説明

改善された流動性を有するポリアミド成形コンパウンド、その製造及びその使用

本発明は、70ないし99.5重量%の少なくとも一つの熱可塑性ポリアミドと、数平均モル質量が800〜5000 g/molの範囲であり、少なくとも一部がNH2末端基である塩基性末端基とカルボキシル基とを有する、0.5〜30重量%の少なくとも1種類の直鎖又は分枝鎖構造のポリアミドオリゴマーとを含む、ポリアミド成形コンパウンドであって、これら末端基のうちの1種が過剰量に存在し、且つ、該過剰に存在する末端基の濃度が300 mmol/kg未満である、ポリアミド成形材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕著に流動性の改善された、粘性の安定なポリアミドオリゴマーを含むポリアミド成形コンパウンド、その製造及びその使用に関する。
【0002】
導電性の熱可塑性プラスチックを製造するために、通常、例えばカーボンブラック、カーボンファイバー、グラファイト、金属繊維及び金属粉、金属化ガラス繊維、又は例えば、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン又はポリチオフェンのような共役電子系を有する導電性ポリマーのような導電性物質が利用される。
【0003】
導電性に加えて、特に自動車分野における適用の際に、例えば、優れた表面品質、高耐性、低濃度及び高流動性に関するような高い要求もある。導電性添加剤として、しばしば炭素は、例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、グラファイト若しくはグラファイトファイバー、又は直径が1ないし500 mmの小繊維のような種々の変態において、熱可塑性プラスチックに使用される。
【0004】
カーボンブラック及びカーボンファイバーを使用する場合、要求される導電性に対して比較的高濃度のカーボンブラックが必要であることから、この必要とされる高濃度のカーボンブラック及びカーボンファイバーに起因して、結果として、しばしば、表面品質、靭性及び流動性が悪化する。(電気伝導性プラスチック材料(Elektrisch leitende Kunststoffe(Electrically conductive plastic materials))、出版者:H.J.マイアー(H.J.Mair)、S.ロス(S.Roth)、第2版、カールハンサー出版(Carl Hanser Verlag)、1989年、ミュンヘン、ウィーン、p21-36における、R.G.ギルグ(R.G.Gilg)著、「導電性プラスチック材料のためのカーボンブラック(Russ fur leitfahige Kunststoffe(Carbon black for conductive plastic material))」)
【0005】
例えば、ハイペリオンキャタリシス(Hyperion Catalysis)社により市販されているようなカーボンナノファイバーを使用する場合には、十分な導電性を実現するためには、比較的少量のみを加えればよい(US-A 5643502)。しかし、グラファイトファイバーは凝集体を形成しやすいため、ポリマーマトリックスにおいてカーボンナノファイバーを均一に分散させることは非常に困難である。これにより、カーボンナノファイバーの使用は非常に制限され、マスターバッチを使用することが要求される。更に、製造過程が複雑でコストが多大であることから、カーボンナノファイバーの入手は非常に制限される。
【0006】
カーボンブラックを充填した、過酸化物に対して安定な成形コンパウンドが、例えば、欧州特許第0953796(B1)号に記載されている。比表面積の低いカーボンブラックが用いられたこれらのポリアミド成形コンパウンドの利点は、サワーガスに対する非常に良好な耐性にある。しかし、カーボンブラックを用いることで溶融粘度が大きく上昇することが欠点であり、従って、溶融物の流動性が低すぎるために、特に薄壁部分を製造する際、射出成形機での処理に問題が表れる。
【0007】
流動性が高く粘性の低い熱可塑性組成物は、多くの射出成形用途にとって有利である。例えば、電気、電子又は自動車産業において、可能な限り低い充填圧力での鋳型への充填を可能とするために、薄壁構成部分には低溶融粘度の熱可塑性組成物が必要とされる。更に、粘性の低いポリマー化合物により、より短い成形時間もまた、多くの場合実現可能である。更に、流動性が良好であることは、例えばグラスファイバー又はカーボンファイバー又は鉱物の含有量が40%よりも高い高充填のポリマー化合物において、特に、カーボンブラックも追加的に導電性添加剤として添加されている場合、極めて非常に重要である。高い流動性があるとしても、粘性の低下による機械的性質の悪化が生じないよう、高い機械的な要求が構成部分に課せられる。
【0008】
ポリマーの流動性を改善する最も容易な方法は、そのモル質量を減少させることにある。しかし、ポリマーの機械的性質が部分的に激しく悪化するということを、不利益として考慮に入れなければならない。
【0009】
米国特許第6548591(B2)号には、流れ特性の改善が、より高い溶融温度を有する低分子量のポリアミドを用いることによって実現される、熱可塑性ポリアミド成形コンパウンドが記載されている。マトリックスよりも高い温度で溶融するオリゴマーが使用されるべきであるという事実により、結果として、マトリックスとオリゴマーが不相溶性となり得る。このことは、例えば、5重量%のPA66オリゴマーにおいて、高分子量のポリアミド6の衝撃強さが90 kJ/m2ないし30 kJ/m2に減少するという事実により明らかである。
【0010】
欧州特許第0957131(B1)号には、ポリアミドプレポリマー、すなわち、反応性末端基を備えたポリアミドオリゴマーの追加により、ポリアミド成形コンパウンドの流れ特性が改善されることが記載されている。これらのプレポリマーは、末端基の濃度が高いことによりアミノ基及びカルボキシル基が同時に存在するため、高分子量の成分と合成する間、及び次の処理の間、粘性が安定しないという不都合がある。不所望の粘性の上昇が起こり、ひいては、流動性を悪化させる。
【0011】
これらのプレポリマーのアミノ基及びカルボキシル基の濃度が高いことにより、例えば安定剤、ガラス繊維サイズ剤及び耐衝撃性改良剤のような、更なる構成成分との好ましくない反応もまた起こり得る。
【0012】
別の可能性は、添加剤として高分子量ポリマーに添加できる、流動助剤又は内部潤滑剤としても記載されている、いわゆる粘着防止剤の使用である。この種の流動助剤は、文献(例えば、プラスチック(Plastics)2000年、9、p116-118)において公知であり、例えばポリオールの脂肪酸エステル又は脂肪酸とアミンのアミドであってよい。しかし、この種の脂肪酸エステル、例えば、テトラステアリン酸ペンタエリスリトール又はエチレングリコールジモンタノエートは、ポリアミドのような極性のある熱可塑性プラスチックと、限定された形式でのみ混和可能であり、それゆえ、成形品の表面上で移動して濃縮する傾向を有する。このことは、コートされた成形品の場合、多層複合体における接着、又は、塗料と金属との接着に関して不利となり得る。
【0013】
