説明

改善された透析液灌流を有する血液透析機

【課題】繊維束への透析液の改善された灌流を有する透析機を提供する。
【解決手段】透析機であって、内部を規定し、透析液入口30および透析液出口を備えるケーシング、上記ケーシングの内部に位置し、繊維束を規定する複数の繊維、上記透析液入口30と流体連絡しており、上記繊維束20の一部に伸びる複数のフルート50を備える透析液入口流体チャネルであって、上記フルート50は、透析液が、上記入口流体チャネルから上記ケーシングの内部に流れるのを可能にする開口部を規定する、透析液入り口流体チャネル、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、一般に、医療処置に関する。より具体的には、本発明は、透析治療および透析機に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患、傷害または他の原因に起因して、腎臓系は、不全になり得る。任意の原因の腎不全において、いくつかの生理学的混乱が存在する。水、ミネラル(Na、K、Cl、Ca、P、Mg、SO)および固定された水素イオンの毎日の代謝負荷の排出のバランスは、腎不全においては、もはや不可能である。腎不全の間に、窒素代謝の毒性最終産物(尿素、クレアチニン、尿酸など)は、血液および組織中に蓄積する。
【0003】
透析プロセスは、濃度勾配が低い方への半透膜を横切る拡散(拡散的溶質輸送)による、溶液中の要素の分離のために開発されてきた。主に、透析は、2つの方法(血液透析および腹膜透析)を含む。
【0004】
血液透析処置は、患者の血液を利用して、老廃物、毒素および過剰な水を患者から除去する。患者は、血液透析機器に接続され、そして患者の血液は、この機器を介してポンピングされる。カテーテルが患者の静脈および動脈に挿入されて、血液透析機への血流および血液透析機器からの血流を接続する。老廃物、毒素および過剰な水は、患者の血液から除去されて、この血液は、患者へと戻し注入される。血液透析処置は、数時間続き、そして一般に、1週間に約3〜4回、処置センターにおいて実施される。
【0005】
血液透析は、代表的に、透析機の使用を含む。透析機は、一般に、ハウジングまたはケーシングを備える。ケーシング内部には、繊維束が配置される。代表的には、この繊維束は、互いに並行に方向付けられた多数の膜から構成される。これらの膜は、血液がこれらの膜を通って流れ、透析液がこれらの膜の外側を流れるように設計される。発生する浸透圧勾配に起因して、老廃物は、血液から、膜を通って、透析液へと除去される。
【0006】
従って、透析機は、代表的に、血液入口および血液出口を供える。この血液入口は、血液が繊維膜に入り、そしてこの繊維膜を通って血液出口へと流れるように設計される。透析液は、透析機の入口を通って流れ、そして出口を通って透析機から出るように設計される。この透析液は、膜の外側または外壁を横切って流れるように設計される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術の透析機に関する問題点の1つは、繊維束の周りの透析液の流れが、完全に満足のいくものではない可能性がある、ということである。この点に関して、透析液は、繊維束全体の周りを十分に流れないかもしれない。むしろ、束とケースとの間に短絡が生じ得る。これは、繊維束の中心に含まれる膜の特定の部分の周りでの透析液の流れの低減を生じ得る。従って、この透析液のクリアランスは、低減される。
【0008】
従って、繊維束(具体的にはその中心)へとより良く還流する透析機の設計が試みられてきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、改善された透析機および透析を提供するための方法を提供する。これに関し
て、本発明は、繊維束への透析液の改善された灌流を有する透析機を提供する。
【0010】
この目的を達成するために、本発明の1実施形態において、透析機は、内部を規定し、そして透析液入口および透析液出口を備えるケーシングを備える。複数の繊維が、このケーシングの内部に配置され、そして繊維束を規定する。透析液入口流体チャネルは、透析液入口と流体連絡して提供され、そして繊維束の一部へと延びる複数のフルートを備え、このフルートは、透析液を入口流体チャネルからケーシング内部へ流すための開口部を規定する。
【0011】
1実施形態において、この透析機は、繊維束の一部へと延びる複数のフルートを備える透析液出口と流体連絡した、透析液出口流体チャネルを備える。これらのフルートは、透析液を、ケーシングの内部から透析液出口流体チャネルへ流すための開口部を規定する。
