説明

改善された色を有するエタノールアミンの製造方法

本発明は改善された色質を有するエタノールアミンの製造方法に関するものである。この方法は、エタノールアミンをRe、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、PtおよびAgから選択される1種もしくはそれ以上の金属を含まない活性炭と接触させることからなっている。この接触は10〜200℃の温度にて、エタノールアミンの色を減少させるのに足る時間、特にエタノールアミンのカラーインデックス(ASTM標準D1209に従って測定)が50もしくは40Pt/Coに等しく或いはそれ未満となるような時間にわたり行うことができる。接触はエタノールアミンの製造の段階に際し或いはその後に、特にエタノールアミンの精製の段階に際し或いはその後に行うことができる。更に本発明は改善された色質を有するトリエタノールアミン(TEA)の製造方法にも関するものであり、この方法はアンモニアを水性媒体中で酸化エチレンと接触させることによるTEAの合成の段階(i)と、水性媒体から粗製TEAの分離の段階(ii)と、蒸留によるTEAの精製の段階(iii)とからなっている。更にこの方法は粗製もしくは精製TEAをRe、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、PtおよびAgから選択される1種もしくはそれ以上の金属を含まない活性炭と、分離段階(ii)の後に或いは精製段階(iii)の際およびその後に接触させることからなっている。本発明の利点は、経時的にずっと耐性である改善された色質を有すると共に、エタノールアミンを汚染することが知られた添加剤または金属触媒の不存在下に得られるエタノールアミンを提供することにある。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はエタノールアミンの脱色方法および改善された色質を有するトリエタノールアミン(TEA)の製造方法に関するものである。
【0002】
エタノールアミンは、たとえば分散剤、乳化剤、石鹸、洗剤およびシャンプーのような多くの製品を製造する際、特に化粧品工業および薬品工業にて使用される。
【0003】
より詳細には粗製エタノールアミン(これはそれ自身、たとえばアンモニアを酸化エチレンと反応させることにより作成される)の蒸留により得られる純エタノールアミンは即座に着色し或いは逆に即座に無色となりうるが、この場合は一般にその貯蔵に際し急速に着色しうることが知られている。エタノールアミンの着色の現象は特に「SRIインターナショナル、プロセス・エコノミックス・プログラム・レポート、no.193″」(1991年1月)、第6−9および6−10頁に記載されている。しかしながら、エタノールアミンの着色の現象は説明および制御するのが困難であり、更に提案される各種の解決策は一般に大して満足し得ないと思われる。提案された各解決策は一般にエタノールアミンの製造および貯蔵に際したとえばステンレス鋼のような特殊材料を使用することよりなり、或いは着色を減少または抑制する添加剤を使用することよりなっている。しかしながら前記した後者の場合、エタノールアミンにおける添加剤の存在はエタノールアミンの純度に影響を及ぼし、添加剤の使用に伴う他の毒性問題をもたらしうる。
【0004】
米国特許第3,819,710号明細書は、エタノールアミンの色を改善すると共に色の安定性を向上させる方法を開示している。この方法は、アンモニアを酸化エチレンと反応させて予め得られた粗製エタノールアミンの水素化からなっている。この水素化は水素およびラネーニッケル、白金、パラジウムもしくはルテニウムに基づく触媒から選択される金属水素化触媒の存在下に60〜130℃の比較的高温度にて行われる。
【0005】
米国特許第2,744,938号明細書は、アルキルフェノールの水素化処理からなるアルキルフェノールからの色不純物の除去方法を開示している。より詳細には、この方法はアルキルフェノールのアルコール溶液を活性炭と約40〜約150℃の温度にて、前記アルコールを実質的に液相に維持するのに充分な超大気圧にて接触帯域に維持された水素の存在下に接触させることからなっている。
【0006】
米国特許第6,291,715号明細書は、改善された色質を有するアルカノールアミンの製造方法を開示している。この方法はアルカノールアミンの水素化からなり、これは水素と支持金属触媒との存在下に70〜160℃の比較的高温度にて行われる。触媒はレニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金および銀から選択される1種もしくはそれ以上の金属を含むと共に活性炭、α−アルミナ、二酸化ジルコニウムおよび二酸化チタンから選択される固体支持体に支持されてなる不均質水素化触媒から選択される。
【0007】
