説明

改善された殺有害生物組成物

【課題】エマルジョンとして使用する場合に、長期間にわたって、希釈水溶液中の活性成分の均一な分散物を維持し得る組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、安息香酸およびこれらの混合物からなる群より選択される乳化安定剤、2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾール、ならびにさらなるトリアゾールベースの殺真菌剤成分、ピレスロイド殺昆虫剤成分、または(チア)ニコチニル殺昆虫剤または別の殺昆虫剤成分、グリコールベースの溶媒およびベンジルアルコールを含む混合溶媒、ならびに界面活性剤を含む、殺有害生物組成物を提供する。この組成物は、工業材料(例えば、木材、パルプ、紙、繊維、接着剤、フィルム)を悪化(腐敗)ならびに昆虫および特に微生物による汚染から保護する
ための、殺有害生物効果、特に、抗微生物効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にアリ制御効果、シロアリ制御効果、腐敗制御効果および白カビ制御効果を有する改善された乳化安定殺有害生物組成物(pesticidal composition)に関し、より詳細には、本発明の殺有害生物組成物をエマルジョンとして使用する場合に、長期間にわたって、希釈水溶液中の活性成分の均一な分散物を維持し得る組成物に関する。さらに、本発明は、工業材料(例えば、木材、パルプ、紙、繊維、接着剤、フィルム)を悪化(腐敗)ならびに昆虫および特に微生物による汚染から保護するための、殺有害生物効果、特に、抗微生物効果を有する組成物に関する。さらに、本発明は、例えば、木材を食べる有害生物によって引き起こされる昆虫損傷(シロアリ損傷および特にアリ損傷を含む)を妨げる組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、工業材料に対する損傷の原因である有害生物を制御することによってこの工業材料を保護するための方法に関し、この方法は、本発明の殺有害生物組成物をこの工業材料に適用する工程を包含する。
【0003】
本発明はまた、アリ制御剤、シロアリ制御剤、腐敗制御剤または白カビ制御剤としての本発明の殺有害生物組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
森林伐採、温室効果、オゾン層の破壊および環境汚染のような問題によって代表される共通の世界的な問題の解決および適応についての重要さについて増加する傾向がある。日本を含む先進国において、新たに建築されたまたはリフォームされた住居および建物における化学物質による室内空気汚染の、ヒトおよびペットの健康に対する影響について関心が増加している。これは、主に、建物材料、家具および含まれる物品(例えば、家庭用品目)から分散(または蒸発)される化学物質の結果であり、めまい、頭痛、ならびに眼、鼻および喉の痛い刺激のような状態を引き起こす。これらの状態の原因となる物質として最初に規定された13のタイプの揮発性物質が存在した。しかし、後に、これらの状態の大部分が特定の溶媒によって引き起こされることが後の研究の結果から決定された。
【0005】
多くの化合物が、殺昆虫剤として、特に抗微生物剤としての使用のために、これまで発明され、そして販売されている。しかし、経済性、使用の間および使用後の安全性、ならびに汚染のような因子を考慮して、任意のタイプの微生物に対して実際的な使用を提供し得る普遍的に有効な化合物は非常に少ない。当然、抗微生物特性のみを考慮する場合、抗微生物剤は、濃度を増加させることによって、細菌、酵母、カビなどとして分類される多くの微生物に対して有効である。しかし、高濃度の抗微生物剤は、経済性および環境汚染のような点で不利である。
【0006】
例えば、第4級アンモニウム塩として特徴付けられる塩化ベンゼトニウムが、0.01質量%の濃度を有する水溶液として実際的に使用される場合でさえ、Escherichia coliおよびSalmonella typhiのような病原体(細菌)に対して適切に有効であるが、3〜5質量%の濃度で実際的に使用されない場合、Aspergillus spp.およびPenicillium spp.のようなカビに対して有効ではない。
【0007】
従って、多種多様な範囲の有害生物および微生物に対して幅広いスペクトルの殺有害生物効力を得るために、異なる効果を有する複数の化合物の混合物を使用することが必要である。
【0008】
従って、殺昆虫剤および抗微生物剤の両方として使用される化合物は、好ましくは、環境破壊も環境汚染も引き起こさず、そしてヒト、家畜、魚、有益な昆虫、植物などに対して有害な影響を有さない化合物である。さらに、これらは、好ましくは、少量で使用される場合でさえ、強い効果を示し得る。
【0009】
これらの要件を満たす化学物質の1つの例は、2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾール(または2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール;一般名:チアベンダゾール)である。このチアベンダゾールは、例えば、白カビ制御剤として、塗料、樹脂、接着剤、紙製品などに添加または混合することによって、使用される。さらに、これは、その高いレベルの安全性に起因して、農業化学品、食品添加物(柑橘類果物、バナナなど)および動物用防虫剤として使用される。
【0010】
さらに、これは、適切で安定な熱耐性を有するので、樹脂に混合され得る白カビ制御剤として使用される。
【0011】
さらに、環境および政府の規制圧力を考慮すると、材料の処理において使用するために、もはや受け入れ可能ではない特定の化合物を減少または排除することの望みが増加している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、先行技術における組成物のいかなる欠点も含まない改善された組成物を提供することを求めている。
【0013】
従って、本発明の目的は、上記チアベンダゾールを含むエマルジョンにおいて使用される乳化安定剤を開発することである。この乳化安定剤は、このエマルジョンが水で希釈された場合でさえ、均一なエマルジョンを維持し、沈殿、沈降、および液相分離を阻止する効果を有する。得られるエマルジョンは、エマルジョンが添加される材料に対して優れた透過性を示し、一方で、湿潤性粉末および水性懸濁液と比較して優れた接着効果および処理の不均一さを防ぐ効果も示す。
【0014】
