説明

改善された結晶サイズおよび密度を提供する薬剤送達バルーンの核形成

薬剤送達バルーンは、その上に薬剤の小さな粒子サイズの稠密に充填された結晶を有する。非晶質薬剤コーティングはバルーン表面に適用され、結晶を提供するためにアニーリングされる。バルーン表面は、高密度で小さなサイズを有する結晶を提供するために、アニーリング工程において、薬剤結晶の形成を誘発するために核を形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された結晶サイズおよび密度を提供する薬剤送達バルーンの核形成に関する。
【背景技術】
【0002】
パクリタキセル含有製剤で被覆されたバルーンは公知である。いくつかの場合において、パクリタキセルは、バルーンまたはバルーン上に配置されたコーティングに直接適用される。他の場合においては、パクリタキセルは、バルーンへの付着および/または拡張時のバルーンからの放出を促進するポリマー、造影剤、界面活性剤、または他の小分子であり得る賦形剤と共に製剤化される。前記製剤は、典型的には溶液から適用され、噴霧、浸漬、または折り目線に沿ってピペットによってのいずれかで、バルーン全体または折り畳まれたバルーンに適用され得る。
【0003】
バルーン表面からの高い放出速度を提供するパクリタキセル被覆バルーンが最近開発されている。しかしながら、これらのバルーンは、依然として送達部位における組織への予測可能な量の薬剤の送達を提供せず、また長期間にわたる予測可能な治療薬剤の組織内濃度も提供しない。
【0004】
本出願人によるパクリタキセル被覆バルーンの先の調査は、バルーン上における薬剤の形態(morphology)を制御することが望ましく、パクリタキセル二水和物の結晶形は組織滞留時間の延長を促進し、結晶性パクリタキセル二水和物(crystalline dihhydrate paclitaxel)の形成はバルーンの蒸気アニーリングの使用によって制御することができることを示した。この研究は2009年4月24日出願の米国特許出願第61/172629号によってより詳細に記載されおり、前記出願は参照により余すところなく本願に援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バルーン上に結晶性薬剤を形成する場合、改善された送達特性を提供する高密度かつ小型の薬剤結晶をバルーン上に生成するためには、バルーン上における薬剤の堆積の条件が影響を受け得ることが判明している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、パクリタキセルまたは別の薬剤の結晶粒子サイズ(crystalline particle size)を制御するためにバルーン上に核形成部位を提供する、薬剤送達バルーンを形成する方法について記載する。粒子サイズの制御は、薬剤の移行(transfer)および溶解に影響を及ぼす。本発明の他の態様は、そのような方法によって生成され得るバルーンに関する。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、薬剤を含有するコーティングを上部に有する薬剤送達バルーンを製造する方法に関する。前記薬剤は特有な非晶形および結晶形を有する。前記方法は、
a)非晶形にある薬剤のコーティングを適用する適用工程と、
b)コーティングされたバルーンをアニーリングして、バルーン上においてインサイチューで前記薬剤の結晶形を生成する工程と
を有する。
【0008】
前記適用工程a)において、前記薬剤コーティングは、前記アニーリング工程において薬剤結晶の形成を誘発するために核を形成されているバルーン表面に施される。
バルーン材料の成分の核形成剤としてのブルーミングを誘発するためにバルーンの蒸気前処理を伴う特定の実施形態を含む、バルーンに核を形成する様々な技術が記載される。
【0009】
他の実施形態において、本発明は、バルーン上にほぼ均一に分散された100μm長未満の平均長の結晶性薬剤粒子の層を備える薬剤送達バルーン、またはバルーンの表面の少なくとも一部の上に稠密に充填された100μm未満の平均長の結晶性薬剤粒子の層を備えた薬剤送達バルーンに関する。
【0010】
さらに、本発明の他の態様は、以下の図面、好ましい実施形態の詳細な説明、および/または特許請求の範囲に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】未処理のバルーン上にコーティングされ、蒸気アニーリングによって結晶化させたパクリタキセル/PVPの結晶サイズを示す拡大画像。
【図2】本発明の一態様に従って製造されたバルーンを示す拡大画像。
【図3a】図2のバルーンのバルーン表面の一部のSEM画像。
【図3b】図3aに類似したコーティングのより高解像度の画像。
【図4】市販の従来技術のシークエント プリーズ(Sequent Please)(商標)カテーテルの、折り畳まれたバルーンから得られた断面のSEM画像。
【図5a】本発明の一態様に従って製造されたバルーンの折り目領域を示す断面図。
【図5b】図5aにおいて見られるようなバルーンの表面領域を示す図。
【図5c】本発明の一態様に従って製造されたバルーン表面領域の表面領域を図5bより低い倍率で示す図。
【図6a】異なる時間間隔にわたる蒸気プレアニーリング後のPebax(登録商標)バルーン表面のSEM画像。
【図6b】異なる時間間隔にわたる蒸気プレアニーリング後のPebax(登録商標)バルーン表面のSEM画像。
【図6c】異なる時間間隔にわたる蒸気プレアニーリング後のPebax(登録商標)バルーン表面のSEM画像。
【図7a】実施例2に記載するような、扇状形態および棒形態を有して、バルーンから管内に留置された薬剤をそれぞれ示す画像。
【図7b】実施例2に記載するように、扇状形態および棒形態を有して、バルーンから管内に留置された薬剤をそれぞれ示す画像。
【図8a】実施例3に記載された流動系実験(flowing system experiment)において得られた様々なサイズ範囲に対する粒子数の結果のグラフ。
