支柱用栓
【課題】線状物を張架し易く、かつ該線状物が脱落し難い支柱用栓を提供する。
【解決手段】栽培用支柱Lを構成する中空パイプ1の上方開口部に取り付けられる栓2に、栓上面と栓外周壁に開口する凹溝23を設け、この凹溝23の底面領域に、上方視したときの中心部から外周壁側に向けて、上方視扇状に徐々に口幅を広げる横溝232か、又は、対向する縦壁面のそれぞれから他方の縦壁面に向けて突出する凸部を形成する。そして、この横溝232又は凸部が形成された凹溝23に線状物を担持させる。
【解決手段】栽培用支柱Lを構成する中空パイプ1の上方開口部に取り付けられる栓2に、栓上面と栓外周壁に開口する凹溝23を設け、この凹溝23の底面領域に、上方視したときの中心部から外周壁側に向けて、上方視扇状に徐々に口幅を広げる横溝232か、又は、対向する縦壁面のそれぞれから他方の縦壁面に向けて突出する凸部を形成する。そして、この横溝232又は凸部が形成された凹溝23に線状物を担持させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱用栓に関する。より詳しくは、長芋その他の蔓性作物等の栽培に用いられる支柱に取り付けられる栓に関する。
【背景技術】
【0002】
支柱を所定間隔で地面に立設して、並設された各支柱間にネットなどの線状物等を張ることによって形成される栽培用具がある。例えば、長芋等の蔓性の作物を栽培するときに使用される栽培用具を挙げることができる。動物等の侵入を防止する際の獣害防止柵等も同様の構成のものがある。
【0003】
ここで、従来の栽培用具に使用される支柱には、一般に鋼管が使用され、この鋼管を地面に打ち込んで立設する作業が行われてきた。ところが、前記鋼管は重量が嵩むため、運搬や作業に手間がかかり、かつ腐食が避けられない。このため、本願出願人は、従来の支柱用鋼管に替わる内部中空の軽量合成樹脂製パイプを既に提案した。この合成樹脂製パイプは、鋼管に比べても強度的に遜色がなく、また腐食の心配がない。しかも軽量で作業がし易いため、建設又は土木工事用のコンクリート型枠支持管等や(例えば、特許文献1参照)、養殖筏用パイプにも採用されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−61091号後方(特許請求の範囲、第1図)
【特許文献2】実公平2−24461号報(特許請求の範囲、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、前記合成樹脂製パイプを用いることによって、柵形成の作業性や柵の耐久性の改善は達成されたが、複数の支柱にネットなどの線状物を張設して栽培用具を形成する作業を行う場合や実際に栽培を行う場合においては、各支柱間の線状物にかかる作物による荷重や、風圧等に偏りがあると、支柱が傾倒したり撓み変形したりする場合があるという技術的課題や、支柱上端部に担持等される線状物が簡単に抜け落ちたり、外れたりし易いという技術的課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、線状物を張架し易く、かつ該線状物が脱落し難い支柱用栓を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る支柱用栓は、中空パイプの上方開口部に取り付けられ、栽培用支柱を構成する栓であって、線状物を担持するための凹溝を有し、該凹溝は、栓上面と栓外周壁に開口すると共に、その底面領域に、上方視したときの中心部から外周壁側に向けて、上方視扇状に徐々に口幅を広げる横溝が形成されているものである。
本発明においては、凹溝に横溝を形成しているため、この横溝に線状物が嵌り込み、その上壁がストッパーとして機能する。これにより、線状物が凹溝から抜けにくくなる。
【0008】
本発明に係る他の支柱用栓は、中空パイプの上方開口部に取り付けられ、栽培用支柱を構成する栓であって、線状物を担持するための凹溝を有し、該凹溝は、栓上面と栓外周壁に開口すると共に、対向する縦壁面のそれぞれから他方の縦壁面に向けて突出する凸部が形成されているものである。
本発明においては、凹溝に凸部を形成しているため、この凸部がストッパーとなり、線状物の抜け落ちが防止される。
【0009】
これらの支柱用栓は、前記凹溝の開口部が、栓上面に向かって徐々に口幅が広がるように形成されていてもよい。
また、繊維強化熱硬化性樹脂層と該樹脂層の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる二層構造中空パイプ、又は熱可塑性樹脂からなる内層と繊維強化熱硬化性樹脂からなる中間層と熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる三層構造中空パイプの上方開口部に取り付けることができる。
更に、ABS樹脂単体で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、線状物を担持するための凹溝に、横溝又は凸部を形成しているため、線状物が張架し易く、かつ脱落し難い支柱用栓を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る栽培用支柱(L)の全体構成(一部省略)を表す正面図である。
【図2】支柱(L)を構成する中空パイプ(1a)の層構造を表す水平断面図であり、図1に示すI−I線による断面図に相当する。
【図3】支柱(L)を構成する中空パイプ(1b)の層構造を表す水平断面図であり、図1に示すI−I線による断面図に相当する。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る栓(2a)の上方視(矢印X方向から見た)平面図である。
【図5】図4に示す栓(2a)の側方視正面図である。
【図6】図4に示す栓(2a)の下方視(矢印Y方向から見た)底面図である。
【図7】図4に示す栓(2a)の図4中のII−II線矢視縦断面図である。
【図8】図4に示す栓(2a)の図5中のIII−III線矢視水平断面図である。
【図9】図4に示す栓(2a)の図5中のIV−IV線矢視水平断面図である。
【図10】線状物(4)が栓(2a)の横溝(232)に定着した状態を、栓(2)を水平断面にした状態で示す図である。
【図11】支柱(L)を回して線状物(4)にテンションをかけた状態を示す図である。
【図12】図11の矢印Z方向から見た栓(2)周辺の正面図である。
【図13】並設された支柱(L)を上方から見たときの図で、線状物(4)が各栓(2a)の凹溝(23)に担持されて直線状に架け渡された状態を示す図である。
【図14】並設された各支柱(L)を所定角度回すことによって、線状物(4)のテンションを強めた状態を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る栓(2b)の上方視(図16の矢印X方向から見た)平面図である。
【図16】図15に示す栓(2b)の側方視正面図である。
