説明

支柱部材およびホゾ材ならびに仮設足場

【課題】小径化した支柱部材等をホゾ材を介して縦方向に連結して仮設足場を組み立てる際に、他の足場用の支柱部材等との混在使用を確実に防止することができる。
仮設足場を提供する。
【解決手段】断面が円形状の中空管からなる支柱部材であってその下端部の近傍の内壁または外壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられていることを特徴とする支柱部材、および、断面が円形状の短管部材からなるホゾ材であってその上端部の近傍の外壁または内壁に1個又は複数個の突起が設けられていることを特徴とするホゾ材ならびにこれらの支柱部材またはホゾ材を組み込んだことを特徴とする仮設足場。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場や土木現場等の工事現場において、屋内外で用いられる仮設足場のうち、特にくさび緊結式足場やシステム支保工等で用いられる支柱部材およびホゾ材ならびにこの支柱部材とホゾ材を組み込んでなる仮設足場に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場における仮設足場には、主としてビルの施工時などに用いられる枠組足場、主として住宅の施工時などに用いられる単管足場やくさび緊結式足場などがあり、また、システム支保工(型枠支保工ともいう。)、ローリングタワーなども仮設足場の一態様である。
【0003】
例えば、仮設足場には、コマ等の連結金具を側面に設けた支柱部材とつなぎ材(水平材ともいう。また、短尺のつなぎ材のことを特に腕木材ということがある。)を使用するタイプ(くさび緊結式足場)と、縦柱(建地材ともいう。)と横桟(横地材ともいう。)から構成されるH形状や鳥居形状等の建枠を使用するタイプ(枠組足場)があり、いずれも対面するつなぎ材の間又は横桟の間に床付き布枠(布板ともいう。)が架け渡されて、作業床や作業員の通路などとして使用される。また、システム支保工はコマ等の連結金具を側面に設けた支柱部材を縦方向に連結してなる支柱を行列状に配置し、これらの支柱部材の連結金具の間を長短2種のつなぎ材(水平材ともいう。)で水平2方向に連結することによって形成される緊結構造物であって、対面するつなぎ材の間に床付き布枠を適宜架け渡すことで作業床や作業員の通路などとして使用することができる(以下、システム支保工という。)。なお、支柱部材、つなぎ材、建枠等には、鋼製やアルミニウム製などの管が用いられることが多い。
【0004】
このように、くさび緊結式足場やシステム支保工においては、支柱部材が用いられる。なお、支柱部材の側面に設けられる連結金具としては、支柱部材の側面に複数個設けられるコマや、支柱部材の側面に環状に設けられるフランジ等を用いることができる。そして、つなぎ部材の端部に設けられるクサビ金具をコマやフランジなどの連結金具に取り付け、クサビ緊結によって連結することができる。
【0005】
くさび緊結式足場においては、コマ等の連結金具を側面に設けた支柱部材に、つなぎ材、ブレース材、手摺部材の足場構成部材を連結金具を介して取り付け、そして、連結金具においてクサビによってこれらの足場構成部材を緊結した後、床付き布枠を1枚又は2枚以上架け渡すことによって、仮設足場の一段目が組み立てられる。その後、この作業を繰り返すことによって、枠組足場の一段目の上に枠組足場の二段目以降が組み立てられ、複数段の枠組足場を建物に隣接して組み上げるのである。したがって、下段の足場の上に上段の足場を組み立てる際には、既に立設されている支柱部材の上に、別の支柱部材がホゾ材を介して縦方向に連結される。
【0006】
一方、システム支保工は、コンクリート構造物等を施工する際によく用いられる緊結構造物であり、コマ等の連結金具を側面に設けた支柱部材をホゾ材を介して縦方向に連結してなる支柱を、地上又は床面上に行列上に立設し、支柱を構成する各支柱部材の連結部の間につなぎ材を水平面上の直角2方向に配置し、この水平方向のつなぎ材によって形成される水平面上で各支柱部材間をクサビによって緊結することによって多段に組み立てられる。
【0007】
このように、ホゾ材はくさび緊結式足場やシステム支保工において、円管からなる支柱部材を縦方向に連結するために用いられるが、ホゾ材は枠組足場において円管からなる縦柱を縦方向に連結する際にも用いられる。
【0008】
ホゾ材の基本的構成は、一般的には連結すべき2本の円管の両方の端部に内嵌できる外径を有する短管部材である。ただし、ホゾ材には埋め込みタイプ(図1)と連結ピンタイプ(図2)の2種類がある。ここで、図1および2は、(a)が正面図を、(b)が上面図をそれぞれ示す。
【0009】
図1に示す埋め込みタイプのホゾ材11は、その短管部材の一部を予め円管の上端に内嵌させ溶接等で接合した状態で使用されるものであり、その短管部材の残部をその円管から上部に突出させている。そして、この短管部材の上部の突出部分に別の円管の下端を外嵌させることによって、円管同士を縦方向に連結することができる。なお、埋め込みタイプのホゾ材は支柱部材を連結する際に用いられることが多い。
【0010】
図2に示す連結ピンタイプのホゾ材12は、その短管部材の一部を予め円管の上端に内嵌させ連結ピンによって取り付けた状態で使用されるものであり、その短管部材の残部をその円管の上部に突出させている。ただし、埋め込みタイプとは異なり、連結ピンタイプのホゾ材12は必要に応じて円管の上端から取り外すことができる。また、その短管部材の一部を円管の一端に内嵌させたときにホゾ材12が円管内に落ち込まないように、通常は、短管部材の中央部に固定部材を設けたりすることによってその外径を大きくし、連結すべき円管の外径とほぼ同一の外径にしている。そして、この短管部材の上部の突出部分に別の円管の下端を外嵌させることによって、円管同士を縦方向に連結することができる。なお、連結ピンタイプのホゾ材は建枠の縦柱を連結する際に用いられることが多い。
【0011】
以下に、クサビ緊結式足場、枠組足場、システム支保工の順に、図面を用いて、その構造と組み立て方を説明する。
【0012】
まず、図3に、くさび緊結式足場の構造の一例を示す。(a)はくさび緊結式足場の正面図、(b)は(a)において円で示されたコマの周辺の拡大図、そして、(c)はくさび緊結式足場の右側面図である。
【0013】