さらに、本発明の目的は、木材、パルプ、紙、繊維、接着剤およびフィルムのような工業材料、これらの中間体材料およびこれらの最終製品に添加され、悪化および微生物による汚染を妨げ得、優れた作業性を示し、均一に処理された仕上げならびに信頼性のある腐敗制御および白カビ制御効果を生じることが期待され得る安定化エマルジョン組成物を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の目的は、チアベンダゾールの乏しい溶解性および調製物へ処方することにおける困難性にも関わらず、チアベンダゾールの乳化安定性を実現する乳化安定剤、溶媒および界面活性剤の満足な組合せを提供することである。
【0016】
さらに、本発明の目的は、チアベンダゾール、トリアゾールに基づく殺真菌剤および異なる溶解度を有する他の殺昆虫剤成分を含有する複数の活性成分を含むことによって、溶液を調製することがさらにより困難である場合において、満足な乳化安定性を実現することが可能である殺有害生物組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、乳酸のような特定の乳化安定剤を、チアベンダゾールのような活性成分、グリコールベースの溶媒およびベンジルアルコールのような溶媒、ならびに界面活性剤を含有する組成物に混合することによって、上記組成物の乳化安定性が得られ得、これによって、本発明の完成を導くことを同定した。
【0018】
従って、本発明は、以下:
(a)乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、安息香酸およびこれらの混合物からなる群より選択される乳化安定剤、
(b)2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾール、
(c)グリコールベースの溶媒およびベンジルアルコールの混合溶媒、ならびに
(d)界面活性剤
を含む、殺有害生物組成物に関する。
【0019】
さらに、本発明はまた、さらなるトリアゾール殺真菌剤成分を、2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾールとこのさらなるトリアゾール殺真菌剤との間で1:1〜4:1の質量比でさらに含む上記殺有害生物組成物に関する。2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾールとこのさらなるトリアゾール成分との間の最も好ましい質量比は、2:1〜3:1である。
【0020】
さらに、本発明はまた、殺昆虫剤をさらに含む上記殺有害生物組成物を提供する。特定の実施形態において、この殺昆虫剤は、ネオニコチノイド殺昆虫剤である。
【0021】
さらに、本発明は、シフェノトリン(cyphenothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、ペルメトリン(permethrin)、ビフェントリン(bifenthrin)またはこれらの混合物から選択されるピレスロイド殺昆虫剤成分;イミダクロプリド(imidacloprid)、アセタミプリド(acetamiprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、クロチアニジン(clothianidin)およびこれらの混合物から選択される(チア)ニコチニル殺昆虫剤成分;エトフェンプロクス(etofenprox)、シラフルオフェン(silafluofen)、フィプロニル(fipronil)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)またはこれらの混合物から選択される別の殺昆虫剤成分をさらに含む上記殺有害生物組成物に関する。
【0022】
本発明は、なおさらに、上記さらなるトリアゾール殺真菌剤成分が、アザコナゾール(azaconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、シプロコナゾール(cyproconazole)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)およびこれらの混合物から選択される上記組成物を提供する。
【0023】
本発明は、なおさらに、乳酸、メチルジグリコール、ベンジルアルコール、チアメトキサム、シプロコナゾールおよびチアベンダゾールを含む殺有害生物組成物を提供する。
【0024】
本発明は、なおさらに、組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも1ヶ月間保存される場合に、この組成物が、この組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、上記殺有害生物組成物を提供する。特定の実施形態において、上記組成物は、少なくとも1ヶ月間保存される。さらなる実施形態において、上記組成物は、少なくとも2ヶ月間保存される。さらなる実施形態において、上記組成物は、少なくとも3ヶ月間保存される。さらなる実施形態において、上記組成物は、少なくとも4ヶ月間保存される。さらなる実施形態において、上記組成物は、少なくとも5ヶ月間保存される。さらなる実施形態において、上記組成物は、少なくとも6ヶ月間保存される。さらなる実施形態において、上記組成物は、6ヶ月より長く保存される。
【0025】
本発明は、なおさらに、組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも3ヶ月間保存される場合に、この組成物が、この組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、上記殺有害生物組成物を提供する。
【0026】
本発明は、なおさらに、組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも6ヶ月間保存される場合に、この組成物が、この組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、上記殺有害生物組成物を提供する。
【0027】
本発明は、なおさらに、組成物が約2.5%w/w〜約10%w/wの水を含む、上記殺有害生物組成物を提供する。特定の実施形態において、この組成物は約2.5%w/wの水を含む。さらなる実施形態において、この組成物は約5.6%w/wの水を含む。なおさらなる実施形態において、この組成物は約7.5%w/wの水を含む。なおさらなる実施形態において、組成物は約10%w/wの水を含む。特定の実施形態において、この水は、脱イオン水(イオン交換水としても公知)である。
【0028】
本発明は、なおさらに、本明細書中に提示される実施例に記載されるような条件下で組成物が保存される場合に、この組成物における沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む組成物を提供する。特に、本発明は、実施例に開示される組成物を提供する。さらに、本発明は、組成物が実施例に提供される温度および時間で保存される場合に、この組成物がいかなる沈降物も含まないような量の水をさらに含む組成物を提供する。