表面活性の流動助剤の代替として、ポリマーと相溶性の内部流動助剤を利用してよい。この目的に適う物として、例えば、ポリマーマトリックスと同様の極性を有する低分子量の化合物又は分枝鎖ポリマー又は樹状ポリマーがある。この種の分枝鎖の多い樹状システムが、例えば、独国特許出願公開第10255044(A1)号に記載されている。
【0014】
グラフトコポリマーが流動性を改善する性質は、例えば、欧州特許第1217039(B1)号の実施例により公知である。この刊行物には、熱可塑性ポリエステル及びポリアミン/ポリアミドグラフトコポリマーを含む、流動が容易なポリエステル成形コンパウンドが記載されている。
【0015】
フルオロカーボンポリマーの流動性改善効果は、欧州特許出願公開第1454963(A1)号に記載されている。フルオロカーボンポリマーが高価であること、ポリアミドにおいて腐食の危険性があり有効性が低いことは不利である。
【0016】
それ故、本発明の目的は、高い流動性を有するポリアミド成形コンパウンドを利用可能にすることであり、これにより、良好な機械的性質を有する薄壁構成部分を製造することができ、現状の技術における不利益を有さない。
【0017】
本発明の目的は、ポリアミド成形コンパウンドに関しては請求項1に記載の特徴により、それによって製造される成形品に関しては請求項33に記載の特徴により、その使用に関しては請求項34に記載の特徴により、実現される。従属請求項により有利な拡張が開示される。
【0018】
本発明のポリアミド成形コンパウンドは、70〜99.5重量%の少なくとも1種類の熱可塑性ポリアミドと、数平均モル質量が800〜5000 g/molであり、少なくとも一部がNH2末端基である塩基性末端基とカルボキシル末端基とを有する、0.5〜30重量%の少なくとも1種類の直鎖又は分枝鎖構造のポリアミドオリゴマーとを含み、ここで、これらの末端基のうちの1種が過剰量に存在し、且つ、該過剰に存在する末端基の濃度が最大で300 mmol/kgである。本発明によれば、ポリアミド成形コンパウンドは、あらゆるポリアミド、すなわち、結晶構造又はアモルファス構造のポリアミド又はその混合物に拡張される。
【0019】
従って本発明の目的は、更なる割合の粘性の安定したポリアミドオリゴマーがポリアミド成形コンパウンドに組み込まれることにある。
【0020】
含有されるポリアミドオリゴマーにより、成形コンパウンドの溶融粘度が減少し、それ故、特に薄壁成形コンパウンドの場合、著しく加工性が改善する。本発明のポリアミドオリゴマーはこれにより、例えば、ある低分子量の可塑剤のように移動することがなく、それ故、成形品又は道具の表面にコートを形成しないか、又は僅かしか形成しない。
【0021】
同様に、特に補強された既製品部品の表面品質は大きく改善される。充填材により、表面はしばしば粗く、しみがあり、又は窪みや凸凹が表れる。ポリアミドオリゴマーの追加により、成形品はより滑らかで、より均一な表面を獲得し、また、優れた光沢が与えられる。
【0022】
おそらく、追加された充填材及び導電性添加剤はポリアミドオリゴマーにより、よく湿っており、それゆえ、特に高充填度において組み込むことが容易になる。
【0023】
この目的にふさわしいポリアミドオリゴマーは、組成物の他の成分と共に、溶融状態の高分子量のポリアミドへ添加される。
【0024】
モノマーの選択により、ポリアミドオリゴマーは、平均以上の分子量を有する通常のポリアミドの末端基の濃度におよそ匹敵する、縮合性鎖末端をほとんど有しない。
【0025】
本発明のポリアミドオリゴマーに関するこの末端基の形状により、合成及び加工の間、オリゴマーに関する著しいポリマー成長及びポリマーマトリックスの分解のいずれも起きないため、本発明のポリアミド成形コンパウンドは、溶融安定である。さらに、他の構成成分との2次反応は事実上起こらない。オリゴマー及びポリマーマトリックスは同様の極性を有するため、構成要素同士の良好な相溶性が得られ、その結果、不都合な浸出が避けられる。
【0026】
本発明の粘性の安定なポリアミドオリゴマーは、直鎖又は分枝鎖構造を有し、5000 g/mol未満のモル質量を有し、少なくとも50 %、好ましくは60ないし80 %の鎖末端が縮合活性ではなく、全体として塩基鎖及び酸性鎖のいずれかが多く存在するという点で優れている。ポリアミドオリゴマーのモル質量とは独立して、1級アミノ末端基又はCOOH末端基の最大濃度は300 mmol/kgであり、好ましくは100 mmol/kgである。
【0027】
従って、R3N、R2NH、RNH2のようなアミン官能基、及びカルボキシレート、すなわち脱プロトン化したカルボキシル官能基の両者が、基本構成要素として適用され、鎖末端上又はオリゴマー構造中に見い出せる。
【0028】
本発明のポリアミドオリゴマーは、従って、反応性末端基をほとんど有しておらず、従って、事実上、モノマー、オリゴマー又はポリマーのような他の官能性のある構成単位とは、もはや縮合することができない。公知の反応性ポリアミドオリゴマーとは対照的に、本発明のオリゴマーは、純粋な物質として及びポリアミド成形コンパウンドとの適切な混合物において、分解に対して非常に安定であり、溶融状態においてこのような成形コンパウンドの分解を広範囲に防ぐことさえ可能である。
【0029】
ポリアミドは多数のモノマー構成単位から構成されてよいため、特別な末端性質を多数有することもまた可能である。この広範な変形例は、本発明のポリアミドオリゴマーにも適用される。公知のポリアミド構成単位の選択、及び組合わせにより、また、モル質量を目標値に調節することにより、結晶化点、融点又はガラス転移点、基質親和性及び水分含有量のような性質、すなわち、オリゴマーの基本的な性質を具体的に調整することができる。
【0030】
純粋な直鎖構造に加えて、特別に分枝したオリゴマーを生成することも可能である。従って、例えば、欧州特許第0345645号に示されるように、ポリアミドに当てはまる法則は、ポリアミドオリゴマーの場合も、特にそのモル質量が800 g/molを超える場合、分枝構造特性に当てはまる。従って、分枝構造のポリアミドオリゴマーは再現可能であり、もし、構造を生成する構成要素に加え、アミノ酸及び/又はアミノラクタムのみが基本モノマーである場合、リアクター(reactor)において沈殿物を形成せずに、再現性良く製造することができる。
【0031】
本発明のポリアミドオリゴマーに関する特徴は、構成単位の特別な選択及びそれらの組成自体ではなく、縮合活性のある末端基が少ないことであり、また特に、縮合反応後に残る、不足して存在する末端基に対する過剰に存在する末端基の割合が1:1を越え、好ましくは2:1を超えることである。
【0032】
従って、過剰に存在する末端基の濃度は、好ましくは最大100 mmol/kgである。更に、もし更なるアミノ末端基が存在すれば、それらは、縮合しないか又は少量のみ縮合する第二級又は第三級アミノ末端基である。第二級又は第三級アミノ末端基の端部における置換基は、好ましくは、炭素数が4を超え、特に炭素数が4ないし44のアルキル、シクロアルキル又はアリールのラジカルである。ポリアミドオリゴマーがプラスチック材料化合物の熱可塑処理の間、例えば、溶融物の流動性が改善され、結晶化速度の上昇が可能となり及びしばしば離型性が実質的に改善されるという、優れた効果を示しうることは特に重要である。加水分解による鎖の開裂という意味での分解効果は、これにより、実質的に排除され、COOHを含む化合物によって公知であるように、加工機での腐食は起きない。