【図8b】実施例3に記載された流動系実験において得られた様々なサイズ範囲に対する粒子数の結果のグラフ。
【図8c】実施例3に記載された流動系実験において得られた様々なサイズ範囲に対する粒子数の結果のグラフ。
【図9】実施例4に記載された組織留置モデル実験で見られた生体外組織中濃度の結果のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
パクリタキセル(「Ptx」)のような薬剤は、送達部位における組織滞留時間を最大にするために、薬剤送達バルーンから、結晶形で、または実質的に結晶形で、適切に送達される。しかしながら、コーティングは治療部位への追従(tracking)を可能にするために十分に密着しなければならず、さらにバルーンの拡張によりバルーンへの付着を容易に解放しなければならない。流動系において、組織部位への送達は最大限にされ、全身への損失(非局所的な送達)は最小限にされ、全身で失われる物質は安全上の理由で最小の大きさを有することも望ましい。具体的には、コーティングされたバルーンから失われた粒子が患者の血管毛細管系で引っ掛かる危険性を低減するために、粒子サイズを最小にすることが望ましい。さらに、薬剤粒子のサイズ、分布および結晶化度は、組織内取り込みおよび持続時間に重要な役割を果たす。これらの因子を制御する方法は薬剤送達バルーンを設計する上で重要である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記薬剤は、結晶形および非晶形を有し、望ましくは結晶形において送達される。本発明の実施形態において用いることができる薬剤は、身体に挿入された医療装置からの送達による局所投与に対して治療効果を有し、またそのような多形体の形(polymorph forms)で存在する、あらゆる治療薬または物質であり有る。この態様において、前記薬剤は、賦形剤を有して、または賦形剤なしで、非晶形でバルーン上にコーティングされ、次に、アニーリング工程において所望の結晶形に変換される。前記アニーリング工程は、コーティング中の結晶性薬剤をバルーン上においてインサイチューで成長させる。これは、薬剤送達バルーンの所望の特性により近い、表面上における結晶の充填系を生じる。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、再狭窄を抑制するパクリタキセルまたは別の薬剤、例えば、パクリタキセル類似体および誘導体、ラパマイシン、ラパマイシン類似体および誘導体、エベロリムス、エベロリムス類似体および誘導体、およびそれらの混合物のような、脂肪親和性かつ実質的に水に不溶性の薬剤である。適当であり得る他の薬剤は、本願において後に明らかにされる文献に記載されている。薬剤の混合物、例えばパクリタキセルおよびラパマイシン、またはそれらの類似体または誘導体が使用されてもよい。前記薬剤は、適切には、バルーンに適用された後に、溶媒または溶媒蒸気による処理によって結晶形を形成することができるものである。
【0015】
いくつかの実施形態は、アニーリング工程の間に結晶化を誘発するために核を形成されたバルーンに、非晶質薬剤コーティングを適用することをさらに伴う。バルーンの核形成は、バルーン表面に特定の肌理の形成(texturization)を行うことによって、特定の薬剤の結晶化を誘発するのに有効な核形成剤でバルーンを前処理することによって、核形成剤として機能するバルーン基材の成分のバルーン表面への移動(ブルーミング(blooming))の誘発によって、またはバルーン形成、エージングまたは薬剤コーティング処理の処理条件下においてそのようなブルーミングが本質的に生じる薬剤送達バルーンの材料を用いることによって、提供され得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、薬剤は賦形剤と共に製剤化される。賦形剤は、バルーンへの付着および/または拡張の際のバルーンからの放出を促進する、薬剤含有層に対する添加物である。前記賦形剤は、ポリマー、造影剤、界面活性剤または他の小分子であってもよい。少なくともいくつかの実施形態において、前記薬剤は、賦形剤中に実質的に不溶性である。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記賦形剤は、薬剤移行時に送達装置上に残存し得るが、その混合物からの薬剤の有効な移行は許容し得る。いくつかの実施形態において、賦形剤は、賦形剤が装置上に残存するか、最初に薬剤と共に装置から離脱するかにかかわらず、バルーンが拡張した場合に容易に弱る薬剤粒子との弱い相界を提供する。いくつかの実施形態において、賦形剤は、短時間後、例えば2日、1日、12時間、4時間、1時間、30分、10分または1分の間隔を置いた後に、賦形剤が組織において殆どまたは全く検出できないように、留置の過程、または投与の部位における装置からの薬剤の移行の間に、実質的に分解または溶解する。いくつかの実施形態において、留置する間における賦形剤の溶解または分解は、装置が投与の部位に位置する時までに、薬剤含有層に多孔性を与える。
【0018】
用いられ得る添加剤の例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、マンニトールのような糖、イオプロミドのような造影剤、クエン酸アセチルトリブチルのようなクエン酸エステル、トリアセチンのような短鎖(すなわちC〜C)モノ−カルボン酸のグリセロールエステル、および医薬として許容される塩を含むポリマーおよび非ポリマー添加化合物が挙げられる。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記薬剤はバルーンのような装置に適用され、該装置は、典型的には薬剤溶出ステント上またはマイクロカプセル化薬剤粒子中に存在するような放出調整ポリマーを使用することなく、薬剤の一時的な接触送達を組織に直接提供する。
【0020】