【0029】
本発明は、さらに、工業材料に対する損傷の原因である有害生物を制御することによってこの工業材料を保護するための方法を提供し、この方法は、本発明の殺有害生物組成物をこの工業材料に適用する工程を包含する。
【0030】
本発明は、なおさらに、アリ制御剤、シロアリ制御剤、腐敗制御剤または白カビ制御剤としての本発明の殺有害生物組成物の使用を提供する。
【0031】
本発明は、なおさらに、本発明の組成物を含む工業材料を提供する。特定の実施形態において、この工業材料は、木材を含む。
【0032】
本発明によると、以下が提供され、上記目的が達成される。
(項目1)
殺有害生物組成物であって、該殺有害生物組成物は、(a)乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、安息香酸およびこれらの混合物からなる群より選択される乳化安定剤、ならびに(b)2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾール、ならびに(c)グリコールベースの溶媒およびベンジルアルコールを含む混合溶媒、ならびに(d)界面活性剤を含む、殺有害生物組成物。
(項目2)
項目1に記載の殺有害生物組成物であって、さらなるトリアゾール殺真菌剤成分を、前記2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾールと該さらなるトリアゾール殺真菌剤との間で1:1〜4:1の質量比でさらに含む、殺有害生物組成物。
(項目3)
項目1または項目2に記載の殺有害生物組成物であって、前記グリコールベースの溶媒が、メチルジグリコール、エチルジグリコール、プロピルジグリコール、ブチルジグリコール、メチルグリコール、エチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびこれらの混合物から選択される、殺有害生物組成物。
(項目4)
項目2または項目3に記載の殺有害生物組成物であって、前記さらなるトリアゾール殺真菌剤成分が、アザコナゾール、テブコナゾール、プロピコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、およびこれらの混合物から選択される、殺有害生物組成物。
(項目5)
項目1〜4のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物であって、殺昆虫剤をさらに含む、殺有害生物組成物。
(項目6)
項目5に記載の殺有害生物組成物であって、前記殺昆虫剤がネオニコチノイド殺昆虫剤である、殺有害生物組成物。
(項目7)
項目5に記載の殺有害生物組成物であって、前記殺昆虫剤が、(a)シフェノトリン、シペルメトリン、ペルメトリン、ビフェントリンから選択されるピレスロイド殺昆虫剤、(b)イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジンから選択される(チア)ニコチニル殺昆虫剤、(c)エトフェンプロクス、シラフルオフェン、フィプロニル、クロルフェナピルから選択される殺昆虫剤、およびこれらの混合物から選択される、殺有害生物組成物。
(項目8)
項目1〜7のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも1ヶ月間保存される場合に、該組成物が、該組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、殺有害生物組成物。
(項目9)
項目8に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも3ヶ月間保存される場合に、該組成物が、該組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、殺有害生物組成物。
(項目10)
項目9に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも6ヶ月間保存される場合に、該組成物が、該組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、殺有害生物組成物。
(項目11)
項目8〜10のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約2.5%w/w〜約10%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
(項目12)
項目11に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約2.5%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
(項目13)
項目11に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約5.6%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
(項目14)
項目11に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約7.5%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
(項目15)
項目11に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約10%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
(項目16)
工業材料に対する損傷の原因である有害生物を制御することによって該工業材料を保護するための方法であって、項目1〜15のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物を該工業材料に適用する工程を包含する、方法。
(項目17)
項目1〜15のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物の、アリ制御剤、シロアリ制御剤、腐敗制御剤または白カビ制御剤としての使用。
(項目18)
項目1〜15のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物であって、該殺有害生物組成物が、乳酸、メチルジグリコール、ベンジルアルコール、チアメトキサム、シプロコナゾールおよびチアベンダゾールを含む、殺有害生物組成物。
(項目19)