【0012】
1実施形態において、出口流体チャネルおよび入口流体チャネルは、実質的に同じ構造を有する。
【0013】
1実施形態において、このケーシングは、プラスチックで構成される。
【0014】
1実施形態において、この透析機は、8つのフルートを備える。
【0015】
1実施形態において、透析液入口の上部部分は、ポッティング材料によって規定される。
【0016】
1実施形態において、これらのフルートは、透析機の第一端部の外周全体を囲む。
【0017】
1実施形態において、フルート中の開口部は、スロットである。
【0018】
1実施形態において、各フルートは、別個の開口部を規定する。
【0019】
本発明の別の実施形態において、内部を規定し、そして透析液入口を有する第一端部および透析液出口を備える第二端部を有するケーシングを備える透析機が提供される。複数の繊維を含む繊維束は、内部に配置され、そして第一端部から第二端部へと延びる。透析液入口と流体連絡した流体入口チャネルが提供され、この流体入口チャネルは、一部、第一端部の外部および表面内部の一部を囲む内壁を規定するケーシングの一部によって規定される。この内壁は、繊維束へと延びた部分を備える。これらの部分の少なくとも1つは、流体をこのチャネルから内部へ流すためのアパーチャを備える。透析液出口と流体連絡した流体出口チャネルが提供される。この流体出口チャネルは、一部、第一端部の外部および表面内部の一部を囲む内壁を規定するケーシングの一部によって規定される。この内壁は、繊維束へと延びた部分を備え、これらの部分の少なくとも1つは、流体をこのチャネルから内部へ流すためのアパーチャを備える。
【0020】
1実施形態において、この内壁は、複数の半円形構造体を規定する。
【0021】
1実施形態において、流体入口チャネルおよび流体出口チャネルは、各々がアパーチャを備える繊維束へと延びる、少なくとも6つの別個の部分を備える。
【0022】
本発明のなお別の実施形態において、その中に繊維束が配置された内部を規定し、そして透析液入口を有する第一端部および透析液出口を備える第二端部を備えるケーシングを備える透析機が提供される。このケーシングは、入口流体チャネルと流体連絡した透析液入口を備える、このケーシングの内壁によって少なくとも一部規定された入口流体チャネ
ル、ポッティング材料および第一端部の内部を囲む内壁を備える。この内壁は、繊維束を受容するための領域および繊維束へ延びる部分を規定する複数の部材を備える。内壁のこれらの部分は、繊維束へと延び、そして透析液をケーシングの内部へと流すアパーチャを備える。
【0023】
1実施形態において、これらの部分は、フルートを規定する。
【0024】
本発明のさらなる実施形態において、患者に透析を提供するための方法が提供される。この方法は、透析機の繊維束に血液を通過させる工程、およびこの透析機を通して透析液を通過させる工程を包含する。その結果、この透析機は、繊維束の一部とは別の部分を備え、より多い透析液がこの繊維束の内部を通るようにする。
【0025】
本発明の利点は、改善された透析機を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる利点は、患者に透析を提供する改善された方法を提供することである。
【0027】
なおさらに、本発明の利点は、透析機のための改善されたハウジング設計を提供することである。
【0028】
さらに、本発明の利点は、透析機において、改善された流体流れを提供することである。
【0029】
さらに、本発明の利点は、改善された効率を有する透析機を提供することである。
【0030】
本発明の別の利点は、血液透析のための改善された透析機を提供することである。
【0031】
さらに、本発明の利点は、多数の治療において使用され得る改善された透析機を提供することである。
・本発明はさらに、以下を提供する:
・(項目1)
透析機であって:
内部を規定し、透析液入口および透析液出口を備えるケーシング;
上記ケーシングの内部に位置し、繊維束を規定する複数の繊維;ならびに
上記透析液入口と流体連絡しており、上記繊維束の一部に伸びる複数のフルートを備える透析液入口流体チャネルであって、上記フルートは、透析液が、上記入口流体チャネルから上記ケーシングの内部に流れるのを可能にする開口部を規定する、透析液入り口流体チャネル、を備える、透析機。
・(項目2)