ここでは、くさび緊結式足場の支柱1が建物14の側とその反対側に各3本が立設されている。各々の支柱1は、複数のコマ4を有する支柱部材3を、予めその上端部に接合された埋め込みタイプのホゾ材11を介して縦方向に継ぎ足すことによって形成されている。建物側の支柱1と建物とは反対側の支柱1の間には、コマ4を介してつなぎ材2が取り付けられ、コマ4においてクサビ2aで緊結されている。建物側の隣接する支柱1の間には、コマ4を介してブレース材21が斜めに取り付けられ、また、建物とは反対側の隣接する支柱1の間には、コマ4を介して手摺部材20が取り付けられ、それぞれ、コマ4においてクサビで緊結されている。そして、隣接するつなぎ材2の間に、床付き布枠9を1枚又は2枚以上架け渡すことで、1段目の足場が形成される。なお、ブレース材21は建物とは反対側の支柱1の間に取り付ける場合もある。
【0014】
2段目の足場は、1段目の足場と同様にして形成される。1段目の足場の支柱部材3の上部に接合された埋め込みタイプのホゾ材11を介して、別途用意した支柱部材3を縦方向に継ぎ足した上で、つなぎ材2、ブレース材21、手摺部材20の足場構成部材をコマ4を介して取り付け、そして、コマ4においてクサビ2aによってこれらの足場構成部材を緊結した後、隣接するつなぎ材2の間に、床付き布枠9を1枚又は2枚以上架け渡すことによって、形成される。これを順次繰り返すことによって、複数段のくさび緊結式足場が組み立てられる。
【0015】
次に、図4に、鳥居形状の建枠(以下、「鳥居枠」という。)を用いて枠組足場を形成する一例を示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
【0016】
まず3個の鳥居枠24を建物14とは直角に等間隔に並べ、隣接する鳥居枠24との間に、建物とは反対側に筋違25をロック金具28bに取り付け、そして建物側にも筋違25をロック金具28aに取り付けて、1段目の鳥居枠24を自立させることによって、1段目の足場を形成する。なお、連結ピンタイプのホゾ材12は予め鳥居枠24の縦柱22の上端部に内嵌されている。その後、1段目の隣接する鳥居枠24の上部の横桟23の間に2段目の足場板となる床付き布枠9を架け渡した後、既に立設した1段目の鳥居枠24の縦柱22に、予めその上端部に内嵌されている連結ピンタイプのホゾ材12を介して、別途用意した鳥居枠24の縦柱22の下部を載置して固定することによって、2段目の鳥居枠24を立設する。その後、1段目と同様にして、建物とは反対側に筋違25をロック金具28bに取り付け、そして、建物側にも筋違25をロック金具28aに取り付けて、2段目の鳥居枠24を自立させることによって、2段目の足場を形成する。その後、2段目の隣接する鳥居枠24の上部の横桟23の間に3段目の足場板となる床付き布枠9を架け渡した後、既に立設した2段目の鳥居枠24の縦柱22に、予めその上端部に内嵌されている連結ピンタイプのホゾ材12を介して、別途用意した鳥居枠24の縦柱22の下部を連結することによって、3段目の鳥居枠24を立設する。その後、2段目と同様にして、建物とは反対側に筋違25をロック金具28bに取り付け、そして、建物側にも筋違25をロック金具28aに取り付けて、3段目の鳥居枠24を自立させることによって、3段目の足場を形成する。このようにして、必要な段数になるまで枠組足場を形成する。なお、ここでは筋違を用いることによって各段の枠組を自立させる手順を説明したが、筋違の一部を手摺枠に置き換えて各段の枠組を自立させてもよい。
【0017】
図5は、システム支保工の一例を示す正面図であり、図6は図5のシステム支保工の右側面図である。また、図7は、図6のA−A線断面平面図である。
【0018】
この例では、このシステム支保工100は、コンクリート構造物(スラブともいう。)101の上部の型枠102の下面を支えるように、地上から数m〜十数mの高さで設置されている。
【0019】
システム支保工100は、所定の間隔で複数の支柱1を行列状に配置し、そして、隣接する支柱1の間を複数のつなぎ材2で水平2方向に連結することによって形成される。各支柱1は、埋め込みタイプのホゾ材11を介して縦方向に連結された複数の支柱部材3からなる。各支柱1の下端は、ジャッキベース5によって支持されている。各支柱1の上端には、大引受ジャッキ6が取り付けられ、大引受ジャッキ6上に複数の大引材7が載置されている。また、複数の大引材7に直交するように、複数の大引材7上に複数の根太材8が載置され、複数の根太材8上に型枠102が載置されている。
【0020】
支柱1の側面には、所定の間隔で4つのコマ4が十字状に形成されている。つなぎ材2は、つなぎ材2の両端部に接合されたクサビ部を介してコマ4に連結され、クサビ2aによって緊結されている。なお、ここでは、各支柱部材3の中央部のコマ4にはつなぎ材2が取り付けられていないが、各支柱部材3の中央部のコマ4にもつなぎ材2を取り付けてもよい。
【0021】
そして、図7に示すように、対面するつなぎ材2の間に床付き布枠9を架け渡す。同様にして、他の個所にも床付き布枠9を架け渡すことで、適宜必要な個所に作業床や作業員の通路などとして使用する足場を形成することができる。ここでは、対面する短尺のつなぎ材2の間に2枚の床付き布枠が並べて架け渡されることによって1つの足場が形成されていて、作業床又は通路として使用される。
【0022】
このように、ホゾ材はくさび緊結式足場やシステム支保工において支柱部材を縦方向に連結するために用いられるだけでなく、枠組足場において建枠の縦柱間を縦方向に連結する際にも用いられる。
【0023】
このホゾ材に関しては、枠組足場についてではあるが、上下の足場間の高さを高くするための工夫が提案されている(特許文献1)。また、ホゾ材間を連結する連結杆を設けることが提案されている(特許文献2参照)。しかし、その形状についての新たな提案はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平08−93213号公報
【特許文献2】特開2001−3563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
このように、くさび緊結式足場とシステム支保工においては、いずれも、ホゾ材が用いられ、円管からなる支柱部材を縦方向に連結する役割を果たしている。また、ホゾ材は、枠組足場においても用いられ、円管からなる縦柱を縦方向に連結する役割を果たしている。ただし、その外径のサイズは連結する支柱部材の外径のサイズにより異なる。
【0026】
ところで、くさび緊結式足場とシステム支保工において用いられる支柱部材はいずれも鋼管が通常用いられるが、そのサイズには次に示すとおりの違いがある。枠組足場の建枠の縦柱に通常用いられる鋼管のサイズも併せて示すと、次のとおりになる。なお、肉厚は通常、2.4mmである。
【0027】
(i) くさび緊結式足場:中径管(外径48.6mm)
(ii) システム支保工:大径管(外径60.5mm)