項目1〜15または18のいずれか一項に記載の組成物を含む、工業材料。
(項目20)
前記材料が木材を含む、項目19に記載の工業材料。
【発明の効果】
【0033】
先行技術における組成物のいかなる欠点も含まない改善された組成物が提供される。
【0034】
上記チアベンダゾールを含むエマルジョンにおいて使用される乳化安定剤が開発される。
【0035】
木材、パルプ、紙、繊維、接着剤およびフィルムのような工業材料、これらの中間体材料およびこれらの最終製品に添加され、悪化および微生物による汚染を妨げ得、優れた作業性を示し、均一に処理された仕上げならびに信頼性のある腐敗制御および白カビ制御効果を生じることが期待され得る安定化エマルジョン組成物が提供される。
【0036】
チアベンダゾールの乏しい溶解性および調製物へ処方することにおける困難性にも関わらず、チアベンダゾールの乳化安定性を実現する乳化安定剤、溶媒および界面活性剤の満足な組合せが提供される。
【0037】
チアベンダゾール、トリアゾールに基づく殺真菌剤および異なる溶解度を有する他の殺昆虫剤成分を含有する複数の活性成分を含むことによって、溶液を調製することがさらにより困難である場合において、満足な乳化安定性を実現することが可能である殺有害生物組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
「工業材料」は、建築などにおいて使用される材料を含む。例えば、工業材料は、構造材、ドア、戸棚、貯蔵装置、カーペット、特に天然繊維のカーペット(例えば、羊毛およびヘシアン(hessian)(粗い麻布))、プラスチック、木材(加工木材を含む)、およびウッドプラスチック複合材であり得る。
【0039】
特定の実施形態において、工業材料は、コーティングである。「コーティング」は、基材に適用される組成物(例えば、塗料、染料、ワニス、ラッカー、プライマー、半光沢コーティング、光沢コーティング、フラットコーティング、トップコート、染料ブロッキングコーティング、多孔性基材のための浸透性シーラー、コンクリート、および大理石、エラストマーコーティング、マスチック、コーキング材、およびシーラント、基板およびパネルコーティング、輸送コーティング、家具コーティング、およびコイルコーティング、橋およびタンクコーティング、および表面マーキング塗料、レザーコーティングおよび処理、床ケアコーティング、紙コーティング、パーソナルケアコーティング(例えば、髪、皮膚、爪のため)、織られたまたは不織の布地コーティングおよび顔料ペースト、および接着剤コーティング(例えば、感圧性接着剤、ならびに湿潤および乾燥層化接着剤および漆喰))を含む。
【0040】
特定の実施形態において、コーティングは、塗料;ワニス;染料、ラッカーまたは漆喰を意味する。さらなる実施形態において、このコーティングは、ラッカーである。特定の実施形態において、コーティングは、塗料を意味する。塗料は、例えば、フィルム形成材およびキャリア(このキャリアは、水および/または有機溶媒であり得る)ならびに必要に応じて顔料を含み得る。
【0041】
これに加えて、工業材料は、接着剤、シーラント、接合材料およびジョイント、ならびに絶縁材料を含む。特定の実施形態において、「工業材料」は、構造材を意味する。さらなる実施形態において、「工業材料」は、加工木材を意味する。さらなる実施形態において、「工業材料」は、プラスチックを意味する。
【0042】
プラスチックとは、プラスチックポリマーおよびプラスチックコポリマーを包含し、以下が挙げられる:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ブチルゴム、エポキシ、フルオロポリマー、イソプレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニリデンフルオリド、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリスルフェン、ポリエステル、シリコーン、スチレンブタジエンゴム、およびポリマーの組み合わせ。さらなる実施形態において、「工業材料」とは、ポリ塩化ビニル(PVC)を意味する。さらなる実施形態において、「工業材料」とは、ポリウレタン(PU)を意味する。さらなる実施形態において、「工業材料」とは、ウッドプラスチック複合材(WPC)を意味する。ウッドプラスチック複合材料は、当該分野において周知の材料である。WPCの概説は、刊行物Craig Clemons−Forrest Products Journal.2002年6月、第52巻、第6号、pp.10−18において見出され得る。
【0043】
「木材」とは、木材(wood)および木材製品を意味すると理解されるべきである。例えば、以下を意味する:取り出された材木(timber)製品、材木(lumber)、合板、木くずの合板、フレークボード(flakeboard)、重ね梁(laminated beams)、配向されたストランドボード(oriented strandboard)、ハードボード、および粒子ボード(particleboard)、熱帯の木材、構造材、木製梁、枕木、橋の構成要素、防波堤、木製の乗り物、箱、パレット、コンテナ、電柱、木の柵、木の断熱材、ならびに木材、合板、木くずの合板から作製される窓およびドア、家屋または甲板を建築するために非常に一般的に使用される建具類または木材製品、家屋建築において一般的に使用される建築用建具類または木材製品(加工木材、建築物および木工品が挙げられる)。
【0044】
「工業材料」はまた、冷却用の潤滑剤ならびに冷却システムおよび加熱システム、換気システムおよび空調システム、ならびに製造機械装置の部品(例えば、冷却水回路)を包含する。
【0045】
「工業材料」はまた、石膏ベースの壁張り用材のような壁張り用材を包含する。
【0046】
本発明は、以下を含有する組成物を、さらに提供する:
(a)チアメトキサム(thiamethoxam)、イミダクロプリド(imidacloprid)、およびジノテフラン(dinotefuran)からなる群より選択される、ネオニコチノイドベースの殺昆虫成分;ならびに
(b)シプロコナゾール(cyproconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、およびジフェノコナゾール(diphenoconazole)からなる群より選択される、少なくとも1種のトリアゾールベースの防腐成分;ならびに
(c)チアベンダゾール(thiabendazole)、および2−チオシアノメチルチオベンダゾール(TCMTB)からなる群より選択される、トリアゾールベースの殺真菌成分;ならびに
(d)非イオン性界面活性剤ならびに
(e)ベンジルアルコールとグリコール溶媒との混合溶媒;ならびに
(f)HLB(親水親液バランス) の調節および分散維持(保存)のための成分として添加される乳酸。