【図17】図16中のP部拡大図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る栽培用具(F)の一部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明に係る支柱用栓は、例えば、(1)繊維強化熱硬化性樹脂層とこの樹脂層の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる二層構造中空パイプ、(2)熱可塑性樹脂からなる内層と繊維強化熱硬化性樹脂からなる中間層と熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる三層構造中空パイプ、以上(1)、(2)のいずれかから選択される「中空パイプ」の上方開口部に取り付けられる。この「中空パイプ」は、例えば、曲げ剛性が1220×107〜19600×107N・m2であり、その下方開口部には「尖塔部」が取り付けられ、栽培用支柱として使用される。
【0014】
このような支柱は、軽量であるので運搬、立設作業が容易であり、また、強度も充分であるので、加重や風圧等の外力の影響で傾倒したり撓み変形したりすることがない。また、腐食の心配もないので、風雨に曝される野外設置用の支柱に好適である。
【0015】
なお、前述した中空パイプの曲げ剛性が1220×107N・m2(125×103kg・cm2)未満の場合、支柱の地面への立設間隔を狭くしても、強風によるしなり(撓み)が大きくなることがある。一方、中空パイプの曲げ剛性が19600×107N・m2(2000×103kg・cm2)を超えると、支柱の単位重量が増して運搬や作業がし難くなることがあり、また、剛性が過剰となって経済的でない。
【0016】
ここでいう「曲げ剛性」は、次の方法で測定する。半径30mmの当接面を有する支点及び加重治具によって、パイプ外径の40倍の支点距離及び曲荷重速度20mm/分で中央集中三点曲げ試験を行い、その荷重−撓み曲線から算出する。これら曲げ剛性を満足できる支柱の外径は、長芋栽培用の場合、繊維強化熱可塑性樹脂層の厚みにもよるが、概ね18mm〜43mmであり、長さは土中埋設部0.6〜1.2m、地上部1.5〜2.4m、全長2.1〜3.6m程度である。
【0017】
本発明の支柱用栓には、線状物を担持するための凹溝が設けられており、この凹溝に対して線状物を挿着する簡単な作業で、支柱上端に線状物を担持させることができるようになっている。なお、ここいう「線状物」とは、鉄線(番線)、カラー鉄線、ワイヤーロープ、フィルムヤーン、モノフィラメントを撚り合わせたロープ、各種紐類を広く含む。
【0018】
さらに、本発明の支柱用栓では、凹溝が、栓上面と栓外周壁に開口し、前述した線状物が定着する凹溝の底面領域には、上方視したときの中心部から外周壁側に向けて、上方視扇状に徐々に口幅を広げる横溝が形成されている。これによって、線状物を担持した状態の支柱を回すことで、横溝がストッパー(はずれ止め)の役割を果たし、線状物が支柱栓上面から外れるのを防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る他の支柱用栓では、凹溝を栓上面と栓外周壁に開口形成するとともに、この凹溝の対向する縦壁面のそれぞれからは、他方の縦壁面に向けて突出する凸部が形成されている。この凸部がストッパー(はずれ止め)の役割を果たし、線状物が支柱栓上面から外れるのを防止することもできる。
【0020】
これらの支柱用栓では、前述した凹溝の開口部を、栓上面に向かって徐々に口幅が広がるように形成してもよい。これにより、線状物を凹溝内に導入し易くなる。
【0021】
前述した構成の栓を備える栽培用支柱を、間隔をあけて並設し、各支柱間に線状物が張設した栽培用具は、畑等の野外での組み立て作業が容易であるという特徴がある。また、作物の茎や蔓が巻き付く等して荷重がかかることになるネットを支持する線状物を、複数の支柱の上部でスライド可能に担持し、支柱間の線状物への荷重をより均等化することができる。これにより、一部の支柱間の線状物に局部的に荷重がかかって、支柱が傾倒、撓み変形、折損等することがなく、継続的にネットが張られた状態を維持できるようになる。その結果、線状物及びネットを常に張った状態にしておくことができるので、長芋などの蔓性作物の栽培に特に適する。
【0022】
先ず、本発明の第1の実施形態に係る栽培用支柱について説明する。図1は本実施形態の支柱の全体構成(一部省略)を表す正面図である。本実施形態の栽培用支柱L(以下、「支柱L」と略称する。)は、円柱状の中空パイプ1と、この中空パイプ1の上方開口部に取り付けられる栓2と、この中空パイプ1の下方開口部に取り付けられる、下方に向けて尖った形状をなす尖塔部3と、を備えている。なお、図1中の符号21,31は、パイプ1の中空部104(図2参照)に嵌入する凸部を表している。
【0023】
尖塔部3は、下方に向けて徐々に窄んで尖った形状を備えていればよく、テーパーの角度や長さは、自由に選択決定できる。この尖塔部3は、その先が尖った形状を備えていることにより、支柱Lを地面にさし入れ易くしている。
【0024】
中空パイプ1の長さは、目的に合わせて適宜決定できるので特に限定はなく、中空パイプ1に対する栓2及び尖塔部3の取り付け方法は、水密性と固定強度が確保できる方法が好ましく、熱溶着、摩擦溶着、接着剤による接着等を種々採用できる。
【0025】
中空パイプ1は、平滑な表面を備える単純円柱状のパイプとして形成してもよいが、パイプ長手方向に突起部11を所定間隔で配列しておくか、表面にエンボス加工を施した構成が望ましい。この突起部11あるいはエンボスは、支柱Lを手で把持しながら地面に立設する時、又は線状物を支柱L,L間に張設するときに、立設作業あるいは張設作業を容易,確実化できるという機能を発揮する。なお、本発明において「突起部」にはエンボス形態も含まれるものとする。
【0026】
突起部11は、中空パイプ1の周方向所定間隔で配列すればよく、配列数に特に限定はないが、例えば、二列とすれば、合成樹脂の成形加工が容易な範囲で、手の滑り防止機能を必要充分に発揮させることができるので好適である。突起部11の形状自体も特に限定はなく、手の滑り防止機能を発揮できる形状であればよい。
【0027】
また、エンボスも表面の熱可塑性樹脂被覆層にエンボスを有する熱ローラーを当接するなどして、熱ローラーのエンボスパターンを転写すれば良く、前記の突起と同様に支柱の外周にニ列程設ければ、滑り防止の効果は発揮できる。
【0028】
図2は支柱(L)を構成する中空パイプ(1a)の層構造を表す水平断面図であり、図1に示すI−I線による断面図に相当する。図2に示すように、この中空パイプ1aは、相互に密着接合した内層101、中間層102、被覆層103からなる計三層構造を有する。内層101と被覆層103は、ともに熱可塑性樹脂、特に好適にはABS樹脂から形成されており、中間層102は、繊維強化熱硬化性樹脂(FRP)から形成されている。なお、図2中の符号104は、中空部を表している。
