説明

改善された臭気制御系を含む吸収性物品

臭気制御系を備える吸収性物品。前記臭気制御系は少なくとも2つの部類の臭気制御材料を含み、第1部類は少なくとも低揮発性である物質を含み、第2部類は少なくとも高揮発性である物質を含む。前記臭気制御系は前記吸収性物品に、長期の悪臭制御動作を提供するために選択された位置及び量で提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臭気制御系を備えた吸収性物品に関する。臭気制御系は臭気制御材料の部類を含み、1つの部類は低揮発性材料を含み、第2部類は高揮発性材料を含む。臭気制御材料の部類は悪臭低減に関して相乗効果をもたらすように選択されてもよく、臭気制御系は、物品がパッケージから取り出されて使用する準備ができた瞬間から長時間にわたり改善された臭気制御作用を提供するために、吸収性物品の中に配置される。
【背景技術】
【0002】
個人衛生の吸収性物品は当該技術分野において既知である。典型的な例として、生理用ナプキン、パンティライナー、成人用失禁物品、乳幼児用おむつ、ペーパータオル、トイレットペーパー及び顔用ティッシュが挙げられる。そのような物品は体液及び人体から排出されるその他の排出物を吸収及び保持するために使用されることが多い。特に、生理用ナプキン、パンティライナー及び軽い成人失禁用物品のような個人用婦人衛生物品は、粘着手段によって下着のクロッチ部分に当該物品を貼り付けて使用され、通常接着層はバックシートの衣類側の上に設けられ、使用前に粘着剤を露出するために取り除かれる剥離層で保護されている。典型的には、このような流体及び排出物は悪臭及び不快と知覚される。従って、吸収性物品における悪臭を制御及び低減する方法及び材料が開発されてきた。いくつかの例を以下で論じる。
【0003】
この点における初期の基本的参照は欧州特許第510619号である。この文書では広範囲の様々な材料が開示されるが、それらは個人用衛生吸収性物品の特定環境における悪臭低減に有効であることが証明されている。欧州特許第959846号ではポリアクリレート超吸収性剤及びシリカを含むそのような材料が開示される。欧州特許第811387号ではゼオライト及びシリカの臭気制御系を備える吸収性物品が開示される。欧州特許第963186号ではゼオライト、シリカ、及びポリアクリレート超吸収剤を含む臭気制御系が開示される。欧州特許第912149号では吸収性物品の中で臭気制御に使用されるキレート化剤、特に多官能性置換芳香族のキレート化剤が開示される。上記解決策の全ては吸収性物品中で消費者が注目する度合いの悪臭低減を提供できる。しかし、作用特性及び選択された材料のために、限られた種の悪臭化合物を無効化できるのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第510619号
【特許文献2】欧州特許第959846号
【特許文献3】欧州特許第811387号
【特許文献4】欧州特許第963186号
【特許文献5】欧州特許第912149号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、広範囲の様々な悪臭に対して全体論的方式で作用する悪臭制御系を有する吸収性物品の提供が望ましい。特に、長期間の、即ち物品がパッケージから取り出された瞬間に始まって使用中も継続する持続作用を確実なものとすることのできる臭気制御系を有する吸収性物品を提供することが望ましい。望ましくは、臭気制御系は低揮発性である少なくとも1つの部類の臭気制御材料、及び高揮発性である少なくとも別の部類の臭気制御材料を含み、臭気制御系は、物品がパッケージから取り出されるまで、高揮発性臭気制御材料が吸収性物品から発散するのを実質的に防ぐように吸収性物品の中に配置される。特に、接着層によって下着のクロッチ部分に適用されることが意図される物品においては、典型的には、吸収性物品のバックシート上に供えられたパンティ固定用接着剤の層から分離することにより剥離層が取り外されるまで、高揮発性臭気制御材料が吸収性物品から発散するのを実質的に防ぐように吸収性物品の中に配置される。
【0006】
更に、低揮発性臭気制御材料を含む少なくとも1つの部類の材料が、物品の中の悪臭又は悪臭物質に作用することにより悪臭を軽減し、高揮発性臭気制御材料を含む少なくとも他の種類の物質が、典型的には悪臭の知覚を抑える手助けをするために又は心地よい香りを提供するために、特定の鼻受容器官に作用する臭気制御系を有する、吸収性物品を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体透過性トップシートと、バックシートと、トップシート及びバックシートの間に備えられる吸収性コアとのそれぞれが身体に面する面及び衣類に面する面を有し、コアの衣類に面する面は又コア表面積を有する、液体透過性トップシートと、バックシートと、吸収性コアとを提供することにより上記の必要性に取り組む。前記吸収性物品は臭気制御材料の第1部類及び第2部類を含む臭気制御系を含み、該第1部類は少なくとも、コヴァット・インデックス(KI)が1500を超え、好ましくは1550〜1900である材料を含み、該第2部類は少なくとも、コヴァット・インデックスが1500以下、好ましくは900〜1500、より好ましくは1000〜1400である材料を含む。前記臭気制御系の前記臭気制御材料の少なくとも第2部類は、前記吸収性コアの衣類に面する面に、バックシートの身体に面する面に隣接して、少なくとも900mm2、好ましくは900mm2〜2000mm2、より好ましくは900mm2〜1300mm2の表面積、又はこの表面積とコア表面との積割合が少なくとも0.08、好ましくは0.08〜0.2、より好ましくは0.08〜0.1になるような表面積で提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用される用語「吸収性物品」は、非常に広い意味であり、流体及び/又は排出物、特に体液/排泄物を、受容及び/若しくは吸収並びに/又は収容並びに/又は保持することができる物品を含む。本発明に関連する代表的吸収性物品は使い捨て吸収性物品である。
【0009】
本明細書では、用語「使い捨て」は、洗濯、又は別の方法で物品として復元若しくは再利用することを目的としない物品(即ち、それらは1回使用後に廃棄されることを目的とし、好ましくはリサイクルされるか、堆肥化されるか、又は環境に適した方式で処理されることを目的とする)を記述するために使用される。本発明による典型的な使い捨て吸収性物品は、生理用ナプキン、パンティライナー、軽い失禁用製品等のような婦人衛生吸収性物品であり得る。本発明による吸収性物品は又、おむつ、外科用及び創傷包帯及び発汗パッド、失禁パッドも包含し得る。
【0010】