用語「分散維持(保存)」とは、使用の際に水で希釈される希釈液中での、成分粒子の分散性の維持(保存)を意味する。
【0047】
本発明はまた、上に記載されたような組成物であって、トリアゾールファミリーの防腐成分およびトリアゾールファミリーの殺真菌成分が、1:1〜4:1の混合比(質量比)で混合されている組成物を提供する。
【0048】
本発明はまた、上に記載されたような組成物であって、殺昆虫成分として、水およびエタノールのような両性溶媒との比較的高い適合性を有する(20℃での水への溶解度が、500ppm以上の)ネオニコチノイド化合物が使用される、組成物を提供する。
【0049】
本発明はまた、組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも1ヶ月間保存される場合に、この組成物が、この組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、上記組成物を提供する。
【0050】
本発明の組成物は、いずれの溶媒の臭気もほとんど有さず、そして優れた実用性を有する。さらに、本発明の組成物は、この組成物の品質を損なうことなく、長期間保存され得る。
【0051】
本発明の組成物は、処理の不均一性の発生なしに、均一な処理を可能にする。なぜなら、この組成物は、分離を起こさない、優れた処方安定性を有するからである。
【0052】
本発明は、改善された乳化安定性および浸透性を有する組成物を提供する。
【0053】
本発明の組成物を、水に希釈することによって使用する場合、作業は、効率的かつ経済的に実施され得る。なぜなら、分離、沈降および結晶沈殿が、ほとんど起こらないからである。
【0054】
本発明は、環境に易しい処理方法、処理薬剤、または処理製品を提供することが可能である。
【0055】
本発明の組成物は、この組成物に含有される活性成分の型に依存して、高レベルのアリ制御効果、シロアリ制御効果、腐敗制御効果、および白カビ制御効果を示すことが予測され得る。
【0056】
さらに、本発明の組成物は、この組成物の高レベルな乳化安定性に起因して、複数の難溶性活性成分を含有することが可能である。従って、多数の種々の殺昆虫効果および抗微生物効果が、1つの組成物を用いて示され得る。従って、本発明の組成物は、この組成物に含有される活性成分の型に依存して、アリ制御剤、シロアリ制御剤、腐敗制御剤、または白カビ制御剤として、有用である。さらに、これらの殺有害生物効果は、長期間にわたって、維持され得る。
【0057】
本発明の組成物は、乳化安定剤、活性成分、溶媒および界面活性剤を含有する。以下は、各成分の説明を提供する。本発明において使用される、用語「殺有害生物組成物」は、アリおよびシロアリのような昆虫のみでなく、細菌およびカビのような微生物を排除し得る(抗菌)、殺昆虫活性、アリ毒殺活性、抗微生物活性、アリ制御活性、腐敗制御活性、および白カビ制御活性を有する組成物の意味を包含することが留意されるべきである。
【0058】
本発明において使用される乳化安定剤は、本発明の殺有害生物組成物のpHを調整することによって、乳化を長期間にわたって安定化するために使用される。本発明において使用される乳化安定剤は、好ましくは、例えば、約2.2〜4.2、そして好ましくは約2.5〜4.0のpKa値(20℃)を有する、弱酸性有機カルボン酸ベースの乳化安定剤であるべきである。この乳化安定剤の例としては、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、安息香酸およびこれらの混合物からなる群より選択される、カルボン酸ベースの乳化安定剤が挙げられ、乳酸が、特に好ましい。本発明の乳化安定剤は、適切には、本発明の殺有害生物組成物の総質量に対して、例えば、1質量%〜10質量%、そして好ましくは、2質量%〜8質量%で、含有される。含有される量が、1質量%以上である場合、本発明の組成物のpH値は、容易に変動し得、そして含有される量が、10質量%以下である場合、この組成物のpH値は、容易に変動し得、そして経時的な安定性は、本発明の組成物に対して十分に保証され得る。従って、好ましくは、このような質量値が使用される。
【0059】
本発明において使用される活性成分とは、広義に、殺昆虫効果、抗微生物効果、昆虫よけ効果、アリ制御効果、腐敗制御効果、白カビ制御効果、および微生物よけ効果を有する成分をいう。ここで、昆虫よけ効果は、殺昆虫効果より広い意味を有し、そして殺昆虫効果のみでなく、昆虫が接近することを防止する、防虫効果もまた包含する。このことは、アリ制御効果、腐敗制御効果、白カビ制御効果、および微生物よけ効果にも同様に適用される。本発明において使用される、好ましい活性成分は、2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾール(すなわち、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンゾイミダゾール;一般名:チアベンダゾール)である。このチアベンダゾールは、細菌、カビおよび酵母のような微生物に対して、優れた効力を有し、そして特に、カビおよび細菌に対して、優れた効果を有する。
【0060】
チアベンダゾールを、腐敗制御組成物または白カビ制御組成物として使用する場合、チアベンダゾールを、溶媒(特に、グリコールベースの溶媒とベンジルアルコールとの混合溶媒)への溶解度を考慮して、例えば、本発明の殺有害生物組成物の総質量に対して、0.1質量%〜20質量%、そして好ましくは、1.0質量%〜15質量%で含有することが適切である。含有される量が、20質量%以下である場合、低温または水で希釈する場合に、結晶が沈殿する危険がなく、そして含有される量が、0.1質量%以上である場合、水で希釈する場合に、十分な白カビ制御効果が得られると予測され得る。
【0061】
本発明において使用される、他の殺有害生物成分の例としては、優れた腐敗制御効果を有するトリアゾールベースの殺真菌成分(例えば、アザコナゾール、テブコナゾール、プロピコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、およびこれらの混合物)、優れた昆虫よけ効果を有するピレスロイドベースの殺昆虫成分(例えば、シフェノトリン(cyphenothrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、ペルメトリン(permethrin)およびビフェントリン(bifenthrin)またはこれらの混合物)、(チア)ニコチニルベースの殺昆虫成分(例えば、イミダクロプリド(imidacloprid)、アセタミプリド(acetamiprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)およびクロチアニジン(clothianidin)またはこれらの混合物)、ならびに他の殺昆虫成分(例えば、エトフェンプロクス(etofenprox)、シラフルオフェン(silafluofen)、フィプロニル(fipronil)およびクロルフェナピル(chlorfenapyr)またはこれらの混合物)が挙げられる。シプロコナゾールは、特に優れた腐敗制御効果を有し、一方で、チアメトキサムは、好ましくは、その優れた昆虫よけ効果およびアリ制御効果に起因して、使用される。