【0029】
ここで、中空パイプ1aは、内層パイプの押出機により、ABS樹脂を環状に押し出して、内層101を形成し、この内層101の外周にガラス繊維ロービングにスチレンを架橋成分として含む不飽和ポリエステル樹脂を含浸して縦添えし、その外周を環状に成形して、未硬化状態の中間層102を形成し、これを被覆層用の押出機のクロスヘッドに挿通する。
【0030】
被覆層103用の押出機においては、所定形状の突起を有するダイからABS樹脂を環状に押し出して、中間層102の外周を被覆し、その被覆層103を冷却固化した後、加熱炉に導いて中間層102の不飽和ポリエステル樹脂を硬化させる。
【0031】
前記突起を有するダイおよび突起部を所定ピッチで押圧する賦形ギヤを当接することによって被覆層103の外周には、突起部11が所定間隔で形成される。以上により製造できる中空パイプ1aとして、例えば、外径26mm、単位重量300g/m、曲げ強力550N、曲げ剛性2060×107N・m2からなる仕様のものが得られる。なお、この中空パイプ1は、長芋栽培用の支柱として現在市販されている金属製パイプ(農ビ被覆鋼管)の単位重量550〜600g/mと比較して、明らかに軽量である。
【0032】
ここで、内層101及び被覆層103に用いたABS樹脂と、中間層102に用いたスチレンを架橋成分とする不飽和ポリエステル樹脂とは、未硬化状態において相溶性があるので、この三層は極めて強固に接着接合し、外力に対して三層101,102、103が協働して優れた強力、剛性を発揮する。
【0033】
中間層102に使用する補強用繊維は、ガラス繊維が一般的であるが、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維など、FRPに用いられる慣用の他の繊維であってもよい。
【0034】
また、中間層102に使用する熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを採用でき、特に、スチレンを架橋成分とする不飽和ポリエステル樹脂が好適である。
【0035】
内層101及び被覆層103に使用する熱可塑性樹脂は、中間層102において採用される未硬化の樹脂と相溶性を有するものであれば、中間層102が硬化した後において、各層101〜103が相互に接着接合して、強度の高い中空パイプ1を得ることができる。
【0036】
なお、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の組み合わせ例を挙げると、スチレンを誘導体の成分として含むPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、AAS樹脂などのスチロール系樹脂と、スチレンを架橋性モノマーとする不飽和ポリエステル樹脂との組み合わせがある。他の例としては、アクリル系の熱可塑性樹脂と、アクリル酸系の架橋性モノマーを含む不飽和ポリエステル樹脂との組み合わせがある。
【0037】
なお、本発明においては、図3で示されたような二層構造の中空パイプ1bも採用できる。即ち、前述した中間層同様の材料構成である繊維強化熱硬化性樹脂層102とこの樹脂層102の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層103とからなる二層構造中空パイプである。この中空パイプ1bは、慣用の引板成形により繊維強化熱硬化性樹脂パイプを製造した後、このパイプの外周に接着層を塗布するか或いは接着性樹脂で被覆することによって製造できる。
【0038】
中空パイプ1aや1bに取り付けられる栓2や尖塔部3は、高い強度が得られるABS樹脂等の樹脂単体で、慣用の成形方法で、図示された形状に製造すればよい。
【0039】
このように、本実施形態の栽培用支柱は、軽量であるので、その運搬や設置作業が容易であり、また、腐食の心配がなく耐久性にも優れているので、作物栽培用の支柱として利用できる。特に、土中でも腐食せず、土塊も付き難いので、引抜作業も容易であり、従来の鋼管使用時のようにスコップでの掘り返しや機械を使用しての作業を要しない。また、充分な強度と剛性を有することから、設置作業時や使用に際して折損等の心配がない。更には、従来の鋼管製の支柱と異なって、弾力性(可撓性)と形状復元性を備えている。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態として、前述した第1の実施形態の支柱Lの上端に設けられた栓2aについて説明する。図4は本実施形態の栓2aの上方視(矢印X方向から見た)平面図、図5は栓2aの側方視正面図、図6は栓2aの下方視(矢印Y方向から見た)底面図、図7は栓2aの図4中のII−II線矢視縦断面図、図8は栓2aの図5中のIII−III線矢視水平断面図、図9は栓2aの図5中のIV−IV線矢視水平断面図である。そして、図10は、線状物4が栓2aの横溝232に定着した状態を、栓2aを水平断面にした状態で示す図である。
【0041】
なお、線状物としては、鉄線(番線)、カラー鉄線、ワイヤーロープ、フィルムヤーンやモノフィラメントを撚り合わせたロープ状物、各種紐類等から、栽培ネットに負荷される蔓等の荷重や風圧等に耐える強度、耐候性等を勘案して選択すれば良い。
【0042】
本発明の第2の実施形態に係る栓2aは、中空パイプ1の中空部104(図2、図3参照)に嵌入される部分となる、内部中空である外観略円柱状の凸部21を備える。この凸部21の外周壁には、縦方向に延びる条溝211と条山212が周方向に所定間隔で形成されている(図5、図6参照)。
【0043】
凸部21の外周壁に条溝211を形成したことによって、該凸部21を中空パイプ1の中空部に嵌入するに際して、該条溝211に接着剤を保持した状態となり、接着剤が凸部21と中空パイプ1との界面に確実に存在することになるので、両者の接着を確実にすることができる。なお、図6の符号213は、凸部21の中空部を表している。
【0044】
次に、栓2aは、前記凸部21よりも一回り口径が大きい略円柱状の頭部22を備える。この頭部22は、栓2が中空パイプ1に接着されたときに、外側に露出する部分である。
【0045】
前記頭部22には、線状物4を担持する役割を果たす凹溝23が設けられている。この凹溝23は、栓2の直径方向に形成され、栓2aの上面221及び外周壁222に開口している。この凹溝23は、栓2の上面221に向かって徐々に口幅W1(図7参照)が広がるように形成されている。即ち、凹溝23の垂直縦断面形状(図7参照)が略Yの字状をなすように上面221に開口し、線状物4を凹溝23内に導入し易くしている。
【0046】
この凹溝23の底面231領域には、前記栓2aを上方視したときの中心部C(図4参照)から外周壁222側に向かって、上方視扇状に、周方向に徐々に口幅W2を広げる横溝232が形成され、この横溝232は栓2の外周壁222に開口している(特に、図8参照)。
【0047】