(iii) 枠組足場:小径管(外径42.7mm)
このように、足場の種類によって、支柱部材として用いられる鋼管のサイズが異なるのは、それぞれの足場の技術が発展してきた歴史の違いが関係している。
【0028】
すなわち、(i)くさび緊結式足場は1955年当時一般的であった丸太足場に用いる丸太(木材)を鋼管に切り換えた際に、その丸太に近い外径のサイズ(中径管:外径48.6mm)の鋼管を支柱部材に用いて単管足場へと発展し、さらにくさび緊結式足場へと発展した際にも支柱部材のサイズはそのまま継承されたという経緯がある。
【0029】
次に、(ii)システム支保工は、一般建築の場合に多く用いられる200mm厚のスラブではなく、原子力発電所の原子炉建屋や、下水処理場などの重スラブ(厚み500〜1000mm)を能率的に支保するために開発されたものであるため、その支柱に用いる鋼管として、高強度かつ人力による運搬と組立が可能な、外径60.5mmのサイズ(大径管)が選定されたのである。
【0030】
そして、(iii)枠組足場は1952年に米国のビティ社から導入されたものであるが、当初からその建枠の縦柱には、中径管(外径42.7mm)の鋼管が用いられていて、長期間、そのサイズが受け継がれてきたのである。
【0031】
しかしながら、最近は、現場の作業員の高齢化や女性作業員の進出などで、支柱部材の軽量化を求める傾向が強まっており、そのため支柱部材に、例えば、肉厚1.8mmの薄肉高強度鋼管を使用することによって、外径を変更することなく軽量化を図る動きがある。
【0032】
支柱部材の軽量化の手法としては、薄肉高強度鋼管の使用の外に、支柱部材の外径の小径化が考えられる。たとえば、(i)のくさび緊結式足場を例にとってみると、現在は肉厚2.4mmの中径管(外径48.6mm)を用いているが、これを(iii)の枠組足場で用いる鋼管と同じ外径の小径管(外径42.7mm)に置き換えれば、肉厚は2.4mmのままでも、外径の違いだけでほぼ23%の軽量化を達成することができることになる。もちろん、支柱部材の小径化と薄肉化の両方を組み合わせることも可能であり、この場合はさらなる軽量化が達成できる。
【0033】
ここで、(i)のくさび緊結式足場用の現行の中径管(外径48.6mm)の支柱部材を小径管(外径42.7mm)に置き換えると、(i)のくさび緊結式足場において用いる支柱部材のサイズと(iii)の枠組足場において用いる縦柱のサイズは両方とも同じ小径管(外径42.7mm)となる。以下に、(i)のくさび緊結式足場用の支柱部材を小径管(外径42.7mm)に置き換えた場合を想定してみる。
【0034】
ここで、支柱部材と縦柱とが同じ外径の円管を用いる場合にも、それぞれ、支柱部材同士を連結して組み立てることと、縦柱同士を連結して組み立てることが求められる。すなわち、(i)のくさび緊結式足場用の支柱材の上にはくさび緊結式足場用の同種の支柱部材を連結して足場を組み立てることが求められ、そして、(iii)の枠組足場用の縦柱の上には枠組足場用の同種の縦柱を連結して足場を組み立てることが求められる。
【0035】
図8および図9は、それぞれ、従来例に係る支柱部材3および鳥居枠24の一例(正面図)である。ただし、いずれも小径管(外径42.7mm)の円管からなる支柱部材3および縦柱22を有している。ここでは、支柱部材3の上端部3aにはホゾ材(埋め込みタイプ)11が、そして、縦柱22の上端部22cにはホゾ材(連結ピンタイプ)12が取り付けられている。
【0036】
本来、図8の支柱部材3の上端部3aの上には同種の支柱部材3の下端部3bが連結されるべきであり、そして、図9の縦柱22の上端部22cの上には同種の縦柱22の下端部22dが連結されるべきである。
【0037】
しかしながら、作業員が誤って、(i)のくさび緊結式足場用の支柱部材3の上に(iii)の枠組足場用の縦柱22を連結して足場を組み立てたり、逆に、(iii)の枠組足場用の縦柱22の上に(i)のくさび緊結式足場用の支柱部材3を連結して足場を組み立てしたりして、「混在使用」となるおそれがある。
【0038】
図10と図11は、混在使用の例(正面図)である。
【0039】
図10は支柱部材3の上に縦柱22を連結した例である。ここでは支柱部材3の上端部3aの上に、ホゾ材(埋め込みタイプ)11を介して、縦柱22の下端部22dが連結されている。
【0040】
一方、図11は縦柱22の上に支柱部材3を連結した例である。ここでは、縦柱22の上端部22cの上に、ホゾ材(連結ピンタイプ)12を介して支柱部材3の下端部3bが連結されている。
【0041】
このような混在使用は、構造が異なり強度基準の異なる足場部材を組み合わせることになるので、足場の倒壊事故を引きおこす危険性がある。たとえば、(i)のくさび緊結式足場と(iii)の枠組足場での現行の許容支持力を比較すると、(i)は支柱部材2本当たり33.6KNであるのに対して、(iii)は縦柱2本当たり42.6KNとなる。したがって、このような混在使用は禁止すべきである。
【0042】
このような違いを現場の作業者が正確に理解して、混在使用が起こらないように組立作業をすることを期待したいところであるが、建設現場での作業者の現状を考慮すると、現実的には混在使用が起こる可能性を否定できない。
【0043】
以上は、(i)のくさび緊結式足場の支柱部材の小径化を例にとって、(i)のくさび緊結式足場と(iii)の枠組足場とでの混在使用の可能性を説明したが、(ii)のシステム支保工についてもその軽量化を図るために支柱部材を小径化しようとする際にも、同様に混在使用という問題が発生する。
【0044】
本発明は、支柱部材等の小径化を図る際に他の足場用の支柱部材等との混在使用を防止するためになされたものであって、小径化した支柱部材等をホゾ材を介して縦方向に連結して仮設足場を組み立てる際に、異種の足場用の支柱部材や縦柱等の円管を連結することを確実に防止できる支柱部材およびホゾ材を提供すること並びにこれらの部材を組み込んでなる仮設足場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0045】
本発明者らは、上記のような問題点を解決するために種々の検討を重ねた。その結果、次の(a)〜(f)に示す知見を得た。なお、以下では、(i)のくさび緊結式足場の支柱部材の小径化を例にとって説明するが、異種の足場の支柱部材や縦柱等にも適用できる知見であることは言うまでもない。
【0046】