一部の実施形態において、前記薬剤は、装置の投与部位への留置の間における損失を低減するように機能するが、留置の過程において、または投与部位における薬剤の装置からの移行の間に実質的に分解する保護ポリマー層によってコーティングされ得る。適切には、そのような保護層は、0.5μm以下、0.1μm以下または0.01μm以下の厚さを有する。良好な水への溶解性と、実用的な保護を提供するのに充分なようにコーティングの溶解を遅延させるのに十分な分子量を有するポリマーまたはコポリマーが用いられ得る。他の保護層は、それらの層が、薬剤送達の間に、例えばバルーン拡張の際に、微粒子に崩壊するならば、有効であり得る。保護コーティングの厚さは、許容可能な溶解および/または分解プロファイルをもたらすように調整され得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、薬剤含有層は、バルーン拡張の際に薬剤含有層の崩壊を促進するように薬剤の下をくり抜くために、体液中における高い溶解度を有する材料の下層の上に適用される。適当な下層材料の一例はペクチンである。
【0022】
多数の他の添加剤および添加化合物、保護ポリマー層、下層材料および薬剤が下記の文献の1つ以上に記載されている。
米国特許第5102402号明細書、ドロール(Dror)ら(メドトロニック インコーポレイテッド(Medtronic,Inc.));
米国特許第5370614号明細書、アマンドソン(Amundson)ら(メドトロニック インコーポレイテッド);
米国特許第5954706号明細書、サハトジアン(Sahatjian)(ボストン サイエンティフィック コーポレイション(Boston Scientific Corp));
国際公開第WO00/32267号公報、シメッド ライフ システムズ(SciMed Life Systems)、セントエリザベス メディカルセンター(St Elizabeth’s Medical Center)(パラシス(Palasis)ら);
国際公開第WO00/45744号公報、シメッド ライフ システムズ(ヤン(Yang)ら);
アール.チャールズら、「Ceramide−Coated Balloon Catheters Limit Neointimal Hyperplasia After Stretch Injury in Cartoid Arteries」、Circ.Res.2000、第87巻、第282〜288頁;
米国特許第6306166号明細書、バリー(Barry)ら、(シメッド ライフ システムズ インコーポレイテッド);
米国特許出願第2004/0073284号明細書、ベイツ(Bates)ら(クック インコーポレイテッド(Cook,Inc)、MED インスト インコーポレイテッド(MED Inst,Inc.));
米国特許出願第2006/0020243号明細書、スペック(Speck);
国際公開第WO2008/003298号公報、ヘモテック アーゲー(Hemoteq AG)(ホフマン(Hoffman)ら);
国際公開第WO2008/086794号公報、ヘモテック アーゲー(Hemoteq AG)(ホフマン(Hoffman)ら);
米国特許出願第2008/0118544号明細書、ワン(Wang);
米国特許出願第20080255509号明細書、ワン(Wang)(ルトニックス(Lutonix));
米国特許出願第20080255510号明細書、ワン(Wang)(ルトニックス(Lutonix))。
【0023】
すべての上記文献は、参照により余すところなく本願に援用される。
本発明の実施形態によれば、前記薬剤は、所定比率の前記形態型(morphological forms)を生じるように制御された方法で装置上に提供される。
【0024】
前述の薬剤送達バルーンの一部の例では、パクリタキセルは、バルーンまたはバルーン上に配置されたコーティングに直接適用されている。他の場合においては、パクリタキセルは、バルーンへの付着および/または拡張の際のバルーンからの放出を促進する、ポリマー、造影剤、界面活性剤、または他の小分子であり得る賦形剤と共に製剤化されている。前記製剤は、典型的には溶液から適用され、噴霧、浸漬、または折り目線に沿ってピペットによってのいずれかで、バルーン全体または折り畳まれたバルーンに適用され得る。
【0025】
いくつかのポリアミドブロックコポリマーバルーン(例えばPebax(登録商標)6333、7033、7233のようなPebax(登録商標)ポリマーから製造されたバルーン)をエタノール蒸気に晒すことにより、Pebax(登録商標)ポリマー中に存在するラウリルラクタム(残存単量体、二量体および三量体)がバルーンの表面において結晶化することが分かった。これは以下に記載する図6a〜図6cに示されている。ラウリルラクタムは、図6bにおいて小さな棒状結晶として見られ、より長いアニーリング時間では四角形結晶が観察され得る(図6c)。ラウリルラクタム結晶はパクリタキセルの結晶化に対して核形成剤として作用し得ることが判明した。ラウリルラクタム結晶の存在は、核形成部位を提供し、よって、増大した数の、従ってより小さな結晶を提供する。結晶の数および大きさはプレ蒸気アニーリング時間の制御によって制御することができる。
【0026】
Pebax(登録商標)ポリマー中に存在する内蔵の核形成剤を活用することにより、パクリタキセルの結晶の大きさを制御する好都合な方法が提供されるが、本発明は核形成剤としてラウリルラクタムに限定されない。他の核形成剤を用いることができる。例えば、結晶性核形成剤(粒子)を浸漬被覆溶液に添加したり、またはプレコート中に適用したりすることができる。このように、核形成剤の濃度を正確に制御することができる。可能な核形成剤は、薬剤コーティングを施すために使用される溶媒中では低い溶解度を有する、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、糖などのような、既に薬剤賦形剤として用途を見出している有機または無機結晶性水溶性化合物である。パクリタキセルのような脂肪親和性薬剤に対しては、適当な核形成剤は恐らく有機化合物である。いくつかの実施形態において、前記核形成剤は非活性成分のFDAデータベース上に列記された化合物である。核形成剤化合物は、該化合物が薬剤適用工程において微粒子の形で残存し、したがって非常に低濃度(ng〜μg)で微粒子としてコーティングされ得るように、望ましくは浸漬被覆溶媒中において不溶性である。バルーンの留置の際に血液中に溶解するように、水溶性化合物が望ましい。