前記した方法の一方または他方は特定の面倒かつコスト高の段階(いわゆる水素の存在下における水素化)を用いるという欠点を有することが判り、この段階は比較的高温度にてアルカノールアミンに微量で再現しうる金属元素を有する水素化触媒の存在下に行われる。更に米国特許第6,291,715号明細書は、水素化触媒につき提案されたもの以外の支持体を用いる利点につき何ら示していない。
【0008】
米国特許第3,723,529号明細書は、たとえばトリエチレンテトラミンのような「ポリエチレンポリアミン」およびたとえばテトラエチレンペンタミンのような高級同族体の、高められた温度における活性炭での処理に続く蒸留による脱色方法を開示している。更に「ポリエチレンポリアミン」の脱色につき公知のこの種の方法は、エタノールアミンについても同様な効果を有することは示唆されなかった。これに対し、その反対を示す傾向を有する幾つかの刊行物が存在する。
【0009】
作成に際し或いはその後にエタノールアミンを脱色することを可能にする極めて簡単かつ安価な方法が見出された。この方法はエタノールアミンを人間の健康および環境に対し危険な金属元素をエタノールアミン中へ流亡させうる添加剤もしくは触媒と接触させないと言う利点を有する。驚くことに、本発明によりこのように処理されたエタノールアミン(より詳細にはトリエタノールアミン(TEA))は一般に無色となり、或いはいずれにせよ顕著に改善されると共に経時的に一層耐性である色質を示すことが突き止められた。
【0010】
先ず最初に本発明は、改善された色質を有するエタノールアミンを製造するに際し、エタノールアミンをレニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミニウム、イリジウム、白金および銀から選択される1種もしくはそれ以上の金属を含まない活性炭と接触させることを特徴とするエタノールアミンの製造方法に関するものである。
【0011】
「エタノールアミン」とは一般に、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)および好ましくはTEAから特に選択されたエタノールアミンまたはその2種もしくはそれ以上のエタノールアミンの混合物と理解される。本発明の方法は1種もしくはそれ以上のエタノールアミン(好ましくはTEA)によく適しており、特にこれらが酸化エチレンをアンモニアと好ましくは水性媒体中で反応させることにより合成段階にて作成される場合に良く適し、たとえばこれは「SRIインターナショナル、プロセス・エコノミックス・プログラム・レポート、no.193″」(1991年1月)、第6−1〜6−9頁に記載された合成方法の1つに従う。合成段階は一般に、酸化エチレンをアンモニアと、たとえば0.5/1〜40/1、好ましくは1/1〜10/1、特に1.5/1〜6/1のアンモニアと酸化エチレンとのモル比にて接触させることにより行われる。合成段階は好ましくは水性媒体にて行われ、アンモニアと水との重量比は0.5/1〜1/1とすることができる。合成段階は一般に0〜150℃、好ましくは20〜100℃、特に40〜80℃の温度にて0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜5MPa、特に0.2〜2MPaとしうる絶対圧力下にて行われる。合成段階は好ましくは水性媒体中で連続的に行われる。一般に、これはTEAと反応に際し生成される1種もしくはそれ以上の他のエタノールアミン[特にMEA、DEAおよび必要に応じエトキシル化されたトリエタノールアミン(TEAE)(これはトリエタノールアミングリコールエーテルとも呼ばれる)]とからなるいわゆる「粗製」TEAの形成を水性媒体との混合物にてもたらし、必要に応じ過剰もしくは反応しなかった2種の薬物の1種(たとえばアンモニア)との混合物にてもたらす。次いでTEAの作成方法は1つもしくはそれ以上の段階からなり、先ず最初に粗製TEAを水性媒体からおよび必要に応じ過剰もしくは反応しなかった2種の薬物の1種(たとえばアンモニア)から好ましくは1回もしくはそれ以上の蒸留(より詳細にはシリーズ)により分離し、次いでTEAを精製し、特にいわゆる「精製」TEAを粗製TEAから分離し、特にTEAを生成された上記したような他のエタノールアミンから好ましくは1回もしくはそれ以上の蒸留により(より詳細にはシリーズで)分離する。TEAの分離および精製の段階は有利には連続的に行うことができる。連続製造法においては、水および各試薬の1種(特にアンモニア)の過剰を一般に粗製TEAから連続分離すると共に、有利には連続的にTEA合成段階に戻す。
【0012】
