説明

改変されたプロテインA溶離による向上したタンパク質精製

本発明は、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、低pHで始まるpH勾配で溶離させることを含む、C2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
この出願は、その開示の全体を出典明示によりここに援用する2009年9月1日出願の米国仮特許出願第61/238867号、及び2009年10月20日出願の米国仮特許出願第61/253438号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
この発明の分野は、一般に、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、pH勾配で溶離させることを含むC2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法に関する。
【発明の背景】
【0003】
タンパク質の大規模で経済的な精製は、バイオテクロノジー産業にとってますます重要な問題となっている。一般に、タンパク質は、そのタンパク質の遺伝子を含む組換え型プラスミドの挿入により対象のタンパク質を産生するように操作された哺乳動物又は細胞細胞株を使用する、細胞培養によって産生される。使用される細胞株は生きている生物体であるので、それには、通常は動物の血清の調製物から供給される増殖因子、アミノ酸、糖を含む複合増殖培地を与えなければならない。細胞に与えた化合物の混合物から、また細胞自体の副産物から所望のタンパク質を、ヒトの治療用として使用するために十分な純度まで分離することは、大変な挑戦である。
【0004】
細胞片からタンパク質を精製する手順は、最初はタンパク質の発現部位に依存する。細胞から周囲の増殖培地中へ直接分泌せしめられるタンパク質があり;細胞内で生産されるタンパク質もある。後者のタンパク質の場合、精製プロセスの最初の工程は、機械的剪断、浸透圧ショック、あるいは酵素処理を含む様々な方法により行うことができる細胞の溶解を含む。このような破壊は、細胞の全内容物をホモジネート中へ放出し、加えて、その微小なサイズのために取り除くことが難しい細胞内断片を作り出す。これらは一般に分画遠心法又は濾過法で取り除かれる。小規模ではあるが、細胞の自然死やタンパク質産生工程の過程での細胞内宿主細胞タンパク質の放出のために直接分泌されるタンパク質の場合にも同じ問題が生じる。
【0005】
対象タンパク質を含む清澄液が一旦得られれば、細胞によって産生される他のタンパク質からのその分離は、通常、異なるクロマトグラフィー法の組合せを使用して試みられる。精製されるべきタンパク質と固定された捕捉剤との間の特定の相互作用を利用するアフィニティクロマトグラフィーは、あるタンパク質(例えばヒト治療剤として使用されるタンパク質)に一般的に使用される。プロテインAは、Fc領域を含む抗体のようなタンパク質のアフィニティクロマトグラフィーのための有用な吸着剤である。プロテインAは、抗体のFc領域に高親和性(ヒトIgGに対して約10−8M)で結合する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureas)由来の41kDの細胞壁タンパク質である。しかしながら、タンパク質は凝集し又はミスフォールドされる傾向があるので、所望のタンパク質(つまり、単量体)は、これらのアフィニティカラムからの他の不純物、例えばタンパク質凝集物、細胞自体の副産物(つまり、宿主細胞不純物)、又はウイルスフィルター汚染物質(foulant)と共に同時精製されることが多い。
【0006】
その電荷、疎水性の度合い、又はサイズに基づいてこれらの不純物及びタンパク質の混合物を更に分離するために、他の技術、例えばイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、又は分子ふるいクロマトグラフィーが開発されている。幾つかの異なったクロマトグラフィー樹脂又は吸着剤がこれらの技術のそれぞれに利用可能であり、精製スキームを関与する特定のタンパク質に精確に適合させることができる。これらの分離方法のそれぞれの本質は、タンパク質が長い固相(例えばカラム)に沿って異なった速度で移動させ、それらが固相を下って更に通過するにつれて増加する物理的分離を達成するか、又は分離媒体に選択的に付着することができ、ついで異なった溶媒によって差次的に溶離されることである。しかしながら、これらの方法のそれぞれが更なるバッファー、樹脂又は吸着剤、及び更なる精製のための他の資源を必要とし、これが次には長い処理時間と高いコストを生じる。よって、タンパク質単量体を精製するためのより効率的で経済的な方法が必要とされている。
【0007】
プロテインAカラムを使用しpH勾配溶離系で溶離する、凝集物、多量体、及び修飾タンパク質からポリペプチドを精製する方法が米国特許出願第12/008160号に記載されている。
【0008】
ここで引用した全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が出典明示により特にかつ個々に援用されるべきことが示されているかの如く、同じ度合いであらゆる目的に対して、出典明示によりその全体がここに援用される。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、C2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法において、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、低pHで始まるpH勾配で溶離させることを含む方法を提供する。これらの精製方法は、宿主細胞不純物、ウイルスフィルター汚染物質、ウイルス又はウイルス様粒子、塩基性ポリペプチド変異体、及びポリペプチド凝集物を含む様々な不純物からのポリペプチド又は非凝集物の良好な逐次分離と精製画分/プール中に高純度の所望のポリペプチド単量体を達成するという利点を提供する。これらの方法は、様々なプロテインAクロマトグラフィー樹脂及びクロマトグラフィー吸着剤を使用して達成することができる。これらの方法はまた製造スケール及び商業プロセスで使用することができ、カラムクロマトグラフィー以外の別の下流精製技術の利用を容易にしうる。
【0010】
一態様では、本発明は、C2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法において、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、5.0以下で始まるpH勾配で溶離させることを含む方法を提供する。
【0011】
他の態様では、本発明は、C2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法において、(a)ポリペプチドをプロテインAに結合させる工程と、(b)溶離バッファーを使用して5.0以下で始まるpH勾配でポリペプチドを溶離させる工程を含み、ここで溶離バッファーが低pHバッファー及び高pHバッファーを含み、pH勾配が溶離バッファー中の各pHバッファーの割合を調整することによって形成される方法を提供する。
【0012】
幾つかの実施態様では、pH勾配は約pH4.2で始まる。他の実施態様では、pH勾配は約pH4.3で始まる。幾つかの実施態様では、pH勾配は約4.6で始まる。幾つかの実施態様では、pH勾配は3.0以上で終了する。幾つかの実施態様では、pH勾配は約3.7で終了する。
【0013】
幾つかの実施態様では、高pHバッファーが約pH5.0であり、低pHバッファーが約pH2.7である。
【0014】
幾つかの実施態様では、低pHバッファーの割合は約35%で始まる。 幾つかの実施態様では、約35%で低pHバッファーを含む溶離バッファーは約16.25mMのアセテートと8.75mMのホルマートを含有する。他の実施態様では、低pHバッファーの割合は約25%で始まる。幾つかの実施態様では、約25%で低pHバッファーを含む溶離バッファーは約18.75mMのアセテートと6.25mMのホルマートを含有する。幾つかの実施態様では、低pHバッファーの割合は約40%で始まる。幾つかの実施態様では、約40%で低pHバッファーを含む溶離バッファーは約15mMのアセテートと約10mMのホルマートを含有する。
【0015】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは約14g/Lで始まる充填密度で充填される。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは約14g/Lから約45g/Lの範囲の充填密度で充填される。
【0016】
幾つかの実施態様では、プロテインAはプロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂又はプロテインAクロマトグラフィー吸着剤である。幾つかの実施態様では、プロテインAクロマトグラフィー吸着剤はメンブラン又はモノリスである。
【0017】
幾つかの実施態様では、プロテインAはプロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂であり、ポリペプチドは約5カラム体積/hrから約25カラム体積/hrの範囲の溶離流量を有する。
【0018】
幾つかの実施態様では、プロテインAはプロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂であり、ポリペプチドの精製された画分は約12以下のプロテインAカラム体積を含む。
【0019】
幾つかの実施態様では、宿主細胞不純物がポリペプチドから分離される。幾つかの実施態様では、宿主細胞不純物はチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)である。
【0020】
幾つかの実施態様では、凝集物がポリペプチドから分離される。他の実施態様では、ウイルスフィルター汚染物質がポリペプチドから分離される。
【0021】
幾つかの実施態様では、ウイルス粒子又はウイルス様粒子がポリペプチドから分離される。他の実施態様では、塩基性ポリペプチド変異体がポリペプチドから分離される。
【0022】
幾つかの実施態様では、C2/C3領域が免疫グロブリンのFc領域を含む。
【0023】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは抗体である。幾つかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片である。
【0024】
他の実施態様では、ポリペプチドはイムノアドヘシンである。
【0025】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは少なくとも約98%の単量体の純度を有している。他の実施態様では、ポリペプチドは少なくとも約99%の単量体の純度を有している。
【0026】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比は、未精製ポリペプチドにおける比よりも少なくとも約75%低く、約80%低く、約85%低く、約90%低く、約95%低く、約96%低く、約97%低く、約98%低く、又は約99%低い。
【0027】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比は段階溶離法によって精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約20%低く、段階溶離法がポリペプチドをプロテインAに結合させ、3.6以下で始まるpHで溶離させることを含む。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比が段階溶離法によって精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約60%低く、段階溶離法がポリペプチドをプロテインAに結合させ、3.6以下で始まるpHで溶離させることを含む。
【0028】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは約15000粒子/ml未満のウイルス粒子又はウイルス様粒子数を有する。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、約12500粒子/ml未満、約10000粒子/ml未満、約7500粒子/ml未満、約5000粒子/ml未満、約2500粒子/ml未満、約1500粒子/ml未満、約1000粒子/ml未満約750粒子/ml未満、約500粒子/ml未満、約250粒子/ml未満、約100粒子/ml未満、又は約50粒子/ml未満のウイルス粒子又はウイルス様粒子数を有する。幾つかの実施態様では、ウイルス様粒子はレトロウイルス様粒子である。
【0029】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは少なくとも約4LRV(ウイルスのlog10減少)のウイルス又はウイルス様粒子のウイルスクリアランスを有する。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは約4LRVから約8LRVの範囲のウイルス又はウイルス様粒子のウイルスクリアランスを有する。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、約4LRVから約7LRVの範囲のウイルス又はウイルス様粒子のウイルスクリアランスを有する。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、約5LRV、約6LRV、約7LRV、又は約8LRVのウイルス又はウイルス様粒子のウイルスクリアランスを有する。幾つかの実施態様では、ウイルス様粒子はレトロウイルス様粒子である。
【0030】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドはポリペプチド単量体である。
【0031】
幾つかの実施態様では、プロテインAは修飾又は非修飾プロテインAリガンドである。
【0032】
幾つかの実施態様では、精製は製造スケールプロセスである。
【0033】
本発明の態様の何れかの幾つかの実施態様では、精製方法は、ポリペプチドにウイルス濾過工程又はイオン交換クロマトグラフィー工程を施すことを更に含む。幾つかの実施態様では、イオン交換クロマトグラフィー工程は精製工程後に実施される。
【0034】
本発明の態様の何れかの幾つかの実施態様では、精製方法は凝集物を除去するための更なる精製工程を含まない。
【0035】
本発明の態様の何れかの幾つかの実施態様では、精製方法はウイルスフィルター汚染物質を除去するための更なる精製工程を含まない。
【0036】
本発明の態様の何れかの幾つかの実施態様では、精製方法は塩基性ポリペプチド変異体を除去するための更なる精製工程を含まない。本発明の態様の何れかの幾つかの実施態様では、精製方法は酸性ポリペプチド変異体を除去するための更なる精製工程を含まない。
【0037】
他の態様では、本発明はここに記載された方法によって精製されたポリペプチド産物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1はpH段階勾配クロマトグラムを示す:x軸はプロテインAの実施の開始からのmLであり、y軸は吸光度(mAU)である。UV280トレース中の段階勾配溶離の特徴的な形状がまた示される−大きなピークが溶離開始にあり、ついで安定な高さまで減少し、低いpHで漸減する。
【図2】図2は抗VEGF抗体#1の画分によるSEC(分子ふるいクロマトグラフィー)の結果を示す。X軸はSECカラムでの保持時間(分)、Y軸は正規化されたUV吸光度(mAU)である。画分が増加すると(つまり、pHが勾配溶離の進行に応じて減少すると)、HMWS(高分子量種)及び二量体ピーク(それぞれ約12.5分及び13.5分の保持時間)がまた増加する一方、単量体ピークが減少する(16分の保持時間)。これらの曲線の結果は、全てのピーク(例えばHMWS、二量体、及び単量体)を積分し、別個の相対ピーク面積をパーセントとして比較する(例えば全面積を100%に設定し、試料のSEC積分プロファイルが割合を、例えば「31%のHMWS、36%の二量体、及び33%の単量体」のように付与しうる)ことにより定量した。
【図3】図3は抗VEGF抗体#1に対するSEC積分結果のグラフを示す。このグラフは、単量体レベルが最初の9の溶離画分に対して高く、4の画分が100%であり、二量体及びHMWSレベルが溶離において後にピークになったことを示している。これらのアッセイの結果は、pH段階勾配が抗VEGF抗体#1の単量体から凝集物を分離することを証明している。
【図4A】図4Aは、複数のタンパク質分子(抗CD20抗体、抗VEGF抗体#2、抗MUC16、及び抗CD4抗体)に対するSEC積分プロファイルを示している。pH段階勾配は抗CD20抗体、抗VEGF抗体#2、抗MUC16、及び抗CD4抗体において凝集物から単量体を成功裏に分離した。