【0033】
本発明のポリアミドオリゴマーが、それ自体の分解に対して及び高分子量ポリアミドとの混合物において安定であるためには、過剰に存在する末端基の濃度は少なくとも20 mmol/kg、好ましくは少なくとも50 mmol/kgとなる。
【0034】
使用されるオリゴマーが、mmol/kgで表される高濃度の塩基性基を含む場合、ポリアミドオリゴマーを含むポリアミド成形コンパウンドは驚くべきことに、加水分解及び風化に対して優れた安定性を有する。鎖末端に用いられる化合物が、縮合活性を有するNH2又はCOOH基とは別に、例えば、化学式(I)、(II)及び(IV)で表される化合物におけるように、立体障害を有するアミノ基(第二級又は第三級アミン)を共に含む場合、最も有利な方法でこれらをオリゴマー構造に挿入する。このような特別な鎖末端構成単位は、例えば、ココプロピレンジアミン又はC16-22-アルキルプロピレンジアミン(アクゾ(Akzo)社製デュオミンM.(Duomeen M.))のようなN-アルキル化ジアミン、3-シクロヘキシルアミノプロピレンジアミンであるが、特にトリアセトンジアミンも構成単位である。対応するように構築されたポリアミドオリゴマーをポリアミド成形コンパウンドに追加することにより、特別に追加しなければならない、いわゆるHALSタイプの高価な安定化剤なしに、その加水分解に対する安定性及び風化に対する安定性が改善される。
【0035】
【化1】

【0036】
更に、オリゴマー製造のため、モノマー構成単位を共に利用することが可能であり、前記モノマー構成単位は、立体障害を有するフェノール構造の分子を分子内に共に含む。プラスチック材料化合物、特にポリアミド成形コンパウンドに追加する間、このようなオリゴマーは、結果として、付随してその熱安定性を改善する。例として、対応するモノカルボン酸は、3-(3、5-ジ-ターシャリー-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸(チバ(Ciba)SC社のイルガノックス(Irganox)1310、)(化学式(III))である。ポリアミドオリゴマーがこの可能性に従いそのモル質量を制御され、従って、立体障害を有するアミン官能基を鎖の一端に含み、鎖の他端に立体障害を有するフェノール基を含む場合、特に、ポリアミド成形コンパウンドに追加する場合、適切に追加することにより、前記成形材が、優れた加水分解に対する安定性、及び風化及び熱に対する安定性を同時に有する。
【0037】
もちろん、目的の効果に従い、鎖長を制御するためのあらゆる組合せの選択が可能である。例えば市販のステアリン酸を共に用い、一部のみを立体的に阻害されたアミンとし、残りを、市販の、例えば、炭素数20の脂肪アミンとすることもできるという点で、例えば、カルボン酸の一部のみが立体阻害のフェノール官能基を有してよく、残りの構成要素はモノアルキルであってよい。ポリアミドオリゴマーがその安定化効果を同時に発揮し、及び更に潤滑剤及び離型剤として良好に作用することが、このような特別な組合せによって確保される。
【0038】
本発明のポリアミドオリゴマーを製造するためのモノマーは、炭素数2ないし44の直鎖及び分枝鎖のジアミン及びジカルボン酸、これに加え例えば1,3-又は1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、又はm-及びp-キシレンジアミンのような、脂肪族アミン官能基を有する環状で縮合活性のジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン又は-プロパン又はいわゆるTCD-ジアミン、(3(4)、8(9)-ビス(アミノメチル)-トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン)又はノルボルナン構造を有するジアミンのような、二環式であり、それにより連続的に置換もされたジアミンである。適切なジカルボン酸は、更に、二量化した脂肪酸及び、イソ-及びテレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸である。
【0039】
例として、モノアミン及びモノカルボン酸が、例えば、ステアリルアミン及びステアリン酸のモル比が約1:1であるような、等モルの割合で存在するモノマー構成単位に追加されるように、モル質量の制御はなされる。
【0040】
モル質量及び末端基を制御する更なる可能性は、例えば、二官能性あるいは多官能性の化合物を利用する場合、不揮発性のエーテルジアミンを対応する量のステアリン酸と組合せるように、ある種の官能末端基を他の種類の単官能の化合物を追加することで補うことである。
【0041】
アミノ酸又はラクタムを利用する場合、トリメシン酸又はエチレンジアミンテトラプロピオン酸のような三官能性又は多官能性の化合物をも用いて、末端基の種類及び濃度を調整することができる。末端構造には、例えばステアリルアミンのような3又は4当量のモノアミンが必要である。これにより、所定の過剰な1つの官能基が残り、特別な効果のため、更なる立体阻害されたアミン基または立体阻害されたフェノール基を共に含む化合物を共に具体的に利用されるような工程が実行される。
【0042】
更に、分枝構造のオリゴマーの製造に非常に適した化合物群は、分子内に例えば5ないし10の無水マレイン酸群(MA)を有する、いわゆるスチレン-無水マレイン酸樹脂である。これにより、MA群は、溶融状態でアミン酸又はイミド構造を有するラクタムと反応する。この「オリゴマーの腕(oligomer arm)」は、次にカルボキシル末端化され、モノアミンの利用により、連鎖停止が起きる。この分枝の特徴を有するアミノ酸及びラクタムに基づくオリゴマーは、比較的高いモル質量であるとしても、優れた流動性をも有し、それ故、表面に優れた光沢を有する高充填のポリアミド配合物に特に適している。
【0043】
オリゴマーの商業的な製造は、通常のポリアミドの製造に用いられるような反応槽(reaction vessels)において実施でき、そしてポリアミドの合成で知られる通例に基本的に従う。
【0044】
高分子量のポリアミド成形コンパウンドに添加されたポリアミドオリゴマーは、濃度とは独立に、非常に顕著な粘度の低下(実施例1において90 %、実施例3において900 %)を引き起こすので、MVRは何倍にも増加しうる。このことは流動長においても検出することができる。濃度及びポリアミドオリゴマーの種類に依存して、100 %を超える流動長の増加を実現しうる。
【0045】
更に、部分的に結晶質の又はアモルファスのポリアミドをポリアミドオリゴマーと組合せることにより、特に高度に強化され充填された系において、低ひずみの成形品の製造が可能となる。PAオリゴマーを含み、それ故、より流動性が高いポリアミド成形コンパウンドの加工の間、より応力の低い成形体は、概して改善された表面品質をもって製造される。特に、アモルファスのポリアミド及び部分的に結晶質のポリアミドとのその混合物の場合、本発明のポリアミドオリゴマーの追加により、顕著にひずみが減少する。繊維状の及び/又は粒子状の充填材の濃度が高ければ高いほど、より一層この効果を表す。詳細には、例えば粉砕した又は沈殿した炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム(カオリン)又はケイ酸マグネシウム(タルク)のような少量の粒子状の充填材の追加、又は、粉砕したガラス繊維の追加によっても、ポリアミド溶融物の流動性が大きく減少し、加工は困難となり、低ひずみ成形品の製造に関して最適な結果は得られなくなる。しかし、これら場合においても、PAオリゴマーの追加により、最適な加工において低収縮性でひずみの非常に少ない成形品が製造されるような程度にまで、PA成形コンパウンドの溶融粘度を減少させることが可能である。従って、好ましくはひずみは5 %未満であり、特に好ましくは3 %未満である。