(a) 現行の仮設足場の支柱部材または縦柱に用いられる円管の外径は、通常、肉厚2.4mmの小径管(外径42.7mm)、中径管(外径48.6mm)、大径管(外径60.5mm)の3種類であるから、外径サイズの違いを視覚および触覚で知覚できる上に、外径サイズの違う円管を連結しようとしても、連結時の嵌合が不可能である。したがって、この3種類の外径サイズで使い分けている限り、混在使用が発生することはまず考えられない。
【0047】
(b) しかしながら、くさび緊結式足場の支柱部材に用いられる円管を、軽量化目的で現行の中径管から小径管へと変更したときには、その支柱部材の円管は外径42.7mmの小径管となる。なお、支柱部材を小径化するだけでなく、薄肉化(たとえば、肉厚2.0mm)することも可能であり、この場合はさらなる軽量化が達成できる。
【0048】
しかし、枠組足場の縦柱の円管には同じく外径42.7mmの小径管が用いられてきたので、このままでは、両者の円管の間で混在使用が発生する可能性が高い。なお、現行の枠組足場の縦柱の小径管(外径42.7mm、内径37.9mm)を連結するためのホゾ材の基本的構成は、前述したとおり、連結すべき2本の円管の両方の端部に内嵌できる外径を有している。通常、縦柱の小径管の内径との間に遊びを持たせて、少なくとも両端部の外径が36.4mmの短管部材が用いられている。
【0049】
(c) 同じ外径を有する円管の場合、外径サイズの違いを視覚および触覚で知覚することは無理であることを考慮すると、小径管へ変更しようとするくさび緊結式足場用の支柱部材について、円管の端部の形状とホゾ材の形状を変更し、円管からなる縦柱との連結時の嵌合を不可能とすることによって、同じ外径サイズであっても、くさび緊結式足場の支柱部材の円管と枠組足場の縦柱の円管とを連結することを機械的に防止できるとの着想を得た。
【0050】
(d) すなわち、支柱部材に用いる円管を小径管(外径42.7mm)に変更したときに縦柱の円管を連結することを防止するためには、次の2つの条件の両方を満足するように、小径の支柱部材に用いる円管の端部の形状とホゾ材の形状を変更すればよい。
【0051】
[第1条件]小径の支柱部材用のホゾ材の上端部に、小径の支柱部材の下端部を嵌合できるが、小径の縦柱の下端部を嵌合できない。
【0052】
[第2条件]小径の支柱部材用のホゾ材の下端部は、小径の支柱部材の上端部に嵌合できるが、小径の縦柱の上端部に嵌合できない。
【0053】
ただし、このうち、第2条件については、埋め込みタイプと連結タイプを問わず、通常は、ホゾ材の短管部材の一部を予め小径の支柱部材の円管の上端に内嵌した状態で使用されるから、小径の支柱部材用のホゾ材を小径の縦柱の上端部へ嵌合する場合を考慮しなくてもよい。したがって、この第2条件は通常は満足される。
【0054】
そして、支柱部材用または縦柱用の円管とホゾ材の嵌合を可能にするためには、円管の端部にホゾ材を内嵌または外嵌できればよい。言い換えれば、嵌合部における「ホゾ材の外径<円管の内径」または「ホゾ材の内径>円管の外径」の条件を満足すればよいことになる。すなわち、嵌合とは、従来のホゾ材のように、小径の短管部材を用いて、支柱部材用または縦柱用の円管の端部に内嵌させてもよいが、逆に大径の短管部材を用いて、ホゾ材を支柱部材用または縦柱用の円管の端部に外嵌させることを考えてもよい。あるいは、ホゾ材の一端は支柱部材用または縦柱用の円管の端部に内嵌させ、他端は支柱部材用または縦柱用の円管の端部に外嵌させてもよい。この場合は、ホゾ材は一端が小径で、他端が大径の短管部材を用いることになる。
【0055】
なお、上記の嵌合部における「ホゾ材の外径<円管の内径」または「ホゾ材の内径>円管の外径」の条件を満足しても、支柱部材用または縦柱用の円管とホゾ材の嵌合を妨害できる方法がある。すなわち、嵌合面となる内管の外壁または外管の内壁のいずれかに突起を1個または複数個形成して、内管の外径の一部を外管の内径よりも大きくするか、または外管の内径の一部を内管の外径よりも小さくすることによって、嵌合を妨害する方法である。なお、この突起はホゾ材に設けてもよいし、支柱部材の端部近傍に設けてもよい。ただし、このような突起を形成した場合であっても、その突起を受容できる窪みまたは溝の1条または複数条を突起のある壁とは反対側の壁に縦方向に形成することによって、この嵌合の妨害を排除することができる。ここで、縦方向に形成するとは、ホゾ材または支柱部材の長さ方向に形成することを意味するが、少々斜めの方向に形成しても構わない。
【0056】
以上を要約すると、支柱部材用または縦柱用の円管とホゾ材の嵌合を可能にするには、(1)円管の端部にホゾ材を内嵌または外嵌できる。言い換えれば、嵌合部における「ホゾ材の外径<円管の内径」または「ホゾ材の内径>円管の外径」の条件を満足する。加えて、(2)嵌合を妨害するための突起が形成された場合にはその突起を受容できる窪みまたは溝を形成すればよい。逆に、嵌合を不可能にするには、(3)円管の端部にホゾ材を内嵌することも外嵌することもできない、言い換えれば、嵌合部における「ホゾ材の外径>円管の内径」かつ「ホゾ材の内径<円管の外径」の条件を満足すればよい。または、(4)嵌合を妨害するための突起を形成すればよい(その突起を受容できる窪みまたは溝は形成しない。)。
【0057】
なお、ホゾ材としては埋め込みタイプのホゾ材を用いてもよいし、連結タイプのホゾ材を用いてもよい。
【0058】
(e) したがって、支柱部材に用いる円管を小径管に変更したときに縦柱の円管を連結することを防止するための前記の第1条件を満足するための具体的な支柱部材の端部の形状とホゾ材の形状の組み合わせは、たとえば、次のとおりである。なお、小径化した支柱部材には、外径42.7mm、肉厚2.0mmの円管を用いるものとして、説明する。
【0059】
[例1]
小径の支柱部材用のホゾ材の下端部は、小径の支柱部材の上端部(外径42.7mm、内径38.7mm)に内嵌できるように、さらに小径とする(たとえば、外径34mm)。そして、ホゾ材の上端部も下端部と同じ径とする(たとえば、外径34mm)が、ホゾ材の外壁には1個の突起(たとえば、高さ5mm)を形成する。一方、小径の支柱部材の下端部は、一方向のみの部分的な拡管加工を施して、ホゾ材の外壁に形成される突起を受容できる縦方向の窪みの1条を内壁に形成する(小径の支柱部材の下端の断面は、たとえば、長径(外径)47.8mm、短径(内径)35.6mmのひょうたん型である。)。このような組み合わせであれば、小径の支柱部材の下端部の内壁に形成された縦方向の1条の窪みが、小径の支柱部材用のホゾ材の外壁に形成された1個の突起を受容するが、小径の縦柱の下端部の内壁はこの突起にぶつかるから、前記の第1条件を満足する。なお、詳細は後述する実施例1で述べる。
【0060】
[例2]