【図4B】図4Bは、細菌(大腸菌)宿主細胞発酵によって産生された非グリコシル化一アームの抗MET抗体に対するSEC積分プロファイルを示している。pH段階勾配は非グリコシル化一アームの抗MET抗体において凝集物から単量体を成功裏に分離した。
【図5】図5は抗CD20抗体の標準的な段階溶離(コントロール;pH勾配なしに3.6以下のpHでタンパク質を溶離する)及びpH段階勾配溶離間の並べての比較を示す。左パネルの抗CD20抗体及びCHOP溶離グラフはppm(百万分率;生成物の量に対する不純物の標準化測定に使用される単位)での画分当たりのCHOPレベルを示す。右パネルの抗CD20抗体及び凝集物溶離グラフは勾配溶離による画分当たりのSECピーク積分値を示す。左及び右パネル双方の垂線は、スライドの底部の表に示された特性を持つpH勾配溶離プールを生成する含まれている画分の偽のプール化を表す。
【図6】図6は抗VEGF抗体#1に対するCHOP分離を示す。画分当たりのCHOPレベルはppm又はng/mLで表される。
【図7】図7は抗MUC16抗体に対するCHOP分離を示す。画分当たりのCHOPレベルはppm又はng/mLで表される。
【図8】図8は、MABSELECT(商標)、MABSELECT SURE(商標)、ROSEP(登録商標)Va、PROSEP(登録商標)Ultra Plus、及びPOROS(登録商標)MABCAPTURE(商標)AプロテインA樹脂クロマトグラムオーバーレイである。
【図9】図9は開始B%(溶離勾配の開始pH及び傾斜)が凝集物分離効率を決定する最も影響のあるパラメータであり、充填密度及び滞留時間が続くことを示すパレートプロットである。
【図10】図10は開始B%、充填密度及び開始B%、全溶離長、及び滞留時間のパラメータの相互作用プロファイルである。
【図11】図11はpH段階勾配溶離の例示的な製造実施である。
【図12】図12は、2つのサイズのカチオン交換メンブラン及び3つのサイズのアニオン交換メンブランを使用する下流のイオン交換メンブラン研究の結果を示している。コイン及びナノ単位は共にメンブラン層の数での製造を表す一方、ACRODISC(商標)単位は減少した数の層を有するが、使用される典型的なベンチスケールのモデルである。
【図13】図13は4.1Lカラム(パイロットスケール)及び28mLのベンチスケールのカラムの実施間のSEC積分結果の比較を示す。
【図14】図14は、VIRESOLVE(登録商標)Proパルボウイルスフィルターに対するより大きな質量スループットの容易化の点で、プロテインAのpH段階勾配対 プロテインAの標準的工程を比較する抗VEGF抗体#1のVIRESOLVE(登録商標)Pro透過率減衰グラフである。プロテインAのpH段階勾配を使用するVIRESOLVE(登録商標)Proに対する質量スループットに約6倍の増加があった。
【図15】図15は、21g/Lの充填密度での完全なpH勾配に対する実際のAKTA UNICORN(商標)クロマトグラフィーソフトウェアトレースを示すプロテインAの完全なpH勾配溶離クロマトグラムである。勾配の開始時の初期の高いUV250スパイクがなく、溶離の開始時のpHが、プロテインAカラムから生成物を溶離させるのに必要とされるものよりの高いことを示している。
【図16】図16は、pH5.0−2.7のpH勾配試験(0−100%B)AKTAクロマトグラムであり、抗VEGF抗体#1がpH4.6−3.6の範囲で離散ピークとして溶離することを示している。
【図17】図17はプロテインAのpH段階勾配溶離画分にわたるイオン交換変異体アッセイピーク積分であり、段階勾配溶離のテール部分における塩基性ポリペプチド変異体の分離を示す。
【図18】図18は抗VEGF抗体#1生成物溶離に対してグラフ化した画分当たりのQPCR(定量的ポリメラーゼ連鎖反応)分析からのRVLP(レトロウイルス様粒子)粒子数である。RVLPの大半は勾配の後で溶離され、そこでは、少しの生成物溶離しか生じなかった。
【図19】図19は、抗VEGF抗体#1のプロテインAのpH勾配溶離における各画分に対するLRV(ウイルスのlog10減少)である。
【図20】図20は画分の偽プールの累積LRVを示し、後の画分が省かれると高いLRVをプロテインAプールで達成することができることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、低pHで始まるpH勾配で溶離させることによって、C2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法を提供する。本発明者は、低pHでのpH勾配でプロテインAからC2/C3領域を含むポリペプチドを溶離させると、宿主細胞不純物, ウイルスフィルター汚染物質、ウイルス又はウイルス様粒子、塩基性ポリペプチド変異体、及び/又はポリペプチド凝集物を含む様々な不純物からのポリペプチドの良好な逐次分離をもたらし、また精製画分/プール中の高純度又は割合の所望されるポリペプチド単量体を達成することができるという特筆すべき発見をなした。よって、本発明は顕著な利点を有している。本発明者はまたこれらの方法が様々なプロテインAクロマトグラフィー樹脂及びクロマトグラフィー吸着剤を使用して達成することができえうことと、これらの方法を製造スケール及び商業的プロセスで使用することができ、カラムクロマトグラフィー以外の代替の下流の精製技術(例えばメンブラン吸着体)の利用を容易にしうることを発見した。
【0040】
従って、本発明の一態様では、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、5.0以下で始まるpH勾配で溶離させることによって、C2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法が提供される。
【0041】
本発明の他の態様では、C2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法において、
(a)ポリペプチドをプロテインAに結合させる工程と、(b)溶離バッファーを使用して5.0以下で始まるpH勾配でポリペプチドを溶離させる工程を含み、ここで溶離バッファーが低pHバッファー及び高pHバッファーを含み、pH勾配が溶離バッファー中の各pHバッファーの割合を調整することによって形成される方法が提供される。
【0042】
本発明の更に他の態様では、ここに記載された方法によって精製されるポリペプチドが提供される。
【0043】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技量の範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の一般的技術を用いる。このような技術は、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 2版(Sambrook等, 1989) Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編, 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis編, 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R.I. Freshney編, 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather及びP.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths,及びD.G. Newell編, 1993-1998) J. Wiley and Sons; Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir及びC.C. Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller及びM.P. Calos編, 1987);Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel等編, 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis等編, 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan等編, 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway及びP. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practical approach (D. Catty.編, IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd及びC. Dean編, Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow及びD. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti及びJ.D. Capra編, Harwood Academic Publishers, 1995)等の文献に十分に説明されている。
【0044】
定義
ここでの対象のポリペプチドはC2/C3領域を含むものであり、よってプロテインAによる精製を受け入れられるものであることが理解される。ここで使用される場合、「C2/C3領域」なる用語は、プロテインAと相互作用する免疫グロブリン分子のFc領域中のアミノ酸残基を意味する。幾つかの実施態様では、C2/C3領域はインタクトなC2領域にインタクトなC3領域が続くものを含み、最も好ましくは、免疫グロブリンのFc領域を含む。C2/C3領域含有タンパク質の例は、C2/C3領域に融合した、又はこれとコンジュゲートした対象のタンパク質を含む抗体、イムノアドヘシン及び融合タンパク質を含む。
【0045】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」なる用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを意味するためにここでは交換可能に使用される。ポリマーは直鎖状又は分岐状であり得、改変されたアミノ酸を含み得、非アミノ酸が介在されうる。該用語はまた天然に修飾されているか、又は介入により、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作又は修飾、例えば標識化成分とのコンジュゲーションにより修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する。また定義に含まれるものは、例えば、(例えば非天然アミノ酸等を含む)アミノ酸の一又は複数のアナログ、並びに当該技術分野で知られている他の修飾を含むポリペプチドである。
【0046】
ここで使用される場合、「精製されたポリペプチド」又は「精製されたタンパク質」なる用語は、ここに記載されたpH勾配法を使用してプロテインAアフィニティクロマトグラフィーから溶離された産物である。精製されたポリペプチド/タンパク質は好ましくは大部分はポリペプチド単量体を含む。
【0047】
ここで使用される場合、「未精製ポリペプチド」、「未精製タンパク質」、又は「タンパク質負荷」なる用語は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィー精製工程前の充填材料又は開始材料中のポリペプチド又はタンパク質である。
【0048】
ここで使用される場合、「不純物(impurity又はimpurities)」なる用語は、所望されるポリペプチド単量体産物とは異なる物質である。不純物は、限定しないが、ポリペプチド変異体 (例えば酸性又は塩基性ポリペプチド変異体),ポリペプチド断片, 所望のポリペプチド単量体の凝集物又は誘導体、他のポリペプチド、脂質、核酸、エンドトキシン、宿主細胞不純物、又はウイルスフィルター汚染物質を含む。
【0049】
ここで使用される場合、「単量体」なる用語は、C2/C3領域を含むポリペプチドの単一単位を意味する。例えば、抗体の場合、単量体は二つの重鎖及び二つの軽鎖からなり;一アーム抗体の場合は、単量体は一つの重鎖及び一つの軽鎖からなる。
【0050】
ここで使用される場合、「塩基性ポリペプチド変異体」又は「塩基性変異体」なる用語は、対象のポリペプチドよりも(例えばカチオン交換クロマトグラフィーによって決定して)塩基性である対象のポリペプチドの変異体を意味する。
【0051】
ここで使用される場合、「酸性ポリペプチド変異体」又は「酸性変異体」なる用語は、対象のポリペプチドよりも(例えばカチオン交換クロマトグラフィーによって決定して)酸性である対象のポリペプチドの変異体を意味する。
【0052】
ここで使用される場合、「凝集物」なる用語は、C2/C3領域を含むポリペプチド又はポリペプチド断片の任意の多量体を意味する。例えば、凝集物は、二量体、三量体、四量体m又は四量体より大きい多量体等でありうる。
【0053】
ここで使用される場合、「宿主細胞不純物」なる用語は、宿主細胞株、細胞培養液、又は細胞培養物によって導入される任意のタンパク質様汚染物質又は副産物を意味する。例としては、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)、大腸菌タンパク質、酵母タンパク質、サルCOSタンパク質、又は 骨髄腫細胞タンパク質(例えばNS0タンパク質(BALB/cマウス由来のマウス形質細胞腫細胞))が含まれる。
【0054】
ここで使用される場合、「ウイルスフィルター汚染物質」なる用語は、パルボウイルスフィルターの孔径分布に類似しているかそれより大きいハイドロダイナミック径を有する任意の大きな分子量の粒子又は高分子量種(HMWS)を意味する。ウイルスフィルター汚染物質は、限定しないが、可溶型高分子量ポリペプチド凝集物、及び宿主細胞不純物 (例えばCHOP)の可溶型及び/又は不溶型凝集物を含む。
【0055】
「宿主細胞」はポリペプチドを生産するためにポリヌクレオチド挿入物を導入するためのベクターに対してレシピエントであり得、又はレシピエントであった個々の細胞又は細胞培養物を含む。宿主細胞は単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は天然の、偶発的な、又は故意の突然変異のために必ずしも元の親細胞と(形態又はゲノムDNA相補鎖において)完全に同一ではない。
【0056】
ここで使用される「固相」は、プロテインAが付着しうる非水性マトリックスを意味する。
【0057】
「バッファー」は、その酸−塩基結合成分の作用によりpH変化に抗する緩衝溶液である。例えばバッファーの所望のpHに応じて使用できる様々なバッファーが、Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D.編, Calbiochem Corporation (1975)に記載されている。
【0058】
ここでの「平衡バッファー」は対象タンパク質を充填するための固相を(固定化されたプロテインAで)調製するために使用されるものである。
【0059】
「洗浄バッファー」は、対象のタンパク質の溶離に先立って充填後に(固定されたプロテインAで)固相を通過させられるバッファーを意味するためにここでは使用される。
【0060】
「抗体」は最も広義に使用され、特にモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらがここに定義されたC2/C3領域を保持するか又はこれを含むように改変されている限り抗体断片を包含する。
【0061】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般には、その抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')、及びFv断片;単鎖抗体分子、ダイアボディ、線状抗体;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。ここで使用される場合、抗体断片はC2/C3領域を含む。
【0062】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」との修飾語句は、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0063】
ここでのモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応配列に一致するか又は類似するが、鎖の残りは、他の種由来の又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片における対応配列に一致するか又は類似する「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0064】