【0046】
本発明に係る成形コンパウンドのためのポリアミドとして、炭素数4ないし44、好ましくは炭素数4ないし18の脂肪族ラクタム又はω-アミノカルボン酸の重縮合物、又は、炭素数6ないし20の芳香族アミノカルボン酸が有利に使用される。
【0047】
同様に、それぞれ2ないし44炭素を有し、少なくとも1つのジアミン及び少なくとも1つのジカルボン酸の重縮合物が適切である。このようなジアミンの例は、エチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、m-及びp-キシリレンジアミン、シクロヘキシルジメチレンアミン、ビス-(アミノシクロヘキシル)メタン及びそのアルキル誘導体である。
【0048】
ジカルボン酸の例はコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、オクタン二酸、アゼライン酸及びセバシン酸、ドデカンジカルボン酸、炭素数36又は44の脂肪酸の二量体、1、6-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸である。
【0049】
従って、本発明に係る成形コンパウンドに特に適した、部分的に結晶質のポリアミドは、PA6、PA66、PA46、PA11、PA12、PA1212、PA1012、PA610、PA612、PA69、PA1010、PA6T、PA6T6I、PA6T66、PA9T、PA10T、PA12T、PA12I、に基づくホモ-及びコポリアミド、これらのポリアミドに基づく、その混合物又は共重合体であり、好ましくはPA6、PA66、PAl1、PA12、PA1212、PA6T6I、PA6T66である。例えば12T/12、10T/12、12T/106、及び10T/106のような、上記のポリアミドに基づくコポリマーもまた好ましい。更に、ナイロン6/66、ナイロン6/612、ナイロン6/66/610、ナイロン6/66/12、ナイロン6/6T及びナイロン6/6Iもまた、本発明に用いてよい。
【0050】
好ましいアモルファス又は微小結晶質のホモ-及びコポリアミドは以下の構成物を有する。つまり、PA6I、6I/6T、MXDI/6I、MXDI/MXDT/6I/6T、MXDI/12I、MACMI/12、MACMI/MACMT/12、6I/MACMI/12、6I/6T/MACMI/-MACMT/12、PACM6/11、PACM12、PACMI/PACM12、MACM6/11、MACM12、MACMI/MACM12、MACM12/PACM12、6I/6T/PACMI/PACMT/PACM12/612を有する。従って、可能な環状ジアミンとして、例えばMACM(3,3ジアミノ-4,4-ジメチルジシクロヘキシルメタン)、PACM(3,3ジアミノジシクロヘキシルメタン)又はMXD(m-キシリレンジアミン)がある。
【0051】
本発明のポリアミド成形コンパウンドの特に好ましい態様により、成形コンパウンドが追加的に導電性添加剤を含むことが可能となる。従って、好ましくは、ポリアミド成形コンパウンド中に、導電性添加剤は、総ポリアミド成形コンパウンドに対して1ないし50重量%、特に好ましくは3ないし25重量%の量で含まれる。
【0052】
本発明のポリアミド成形コンパウンドの導電性添加剤として、比表面積の低いカーボンブラック及び比表面積の高いカーボンブラック並びに、またその混合物、並びにカーボンナノフィブリル、並びにカーボンブラック及びカーボンナノフィブリルの混合物が可能である。
【0053】
本発明に係るカーボンブラックは、ASTM規格D3037-89に従って測定して5 m2/gを超えるBET比表面積を持ち、ASTM規格D2414-90により測定して50 ml/100 gを超えるジブチルフタレート吸収を持つ。しかし、BET法による比表面積が200 m2/gを超え、ジブチルフタレート吸収が300 ml/100 gを超えるカーボンブラックが好ましく用いられる。BET比表面積が300ないし2000 m2/gの範囲内にあり、ジブチルフタレート吸収が350ないし1000 ml/100 gの範囲内にあるカーボンブラックが特に好ましい。
【0054】
本発明の導電性カーボンブラックの場合、1次粒子のサイズは0.005ないし0.2μmであり、好ましくは0.01ないし0.1μmである。カーボンブラックの表面には、例えばカルボキシル基、ラクトール基、フェノール基、キノイドカルボニル基及び/又はピロン構造等の多数の酸素含有基を置く事ができる。
【0055】
カーボンブラックの選択の際、非常に純粋なタイプのものが過酸化物に対する高い耐久力が成形コンパウンドに与えられるため、特に好まれる。非常に純粋であるとは、この文脈においては、使用されるカーボンブラックが0.1重量%未満の灰分を有し、50 ppm未満の重金属量を有し及び0.05重量%未満の硫黄含有量を有することを意味する。
【0056】
導電性カーボンブラックは、例えば、アセチレンから、合成ガス又はファーネスプロセスにより、オイルキャリアーガス及び空気により製造することができる。製造方法は、例えば、「電気伝導性プラスチック材料(Elektrisch leitende Kunststoffe(Electrically conductive plastic materials))」、出版者:H.J.マイアー(H.J.Mair)、S.ロース(S.Roth)、第2版、カールハンサー出版(Carl Hanser Verlag)、1989年、ミュンヘン、ウィーン、p.21-36におけるR.G.ギルグ(R.G.Gilg)著、「導電性のプラスチック材料のためのカーボンブラック(Russ fur leitfahige Kunststoffe(Carbon black for conductive plastic materials))」、に記載されている。
【0057】
好ましいカーボンナノフィブリルは、典型的には、少なくとも1つのグラファイト層よりなるチューブの形状である。グラファイト層は、円筒軸の周りに同心円状に配置される。カーボンナノフィブリルは、長さ対直径比が、好ましくは少なくとも5:1であり、好ましくは少なくとも100:1であり、特に好ましくは少なくとも1000:1である。ナノフィブリルの直径は、典型的には0.001ないし0.5μmの範囲にあり、好ましくは0.005ないし0.08μmの範囲にあり、特に好ましくは0.006ないし0.05μmの範囲にある。カーボンナノフィブリルの長さは、典型的には0.5ないし1000μmであり、好ましくは0.8ないし100μmであり、特に好ましくは1ないし10μmである。カーボンナノフィブリルは、グラファイト層がその周囲に規則的に巻かれた中空で円筒状のコアを有する。この空洞は典型的には、直径が0.001ないし0.1μmであり、好ましくは直径が0.008ないし0.015μmである。カーボンナノフィブリルの典型的な態様において、空洞周りのフィブリルの壁は、例えば8枚のグラファイト層を有する。これにより、カーボンナノフィブリルは、複数のナノフィブリルを含む、直径が最大1000μm、好ましくは直径が最大500μmの凝集体として存在しうる。