最上方の線状物4は、栓2aの凹溝23の上方開口部234から挿入され、下方の前記横溝232に定着して収容される。図10は、線状物4が栓2aの横溝232に定着した状態を、栓2aを水平断面にした状態で示している。なお、図10に示された仮想線は、栓2aの上面221の上方開口部234を表している。
【0048】
凹溝23に線状物4が挿着されただけの図10に示されたような状態では、線状物4は、上方へ引き上げられると、凹溝23から抜け出てしまうおそれがある。また、この状態では、線状物4のテンションが充分でない場合もある。
【0049】
そこで、図11に示す矢印R方向(又はその反対方向)に支柱Lを回すと、線状物4は、扇状に口幅を広げる横溝232に嵌り込むようにして引っ張られていき、上方視略Z字状に屈曲し(図11参照)、その結果、線状物4のテンションが強められる。
【0050】
図11に示された状態では、この図11の矢印Z方向から見た栓2a周辺の正面図である図12を参照するとより理解できるように、線状物4は横溝232に嵌り込んで、テンションが強まった状態となっている。このため、線状物4が上方へ引き上げられても、横溝232の上壁232a(図7参照)がストッパーとして機能するので、線状物4が凹溝23から抜け出ることがなくなる。
【0051】
ここで、図13は、並設された支柱Lを上方から見たときの図であって、線状物4が各栓2aの凹溝23に担持されて直線状に架け渡された状態を示す図である。一方の図14は、各支柱Lを所定角度回すことによって、線状物4のテンションが強められた状態を誇張して示している。なお、図13、14において栓2aは、図8に対応する水平断面状態で示されている。
【0052】
次に、本発明の第3の実施形態として、前述した第1の実施形態の支柱Lの上端に設けられた栓2bについて説明する。図15本実施形態の栓2bの上方視(図16の矢印X方向から見た)平面図、図16は栓2bの側方視正面図、図17は図16中のP部拡大図である。栓2bの下方視底面の形態は、栓2aと同様であるので図面に基づく説明を割愛する(図6参照)。
【0053】
本発明の第3の実施形態に係る栓2bの凹溝23は、栓上面221と栓外周壁222に開口するとともに、該凹溝23の対向する縦壁面235,236のそれぞれからは、他方の縦壁面に向けて突出する凸部2351,2361が形成されている。凸部2351,2361は、図15に示されているように、互いに対向しない位置に形成されているため、線状物4が上方から挿着し易い隙間が形成されている。
【0054】
また、図17に示すように、凸部2361の上面2361aは、上方に向けて末広がるテーパー形状を備えており、かつこの上面2361aは、凹溝23の上方開口部234の斜面234aと面一に形成されている。なお、凸部2351についても、拡大図面で説明しないが、これと同様の構成を備えている。
【0055】
この構成により、線状物4は、前記斜面234aと上面2361aで形成される面一の斜面をすべるように、上方開口部234から線状物4凹溝23の底面231方向へ向けて挿入されるようになる(図17中の矢印Q参照)。一旦、凹溝23の底面231(図16参照)へ定着された線状物4は、凸部2351と2361がストッパーとなって、上方に持ち上げられても容易に凹溝23から抜け落ちしないようになる(図16参照)。
【0056】
次に、図18に基づいて、本発明の第4の実施形態に係る栽培用具Fについて説明する。なお、図18は同栽培用具Fの一部正面図である。
【0057】
図18に示すように、本実施形態の栽培用具Fは、支柱Lを必要本数だけ畑などに並設する。具体的には、前述した第2又は第3の実施形態の栓2a,2bが取り付けられた支柱Lを、その下端の尖塔部3周辺を所定長だけ地中Gにさし込み、支柱Lを所定間隔で立設する。
【0058】
これら立設された支柱Lの各上端に設けられた栓2(2a又は2b)の凹溝23に対して、ネット5が取り付けられている線状物4を入れ込む。そして、各支柱Lを回してネット5を張設する。例えば、線状物4を凹溝23の底面231領域に設けられた横溝232(図5参照)に嵌め込むようにして、ネット5を張設する。
【0059】
このようにして形成された栽培用具Fは、線状物4が支柱L(の凹溝23)から抜け出てしまうことがないので、ネット5は常に張設された状態で保持される。なお、本発明において、図18のように、ネット5を張設した後、各支柱Lの上端をトワイン、ベーラー紐等で前後方向に連続的に結べば、支柱Lの揺れは防止され、従来の鋼管より剛性は必ずしも高くはないが、26φ程度の口径の支柱でも使用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る栓を使用した支柱は、上端部に線状物を張架し易く、かつ該線状物が脱落し難い。この支柱で形成された栽培用具では、線状物及びネットを常に張った状態にしておくことができるので、長芋等の蔓性の作物を栽培する場合などに特に適している。
【符号の説明】
【0061】
L 栽培用支柱(支柱)
1(1a,1b) 中空パイプ
2(2a,2b) 栓
3 尖塔部
4 線状物
101 内層
102 中間層
103 被覆層
221 (栓2の)上面
222 (栓2の)外周壁
23 凹溝
231 (凹溝23の)底面
232 横溝
234 (凹溝23の)上方開口部(Yの字状)
235,236 (凹溝23の対向する)縦壁面
2351,2361 凸部
C 中心部
F 栽培用具
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱用栓に関する。より詳しくは、長芋その他の蔓性作物等の栽培に用いられる支柱に取り付けられる栓に関する。
【背景技術】
【0002】
支柱を所定間隔で地面に立設して、並設された各支柱間にネットなどの線状物等を張ることによって形成される栽培用具がある。例えば、長芋等の蔓性の作物を栽培するときに使用される栽培用具を挙げることができる。動物等の侵入を防止する際の獣害防止柵等も同様の構成のものがある。
【0003】
ここで、従来の栽培用具に使用される支柱には、一般に鋼管が使用され、この鋼管を地面に打ち込んで立設する作業が行われてきた。ところが、前記鋼管は重量が嵩むため、運搬や作業に手間がかかり、かつ腐食が避けられない。このため、本願出願人は、従来の支柱用鋼管に替わる内部中空の軽量合成樹脂製パイプを既に提案した。この合成樹脂製パイプは、鋼管に比べても強度的に遜色がなく、また腐食の心配がない。しかも軽量で作業がし易いため、建設又は土木工事用のコンクリート型枠支持管等や(例えば、特許文献1参照)、養殖筏用パイプにも採用されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−61091号後方(特許請求の範囲、第1図)