ここで使用される場合の「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合の原因である抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(つまり、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))、及び/又は「高頻度可変ループ」由来の残基(つまり、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義される高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0065】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0066】
ここで使用される場合、「イムノアドヘシン」なる語は、異種「アドヘシン」タンパク質(例えば、レセプター、リガンド又は酵素)の「結合ドメイン」と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位(抗原結合部位)以外の(つまり、「異種性の」)所望の結合特異性を有するアドヘシンのアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合を含む。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、これらの領域を含むイムノアドヘシンをプロテインAカラムクロマトグラフィーによって精製することができるので(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))、好ましくは、γ1、γ2、又はγ4重鎖から誘導される。
【0067】
ここで使用される「リガンド結合ドメイン」なる用語は、任意の天然細胞表面レセプターあるいは対応する天然レセプターの定性的リガンド結合能を少なくとも保持しているその任意の領域あるいは誘導体を意味する。特定の実施態様では、レセプターは、免疫グロブリンのスーパーファミリーのメンバーと相同な細胞外ドメインを持つ細胞表面ポリペプチド由来である。免疫グロブリンのスーパーファミリーのメンバーではないが、それにもかかわらずこの定義によって特にカバーされる他のレセプターは、サイトカインに対するレセプター、特にチロシンキナーゼ活性(レセプターチロシンキナーゼ)を持つレセプター、ヘマトポエチンのメンバー及び神経成長因子レセプターのスーパーファミリー、及び細胞接着分子、例えば(E-、L-及びP-)セレクチンである。
【0068】
「レセプター結合ドメイン」なる用語は、細胞接着分子を含むレセプターに対する任意の天然リガンド、あるいは対応する天然リガンドの定性的レセプター結合能を少なくとも保持しているかかる天然リガンドの任意の領域又は誘導体を示すために使用される。この定義は、とりわけ、上述のレセプターに対するリガンドからの結合配列を特に含む。
【0069】
「抗体-イムノアドヘシンキメラ」は、(ここで定義された)抗体の少なくとも一つの結合ドメインを(本出願中で定義された)少なくとも一つのイムノアドヘシンと組み合わせる分子を含む。例示的な抗体-イムノアドヘシンキメラは、Berg等 PNAS (USA) 88:4723-4727 (1991) 及び Chamow等 J. Immunol. 153:4268 (1994)に記載された二重特異性CD4-IgGキメラである。
【0070】
ここでの使用では、別の定義が明確に示されない限り、「a」、「an」等の使用は一又は複数を意味する。
【0071】
ここでの値又はパラメータについての「約」なる引用は、その値又はパラメータ自体に対する実施態様を含み(また記述)する。例えば、「約X」に言及する記載は「X」の記載を含む。数値範囲は範囲を定義する数を含む。
【0072】
「含む」という語で実施態様がここで記載されるときはいつでも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」によって記載された他の類似の実施態様がまた提供されることが理解される。
【0073】
ポリペプチドの精製
ここでの方法は、低pHで始まるpH勾配を使用してプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって一又は複数の不純物からC2/C3領域含有ポリペプチドを精製することを含む。一態様では、C2/C3領域を含むポリペプチドは、プロテインAにポリペプチドを結合させ、5.0以下で始まるpH勾配で溶離させることを含む方法によって精製することができる。
【0074】
他の態様では、C2/C3領域を含むポリペプチドは、また(a)ポリペプチドをプロテインAに結合させる工程と、(b)溶離バッファーを使用して5.0以下で始まるpH勾配でポリペプチドを溶離させる工程を含み、ここで溶離バッファーが低pHバッファー及び高pHバッファーを含み、pH勾配が溶離バッファー中の各pHバッファーの割合を調整することによって形成される方法によって精製することができる。
を提供する。
【0075】
プロテインAは修飾又は非修飾プロテインAリガンドでありうる。ここで使用される場合、「プロテインAリガンド」は天然プロテインA、合成的に(例えばペプチド合成によって又は組換え法によって)生産されたプロテインA、及びC2/C3領域を有するタンパク質に結合する能力を保持するその変異体を包含する。修飾されたプロテインAリガンドは、短い時間の間、高pH溶液中で安定であるように化学的に操作されうる(例えばMABSELECT SURE(商標)(GE Healthcare (Piscataway, NJ))、POROS(登録商標)MABCAPTURE(商標)A(Applied Biosystems(Foster City, CA))。ここで使用される「非修飾プロテインAリガンド」なる用語は、天然源から回収されるプロテインAと同様であるプロテインAリガンドを包含する。非修飾プロテインAリガンド、例えばMABSELECT(商標)、PROSEP(商標)Va、PROSEP(商標)Ultra Plusは、GE Healthcare(Piscataway, NJ)又はMillipore(Billerica, MA)から商業的に購入することができる。
【0076】
プロテインAは固相に固定できる。固相は精製カラム、不連続層又は離散粒子、メンブラン、又はフィルターでありうる。固相を形成するための材料の例は、多糖類(例えばアガロース及びセルロース)及び他の機械的に安定なマトリックス、例えばシリカ(例えば制御された孔のガラス)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子、及び上記の何れかの誘導体を含む。
【0077】
固相に固定されるプロテインAはC2/C3領域含有ポリペプチドを精製するために使用される。幾つかの実施態様では、プロテインAを固定するためにガラスビーズベースの樹脂、シリカベースの樹脂、又はアガロースベースの樹脂を含むプロテインAカラム樹脂である。例えば、固相は制御孔ガラスカラム又はケイ酸カラムである。しばしば、カラムは、カラムへの非特異的付着を防止する試みでグリセロールのような試薬で被覆されている。PROSEP(登録商標)Aカラムは、グリセロールで被覆されたプロテインA制御孔ガラスカラムの例である。他の実施態様では、固相はプロテインAはプロテインAを固定するためのプロテインAクロマトグラフィー吸着剤である。プロテインAクロマトグラフィー充填剤は、限定しないがメンブラン(例えばSartorius(Goettingen, Germany)、SARTOBIND(商標)プロテインAメンブラン)、又はモノリス(例えばBIA Separations(Villach, Austria)、CIM(登録商標)プロテインA HLDモノリス)を含む。
【0078】
プロテインAカラムクロマトグラフィーの固相は平衡バッファーで平衡にすることができ、様々な不純物(例えば収集した細胞培養液)を含む未精製ポリペプチドをついで平衡化された固相に充填することができる。ポリペプチドは添加バッファーで充填されうる。簡便には、固相を平衡にする平衡バッファーは添加バッファーと同じでありうるが、これは必須ではない。ポリペプチドが固相を通って流れると、ポリペプチド及び様々な不純物が固定されたプロテインAに吸着される。洗浄バッファーは、対象のポリペプチドではなく、宿主細胞不純物のようなある不純物を除去するために使用することができる。
【0079】
平衡バッファーは好ましくは等張であり、一般には約6から約8の範囲のpHを有する。例えば、平衡バッファーは、25mMのTris、25mMのNaCl、5mMのEDTA、及びpH7.1を有しうる。
【0080】
「添加バッファー(充填バッファー)」は、プロテインAが固定される固相にC2/C3領域含有タンパク質及び汚染物質の混合物を充填するために使用されるバッファーを意味する。しばしば、平衡及び添加バッファーは同じである。
【0081】
洗浄バッファーは細胞株不純物又は他の様々な不純物を溶離させうる。洗浄バッファーの導電性及び/又はpHは、有意な量の対象ポリペプチドではなく不純物がプロテインAクロマトグラフィーから溶離されるようなものである。
【0082】
プロテインAに結合したポリペプチドは、単一の溶離バッファー又は溶離バッファーの組合せを使用してpH勾配で溶離させることができる。
【0083】
「溶離バッファー」は固定されたプロテインAからCH2/CH3領域含有ポリペプチドを溶離するために使用される。ここで使用される場合、溶離バッファーは高pHバッファーと低pHバッファーを含み、それによって溶離バッファー中の高pHバッファー及び低pHバッファーの割合を調整することによってpH勾配を形成する。幾つかの実施態様では、溶離バッファーは約3から約5の範囲のpHを有している。ここで使用されるpH値は、ポリペプチドが存在しない状態で測定される。この範囲にpHを制御するpHバッファーの例は、限定しないが、ホスフェート、アセテート、シトレート、ギ酸、及びアンモニウムバッファー、並びにこれらの組合せを含む。好ましいこのようなバッファーはアセテート、及びギ酸バッファーである。
【0084】
幾つかの実施態様では、pH勾配は約5.0で始まる。幾つかの実施態様では、pH勾配は5.0未満で始まる。幾つかの実施態様では、pH勾配は約5.0から約4.0の範囲で始まる。幾つかの実施態様では、pH勾配は約4.9、約4.8、約4.7、約4.6、約4.5、約4.4、約4.3、約4.2、約4.1、又は約4.0で始まる。幾つかの実施態様では、pH勾配は約4.98、約4.96、約4.94、約4.92、約4.90、約4.88、約4.86、約4.84、約4.82、約4.80、約4.78、約4.76、約4.74、約4.72、約4.70、約4.68、約4.66、約4.64、約4.62、約4.60、約4.58、約4.56、約4.54、約4.52、約4.50、約4.48、約4.46、約4.44、約4.42、約4.40、約4.38、約4.36、約4.34、約4.32、約4.30、約4.28、約4.24、約4.22、約4.20、約4.18、約4.16、約4.14、約4.12、約4.10、約4.08、約4.06、約4.04、又は約4.02で始まる。
【0085】
幾つかの実施態様では、pH勾配は約3.0で終了する。幾つかの実施態様では、pH勾配は3.0を越えて終了する。幾つかの実施態様では、pH勾配は約3.0から約4.0の範囲で終了する。幾つかの実施態様では、pH勾配は、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、又は約3.9で終了する。幾つかの実施態様では、pH勾配は、約3.12、約3.14、約3.16、約3.18、約3.20、約3.22、約3.24、約3.26、約3.28、約3.30、約3.32、約3.34、約3.36、約3.38、約3.40、約3.42、約3.44、約3.46、約3.48、約3.50、約3.52、約3.54、約3.56、約3.58、約3.60、約3.61、約3.62、約3.63、約3.64、約3.65、約3.66、約3.67、約3.68、約3.69、約3.70、約3.71、約3.72、約3.73、約3.74、約3.75、約3.76、約3.77、約3.78、約3.79、約3.80、約3.82、約3.84、約3.86、約3.88、約3.9、約3.92、約3.94、約3.96、又は約3.98で終了する。
【0086】
幾つかの実施態様では、pH勾配は約pH4.2で始まり、約pH3.7で終了する。幾つかの実施態様では、pH勾配は約pH4.24で始まり、約pH3.69で終了する。例えば、抗VEGF抗体、抗CD20抗体、抗MUC16抗体、抗CD4抗体、及び一アーム抗Met抗体は、約pH4.24で始まり約pH3.69で終了するpH勾配を使用して精製することができる。
【0087】
他の実施態様では、pH勾配は約pH4.3で始まり、約pH3.7で終了する。幾つかの実施態様では、pH勾配(つまり、pH段階勾配)は約pH4.34で始まり、約pH3.69で終了する。例えば、抗VEGF抗体、抗CD20抗体、抗MUC16抗体、抗CD4抗体、及び一アーム抗Met抗体は、約pH4.34で始まり、約pH3.69で終了するpH勾配を使用して精製することができる。
【0088】
幾つかの実施態様では、pH勾配は約pH4.6で始まり、約pH3.7で終了する。幾つかの実施態様では、pH勾配(つまり、pH完全勾配)は約pH4.58で始まり、約pH3.69で終了する。例えば、抗VEGF抗体、抗CD20抗体、抗MUC16抗体、抗CD4抗体、及び一アーム抗Met抗体は、約pH4.58で始まり、約pH3.69で終了するpH勾配を使用して精製することができる。
【0089】
溶離バッファーは高pHバッファーと低pHバッファーを含み、pH勾配は溶離バッファー中の各pHバッファーの割合を調整することによって形成される。幾つかの実施態様では、高pHバッファーは約pH5.0であり、低pHバッファーは約2.7である。例えば、高pHバッファーは、25mMのアセテート、pH5.0であり得、低pHバッファーは25mMのギ酸、pH2.7でありうる。
【0090】
低pHバッファーの開始割合の調整は、精製ポリペプチドの純度と、またポリペプチド単量体から凝集物、細胞株不純物、塩基性ポリペプチド変異体、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、及びウイルスフィルター汚染物質を含む不純物の逐次分離を最適化し最大にしうる。溶離バッファー中の低pHバッファーの割合は、約25%、約30%、約35%、約40%、又は約45%で始まりうる。
【0091】
幾つかの実施態様では、溶離バッファー中の低pHバッファーの割合は約25%で始まりうる。幾つかの実施態様では、約25%で低pHバッファーを含む溶離バッファーは約19mMのアセテート、約6mMのホルマートと、pH4.5−4.6で約1140のバッファー導電率を含む。例えば、低pHバッファーを約25%で含む溶離バッファーは18.75mMのアセテート、6.25mMのホルマート、pH4.58で1141uS/cmのバッファー導電率を含む。
【0092】
幾つかの実施態様では、溶離バッファー中の低pHバッファーの割合は約35%で始まりうる。幾つかの実施態様では、低pHバッファーを約35%で含む溶離バッファーは約16mMのアセテート、約9mMのホルマート、及びpH4.3−4.4での約1040バッファー導電率を含む。例えば、低pHバッファーを約35%で含む溶離バッファーは、16.25mMのアセテート、8.75mMのホルマート、pH4.34での1039uS/cmのバッファー導電率を含む。
【0093】
幾つかの実施態様では、溶離バッファー中の低pHバッファーの割合は約40%で始まりうる。幾つかの実施態様では、低pHバッファーを約40%で含む溶離バッファーは約15mMのアセテート、約10mMのホルマート、及びpH4.2−4.3での約974バッファー導電率を含む。例えば、低pHバッファーを約40%で含む溶離バッファーは、15mMのアセテート、10mMのホルマート、pH4.24での974uS/cmのバッファー導電率を含む。
【0094】
幾つかの実施態様では、溶離バッファー中の低pHバッファーの割合は約60%で始まりうる。幾つかの実施態様では、低pHバッファーを約60%で含む溶離バッファーは約10mMのアセテート、約15mMのホルマート、及びpH3.6−3.7での約763バッファー導電率を含む。例えば、pH勾配の終わりでの低pHバッファーは、10mMのアセテート、15mMのホルマート、pH3.69での763uS/cmのバッファー導電率でありうる。
【0095】
幾つかの実施態様では、溶離バッファーは約1200uS/cmから約500uS/cmの範囲のバッファー導電率を有している。幾つかの実施態様では、溶離バッファーは、約1150uS/cmから約700uS/cmの範囲のバッファー導電率を有している。幾つかの実施態様では、溶離バッファーは、約1145uS/cm、約1141uS/cm、約1130uS/cm、約1120uS/cm、約1110uS/cm、約1000uS/cm、約1039uS/cm、約1000uS/cm、約974uS/cm、約900uS/cm、約800uS/cm、約763uS/cm、又は約700uS/cmのバッファー導電率を有している。