上記透析液出口と流体連絡しており、そして上記繊維束の一部に伸びる複数のフルートを備える透析液出口流体チャネルを備え、上記フルートは、透析液が、上記ケーシングの内部から上記透析液出口流体チャネルに流れるのを可能にする開口部を規定する、項目1に記載の透析機。
・(項目3)
上記出口流体チャネルおよび入口流体チャネルが、実質的に同じ構造を有する、項目2に記載の透析機。
・(項目4)
上記ケーシングがプラスチック製である、項目1に記載の透析機。
・(項目5)
8つのフルートを備える、項目1に記載の透析機。
・(項目6)
上記透析液入口流体チャネルの上部分が、ポッティング材料により規定される、項目1に記載の透析機。
・(項目7)
上記フルートが、上記透析機の第1端部の外周全体を囲む、項目1に記載の透析機。
・(項目8)
上記フルートの上記開口部がスロットである、項目1に記載の透析機。
・(項目9)
各フルートが、別個の開口部を規定する、項目8記載の透析機。
・(項目10)
透析機であって:
内部を規定し、透析液入口を有する第1端部および透析液出口を有する第2端部を備えるケーシング;
上記内部に位置し、概第1端部から概第2端部に伸びる、複数の繊維を備える繊維束;
上記透析液入口と流体連絡した流体入口チャネルであって、上記流体入口チャネルは、一部、第1端部の外部表面を規定する上記ケーシングの一部および上記内部の一部を囲む内部壁によって規定され、上記内部壁は、上記繊維束に伸びる部分を備え、上記部分の少なくとも1つは、流体が、上記チャネルから上記内部へと流れるのを可能にするアパーチャを備える、流体入り口流体チャネル;ならびに
上記透析液出口と流体連絡した流体出口チャネルであって、上記流体出口チャネルは、一部、第1端部の外部表面を規定する上記ケーシングの一部および上記内部の一部を囲む内部壁によって規定され、上記内部壁は、上記繊維束に伸びる部分を備え、上記部分の少なくとも1つは、流体が、上記チャネルから上記内部へと流れるのを可能にするアパーチャを備える、流体出口チャネル、
を備える、透析機。
・(項目11)
上記内部壁が、複数の半円形構造を規定する、項目10に記載の透析機。
・(項目12)
上記出口流体チャネルおよび入口流体チャネルが、実質的に同じ構造を有する、項目1
0に記載の透析機。
・(項目13)
上記透析液入口チャネルの上部分が、ポッティング材料によって規定される、項目10に記載の透析機。
・(項目14)
上記アパーチャがスロットである、項目10に記載の透析機。
・(項目15)
上記流体入口チャネルおよび流体出口チャネルが、アパーチャを各々備える、上記繊維束へと伸びる少なくとも6つの別個の部分を備える、項目10に記載の透析機。
・(項目16)
透析機であって:
内部を規定し、透析液入口を有する第1端部および透析液出口を有する第2端部を備えるケーシング;
繊維束;ならびに
入口流体チャネルと流体連絡した透析液入口であって、上記入口流体チャネルは、少なくとも一部、上記ケーシングの内部壁、ポッティング材料、および上記第1端部の上記内部を囲む内部壁によって規定され、そして上記繊維束の繊維を受容するための領域を規定する複数の部材および上記繊維束へと伸びる部分を備え、上記部分の各々は、透析液が上記ケーシングの内部へと流れるのを可能にするためのアパーチャを備え、上記繊維束へと伸びる、透析液入口、
を備える、透析機。
・(項目17)
上記部分がフルートを規定する、項目16に記載の透析機。
・(項目18)
上記第2端部が、透析液出口流体チャネルを備え、上記透析液出口流体チャネルは、上記繊維束の一部に伸びる複数のフルートを備え、上記フルートは、透析液が、上記ケーシングの内部から上記透析液出口流体チャネルへと流れるのを可能にする開口部を備える、項目16に記載の透析機。
・(項目19)
上記出口流体チャネルおよび入口流体チャネルが、実質的に同じ構造を有する、項目18に記載の透析機。
・(項目20)
8つのフルートを備える、項目17に記載の透析機。
・(項目21)
上記フルートの上記開口部がスロットである、項目17に記載の透析機。
・(項目22)
患者に透析を提供する方法であって:
透析機の繊維束に血液を通す工程;および
上記透析機を通して透析液を通す工程であって、上記透析機は、上記繊維束の一部を分離する部分を備え、より多くの透析液が、上記繊維束の内部に流れるようにしている、工程、
を包含する、方法。
・(項目23)