本発明の方法は上記方法の1つにより作成されるTEAの1種に特に良く適し、特に粗製TEAまたは好ましくはたとえば上記したような精製TEAに適しており、これはその作成に際し或いはその後に着色TEAの形態で存在する。一般に、「着色エタノールアミンもくしはTEA」とは、ASTM標準D1209に従い40Pt/Coより大、好ましくは50Pt/Coより大のカラーインデックスを有するエタノールアミンもしくはTEAを意味する。更に一般に「精製TEA」とは、85%に等しいもしくはそれより大、好ましくは90%に等しいもしくはそれより大、より好ましくは99%に等しいもしくはそれより大のTEA重量含有量を有すると共に純粋物として一般にDEAを15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは1%未満、更に好ましくは0.2%未満の重量含有量にて含有しうるTEAを意味する。
【0013】
本発明の方法は、一般に活性炭との接触前に最初に40Pt/Coより大、好ましくは50Pt/Coより大のカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)および必要に応じ6重量ppmに等しいもしくはそれより大、好ましくは8もしくは10ppmに等しいもしくはそれより大の金属(より詳細には鉄)の重量含有量を有するエタノールアミンに適している。たとえばTEAのようなエタノールアミンにおける鉄含有量を測定するための分析方法は、より詳細には市販の基準スペクトロメータ「アイリス・アドバンテージ」(登録商標)[テルモ・ヤレル・アッシュ(フランス)社]により販売され、259.94nmの波長で操作]で使用するプラズマ・エミッシヨン・スペクトロメトリー(ICP−AES)により行うことができる。
【0014】
本発明の方法は特に、エタノールアミンを一般に炭素の実質的に非晶質形態を示す活性炭と接触させることを特徴とする。活性炭は特に大きい比表面積、たとえば500〜5000m/g、好ましくは500〜2500m/g、特に700〜2000m/gの比表面積[BET N方法、特にブルナウワ、エメットおよびテラーによりジャーナル・アメリカン・ケミカル・ソサエティ、第60巻、第309頁(1938)に記載されたような方法に従う]を有する。一般に、活性炭は高度の多孔質構造を有し、0.05〜2.5cm/g、好ましくは0.2〜2.5cm/g、特に0.5〜1.5cm/gの合計気孔容積(DIN 66134法に従う)を有することができる。活性炭は粉末、顆粒または成形製品、たとえばリング、円筒ペレットもしくは球体の形態とすることができ、0.1〜5mm、好ましくは0.2〜3mm、より詳細には0.5〜2mmの平均粒子寸法(重量による)を有する。これは0.2〜0.8g/cm、好ましくは0.3〜0.6g/cmの嵩密度を有することができる。これは30〜100、好ましくは50〜90の摩耗ナンバー/インデックス(ASTM・D4058〜87法に従う)および50〜100N、好ましくは90〜98Nの硬度インデックス/ナンバー(もしくは破砕強度)を有することができる[特にウルマン・エンサイクロペジア・オブ・インダストリアル・ケミストリー、第5改訂版、Vol.A5、第6.3章、第356頁、第2パラグラフに特に活性炭が顆粒型である場合に記載された方法に従う]。
【0015】
本発明により使用される活性炭は特にレニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミニウム、イリジウム、白金および銀から選択される1種もしくはそれ以上の金属を含まない。「1種もしくはそれ以上の金属を含まない」とは、一般にゼロ酸化状態における金属として計算し、前記金属の1種もしくはそれ以上の0.05重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、特に0.005重量%未満を含有する活性炭を意味する。使用される活性炭は触媒、より詳細には金属触媒、特に水素化触媒を支持しない。好ましくは、実質的に金属を含まず、特に沈着したものを含まない。「金属を含まない」とは一般に、0.05重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、特に0.005重量%未満の1種もしくはそれ以上の金属を含有する活性炭を意味する。
【0016】
活性炭は、一般に有機材料(特にたとえば石炭、リグナイト、木材、ナッツシェル、ピート、ピッチ、コールタールおよびコークスのような炭素リッチなもの)の焼成により作成される。これはたとえば原料の熱分解もしくは炭素化の段階に続き粗製炭素化生成物の制御されたガス化もしくは活性化の段階からなる熱活性化プロセスにより作成することができる。更に活性炭は、たとえば原料(より詳細には木材)の含浸の段階からなる化学活性化プロセスにより或いはたとえば燐酸もしくはカリまたはルイス酸(たとえば塩化アルミニウム、塩化第二鉄もしくは塩化亜鉛)のような化学活性化剤に続く、得られた混合物を450〜700℃の温度まで加熱する段階および乾燥段階により作成することもできる。