【0027】
いくつかの実施形態において、微粒子核形成剤は、表面に添加されるか、あるいはブルーミングまたは他の方法によって生成されるかにかかわらず、薬剤コーティングの適用の前に、基材上に、約10粒子/mm〜約5000粒子/mm、または約100粒子/mm〜約2000粒子/mmの密度で提供される。微粒子核形成剤の大きさは変化し得る。いくつかの実施形態において、微粒子核形成剤は、約10nm〜約20μm、または約100nm〜約10μmの寸法範囲にあるその主要寸法を有する。
【0028】
核形成部位を形成する別の可能な方法は、核形成部位として作用し得るマイクロメートル(μm)またはナノメートル(nm)スケールの特徴的形状(features)によってバルーン表面に肌理を形成する(texture)ことである。有機化学の分野では、溶液からの結晶化による有機化合物の精製の際に、内壁上に引っかき傷を有するガラス容器を用いることが結晶化のための核形成部位として作用し得ることが知られている。バルーン表面は、肌理が形成されたバルーン型の使用またはレーザーによる肌理の形成によるなどの多くの方法で肌理が形成される。
【0029】
いくつかの実施形態において、チャンバ内で溶媒が気化する速度およびバルーンが容器内に存在する時間は、薬剤コーティング微細構造の耐久性にとって重要であり得る。例えば、一定量の溶媒が、小さなペトリ皿で、蒸気アニーリングチャンバの底部に加えられ、そのチャンバ内にバルーンカテーテルが4時間にわたって保持された場合、そのコーティングは、最初にアニーリングチャンバがアニーリングチャンバの底部をエタノールで被覆することによって生じたより大きな表面から体積源までエタノール蒸気で飽和された後にアニーリングチャンバに加えられたバルーンと比較して、後の折り畳みおよびバルーン保護物質適用工程において扱われる間に剥離に抵抗する改善された耐久性を有することが観察された。いくつかの実施形態において、体積対表面積の比(volume to surface ratio)(ml/cm)は、約35〜約75、例えば約45〜55であり得る。
【0030】
バルーン上に結晶性薬剤を形成するための蒸気アニーリング時間は広範にわたり、例えば、約5分〜約24時間、またはそれ以上である。代表的な時間は、少なくとも30分から約16時間以内であり得る。適切な溶媒は、バルーンを攻撃することなく、前記薬剤の結晶化を誘発するものである。いくつかの実施形態において、アルコール溶媒、例えばC〜Cアルコールが用いられる。
【0031】
蒸気アニーリング工程の後、バルーンカテーテルは、真空オーブン中において、または周囲条件への曝露によって、乾燥させられ得る。いくつかの実施形態において、真空乾燥工程はまた、周囲乾燥条件と比較して、コーティングの耐久性の改善に寄与し得る。
【0032】
以下の非限定的な実施例は、本発明および従来技術の態様を説明する。
【実施例1】
【0033】
浸漬被覆およびアニール工程
(a)扇状結晶形態
95/5(wt/wt)のTHF/IPA中におけるパクリタキセル/PVP(55K MW)(95/5 wt/wt)の20%溶液を調製する。カンタム マーヴェリック(Quantum Maverick)バルーン(直径3.0mm×長さ16mm、Pebax(登録商標)7233)を、膨張した状態で、前記パクリタキセル溶液中に浸漬し、取り出し、室温かつ真空下において乾燥させることによって被覆して、約450μgのドライコート重量を得る。この時点におけるコーティングは非晶質ガラスである。バルーンカテーテルを9リットルのガラスチャンバ内に配置する。前記チャンバは、16gの190プルーフのエタノールで充填される。前記チャンバの底部におけるエタノールの表面積は176cmである。前記カテーテルをエタノールの上方に吊り下げる(液体エタノールと接触させない)。次に、前記チャンバを密閉し、室温で4〜16時間にわたって蒸気アニール工程を進行させて、パクリタキセルの結晶化を引き起こす。前記薬剤の結晶形はパクリタキセル二水和物である。
【0034】
前記結晶は扇状であり、一見したところ球晶の、大型の(直径>100μm、典型的には、直径200〜1000μm)の結晶である。図1は例示である。
(b)小さな棒状結晶形態
未被覆のカンタム マーヴェリック バルーン(直径3.0mm×長さ16mm)を、飽和エタノール蒸気を含む密封されたチャンバ内に一晩配置する。次にバルーンを(a)で上述したように浸漬被覆する。この時点におけるコーティングは非晶質ガラスである。被覆したバルーンカテーテルを、(a)で上述したようにエタノール中で蒸気アニーリングする。
【0035】
結晶は棒状体(rods)または針状晶(needles)であり、多くの場合、一団になって、はるかに短い長さ(10〜60μmの長さ)を有する星状または交差パターンに形成されている(laid down)。図2は例示的な表面の画像であり、図3aおよび図3bは結晶状粒子の「棒状」構造を示す実例となる拡大画像を提供している。
【0036】
図6a〜図6cについて述べると、これらの図はPebax(登録商標)7233から製造されたバルーンの表面のSEM画像であり、それぞれ30分間、1時間、16時間のバルーン表面の前処理の効果を示している。図6aは、エタノール蒸気アニール30分後では、バルーン表面はまだ目に見えるトポグラフィーは有していないことを示している。しかしながら、ラウリルラクタムのブルーミングは1時間の画像(図6b)において目に見え、16時間の画像(図6c)では非常によく発現している。
【0037】