上記透析機が、透析液入口流体チャネルを備え、上記透析液入口流体チャネルは、少なくとも一部、上記ケーシングの内部壁、ポッティング材料、および上記第1端部の上記内部を囲む内部壁によって規定され、そして上記繊維束の繊維を受容するための領域を規定する複数の部材および上記繊維束へと伸びる部分を備え、上記部分の各々は、透析液が上記ケーシングの内部へと流れるのを可能にするためのアパーチャを備え、上記繊維束へと伸びる、項目22に記載の方法。
・(項目24)
上記分離する部分が、複数のフルートである、項目22に記載の方法。
・(項目25)
上記患者に、血液透析が提供される、項目22に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態および図面の詳細な記載に記載され、そしてその記載から明らかである。
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明は、改善された透析機およびこの透析機を使用する方法を提供する。以下に示される実施形態において、この透析機は、血液透析のために使用されるが、この透析機は、多数の異なる治療において使用され得ることに留意すべきである。これに関して、この透析機は、従来型でない血液透析方法において使用され得る。このような方法としては、例えば、血液透析を含んでも含まなくてもよい再生および連続フロー治療(例えば、連続フロー腹膜透析)が挙げられる。さらに、1実施形態において、本発明は、慢性腎不全または慢性腎疾患を有する患者に透析を提供する方法において利用され得、本発明は、例えば、救急救命室での設定における、緊急の透析の要求のために使用され得る。
【0034】
ここで、図1を参照すると、透析機10が一般に例示されている。この透析機10は、一般にケーシングを備える本体部材12を備える。このケーシングは、コアセクション14、ならびにこの透析機10の各端部に位置する2つのベル部材16および18を備える。コアまたはケーシング内に、繊維束20が配置される。
【0035】
繊維束20は、複数の中空繊維膜を備える。これらの膜は、選択的透過性を有する半透性である。これらの膜は、一緒に束にされ、そして繊維の管腔を通って並行した様式で血
液が同時に流れることを可能にする様式でアセンブリされ、一方で血液洗浄液(透析液)は、このケーシングを同時に通過する。理論的に、これは、透析液を中空繊維の外部表面に浴びせる。種々の化合物が、選択的透過性の膜を生成するために使用され得、この化合物としては、以下のようなポリマーが挙げられる:セルロース;酢酸セルロース;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリビニルアルコール;ポリメタクリレート;ポリスルホン;およびポリオレフィン。繊維束20は、透析機の各端部にてカプセル化され、繊維の周りの血流を防止する。
【0036】
透析機の第一端部には流体入口22が配置され、第二端部には流体出口24が配置され、これらは、流体入口ヘッダー26および流体出口ヘッダー28によって規定される。種々のヘッダー設計が利用され得る。好ましい実施形態において、この入口ヘッダー26および出口ヘッダー28は、本願と共に出願された米国特許出願番号_____、表題「Hemodialyzer Headers」(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に示されるような設計を有する。しかし、任意のヘッダー設計が利用され得る。
【0037】
透析機本体10はまた、透析液入口30および透析液出口32を備える。例示される好ましい実施形態において、この透析液入口30および透析液出口32は、半径方向(すなわち、血液の流体フロー通路に対して垂直方向)の流体フローチャネルを規定する。この透析液入口30および透析液出口32は、透析液が、透析機の内部34へと流れて、繊維および繊維束20の外部表面に浴びせられ、次いで出口32を通って出ることを可能にするように設計される。当該分野で公知であるように、このことは、老廃物および他の毒素が、この繊維の半透性膜を介して血液から除去され、そして透析液によって運び去られるようにする。
【0038】
本発明に従って、改善された入口および/または出口の設計が提供される。これは、繊維束を通る透析液の改善された灌流を提供する。これに関して、中空繊維透析機が最適に機能するためには、3つの物質移動抵抗が最小化されなければならない。これらの物質移動抵抗としては、以下が挙げられる:1)血液抵抗;2)膜抵抗;および3)透析液抵抗。所定の繊維の型および血流速度について、血液抵抗および膜抵抗は、実質的に固定される。しかし、透析液抵抗は、一部、ケース設計、繊維パッキング密度および流体フロー経路の有効な形状によって決定される。