【0096】
幾つかの実施態様では、溶離バッファーの組成は、約9−20mMのアセテート及び5−15mMのホルマートである。幾つかの実施態様では、溶離の組成は約10−19mMのアセテート及び6−16mMのホルマートである。
【0097】
ポリペプチドの添加密度の調整は、また精製ポリペプチドの純度と、ポリペプチド単量体から凝集物、細胞株不純物、塩基性ポリペプチド変異体、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、及びウイルスフィルター汚染物質を含む不純物の分離を最適化し最大にしうる。
【0098】
「充填密度」又は「添加密度」なる用語は、クロマトグラフィー樹脂1リットル当たりの精製されたポリペプチドの密度(g)又はメンブラン/フィルター体積(L)1リットル当たりの精製されたポリペプチドの密度である。添加密度はg/Lで測定される。
【0099】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは14g/L以上の添加密度で充填される。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、約14g/Lから約45g/L又は約14g/Lから約70g/Lの範囲の添加密度で充填される。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、約15g/L、約17g/L、約19g/L、約21g/L、約23g/L、約25g/L、約26g/L、約27g/L、約28g/L、約29g/L、約31g/L、約33g/L、約35g/L、約37g/L、約39g/L、約41g/L、約43g/L、約45g/L、約50g/L、約55g/L、約60g/L、約65g/L、又は約70g/Lの添加密度で充填される。
【0100】
ポリペプチド溶離の滞留時間(又は溶離流量)の調整は、ポリペプチド純度及びポリペプチド単量体からの不純物の逐次分離をまた最適化し最大にしうる。増加した添加密度では、ポリペプチド溶離滞留時間が、凝集物を効率的に分割するpH勾配の能力において更に大きな役割を担っている。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは約5カラム体積/hrから約35カラム体積/hrの範囲の溶離流量を有している。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、約5カラム体積/hrから約25カラム体積/hrの範囲の溶離流量を有している。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、約5カラム体積/hr、約7.5カラム体積/hr、約10カラム体積/hr、約12.5カラム体積/hr、約15カラム体積/hr、約17.5カラム体積/hr、約20カラム体積/hr、約22.5カラム体積/hr、約25カラム体積/hr、約27.5カラム体積/hr、約30カラム体積/hr、約32.5カラム体積/hr、又は約35カラム体積/hrの溶離流量を有している。
【0101】
ここに記載された方法を使用して精製されたポリペプチドは、75%の未精製ポリペプチド、80%の未精製ポリペプチド、85%の未精製ポリペプチド、90%の未精製ポリペプチド、95%の未精製ポリペプチド、96%の未精製ポリペプチド、97%の未精製ポリペプチド、98%の未精製ポリペプチド、又は99%の未精製ポリペプチドの少なくとも何れかのおよその収率を有している。
【0102】
収率は、通常は未精製ポリペプチドの割合として表される、ここに記載のプロテインAアフィニティクロマトグラフィー精製前の未精製ポリペプチドと比較した収集された精製ポリペプチドの全量である。
【0103】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比は、未精製ポリペプチドにおける比よりも、少なくとも約75%低く、約80%低く、約85%低く、約90%低く、約95%低く、約96%低く、約97%低く、約98%低く、又は約99%低い。
【0104】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比は、本発明のもの以外のpH精製工程を使用して精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約20%低く、約30%低く、約40%低く、約50%低く、約60%低く、又は約70%低い。例えば、一般的な又は典型的な段階プロテインA溶離法では、ポリペプチドは、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、ポリペプチドをpH勾配なしにpH3.6以下で溶離させることによって精製される。従って、幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比は、段階溶離法によって精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約20%低く、約30%低く、約40%低く、約50%低く、約60%低く、又は約70%低く、ここで、段階溶離法はポリペプチドをプロテインAに結合させ、3.6以下で始まるpHで溶離させることを含む。
【0105】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対するウイルスフィルター汚染物質の比は、未精製ポリペプチドにおける比よりも、少なくとも約75%低く、少なくとも約80%低く、約85%低く、約90%低く、約95%低く、約96%低く、約97%低く、約98%低く、又は約99%低い。
【0106】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対するウイルスフィルター汚染物質の比は、本発明のもの以外のpH精製工程を使用して精製したポリペプチド中の比よりも少なくとも約20%低く、約30%低く、約40%低く、約50%低く、約60%低く、又は約70%低い。例えば、一般的な又は典型的な段階プロテインA溶離法では、ポリペプチドは、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、pH勾配なしでpH3.6以下でポリペプチドを溶離させることによって精製される。従って、幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドに対するウイルスフィルター汚染物質の比は、段階溶離法によって精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約20%低く、約30%低く、約40%低く、約50%低く、約60%低く、又は約70%低く、ここで、段階溶離法はポリペプチドをプロテインAに結合させ、3.6以下で始まるpHで溶離させることを含む。
【0107】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、約15000粒子/ml未満のウイルス粒子又はウイルス様粒子数を有する。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、約12500粒子/ml未満、約10000粒子/ml未満、約7500粒子/ml未満、約5000粒子/ml未満、約2500粒子/ml未満、約1500粒子/ml未満、約1000粒子/ml未満、約750粒子/ml未満、約500粒子/ml未満、約250粒子/ml未満、約100粒子/ml未満、又は約50粒子/ml未満のウイルス粒子又はウイルス様粒子数を有する。幾つかの実施態様では、ウイルス様粒子はレトロウイルス様粒子である。
【0108】
ここで使用される場合、「ウイルス粒子」なる用語は、タンパク質の保護被覆(カプシド)によって囲まれた核酸コアからなるビリオンである。「ウイルス様粒子」は類似の形態学的、生化学的又は他の性質を有する非感染性ウイルスである。それらはウイルス生活環に必要な成分の少なくとも一つに欠陥がある。ウイルス様粒子の例は複製できないレトロウイルス様粒子である。ウイルス粒子又はウイルス様粒子は内在性又は外因性(外来性)でありうる。内因性ウイルス粒子又はウイルス様粒子は、宿主細胞株によって生産され、細胞及び細胞培養液中に存在し、宿主細胞不純物として考えられうる。外因性又は外来性ウイルス又はウイルス様粒子は宿主細胞株から由来しない。
【0109】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、少なくとも約4LRV(ウイルスのlog10減少)のウイルス又はウイルス様粒子のウイルスクリアランスを有する。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、約4LRVから約8LRVの範囲のウイルス又はウイルス様粒子のウイルスクリアランスを有する。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、約4LRVから約7LRVの範囲のウイルス又はウイルス様粒子のウイルスクリアランスを有する。幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、約5LRV、約6LRV、約7LRV、又は約8LRVのウイルス又はウイルス様粒子のウイルスクリアランスを有する。幾つかの実施態様では、ウイルス様粒子はレトロウイルス様粒子である。
【0110】
ここで使用される場合、LRVは、未精製ポリペプチド及び精製されたポリペプチドにおけるlog10(全ウイルス)の差である。
【0111】
幾つかの実施態様では、精製されたポリペプチドはポリペプチド単量体である。
【0112】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドの精製画分は、約20以下のプロテインAカラム体積を含む。幾つかの実施態様では、ポリペプチドの精製画分は、約15以下のプロテインAカラム体積を含む。幾つかの実施態様では、ポリペプチドの精製画分は約12以下のプロテインAカラム体積を含む。幾つかの実施態様では、ポリペプチドの精製画分は約11、約10、約9、約8、約7、約6、約5.5、又は約5.0以下のプロテインAカラム体積を含む。
【0113】
幾つかの実施態様では、ここに記載された方法は、所望のポリペプチド単量体産物からここに記載の不純物の少なくとも2つを除去する。例えば、該方法は、凝集物と宿主細胞株不純物の双方、凝集物とウイルスフィルター汚染物質の双方、凝集物とウイルス粒子の双方、凝集物とウイルス様粒子の双方、凝集物と塩基性ポリペプチド変異体の双方、又は宿主細胞株不純物とウイルス粒子等を除去する。幾つかの実施態様では、ここに記載された方法は、所望のポリペプチド単量体産物からここに記載の不純物の少なくとも3つを除去する。例えば、該方法は、凝集物、宿主細胞不純物、及びウイルスフィルター汚染物質、又は凝集物、宿主細胞不純物、及びウイルス粒子、及び塩基性ポリペプチド変異体等を除去する。幾つかの実施態様では、ここに記載された方法は、所望のポリペプチド単量体産物からここに記載の不純物の少なくとも4つを除去する。例えば、該方法は、凝集物、宿主細胞不純物、ウイルスフィルター汚染物質、及びウイルス粒子、又は凝集物、宿主細胞不純物、ウイルスフィルター汚染物質、及びウイルス様粒子を除去する。幾つかの実施態様では、ここに記載された方法は、所望のポリペプチド単量体産物からここに記載の不純物の少なくとも5つを除去する。例えば、該方法は、凝集物、宿主細胞不純物、ウイルスフィルター汚染物質、ウイルス粒子、及びウイルス様粒子等を除去する。幾つかの実施態様では、ここに記載された方法は所望のポリペプチド産物から不純物の全てを除去する。
【0114】
幾つかの実施態様では、ここに記載された方法は凝集物を除去するための更なる精製工程を含まず、精製されたポリペプチドは少なくとも約98%又は約99% 単量体の純度を有する。別個のイオン交換クロマトグラフィー工程で通常実施される凝集物排除は、上述のpH勾配を使用するプロテインAクロマトグラフィーの後には必要とされない。
【0115】
幾つかの実施態様では、ここに記載された方法はウイルスフィルター汚染物質を除去するための更なる精製工程を含まず、精製されたポリペプチドは少なくとも約98% 又は約99% 単量体の純度を有する。
【0116】
幾つかの実施態様では、精製方法は塩基性又は酸性ポリペプチド変異体を除去するための更なる精製工程を含まない。
【0117】
ここに記載された方法を使用して精製されたポリペプチドには、プロテインAクロマトグラフィー工程の前、工程中、又は工程後の何れかに更なる精製工程を施してもよい。例示的な更なる精製工程は、限定しないが、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー;
透析;タンパク質を捕捉するために抗体を使用するアフィニティクロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(例えばHICでの分画);硫酸アンモニウム沈澱;ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール誘導体沈殿、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、エタノール沈澱;逆相HPLC;シリカでのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE、ウイルス濾過、ゲル濾過、及び弱い分配クロマトグラフィーを含む。
【0118】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドにウイルス濾過工程を更に施す。ここに記載のpH勾配を使用するプロテインAクロマトグラフィーの工程の後にウイルス濾過工程において、例えば、パルボウイルスフィルターを使用することができる。
【0119】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドにイオン交換クロマトグラフィー工程を更に施す。幾つかの実施態様では、イオン交換クロマトグラフィー工程はカチオン交換クロマトグラフィー工程を含む。幾つかの実施態様では、イオン交換クロマトグラフィー工程はアニオン交換クロマトグラフィー工程を含む。幾つかの実施態様では、イオン交換クロマトグラフィー工程はカチオン交換クロマトグラフィー工程及びアニオン交換クロマトグラフィー工程を含む。
【0120】
幾つかの実施態様では、イオン交換クロマトグラフィー工程はここに記載のプロテインAクロマトグラフィー工程の後に連続的に実施される。 例えば、カチオン及びアニオン交換クロマトグラフィーメンブランを、pH勾配のない標準的なプロテインAクロマトグラフィーと続く標準的なカチオン及びアニオン交換カラムクロマトグラフィー工程によって生産されたものに匹敵する純度と収率の精製ポリペプチドを達成するために、ここに記載されたプロテインAクロマトグラフィー法の後に標準的なカチオン及び/又はアニオン交換クロマトグラフィーカラムの代わりに使用することができる。
【0121】
幾つかの実施態様では、ここに記載された方法は製造スケール又は商業プロセスである。ここで使用される場合、製造スケール又は商業プロセスは、例えば精製プロセス当たり約1kLから約25kLの発酵スケールタンパク質/ポリペプチド産物での、タンパク質/ポリペプチドの大規模な精製を意味する。
【0122】
ポリペプチド
ここに記載された方法を使用して精製されるポリペプチド又はタンパク質は、限定しないが、CH2/CH3領域に融合した又は該領域にコンジュゲートした抗体、イムノアドヘシン、又はポリペプチドを含む。このような分子を作製する技術を以下に検討する。
【0123】
抗体