小径の支柱部材用のホゾ材の下端部は、小径の支柱部材の上端部(外径42.7mm、内径38.7mm)に内嵌できるように、さらに小径とする(たとえば、外径34mm)。そして、ホゾ材の上端部も下端部と同じ径とする(たとえば、外径34mm)が、ホゾ材の外壁には突起(たとえば、高さ2.1mm)をホゾ材の円周上の最も離れた位置に2個形成する。一方、小径の支柱部材の下端部は上端部と同じ径(外径42.7mm、内径38.7mm)であるが、その内壁に2枚の断面弧形状の板(たとえば、各厚み1.6mm)を間隔を開けて張り付けることによって、ホゾ材の外壁に形成される2個の突起を受容できる縦方向の2条の溝を内壁に形成する(小径の支柱部材の下端部の断面径は、溝の部分で内径38.7mm、2枚の板の部分で内径35.5mmである。)。このような組み合わせであれば、小径の支柱部材の下端部の内壁に形成された縦方向の2条の溝が、小径の支柱部材用のホゾ材の外壁に形成された2個の突起を受容するが、小径の縦柱の下端部の内壁はこの突起にぶつかるから、前記の第1条件を満足する。なお、詳細は後述する実施例2で述べる。
【0061】
[例3]
小径の支柱部材用のホゾ材の下端部は、小径の支柱部材の上端部(外径42.7mm、内径38.7mm)に外嵌できるように、大径とする(たとえば、外径48.6mm、内径43.8mm)。そして、ホゾ材の上端部も下端部と同じ径とする(たとえば、外径48.6mm、内径43.8mm)が、ホゾ材の内壁には1個の突起(たとえば、高さ2.1mm)を形成する。一方、小径の支柱部材の下端部は、一方向のみの部分的な縮管加工を施して、ホゾ材の内壁に形成される1個の突起を受容できる縦方向の1条の窪みを外壁に形成する(小径の支柱部材の下端部の断面は、外径42.7mm、内径38.7mmの円管の一方向にのみ5mm深さの窪みを有するハート型である。)。このような組み合わせであれば、小径の支柱部材の下端部の外壁に形成された縦方向の1条の窪みが、小径の支柱部材用のホゾ材の内壁に形成された1個の突起を受容するが、小径の縦柱の下端部の外壁はこの突起にぶつかるから、前記の第1条件を満足する。なお、詳細は後述する実施例3で述べる。
【0062】
(f) このような支柱部材とホゾ材の組合せによって、小径化した支柱部材等をホゾ材を介して縦方向に連結して仮設足場を組み立てる際に、同種の支柱部材は連結できるが、異種の支柱部材や縦柱等の円管を連結することを確実に防止できる。なお、ホゾ材は埋め込みタイプと連結ピンタイプのいずれを採用してもよい。埋め込みタイプにおいては、ホゾ材の一部を予め支柱部材の上端に内嵌させ溶接等で接合し、ホゾ材の残部をその支柱部材から上部に突出させて用いることになる。これに対して、連結ピンタイプにおいては、ホゾ材の一部を予め支柱部材の上端に内嵌させ連結ピンによって取り付けた状態で使用される。ただし、埋め込みタイプとは異なり、連結ピンタイプのホゾ材は必要に応じて支柱部材の上端から取り外すことができる。なお、そのホゾ材の一部を支柱部材の上端に内嵌または外嵌させたときにホゾ材が下方に落ち込まないようにするためには、ホゾ材の中央部に、たとえば固定部材を設けることによって、中央部の外径を大きくまたは内径を小さくすればよい。
【0063】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであって、その要旨は下記の(1)〜(10)の支柱部材およびホゾ材ならびに下記(11)の仮設足場にある。以下、総称して本発明という。
【0064】
(1) 断面が円形状の中空管からなる支柱部材であって、その下端部の近傍の内壁または外壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられていることを特徴とする支柱部材。
【0065】
(2) 断面が円形状の短管部材からなるホゾ材であって、その外壁または内壁に1個又は複数個の突起が設けられていることを特徴とするホゾ材。
【0066】
(3) 断面が円形状の中空管からなる支柱部材に内嵌または外嵌することができる外径または内径を有することを特徴とする、上記(2)のホゾ材。
【0067】
(4) 断面が円形状の中空管からなり、かつその下端部の近傍の内壁または外壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられている支柱部材であって、その上端部に、上記(2)または(3)のホゾ材の下端部が内嵌または外嵌され上端部が突出している状態で接合または取り付けられていることを特徴とする支柱部材。
【0068】
(5) 断面が円形状の中空管からなり、かつその下端部の近傍の内壁または外壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられている支柱部材であって、その下端部を上記(2)または(3)のホゾ材の上端部に内嵌または外嵌したときに、ホゾ材に設けられた突起を支柱部材に設けられた窪みまたは溝に受容することによって、このホゾ材を介して連結することができることを特徴とする支柱部材。
【0069】
(6) 断面が円形状の中空管からなる支柱部材であって、その下端部の近傍の内壁または外壁に1個または複数個の突起が設けられていることを特徴とする支柱部材。
【0070】
(7) 断面が円形状の短管部材からなるホゾ材であって、その外壁または内壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられていることを特徴とするホゾ材。
【0071】
(8) 断面が円形状の中空管からなる支柱部材に内嵌または外嵌することができる外径または内径を有することを特徴とする、上記(7)のホゾ材。
【0072】
(9) 断面が円形状の中空管からなり、かつその下端部の近傍の内壁または外壁に1個または複数個の突起が設けられている支柱部材であって、その上端部に、上記(7)または(8)のホゾ材の下端部が内嵌または外嵌され上端部が突出している状態で接合または取り付けられていることを特徴とする支柱部材。
【0073】
(10) 断面が円形状の中空管からなり、かつその下端部の近傍の内壁または外壁に1個または複数個の突起が設けられている支柱部材であって、その下端部を上記(7)または(8)のホゾ材の上端部に内嵌または外嵌したときに、支柱部材に設けられた突起がホゾ材に設けられた窪みまたは溝に受容されることによって、このホゾ材を介して連結することができることを特徴とする支柱部材。
【0074】
(11) 上記(1)〜(10)の支柱部材またはホゾ材を組み込んだことを特徴とする仮設足場。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、小径化した支柱部材等をホゾ材を介して縦方向に連結して仮設足場を組み立てる際に、他の足場用の支柱部材や縦柱等との混在使用を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】埋め込みタイプのホゾ材の一例(従来例)である。