【0039】
代表的な透析機において、ベルならびに透析液入口および透析液出口は、中空繊維を取り囲むまっすぐな壁を有する。以下に示される実験的試験は、このような設計における透析液短絡の存在を明らかにする。すなわち、繊維束の外部表面と透析機のコア壁との間透析液フローの、有意な軸方向のストリームである。血液保持繊維と接触した流体が低減するので、このことは、透析機の非効率的な使用を生じる。さらに、コア中の透析液流体の滞留時間は、これらの領域における増大したフロー速度に起因して、短い。より高い繊維パッケージング密度が短絡を低減するということが実験的に観察されているが、繊維密度における増大は、この束の中心への透析液の灌流をより困難にする。
【0040】
実施例2には、計算流体力学(CFD)研究が示される。これらの研究は、種々の軸方向位置での繊維束の直径を超えるフロー分布に変動が存在することを実証する。現在の設計が、束の中心への十分な流体フローを提供しないことは明らかである。この影響は、ケースのベル/コア連結部の近傍で最も優勢である。
【0041】
本発明の透析機の透析液入口30および透析液出口32は、短絡を低減する設計を提供する。この設計はまた、束20への透析液の灌流を改善する。本発明の設計の観点から、繊維端部は、先行技術の設計ほどには、コアのベルのより大きい内径のチャンバへと外側に歪まない。その代わり、外側の繊維が束から引き出される構造が提供される。このこと
は、束コアへの改善されたアクセスを提供する。
【0042】
この目的のために、図2〜5を参照して、本発明は、当該分野で公知の、繊維束を密封するポッティング材料によって規定される、外壁40、内壁42および上部壁(示さず)によって規定される入口流体フローチャネル38を提供する。流体は、透析液入口30から入口流体チャネル38へと流れる。この入口流体チャネル34は、好ましくは、透析液入口30の下および上に延びる。従って、透析液は、透析液入口30を通って入口流体チャネル34に入り、そしてこのチャネルの周りを、透析機へと流れる。
【0043】
示されるように、外壁40はまた、透析機10のケーシングの外側を規定する。上記で留意されるように、内壁42は、外壁40と共に、入口フローチャネル38を規定する。この内壁はまた、複数のフルート(例示される実施形態において、8つのフルート50、52、54、56、58、60、62および64)を備える。例示される好ましい実施形態において、これらのフルート50、52、54、56、58、60、62および64は、半円形の構造を規定する。これらのフルートは、開口部51、53、55、57、59、61、63および65を規定する。例示される好ましい実施形態において、この開口部は、スロット形状である。しかし、種々の開口部が使用され得る。これらの開口部は、透析液が入口フローチャネル38を通って流れて透析機10の内部34に入ることを可能にする。
【0044】
フルート50、52、54、56、58、60、62および64の構造に起因して、繊維束20の一部は、フルートの各々の半円形部分内に受容される。このことにより、束20は、ポッティング材料の下に分離され、ポッティング材料の直ぐ下の領域での繊維密度を低減する。さらに、この設計により、フルートの開口部がポッティング材料へと延びることが可能となる。従って、透析液は、入口チャネル内に受容される場合、この束へと注入される。
【0045】
透析機10の外壁40と、フルート50、52、54、56、58、60、62および64を規定する内壁42との間の空間は、有意な圧力低下なしに、十分な透析液をスロット51、53、55、57、59、61および63を通って流すのに十分である。スロット幅が、その位置、およびポッティング手順から生じ得るポッティング深さにおける外周の差異の原因であるスロット順序に依存して、変化し得ることに留意すべきである。このことにより、全てのスロット位置での流速が等しくなる。
【0046】
例示されるように、8つのフルート50、52、54、56、58、60、62および64が提供され、従って、8つの開口部またはスロット51、53、55、57、59、61および63が提供されるが、より少ないフルートが提供され得る。しかし、8が理想的な数であり得ると考えられる。
【0047】