バルーンが、溶媒処理なしでラウリルラクタムをブルーミングするPebax(登録商標)6333から製造されている場合には、非晶質パクリタキセルコーティングが蒸気処理を受けると、バルーンの蒸気アニール前処理なしでも、棒状形態のパクリタキセル結晶が生成される。しかしながら、バルーンが、例えばTHFのようなラウリルラクタムを溶解する溶媒で抽出され、次いで抽出されたバルーンが実施例1aにおけるように処理される場合には、扇状結晶形態がPebax(登録商標)6333上に生成され得る。
【0038】
図4は市販の従来技術であるビー.ブラウン(B.Braun)によって販売されているシークエント プリーズ(Sequent Please(商標))バルーンカテーテルの断面のSEM画像である。前記バルーンカテーテルはパクリタキセル/イオプラミド(iopramide)コーティングを有する。前記画像は折り畳まれたバルーンを通って得られており、折り目領域において小さな棒状結晶を示しているが、それらの棒状結晶は、表面との非常に不十分な結合を示しており、多くの結晶が表面に平行ではなく、表面から外側へ延びて、バルーン折り目の下の空間を緩く充填するように成長しているように見える。
【0039】
図5aは、上記の実施例1bの方法で製造されたバルーンの折り目を通る断面を示している。コーティングの結晶が、特にバルーンの平面に関して、稠密に充填されていることが分かり得る。該コーティングは薄く(実質的に10μm未満)、バルーン表面に平行な結晶の高密度充填により、比較的堅牢である。
【0040】
図5bは、上記の実施例1bの方法で製造されたバルーンの表面を示している。
図5cは、折り畳み状態からの膨張後における、実施例1bの方法で製造されたバルーンの表面を示している。折り畳み状態からの膨張後における表面上の均一な結晶構造に注目されたい。
【実施例2】
【0041】
大小のパクリタキセル結晶形態の管内における留置
この例は、管内留置卓上試験を用いて、インビトロの性能に対するパクリタキセル結晶の大きさの影響を示す。バルーンは、下記手順を用いて、折り畳まれ、親水性ポリウレタン内に留置される。管を37℃の水中に配置する。折り畳んだバルーンを前記管内に配置し、1分間浸漬した後に膨張させる。前記管はバルーンの留置中に20%の過剰拡張を生ずるような大きさに形成されている。膨張を1分間維持し、15秒間にわたって真空に引いて、バルーンを管から取り出す。前記管を水から取り出し、乾燥させ、撮像する。前記管上に留置された薬剤の画像を図7aおよび図7bに示す。
【0042】
2つの結晶コーティング構造を試験した。図7aを調製するために用いたバルーンは、図1に示したバルーンに類似した大きな扇状結晶を有した。図7bを調製するために用いたバルーンは、図3aおよび図3bのそれに類似した小さな棒状結晶構造を有した。
【0043】
大きな扇状結晶を備えたバルーンは、図7bにおいてはっきり見えるより小さな薬剤粒子と比較して、相応して大きな粒子を管(図7a)に移行させた。棒状粒子を有するバルーンのより小さな粒子は、これらのバルーンの追従および留置の最中に全身に放出されるコーティングに関して、より安全になるものと考えられる。
【実施例3】
【0044】
微粒子試験
下記方法を用いて、薬剤被覆バルーンカテーテルについて微粒子試験を行なった。バルーンカテーテル(各型についてN=3)を、湾曲ガラス動脈モデルを介して親水性ポリウレタン管(人工動脈)内へ追従させた(tracked)。前記動脈モデルは、試験中に水流(流量:70mL/分)が維持される閉ループシステムの一部である。前記流動ループはレーザー粒子計数器に接続される。バルーンをポリウレタン動脈まで追従させる間に粒子数を得る。留置の前に2分間にわたって粒子数を得る。バルーンを12気圧で30秒間にわたって留置する。次に、留置後の2分間にわたって粒子数を得る。10〜25μm、25〜50μmおよび50〜125μm粒子サイズビンに対する合計粒子数を測定する。3つの型を試験した。「Ptx扇(Ptx Fan)」は、コーティングの後適用蒸気アニーリングによって非晶質パクリタキセルコーティングから調製された、Pebax(登録商標)7233バルーン上において扇状形態を有するパクリタキセルコーティング(賦形剤なし)であった。「Ptx棒(Ptx Rod)」は、バルーンの蒸気前処理、非晶質パクリタキセルコーティングの適用、および次いでコーティングを結晶化させるための後処理によって調製されたPebax(登録商標)7233バルーン上において棒状形態を有するパクリタキセル(賦形剤なし)であった。「シークエント プリーズ(Sequent Please)」は、パクリタキセル/イオプラミド(iopramide)コーティングを有するビー.ブラウン(B.Braun)によって販売されている従来技術の薬剤送達バルーンカテーテルであった。すべてのバルーンは約3μg/mmのパクリタキセル薬剤含量を有した。図8a〜図8cは粒子数の結果を示している。2つのパクリタキセル粒子形態のうち、棒状形態は追従/留置の間に、より少数の粒子を生じる。双方のパクリタキセル形態(棒および扇)は、市販の比較対照よりも大幅に少ない粒子数を与える。前記結果は、蒸気アニールによる非結晶コーティングの結晶化によって結晶性コーティングを形成することにより、改善されたコーティング特性をもたらすことを示していると考えられる。
【実施例4】
【0045】
Ex−Vivo薬剤組織内濃度
薬剤被覆バルーンカテーテルを、媒体(80%のデュベッコの改変イーグル培地(Dubecco’s Modified Eagle media);20%ウシ胎児血清)中、37℃、40mL/分の流動条件下で、体外培養されたブタ動脈内に留置した(1分間の膨張)。留置後、0時間、1時間後および4時間後、動脈をLC−MSによって全薬剤含量について分析した。以下のコーティング製剤:パクリタキセル結晶体(扇状);パクリタキセル結晶体(棒状);パクリタキセル/クエン酸アセチルトリブチル混合物(85/15 wt/wt)−(扇状);およびパクリタキセル/クエン酸アセチルトリブチル混合物(85/15 wt/wt)(棒状)をPebax(登録商標)7233バルーン上で試験した。薬剤含量はすべての製剤について約3μg/mmであった。薬剤組織の結果を図9に示す。
【0046】