本明細書で用いる時の「使用」は、吸収性物品が実際に着用者の人体に接触する時を開始とする期間を指す。
【0011】
本明細書では、「体液」によって、発汗、尿、経血、膣分泌物等を含むがこれらに限定されない、人体によって生成されるあらゆる流体を意味する。
【0012】
本発明は臭気制御系を含む吸収性物品に関し、該臭気制御系は、典型的には体液及び/又は吸収性物品を構成する材料で発生するか又はそれらの分解の結果生じる広範囲の悪臭物質によって発生する悪臭を低減する。本明細書における臭気制御系は、少なくとも2つの部類の臭気制御材料を包含する。1つの部類のは少なくとも低揮発性である臭気制御材料を含み、第2部類は少なくとも高揮発性である臭気制御材料を含む。本発明の実施形態において、1つの部類の臭気制御材料、典型的には上記の第1部類は、排出物又はその他の悪臭材料の悪臭を抑え(本明細書では「内部的に」作用するとも言う)、一方、典型的には第2部類は鼻の中の受容器官に作用することによってそのような悪臭を抑える。
【0013】
吸収性物品
本発明の吸収性物品は、上述したように、当該技術分野において既知のあらゆる種類の個人用衛生吸収性物品であり得、特に婦人衛生吸収性物品であり、典型的には液体透過性トップシートと、バックシートと、それらの間の吸収性コアとを含む。これら要素のそれぞれ、並びに吸収性物品に存在するあらゆるその他の任意の層は、身体に面する面、即ち着用者に面する面、及び衣類に面する面、即ち外に面する面を有しており、これらの面は、製品の使用中に着用者の体及び衣類にそれぞれ面する面に対応している。
【0014】
当該技術分野において既知であるように、トップシートは広範囲の材料から製造されてもよく、該材料には織布及び不織布材;高分子材料、例えば孔あき成形熱可塑性フィルム、孔あきプラスチックフィルム、及びハイドロフォーミングされた熱可塑性フィルム;多孔質発泡体;網状発泡体;網状熱可塑性フィルム;及び熱可塑性スクリムが挙げられるがこれらに限定されない。トップシートは典型的には、本発明の吸収性物品における固有の個別要素であり、1つ以上の層を含む。しかしながら、本発明による吸収性物品では、トップシートは使用中にユーザーの体と直接接触する層又は要素に対応するように意図されており、例えば、トップシートは吸収性コアの最上層であり得、実質的にコアそのものの一部である。
【0015】
吸収性コアは、概して圧縮性であり、順応性があり、着用者の皮膚に刺激がなく、且つ尿及び他の特定の身体排出物などの液体を吸収し保持することが可能な任意の吸収部材であり得る。吸収性コアは、多種多様な大きさ及び形状(例えば、方形、砂時計形、T字形、非対称等)に製造されてもよく、又一般にエアフェルトと称される粉砕木材パルプなど、使い捨てプルオン衣料及び他の吸収性物品において通常使用される多種多様な液体吸収性材料から製造されてもよい。他の好適な吸収性材料としては、縮みセルロース詰め物;コフォームを包含するメルトブローポリマー;化学的に剛化、変性又はされたセルロースファイバー;ティッシュラップ及びティッシュラミネートを含むティッシュ;吸収性フォーム;吸収性スポンジ;超吸収性ポリマー;吸収性ゲル材料;又はあらゆる同等の材料若しくは材料の組み合わせが挙げられる。吸収性コアの構成及び構造は変化してもよい(例えば、吸収性コアは、変化するキャリパーゾーン、親水性勾配、超吸収性勾配、又はより低い平均密度及びより低い平均坪量獲得区域を有してもよく、或いは、1つ以上の層又は構造を包含してもよい)。更に、吸収性コアの寸法及び吸収能力も、乳児から成人までに及ぶ着用者に適応するように変えられてもよい。しかしながら吸収性コアの全吸収能力は、設計負荷、及び吸収性用品の意図される用途に適合したものでなければならない。
【0016】
吸収性コアは他の任意の成分を含んでいてもよい。かかる任意成分の1つはコアラップであり、即ち、典型的には不織布材料であるが必ずしもそうとは限らない、コアを部分的に又は全体的に取り囲む材料である。好適なコアラップ材料には、セルロース、親水性に修飾された不織布材料、穿孔フィルム、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0017】
バックシートは典型的には液体(例えば、尿又は経血)不透過性であってもよく、薄いプラスチックフィルムから製造することができる。別の実施形態において、バックシートは使い捨て吸収性物品から蒸気を逃がすことを可能とする。例えば、バックシートにポリエチレン微多孔膜を使用することができる。本発明の吸収性物品のバックシートの1つの好適な材料は、厚さ約0.012mm〜約0.051mmであり、例えばポリエチレン又はポリプロピレンを含む、液体不透過性熱可塑性フィルムであり得る。バックシートは、約5g/m2〜約35g/m2の坪量を有することができる。しかしながら、別の方法として他の可撓性液体不透過性材料をバックシートに使用してもよいことに注目すべきである。本明細書では、「可撓性」は、適合性があり、着用者の身体全体の形状及び輪郭に容易に適応する材料を指す。バックシートは、典型的には吸収性コアの外側に面する表面に隣接して配置され、当該技術分野において既知のあらゆる好適な取付け手段によって接合されることが可能である。例えば、バックシートは、接着剤の均一な連続層、接着剤のパターン層、又は接着剤の個別の線、螺旋、若しくは点の配列によって、吸収性コアに固定されてもよい。
【0018】
本発明の吸収性物品が生理用ナプキン、パンティライナー、又は軽い失禁用物品のような婦人衛生物品である場合、典型的には、通常パンティ固定用接着剤と称され、バックシートの衣類に面する面上に設けられる、取り付け手段、典型的には感圧性接着剤の層により下着のクロッチ部分に付着させて使用される。使用前には、パンティ固定用接着剤は剥離可能に接着されている剥離層で保護されており、該剥離層は、物品を下着に適用する際に、接着剤を露出するためにユーザーによって取り外される。当該技術分野において既知のように、剥離層は、例えばシリコン処理をした紙のシート、又は典型的には高分子フィルムで作製され、物品に解放式の一体型ラッパーを提供することができるラッパーシートであってもよい。
【0019】
本発明によると、吸収性物品は、臭気制御材料の第1部類及び第2部類を含む臭気制御系を更に含む。臭気制御材料の第1部類は、少なくと1種の低揮発性の材料を含み、臭気制御材料の第2部類は、少なくと1種の高揮発性材料を含む。本発明の文脈中において、揮発性は、当該技術分野において既知のように香料原料(PRMs)のクロマトグラフィーカラム上への選択的保持として定義されるコヴァット・インデックス(KI)を用いて表わされる。コヴァット・インデックスの値は、アジレント・テクノロジーズ社(Agilent Technologies)(前J&Wサイエンティフィック社(J&W Scientific))から入手可能な、クロマトグラフィーカラムDB−5、30m、0.25mm、1.00μmを用いて、50〜300℃、4℃/分、83kPa(12.0psi)、定流量条件で稼動させることで、又は、当業者により容易に決定できる同一又は等価な条件下での等価な設備操作で、得られる。