好ましくは、透析機10の出口端部70は、透析液入口の構造と類似した構造を備える。これに関して、透析液出口70は、透析液入口フローチャネル38に類似する透析液出口チャネル(示さず)を備える。しかし、このことは必ずしも必要ではなく、透析液出口70は、先行技術において公知の標準的なベル構造のものであり得る。しかし、製造の容易さを含む特定の利点が、この透析液入口と実質的に同一な透析液出口を作製することによって達成される。
【0048】
限定ではなく例として、本発明の実施例を以下に提供する。
【実施例】
【0049】
(実施例番号1)
以下の計算は、透析機クリアランスに対する、透析液短絡ならびに血液および透析液の不均衡配分の影響を例示する。また、短絡および不均衡配分が排除され得る場合の、既存の透析機のクリアランスにおける改善についての概算が、以下に示される。
【0050】
向流透析機のクリアランス(CL)は、以下の等式によって提供される:
CL=Qb{1−exp[(KA/Qb)(1−Qb/Qd)]}/{Qb/Qd−exp[(KA/Qb)(1−Qb/Qd)]}
ここで、
K=目的の溶質についての透析機の全体的な物質移動係数であり、これは、膜の血液側および透析液側に対する物質移動係数(抵抗の逆数)、ならびに膜自体の物質移動係数からなる(分/cm)。
A=透析機の面積(sq.cm)。
Qb=血流速度(ml/分)。
Qd=透析液流速(l/分)。
Qb=Qdの場合、CL=Qb(KA/Qb)/[(KA/Qb)+1]。
【0051】
これらの等式は、測定された尿素クリアランスから、標準的な透析機の3つの質量移動抵抗を計算するために使用され得る。血液側の抵抗は7.6分/cmであり、膜抵抗は4.6分/cmであり、そして透析液側の抵抗は6.4分/cmである。
【0052】
これらの等式はまた、フローの短絡および不均衡配分の影響を示すために、透析機のクリアランスを計算するためにも使用され得る。
【0053】
(透析液短絡の影響)
透析液フローの一部が、中空繊維透析機の繊維束を通過しないが、束とケースとの間で短絡する場合、この透析機のクリアランスは低減する。分析目的のために、本発明者らは、上記等式中の透析液流速が、短絡の量によって低減されると仮定する。
【0054】
表1および2は、2.0平方メートルおよび2.4平方メートルの透析機についての、透析液短絡を有する尿素クリアランスの低減を示す。全体の質量移動係数は、短絡によって引き起こされた有効な透析液フローの低減に起因して、より低い透析液側の質量移動係数にみあうように、下方に調節されている。これら2つの表から、大きい透析機短絡が、透析機のクリアランスを劇的に低減し得ることが見出され得る。300ml/分の血流および500ml/分の透析液フローを有する2.0平方メートルの透析機についての、透析液短絡の割合の関数としての尿素クリアランスは、269ml/分から229ml/分まで、透析液短絡が40%低減された。2.4平方メートルの透析機について、クリアランスは、40%の短絡に起因して、278ml/分から238ml/分まで低下する。
【0055】
この分析をまた使用して、既知の大きさの短絡が排除される場合の透析機のクリアランスの増加を予測し得る。測定または計算されたクリアランス値および仮定された短絡の大きさから、この透析機の全体の質量移動係数は、前述の等式から決定され得る。Kの計算値を使用し、そして仮定された短絡の排除を仮定して、改善されたクリアランスが計算され得る。表3は、1.3、1.6、1.8および2.0平方メートルの透析機の予測された尿素クリアランスを示し、ここで、0%、10%、15%および20%の短絡は、300ml/分の血流および500ml/分の透析液流速について、排除されている。
【0056】
(血液および透析液の不均等分布の影響)
繊維を通じた血流の分布が均一でなく、そして/または繊維束を通じた透析液の流れの分布が均一でない場合、透析機のクリアランスは、困難であり得る。表4は、2.0平方メートル透析機における4つの異なる不均等分布の結果を示す。
【0057】
表4において、1行目は、不均等分布のない透析機の尿素クリアランスを提供する。2行目は、血流が10%高い透析機の尿素クリアランスを提供する。3行目は、10%低い血流による尿素クリアランスである。繊維の半分が10%高い血流を有し、もう半分が10%低い血流を有する透析機において、この透析機のクリアランスは、2行目および3行目のクリアランスの平均であり、これを4行目に示す。透析機の2つの半分にまたがる血流の10%の不均一分布について、尿素クリアランスは、268.8ml/分から267.6ml/分へと減少するのみであり、少量の減少である。
【0058】