【0058】
カーボンナノフィブリルの追加は、モノマーを重合又は重縮合してポリアミドとする前、その最中、又は後に行なってよい。重合の後に本発明のナノフィブリルの追加を行う場合、好ましくは、ニーダー又は押出機において溶融したポリアミドへの追加が行なわれる。ニーダー又は押出機における配合工程により、特に、上記の凝集体は広範囲に粉末化し又は完全に粉末化さえし、カーボンナノフィブリルはポリアミドマトリックスに分散することができる。
【0059】
好ましい態様において、カーボンナノフィブリルを既知量で高濃度のマスターバッチとして、好ましくはポリアミドマトリックスと同じ化学構造を有するポリアミドに加えてよい。マスターバッチのカーボンナノフィブリル濃度は5ないし50重量%の範囲であり、好ましくは8ないし30重量%であり、特に好ましくは12ないし22重量%の範囲である。マスターバッチの製造は、例えば、米国特許第5643502号に記載されている。マスターバッチを使用することで、特に凝集体の粉末化が改善される。カーボンナノフィブリルは、成形コンパウンド又は成形体へ処理することにより、元々使用されていたものに比べて、成形コンパウンド又は成形体においてより短い長さ分布を持ち得る。カーボンナノフィブリルは、例えばハイペリオンカタリシス(Hyperion Catalysis)社により市販されている。カーボンナノフィブリルの合成は、例えば米国特許第5643502号に記載されているように、例えば、炭素及び金属触媒を含むガスを含む反応器において行なわれる。
【0060】
更なる導電性添加剤として、ポリアミド化合物は、単独で又はカーボンナノフィブリルに加えて、導電性を生じさせるのに適し、当業者に導電性カーボンブラック又は黒鉛粉末とも呼ばれているカーボンブラックのような粒子状の炭素化合物をもまた、含んでいてもよい。これは、膨張黒鉛(expanded graphite)をもまた含んでいてもよい。
【0061】
本発明によれば、黒鉛粉末(graphite powder)は、粉末化したグラファイトに関する。当業者は、例えばA.F.ホールマン、E.ウィベルグ、N.ウィベルグ(A.F.Hollemann, E.Wiberg, N.Wiberg)著、「有機化学教科書(Lehrbuch der anorganischen Chemie(Textbook of inorganic chemistry))」第91版-第100版、p.701-702ページに記載のように、グラファイトを炭素の変態であるものとして解釈する。グラファイトは互いに積み重なって配置される平面状のカーボン層を含む。グラファイトは、例えば粉砕により粉末化することができる。粒径は0.01μmないし1 mmの範囲にあり、好ましくは1ないし300μmの範囲であり、特に好ましくは2ないし20μmの範囲である。
【0062】
本発明に係るカーボンブラック及び/又はグラファイトの追加は、モノマーを重合又は重縮合してポリアミドとする前、その最中、又は後に行なってよい。重合の後に本発明のカーボンブラック及び/又はグラファイトの追加を行う場合、好ましくは、ニーダー又は押出機において溶融したポリアミドに追加が行なわれる。本発明によれば、カーボンブラック及び/又はグラファイトは、好ましくはポリアミドマトリックスと同じ化学構造を持つポリアミドに、既知の量で高濃度のマスターバッチとして加えてよい。マスターバッチのカーボンブラック及び/又はグラファイトの濃度は3ないし70重量%の範囲であり、好ましくは5ないし50重量%であり、特に好ましくは7ないし35重量%の範囲である。本発明によれば、カーボンブラック及び/又はグラファイトは、計測性の向上のために、例えばワックス、脂肪酸エステル又はポリオレフィンのような結合剤と共に混合してよい。本発明によれば、カーボンブラック及び/又はグラファイトは、また、更なる結合剤と共に又は更なる結合剤なしに、例えばプレス法又は圧縮法によりペレット状又は粒状にしてよく、この場合も同様により良好な計測性を示す。また、ポリアミドオリゴマーは、マスターバッチに事前に加えられていてよく。このことは、MBマトリックス及び本発明のポリアミド成形コンパウンドの両者における導電性添加剤の分散を容易にするため、有利である。このようなマスターバッチと共に、ポリアミドオリゴマー及び導電性添加剤は高分子量ポリアミドに同時に組み入れられてよい。
【0063】
好ましい態様において、複数のグラファイトの混合物、複数のカーボンブラックの混合物、又は少なくとも1つのグラファイト及び少なくとも1つのカーボンブラックの混合物、又は少なくとも1つのカーボンブラック及びカーボンナノフィブリルの混合物も使用することができる。
【0064】
アクゾノーベル(AKZO Nobel)社によるケッチェンブラックという名称の、キャボット社によるバルカンという名称の、又はデグサ(Degussa)社によるプリンテックスという名称の、本発明の導電性カーボンブラックを用いてよい。本発明のグラファイトは、例えばフォーゲルアンドプレナー(Vogel & Prenner)社、ヴィーズバーデン、ドイツ又はSGLカーボン(SGL Carbon)社からの、粉末として用いてよい。
【0065】
更なる成分として熱可塑性成形コンパウンドは、好ましくは、例えば、滑石、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、アモルファスのケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、石灰石、長石、硫酸バリウム、ガラスボールをベースとする繊維状及び/又は粒子状の充填材又は強化剤又は2種又はそれ以上の異なる充填材及び/又は強化材の混合物、及び/又は炭素繊維、金属繊維及び/又はガラス繊維をベースとする繊維充填材及び/又は強化材を、含んでいてよい。好ましくは、滑石、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、アモルファスのケイ酸、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、常磁性(long-term magnetic)又は磁性金属化合物及び/又は合金、ガラスボール又はガラス繊維をベースとした金属粒子充填物が用いられる。特に、滑石、珪灰石、カオリン及び/又はガラス繊維をベースとした本発明の金属粒子充填材が好ましい。また、充填材及び強化材は、表面処理されていてもよい。
【0066】
特に、ガラス繊維を用いる際、シランに加えて、ポリマー分散体、被膜剤、分枝剤及び/又はガラス繊維処理剤を用いてよい。本発明によると、一般的にに繊維の直径が7ないし18μm、好ましくは9ないし15μmであり、適切なサイジング方式及び例えばシラン基礎上の接着剤又は接着系を具備できる繊維である、非常に長い繊維(endless fiberes)として、又は切断若しくは粉砕したガラス繊維として添加可能なガラス繊維も特に好ましい。