【0020】
コヴァット・インデックスは主として香料原料(PRMs)を定義するが、必ずしも香料原料(PRM)でなく、以下に説明するような本発明の吸収性物品の臭気制御系の中の第1部類及び第2部類の臭気制御材料に含まれ得る液状、更にはガス状物質を一般に測定することが可能である。既知のように、物質、より詳細にはPRMの極性、分子量、蒸気圧、沸点、及び固定相特性が保持の程度を決定し、よってコヴァット・インデックスの範囲を決定する。本発明によると、臭気制御材料の第1部類の中の少なくとも1種の低揮発性材料のコヴァット・インデックスは、1500を超える、又は1550〜1900であり、臭気制御材料の第2部類の中の少なくとも1種の高揮発性材料のコヴァット・インデックスは、1500以下、又は900〜1500、更には1000〜1400である。
【0021】
少なくとも本発明の吸収性物品の臭気制御系の第2部類は、吸収性コアの衣類に面する面の上に、バックシートの身体に面する面に隣接して、少なくとも900mm2、又は900mm2〜2000mm2、又は更には900mm2〜1300mm2の表面積で提供される。或いは、臭気制御系の少なくとも第2部類は、吸収性コアの衣類に面する面の上に、バックシートの身体に面する面に隣接して、この表面積とコアの表面積の割合が少なくとも0.08、又は0.08〜0.2、又は更には0.08〜0.1となるような表面積で提供され、コアの表面積は吸収性コア要素の衣類に面する面の表面積として定義される。「隣接して」に言及する場合、吸収性コアの衣類に面する面の上に適用される臭気制御系が、最終製品において、バックシートの身体に面する面に向かって位置していることを意味する。本発明の実施形態において、臭気制御系は、バックシートの身体に面する面に直接接触しており、即ち、吸収性コアとバックシートとの間にはいかなる追加的層も存在しない。しかしながら、「隣接して」は又、臭気制御系が適用されるコアの衣類に面する面とバックシートの身体に面する面、例えばコアラップ、又は組織層、例えば分配層との間に中間層を置くことができることも意味する。コアとバックシートとの間の任意の粘着手段は、本発明の文脈中では、典型的には追加的な層として考慮されない。
【0022】
臭気制御材料の第2部類は、任意の好適な方法によって本発明の吸収性物品の吸収性コアの衣類に面する面に適用され得る。臭気制御材料の第2部類の典型的な材料は、この先で更に詳しく明らかになるように室温で液体であり、従って既知の手段を用いて、例えば滴のような形をしたもの、任意の所望の規則的な又は不規則な模様、を吸収性コアの衣類に面する面に提供することが可能である。本発明の実施形態において、臭気制御系の臭気制御材料の第2部類は長手方向の1つ以上の縞模様、例えば2つの互いに平行な長手方向の縞模様、吸収性物品の長手方向の対称軸に平行な長手方向の縞模様、及びこの長手方向の軸の両側で実質的にコアの全長に沿って対称的に走る長手方向の縞模様として設けられる。
【0023】
本発明の実施形態によると、臭気制御系の臭気制御材料の少なくとも第2部類は、コアの衣類に面する面上に、坪量5g/m2〜100g/m2、又は10g/m2〜80g/m2、又更には20g/m2〜60g/m2で提供される。
【0024】
本発明の実施形態によると、臭気制御材料の第1部類は典型的は、排出物又は流体の悪臭、又は使用中に吸収性物品に存在する他の悪臭物質に作用する材料を含み、一方、臭気制御材料の第2部類は、典型的にはユーザーの鼻受容器官に作用する物質を含む。
【0025】
いかなる理論に束縛されるものではないが、本発明による臭気制御系であり、典型的には低揮発性である臭気制御材料の第1部類、及び典型的には高揮発性である臭気制御材料の第2部類を含む臭気制御系は、選択された表面積で及び任意に選択された坪量で衣類に面する面に適用され、バックシートの身体に面する面に隣接して、又はある実施形態ではバックシートの身体に面する面と直接接触させて、即ち、コアラッパーのような、中間層を置かずに適用された場合、臭気制御系のより揮発性の強い材料(又は、複数の材料)、典型的には臭気制御材料の第2部類の単数又は複数の材料を、典型的には高分子フィルムであり、通常厚さが10〜40μmの範囲、例えば約20μmであるポリエチレンフィルムであるバックシート層そのものを介して拡散させる。しかしながら、より揮発性の強い材料又は複数の材料は、少なくとも一部においてバックシート材料そのものによって対抗される拡散への抵抗により、及び特に本発明の典型的な吸収性物品、即ち生理用ナプキン、パンティライナー、及び軽い成人失禁用物品のバックシートの衣類に面する面に提供されたパンティ固定用接着剤の層によって、及び該層に適用された剥離層によって、吸収性物品の外側に漏れ出ることを防止する。同時に、臭気制御系を物品の身体に面する面の方向に横たえる吸収性物品層及び材料の厚みが大きいせいで、臭気制御系のより揮発性の強い材料又は複数の材料には、吸収性物品のトップシートからわずかに漏れ出る傾向がある。ユーザーが物品をパッケージから取り出す際、典型的には、物品をパンティに適用するために剥離層を取り除いてパンティ固定用接着剤を露出し、それによりパンティ固定用接着剤及び剥離層に捕捉された揮発性臭気制御材料又は複数の材料を「放つ」。従って、より揮発性の強い臭気制御材料又は複数の材料は、ユーザーが物品を使用する準備ができた直後に、物品を実際に身に付ける前でさえも、典型的にはユーザーの鼻受容器官に影響を与えることにより、作用してもよい。より揮発性の強い臭気制御材料又は複数の材料は又、本発明の吸収性物品の臭気制御系の揮発性の低い臭気制御材料又は複数の材料と共に、それぞれユーザーの鼻受容器官に向かって及び排出物の悪臭又は使用中の吸収性物品そのものの他の悪臭物質に向かって、作用し続ける。従って、本発明の吸収性物品は、上記のような臭気制御系の組成物により及び吸収性物品内での特定の位置決めにより、改善された及び長期の二段階臭気制御動作を提供することが可能である。
【0026】
悪臭又は悪臭物質に作用する臭気制御材料
本発明の吸収性物品の臭気制御系の臭気制御材料の第1部類は少なくとも、コヴァット・インデックスが1500を超える、又は1550〜1900であり、従って低揮発性である材料を含む。臭気制御材料の第1部類の材料は、悪臭を抑える既知の材料の中から選択することができる。
【0027】
