカーであって、本発明に係る支柱Pは、主に支柱本体1、雄ねじ部2、締結部材3及びアンカー4から構成され、そして間隔をおいて立設された支柱Pにパネル5が取付けられてフェンスFが構成されている。
【0016】
前記支柱Pに支持されて連続的に設置されるパネル5は、本形態では、多数の縦線材51と横線材52とが格子状に配置されると共に、縦線材51と横線材52とが各交差部において溶接等により接合されたものである。縦線材51及び横線材52は、強度的に安定しておりコストの安い鋼線材が好適に用いられるがステンレス合金やアルミニウム合金等の他の金属を用いてもよい。また縦線材51及び横線材52の耐食性や耐候性を高めるために、一般的にそれらの表面に金属めっきや塗装が施される。パネル5は、本形態では、連結具53を介して支柱Pの側方に固定されている。なお、支持具(図示せず)によって、支柱Pの前面側に固定するものでもよい。
【0017】
パネル5は、図1に示すように、前記のような格子体に限られず、図示しないが、金属板、樹脂板、これらを積層した積層板、ポリカーボネートやアクリル樹脂からなる透光性の樹脂板を用いてもよい。
【0018】
支柱本体1は、図1に示すように、一般には強度的に安定しておりコストの安い丸パイプ状の鋼管が用いられるが、断面矩形状の角パイプや断面多角形状や断面楕円形状であってもよい。またステンレス合金やアルミニウム合金などの他の金属を用いたものでもよい。また、支柱本体1の頭部には、内部に雨水等が浸入することを防ぐためにキャップ11が取付けられている。
【0019】
図2は、支柱Pの下部付近の部分分解斜視図である。雄ねじ部2は、長手方向に沿ってねじ山が形成されており、雄ねじ部2の上端には支柱本体1に固定される平面視六角形状の頭部21が設けられている。本形態においては、雄ねじ部2の下端部が支柱本体1の下端から下方に突出されており、前記頭部21は、筒状の支柱本体1の内部に配置され、その側面に雌ねじが刻設された横ねじ孔22が設けられている。そして、支柱本体1の下部に横方向に設けられた挿通孔12から、横ねじ孔22に向けて固定ビスBを螺着させることによって、頭部21が支柱本体1に固定される。前記横ねじ孔22には、本形態では、頭部21の外周面の対向する位置に計2個設けられているが、雄ねじ部2の頭部21を支柱1の下部に強固に取付けることができればよいので、その個数は、1個でもよく、3個以上でもよい。
【0020】
アンカー4は、設置面に埋設され、該アンカー上面41から下方に向けて形成された雌ねじ孔42に、前記雄ねじ部2の先端が螺入されるようになされている。
【0021】
締結部材3は、雄ねじ部2に螺入されて、該雄ねじ部2の長手方向に沿って移動可能となされている。かかる締結部材3は、本形態では、その外形が平面視正六角形状であって、筒状の前記支柱本体1の内部に進入可能な大きさとなされ、その中央部の上下方向に沿って前記雄ねじ部2に螺入される雌ねじ孔31が設けられている。すなわち、締結部材3は、雄ねじ部2の頭部21下面と、雄ねじ部2の先端が螺入されたアンカー上面41との間を移動可能となされている。そして、設置面に埋設された前記アンカー4の雌ねじ孔42に前記雄ねじ部2の先端が螺入されると共に、この雄ねじ部2に螺入された前記締結部材3を回転させてアンカー上面41に締め付けることによって、前記雄ねじ部2が前記アンカー4に固定されるようになされている。
【0022】
次に、支柱Pを設置面に設置する設置方法について、図3〜6を参照して具体的に説明する。支柱Pは、図3、図4に示すように、中央部に貫通孔61が設けられた離型紙6が、締結部材3とアンカー4との間に配置されている。そして支柱本体1の下部に固定された雄ねじ部2を、締結部材3の雌ねじ孔31に螺入すると共に、離型紙6の貫通孔61を通して、前記雄ねじ部2の先端をアンカー4の雌ねじ孔42に螺入し、次いで、前記雄ねじ部2に螺入された前記締結部材3を回転させて、前記離型紙6を間に挟んで前記締結部材3をアンカー上面41に締め付ける。
【0023】
なお、前記締結部材3を回転させて、アンカー上面41に締め付けるには、雄ねじ部2を静止させて、締結部材3自体を雄ねじ部2に対して回転させてもよいし、締結部材3自体を静止させて、雄ねじ部2を締結部材3に対して回転させてもよく、要は、雄ねじ部2との関係において、締結部材3を回転させればよい。
【0024】
続いて、かかる状態のアンカー4を埋設面に設けられた埋設孔Mに挿入し、アンカー4と埋設孔Mとの隙間Sに接着剤やモルタル等の接着材7を注入して、アンカー4を埋設孔Mに固定する。締結部材3下面とアンカー上面41との間には離型紙6が挟持されているので、締結部材3とアンカー4との間に前記接着材7が浸入することはない。前記離型紙6は、アンカー上面41の外径より径大となされ、好適には埋設孔Mの外径と同等か、それよりも径大の方が好ましい。この前記離型紙6は、アンカー4と埋設孔Mとの隙間Sに接着材7を注入する際に、接着材7をせき止めて、締結部材3や雄ねじ部2にはみ出たり、付着したりするのを防止するためのものであり、注入する際は、該離型紙6の外周の一部を若干捲り挙げて、生じた隙間より注入すればよい。