表4の5行目、6行目、および7行目は、10%の血流変化に加えられた、透析液の流れにおける10%の変化を示す。より高い血流は、透析液の流れがより低い場合に生じる(束の中心付近で生じ得るものとして)。ここでは、尿素クリアランスは、265.8ml/分にさらに低下した。
【0059】
9行目および10行目において、透析液の不均一分布は、20%に増加する。尿素クリアランスは、262.8ml/分にさらに低下する。
【0060】
11行目、12行目、および13行目において、血液および透析液の10%の変化が、ここでも考慮されるが、ここでは、最大血流速度は、最大透析流が生じる場合に生じる(接線方向の血液入口ヘッダーを有する透析液の繊維束の外部部分で起こり得るものとして)。ここでは、尿素クリアランスは、268.3ml/分であり、いかなる不均一分布も有さない透析機とほぼ同じであった。
【0061】
表4の計算と同様の計算を用いると、血液および透析液の両方の20%の不均一分布は、血液または透析液のいずれかの流れの不均一分布が補正される場合に期待され得る300ml/分血流および500ml/分透析液流での2.0平方メートル透析機については、透析機クリアランスにおけるクリアランス低下において12ml/分の低下を引き起こす。
【0062】
表5は、10%の血液不均一分布を有する2.4平方メートル透析機について、表4と同様の結果を提供する。ここでは、20%の透析液の短絡が、クリアランスを276.5ml/分(4行目)から271.3ml/分(10行目)に低下させることが見出される。
【0063】
表6は、500ml/分の血流および800ml/分の透析液流についての同様の結果を提供する。ここでは、20%の透析液の不均一分布が、409.6ml/分(4行目)から402.7ml/分(10行目)へのクリアランスの低下を引き起こす。
【0064】
(結論)
前述の計算は、透析液の短絡が、透析機のクリアランスを有意に低下させ得ることを示す。透析液の短絡の排除により、透析機のクリアランスは有意に上昇する。
【0065】
これらの計算はまた、血液および透析液の流れの不均一分布が、透析機のクリアランスを有意に低下させ得ることを実証する。透析機の血液側または透析液側のいずれにおいても、流れの不均一分布の排除は、クリアランス値を改善する。
【0066】
【表1】


【0067】
【表2】


【0068】
【表3】

【0069】
【表4】


【0070】
【表5】


【0071】
【表6】


(実施例2)
計算流体力学(CFD)分析を、種々の設計の透析機において生じる血流および透析液流の移動現象に対して実施した。この実験により、多孔性繊維壁を通じた血流と透析液流との間の質量移動(限外濾過)が存在しないと推測された。2つの流場(fluid field)を、別個に分析した。いくつかの異なるハウジングのバリエーションおよびヘッダーの設計を、検討した。多孔性媒体モデルを用いて、繊維束における流れをシミュレートした。繊維束に対する流れの透過性を、CDFモデルから算出した。
【0072】
この研究によって、一般に、繊維束中の血流分布が完全に均一であることが結論付けられた。しかし、通常、流れの停滞した領域が、入口ヘッダーに存在する。平坦にしたヘッダー設計は、この流れの停滞した領域を大いに減少し得る。
【0073】
透析液流の分布は、流体入口および流体出口に隣接する領域について、全く不均一である。しかし、本発明の透析機ヘッダー設計についての透析液の分布は、従来の透析機よりも均一である。
【0074】
透析機には数千の繊維が存在する。各繊維付近での詳細な流れの分布を解決するのは容易なことではない。多孔性媒体モデルは、ここで、繊維束における全体の流れおよび圧力の分布をモデル化するために使用される。このモデルによって、流れの領域において圧力と抵抗力との間に、次式:
−K=δp/δξ
(ここで、(i=1,2,3)は、3つの直交する方向(異なる物質特性または状態を有する3つの互いに直交する主要な軸)を表す)
のような局部的な平衡が存在することが推定される。Kは透過性であり、そしてUは方向ξにおける見かけの流速(総断面積で除算された体積流量である)。透過性Kは、以下の等式:
【0075】
【数1】

(ここで、αおよびβは、特定の流れについての定数であり、
【0076】
【数2】

は、見かけの流速のベクトルである)
により算出される。Darcyの法則における透過性は、次式:
−μU=κδp/δξ
(ここで、κは透過性であり、μ/Kに等しい)
として定義されることに留意のこと。
【0077】