当該技術分野においては、吸収性物品中で悪臭を抑えることが知られている多くの材料がある。実例は本明細書で上記で言及した参照の中に見出される。典型的な物質はゼオライト、デンプン、活性炭、シクロデキストリン、キチン又はキトサン及びエステルである。広くは、当業者には容易に明らかであるように、上記のような固体材料は実際は、液体又は更にはガス状物質のみを測定することの可能なコヴァット・インデックスを有していない。しかしながら、固体材料は実質的に不揮発性であると言うことができ、本発明の文脈中において、固体材料は、本発明による臭気制御系の臭気制御材料の第1部類の中の少なくとも1種の低揮発性材料のコヴァット・インデックスの所定の条件を事実上満たしていると考えることができる。
【0028】
これらの活性物質は異なった機構によって悪臭の不快感を低減でき、例えば、活性物質は吸収/吸着の機構によって悪臭分子の量を低減でき、及び/又は悪臭分子と反応してそれらを低揮発性/無臭のものに転換でき、及び/又は悪臭分子の揮発性を抑制でき、及び/又は微生物の代謝活性によって引き起こされる分解プロセスを阻害することによって悪臭発生を回避できる。
【0029】
本発明の実施形態の臭気制御系にとって、かかる物質の特異的選択が望ましい。シリカゲル、アルデヒド及びメソ細孔性ゼオライトが特に有用であると見出されている。
【0030】
シリカゲルは、シリカ(SiO2)の多孔質、非晶質の形態である。それは相互結合されたミクロ孔の巨大な網目から構成される。ゼオライトとは対照的に、シリカゲルは典型的には5Å〜3000Åの広範囲な直径の、より大きな穴を有する。本明細書の臭気制御系において特に有用であると分かっているシリカゲルは、pH7未満を有する狭いシリカゲルのものである。実際に、このタイプのシリカゲルは2つの異なったタイプの臭気制御機構によって悪臭レベルを低減するのに有効であると見出されたが、これは即ち、シリカ表面における悪臭分子の吸収/吸着、及びアミン成分の中和である。アミン成分は特に婦人衛生製品における主要な悪臭源である。pH6未満を有するシリカゲルが特定の実施形態に望ましいことがある。
【0031】
シリカゲルの孔径範囲は製造プロセス中で調節可能であり、平均孔径が約10〜50Åを有する合成シリカゲルは「細」孔シリカゲル("narrow" pore silica gel)として知られ、平均孔径が約110Å以上を有するシリカゲルは「太」孔シリカゲル("wide" pore silica gel)と称される。細孔を有するシリカゲルは一般的にナロウシリカゲルよりも高価である。特定の実施形態では、本明細書で使用されるシリカゲルは平均孔径が20Å〜40Å、又は一部の実施形態では30Åを有するナロウシリカゲルである。
【0032】
本明細書における本発明の吸収性物品の臭気制御系に好適な一つのシリカゲルの全表面積は500m2/gより大きい。その全表面積はBET(ブルナウア・エメット・テラー(Brunauer-Emmett-Teller))試験法によって確定できる。この試験法は、−196.15℃(77°K)においてシリカゲル粒子の表面に吸着される窒素ガス、即ちそれらの内部空洞にも吸着される窒素ガスに基づいている。吸着された窒素ガスの容積は、次に吸着前後の窒素ガス圧力の比較によって確定される。具体的な好適シリカゲル材料には、グレース(Grace)社(米国メリーランド州コロンビア(Columbia))から入手可能なシリカゲルのコード122及び123が挙げられる。
【0033】
ナロウシリカゲル又はゼオライト、特にメソ細孔性ゼオライトは、吸収性物品において外部的に作用し、揮発性臭気制御材料を安定化するために使用できることが、本発明者によって更に見出されている。メソ細孔性ゼオライトは20Å〜500Åの孔径を有するゼオライトである。上記のように、シリカゲルは揮発性物質を吸収でき、従って吸収性物品からの揮発性物質の移行を低減できる。有利なことに、これによって吸収性物品の保管寿命が顕著に延長される。
【0034】
理論にとらわれるものではないが、ナロウシリカゲルは大抵の揮発性及び活性を有する化合物をその多孔性、特に水素結合の形成によって吸収でき、製品の使用期間であれば活性化合物を容易に放出するが、これは即ち、シリカゲル表面との水素結合形成において吸収分子と競合する水の存在によるものである。
【0035】
安定化の効果は10重量%のメンチルアセテートで処理したナロウシリカゲルのサンプルを熱重量分析(TGA)にかけることによって証明されている。より詳細には、この方法は特別の温度(40℃)における経時的重量損失の評価に基づいている。サンプルは40℃で180分維持された。比較基準を持たせる目的で、TGA分析は、純粋なメンチルアセテートのサンプル及び純粋なシリカゲルのサンプルを対照として、メンチルアセテート(10%)+シリカゲルのサンプル(例えば、グレース社のコード123)と一緒に実行した。得られた結果を表1に列記し、それによりメンチルアセテート(MA)単独のサンプルよりもシリカゲル及びMAを有するサンプルは顕著に低い重量損失を有することが明らかにされる。
【0036】
【表1】

【0037】
体液悪臭の1成分はアンモニアである。例えば、アンモニアは、尿の分解が原因で尿吸収に使用される製品中に多量に存在する。アンモニア及びその誘導体はアルデヒドと反応してイミンを形成する(いわゆるシッフ(Schiff)塩基反応による)。
【0038】
【化1】

【0039】
この反応は酵素及び/又は弱酸性のpH4〜5によって触媒作用を受ける。温和な酸性条件は、ヒドロキシ中間体のプロトン化して水の除去を可能にするために必要である。
【0040】
遺憾ながら、イミン反応が可能な大抵のアルデヒドは、不快な臭気及び/又は人間の嗅覚にとって不快なほど強い臭気を有し、及び/又は非常に揮発性が高いので吸収性物品上で安定しない。従って悪臭を制御するための好適な材料を選択することが望ましい。悪臭を制御するのに好適なアルデヒドの例は、シッフ塩基反応によってアミン成分と反応することができ、不快な臭気を有さないものであるアルデヒドである。