【図2】連結ピンタイプのホゾ材の一例(従来例)である。
【図3】くさび緊結式足場の構造の一例を示す。(a)はくさび緊結式足場の正面図、(b)は(a)において円で示されたコマの周辺の拡大図、そして、(c)はくさび緊結式足場の右側面図である。
【図4】鳥居形状の枠組足場の一例を示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
【図5】システム支保工の一例を示す正面図である。
【図6】図5のシステム支保工の右側面図である。
【図7】図6のA−A線断面平面図である。
【図8】小径管(外径42.7mm)の支柱部材の一例(正面図)である。
【図9】小径管(外径42.7mm)の縦柱を有する鳥居枠の一例(正面図)である。
【図10】支柱部材の上に縦柱を連結した混在使用の例(正面図)である。
【図11】縦柱の上に支柱部材を連結した混在使用の例(正面図)である。
【図12】本発明に係る支柱部材および本発明に係るホゾ材(埋め込みタイプ)の一例である。(a)は正面図(支柱部材の両端部以外は図示を省略)であり、(b)が左側面図(支柱部材の下端部のみ図示)、(c)が上面図、そして、(d)が底面図である。
【図13】図12に示す支柱部材を、ホゾ材(埋め込みタイプ)を介して、縦方向に2本連結したときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図14】図12に示す支柱部材の上に、ホゾ材(連結ピンタイプ)を介して、建枠の縦柱の下端部を連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図15】図12に示す支柱部材を、連結ピンタイプのホゾ材を介して、建枠の縦柱の上端部の上に連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図16】本発明に係る支柱部材および本発明に係るホゾ材(埋め込みタイプ)の他の例である。(a)は正面図(支柱部材の両端部以外は図示を省略)であり、(b)が左側面図(支柱部材の下端部のみ図示)、(c)が上面図、そして、(d)が底面図である。
【図17】図16に示す支柱部材を、ホゾ材(埋め込みタイプ)を介して、縦方向に2本連結したときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図18】図16に示す支柱部材の上に、ホゾ材(埋め込みタイプ)を介して、建枠の縦柱の下端部を連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図19】図16に示す支柱部材を、連結ピンタイプのホゾ材を介して、建枠の縦柱の上端部の上に連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図20】本発明に係る支柱部材および本発明に係るホゾ材(埋め込みタイプ)の他の例である。(a)は正面図(支柱部材の両端部以外は図示を省略)であり、(b)が左側面図(支柱部材の下端部のみ図示)、(c)が上面図、そして、(d)が底面図である。
【図21】図20に示す支柱部材を、ホゾ材(埋め込みタイプ)を介して、縦方向に2本連結したときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図22】図20に示す支柱部材の上に、ホゾ材(埋め込みタイプ)を介して、建枠の縦柱の下端部を連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図23】図20に示す支柱部材を、連結ピンタイプのホゾ材を介して、縦柱の上端部の上に連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、本発明の実施の形態に係る支柱部材およびホゾ材ならびに仮設足場について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0078】
図12は、本発明に係る支柱部材33および本発明に係るホゾ材(埋め込みタイプ)31の一例である。(a)は正面図(支柱部材33の両端部以外は図示を省略)であり、(b)が左側面図(支柱部材33の下端部33bのみ図示)、(c)が上面図、そして、(d)が底面図である。
【0079】
この支柱部材33は、下端部33bの長さ80mmを除いて、肉厚が2.0mmで外径が42.7mmの円形鋼管である。この支柱部材33の上端部に内嵌するホゾ材31は、断面が円形の短管部材(外径34mm、内径29.2mm)であり、ホゾ材31の上端部近傍の外壁には1個の突起(高さ5mm)41が設けられている。なお、このホゾ材31は埋め込みタイプであり、ホゾ材31の一部は支柱部材33の上端部に内嵌され残部が突出している状態で溶接により接合されている。一方、支柱部材33の下端部33bに左方向への部分的な凸条加工45が施されることによって、支柱部材33の下端部33bの内壁には、ホゾ材31の外壁に形成される突起41を受容できるだけの縦方向の窪み42の1条が形成されている。したがって、支柱部材33の下端部33bの断面形状は、長径(外径)47.8mm、短径(内径)35.6mmのひょうたん型となっている。
【0080】
図13に、図12に示す支柱部材33を、ホゾ材(埋め込みタイプ)31を介して、縦方向に2本連結したときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0081】
支柱部材33の下端部33bの内壁には、ホゾ材31の外壁に形成される突起41を受容できるだけの縦方向の窪み42の1条が形成されている。したがって、支柱部材のひょうたん型の下端部33b(長径(外径)47.8mm、短径(内径)35.6mm)をホゾ材31(外径34mm)の突出部にスムーズに外嵌させることができるとともに、支柱部材のひょうたん型の下端部33bの内壁に形成された縦方向の1条の窪みが、ホゾ材31の上端部近傍の外壁に形成された1個の突起41を受容するから、スムーズに連結することができることが分かる。
【0082】
図14は、図12に示す支柱部材33の上に、ホゾ材(埋め込みタイプ)31を介して、建枠の縦柱の下端部22dを連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【0083】