本発明の範囲内の抗体は、限定しないが、抗CD20抗体、例えば米国特許第5736137号のキメラ抗CD20「C2B8」(RITUXAN(登録商標));抗VEGF抗体、例えばヒト化及び/又は親和成熟抗VEGF抗体、例えばヒト化抗VEGF抗体huA4.6.1アバスチン(登録商標)(Kim等, Growth Factors, 7:53-64 (1992)、国際公開第96/30046号及び1998年10月15日公開の国際公開第98/45331号)及びV3LA;抗MUC16抗体;抗CD4抗体、例えばcM-7412抗体(Choy等 Arthritis Rheum. 39(1):52-56 (1996))及びイバリツマブ(TNX355)抗体;抗MET抗体、例えば一アーム5D5抗C-Met抗体;抗HER2抗体トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992)、米国特許第5725856号)及びヒト化2C4 (国際公開第01/00245号, Adams等)、米国特許第5721108B1号におけるような2H7抗体のキメラ又はヒト化変異体、又はトシツモマブ(BEXXAR(登録商標));抗IL−8抗体(St John等 Chest, 103:932(1993)、及び国際公開第95/23865号);抗前立腺幹細胞抗原(PSCA)抗体(国際公開第01/40309号);抗CD40抗体、例えばS2C6及びそのヒト化変異体(国際公開第00/75348号);抗CD1抗体(米国特許第5622700号、国際公開第98/23761号;Steppe等 Transplant Intl. 4:3-7(1991)、及びHourmant等 Transplantation 58:377-380(1994));抗CD18(1997年4月22日発行の米国特許第5622700号、又は1997年7月31日公開の国際公開第97/26912号);抗IgE抗体(例えばE25、E26及びE27;1998年2月3日発行の米国特許第5714338号又は1992年2月25日発行の米国特許第5091313号、1993年3月4日公開の国際公開第93/04173号又は1998年6月30日出願の国際出願PCT/US98/13410号、米国特許第5714338号、Presta等 J. Immunol. 151:2623-2632(1993)及び国際公開第95/19181号);抗Apo-2レセプター抗体(1998年11月19日公開の国際公開第98/51793号);抗TNF-α抗体、例えばcA2(レミケード(登録商標))、CDP571及びMAK-195(1997年9月30日発行の米国特許第5672347号、Lorenz等 J. Immunol. 156(4):1646-1653(1996)、及びDhainaut等 Crit. Care Med. 23(9):1461-1469(1995)を参照);抗組織因子(TF)(1994年11月9日許可の欧州特許第0420937B1号);抗ヒトα4β7インテグリン(1998年2月19日公開の国際公開第98/06248号);抗上皮増殖因子レセプター(EGFR)抗体(例えば1996年12月19日公開の国際公開第96/40210号におけるようなキメラ化又はヒト化225抗体);抗CD3抗体、例えばOKT3(1985年5月7日発行の米国特許第4515893号);抗CD25又は抗Tac抗体、例えばCHI−621(SIMULECT(登録商標)及びZENAPAX(登録商標)(1997年12月2日発行の米国特許第5693762号を参照);抗CD52抗体、例えばCAMPATH-1H(Riechmann等 Nature 332:323-337(1988));抗Fcレセプター抗体、例えばGraziano等 J. Immunol. 155(10):4996-5002(1995)におけるようなFcγRIに対するM22抗体;抗癌胎児抗原(CEA)抗体、例えばhMN-14(Sharkey等 Cancer Res. 55(23Suppl): 5935s-5945s(1995);乳房上皮細胞に対する抗体、例えばhuBrE-3、hu-Mc3及びCHL6(Ceriani等 Cancer Res. 55(23):5852s-5856s(1995);及びRichman等 Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s(1995));結腸癌細胞に結合する抗体、例えばC242(Litton等 Eur J. Immunol. 26(1):1-9(1996));抗CD38抗体、例えばAT13/5(Ellis等 J. Immunol. 155(2):925-937(1995));抗CD33抗体、例えばHu M195(Jurcic等 Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s(1995)及びCMA−676又はCDP771;抗CD22抗体、例えばLL2又はLymphoCide(Juweid等 Cancer Res 55(23 Suppl):5899s-5907s(1995));抗EpCAM抗体、例えば17−1A(PANOREX(登録商標));抗GpIIb/IIIa抗体、例えばアブシキシマブ又はc7E3 Fab(REOPRO(登録商標));抗RSV抗体、例えばMEDI-493(SYNAGIS(登録商標));抗CMV抗体、例えばPROTOVIR(登録商標);抗HIV抗体、例えばPRO542;抗肝炎抗体、例えば 抗Hep B抗体OSTAVIR(登録商標);抗CA125抗体、例えばOvaRex;抗イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;抗αvβ3抗体、例えばVITAXIN(登録商標);抗ヒト腎細胞癌抗体、例えばch-G250;ING-1;抗ヒト17-1A抗体(3622W94);抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドに対する抗ヒトメラノーマ抗体R24;抗ヒト扁平上皮癌(SF-25);及び抗ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10及び抗HLA DR抗体Oncolym(Lym-1)を含む。
【0124】
上に特定された抗体以外に、当業者は、例えば以下に記載の技術を使用して興味ある抗原に対して抗体を産生させることができる。
【0125】
(i)抗原選択及び調製
ここでの抗体は対象の抗原に対して産生される。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、疾病や疾患を患っている哺乳動物への抗体の投与によりその哺乳動物に治療的恩恵がもたらされうる。しかしながら、非ポリペプチド抗原(例えば腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5091178号参照)に対して産生された抗体もまた考慮される。抗原がポリペプチドである場合、それは膜貫通型分子(例えばレセプター)又はリガンド、例えば増殖因子でありうる。例示的な抗原は、以下のセクション(3)に記述されるタンパク質を含む。本発明に包含される抗体に対する例示的な分子標的は、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22及びCD34のようなCDタンパク質;EGFR、HER2、HER3あるいはHER4レセプターのようなErbBレセプターファミリーのメンバー;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びαv/β3インテグリンで、そのα又はβ何れかのサブユニットを含むもの(例えば抗CD11a、抗CD18あるいは抗CD11b抗体);VEGFのような増殖因子;IgE;血液型抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインC、あるいはここで言及された他の抗原の任意のものを含む。
【0126】
他の分子に場合によってはコンジュゲートされる可溶型抗原あるいはその断片は、抗体産生のための免疫原として使用することができる。レセプターのような膜貫通型分子については、これらの断片(例えば、レセプターの細胞外ドメイン)は免疫原として用いることができる。あるいは、膜貫通型分子を発現する細胞を免疫原として用いることができる。そのような細胞は、天然源(例えば癌細胞株)に由来しうるか、あるいは膜貫通型分子を発現させるために組換え技術によって形質転換された細胞でありうる。
【0127】
抗体を調製するために有用な他の抗原及びその形態は当業者には明らかであろう。
【0128】
(ii)ポリクローナル抗体>
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRにより結合させることが有用でありうる。
【0129】
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5から{分率(1/10)}の抗原又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7から14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質に、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合体として組換え細胞培養中で作製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0130】
(iii)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
【0131】
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスター又はマカクザルを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いてミエローマ細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 590-103頁(Academic Press, 1986))。
【0132】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親のミエローマ細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親のミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含むであろう(HAT培地)。
【0133】
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性であるものである。これらの中でも、好ましいミエローマ株化細胞は、マウスミエローマ系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0134】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって決定される。
【0135】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が含まれる。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0136】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティクロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。好ましくは、ここに記載されたpH勾配を使用するプロテインAクロマトグラフィー手順が使用される。
【0137】
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はミエローマ細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中においてモノクローナル抗体の合成を達成することができる。
【0138】
DNAはまた、例えばヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc. Nat. Acad. Sci., USA, 81:6851 (1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで、修飾できる。
【0139】
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する一つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0140】
モノクローナル抗体は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載されている技術を使用して作製される抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用する、マウス及びヒト抗体の単離をそれぞれ記載している。次の刊行物は、鎖シャッフリング(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783 (1992))、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc. Acids. Res., 21:2265-2266 (1993))による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産を記載している。よって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なハイブリドーマ法に対する実行可能な代替手段である。
【0141】
(iv)ヒト化及びヒト抗体
ヒト化抗体には非ヒトである供給源由来の一又は複数のアミノ酸残基がそこに導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的には齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988))に従って実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には幾らかのCDR残基と場合によっては幾らかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0142】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトFRとして受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを数種の異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623 (1993))。
【0143】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは入手可能である。これらディスプレイを調べることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する増加した親和性のような、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0144】
別法として、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例えばJakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993);Bruggerman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);及びDuchosal等, Nature 355:258 (1992)を参照のこと。ヒト抗体は、ファージディスプレーライブラリーから取り出すこともまたできる(Hoogenboom等, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Vaughan等, Nature Biotech 14:309 (1996))。
【0145】
(v)抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して誘導された(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81 (1985)を参照)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。単鎖Fv断片(scFv)をまた単離することができる。国際公開第93/16185号を参照のこと。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。
【0146】
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対する結合特異性を有する。このような分子は通常は二つの抗原を結合させるのみであるが(すなわち、二重特異性抗体、BsAbs)、三重特異性抗体のような更なる特異性を持つ抗体もここで使用される場合この表現に包含される。
【0147】
二重特異性抗体を製造する方法は当該技術分野で知られている。完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖軽鎖対の同時発現に基づき、ここで該二つの鎖は異なる特異性を有している(Millstein等, Nature, 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられるため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によりなされる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。類似の方法が国際公開第93/08829号及びTraunecker等,EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0148】