好適なアルデヒドには、ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、p−アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、ケイ皮アルデヒド、クミンアルデヒド、デカナール、p−t−ブチル−α−メチルジヒドロシンナムアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシシンナムアルデヒド、2−フェニル−3−(2−フリル)プロプ−2−エナール、バニリンイソブチレート、エチルバニリンアセテート、バニリンアセテート、シクラメンアルデヒド、ヘプタナール、ラウリルアルデヒド、ノナナール、オクタナール、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、バニリン、サリチルアルデヒド、シトラール、2,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアルデヒド、5−メチルサリチルアルデヒド、4−ニトロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、5−エチル−2−チオフェンカルボアルデヒド、5−メチル−2−チオフェンカルボアルデヒド、2−チオフェンカルボアルデヒド、アサロンアルデヒド、5−(ヒドロキシメチル)−2−フルアルデヒド、2−ベンゾフランカルボキサルアルデヒド、2,3,4−トリメトキシベンズアルデヒド、プロトカテキュアルデヒド、ヘリオトロピン、4−エトキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−メトキシシンナムアルデヒド、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシンナムアルデヒド、2,8−ジチアノン−4−3n−4−カルボキサルデヒド、ソルビンアルデヒド、2,4−ヘプタジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ノナジエナール、(E,E)−,2,4−オクタジエン−1−アール、2,4−オクタジエナール、2,4−ドデカジエナール、2,4−ウンデカジエナール、2,4−トリデカジエン−1−アール、2−トランス−4−シス−7−シス−トリデカトリエナール、ピペロニリデンプロピオンアルデヒド、2−メチル−3−(2−フリル)アクロレイン、2,4−ペンタジエナール、2−フルフリリデンブチルアルデヒド、3−(2−フリル)アクロレイン、ピルブアルデヒド、エタンジアール及びこれらの混合物が挙げられる。特に好適なアルデヒドは、ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、デカナール、4−ヒドロキシ−3−メトキシシンナムアルデヒド、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシンナムアルデヒド、2−フェニル−3−(2−フリル)プロプ−2−エナール、エチルバニリンアセテート、バニリンイソブチレート、バニリンアセテート、アサロンアルデヒドである。本明細書での利用に最も望ましいアルデヒドのいくつかは、ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシシンナムアルデヒド、及びデカナールである。
【0041】
鼻受容器官に作用する臭気制御材料
本発明の吸収性物品の臭気制御系の臭気制御材料の第2部類は、少なくともコヴァット・インデックスが1550以下、或いは900〜1500、又は更には1000〜1400であり、従って高揮発性である材料を含む。本発明の実施形態において、第2部類の全ての臭気制御材料は、コヴァット・インデックスでを用いて表わされる所定の低揮発性を有している。臭気制御材料の第2部類の材料はユーザーの鼻受容器官に作用する既知の材料から選択することが可能であり、例えば、心地よい香りを発散する香料又は芳香剤であり得る。
【0042】
従って、臭気制御系における臭気制御材料の第2部類は、物品の外側で外部から悪臭を抑える。本発明の実施形態によると、臭気制御材料の第2部類の好適な材料は、鼻の受容器官を阻害する以下に挙げる物質であり、以下「嗅覚阻害(nose blocking)」と呼ぶ。使用されると、これらの材料により鼻の悪臭を検知する能力が顕著に低減される。鼻受容器官の作用、好ましくは本発明の実施形態に従って選択された材料による嗅覚阻害は、選択されたコヴァット・インデックスで表わされる選択された材料の揮発特性のために可能となる。前記材料は上記の機構に従って吸収性物品から蒸発し、次に、一般に物品のいくぶん近距離、例えば物品から約0〜10メートル以内(決して本発明の範囲を限定することを意図すべきではないが)にいる個人の鼻に、正常な呼吸により吸入される。言うまでもなく、嗅覚受容器官の阻害は一時的なものである。
【0043】
好適な嗅覚阻害材料材料には、メントール、メンチルアセテート、3−ブテン−2−オン、3−メチル−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−,4−(2,6,6−トリメチルシクロヘン−1−エン−1−イル)ブタ−3−エン−2−オン、4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−,(E)−、メンチルラクテート、イソメンチルアセテート、イソメンチルプロピオネート、イソメンチルイソブチレート、イソメンチルブチレート、カンファー及びp−メンタンが挙げられる。これらの材料は又、これらの異性体形、ジアステレオマー形及びエナンチオマーが含まれる。有利なことに、一般的に上記材料は非常にごく僅かな固有臭気を有するだけであるが、高度な嗅覚受容器官の阻害性を示す。
【0044】
本発明の実施形態によると、トップシート、バックシート及び吸収性コアを備える吸収性物品は、pHが7未満のシリカゲル、孔の寸法が20〜500Åであるメソ細孔性ゼオライト、及びこれらの混合物からなる群から選択される臭気制御材料の第1部類;同様に上記の群から選択されるアルデヒド;及び上記の嗅覚阻害材料からなる群から選択される臭気制御材料の第2部類、を含む臭気制御系を更に含むことができ、臭気制御系の臭気制御材料の少なくとも第2部類は吸収性コアの衣類に面する面に、バックシートの身体に面する面に隣接して、少なくとも900mm2、或いは900mm2〜2000mm2、又は更には900mm2〜1300mm2の表面積で提供される。別の方法としては、臭気制御材料の少なくとも第2部類は、吸収性コアの衣類に面する面に、バックシートの身体に面する面に隣接して、表面積のコアの表面積に対する割合が少なくとも0.08、或いは0.08〜0.2、又は更には0.08〜0.1となるような表面積で提供される。上記実施形態によると、本明細書に記載される全てのその他追加的又は代替的特性の組み合わせも又含まれる。
【0045】
本発明の代替的実施形態によると、臭気制御材料の第2部類の高揮発性材料は、心地よい香りを有する材料の中から選択することができる。ドルトンの法則によると、吸収性物品のヘッドスペース内の高分圧が原因で、更には上で説明した通りの選択された位置、面積、及び好ましい坪量でのその用途により、かかる高揮発性成分は、低分圧の悪臭化合物のモル分率を小さくし、ユーザーに心地よい香りを提供すると考えられている。好適な高揮発性成分には1500未満のKI(コヴァット・インデックス)を有する材料が挙げられる。
【0046】