【特許文献2】実公平2−24461号報(特許請求の範囲、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の技術には、以下に示す問題点がある。即ち、前記合成樹脂製パイプを用いることによって、柵形成の作業性や柵の耐久性の改善は達成されたが、複数の支柱にネットなどの線状物を張設して栽培用具を形成する作業を行う場合や実際に栽培を行う場合においては、各支柱間の線状物にかかる作物による荷重や、風圧等に偏りがあると、支柱が傾倒したり撓み変形したりする場合があるという技術的課題や、支柱上端部に担持等される線状物が簡単に抜け落ちたり、外れたりし易いという技術的課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、線状物を張架し易く、かつ該線状物が脱落し難い支柱用栓を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る支柱用栓は、中空パイプの上方開口部に取り付けられ、栽培用支柱を構成する栓であって、線状物を担持するための凹溝を有し、該凹溝は、栓上面と栓外周壁に開口すると共に、その底面領域に、上方視したときの中心部から外周壁側に向けて、上方視扇状に徐々に口幅を広げる横溝が形成されているものである。
本発明においては、凹溝に横溝を形成しているため、この横溝に線状物が嵌り込み、その上壁がストッパーとして機能する。これにより、線状物が凹溝から抜けにくくなる。
【0008】
本発明に係る他の支柱用栓は、中空パイプの上方開口部に取り付けられ、栽培用支柱を構成する栓であって、線状物を担持するための凹溝を有し、該凹溝は、栓上面と栓外周壁に開口すると共に、対向する縦壁面のそれぞれから他方の縦壁面に向けて突出する凸部が形成されているものである。
本発明においては、凹溝に凸部を形成しているため、この凸部がストッパーとなり、線状物の抜け落ちが防止される。
【0009】
これらの支柱用栓は、前記凹溝の開口部が、栓上面に向かって徐々に口幅が広がるように形成されていてもよい。
また、繊維強化熱硬化性樹脂層と該樹脂層の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる二層構造中空パイプ、又は熱可塑性樹脂からなる内層と繊維強化熱硬化性樹脂からなる中間層と熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる三層構造中空パイプの上方開口部に取り付けることができる。
更に、ABS樹脂単体で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、線状物を担持するための凹溝に、横溝又は凸部を形成しているため、線状物が張架し易く、かつ脱落し難い支柱用栓を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る栽培用支柱(L)の全体構成(一部省略)を表す正面図である。
【図2】支柱(L)を構成する中空パイプ(1a)の層構造を表す水平断面図であり、図1に示すI−I線による断面図に相当する。
【図3】支柱(L)を構成する中空パイプ(1b)の層構造を表す水平断面図であり、図1に示すI−I線による断面図に相当する。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る栓(2a)の上方視(矢印X方向から見た)平面図である。
【図5】図4に示す栓(2a)の側方視正面図である。
【図6】図4に示す栓(2a)の下方視(矢印Y方向から見た)底面図である。
【図7】図4に示す栓(2a)の図4中のII−II線矢視縦断面図である。
【図8】図4に示す栓(2a)の図5中のIII−III線矢視水平断面図である。
【図9】図4に示す栓(2a)の図5中のIV−IV線矢視水平断面図である。
【図10】線状物(4)が栓(2a)の横溝(232)に定着した状態を、栓(2)を水平断面にした状態で示す図である。
【図11】支柱(L)を回して線状物(4)にテンションをかけた状態を示す図である。
【図12】図11の矢印Z方向から見た栓(2)周辺の正面図である。
【図13】並設された支柱(L)を上方から見たときの図で、線状物(4)が各栓(2a)の凹溝(23)に担持されて直線状に架け渡された状態を示す図である。
【図14】並設された各支柱(L)を所定角度回すことによって、線状物(4)のテンションを強めた状態を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る栓(2b)の上方視(図16の矢印X方向から見た)平面図である。
【図16】図15に示す栓(2b)の側方視正面図である。
【図17】図16中のP部拡大図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る栽培用具(F)の一部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明に係る支柱用栓は、例えば、(1)繊維強化熱硬化性樹脂層とこの樹脂層の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる二層構造中空パイプ、(2)熱可塑性樹脂からなる内層と繊維強化熱硬化性樹脂からなる中間層と熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる三層構造中空パイプ、以上(1)、(2)のいずれかから選択される「中空パイプ」の上方開口部に取り付けられる。この「中空パイプ」は、例えば、曲げ剛性が1220×107〜19600×107N・m2であり、その下方開口部には「尖塔部」が取り付けられ、栽培用支柱として使用される。
【0014】
このような支柱は、軽量であるので運搬、立設作業が容易であり、また、強度も充分であるので、加重や風圧等の外力の影響で傾倒したり撓み変形したりすることがない。また、腐食の心配もないので、風雨に曝される野外設置用の支柱に好適である。
【0015】
なお、前述した中空パイプの曲げ剛性が1220×107N・m2(125×103kg・cm2)未満の場合、支柱の地面への立設間隔を狭くしても、強風によるしなり(撓み)が大きくなることがある。一方、中空パイプの曲げ剛性が19600×107N・m2(2000×103kg・cm2)を超えると、支柱の単位重量が増して運搬や作業がし難くなることがあり、また、剛性が過剰となって経済的でない。
【0016】
ここでいう「曲げ剛性」は、次の方法で測定する。半径30mmの当接面を有する支点及び加重治具によって、パイプ外径の40倍の支点距離及び曲荷重速度20mm/分で中央集中三点曲げ試験を行い、その荷重−撓み曲線から算出する。これら曲げ剛性を満足できる支柱の外径は、長芋栽培用の場合、繊維強化熱可塑性樹脂層の厚みにもよるが、概ね18mm〜43mmであり、長さは土中埋設部0.6〜1.2m、地上部1.5〜2.4m、全長2.1〜3.6m程度である。
【0017】
本発明の支柱用栓には、線状物を担持するための凹溝が設けられており、この凹溝に対して線状物を挿着する簡単な作業で、支柱上端に線状物を担持させることができるようになっている。なお、ここいう「線状物」とは、鉄線(番線)、カラー鉄線、ワイヤーロープ、フィルムヤーン、モノフィラメントを撚り合わせたロープ、各種紐類を広く含む。