【0067】
ポリアミド成形コンパウンドは充填材及び強化材を、それぞれ総ポリアミド成形コンパウンドに対して0ないし95重量%、好ましくは20ないし65重量%及び、特に好ましくは25ないし50重量%の量で含む。
【0068】
これにより、10ないし70重量%の繊維状充填材及び3ないし40重量%の粒子状の充填材及び/又は強化材を組合せて追加することが特に有利であることが証明された。
【0069】
もちろん、本発明の熱可塑性ポリアミド成形コンパウンドは、更に、当業者に一般に知られた通常の添加剤を単独又は組合せて含んでよく、前記添加剤は衝撃強さ剤、異質のポリマー、接着剤、防炎剤、ガラス繊維及び炭素繊維のような補強剤、紫外線又は熱に対する安定剤、耐候安定剤、鉱物、加工助剤、結晶化促進剤又は結晶化遅延剤、抗酸化剤、流れ助剤、滑沢剤、離型剤、可塑剤、防火剤、顔料、着色物質及び標識物質、及びカーボンブラック又はグラファイト又は層状のナノ粒子のような充填材を含む群から選択され、それぞれの用途に必要とされる、ポリアミドに関して公知のすべての添加剤に相当する。
【0070】
ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ANポリマー及びABSポリマー、官能基を有するコポリオレフィン及びイオノマーのような他の通常のポリマーもまた上記の(コ)ポリアミド又はその混合物に追加してよい。
【0071】
更なる添加剤として、衝撃強さ調整剤が、本発明の熱可塑性ポリアミド成形コンパウンドに加えられる。これらは、例えば、アクリル酸を含むか、又は、無水マレイン酸でグラフトされている場合もある、低ガラス転移点を持つポリオレフィンをベースとしたコポリマーである。特に、エチレン-プロピレン-コポリオレフィン又はエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)又はアクリルゴムのような衝撃強さ調整剤をここで指摘することができる。
【0072】
好ましい態様において、成形コンパウンドは更にナノサイズの充填材を含む。本発明の特別な態様において、ナノサイズの充填剤は二酸化ケイ素又は二酸化ケイ素水和物のいずれかである。前記ポリアミド成形コンパウンドにおいて、あるナノサイズの充填物が、均一に分散した層状の物質として、1つの態様において示されている。
【0073】
充填物として、常磁性(long term magnetic)又は磁性金属化合物及び/又は合金を更に用いてよい。これらは、好ましくは、ポリアミド成形コンパウンドに60ないし95重量%の量で含まれている。
【0074】
充填物として、希土類金属/鉄/ホウ素タイプの金属又は合金が好ましく、特に希土類金属粉(イットリウムを含む)が好ましく、「ネオジム」としても記載される、ネオジム/鉄/ホウ素が特に好ましい。
【0075】
磁性体として知られる合金、サマリウム/コバルト及びサマリウム/ツリウム、バリウムフェライト及びストロンチウムフェライトのようなフェライト、及びカルボニル鉄粉も有利である。適切な金属粉は、例えば、デルコ・レミー(Delco Remy)社、米国、46013、インディアナ州、アンダーソン、の会社概要DR 9632 MAGに記載されており、マグネクエンチ(Magnequench)(登録商標)プロダクツ(Products)の名称を持つ。
【0076】
高品質の磁石製品は、特に、Nb/Fe/B;SmTm、例えばSm2Tm17;SmCo、例えばSmCo5である。しかし、原理的には、すべての磁化金属粉及び/又は磁性金属粉及び磁性金属化合物が可能である。したがって、それらがコートされていることは、有利であるが必要ではない。フェライトの適切なコートは、現在の技術の現状で可能である。
【0077】
更に、本発明は上記の成形コンパウンドで製造可能な成形品を含む。従って、本発明の特許出願人が、成形品が6 %未満のひずみ、好ましくは3 %未満のひずみを有することを実証できたということは、特に、強調されるべきである。
【0078】
本発明は、最終的に、上記の成形コンパウンドの使用に関する。本発明の成形コンパウンドは、例えば、射出成形、押出し成形、引出し成形、射出ブロー成形又は他の成形技術により、繊維、フィルム、パイプ、中空体のような成形体、又は、半完成品又は既成の部品を特に製造するために使用される。前記成形コンパウンドは、好ましくは充填成形物の製造に用いられる。
【0079】
本発明の成形コンパウンドは、例えば携帯電話のケーシングのような、優れた表面を有する薄壁のハウジングの製造又は、例えばポリマー磁石のような高充填システムを製造するのに特に適している。
【0080】
以下の実施例により、本発明が限定することなく説明される。
【実施例】
【0081】
実施例及び比較例
使用される物質:
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
ガラス繊維
Eガラス、ポリアミドタイプ、直径10μm、長さ4.5 mm
【0086】
安定剤
イルガノックス(Irganox)245:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Speciality Chemicals)社製品
トリエチレングリコール ビス(3-(3’-ターシャリー-ブチル-4’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)プロピオネート
【0087】
ホスタノックス(Hostanox)PAR24:クラリアント(Clariant)社製品
トリス(2,4-ジ-ターシャリー-ブチルフェニル)フォスファイト
【0088】
本発明の帯電防止の成形コンパウンド(VB1及び2、及びB1ないしB5も)は、コペリオン(Coperion)社のバスコニーダー(Buss Co-Kneader)MDK46に基づき、240ないし300℃の範囲の温度で製造した。それによりポリマー、安定剤及びオリゴマーを計量し、押出し機に送り込み、及び、ガラス繊維及びカーボンブラックを溶融物に入れた。
【0089】
VB3及びVB4、及びVB6及びVB7も含む、本発明の成形コンパウンドを、ベルナーアンドフライデアラー(Werner & Pfleiderer)社のツインスクリューニーダー(twin-screw kneader)ZSK25により240ないし300℃の範囲の温度で製造した。これにより、ポリマー、安定剤及びオリゴマーを計量し、押出し機に送り込み、及び、ガラス繊維をもまた溶融物に入れた。
【0090】
製造された成形コンパウンドは、以下のようにテストされた。
MVR: (メルトボリュームレート(Melt volume rate))ISO 1133に従い275℃で
SZ: ISO 179/1eUに従う衝撃強さ
KSZ: ISO 179/1eAに従うノッチ衝撃強さ
OWS: IEC60093による100×100×3 mmのプレートに於ける表面抵抗率
【0091】
降伏応力、破断伸び及び引張弾性率をISO527に従って測定した。
【0092】
サワーガステスト:
過酸化物に対する耐性を、1 mmの引張り衝撃試験片で試験した。この目的のために、試験体を、42.5 %トルエン、42.5 %イソオクタン及び15 %メタノールの混合物で、180 mmol/lのターシャリー-ブチルヒドロペルオキシド及び10 mg Cu2+/lを更に含む混合物に、60℃で15日間保存した。試験片の破断伸びを、保存の前と後で比較する。破断伸びのパーセント変化を表に示す。