この機構によって作用する好適な高揮発性成分には、例えば、リモネン、ユーカリプトール、クレゾール、ルナロオール、テトラヒドロルナロオール、ミルセノール、テトラヒドロミルセノール、ジヒドロミルセノール、ミルセン、シトロネロール、シトロネリイル誘導体、ゲラニオール、ゲラニル誘導体、リナリルアセテート、ムゲタノール、オイゲノール、ジャスマル、テルピネオール、ピナノール、セドレン、ダマスコーン、βピネン、シネオール及びその誘導体、ノナジエノール、エチルヘキサナール、オクタノールアセテート、メチルフルフラール、テルピネン、ツジェン、アミルアセテート、ベンジルアセテート、カンフェン、シトロネラール、ジヒドロクマリン、ジヒドロミルセニルアセテート、ゲラニオール、ゲラニアール、イソアミルアセテート、エチルアセテート及び/又はトリエチルアセテート、パラ−クレゾール、及びパラ−シメンを挙げることができる。
【0047】
本発明の更なる実施形態によると、心地よい香りを有する上記の高揮発性材料は、上記の「嗅覚阻害」材料に加えて、本発明の吸収性物品中の臭気制御系の臭気制御材料の第2部類に含まれる。
【0048】
任意の更なる成分
a)ヒドロゲルを形成する吸収性ポリマー
本発明の吸収性物品は又、臭気制御系に加えて、ヒドロゲル形成性の吸収性ポリマーを含むことができる。本発明に有用なヒドロゲル形成性の吸収性ポリマーには、非水溶性だが、多量の流体を吸収する能力を有する様々な水膨潤性ポリマーが挙げられ、それらは当業界では一般に吸収性ゲル化材料、又は超吸収性材料とも呼ばれる。吸収性ゲル化材料は、当業界で周知のように、改善された吸収能力を有した吸収性物品を形成するために広く使用され、典型的には単独又は例えば、パルプ、エアフェルト、薄織物又は不織布層のような繊維性吸収性材料と組み合わせて吸収性構造体内に含まれる。吸収性ゲル化材料は又、液体吸収能力と共に臭気制御機能の追加的効果を与えることができるため、周知の臭気制御材料と組み合わせて使用される。
【0049】
臭気制御系に加えて、当該技術分野において既知の任意の吸収性ゲル材料を本発明の吸収性物品に含めることが可能である。好適な吸収性ゲル化材料としては、加水分解されたアクリロニトリルグラフト化デンプン、アクリル酸グラフト化デンプン、ポリアクリレート、無水マレイン酸系コポリマー、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。特に好適な吸収性ゲル化材料はポレアクリレート及びアクリル酸グラフト化デンプンである。
【0050】
本明細書中で上記された吸収性ゲル化材料は典型的には離散粒子の形状で使用される。そのような吸収性ゲル化材料はいかなる所望の形状であることもでき、例えば、球状又は半球状、立方体、棒状多角体などである。本明細書での使用に、針やフレークのような最大寸法/最小寸法の比率が大きな形状も考えられる。吸収性ゲル化材料粒子の凝集体を使用してもよい。
【0051】
吸収性ゲル化材料粒子の寸法は、広範囲にわたって変更してもよい。例えば、当業界では一般的に150μm〜800μmで構成される粒径が使用されるが、より小さな又はより大きな粒径も使用できる。本明細書で使用する時、「粒径」とは、個々の粒子の最少寸法の加重平均を意味する。吸収性ゲル材料は、本発明の吸収性物品に、既知の手段で、特に吸収性コアの中に組み込まれる。
【0052】
b)溶媒
更なる追加的成分には臭気制御材料を吸収物品に組み込むためのキャリアとしての溶媒が挙げられる。好適な溶媒は、例えば、安息香酸ベンジル、ミリスチン酸イソプロピル、アビエチン酸メチル、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチルフタレート、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジエチル、である。
【0053】
臭気制御系
本発明者によって、個々に知られている特定の臭気制御材料の組み合わせが臭気低減の点において相乗効果をもたらすことが見出されている。具体的には、本発明の実施形態において、上記のように悪臭又は悪臭物質そのものに作用する臭気制御材料と、鼻受容器官に作用する臭気制御材料を組み合わせる時、悪臭低減に関して相乗効果が観測されている。実際に、前述の2つの部類の活性物質を組み合わせる臭気制御系は、各材料が個別に作用する場合の数学的な組み合わせよりもより効果的に悪臭を低減できる。
【0054】
理論にとらわれるものではないが、このことは臭気制御材料が内部的に作用することによって吸収性物品中の悪臭分子を中和し、それらの分子の上部空間における濃度及びそれによる空気中での濃度を低減した結果であると考えられる。これにより、及び上で説明したように本発明の吸収性物品での選択された位置決めとの組み合わせにより、外部から鼻受容器官に作用する臭気制御材料はその最高活性を活用することが可能である。
【0055】
本発明の臭気制御系が吸収性物品中で使用される場合、個別の臭気制御材料は様々な量で使用できる。特定の好適な第1部類の臭気制御材料、即ち内部で作用する臭気制御材料について考えた場合、シリカゲルに関しては、5g/m2〜300g/m2、又は20g/m2〜100g/m2の量が有用であることが証明されている。アルデヒドに関しては、0.05g/m2〜20g/m2、又は0.5g/m2〜5g/m2の量が有用であることが証明されている。第2部類の好適な臭気制御材料、即ち鼻受容器官に作用する材料の例には、0.05g/m2〜20g/m2の範囲、又は0.5g/m2〜5g/m2の範囲のメンチルアセテートを挙げることができる。
【0056】
臭気制御系は、例えば典型的には悪臭又は悪臭物質に作用する臭気制御材料の第1部類を、例えば典型的には鼻受容器官に作用する臭気制御材料の第2部類に対して、重量で50:1〜1:50の割合で、若しくは重量で30:1〜1:30の割合で、又は更には重量で1:15〜15:1の割合で含むことができる。一実施形態において、臭気制御系は、シリカゲル及びメンチルアセテートを、重量で15:1の割合で含むことができる。別の実施形態において、臭気制御系は、アルファ−アミルシンナムアルデヒド及びメンチルアセテートを、重量で1:1の割合で含むことができる。
【0057】
吸収性物品
本明細書の臭気制御系を備えた吸収性物品は、当該技術分野において既知の、任意の種類の個人用衛生吸収性物品であることができる。特に好適なのは生理用ナプキン、パンティライナー、及び軽い成人失禁用物品のような個人用婦人衛生吸収性物品である。本発明の臭気制御系は、少なくとも臭気制御材料の第2部類が吸収性コアの衣類に面する面に所定の表面積で適用されるのであれば吸収性物品のあらゆる部分に存在することができる。本発明によれば、臭気制御系は少なくとも2つの部類の臭気制御材料の均質混合物として、又は両方の部類の臭気制御材料が互いに分離している状態のどちらかで、吸収性物品中に存在することができる。例えば、本発明の実施形態は、吸収性コアの着用者に面する面、或いは吸収性コアの構造内に定置された臭気制御材料の第1部類(悪臭又は悪臭物質に作用する)を有することができ、一方で臭気制御材料の第2部類(鼻受容器官に作用する)は吸収性コアの衣類に面する面に定置することが可能である。本明細書で前に述べた安定性を考慮すると、この実施形態の1つの手法は、吸収性コアの着用者に面する面にシリカゲルを備えると共に、吸収性コアの衣類に面する面にメンチルアセテートを備えた吸収性物品であることができる。しかしながら、第1部類及び第2部類の臭気制御材料の他の配置が考えられる。