国際公開第96/27011号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置換される。大きな側鎖と同じか又はより小さいサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体のような不要の他の最終産物に対してヘテロ二量体の収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0149】
二重特異性抗体は、架橋した又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方はアビジンに結合され得、他方はビオチンに結合され得る。かかる抗体は、例えば、免疫系細胞を不要の細胞に向けるため(米国特許第4676980号)、及びHIV感染の治療のために提案されている(国際公開第91/00360号、国際公開第92/00373号、及び欧州特許出願公開第03089号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を使用して作製することができる。好適な架橋剤は当該技術分野において良く知られており、多くの架橋技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
【0150】
抗体断片から二重特異性抗体を生産するための技術もまた文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は化学結合を使用して調製することができる。Brennan等, Science, 229: 81 (1985)は、インタクトな抗体をタンパク分解的に切断してF(ab’)断片を生産する手順を記載している。これらの断片は、隣接するジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止するためにジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元させる。ついで、生成されたFab’断片をチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転化させる。ついで、Fab’−TNB誘導体の一つを、メルカプトエチルアミンでの還元によってFab’−チオールに再転化させ、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。製造された二重特異性抗体は酵素の選択的固定化のための薬剤として使用することができる。
【0151】
最近の進歩により、大腸菌からFab’−SH断片を直接回収できるようになり、これを化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)分子を記載している。各Fab’断片は別個に大腸菌から分泌され、インビトロでの定方向化学カップリングによって二重特異性抗体を形成した。このようにして形成された二重特異性抗体はErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常なヒトT細胞に結合することができ、またヒト乳房腫瘍標的に対してヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を惹起させた。
【0152】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作製し単離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法はまた抗体ホモ二量体の生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作製する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするのに十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照のこと。あるいは、抗体は、Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)に記載されているように、「直鎖状抗体」でありうる。簡単に述べると、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(V−C1−V−C1)を含む。直鎖状抗体は二重特異性又は単一特異性でありうる。
【0153】
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等 J.Immunol. 147:60(1991)。
【0154】
イムノアドヘシン
最も簡単で最も直接的なイムノアドヘシンの設計は、アドヘシンの結合ドメイン(例えば、レセプターの細胞外ドメイン(ECD))を免疫グロブリン重鎖のFc領域及びヒンジと組み合わせるものである。通常は、本発明のイムノアドヘシンを調製する場合、アドヘシンの結合ドメインをコードする核酸を、免疫グロブリン定常ドメイン配列のN末端をコードする核酸にC末端的に融合させるが、N末端融合もまた可能である。
【0155】
典型的には、そのような融合体において、コードされるキメラポリペプチドは免疫グロブリン重鎖の定常ドメインの機能的に活性なヒンジ、CH及びCHドメインを保持する。融合体はまた定常ドメインのFc領域のC末端に、又は重鎖のCH又は軽鎖の対応する領域にN末端が直ぐに融合される。融合がなされる正確な部位は重要ではない;特定の部位はよく知られており、イムノアドヘシンの生物活性、分泌、又は結合特性を最適化するために選択されうる。
【0156】
幾つかの実施態様では、アドヘシン配列が免疫グロブリンG(IgG)のFc領域のN末端に融合される。アドヘシン配列に重鎖定常領域全体を融合させることができる。しかしながら、好ましくは、IgGのFcを化学的に定めるパパイン切断部位の直ぐ上流のヒンジ領域に始まる配列(すなわち、重鎖定常領域の最初の残基を114として残基216)、又は他の免疫グロブリンの類似部位が融合において使用される。幾つかの実施態様では、アドヘシンアミノ酸配列はIgG重鎖の(a)ヒンジ領域及びC2及びC3又は(b)C1、ヒンジ、C2及びC3ドメインに融合される。
【0157】
二重特異的イムノアドヘシンについては、イムノアドヘシンは多量体として、特にヘテロ二量体又はヘテロ四量体として組み立てられる。一般には、これらの組み立てられた免疫グロブリンは既知の単位構造を有している。基本的な四鎖構造単位はIgG、IgD及びIgEが存在する型である。四鎖単位はより高分子量の免疫グロブリンにおいて繰り返される;IgMは一般にジスルフィド結合によって一緒に保持される四つの基本単位の五量体として存在する。IgAグロブリンと、時折IgGグロブリンは、血清中に多量体型で存在しうる。多量体の場合、四つの単位の各々は同じでも異なっていてもよい。
【0158】
ここに記載した範囲内の様々な例示的構築イムノアドヘシンは以下に概略的に模式化される:
(a)AC−AC
(b)AC−(AC、AC−AC、AC−V、又はV−AC);
(c)AC−AC−(AC−AC、AC−V、V−AC又はV−V
(d)AC−V−(AC、又はAC−V、又はV−AC);
(e)V−AC−(AC−V、又はV−AC);及び
(f)(A−Y)−(V−V)
ここで、各Aは同一又は異なったアドヘシンアミノ酸配列を示し;
は免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;
は免疫グロブリン重鎖可変ドメインであり;
は免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;
は免疫グロブリン重鎖定常ドメインであり;
nは1より大きい整数であり;
Yは共有結合架橋剤の残基を示す。
【0159】
簡潔にするため、先の構造は重要な特徴のみを示している;これらは、免疫グロブリンの結合する(J)又は他のドメインを示していないしジスルフィド結合も示していない。しかし、そのようなドメインが結合活性に対して必要である場合は、それらを構築して、免疫グロブリン分子にそれらが占める通常の位置に存在させることができる。
【0160】
あるいは、アドヘシン配列は、キメラ重鎖を含んでなる免疫グロブリンが得られるように、免疫グロブリン重鎖と軽鎖配列の間に挿入することができる。この実施態様では、アドヘシン配列は免疫グロブリンの各アームの免疫グロブリンの重鎖の3’末端に、ヒンジとC2ドメインの間、又はC2とC3ドメインの間の何れかで融合される。同様の作成物が、Hoogenboom等,Mol.Immunol.28:1027-1037(1991)によって報告されている。
【0161】
免疫グロブリン軽鎖の存在は本発明のイムノアドヘシンにおいて必要とはされないが、免疫グロブリン軽鎖はアドヘシン-免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチドに共有結合的に結合するか、アドヘシンに直接的に融合されて存在するかもしれない。前者の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが典型的にはアドヘシン免疫グロブリン重鎖融合タンパク質をコードするDNAと同時発現される。分泌時に、ハイブリッド重鎖及び軽鎖が共有的に結合されて、二つのジスルフィド結合免疫グロブリン重鎖軽鎖対を含む免疫グロブリン様構造を提供する。このような構造の調製に適した方法は、例えば1989年3月28日に発行された米国特許第4816567号に開示されている。
【0162】
イムノアドヘシンは最も簡便には免疫グロブリンcDNA配列にインフレームでアドヘシン部分をコードするcDNA配列を融合させることにより構築される。しかし、ゲノム免疫グロブリン断片への融合もまた使用することができる(例えば、Aruffo等,Cell61:1303-1313(1990);及びStamenkovic等,Cell66:1133-1144(1991)を参照)。融合の後者のタイプは、発現に対してIg調節配列の存在を必要とする。IgG重鎖定常領域をコードするcDNAは、脾臓又は末梢血リンパ球から取り出されたcDNAライブラリーからの公開配列に基づいて、ハイブリダイゼーションにより、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により単離することができる。「アドヘシン」をコードするcDNAとイムノアドヘシンの免疫グロブリン部分が、選ばれた宿主細胞中での効率的な発現を指示するプラスミドベクター内にタンデムで挿入される。
【0163】
他のC2/C3領域含有ポリペプチド
精製されるポリペプチドは、C2/C3領域に融合し又は該領域にコンジュゲートしたものである。このような融合ポリペプチドは、タンパク質の血清半減期を増加させ、及び/又はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによるタンパク質の精製を容易にするために生産されうる。このようにしてコンジュゲートされうる生物学的に重要なタンパク質の例は、レニン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク;α-1-アンチトリプシン;インシュリンA-鎖;インシュリンB-鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;VIIIC因子、IX因子、組織因子、及びvon Willebrands因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化剤(t−PA)等のプラスミノーゲン活性化剤;ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;ベータ−ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA-4のような細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;脳誘導神経向性因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又はNGF-β等の神経増殖因子等の神経成長因子;血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含むTGF-βのようなトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インシュリン様増殖因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えば、M−CSF、GM−SCF、及びG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部等;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばEGFR、HER2、HER3又はHER4レセプター;及び上に列挙したポリペプチドの何れかの断片を含む。
【0164】
ポリペプチドの発現
ここに記載される方法を使用して精製されるポリペプチドは、一般に組換え技術を使用して産生される。ポリペプチドはまたペプチド合成(又は他の合成手段)によって製造されうるか又は天然源から単離されうる。
【0165】
ポリペプチドの組換え生産のためには、それをコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。ポリペプチドをコードするDNAは直ぐに単離され、一般的な手法を用いて(例えば、ポリペプチドが抗体である場合、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列(例えば、出典明示によりここに特に援用される米国特許第5534615号に記載されている)。
【0166】
ここでのベクター中においてDNAを発現させ又はクローニングするために好ましい宿主細胞は、原核生物、酵母、又はより高等な真核生物細胞である。この目的に適した原核生物は、グラム陰性又はグラム陽性生物体などの真正細菌、例えば、エシェリキア、例えば大腸菌(E. coli)、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア、例えば霊菌、及び赤痢菌等の腸内細菌科、並びに枯草菌及びバチルス・リケニフォルミス等の桿菌(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバチルス・リケニフォルミス41P)、緑膿菌等のシュードモナス、及びストレプトマイセスである。これらの例は限定ではなく例示である。
【0167】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、ポリペプチドコード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用でき、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。
【0168】
グリコシル化ポリペプチドの発現に適切な宿主細胞は多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。数多くのバキュロウイルスの菌株及び変異体、及び宿主、例えばヨトウガ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウショウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコからの対応する許容可能な昆虫宿主細胞が同定されている。形質移入用の様々なウイルス株、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異体、及びカイコNPVのBm-5株も公に入手可能であり、このようなウイルスは、本発明では、特にヨウトガ細胞の形質移入用のウイルスとして使用されうる。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養体もまた宿主として利用可能である。
【0169】
しかしながら、興味は脊椎動物細胞に最も多く、培養体(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、限定しないが、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓細胞(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76,ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT060562,ATTCCCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞腫(Hep G2)である。
【0170】
宿主細胞は、ポリペプチド生産のための上述の発現又はクローニングベクターを用いて形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅させるのに適切に修飾された一般的な栄養培地で培養される。
【0171】