支柱部材の上端部33aに埋め込まれたホゾ材31の上端部近傍の外壁には1個の突起41が設けられている。このホゾ材31(外径34mm)には、建枠の縦柱22の下端部22d(外径42.7mm、内径37.9mm)を外嵌することはできるものの、建枠の縦柱22の下端部22dはホゾ材31の上端部近傍の外壁に設けられた突起(高さ5mm)41にぶつかるから、支柱部材の上端部33aに埋め込まれたホゾ材31の上に建枠の縦柱の下端部22dを連結することができないことが分かる。
【0084】
図15は、図12に示す支柱部材33を、連結ピンタイプのホゾ材12を介して、建枠の縦柱の上端部22cの上に連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【0085】
肉厚が2.4mmで外径が42.7mmの縦柱(内径37.9mm)の上端部22cに、連結ピンタイプのホゾ材(両端部の外径36.4mm)12を介して、支柱部材33の下端部33bを連結しようとしても、支柱部材33のひょうたん型の下端部33b(長径(外径)47.8mm、短径(内径)35.6mm)を外嵌することはできない。したがって、縦柱22の上に支柱部材33を連結することができないことが分かる。
【実施例2】
【0086】
図16は、本発明に係る支柱部材33および本発明に係るホゾ材(埋め込みタイプ)31の他の例である。(a)は正面図(支柱部材33の両端部以外は図示を省略)であり、(b)が左側面図(支柱部材33の下端部33bのみ図示)、(c)が上面図、そして、(d)が底面図である。
【0087】
この支柱部材33は、肉厚が2.0mmで外径が42.7mmの円形鋼管である。この支柱部材33の上端部に内嵌するホゾ材31は、断面が円形の短管部材(外径34mm)であり、ホゾ材31の上端部近傍の外壁にはホゾ材31の円周上の最も離れた位置に突起(それぞれ高さ2.1mm)41が2個設けられている。なお、このホゾ材31は埋め込みタイプであり、ホゾ材31の一部は支柱部材33の上端部に内嵌され残部が突出している状態で溶接により接合されている。一方、支柱部材33の下端部33bは上端部33aと同じ径(外径42.7mm、内径38.7mm)であるが、その内壁に断面が円弧形状の板材44(厚み1.6mm)の2枚が間隔を開けて張り付けてあるので、ホゾ材31の外壁に形成される2個の突起41を受容できるだけの縦方向の2条の溝43が、支柱部材の下端部33bの内壁に形成されている。したがって、支柱部材の下端部33bの断面内径は、溝43の部分で内径38.7mm、2枚の板材44の部分で内径35.5mmである。
【0088】
図17に、図16に示す支柱部材33を、ホゾ材(埋め込みタイプ)31を介して、縦方向に2本連結したときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0089】
支柱部材の下端部33bの内壁には、縦方向の2条の溝43が形成されており、ホゾ材31の外壁に形成されている2個の突起41を受容することができる。したがって、支柱部材の下端部33b(溝43の部分で内径38.7mm、2枚の板材44の部分で内径35.5mm)を、ホゾ材31(外径34mm)の突出部にスムーズに外嵌させることができるとともに、支柱部材の下端部33bの内壁に形成された縦方向の2条の溝43が、ホゾ材31の上端部近傍の外壁に形成された2個の突起41を受容するから、スムーズに連結することができることが分かる。
【0090】
図18は、図16に示す支柱部材33の上に、ホゾ材(埋め込みタイプ)31を介して、建枠の縦柱の下端部22dを連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【0091】
支柱部材の上端部33aに埋め込まれたホゾ材31の上端部近傍の外壁には2個の突起41が設けられている。このホゾ材31(外径34mm)には、建枠の縦柱22の下端部22d(外径42.7mm、内径37.9mm)を外嵌することはできるものの、建枠の縦柱22の下端部22dはホゾ材31の上端部近傍の外壁に設けられた2個の突起41(それぞれ高さ2.1mm)にぶつかるから、支柱部材の上端部33aに埋め込まれたホゾ材31の上に建枠の縦柱の下端部22dを連結することができないことが分かる。
【0092】
図19は、図16に示す支柱部材33を、連結ピンタイプのホゾ材12を介して、建枠の縦柱の上端部22cの上に連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【0093】
肉厚が2.4mmで外径が42.7mmの縦柱(内径37.9mm)の上端部22cに、連結ピンタイプのホゾ材(両端部の外径36.4mm)12を介して、支柱部材33の下端部33bを連結しようとしても、支柱部材33の下端部33b(溝の部分で内径38.7mm、で内径35.5mm)を、連結ピンタイプのホゾ材12(両端部の外径36.4mm)に外嵌することはできない。2枚の板材44の部分が連結ピンタイプのホゾ材12にぶつかるから、縦柱22の上に支柱部材33を連結することができないことが分かる。
【実施例3】
【0094】
図20は、本発明に係る支柱部材33および本発明に係るホゾ材(埋め込みタイプ)31の他の例である。(a)は正面図(支柱部材33の両端部以外は図示を省略)であり、(b)が左側面図(支柱部材33の下端部33bのみ図示)、(c)が上面図、そして、(d)が底面図である。
【0095】
この支柱部材33は、下端部33bの長さ80mmを除いて、肉厚が2.0mmで外径が42.7mmの円形鋼管である。この支柱部材33の上端部に外嵌するホゾ材31は、断面が円形の短管部材(外径48.6mm、内径43.8mm)であり、ホゾ材31の上端部近傍の内壁には1個の突起(高さ2.1mm)41が設けられている。なお、このホゾ材31は埋め込みタイプであり、ホゾ材31の一部は支柱部材33の上端部に外嵌され残部が突出している状態で溶接により接合されている。一方、支柱部材33の下端部33bに、左方向からの部分的な凹条加工46が施されることによって、その下端部33bの外壁には、ホゾ材31の内壁に形成される突起41を受容できるだけの縦方向の窪み42の1条が形成されている。したがって、支柱部材33の下端部33bの断面形状は、外径42.7mm、内径38.7mmの円管の左方向から5mm深さの窪みを有するハート型となっている。
【0096】
図21に、図20に示す支柱部材33を、ホゾ材(埋め込みタイプ)31を介して、縦方向に2本連結したときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0097】