透析機における流れは、層流であり、安定した状態であり、非圧縮性であり、そしてニュートン流れであると推定される。多孔性媒体流モデルについての透過性は、実験的に測定される繊維束における流れの圧力低下から生じるはずである。しかし、実験データは、入手可能でない。他の代替物は、圧力分布を数学的に解析することである。第1に、繊維は、固定されたずれたパターン(fixed staggered pattern)で配置されることが推定される。繊維間の空間は、所定の繊維のパッキングファクターから算出される。
【0078】
透析機において、血流は、中空繊維の内側である。軸方向に沿った多孔性媒体の流体透過性は、完全に構築された層状のパイプフローについての圧力低下に基づき算出される。この透過性は、交差流について測定不能である。
【0079】
繊維の外側の透析液流について、圧力低下は、いくつかの層の繊維における流れについて、数学的に算出される。次いで、流れの透過性は、特定の繊維構成についての計算された圧力勾配から算出される。軸方向の流れの圧力低下は、交差流の圧力低下と異なり、そして各方向の流れは、別個に算出される。
【0080】
多孔性媒体モデルが、実際の複雑化した流れの問題の近似にすぎないことに注意されたい。透析機における繊維分布は、通常、不均一であり、そして流れの透過性は、空間的に異なる。
【0081】
この研究において、2つの透析機設計を分析した。第1は、先行技術の透析機の細長版であり、第2は、本発明の透析機である。両方の場合のインプットパラメータを、表7に示す。
【0082】
細長の先行技術の透析機において、透析液を、入口ベルにおいて束に導入し、この束に沿った全ての繊維の周辺を曝す。本発明の透析機において、入口ベル領域に8つのスロットが存在し、これを通って、透析液を、繊維束の隣接する区画に導入する。スロットの幅および長さは、それぞれ、0.031’’および0.294’’である。各透析機の反対の(出口)端部のベル構成は、それぞれの入口と同一である。
【0083】
アウトプット値を、表8に示す。細長の先行技術の透析機について、透析液流速がフロー入口および出口付近であまり不均一でなく、最大値と最小値との間に50%の差が存在することが見られる。速度プロフィールは、束の中央区画においてより均一であり、最大値と最小値との間の差が約2%である。
【0084】
透析液流速500ml/分での本発明の透析機について、透析液流速は、フロー入口および出口付近で均一であり、最大値と最小値との間に6%の差を示す。束の中央区画において、0.5%のフロー変動が存在する。この透析機の流れの特性もまた、透析液流速1000ml/分について示す。
【0085】
(結論)
この研究は、本発明の透析機における透析液流が、細長の先行技術の透析機よりも均一であることを示した。このことは特に、透析液の入口および出口付近の流れについてあてはまる。
【0086】
【表7】

【0087】
【表8】


本明細書中に記載される本発明の好ましい実施形態に対する種々の変更および改変が、当業者に明らかであることが、理解されるべきである。このような変更および改変は、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、そしてその意図する利点を排除せずになされ得る。従って、このような変更および改変は、添付の特許請求の範囲により網羅されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明の透析機の1実施形態の透視図を示す。
【図2】図2は、本発明の透析機の1実施形態の上部立面図を示す。
【図3】図3は、繊維束が取り除かれた図2の透析機を示す。
【図4】図4は、図3の透析機の側方立面図を示す。
【図5】図5は、図4の透析機の断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されるような、透析機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−29857(P2008−29857A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242902(P2007−242902)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【分割の表示】特願2003−501527(P2003−501527)の分割
【原出願日】平成14年4月24日(2002.4.24)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】