パクリタキセルのみ(棒状)の結晶形態およびパクリタキセル/ATBC(棒状)の結晶形態の双方は、対応するパクリタキセルのみ(扇状)およびパクリタキセル/ATBC(扇状)の形態と比較して、より高い薬剤組織内濃度を示している。留置4時間後において、組織中、約200〜約600ng/mgの薬剤の組織内濃度であった。約300μg/mg超または約400μg/mg超を提供する試料は、特に有利であると考えられる。
【0047】
先の例は、パクリタキセル結晶構造(扇および棒)が微粒子の数および組織内取り込みに影響を与えることを示している。本発明に記載されるような棒状結晶構造は、対照と見なされる比較の市販バルーンと比較して、より少数の粒子と、より高い組織内濃度とをもたらす。蒸気アニーリングによって生成された結晶形態は、バルーンへの良好な付着性、および良好な結晶間の付着性を有する。連続した一体的な非晶質薬剤コーティングの蒸気アニーリングは、薬剤の固相(または半固体)結晶化を生じ、バルーン表面に平行に配向した結晶および堅牢な結晶充填を備えた結晶性コーティングをもたらす。
【0048】
本発明の装置は、静脈および動脈、例えば冠動脈、腎動脈、回腸動脈(illiac arteries)、頚部動脈および大脳動脈を含む末梢動脈を含む脈管通路内に留置され得る。また前記装置は、動脈、静脈、胆管、尿道、卵管、気管支、気管、食道および前立腺を含むが、これらに限定されない他の身体構造内において有利に用いられてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、バルーン上におけるパクリタキセルの薬剤コーティングは、100〜1000μgのパクリタキセル、例えば200〜800μg、300〜600μg、または400〜500μgのパクリタキセルを含有する。いくつかの実施形態において、バルーン上における非晶質パクリタキセルの量は、0〜80μg、60μg未満、またはμg30未満であり、残りのものは結晶形である。先のパクリタキセル重量(wts)は、3.0mm×16mmのバルーンの有効表面積に基づく。他の大きさについては、単位面積当たりの同一重量の薬剤を提供するための調節を容易に計算することができる。
【0050】
90〜95%エタノールを有する蒸気アニーリング工程において、水分含量は非常に急速な時間枠内で、例えば数分以内に、二水和物結晶形を提供するのに十分である。無水結晶性パクリタキセルを提供することが望まれる場合には、低水分含量を有する溶媒が用いられ得る(例えば200プルーフのエタノール)。いくつかの実施形態において、バルーン(3.0mm×16mm)上における無水結晶性パクリタキセルの量は、0〜200μg、100μg未満、または50μg未満である。いくつかの実施形態において、バルーン上における結晶性二水和物パクリタキセルの量は、50〜1000μg、100〜800μg、200〜600μg、300〜500または350〜450μgである。いくつかの実施形態において、コーティング中の非晶質パクリタキセルの画分は、全パクリタキセル重量に基づいて、0〜25%であり、例えば、約1%、約2%、約3%、約5%、約6%、約8%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約22%、または約25%である。いくつかの実施形態において、無水結晶性パクリタキセルの画分は、全パクリタキセル重量に基づいて、0%〜約99%であり、例えば1〜95%、5〜80%、約1%、約2%、約3%、約5%、約6%、約8%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、または約80%である。いくつかの実施形態において、二水和物結晶性パクリタキセルの画分は、全パクリタキセル重量に基づいて、1%〜100%であり、例えば、1〜99%、5〜95%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%である。
【0051】
本出願の任意の箇所において挙げられた米国特許文献を含むすべての公開文書は、参照により、余すところなく明示的に本願に援用される。本出願の任意の箇所において挙げられた、いかなる同時係争中の特許出願もまた、参照により、余すところなく明示的に本願に援用される。
【0052】
上記の例および開示は、例示であり、網羅的なものではないことが意図される。これらの例および記載は、当業者に対して、多くの変形例および別例を示唆するであろう。これらの別例および変形例はすべて特許請求の範囲内に含まれることが意図され、特許請求の範囲では、「備える(comprising)」という用語は「含むが、それに限定されるものではない」ことを意味する。当業者は、本願に記載した特定の実施形態に対する他の均等物を認識し得、その均等物もまた本願に添付された特許請求の範囲によって包含されることが意図される。さらに、本発明は従属請求項の特徴の他の可能な組み合わせを有する他の実施形態も明確に対象とするものと認識されるべきであるように、従属請求項に示された特定の特徴は本発明の範囲内において他の方法で互いに組み合わせることができる。例えば、請求項を公開する目的のために、管轄内において多数項従属形式が認められる形式である場合には、従属する任意の従属請求項は、そのような従属請求項に引用されるすべての既述事項を有する全ての先行請求項に対して多数項従属形式に書き換えられるものと解釈されるべきである。多数項従属クレーム形式が制限される管轄においては、後続の従属請求項は、それぞれ、以下のそのような従属請求項において列記される特定の請求項以外の、先行の既述事項を有する請求項への従属を形成する単一項従属クレーム形式に書き換えられるものと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を含有するコーティングを上部に有する薬剤送達バルーンを製造する方法であって、前記薬剤は特有な非晶形および結晶形を有し、前記方法は、
a)非晶形にある薬剤のコーティングを適用する適用工程と、
b)コーティングされたバルーンをアニーリングして、前記バルーン上に前記薬剤の結晶形を生成する工程と、を含み、