【0058】
試験方法及びデータ
本発明の実施形態による臭気制御系の臭気低減に相乗効果を与えるため、いくつかの試験サンプルを準備し、それら全てを試験悪臭物質の役割をする0.1%のアンモニア水溶液に暴露する。表2の第1のデータポイントは、臭気制御材料を添加しないアンモニア溶液の不快程度を示す基準試験として働く。表2のデータポイント2〜3は、2つの代表的臭気制御材料についての単独の悪臭低減活性、具体的には代表的なアルデヒドとしてα−アミルシンナムアルデヒド及び受容器官に作用する代表的臭気制御材料(「嗅覚阻害」種類)としてメンチルアセテートの悪臭低減活性を例証している。
【0059】
表2における最後のデータポイント4は、本発明の実施形態の臭気制御系の活性を示している。相互比較を可能にするために、2つの個別の臭気制御材料をデータポイント2〜3と比較してそれらの1/2の量で混合した。データポイント4はα−アミルシンナムアルデヒド及びメンチルアセテートの混合物を試験することによって得られた。データポイント4から、臭気制御系の臭気低減性能は個別の臭気制御材料の性能よりも顕著に良好であることが明確に分かる。従って臭気制御活性の相乗効果が証明されている。
【0060】
【表2】

【0061】
これらのサンプルの臭気不快性及び心地良さを官能試験専門パネラーによって評価した。特に、5人の異なる官能試験専門パネラーが各サンプルについて4回反復評価した。臭気不快性は−10〜+0のスケールを用いて評価し、−10は最高の不快臭気を示し、0は臭気無しを示す。データは対照(悪臭溶液)に対する相対的不快性%として報告した。臭気評価は温度T(25℃)で温調された適切な部屋で実施された。部屋は適切な空調システムを装備し、空気の連続的交換を可能にした。サンプルは番号付けした金属トレイに保持され、実際の官能試験の間にアルミニウム箔で被覆した。
【0062】
本明細書において値が画定されたそれぞれの寸法は、技術的寸法であって、これは本発明の文脈の中で、文字通りには解釈されるべきではない。ゆえに、本明細書に規定される寸法と機能的に等価な寸法を有する全ての実施形態は、本発明の範囲で扱われることを意図し、例えば「40mm」の寸法は「約40mm」を意味すると解釈されるべきである。
【0063】
「発明を実施するための形態」の説明で引用したすべての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれ、いかなる文献の引用も、それが本発明に対する従来技術であることを認めるものと解釈すべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲については、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。
【0064】
本発明の特定の実施形態を説明記述してきたが、本発明の趣旨範囲から逸脱することなく他の様々な変更修正を行えることが当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体透過性トップシートと、バックシートと、該トップシート及び該バックシートの間に備えられる吸収性コアとを備える吸収性物品であって、該トップシート、該バックシート及び該吸収性コアのそれぞれが、身体に面する面及び衣類に面する面を有し、該コアの衣類に面する面はコア表面積を有し、該吸収性物品は臭気制御材料の第1部類及び第2部類を含む臭気制御系を含み、該第1部類は少なくとも、コヴァット・インデックス(KI)が1500を超える、好ましくは1550〜1900である材料を含み、該第2部類は少なくとも、コヴァット・インデックスが1500以下、好ましくは900〜1500、より好ましくは1000〜1400である材料を含み、
該臭気制御系の臭気制御材料の少なくとも第2部類が、該吸収性コアの該衣類に面する面の上に、該バックシートの該身体に面する面に隣接して、少なくとも900mm2、好ましくは900mm2〜2000mm2、より好ましくは900mm2〜1300mm2の表面積で、又は該表面積の該コア表面積に対する割合が少なくとも0.08、好ましくは0.08〜0.2、より好ましくは0.08〜0.1になるような表面積で提供される、吸収性物品。
【請求項2】
前記臭気制御系の前記臭気制御材料の少なくとも第2部類が、坪量5g/m2〜100g/m2、好ましくは10g/m2〜80g/m2、より好ましくは20g/m2〜60g/m2で提供される、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性コアの前記衣類に面する面の上に提供される前記臭気制御系の前記臭気制御材料の少なくとも第2部類が、前記バックシートの前記身体に面する面と直接接触する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記臭気制御系の前記臭気制御材料の少なくとも第2部類が、前記吸収性コアの前記衣類に面の上に長手方向の1つ以上の縞模様で提供される、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記臭気制御材料の第1部類が、前記吸収性物品の中の悪臭又は悪臭物質に作用することにより悪臭を軽減し、前記臭気制御材料の第2部類がユーザーの鼻受容器官に作用することにより悪臭を軽減し、前記臭気制御材料の第1部類が、pHが7未満のシリカゲル、アルデヒド、孔の寸法が20〜500Åであるメソ細孔性ゼオライト、及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記アルデヒドが、ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、p−アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、ケイ皮アルデヒド、クミンアルデヒド、デカナール、シクラメンアルデヒド、p−t−ブチル−α−メチルジヒドロシンナムアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシシンナムアルデヒド、バニリンイソブチレート、2−