【0018】
さらに、本発明の支柱用栓では、凹溝が、栓上面と栓外周壁に開口し、前述した線状物が定着する凹溝の底面領域には、上方視したときの中心部から外周壁側に向けて、上方視扇状に徐々に口幅を広げる横溝が形成されている。これによって、線状物を担持した状態の支柱を回すことで、横溝がストッパー(はずれ止め)の役割を果たし、線状物が支柱栓上面から外れるのを防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る他の支柱用栓では、凹溝を栓上面と栓外周壁に開口形成するとともに、この凹溝の対向する縦壁面のそれぞれからは、他方の縦壁面に向けて突出する凸部が形成されている。この凸部がストッパー(はずれ止め)の役割を果たし、線状物が支柱栓上面から外れるのを防止することもできる。
【0020】
これらの支柱用栓では、前述した凹溝の開口部を、栓上面に向かって徐々に口幅が広がるように形成してもよい。これにより、線状物を凹溝内に導入し易くなる。
【0021】
前述した構成の栓を備える栽培用支柱を、間隔をあけて並設し、各支柱間に線状物が張設した栽培用具は、畑等の野外での組み立て作業が容易であるという特徴がある。また、作物の茎や蔓が巻き付く等して荷重がかかることになるネットを支持する線状物を、複数の支柱の上部でスライド可能に担持し、支柱間の線状物への荷重をより均等化することができる。これにより、一部の支柱間の線状物に局部的に荷重がかかって、支柱が傾倒、撓み変形、折損等することがなく、継続的にネットが張られた状態を維持できるようになる。その結果、線状物及びネットを常に張った状態にしておくことができるので、長芋などの蔓性作物の栽培に特に適する。
【0022】
先ず、本発明の第1の実施形態に係る栽培用支柱について説明する。図1は本実施形態の支柱の全体構成(一部省略)を表す正面図である。本実施形態の栽培用支柱L(以下、「支柱L」と略称する。)は、円柱状の中空パイプ1と、この中空パイプ1の上方開口部に取り付けられる栓2と、この中空パイプ1の下方開口部に取り付けられる、下方に向けて尖った形状をなす尖塔部3と、を備えている。なお、図1中の符号21,31は、パイプ1の中空部104(図2参照)に嵌入する凸部を表している。
【0023】
尖塔部3は、下方に向けて徐々に窄んで尖った形状を備えていればよく、テーパーの角度や長さは、自由に選択決定できる。この尖塔部3は、その先が尖った形状を備えていることにより、支柱Lを地面にさし入れ易くしている。
【0024】
中空パイプ1の長さは、目的に合わせて適宜決定できるので特に限定はなく、中空パイプ1に対する栓2及び尖塔部3の取り付け方法は、水密性と固定強度が確保できる方法が好ましく、熱溶着、摩擦溶着、接着剤による接着等を種々採用できる。
【0025】
中空パイプ1は、平滑な表面を備える単純円柱状のパイプとして形成してもよいが、パイプ長手方向に突起部11を所定間隔で配列しておくか、表面にエンボス加工を施した構成が望ましい。この突起部11あるいはエンボスは、支柱Lを手で把持しながら地面に立設する時、又は線状物を支柱L,L間に張設するときに、立設作業あるいは張設作業を容易,確実化できるという機能を発揮する。なお、本発明において「突起部」にはエンボス形態も含まれるものとする。
【0026】
突起部11は、中空パイプ1の周方向所定間隔で配列すればよく、配列数に特に限定はないが、例えば、二列とすれば、合成樹脂の成形加工が容易な範囲で、手の滑り防止機能を必要充分に発揮させることができるので好適である。突起部11の形状自体も特に限定はなく、手の滑り防止機能を発揮できる形状であればよい。
【0027】
また、エンボスも表面の熱可塑性樹脂被覆層にエンボスを有する熱ローラーを当接するなどして、熱ローラーのエンボスパターンを転写すれば良く、前記の突起と同様に支柱の外周にニ列程設ければ、滑り防止の効果は発揮できる。
【0028】
図2は支柱(L)を構成する中空パイプ(1a)の層構造を表す水平断面図であり、図1に示すI−I線による断面図に相当する。図2に示すように、この中空パイプ1aは、相互に密着接合した内層101、中間層102、被覆層103からなる計三層構造を有する。内層101と被覆層103は、ともに熱可塑性樹脂、特に好適にはABS樹脂から形成されており、中間層102は、繊維強化熱硬化性樹脂(FRP)から形成されている。なお、図2中の符号104は、中空部を表している。
【0029】
ここで、中空パイプ1aは、内層パイプの押出機により、ABS樹脂を環状に押し出して、内層101を形成し、この内層101の外周にガラス繊維ロービングにスチレンを架橋成分として含む不飽和ポリエステル樹脂を含浸して縦添えし、その外周を環状に成形して、未硬化状態の中間層102を形成し、これを被覆層用の押出機のクロスヘッドに挿通する。
【0030】
被覆層103用の押出機においては、所定形状の突起を有するダイからABS樹脂を環状に押し出して、中間層102の外周を被覆し、その被覆層103を冷却固化した後、加熱炉に導いて中間層102の不飽和ポリエステル樹脂を硬化させる。
【0031】
前記突起を有するダイおよび突起部を所定ピッチで押圧する賦形ギヤを当接することによって被覆層103の外周には、突起部11が所定間隔で形成される。以上により製造できる中空パイプ1aとして、例えば、外径26mm、単位重量300g/m、曲げ強力550N、曲げ剛性2060×107N・m2からなる仕様のものが得られる。なお、この中空パイプ1は、長芋栽培用の支柱として現在市販されている金属製パイプ(農ビ被覆鋼管)の単位重量550〜600g/mと比較して、明らかに軽量である。
【0032】
ここで、内層101及び被覆層103に用いたABS樹脂と、中間層102に用いたスチレンを架橋成分とする不飽和ポリエステル樹脂とは、未硬化状態において相溶性があるので、この三層は極めて強固に接着接合し、外力に対して三層101,102、103が協働して優れた強力、剛性を発揮する。
【0033】
中間層102に使用する補強用繊維は、ガラス繊維が一般的であるが、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維など、FRPに用いられる慣用の他の繊維であってもよい。
【0034】
また、中間層102に使用する熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを採用でき、特に、スチレンを架橋成分とする不飽和ポリエステル樹脂が好適である。
【0035】
内層101及び被覆層103に使用する熱可塑性樹脂は、中間層102において採用される未硬化の樹脂と相溶性を有するものであれば、中間層102が硬化した後において、各層101〜103が相互に接着接合して、強度の高い中空パイプ1を得ることができる。
【0036】