【0062】
化合物チアベンダゾール(790)、アザコナゾール(40)、テブコナゾール(761)、プロピコナゾール(675)、シプロコナゾール(207)、ジフェノコナゾール(247)、シフェノトリン(206)、シペルメトリン(201)、ペルメトリン(626)、ビフェントリン(76)、イミダクロプリド(458)、アセタミプリド(4)、チアメトキサム(792)、クロチアニジン(165)、エトフェンプロクス(319)、シラフルオフェン(728)、フィプロニル(354)およびクロルフェナピル(130)は、例えば、The e−Pesticide Manual,version 3.0,第13版,編者CDC Tomlin,British Crop Protection Council,2003−2004に記載されている。
【0063】
これらの他の殺有害生物成分を使用する場合、これらの他の殺有害生物組成物は、好ましくは、殺有害生物の効果、安全性および環境汚染を考慮して、1質量部のチアベンダゾールに対して、0.01質量部〜1.25質量部、好ましくは、0.05質量部〜1.0質量部、そしてより好ましくは、0.05質量部〜0.5質量部の比で存在する。チアベンダゾールとトリアゾールベースの殺真菌成分との組み合わせを使用する場合、特に、これらは、好ましくは、1:1〜4:1の、チアベンダゾール対トリアゾールベースの殺真菌成分の質量比で含有される。使用される比はまた、実施例に記載されるような比であり得る。
【0064】
本発明において使用される溶媒は、好ましくは、グリコールベースの溶媒とベンジルアルコールとの混合溶媒である。グリコールベースの溶媒の例としては、メチルジグリコール、エチルジグリコール、プロピルジグリコール、ブチルジグリコール、メチルグリコール、エチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0065】
本発明の溶媒は、適切には、本発明の殺有害生物組成物の総質量に対して、例えば、40質量%〜85質量%、好ましくは、45質量%〜80質量%、そしてより好ましくは、45質量%〜70質量%で含有される。含有される量が、40質量%以上である場合、本発明の活性成分は、十分に溶解し得、そして含有される量が、85質量%以下である場合、活性成分は、十分な殺有害生物効果を有する程度まで含有され得、これによって、この組成物を好ましくする。ベンジルアルコールは、適切には、本発明の殺有害生物組成物の総質量に対して、例えば、1質量%〜10質量%、そして好ましくは、3質量%〜8質量%で含有される。さらに、ベンジルアルコールは、適切には、グリコールベースの溶媒とベンジルアルコールとの質量比が、例えば、1:0.5〜1:4(1:1〜1:2を含む)であるように使用される。
【0066】
本発明において使用される界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤が挙げられる。この界面活性剤は、単独で使用されてもよく、複数の界面活性剤が混合されてもよい。
【0067】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、脂肪酸モノグリシド、脂肪酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。さらに、アニオン性界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフェート、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフェートが挙げられる。本発明の界面活性剤は、適切には、本発明の殺有害生物成分の総質量に対して、3質量%〜30質量%、そして好ましくは、3質量%〜20質量%で含有される。含有される量が、3質量%〜30質量%の範囲である場合、十分な乳化効果が、好ましく得られる。
【0068】
活性成分安定剤(例えば、酸化防止剤)、着色料、防錆剤などが、本発明の組成物に添加され得る。
【0069】
本発明の殺有害生物組成物は、例えば、以下に示されるように調製され得る。
【実施例】
【0070】
(1)
((1−1)溶媒)
本発明において使用される溶媒は、グリコール溶媒とベンジルアルコールとの混合溶媒である。上記グリコール溶媒の例としては、メチルジグリコール、エチルジグリコール、プロピルジグリコール、ブチルジグリコール、メチルグリコール、エチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0071】
本発明において、上記溶媒を上記殺生物剤組成物の総質量に対して40質量%以上の比率で混合することが、好ましい。これは、上記溶媒が40質量%以上の比率で混合される場合、その溶媒は本発明の活性成分を完全に溶解し得、それによってその溶媒は、殺昆虫効果および殺微生物効果を完全に示すことができる活性成分を含み得るからである。
【0072】
しかし、本実施例において、ベンジルアルコールの濃度は、ベンジルアルコールの量が上記殺生物剤の総質量に対して20質量%以上であるようにすべきである。
【0073】
((1−2)界面活性剤)
本発明において使用される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤のみである。上記非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、脂肪酸モノグリセリド、ポリオキシエチレン多環式フェニルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。上記の界面活性剤のうち、ポリオキシエチレン多環式フェニルエーテルが、本発明の組成物における界面活性剤として最も適切である。このポリオキシエチレン多環式フェニルエーテルは、好ましくは、本発明の殺生物剤の総質量に対して20質量%〜35質量%の量で混合される。
【0074】
((1−3)分散維持(保持)剤)
本発明において、分散維持(保持)剤が、本発明の組成物における活性成分の溶解を補助するため、この組成物のpH値を調整するため、沈降の増加を遅延させるため、そしてさらに上記成分の粒子の均一な分散を維持(保持)するために、使用される。上記成分の粒子の分散性を維持(保持)するために本実施例において使用される薬剤は、乳酸である。