フェニル−3−(2−フリル)プロプ−2−エナール、エチルバニリンアセテート、バニリンアセテート、ヘプタナール、ラウリルアルデヒド、ノナナール、オクタナール、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、バニリン、サリチルアルデヒド、シトラール、2,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアルデヒド、5−メチルサリチルアルデヒド、4−ニトロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、5−エチル−2−チオフェンカルボアルデヒド、5−メチル−2−チオフェンカルボキサアルデヒド、2−チオフェンカルボアルデヒド、アサロンアルデヒド、5−(ヒドロキシメチル)−2−フルアルデヒド、2−ベンゾフランカルボキサルアルデヒド、2,3,4−トリメトキシベンズアルデヒド、プロトカテキュアルデヒド、ヘリオトロピン、4−エトキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−メトキシシンナムアルデヒド、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシシンナムアルデヒド、2,8−ジチアノン−4−3n−4−カルボキサルデヒド、ソルビンアルデヒド、2,4−ヘプタジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ノナジエナール、(E,E)−,2,4−オクタジエン−1−アール、2,4−オクタジエナール、2,4−ドデカジエナール、2,4−ウンデカジエナール、2,4−トリデカジエン−1−アール、2−トランス−4−シス−7−シス−トリデカトリエナール、ピペロニリデンプロピオンアルデヒド、2−メチル−3−(2−フリル)アクロレイン、2,4−ペンタジエナール、2−フルフリリデンブチルアルデヒド、3−(2−フリル)アクロレイン、ピルブアルデヒド、エタンジアール及びこれらの混合物からなる群から選択され、及び
前記臭気制御材料の第2部類が、メントール、メンチルアセテート、メンチルラクテート、3−ブテン−2−オン、3−メチル−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−,4−(2,6,6−トリメチルシクロヘン−1−エン−1−イル)ブタ−3−エン−2−オン、4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−,(E)−メンチルラクテート、イソメンチルアセテート、イソメンチルプロピオネート、イソメンチルイソブチレート、イソメンチルブチレート、カンファー、p−メンタン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記臭気制御材料の第2部類のそれぞれの材料のコヴァット・インデックスが、1500未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記臭気制御系が、リモネン、ユーカリプトール、クレゾール、リナロオール、テトラ−ヒドロリナロオール、ミルセノール、テトラヒドロミルセノール、ジ−ヒドロミルセノール、ミルセン、シトロネロール、シトロネリイル誘導体、ゲラニオール、ゲラニル誘導体、リナリルアセテート、ムゲタノール、オイゲノール、ジャスマル、テルピネオール、ピナノール、セドレン、ダマスコーン、βピネン、シネオール及びその誘導体、ノナジエノール、エチルヘキサナール、オクタノールアセテート、メチルフルフラール、テルピネン、ツジェン、アミルアセテート、ベンジルアセテート、カンフェン、シトロネラール、ジヒドロクマリン、ジヒドロミルセニルアセテート、ゲラニオール、ゲラニアール、イソアミルアセテート、エチルアセテート及び/又はトリエチルアセテート、パラ−クレゾール、パラ−シメン、メチルアビエテート、及びこれらの混合物からなる群から選択される高揮発性成分を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記臭気制御系が、ナロウシリカゲルを5g/m2〜300g/m2、好ましくは20g/m2〜100g/m2の量で含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記臭気制御系が、一つの又はいくつかの前記アルデヒドを0.05g/m2〜20g/m2、好ましくは0.5g/m2〜5g/m2の量で含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記臭気制御系が、ヘキシルシンナミックアルデヒドを含む、請求項5から9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記臭気制御系が、メンチルアセテートを0.05g/m2〜20g/m2、好ましくは0.5g/m2〜5g/m2の量で含む、請求項5から10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記臭気制御系が、前記臭気制御材料の第1部類を前記臭気制御材料の第2部類に対して、重量で50:1〜1:50、好ましくは重量で30:1〜1:30、より好ましくは重量で1:15〜15:1の割合で含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記臭気制御系が、ナロウシリカゲル及びメンチルアセテートを重量で15:1の割合で含む、請求項12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記臭気制御系が、ヘキシルシンナミックアルデヒド及びメンチルアセテートを重量で1:1の割合で含む、請求項12に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記吸収性物品が、生理用ナプキン、パンティライナー、軽い成人失禁製品であり、前記バックシートの前記衣類に面する面の上の粘着手段、及び該粘着手段に適用される剥離層を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【公表番号】特表2009−544443(P2009−544443A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522411(P2009−522411)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053171
【国際公開番号】WO2008/018044
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】