【0017】
本発明の方法において、エタノールアミンと活性炭との接触は10〜200℃、好ましくは15〜100℃、特に20〜80℃、殊に25〜70℃、より詳細には30〜60℃の範囲で選択される温度にて行うことができる。これはたとえば空気もしくは窒素のような任意の雰囲気下または不活性雰囲気下で、好ましくは脱水雰囲気にて、特に水素を含まない雰囲気下で、より詳細には10Pa〜2MPa、好ましくは0.1〜0.3MPaの絶対圧力下に行うことができる。
【0018】
この接触は種々の方法にて、たとえば活性炭をエタノールアミンに添加することにより、或いは好ましくはエタノールアミンを活性炭に添加することにより行うことができる。特に活性炭をエタノールアミンに懸濁させ、次いで好ましくは得られた懸濁物を攪拌することも可能である。更にエタノールアミンを固定活性炭床に通過させ、好ましくは下降流により通過させることができる。接触は不連続で或いは好ましくは連続的に行うことができる。
【0019】
エタノールアミンと活性炭との接触は、エタノールアミンの色を減少させるのに足る時間にわたり、好ましくはエタノールアミンが無色となるような時間にわたり、より詳細にはエタノールアミンのカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)が50もしくは40Pt/Coに等しくもしくはそれ以下、好ましくは30Pt/Coに等しくもしくはそれ以下、より好ましくは25Pt/Coに等しくもしくはそれ以下となるような時間にわたり行うことができる。一般に、活性炭と接触させるエタノールアミンの平均滞留時間は接触を行う温度、並びに活性炭との接触前のエタノールアミンの初期カラーインデックスに依存する。平均滞留時間は10分間〜18時間、好ましくは30分間〜12時間、特に1〜8時間の範囲から選択することができる。
【0020】
かくしてエタノールアミンと接触させた活性炭はエタノールアミンに含有される化合物、たとえば有機化合物もしくは金属化合物(特に鉄)を順次に保持することができる。本発明の方法において活性炭の初期物質が保持化合物の蓄積により約20重量%だけ増大した場合、この活性炭を再生処理(たとえば活性炭を水で洗浄する段階からなる処理)に20〜150℃の温度、好ましくは40〜100℃の温度でかけ、次いで洗浄された活性炭の450〜1000℃の温度における熱処理の段階にかけるのが好ましい。前記処理により活性炭に保持された化合物を部分的または全体的に除去すると共に、活性炭をエタノールアミンとの新たな接触に再使用してエタノールアミンの色質を改善することができる。
【0021】
本発明による方法の利点の1つは、改善された色質のエタノールアミンおよび特に上記したように無色のエタノールアミンの供給だけでなく、改善された色質が経時的にずっと耐性であると共に特に長い貯蔵期間にわたり無色を保持するエタノールアミンの供給でもある。
【0022】
本発明の他の利点は、金属(特に鉄)の重量含有量が特に減少すると共に、たとえば6重量ppm未満、好ましくは5ppmに等しいもしくはそれ以下または4ppm未満のように極めて低くなるエタノールアミンの供給でもある。
【0023】
本発明の方法はエタノールアミンの製造の段階に際し或いはその後に、より詳細には酸化エチレンをアンモニアと好ましくは水性媒体中で反応させることにより行われるエタノールアミンの合成の段階に際し或いはその後に使用することができる。本発明の方法は好ましくはエタノールアミンの精製の段階に際し或いはその後に、より詳細には1回または好ましくは1回より多い蒸留により行われる精製の段階に際し或いはその後に行うことができる。特に本発明の方法は、水からおよび/またはエタノールアミンの精製に際し反応しなかったまたは過剰の試薬の1種(たとえばアンモニア)から粗製エタノールアミンを分離および単離した後に使用することができる。より詳細には、水および必要に応じ過剰および/または反応しなかった試薬の1種を含まない粗製エタノールアミンの1回もしくはそれ以上の蒸留による精製の段階(これにより実質的にMEA、DEAおよびTEAまたはこれらの混合物を実質的に分離および単離する)に際し或いはその後に使用することができる。たとえば本発明の方法は、MEAを分離および単離することを意図した精製段階の後かつDEAおよびTEAまたはTEAとDEAとの混合物を分離および単離することを意図した精製段階の前に使用することができる。更に本発明の方法は、DEAを分離および単離することを意図した精製段階の後かつTEAまたはTEAとDEAとの混合物を分離および単離することを意図した精製段階の前にも使用することができる。本発明の方法は、好ましくはエタノールアミンの精製の段階の後または終了時点、より詳細にはTEAまたはTEAとDEAとの混合物の精製段階の後または終了時に、特にTEAまたはTEAとDEAとの混合物を単離し或いは一層詳細には貯蔵帯域にて貯蔵する際に、より詳細には周囲温度(約20℃)〜80℃、好ましくは25〜70℃、一層詳細には30〜60℃の範囲の温度にて使用することができる。