【0025】
そして離型紙6を雄ねじ部2から取り外せば、支柱Pの設置は完了する。なお、離型紙6を取り外した状態で、締結部材3の締め付けが弱ければ、雄ねじ部2に沿って締結部材3を回転させて、アンカー上面41にさらに強く締め付ければよい。本発明に係る支柱Pの設置方法においては、締結部材3がアンカー上面41に締め付けられているので、雄ねじ部2が不容易に回転して高さが変わることなく、支柱本体1を固定することができる。なお離型紙6を取り外さなくても前記と同様な効果が期待できる場合があるが、離型紙6の表面が特に滑りやすい場合は、離型紙6と締結部材3との重合面において滑りが生じて、締結部材3が緩む場合があるので、本形態のように、離型紙6は雄ねじ部2から取り外す方がより好ましい。
【0026】
さらに本形態では、図6に示すように、締結部材3をアンカー上面41に締め付けた状態で、支柱本体1の下端とアンカー4との間に間隙Tが生じるようになされ、その間隙Tから締結部材3を回転させることができるようになされている。すなわち、締結部材3は、平面視六角形状の通常のナット部材が用いられ、スパナやモンキーレンチ等の治具を締結部材3に嵌め込んで、アンカー上面41に向けて締結部材3を締め付けたり、逆に緩めたりすることができる。また、本形態の様に締結部材3の側面に孔部32を設けることによって、前記孔部32に棒材(図示せず)を差し込んで、締結部材3を回動させて、前記と同様に締結部材3を操作することができる。
【0027】
次に、設置面に固定された支柱Pの高さを調節する固定方法について、図7−8を参照して具体的に説明する。まず、アンカー4に対して締結部材3を緩めて、その後、雄ねじ部2をアンカー4から外れるX方向に支柱本体1を回転させて、支柱本体1を上方に移動させて支柱Pの高さを調節する。続いて、雄ねじ部2に沿って締結部材3をY方向に回転させて、アンカー上面41に締め付ける。これにより、支柱Pを目的の高さに固定することが可能となり、設置後も同様な作業によって支柱Pの高さを再調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、支柱Pの高さ調節が容易であるので、支柱間に格子パネルや板状パネル等を取付けるフェンスの支柱や、そのフェンスで用いられる門扉用の門柱としてのみではなく、支柱間にビーム材を架設した柵のための支柱としても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 支柱本体
11 キャップ
12 挿通孔
2 雄ねじ部
21 頭部
22 横ねじ孔
3 締結部材
31 雌ねじ孔
32 孔部
4 アンカー
41 アンカー上面
42 雌ねじ孔
5 パネル
51 縦線材
52 横線材
53 連結具
6 離型紙
61 貫通孔
7 接着材
B 固定ビス
F フェンス
M 埋設孔
P 支柱
S 隙間
T 間隙
X X方向
Y Y方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱本体と、その下端から下方に向けて突出する雄ねじ部と、雄ねじ部に螺入された締結部材と、雌ねじ孔が上面から下方に向けて形成されたアンカーと備え、設置面に埋設された前記アンカーの雌ねじ孔に前記雄ねじ部の先端が螺入されると共に、雄ねじ部に螺入された前記締結部材を回転させてアンカー上面に締め付けることによって、前記雄ねじ部が前記アンカーに固定されるようになされたことを特徴とする支柱。
【請求項2】
支柱本体の下部は、下方に開口した筒状となされ、前記雄ねじ部は支柱本体の内部を通って支柱本体の下端から下方に突出されると共に、前記締結部材は、雄ねじ部に沿って前記筒状の内部に進入可能となされていることを特徴とする請求項1に記載の支柱。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された支柱の設置方法であって、
締結部材に雄ねじ部を螺入する工程と、アンカー上面の外径より径大となされた離型紙に雄ねじ部を通す工程と、アンカーの雌ねじ孔に前記雄ねじ部の先端を螺入する工程と、前記雄ねじ部に螺入された前記締結部材を回転させて、前記離型紙を間に挟んで前記締結部材をアンカー上面に締め付ける工程と、前記アンカーを設置面に設けられた埋設孔に埋設する工程と、アンカーと埋設孔との隙間に接着剤を注入する工程と、接着剤が固化した後に前記離型紙を取り外す工程とを備えたことを特徴とする支柱の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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