【0075】
上記成分の粒子の分散(分散性)を維持(保持)するための薬剤としての乳酸は、本実施例の組成物の総重量に対して12質量%〜20質量%(好ましくは13質量%〜17質量%)の適切な量で混合される。その乳酸のpH値が2.5〜3.5の範囲内で維持され得る場合、その組成物が希釈されるか否かに関わらず、その成分の粒子の十分な維持安定性を確保することが可能である。
【0076】
((1−4)他の成分)
活性成分安定剤(例えば、抗酸化剤)、着色剤、防錆剤などを添加することが、可能である。
((2)本発明の殺生物剤の調製)
本発明の殺生物剤は、例えば、以下の通りに調製され得る:活性成分としての2−(チアゾリル)ベンゾイミダゾール(チアベンダゾール)、他の活性成分としてのシプロコナゾールおよびチアメトキサム、そして乳酸を、適切な量の、グリコール溶媒とベンジルアルコールとの混合溶媒と一緒に容器中に入れる。この混合物を攪拌し、そして溶解のために約40℃にて加熱する。
【0077】
その後、非イオン性界面活性剤を添加し、残りの量の、上記グリコール溶媒とベンジルアルコールとの混合溶媒を添加する。この混合物をさらに攪拌する。上記組成物を水で希釈する場合、従って、本発明の組成物を以下のように調製する場合、成分の粒子の均一な分散性を維持(保持)するために乳酸が混合され、例えば、乳酸の混合量が時々わずかに変化する(例えば、20w/w%→20.05w/w%)。
【0078】
チアメトキサム 2w/w%
シプロコナゾール 2w/w%
チアベンダゾール 4w/w%
乳酸 20w/w%
ベンジルアルコール 30w/w%
メチルジグリコール 17w/w%
Newcol 2614* 25w/w%
合計 100w/w%
(注意)Newcol 2614は、非イオン性界面活性剤である。
【0079】
より具体的には、上記殺生物剤組成物のpH値は2.5〜4.0の範囲内にあることが好ましい。そのpH値の調整は、最初の加熱溶解操作が行われるとき以外は、常温で実施される。
【0080】
(3)
((3−1)乳化安定性試験、溶解度試験、および均一分散性維持(保持)試験)
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

((3−2)時間経過に伴う溶解度、乳化安定性/均一分散性、および安定性の研究)
【0083】
【表3】

((3−3)効力試験(実施例1))
木材用殺真菌剤の効力を、日本木材保存協会規格第2号(the Japan Wood Preserving Association Standard No.2)(1992)によって定義される木材用殺真菌剤の効力を試験する方法によって試験した。より具体的には、所定のサイズを有するブナノキの断片物質(試験片)を、組成物の希釈液体(標本液体)中に3分間浸漬した。処理済み断片を浸漬直後にこの希釈液体から取り出し、この処理済み断片の表面上の過剰な薬剤液を、軽く拭き取り、その後、それらの試験片の重量を測定した。
【0084】
これらの試験片を、これらが互いに接触しない様式で網上に配置し、2日間風乾して処理済み試験片を作製した。
【0085】
これらの試験片からなるグループ(各グループは、3つの断片から構成される)をペトリ皿上に配置した。約2mlの懸濁物(各々が、1つの胞子を含む)を、ピペットを用いてペトリ皿上に滴下した。これらの胞子を、温度26±2℃、相対湿度70〜80%にて4週間培養した。その後、評価値を、細菌の増殖状態から決定し、それによって損傷値を計算した。
【0086】
【表4】

【0087】
【表5】

損傷値(D)を算出するための式:損傷値(D)=S/S×100。
【0088】
((3−3)効力試験(実施例2))
試験実施例1と同様に、木材用殺真菌剤の効力を、日本木材保存協会規格第2号(the Japan Wood Preserving Association Standard No.2)に従って試験した。
【0089】
【表6】

1:Zeeklite[Zeeklite Co.,Ltd.から入手可能]
2:PC−1000[Nosan Corporationから入手可能]。
【0090】
【表7】

(注意:この試験のための真菌は、試験実施例1における真菌と同じであった)。
【0091】
本試験は、投与形態間の差によって引き起こされる殺真菌剤の効力の間の差を確認するために実施した。上記溶解剤は、他の投与形態よりも活性であった。
【0092】
((3−3)効力試験(実施例3))
この効力試験は、日本木材保存協会規格第1号(the Japan Wood Preserving Association Standard No.1)(JWPS−FW−S.1)によって定義される、表面処理用木材防腐剤の室内効力試験方法および性能基準に基づいて実施した。
【0093】
この効力試験において、上記の効力試験(実施例2)と同じ標本を使用した。この試験のための真菌として、Tyromyces palustrisおよびCoriolus
versicolorを、上記のように使用し、その質量減少比を算出し、それによってその防腐性能を評価した。防腐剤の質量減少比が3%未満である場合に、その標本は防腐性能を有すると判断されることが、留意されるべきである。この試験の結果として、本発明の組成物(溶解剤)は優れた防腐性能を有すると、判断した。
【0094】
【表8】

上記効力試験を実施するための方法は、以下の通りである:試験片を7日間以上風乾し、それらの試験片をさらに静水中に5時間(20±3℃)浸漬する作業、およびそれらの試験片を温度40±2℃にて循環乾燥機中に19時間放置する作業を、10回反復して実施した。その後、それらの試験片を温度60±2℃にて48時間風乾した後、それらの試験片をデシケーター中に約80分間放置し、その質量を測定した(W)。抗菌作業において、それらの試験片を培養細菌の細菌床に配置し、温度26±2℃、相対湿度70%以上にて12週間放置した。その後、それらの試験片を24時間風乾し、温度60±2℃にて48時間さらに風乾した。その後、それらの試験片をデシケーター中に80分間放置し、その質量を測定した。
【0095】
質量減少比(%)=(W−W)/W × 100
【0096】
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