【0093】
流動長をアルバーグ(Arburg)射出成形機(型式:アルバーグ-オールラウンダー(Arburg-ALLROUNDER) 320-210-750)により測定した。1.5 mm×10 mmの大きさのスパイラルフローを、化合物温度が270℃及び金型の温度が80℃で準備した。
【0094】
「表1」は、実施例B1ないしB3、及び比較例VB1の組成物、及び、製造されたポリアミド成形コンパウンドの特性をもまた要約したものである。
【0095】
「表2」は、実施例B4及びB5、及び比較例VB2の組成物、及び、製造されたポリアミド成形コンパウンドの特性をもまた要約したものである。
【0096】
「表3」は、実施例B6及びB7、及び比較例VB3及びVB4の組成物、及び、製造されたポリアミド成形コンパウンドの特性をもまた要約したものである。
【0097】
「表4」は、実施例B8ないしB15、及び比較例VB5ないしVB7の組成物、及び、製造されたポリアミド成形コンパウンドの特性をもまた要約したものである。
機械値は乾燥状態で測定した。
【0098】
図は、ひずみの測定が行なわれる射出成形品を示す。
【0099】
使用されたホモポリアミドPA MACM12(0.5 % m-クレゾール中)の溶液粘度は1.67であり、コポリアミドPA6I6Tの溶液粘度は、1.42である。
【0100】
以下の粒子状充填物が用いられた。
【0101】
【表4】

【0102】
射出成形した「訪問者カードホルダー」により、ひずみを測定した(これに関しては、図1及び図2を参照)。通常大気(23℃、相対湿度50%)で14日間、保存した後、幅を測定し、道具の大きさに対する比を測る(空洞の幅:90.2 mm)。差が大きい程、ひずみが大きいことになる。成形品はアルバーグ(Arburg)射出成形機(型式アルバーグ-オールラウンダー(ARBURG ALLROUNDER) 320-210-750)により、270℃の化合物温度、及び80℃の金型温度で製造した。結果は「表4」に要約される。
【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】ひずみの測定が行なわれる射出成形品を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
70〜99.5重量%の少なくとも1種類の熱可塑性ポリアミドと、数平均モル質量が800〜5000 g/molであり、少なくとも一部がNH2末端基である塩基性末端基とカルボキシル末端基とを有する、0.5〜30重量%の少なくとも1種類の直鎖又は分枝鎖構造のポリアミドオリゴマーとを含む、ポリアミド成形コンパウンドであって、前記末端基のうちの1種が過剰量に存在し、且つ、該過剰に存在する末端基の濃度が最大で300 mmol/kgである、ポリアミド成形コンパウンド。
【請求項2】
前記過剰に存在する末端基の濃度が最大で100 mmol/kgであることを特徴とする、請求項1記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項3】
前記過剰に存在する末端基の濃度が最大で20 mmol/kgであることを特徴とする、請求項2記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項4】
不足して存在する末端基に対する前記過剰に存在する末端基の割合が少なくとも2:1であることを特徴とする、請求項1乃至3いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項5】
前記塩基性末端基が、第一級、第二級、第三級アミノ末端基又はカルボキシレートから選択されることを特徴とする、請求項1乃至4いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項6】
前記ポリアミドオリゴマーは、ポリアミド形成モノマージアミン及び/又はジカルボン酸及び/又はアミノカルボン酸又はラクタム、並びに、縮合反応に関して単官能的に作用する、アミン及び/又はカルボン酸から選択される構造要素から得られたものであり、前記末端基は合計で少なくとも50%がこれらの単官能性構造要素により形成されることを特徴とする、請求項1乃至5いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項7】
前記末端基の60〜80 %が単官能性構造要素により構成されていることを特徴とする、請求項6記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項8】
前記構造要素が、阻害されたアミン及び/又は立体阻害されたフェノールであることを特徴とする、請求項6又は7に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項9】
前記構造要素が以下の化学式(I)ないし(IV)で規定されることを特徴とする、請求項8記載のポリアミド成形コンパウンド。
【化1】

【請求項10】
少なくとも1つの前記熱可塑性ポリアミドが、ポリアミド形成モノマージアミン及び/又はジカルボン酸及び/又はアミノ酸又はラクタムから得たものであることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項11】
4ないし44個の炭素原子を有するω-アミノカルボン酸、及び/又は、6ないし20個の炭素原子を有する芳香族ω-アミノカルボン酸が、アミノ酸として選択され、及び2ないし44個の炭素原子を有するこれらのものがジカルボン酸として選択されることを特徴とする、請求項10記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項12】
前記ポリアミドが、PA6、PA66、PA46、PA11、PA12、PA1212、PA1012、PA610、PA612、PA69、PA1010、PA6T、PA6T6I、PA6T66、PA9T、PA10T、PA12T、PA12I、PA6I、6I/6T、MXDI/6I、MXDI/MXDT/6I/6T、MXDI/12I、MACMI/12、MACMI/MACMT/12、6I/MACMI/12、6I/6T/MACMI/-MACMT/12、PACM6/11、PACM12、PACMI/PACM12、MACM6/11、MACM12、MACMI/MACM12、MACM12/PACM12、6I/6T/PACMI/PACMT/PACM12/612、及び/又はその混合物に基づくホモポリアミド及び/又はコポリアミドから選択されることを特徴とする、請求項10又は11に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項13】
前記成形コンパウンドが、総ポリアミド成形コンパウンドに対して、1ないし50重量%の導電性添加剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項14】
前記成形コンパウンドが、総ポリアミド成形コンパウンドに対して、3ないし25重量%の前記導電性添加剤を含むことを特徴とする、請求項13記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項15】