支柱部材の下端部33bの外壁には、ホゾ材31の内壁に形成される突起41を受容できるだけの縦方向の窪み42の1条が形成されている。したがって、支柱部材のハート型の下端部33b(外径42.7mm、内径38.7mmの円管の左方向から5mm深さの窪みを有する。)をホゾ材31(外径48.6mm、内径43.8mm)の突出部にスムーズに内嵌させることができるとともに、支柱部材のハート型の下端部33bの外壁に形成された縦方向の1条の窪み42が、ホゾ材31の上端部近傍の内壁に形成された1個の突起41を受容するから、スムーズに連結することができることが分かる。
【0098】
図22は、図20に示す支柱部材33の上に、ホゾ材(埋め込みタイプ)31を介して、建枠の縦柱の下端部22dを連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。
【0099】
支柱部材の上端部33aに埋め込まれたホゾ材31の上端部近傍の内壁には1個の突起41が設けられている。このホゾ材31(外径48.6mm、内径43.8mm)には、建枠の縦柱22の下端部22d(外径42.7mm、内径37.9mm)を内嵌することはできるものの、建枠の縦柱22の下端部22dはホゾ材31の上端部近傍の内壁に設けられた突起41(高さ2.1mm)にぶつかるから、支柱部材の上端部33aに埋め込まれたホゾ材31の上に建枠の縦柱の下端部22dを連結することができないことが分かる。
【0100】
図23は、図20に示す支柱部材33を、連結ピンタイプのホゾ材12を介して、縦柱の上端部22cの上に連結しようとしたときの連結部分を示す。(a)は正面図であり、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【0101】
肉厚が2.4mmで外径が42.7mmの縦柱(内径37.9mm)の上端部22cに、連結ピンタイプのホゾ材(両端部の外径36.4mm)12を介して、支柱部材33の下端部33bを連結しようとしても、支柱部材33のハート型の下端部33b(外径42.7mm、内径38.7mmの円管の左方向から5mm深さの窪みを有する。)を外嵌することはできない。したがって、縦柱22の上に支柱部材33を連結することができないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、小径化した支柱部材等をホゾ材を介して縦方向に連結して仮設足場を組み立てる際に、他の足場用の支柱部材等との混在使用を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 支柱
2 つなぎ材
2a クサビ
3 支柱部材
3a 支柱部材の上端部
3b 支柱部材の下端部
4 コマ
5 ジャッキベース
6 大引受ジャッキ
7 大引材
8 根太材
9 床付き布枠
11 ホゾ材(埋め込みタイプ)
12 ホゾ材(連結ピンタイプ)
14 建物
20 手摺部材
21 ブレース材
22 縦柱
22c 縦柱の上端部
22d 縦柱の下端部
23 横桟
24 鳥居枠
25 筋違
28a ロック金具
28b ロック金具
31 小径支柱部材用のホゾ材(埋め込みタイプ)
32 小径支柱部材用のホゾ材(連結ピンタイプ)
33 小径の支柱部材
33a 小径の支柱部材の上端部
33b 小径の支柱部材の下端部
41 突起
42 窪み
43 溝
44 断面弧形状の板材
45 凸条加工
46 凹条加工
100 システム支保工
101 コンクリート構造物(スラブ)
102 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円形状の中空管からなる支柱部材であって、その下端部の近傍の内壁または外壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられていることを特徴とする支柱部材。
【請求項2】
断面が円形状の短管部材からなるホゾ材であって、その外壁または内壁に1個又は複数個の突起が設けられていることを特徴とするホゾ材。
【請求項3】
断面が円形状の中空管からなる支柱部材に内嵌または外嵌することができる外径または内径を有することを特徴とする、請求項2に記載のホゾ材。
【請求項4】
断面が円形状の中空管からなり、かつその下端部の近傍の内壁または外壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられている支柱部材であって、その上端部に、請求項2または3に記載のホゾ材の下端部が内嵌または外嵌され上端部が突出している状態で接合または取り付けられていることを特徴とする支柱部材。
【請求項5】
断面が円形状の中空管からなり、かつその下端部の近傍の内壁または外壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられている支柱部材であって、その下端部を請求項2または3に記載のホゾ材の上端部に内嵌または外嵌したときに、ホゾ材に設けられた突起を支柱部材に設けられた窪みまたは溝に受容することによって、このホゾ材を介して連結することができることを特徴とする支柱部材。
【請求項6】
断面が円形状の中空管からなる支柱部材であって、その下端部の近傍の内壁または外壁に1個または複数個の突起が設けられていることを特徴とする支柱部材。
【請求項7】
断面が円形状の短管部材からなるホゾ材であって、その外壁または内壁に1条または複数条の窪みまたは溝が縦方向に設けられていることを特徴とするホゾ材。
【請求項8】
断面が円形状の中空管からなる支柱部材に内嵌または外嵌することができる外径または内径を有することを特徴とする、請求項7に記載のホゾ材。
【請求項9】
断面が円形状の中空管からなり、かつその下端部の近傍の内壁または外壁に1個または複数個の突起が設けられている支柱部材であって、その上端部に、請求項7または8に記載のホゾ材の下端部が内嵌または外嵌され上端部が突出している状態で接合または取り付けられていることを特徴とする支柱部材。
【請求項10】
断面が円形状の中空管からなり、かつその下端部の近傍の内壁または外壁に1個または複数個の突起が設けられている支柱部材であって、その下端部を請求項7または8に記載のホゾ材の上端部に内嵌または外嵌したときに、支柱部材に設けられた突起がホゾ材に設けられた窪みまたは溝に受容されることによって、このホゾ材を介して連結することができることを特徴とする支柱部材。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかに記載の支柱部材またはホゾ材を組み込んだことを特徴とする仮設足場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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