【0024】
更に本発明は改善された色質を有するトリエタノールアミン(TEA)の製造方法にも関し、この方法は次の段階:
(i)酸化エチレンとアンモニアとの水性媒体における接触によりモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)およびTEAを含む粗製TEAを過剰のおよび/または反応していない水とアンモニアとの混合物として形成させるようなTEAを合成する段階、
(ii)粗製TEAおよび水とアンモニアとの混合物を分離して粗製TEAを単離および回収する段階、並びに
(iii)粗製TEAの蒸留によりTEAを精製してMEAおよびDEAをTEAから実質的に分離すると共に少なくとも85重量%のTEAを含有する精製TEAを単離および回収する段階
からなり、この方法は分離段階(ii)の後または精製段階(iii)に際しもしくはその後に粗製もしくは精製TEAをレニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金および銀から選択される1種もしくはそれ以上の金属を含まない活性炭と接触させることを特徴とする。
【0025】
本発明の方法を好ましくは連続的に用いて、上記各段階および粗製もしくは精製TEAと活性炭との接触を連続的に行う。分離段階(ii)および精製段階(iii)は、好ましくは1回もしくはそれ以上の蒸留により、より詳細にはシリーズで、特に連続的に行われる。
【0026】
TEAの製造方法において、粗製もしくは精製TEAと活性炭との接触は上記好適実施形態の1つに従い、改善された色質のエタノールアミンの製造方法で行うことができる。粗製もしくは精製TEAはその活性炭との接触前に初期に着色することがあり、更に40Pt/Coより大、好ましくは50Pt/Coより大のカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)および必要に応じ6ppmより大、好ましくは8もしくは10ppmより大の金属(より詳細には鉄)の重量含有量を有する。TEAの鉄含有量を測定するための分析方法は上記した通りであり、すなわちプラズマ・エミッション・スペクトロメトリー(ICP−AES)とすることができる。
【0027】
本発明によるTEAの製造方法において、粗製もしくは精製TEAと活性炭との接触は、TEAの色を減少させるのに充分な時間にわたり、好ましくはTEAが無色となりうるような時間にわたり、より詳細にはカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)が50もしくは40Pt/Coに等しくまたはそれ以下となるような、好ましくは30Pt/Coに等しくもしくはそれ以下、より好ましくは25Pt/Coに等しくまたはそれ以下となるような時間にわたり行うことができる。活性炭と接触させる粗製もしくは精製TEAの平均滞留時間は10分間〜18時間、好ましくは30分間〜12時間、特に1〜8時間の範囲にて選択することができる。
【0028】
TEAの製造方法において活性炭との接触は、粗製TEAを分離する段階(ii)の直後に、すなわち粗製TEAが水およびアンモニアから分離された後に、特にTEAを精製する段階(iii)の前に行うことができる。これは水およびアンモニアを実質的に含まない粗製TEAにて、特に粗製TEAの精製段階(iii)の前に行うことができる。
【0029】
更に活性炭との接触はTEAの精製段階(iii)に際し、すなわちTEAの精製の時点で行うこともできる。特に、これはMEAが先ず最初に粗製TEAから分離される時点の後かつDEAがTEAから実質的に分離される時点の前に行うことができる。特にDEAがTEAから実質的に分離される時点の後、特にTEAが前記不純物から精製される時点の前に行うことができる。
【0030】
活性炭との接触は好ましくはTEAの精製の段階(iii)の後もしくは終了時点で行うことができ、従って15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは1%もしくは0.2重量%未満のDEAを含有する精製TEAにつき行うことができる。これはTEAの精製の段階(iii)の終了時点、精製TEAが周囲温度(約20℃)〜80℃、好ましくは25〜70℃、特に30〜60℃の範囲の温度まで冷却される前、その際、または冷却された後に、或いは精製および冷却されたTEAの、たとえばこれを貯蔵する帯域にて、より詳細には室温(約20℃)〜80℃、好ましくは25〜70℃、特に30〜60℃の温度にて回収した後に行うこともできる。活性炭との接触は精製TEAを貯蔵する帯域にて行うことができ、これはより詳細には貯蔵帯域から採取して精製TEAの流れを形成させ、次いでこれを活性炭の固定床に通過させると共に最終的に貯蔵帯域まで部分的または全体的に戻すことができる。他の戻されない部分は単離して消費者に送ることができる。