本発明は、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、安息香酸およびこれらの混合物からなる群より選択される乳化安定剤、2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾール、ならびにさらなるトリアゾールベースの殺真菌剤成分、ピレスロイド殺昆虫剤成分、または(チア)ニコチニル殺昆虫剤または別の殺昆虫剤成分、グリコールベースの溶媒およびベンジルアルコールを含む混合溶媒、ならびに界面活性剤を含む、殺有害生物組成物を提供する。さらなる実施形態において、この組成物は、この組成物における沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む。この組成物は、工業材料(例えば、木材、パルプ、紙、繊維、接着剤、フィルム)を悪化(腐敗)ならびに昆虫および特に微生物による汚染から保護するための、殺有害生物効果、特に、抗微生物効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺有害生物組成物であって、該殺有害生物組成物は、(a)乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、安息香酸およびこれらの混合物からなる群より選択される乳化安定剤、ならびに(b)2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾール、ならびに(c)グリコールベースの溶媒およびベンジルアルコールを含む混合溶媒、ならびに(d)界面活性剤を含む、殺有害生物組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の殺有害生物組成物であって、さらなるトリアゾール殺真菌剤成分を、前記2−(チアゾール−4−イン)ベンゾイミダゾールと該さらなるトリアゾール殺真菌剤との間で1:1〜4:1の質量比でさらに含む、殺有害生物組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の殺有害生物組成物であって、前記グリコールベースの溶媒が、メチルジグリコール、エチルジグリコール、プロピルジグリコール、ブチルジグリコール、メチルグリコール、エチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびこれらの混合物から選択される、殺有害生物組成物。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の殺有害生物組成物であって、前記さらなるトリアゾール殺真菌剤成分が、アザコナゾール、テブコナゾール、プロピコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、およびこれらの混合物から選択される、殺有害生物組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物であって、殺昆虫剤をさらに含む、殺有害生物組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の殺有害生物組成物であって、前記殺昆虫剤がネオニコチノイド殺昆虫剤である、殺有害生物組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の殺有害生物組成物であって、前記殺昆虫剤が、(a)シフェノトリン、シペルメトリン、ペルメトリン、ビフェントリンから選択されるピレスロイド殺昆虫剤、(b)イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジンから選択される(チア)ニコチニル殺昆虫剤、(c)エトフェンプロクス、シラフルオフェン、フィプロニル、クロルフェナピルから選択される殺昆虫剤、およびこれらの混合物から選択される、殺有害生物組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも1ヶ月間保存される場合に、該組成物が、該組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、殺有害生物組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも3ヶ月間保存される場合に、該組成物が、該組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、殺有害生物組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約−5℃〜約50℃で少なくとも6ヶ月間保存される場合に、該組成物が、該組成物中での沈降の形成を妨げるのに十分な量の水を含む、殺有害生物組成物。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約2.5%w/w〜約10%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約2.5%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約5.6%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約7.5%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
【請求項15】
請求項11に記載の殺有害生物組成物であって、該組成物が約10%w/wの水を含む、殺有害生物組成物。
【請求項16】
工業材料に対する損傷の原因である有害生物を制御することによって該工業材料を保護するための方法であって、請求項1〜15のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物を該工業材料に適用する工程を包含する、方法。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物の、アリ制御剤、シロアリ制御剤、腐敗制御剤または白カビ制御剤としての使用。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の殺有害生物組成物であって、該殺有害生物組成物が、乳酸、メチルジグリコール、ベンジルアルコール、チアメトキサム、シプロコナゾールおよびチアベンダゾールを含む、殺有害生物組成物。
【請求項19】
請求項1〜15または18のいずれか一項に記載の組成物を含む、工業材料。
【請求項20】
前記材料が木材を含む、請求項19に記載の工業材料。

【公開番号】特開2009−120549(P2009−120549A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297175(P2007−297175)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(503349800)シンジェンタ ジャパン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】