前記適用工程a)において、前記薬剤コーティングは、前記アニーリング工程において薬剤結晶の形成を誘発するために核を形成されているバルーン表面に施される、方法。
【請求項2】
前記コーティングされたバルーンは、工程b)において、溶媒蒸気によってアニーリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒蒸気はアルコールおよび水を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記バルーン表面は、前記薬剤のための核形成剤による処理によって核を形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バルーン表面は、薬剤コーティングを適用する前に、バルーン材料中の成分のバルーン表面へのブルーミングによって、核を形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ブルーミングは、薬剤コーティングを適用する前に、バルーン表面の前処理によって促進される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記前処理はバルーンの溶媒蒸気アニーリングを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バルーン材料はポリアミドブロックコポリマーを含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤は賦形剤を有する製剤として装置に適用される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記賦形剤は、水可溶性ポリマー、糖、造影剤、クエン酸エステル、短鎖モノカルボン酸のグリセロールエステルおよび医薬として許容される塩から成る群のうちの1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アニーリング工程において、前記バルーンはアニーリングチャンバ内に配置され、前記アニーリングチャンバにおいて、前記溶媒蒸気は、前記バルーンが該チャンバに入れられる時点で、前記チャンバの温度および圧力において飽和状態に満たない蒸気圧にある、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記チャンバは周囲圧力および周囲温度で維持される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バルーンは、約5分〜約24時間の範囲にある時間にわたって前記溶媒蒸気によってアニーリングされる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アニーリング工程において、前記溶媒蒸気は、約35〜75mL/cmの範囲にあるチャンバ容積対溶媒表面積の比を有するアニーリングチャンバ内に提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記バルーン表面は、バルーンの表面上の微粒子核形成剤によって核を形成され、前記微粒子核形成剤は約10nm〜約20μmの寸法範囲にある主要寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記微粒子核形成剤は、約10粒子/mm〜約5000粒子/mmのバルーン上における密度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記微粒子核形成剤は、約100粒子/mm〜約2000粒子/mmのバルーン上における密度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤は、パクリタキセル、パクリタキセル類似体および誘導体、ラパマイシン、ラパマイシン類似体および誘導体、エベロリムス、エベロリムス類似体および誘導体、およびそれらの混合物のうちから選択される、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤はパクリタキセルである、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法によって生成された薬剤送達バルーン。
【請求項21】
バルーン上にほぼ均一に分散された100μm長未満の平均長の結晶性薬剤粒子の層を備えた薬剤送達バルーン。
【請求項22】
前記結晶性薬剤粒子は1μm〜50μmの範囲にある平均長を有する、請求項21に記載の薬剤送達バルーン。
【請求項23】
バルーンの表面の少なくとも一部分の上に100μm未満の平均長の結晶性薬剤粒子の層を備えた薬剤送達バルーンであって、前記薬剤粒子は、前記一部分の表面にほぼ平行に稠密に積層されている、薬剤送達バルーン。
【請求項24】
前記結晶性薬剤粒子の層は、厚さ10μm未満である、請求項23に記載の薬剤送達バルーン。
【請求項25】
前記結晶性薬剤粒子の層は、厚さ2μm未満である、請求項23に記載の薬剤送達バルーン。
【請求項26】
前記薬剤はパクリタキセルである、請求項20乃至25のいずれか1項に記載の薬剤送達バルーン。
【請求項27】
表面上に結晶性パクリタキセルを保持する薬剤送達バルーンであって、前記バルーンは、動脈モデル系を再循環する閉ループで、レーザー粒子計数器によって、50〜125μmの寸法範囲ビンにおいて計数したときに、バルーンが留置部位へ追従され、該部位で保持され、留置され、除去され、留置後2分間にわたって観察される間の合計4分間に対して、パクリタキセルおよびイオプロミド賦形剤を有する市販の従来技術の対照バルーンの粒子数の50%未満である粒子数を与えることを特徴とする、バルーン。
【請求項28】
前記粒子数は、前記対照バルーンに対して約33%以下である、請求項27に記載のバルーン。
【請求項29】
表面上に結晶性パクリタキセルを保持する薬剤送達バルーンであって、前記バルーンは、再循環体外ブタ動脈組織モデルにおいて、少なくとも300ng/mgの、送達後4時間の組織中における薬剤の組織中濃度を与えることを特徴とする、バルーン。