この発明の方法で使用されるポリペプチドを生産するのに使用される宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。商業的に入手可能な培地、例えばハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM)、シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM)、シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、その全ての開示が出典明示によりここに援用されるHam等, Meth. in Enz. 58:44(1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255(1980)、米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;又は同4560655号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許再発行第30985号に記載された任意の培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地は何れも、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含めることができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0172】
組換え技術を使用する場合、ポリペプチドは、細胞膜周辺腔において細胞内生産することができ、又は培地に直接分泌させることができる。ポリペプチドが細胞内生産されるときは、第一工程として、宿主細胞であれ(例えば均質化から生じる)溶解断片であれ、粒状細片を、例えば遠心分離又は限外濾過により除去する。ポリペプチドが培地に分泌される場合、そのような発現系からの上清は、一般に、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えばアミコン又はミリポアペリコン限外濾過ユニットを使用して最初に濃縮される。
【0173】
ポリペプチドを含有する薬学的製剤を含む組成物
本発明は薬学的製剤のような組成物をまた含む。場合によっては異種性分子とコンジュゲートされた本発明の方法によって精製されたポリペプチドを含有する薬学的製剤は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、所望の純度を有するポリペプチドを任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 21版(2005))と混合することにより調製することができる。
【0174】
ここに記載された方法により精製されたC2/C3領域を含むポリペプチド産物は、少なくとも約98%単量体又は少なくとも約99%単量体の所望の純度を有しうる。
【0175】
「薬学的に許容可能な」担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに無毒性であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、プルロニクス(PLURONICS)(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0176】
ここでの製剤は、治療される特定の徴候のための必要に応じて一を越える活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものをまた含みうる。そのような分子は好適には意図された目的に対して効果的な量で組み合わせて存在する。
【0177】
活性成分は、例えばコアセルべーション技術又は界面重合により調製したマイクロカプセル、例えば、それぞれコロイド状ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンの、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルにまた捕捉することもできる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 21版(2005)に開示されている。
【0178】
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって直ぐに達成される。
【0179】
徐放製剤を調製してもよい。徐放調製物の好適な例は、ポリペプチド変異体を含む固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、該マトリックスは、成形品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタメートの共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0180】
ここに開示された精製されたポリペプチド又は該ポリペプチド及び薬学的に許容可能な担体を含有する組成物はついで様々な診断、治療又はそのようなポリペプチド及び組成物に対して知られている他の用途に使用される。例えば、ポリペプチドは、治療的に効果的な量のポリペプチドを哺乳動物に投与することにより哺乳動物における疾患を治療するために使用されうる。
【0181】
次の実施例は、本発明を限定しないで例証するために提供される。
【実施例】
【0182】
ここに記載された実施例及び実施態様は例証目的だけのためであり、それに鑑みての様々な変形又は変化が当業者に示唆され、この出願の精神及び範囲に含まれることが理解される。
【0183】
実施例1:pH勾配溶離プロテインAクロマトグラフィー
2/C3領域を含む6つの異なったタンパク質である抗VEGF抗体#1、抗CD20抗体、抗VEGF抗体#2、抗MUC16抗体、抗CD4抗体、及びアーム抗Met抗体を、プロテインAクロマトグラフィーカラムでのpH段階勾配溶離法を使用して精製した。該方法は表1に概略を示す。

【0184】
実験手順
表1に列挙したタンパク質負荷及びバッファー組成/pHパラメーターを使用してUnicorn法ファイルを作成した。このファイルはGE Healthcare AKTA(GE Healthcare)エクスプローラーFPLC(Fast Protein Liquid Chromatography)システムによって実行した。FPLCはプラスチック配管及びポンプからなるベンチスケールの機器で、製造精製プロセスをシミュレートした。FPLCは、流量が維持され、移送されるポンプの各々の流れの割合が変化させられる2台のポンプ(ポンプA及びポンプB)システムを使用してプログラムされた変化割合で2つのバッファーを混合することにより「pH勾配」相を作り出した。Unicornプログラムで指定されたものは、設定体積(カラム体積数)に対する他のものに対する「%B」であった。
【0185】
カラム平衡相では、カラムは表1に列挙された保存溶液から取られ、タンパク質材料を添加するために調製された。タンパク質負荷相では、HCCF(収集細胞培養液)を、0.2ミクロン孔径の真空フィルターを使用して前置濾過し、プロテインAカラム(MABSELECT(商標)、MABSELECT SURE(商標)、POROS(登録商標)MABCAPTURE(商標)A、PROSEP(登録商標)Va、又はPROSEP(登録商標)ウルトラ・プラス))に充填した。タンパク質は14−37g/Lの範囲の密度で充填した。殆どの実験は21g/Lで行った。洗浄1相では、清浄1バッファーを使用して、AKTAライン中に残った負荷をカラムに押し出した。洗浄2相では、CHOP(チャイニーズハムスター卵巣タンパク質)のような不純物を洗浄2バッファーによって除去した。洗浄3相では、洗浄3バッファーを使用して洗浄2バッファー及び付随する不純物をカラムから除いて溶離相の準備をした。pH段階勾配溶離相では、2台のポンプシステムによって異なったpHの2種のpHバッファーの精確な操作によって形成した勾配を使用して、パーセントによって設定した2つのバッファーの一つのpHミックスから他のミックスに徐々に移動させた。「35−60%B」の溶離パラメーターは、約4.3−3.7のpH勾配範囲と相関する。より詳細には、35%Bは、pH4.34、16.25mMのアセテート、8.75mMのホルマートのバッファー組成、及び1039uS/cmのバッファー導電率の溶離バッファーに対応する。60%Bは、pH3.69、10mMアセテート及び15mMのホルマートのバッファー組成、及び763uS/cmのバッファー導電率の溶離バッファーに対応する。殆どの実験の溶離相の間に、溶離の全体を通して画分を取り、単量体対サイズ変異体(HMWS(高分子量種)、二量体、又は断片)溶離挙動を決定するために分子ふるいHPLCアッセイを使用してアッセイした。これらの画分をまた選択された実験に対するCHOPアッセイに供し、全画分についてNanoDrop UV分光光度計(Thermo Fischer Scientific, Wilmington, DE)を使用してタンパク質濃度を測定した。再生相では、再生バッファーを使用して強固に結合した不純物又は残った生成物を洗い流し、実験間のキャリーオーバーを最小にした。保存期では、プロテインAカラムを再生バッファーから取り除き、不使用中におけるカラム完全性を経時的に維持するように設計された溶液中に保存した。
【0186】
相長さ及び流量はそれぞれCV及び時間当たりのセンチメートルで測定した。流量は、圧力の問題のために時間当たりのセンチメートルで量った(cm/hrでの流速をcmでのカラムの床高によって割り、また標準的な単位である時間当たりのカラム体積に達する)。
【0187】
クロマトグラムを収集し、AKTA(GE Healthcare)FPLC精製システム及びその付随のUnicornソフトウェアパッケージによって解析した。カラムA精製実験を実施した後、UV吸光度、pH、及び導電率のトレース(並びに他の測定値又はプログラム指示/摘要日誌)を評価し、調べた。
【0188】
a.分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)アッセイ
分析的分子ふるい(サイズ排除)クロマトグラフィー(SEC)アッセイをAgilent1200シリーズHPLC(Agilent Technologies, USA, part G1329A)で実施し、集めた試料に対する高分子量種(HMWS)、二量体、単量体、及び断片の相対レベルを決定した。14.24mLのTSK G3000SWXL,7.8mmD×300mmH(Tosoh Bioscience, Tokyo, Japan, part 08541)カラムを使用した。各試料をリン酸カリウム/塩化カリウムHPLC流通バッファーを使用しておよそ0.5g/L抗体に希釈するか、又は試料注入を変更してアッセイカラムに充填される質量を標準化した。全ての試料はAgilent HPLC1.5mLのグラスバイアルで調製した。実験は0.5mL/分の流量で30分であった。試料注入は、およそ25ngの抗体が試料当たりに充填されるように調整した。試料の各バックグラウンドバッファーを含んでいるブランクを、各試料セットで実験した。UV280nm吸光度曲線を、ChemStation(Agilent Technologies)を使用してマニュアルで、又はCHROMELEON(登録商標)(DIONEX, Sunnyvale, CA)ソフトウェアを使用して自動的に解析して、別個にピークを積分し、試料に対する種のパーセント値を得た。このアッセイから得られたパーセント値に画分の濃度(mg/mL)を乗じて、試料中の各サイズ変異体種の実際の濃度を得ることができる(例えばSECの結果:4%HMWS、3%二量体、92%単量体、1%断片;試料濃度:2g/L;試料体積:10mL;1.84g/L単量体、試料中全体で18.4mg単量体)。
【0189】
b.CHOPアッセイ
選択された実験からの試料をアッセイ群に供し、標準的で確証された酵素結合吸着免疫検定(ELISA)を実施してCHOPのレベルを定量した。アフィニティ精製したヤギ抗CHOP抗体をマイクロタイタープレートのウェルに固定化させた。CHOP、標準、及びコントロールを含む試料の希釈物をウェルにおいてインキュベートし、ついで西洋わさびペルオキシダーゼにコンジュゲートさせたヤギ抗CHOP抗体と共にインキュベートした。西洋わさびペルオキシダーゼ酵素活性をo−フェニレンジアミン二塩酸塩で検出した。CHOPはマイクロタイタープレートリーダーで492nmでの吸光度を読み取ることによって定量した。コンピュータカーブフィッティングプログラムを使用して標準曲線を生成し、試料濃度を自動的に計算した。ELISAのアッセイ範囲は典型的には5ng/mlから320ng/mlであった。結果をプールの比較のためにppmに標準化した。
【0190】
結果
段階勾配の溶離形状を図1に示す。全ての生成物はpH減少の終わりまでに溶離された。
大部分のタンパク質はより迅速にカラムから溶離されたが、十分なタンパク質がカラムに残り、勾配中に溶離された。低pHでは、所望の生成物(およそpH4.6から3.7の溶離範囲で、僅かな分子間変動)と望まれない凝集物(およそpH3.9から3.5の溶離範囲)との間の分離が生じた。
【0191】
試験した6種全てのタンパク質分子(抗VEGF抗体#1、抗CD20抗体、抗VEGF抗体#2、抗MUC16抗体、抗CD4抗体、及び一アーム抗Met抗体)において、高割合(〜100%)の単量体が初期の勾配分画において観察され、勾配のテールエンド部分は更に高レベルの凝集種(>50%)を含んでいた。これらのSECの結果を図2−4Bに示す。この試験分子のセットは大きなクラスのタンパク質分子(例えばキメラ抗体、チオMab(一つのアミノ酸残基をシステインで置換することによりポイントミューテーションを有する組換えモノクローナル抗体)、IgG4、及び大腸菌で産生される抗体断片)を包含するので、このpH段階勾配法は、全てのC2/C3領域含有ポリペプチド/タンパク質(例えばFc領域)に対する広い応用性を示唆する。
【0192】
実施例2:標準的な段階溶離及びpH段階勾配溶離を使用するプロテインAクロマトグラフィーカラムでの抗CD20抗体、抗VEGF抗体#1、及び抗MUC16抗体に対するCHOP分離
実施例1に記載されたpH段階勾配溶離タンパク質の方法を使用して、mg/mLでの画分当たりの抗CD20抗体レベル(図1Aの抗VEGF抗体#1クロマトグラムで見られる段階勾配溶離相のオンラインAKTA/Unicorn UV280読みで追跡されたベンチトップオフラインのUV280吸光度から)及びppmでの画分当たりのCHOPレベルを測定した。図5の左パネルに見られるように(抗CD20抗体及びCHOP溶離)、pH段階勾配溶離の低pHでの後の画分はCHOPの量と比較して非常に少ない抗CD20抗体しか含んでいなかった。抗CD20抗体段階勾配pH溶離と同時になされたコントロール実験からのデータは図5の表の上の列に示している。コントロール実験は、タンパク質溶離相においてはpH段階勾配が使用されず、タンパク質がpH3.6以下で溶離されたことを除いて、表1に記載されたものと同じ条件を使用してなされた。下の列はpH段階勾配を使用した抗CD20抗体収率における小さいが、許容できない減少を示している。(注意:凝集物除去のためにこの収率ロスは予想される;収率はカラムに添加された生成物の全量中に凝集物を含むHCCFタイター値を使用して計算する)。約5%少ない凝集物及び半分のCHOPレベルがコントロールプールとの比較で観察された。該結果は、pH段階勾配溶離を使用すると純度が増加するという予期せぬ効果を証明している。
【0193】
抗VEGF抗体#1及び抗MUC16抗体の双方に対するCHOP分離を、実施例1に記載されたpH段階勾配法を使用してまた実施した。抗CD20抗体CHOPグラフにおいて観察されたパターンと同様に、より多くのCHOPが抗VEGF抗体の溶離と比例してpH勾配の終わりに溶離され、pH段階勾配溶離がこのタンパク質分子並びに抗CD20抗体に対して宿主細胞不純物を分離したことを示している。図6を参照のこと。抗MUC16抗体におけるCHOP分離では、この抗体は抗VEGF抗体#1において観察された溶離パターンと比較して更に高いCHOPレベルを有していた。図7を参照のこと。従って、有意な量のCHOPを、上に記載のpH段階勾配法を使用することによって抗MUC16抗体から分画することができる。
【0194】
実施例3:pH勾配溶離プロテインAクロマトグラフィーを使用するウイルス粒子のクリアランス
実施例1に記載されたpH段階勾配溶離プロテインAクロマトグラフィーの方法を使用して、抗VEGF抗体#1のウイルス粒子クリアランスを測定した。
【0195】
段階勾配pH溶離プロテインAクロマトグラフィー
全ての相及びバッファーは実施例1において使用したものと同じであった。定量的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを使用してレトロウイルス様粒子数について画分を試験した。
【0196】