【0031】
TEAの製造方法における利点の1つは改善された色質のTEA、特に上記した無色TEAの供給、並びに改善された色質が経時的に一層耐性であり、特に長い貯蔵期間にわたり無色に留まるTEAの供給である。
【0032】
TEAの本発明による製造方法の他の利点は、金属(より詳細には鉄)の重量含有量が特に減少して極めて低くなり、たとえば6ppm未満、好ましくは5ppmに等しくまたはそれ以下または4ppmに等しくまたはそれ以下となるようなTEAの供給でもある。
【0033】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0034】
実施例1
精製かつ着色したTEAを次のプロセスに従い連続的に製造した。プロセスはアンモニアを水性媒体中で酸化エチレンと2.1/1のアンモニアと酸化エチレンとのモル比にて60℃の温度で反応させることによるTEAの合成の段階(i)を含む。粗製TEAと水およびアンモニアとの反応してない混合物が得られる。次いでこの混合物を連続的に粗製TEAの分離段階(ii)にかけ、これは直列配置された2つの蒸留カラムにおける蒸留によって行われ、最初に水および/次いでアンモニアを粗製TEAから分離する。水およびアンモニアを含まない粗製TEAがかくして得られ、これを次いで連続的にTEAの精製段階(iii)にかけ、これは直列配置された3つの蒸留カラムにおける粗製TEAの蒸留により行われ、順次にMEAおよび/次いでDEA並びにTEAEを実質的にTEAから分離すると共に精製かつ着色したTEAを形成させる。前記精製かつ着色したTEAの試料を採取する。これは99重量%より大のTEAの含有量を有し、6ppmの鉄を含有し(プラズマ・エミッション・スペクトロメトリー法(ICP−AES)に従う)、更に70Pt/Coのカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)を有する。
【0035】
TEA試料を次のプロセスにより処理する。室温(20℃)にてTEA試料を連続流に従い約1ml/mimの流速で採取する。このTEA流を、46gの活性炭(市販名「SGL 8x30」(登録商標)として知られ、かつケムバイロン・カーボン社(フランス)により販売される)の固定床に通過される。活性炭はレニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金および銀から選択される各金属を含まない。これは0.46g/cmの嵩密度を有し、粒子の15重量%未満が2.36mmに等しいもしくはそれより大の寸法を有すると共に粒子の4重量%未満が0.6mm未満の寸法を有するような粒子寸法分布を有する粒子の形態である。活性炭は1000m/gの比表面積(NBET法、ブルナウワ・エメットおよびテラーによりジャーナル・アメリカン・ケミカル・ソサエティ、第60巻、第309頁(1938)に記載)を有し、更に95Nの硬度インデックス/ナンバーを有する。活性炭と接触するTEAの平均滞留時間は約2時間である。改善された色質の精製TEAはかくして連続的に回収され、これは99重量%より大の純度と30Pt/Coのカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)と4ppmの鉄含有量(プラズマ・エミッション・スペクトロメトリー法(ICP−AES)に従う)とを有する。
【0036】
実施例2
実施例1におけると正確に同じ手順を採用したが、ただし最終的蒸留にて91重量%のTEAと3重量%のDEAと5重量%のTEAEと8ppmの鉄(上記プラズマ・エミッション・スペクトロメトリー法(ICP−AES)に従う)とを含有すると共に120Pt/Coのカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)を有する精製かつ着色したTEAを回収し、前記TEAの試料をかくして単離する。
【0037】
試料を実施例1におけると同様に処理したが、ただし実施例2で作成された試料を用いた。かくして精製TEAが連続的に得られ、これは改善された色質を有すると共に特に50Pt/Coのカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)を示し、更に5ppmの鉄含有量(上記プラズマ・エミッション・スペクトロメトリー法(ICP−AES)に従う)を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された色質を有するエタノールアミンの製造方法において、エタノールアミンをレニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金および銀から選択される1種もしくはそれ以上の金属を含まない活性炭と接触させることを特徴とするエタノールアミンの製造方法。