なお、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の組み合わせ例を挙げると、スチレンを誘導体の成分として含むPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、AAS樹脂などのスチロール系樹脂と、スチレンを架橋性モノマーとする不飽和ポリエステル樹脂との組み合わせがある。他の例としては、アクリル系の熱可塑性樹脂と、アクリル酸系の架橋性モノマーを含む不飽和ポリエステル樹脂との組み合わせがある。
【0037】
なお、本発明においては、図3で示されたような二層構造の中空パイプ1bも採用できる。即ち、前述した中間層同様の材料構成である繊維強化熱硬化性樹脂層102とこの樹脂層102の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層103とからなる二層構造中空パイプである。この中空パイプ1bは、慣用の引板成形により繊維強化熱硬化性樹脂パイプを製造した後、このパイプの外周に接着層を塗布するか或いは接着性樹脂で被覆することによって製造できる。
【0038】
中空パイプ1aや1bに取り付けられる栓2や尖塔部3は、高い強度が得られるABS樹脂等の樹脂単体で、慣用の成形方法で、図示された形状に製造すればよい。
【0039】
このように、本実施形態の栽培用支柱は、軽量であるので、その運搬や設置作業が容易であり、また、腐食の心配がなく耐久性にも優れているので、作物栽培用の支柱として利用できる。特に、土中でも腐食せず、土塊も付き難いので、引抜作業も容易であり、従来の鋼管使用時のようにスコップでの掘り返しや機械を使用しての作業を要しない。また、充分な強度と剛性を有することから、設置作業時や使用に際して折損等の心配がない。更には、従来の鋼管製の支柱と異なって、弾力性(可撓性)と形状復元性を備えている。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態として、前述した第1の実施形態の支柱Lの上端に設けられた栓2aについて説明する。図4は本実施形態の栓2aの上方視(矢印X方向から見た)平面図、図5は栓2aの側方視正面図、図6は栓2aの下方視(矢印Y方向から見た)底面図、図7は栓2aの図4中のII−II線矢視縦断面図、図8は栓2aの図5中のIII−III線矢視水平断面図、図9は栓2aの図5中のIV−IV線矢視水平断面図である。そして、図10は、線状物4が栓2aの横溝232に定着した状態を、栓2aを水平断面にした状態で示す図である。
【0041】
なお、線状物としては、鉄線(番線)、カラー鉄線、ワイヤーロープ、フィルムヤーンやモノフィラメントを撚り合わせたロープ状物、各種紐類等から、栽培ネットに負荷される蔓等の荷重や風圧等に耐える強度、耐候性等を勘案して選択すれば良い。
【0042】
本発明の第2の実施形態に係る栓2aは、中空パイプ1の中空部104(図2、図3参照)に嵌入される部分となる、内部中空である外観略円柱状の凸部21を備える。この凸部21の外周壁には、縦方向に延びる条溝211と条山212が周方向に所定間隔で形成されている(図5、図6参照)。
【0043】
凸部21の外周壁に条溝211を形成したことによって、該凸部21を中空パイプ1の中空部に嵌入するに際して、該条溝211に接着剤を保持した状態となり、接着剤が凸部21と中空パイプ1との界面に確実に存在することになるので、両者の接着を確実にすることができる。なお、図6の符号213は、凸部21の中空部を表している。
【0044】
次に、栓2aは、前記凸部21よりも一回り口径が大きい略円柱状の頭部22を備える。この頭部22は、栓2が中空パイプ1に接着されたときに、外側に露出する部分である。
【0045】
前記頭部22には、線状物4を担持する役割を果たす凹溝23が設けられている。この凹溝23は、栓2の直径方向に形成され、栓2aの上面221及び外周壁222に開口している。この凹溝23は、栓2の上面221に向かって徐々に口幅W1(図7参照)が広がるように形成されている。即ち、凹溝23の垂直縦断面形状(図7参照)が略Yの字状をなすように上面221に開口し、線状物4を凹溝23内に導入し易くしている。
【0046】
この凹溝23の底面231領域には、前記栓2aを上方視したときの中心部C(図4参照)から外周壁222側に向かって、上方視扇状に、周方向に徐々に口幅W2を広げる横溝232が形成され、この横溝232は栓2の外周壁222に開口している(特に、図8参照)。
【0047】
最上方の線状物4は、栓2aの凹溝23の上方開口部234から挿入され、下方の前記横溝232に定着して収容される。図10は、線状物4が栓2aの横溝232に定着した状態を、栓2aを水平断面にした状態で示している。なお、図10に示された仮想線は、栓2aの上面221の上方開口部234を表している。
【0048】
凹溝23に線状物4が挿着されただけの図10に示されたような状態では、線状物4は、上方へ引き上げられると、凹溝23から抜け出てしまうおそれがある。また、この状態では、線状物4のテンションが充分でない場合もある。
【0049】
そこで、図11に示す矢印R方向(又はその反対方向)に支柱Lを回すと、線状物4は、扇状に口幅を広げる横溝232に嵌り込むようにして引っ張られていき、上方視略Z字状に屈曲し(図11参照)、その結果、線状物4のテンションが強められる。
【0050】
図11に示された状態では、この図11の矢印Z方向から見た栓2a周辺の正面図である図12を参照するとより理解できるように、線状物4は横溝232に嵌り込んで、テンションが強まった状態となっている。このため、線状物4が上方へ引き上げられても、横溝232の上壁232a(図7参照)がストッパーとして機能するので、線状物4が凹溝23から抜け出ることがなくなる。
【0051】
ここで、図13は、並設された支柱Lを上方から見たときの図であって、線状物4が各栓2aの凹溝23に担持されて直線状に架け渡された状態を示す図である。一方の図14は、各支柱Lを所定角度回すことによって、線状物4のテンションが強められた状態を誇張して示している。なお、図13、14において栓2aは、図8に対応する水平断面状態で示されている。
【0052】
次に、本発明の第3の実施形態として、前述した第1の実施形態の支柱Lの上端に設けられた栓2bについて説明する。図15本実施形態の栓2bの上方視(図16の矢印X方向から見た)平面図、図16は栓2bの側方視正面図、図17は図16中のP部拡大図である。栓2bの下方視底面の形態は、栓2aと同様であるので図面に基づく説明を割愛する(図6参照)。
【0053】
本発明の第3の実施形態に係る栓2bの凹溝23は、栓上面221と栓外周壁222に開口するとともに、該凹溝23の対向する縦壁面235,236のそれぞれからは、他方の縦壁面に向けて突出する凸部2351,2361が形成されている。凸部2351,2361は、図15に示されているように、互いに対向しない位置に形成されているため、線状物4が上方から挿着し易い隙間が形成されている。
【0054】