前記導電性添加剤が、カーボンブラック、カーボンナノフィブリル、グラファイト及びその混合物から選択されることを特徴とする、請求項13又は14記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項16】
前記カーボンナノフィブリルが円筒状に存在し、そしてグラファイト層から形成されていることを特徴とする、請求項15記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項17】
前記カーボンナノフィブリルが少なくとも5:1の長さ対直径比を有することを特徴とする、請求項15又は16記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項18】
前記長さ対直径比が少なくとも100:1、特に少なくとも1000:1であることを特徴とする、請求項17記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項19】
前記カーボンブラックが粒子状で存在し、1次粒子サイズが0.005ないし0.2μmにあることを特徴とする、請求項15記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項20】
前記カーボンブラックが、ASTM規格D3037-89に従って測定して200 m2/gを超えるBET比表面積を持ち、ASTM規格D2414-90に従って測定して300 ml/100 gを超えるDBP吸収を持つことを特徴とする、請求項15記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項21】
前記カーボンブラックが、ASTM規格D3037-89に従って測定して300ないし2000 m2/gの範囲のBET比表面積を持ち、ASTM規格D2414-90に従って測定して350ないし1000 ml/100 gの範囲のDBP吸収を持つことを特徴とする、請求項15記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項22】
前記成形コンパウンドが、総ポリアミド成形コンパウンドに対して、最大95重量%の充填材及び/又は強化材、及び更に添加剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至21いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項23】
前記充填材及び/又は強化材が繊維状物質及び/又は粒子状物質から選択されることを特徴とする、請求項22記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項24】
前記成形コンパウンドが、総ポリアミド成形コンパウンドに対して10ないし70重量%の繊維状の充填材並びに3ないし40重量%の粒子状の充填材及び/又は強化材を含むことを特徴とする、請求項22及び23いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項25】
少なくとも2つの充填材及び/又は強化材の混合物が、充填材及び/又は強化材として用いられることを特徴とする、請求項22乃至24いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項26】
前記充填材及び/又は強化材が、滑石、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、ケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、粉砕した若しくは沈殿した炭酸カルシウム、石灰石、長石、硫酸バリウム、常磁性(long-term magnetic)又は磁性金属化合物及び/又は合金、ガラスボール、ガラス繊維及び/又は更に繊維状充填材及び/又は強化材から選択されることを特徴とする、請求項22乃至25いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項27】
前記更なる補充剤又は添加剤が、衝撃強さ剤、異質のポリマー、接着剤、防炎剤、安定剤、鉱物、加工助剤、結晶化促進剤又は結晶化遅延剤、抗酸化剤、流れ助剤、滑沢剤、離型剤、可塑剤、防火剤、顔料及び/又は着色物質及び標識物質から選択されることを特徴とする、請求項1乃至26いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項28】
前記塩基性末端基が過剰に存在することを特徴とする、請求項1乃至27いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項29】
前記カルボキシル末端基が過剰に存在することを特徴とする、請求項1乃至27いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項30】
前記成形コンパウンドが、少なくとも1種類のアモルファス又は微小結晶質のポリアミドを含むことを特徴とする、請求項1乃至29いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項31】
前記成形コンパウンドが、少なくとも1種類の部分的に結晶質のポリアミドを含むことを特徴とする、請求項1乃至29のいずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項32】
前記成形コンパウンドが、少なくとも1つのアモルファス又は1つの微小結晶質のポリアミド及び少なくとも1種類の部分的に結晶質のポリアミドの組合せを含むことを特徴とする、請求項1乃至29いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンド。
【請求項33】
5 %未満のひずみを有し、好ましくは3 %未満のひずみを有することを特徴とする、請求項1乃至32いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンドより製造可能な成形品。
【請求項34】
射出成形、押出し成形、引出し成形、射出ブロー成形又は他の成形技術により、繊維、フィルム、パイプ、中空体又は他の半完成品又は既成の部品のような成形体を製造するための、請求項1乃至32いずれか一項に記載のポリアミド成形コンパウンドの使用。

【公表番号】特表2008−540779(P2008−540779A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511569(P2008−511569)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002725
【国際公開番号】WO2006/122602
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507233291)エムズ−ヒェミー・アクチェンゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】