【請求項2】
エタノールアミンがモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)および好ましくはトリエタノールアミン(TEA)から選択されるエタノールアミンまたはその2種もしくはそれ以上のエタノールアミンの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エタノールアミンを合成段階にて、酸化エチレンをアンモニアと好ましくは水性媒体中で反応させることにより作成することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
エタノールアミンが、活性炭との接触前に最初に40Pt/Coより大、好ましくは50Pt/Coより大のカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)および必要に応じ6ppmに等しいもしくはそれより大、より詳細には8ppmに等しいもしくはそれより大、特に10ppmに等しいもしくはそれより大の金属、好ましくは鉄の重量含有量を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
活性炭が500〜5000m/g、好ましくは500〜2500m/g、より好ましくは700〜2000m/gの比表面積(NBET)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エタノールアミンと活性炭との接触を10〜200℃、好ましくは15〜100℃、より好ましくは20〜80℃の温度にて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
エタノールアミンと活性炭との接触を、エタノールアミンの色を減少させるのに足る時間にわたり、好ましくはエタノールアミンのカラーインデックス(ASTM標準D1209に従う)が50Pt/Coに等しいもしくはそれより小、好ましくは40Pt/Coに等しいもしくはそれより小、より好ましくは30Pt/Coに等しいもしくはそれより小となるような時間にわたり行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
活性炭と接触させるエタノールアミンの平均滞留時間を10分間〜18時間、好ましくは30分間〜12時間、より好ましくは1〜8時間の範囲で選択することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
エタノールアミンの作成段階に際しまたはその後に、好ましくはエチレンの精製段階に際しまたはその後に行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i)酸化エチレンとアンモニアとの水性媒体における接触によりTEAを合成して、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)およびTEAを含有する粗製TEAを過剰および/または反応していない水およびアンモニアとの混合物として形成させるようなTEAを合成する段階、
(ii)粗製TEAおよび水とアンモニアとの混合物を分離して、粗製TEAを単離および回収する段階、並びに
(iii)粗製TEAの蒸留によりTEAを精製して、MEAおよびDEAをTEAから実質的に分離すると共に、少なくとも85重量%のTEAを含有する精製TEAを単離および回収する段階
からなる改善された色質を有するトリエタノールアミン(TEA)の製造方法において、分離段階(ii)の後または精製段階(iii)に際しまたはその後に粗製もしくは精製TEAをレニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金および銀から選択される1種もしくはそれ以上の金属を含まない活性炭と接触させることを特徴とするトリエタノールアミンの製造方法。

【公表番号】特表2007−534614(P2007−534614A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516365(P2006−516365)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002023
【国際公開番号】WO2004/113268
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505229003)イネオス ヨーロッパ リミテッド (20)
【Fターム(参考)】