また、図17に示すように、凸部2361の上面2361aは、上方に向けて末広がるテーパー形状を備えており、かつこの上面2361aは、凹溝23の上方開口部234の斜面234aと面一に形成されている。なお、凸部2351についても、拡大図面で説明しないが、これと同様の構成を備えている。
【0055】
この構成により、線状物4は、前記斜面234aと上面2361aで形成される面一の斜面をすべるように、上方開口部234から線状物4凹溝23の底面231方向へ向けて挿入されるようになる(図17中の矢印Q参照)。一旦、凹溝23の底面231(図16参照)へ定着された線状物4は、凸部2351と2361がストッパーとなって、上方に持ち上げられても容易に凹溝23から抜け落ちしないようになる(図16参照)。
【0056】
次に、図18に基づいて、本発明の第4の実施形態に係る栽培用具Fについて説明する。なお、図18は同栽培用具Fの一部正面図である。
【0057】
図18に示すように、本実施形態の栽培用具Fは、支柱Lを必要本数だけ畑などに並設する。具体的には、前述した第2又は第3の実施形態の栓2a,2bが取り付けられた支柱Lを、その下端の尖塔部3周辺を所定長だけ地中Gにさし込み、支柱Lを所定間隔で立設する。
【0058】
これら立設された支柱Lの各上端に設けられた栓2(2a又は2b)の凹溝23に対して、ネット5が取り付けられている線状物4を入れ込む。そして、各支柱Lを回してネット5を張設する。例えば、線状物4を凹溝23の底面231領域に設けられた横溝232(図5参照)に嵌め込むようにして、ネット5を張設する。
【0059】
このようにして形成された栽培用具Fは、線状物4が支柱L(の凹溝23)から抜け出てしまうことがないので、ネット5は常に張設された状態で保持される。なお、本発明において、図18のように、ネット5を張設した後、各支柱Lの上端をトワイン、ベーラー紐等で前後方向に連続的に結べば、支柱Lの揺れは防止され、従来の鋼管より剛性は必ずしも高くはないが、26φ程度の口径の支柱でも使用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る栓を使用した支柱は、上端部に線状物を張架し易く、かつ該線状物が脱落し難い。この支柱で形成された栽培用具では、線状物及びネットを常に張った状態にしておくことができるので、長芋等の蔓性の作物を栽培する場合などに特に適している。
【符号の説明】
【0061】
L 栽培用支柱(支柱)
1(1a,1b) 中空パイプ
2(2a,2b) 栓
3 尖塔部
4 線状物
101 内層
102 中間層
103 被覆層
221 (栓2の)上面
222 (栓2の)外周壁
23 凹溝
231 (凹溝23の)底面
232 横溝
234 (凹溝23の)上方開口部(Yの字状)
235,236 (凹溝23の対向する)縦壁面
2351,2361 凸部
C 中心部
F 栽培用具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空パイプの上方開口部に取り付けられ、栽培用支柱を構成する栓であって、
線状物を担持するための凹溝を有し、
該凹溝は、栓上面と栓外周壁に開口すると共に、その底面領域に、上方視したときの中心部から外周壁側に向けて、上方視扇状に徐々に口幅を広げる横溝が形成されている支柱用栓。
【請求項2】
中空パイプの上方開口部に取り付けられ、栽培用支柱を構成する栓であって、
線状物を担持するための凹溝を有し、
該凹溝は、栓上面と栓外周壁に開口すると共に、対向する縦壁面のそれぞれから他方の縦壁面に向けて突出する凸部が形成されている支柱用栓。
【請求項3】
前記凹溝の開口部は、栓上面に向かって徐々に口幅が広がるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の支柱用栓。
【請求項4】
繊維強化熱硬化性樹脂層と該樹脂層の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる二層構造中空パイプ、又は熱可塑性樹脂からなる内層と繊維強化熱硬化性樹脂からなる中間層と熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる三層構造中空パイプの上方開口部に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の支柱用栓。
【請求項5】
ABS樹脂単体で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の支柱用栓。
【請求項1】
中空パイプの上方開口部に取り付けられ、栽培用支柱を構成する栓であって、
線状物を担持するための凹溝を有し、
該凹溝は、栓上面と栓外周壁に開口すると共に、その底面領域に、上方視したときの中心部から外周壁側に向けて、上方視扇状に徐々に口幅を広げる横溝が形成されている支柱用栓。
【請求項2】
中空パイプの上方開口部に取り付けられ、栽培用支柱を構成する栓であって、
線状物を担持するための凹溝を有し、
該凹溝は、栓上面と栓外周壁に開口すると共に、対向する縦壁面のそれぞれから他方の縦壁面に向けて突出する凸部が形成されている支柱用栓。
【請求項3】
前記凹溝の開口部は、栓上面に向かって徐々に口幅が広がるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の支柱用栓。
【請求項4】
繊維強化熱硬化性樹脂層と該樹脂層の外周に形成された熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる二層構造中空パイプ、又は熱可塑性樹脂からなる内層と繊維強化熱硬化性樹脂からなる中間層と熱可塑性樹脂からなる被覆層とからなる三層構造中空パイプの上方開口部に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の支柱用栓。
【請求項5】
ABS樹脂単体で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の支柱用栓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−219502(P2009−219502A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160679(P2009−160679)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【分割の表示】特願2003−341043(P2003−341043)の分割
【原出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【分割の表示】特願2003−341043(P2003−341043)の分割
【原出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
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