【請求項30】
前記濃度は少なくとも400ng/mgである、請求項29に記載の薬剤送達バルーン。
【請求項31】
前記薬剤は、賦形剤を有さない製剤として装置に適用される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
薬剤を含有するコーティングを上部に有する薬剤送達バルーンを製造する方法であって、前記薬剤は特有な非晶形および結晶形を有し、前記方法は、
a)非晶形にある薬剤のコーティングを適用する適用工程と、
b)コーティングされたバルーンをアニーリングして、前記バルーン上に薬剤の結晶形を生成する工程と、を含み、
前記適用工程a)において、前記薬剤コーティングは、前記アニーリング工程において薬剤結晶の制御された分散を提供するように核を形成されているバルーン表面に施される、方法。
【請求項33】
前記コーティングされたバルーンは、工程b)において、溶媒蒸気によってアニーリングされる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記溶媒蒸気はアルコールおよび水を含有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記バルーン表面は前記薬剤のための核形成剤による処理によって核を形成される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記バルーン表面は、薬剤コーティングを適用する前に、バルーン材料中の成分のバルーン表面へのブルーミングによって、核を形成される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記ブルーミングは、薬剤コーティングを適用する前に、バルーン表面の前処理によって促進される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記前処理はバルーンの溶媒蒸気アニーリングを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記バルーン材料はポリアミドブロックコポリマーを含む、請求項32乃至38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記薬剤は賦形剤を有する製剤として装置に適用される、請求項32乃至39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記賦形剤は、水可溶性ポリマー、糖、造影剤、クエン酸エステル、短鎖モノカルボン酸のグリセロールエステルおよび医薬として許容される塩から成る群のうちの1つである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記アニーリング工程において、前記バルーンはアニーリングチャンバ内に配置され、前記アニーリングチャンバにおいて、前記溶媒蒸気は、前記バルーンが該チャンバに入れられる時点で、前記チャンバの温度および圧力において飽和状態に満たない蒸気圧にある、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記チャンバは周囲圧力および周囲温度で維持される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記バルーンは、約5分〜約24時間の範囲にある時間にわたって前記溶媒蒸気によってアニーリングされる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記アニーリング工程において、前記溶媒蒸気は、約35〜75mL/cmの範囲にあるチャンバ容積対溶媒表面積の比を有するアニーリングチャンバ内に提供される、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記バルーン表面は、バルーンの表面上の微粒子核形成剤によって核を形成され、前記微粒子核形成剤は、約10nm〜約20μmの寸法範囲にある主要寸法を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項47】
前記微粒子核形成剤は、約10粒子/mm〜約5000粒子/mmのバルーン上における密度を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記微粒子核形成剤は、約100粒子/mm〜約2000粒子/mmのバルーン上における密度を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記薬剤は、パクリタキセル、パクリタキセル類似体および誘導体、ラパマイシン、ラパマイシン類似体および誘導体、エベロリムス、エベロリムス類似体および誘導体、およびそれらの混合物のうちから選択される、請求項32乃至48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記薬剤はパクリタキセルである、請求項32乃至48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
請求項32に記載の方法によって生成された薬剤送達バルーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図8c】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−533338(P2012−533338A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520646(P2012−520646)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038532
【国際公開番号】WO2011/008393
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】