a.レトロウイルス様粒子の定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RVLP QPCR)アッセイ
RVLP内因性ウイルス粒子アッセイはリアルタイム定量的PCRアッセイである。ウイルスRNAを、Qiagen EZ1(Qiagen, Valencia, CA)を使用して試料から抽出した。試料サイズは0.4mL(未希釈、及び1:10希釈のHCCF、未希釈プロテインAプール)であった。抽出効率は既知のCHOレトロウイルス力価を持つ参照の標準HCCF試料を含めることによって確認した。ゲノムDNAは、上昇した温度で30分間、抽出溶離物を0.2単位/mLのデオキシリボヌクレアーゼIで処理することによってデオキシリボヌクレアーゼ消化によって除去した。ついで、デオキシリボヌクレアーゼを70℃で15分間、熱失活させた。レトロウイルスDNAが無いことを、逆転写酵素なしに試料をアッセイすることによって確認した。
【0197】
CHOレトロウイルスゲノムを測定するリアルタイム定量的PCRアッセイを、De Wit等 (Biologicals, 28(3):137-48 (2000))に記載されたようにして、しかし新しいプローブを近くの領域に使用して、実施した。試薬と手順はまた更新し、改良した。プライマー及びプローブ配列は、CHO型Cレトロウイルスゲノムからの高度に保存されたpol領域の断片を増幅するように設計された。各レトロウイルス様粒子は二つのゲノムRNA分子を含んでいる。オリゴヌクレオチドプローブ及びプライマーをApplied Biosystems(Foster City, CA)及びInvitrogen(Carlsbad, CA)から注文した。ウイルスクリアランスはlog10減少値、つまりLRVとして表したが、これは、タンパク質(HCCF)負荷及び生成物プール中のlog10(全ウイルス)の差である。全ウイルスは、試料中のウイルス力価(粒子/ml又はnU/mL)及び試料体積(mL)から得た。図18は、pH段階勾配溶離から取られた各画分に対する内因性ウイルス様粒子数を示している。あるウイルスは大きなピークで勾配の開始時に溶離したが、ウイルスのより多くの部分は溶離のテールエンドで溶離した。従って、生成物からのこれらのRVLPの分離は、ウイルスクリアランスに関して、pH段階勾配又は完全勾配溶離プロテインAクロマトグラフィーの総効率に利益となる。図19はHCCF負荷と比較しての各画分に対するLRVを示している。該グラフは図18の値を使用する計算に基づいた。LRVの大きな減少が後の凝集物リッチな溶離画分に観察された。LRVは、より多いポリペプチド単量体画分を溶離する中央で高かった(望ましい効果)。
【0198】
実施例4:pH勾配溶離プロテインAクロマトグラフィーを使用する塩基性ポリペプチド変異体クリアランス
実施例1に記載されたpH段階勾配溶離プロテインAクロマトグラフィーの方法を使用して、抗VEGF抗体#1の塩基性ポリペプチド変異体(又は塩基性変異体)クリアランスを測定した。を測定した。
【0199】
段階勾配pH溶離プロテインAクロマトグラフィー
全ての相及びバッファーは実施例1において使用したものと同じであった。画分をイオン交換変異体アッセイに供した。
【0200】
a. イオン交換変異体アッセイ
分析的イオン交換クロマトグラフィー(IEC)アッセイをAgilent1200シリーズHPLC(Agilent Technologies, USA, part G1329A)で実施し、使用して、集めた抗VEGF抗体#1試料に対して酸性及び塩基性荷電変異体に対する主ピークの相対レベルを決定した。Dionex ProPac WCX−10,4.6×250mm(Dionex製品番号054993)カラムを、高い温度条件下でACES[N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸]及びNaClの勾配で使用した。試料調製物は、カルボキシペプチダーゼ(CpB)での20分加熱した消化の前にIEC移動相中にバッファー交換試料を含めた。およそ50ugの抗VEGF抗体#1を試料当たりカラム中に注入した。UV280nmトレースを得て、ChemStation(Agilent Technologies)ソフトウェアを使用して積分した。酸性、塩基性、及び主ピーク種の各カテゴリーに対する積分パーセントを、勾配にわたるイオン交換変異体組成物の傾向について分析した。図17は、20のプロテインAのpH段階溶離画分にわたるイオン交換変異体アッセイピークの積分の結果を示している。画分中に存在する塩基性変異体の割合は、プロテインApH段階勾配溶離のテール部分において劇的に増加する。勾配溶離のこのテール部分は、実施例1及び2に記載されたように、増加したCHOP及び凝集物分離が観察されたのと同じ部分である。
【0201】
実施例5:複数のプロテインAクロマトグラフィーカラムを使用するpH段階勾配溶離
上述のpH段階勾配溶離法に対して、MABSELECT SURE(商標)及びMABSELECT(商標)樹脂を試験した。これらの二つのプロテインA樹脂は、名前が類似しているが、異なったアフィニティリガンドが結合している。MABSELECT(商標)は天然プロテインAリガンドを有しており、これは抗体のFc部分に結合している。MABSELECT SURE(商標)は、短い時間の間、高pHの溶液で安定であるように化学的に改変されたプロテインAの修飾形態を有している。オーバーレイされたAKTA溶離プロファイルは、溶離トレースが二つのプロテインA樹脂に対して極めて類似していることを示している。図8のMabSelectに対するSEC積分プロファイルから分かるように、匹敵する凝集物分離がこの樹脂を使用して達成された。凝集物分離に成功裏に試験された他の樹脂は、PROSEP(登録商標)Va、PROSEP(登録商標)ウルトラ・プラス、及びPOROS(登録商標)MABCAPTURE(商標)Aであった。従って、様々なアフィニティ樹脂(例えばMABSELECT(商標)、MABSELECT SUERE(商標)、PROSEP(登録商標)Va、PROSEP(登録商標)ウルトラ・プラス、及びPOROS(登録商標)MABCAPTURE(商標))を、不純物を分画するためにpH段階勾配溶離法において使用することができる。
【0202】
実施例6:pH勾配溶離法に対して様々なパラメーターを使用する実験デザイン(DOE)
殆どのクロマトグラフィープロセスで重要である様々なパラメータを、表2に示された範囲内で35回実施の統計的に設計された研究を使用して抗VEGF抗体#1について探求した。「溶離開始%B」パラメーターは、(溶離曲線の形状の決定において大きな役割を果たす。開始%Bが高くなるほど、開始溶離pHが低くなり、より多くのタンパク質が最初の画分でカラムから溶離される)溶離相の開始pH、並びに全体の勾配の傾斜に影響を及ぼす。主要な効果並びに相互作用を解明するために設計された画分要因研究で同時に変化させた。全ての実験は溶離中に分画され、凝集物及び濃度が全ての画分についてアッセイされた。内挿計算を使用して、正確に85%収率(段階収率標的の下限)を生じるプールについてモックプール単量体レベルを決定し、これらの値を使用して、単量体を凝集物から効率的に分離する点における実験パラメーターの各セットの有効性を比較した。

【0203】
実験手順
(複数カラムの充填を必要とする)カラム床高以外の全てのパラメーター変化をUnicornソフトウェアを使用して調べた。CV画分を全ての溶離に対して取り、(上述の)HPLC SECを使用してアッセイし、タンパク質濃度について測定した(NanoDrop UV分光光度計で測定したUV280吸光度)。比較の結果を最もよく標準化するために、様々な画分セットからのデータを編集し、計算を使用して、全体収率及び各実験からのプールのSECプロファイルを内挿した。
【0204】
JMP(登録商標)(SAS, Cary, NC)ソフトウェアパッケージを用いて、画分要因パラメーター外挿実験プランを生成した。その高収率、高単量体レベル、及び低プールサイズのため、実験の一つをセットから「例示的製造実験」として選択した(図11)。
【0205】
結果
DOE結果のパレートプロットは、「開始%B」が凝集物分離の決定において最も影響するパラメーターであり、次に負荷密度(低い方が良い)と滞留時間(滞留時間は床高の制御パラメーター(cm/CV)を流速(cm/hr)で割ってhr/CVで計算した)が続くことを示している。従って、開始%Bが低くなると、溶離開始pHが高くなり、凝集物分離がより効率的になる;負荷密度が低いと凝集物分離がより効率的になる;及び滞留時間が長いと、凝集物分離がより効率的になる。図9を参照。更に、この研究からの相互作用プロファイルは、低密度のパラメーターと開始%Bの間に相関があり、また滞留時間と負荷密度の間に相互作用があったことを示している。増加した負荷密度では、開始%Bは、実験がより低い負荷密度でなされた場合よりも85%収率モックプールの単量体レベルについてより大きな効果を有していた。更に、増加した負荷密度では、滞留時間が、より効率的に凝集物を分画する勾配の能力において更に大きな役割を果たしていた。pH段階勾配法での高生成物スループットを達成するために溶離においては低い速度が使用されなければならない。図10を参照のこと。図11は、この実験からのプールは10CVs以下(例えば5.4CV又は6CV)であったが、85%よりも大きい収率で1%未満の凝集物を移送したことを示している。
【0206】
主要な効果(図9のパレートプロット)、相互作用(図10)、及び例示的製造実験(図11)に加えて、溶離全長は凝集物分離に効果がなかったが、プールサイズを減少させ、(製造スケールでは好ましい)少ない体積であるが、高い純度及び高い収率を尚も有するプールを生じるように操作できたことが観察された。また、pH段階勾配の使用は、完全な勾配によって与えられるものにほぼ匹敵する純度で低いプール体積を生じた(実施例8を参照のこと)。pH段階勾配はまた負荷密度及び流量の小さな変化を含む幾つかのプロセス変化においてロバストであり、また床高によって全く影響を受けないことが見出された。
【0207】
実施例7:pH段階勾配プロテインAクロマトグラフィー後にイオン交換膜クロマトグラフィーを使用するタンパク質精製
下流のカラムクロマトグラフィーが精製プロセスから除去され、又はメンブランで置換されうるかどうかを決定するために、抗VEGF抗体#1(1%未満の凝集物及び高収率のプール)についてプロテインA pH段階勾配のベンチスケールサイクリングを下流の荷電メンブランに充填した。MUSTANG(登録商標)S(Pall corporation)及びMUSTANG(登録商標)Q(Pall corporation)メンブランはそれぞれカチオン交換メンブラン及びアニオン交換メンブランをそれぞれ表す。典型的な下流カラムプロセスと比較して同じ全体純度と収率を達成するメンブランの能力によって成功を測定した。
【0208】
実験手順
S及び/又はQメンブランに対するCHOP及び凝集物クリアランスのための最適な負荷条件の決定に使用されるパラメーターを、表3A及び3B中のプロテインA標準工程プールを使用してS及び/又はQメンブランに対するCHOPクリアランスに対する最適負荷条件についての先の研究から取り上げた。これらの先の研究では、プロテインA標準工程プールが使用された場合(pH勾配なしで3.6以下のpHでタンパク質を溶離するコントロール群)有望な結果が示された;しかしながら、このプロセスは、所望されるよりは僅かに高いCHOPレベルを有しており、プロセスからの凝集物を排除しなかった。これらの先の研究では、メンブランは5kg/Lメンブランまで充填され、最適な負荷条件が不純物除去に対して見出された。これらの同じ条件をプロテインA段階勾配溶離プールに使用して、CHOP及び凝集物のような標的とされている主な不純物でのこれらのメンブランに対する異なったプロテインAプールの性能を比較した。
【0209】


【0210】
最初の研究では、プロテインA標準工程溶離プールを特定のpH及び導電率に条件付け、AKTA(商標)FPLC精製システムに連結された実験室規模のカチオン(MUSTANG(登録商標)S)及びアニオン(MUSTANG(登録商標)Q)交換メンブラン単位を通過させた。流量は維持し、圧力トレースを汚れ/透過率減衰の証拠について調べた。画分を様々な負荷密度で取り、CHOP(ELISA)及び抗体濃度(NanoDrop UV分光光度計でのUV280吸光度)についてアッセイした。これらのアッセイの結果を様々な負荷密度で比較して、最終CHOPクリアランスに対する最適な負荷条件を見出した。後の研究において、プロテインA pH段階勾配溶離プールを最初の実験で見出された最適条件に条件付けした。これから、段階勾配溶離プールの性能を、高収率及び低凝集物レベルを維持しながらCHOP及び他の不純物を排除するための下流のメンブランの能力において標準的なプロテインA工程溶離のものと比較した。2つのサイズのカチオン交換膜と3つのサイズのアニオン交換膜をまた結果の再現性及び拡張可能性を試験するために使用した。
【0211】
結果
プロテインA工程プールをカチオンからアニオン交換膜精製シリーズに対して負荷として使用した場合、得られた最も低いCHOPレベルは5kg/Lメンブランまで負荷されたメンブランに対して15−20ppmであった。メンブランは凝集物を排除しなかったので、この不純物のレベルは最終プールでは許容できないほど高かった。これに対して、プロテインSpH段階勾配溶離プールがこれらの同じメンブランに充填された場合、CHOPレベルは0−15ppmであり、凝集物レベルは最終プールでは尚も低く、全体のプロセスに対する利益を示している。
【0212】
更に、試験されたイオン交換膜の3つの組み合わせの各々の最終プールは高収率で高純度の最終プールになった。全ての場合、凝集物レベルはpH調節及びメンブランプロセシングを通じて低いままであり、CHOPレベルはまた先のコントロール研究において見られたものよりも低く、フィードとして低い凝集物プロテインAプールを使用する点に予期されないCHOP低減効果を示している。図12を参照のこと。従って、通常のイオン交換クロマトグラフィーカラムの代わりにイオン交換クロマトグラフィー膜を使用すると、多くの典型的なカラムクロマトグラフィーバッファーの必要性及び他の時間/製造スペースを労する不便さを解消する。より重要なことは、これらの荷電膜が過負荷モードで使用されたので(つまり、負荷が高度に精製されたプールを作製するのに必要な洗浄又は溶離工程なしで高負荷密度まで負荷物をメンブランに通過させる)、メンブランはpH勾配プロテインAクロマトグラフィー工程の下流の連続的な精製プロセスを可能にする。
【0213】
パイロットスケール(4.1L)及び28mLのベンチスケール間でのSEC積分プロファイルはまた極めて類似していることが示され、プロテインA pH段階勾配を成功裏にスケールアップでき、任意の小規模の結果が大きな規模の性能を示すことが考えられる。図13を参照のこと。これらの結果は、pH段階勾配溶離プロテインAクロマトグラフィーの再現性及び拡張可能性の予想できない効果を示している。
【0214】
実施例8:VIRESOLVE(登録商標)Proパルボウイルスフィルター実験
A. VIRESOLVE(登録商標)Pro透過率減衰比較
プロテインApH段階勾配を、パルボウイルスフィルター(VIRESOLVE(登録商標) Pro, Millipore, Inc.)での大きな質量スループットの容易化に関して、プロテインA標準工程(コントロール群、pH勾配なしでpH3.6以下でタンパク質を溶離する)と比較した。一般的なHCCFフィードを使用して、VIRESOLVE(登録商標)Proパルボウイルスフィルターに流す前に標準的なフロースルーモードでQSFF(Qセファロース・ファースト・フロー(アニオン交換カラム;GE Healthcare)にプロテインApH勾配及びプロテインA標準工程コントロールの双方を流した。幾つかのVIRESOLVE(登録商標)Pro実験条件を試験した:1)インラインのSHC滅菌前置フィルターを伴うプロテインA標準工程溶離プール、2)インラインの前置フィルターとしてカチオン交換(CEX)膜吸着体を伴うプロテインA標準工程溶離、3)SHC前置フィルター(未荷電の0.2ミクロンの滅菌グレードフィルター)を伴うプロテインApH段階勾配プール、及び4)インライン前置フィルターとしてCEX膜吸着体を伴うプロテインApH段階勾配プール。幾つかのプールは繰り返して実験した。VIRESOLVE(登録商標)Proは、スプレッドシートにデータを記録するための圧力センサー、蠕動ポンプ、バランスのセットを利用する濾過構成で実施した。
【0215】
インラインのSHC滅菌フィルターを伴うpH段階勾配プールをカチオン交換膜での工程プールと同様にして実施し、双方がVIRESOLVE(登録商標)Proに対して可能な質量スループットにおいておよそ6倍の増加を示した。図14を参照。従って、この結果は、CEX膜前置フィルターに頼らないVIRESOLVE(登録商標)Proフィルター汚染物質の除去におけるプロテインA pH段階勾配の予想できない効果を示している。加えて、プロテインA pH段階勾配プールとのCEX膜吸着体の組み合わせによって効果があるVIRESOLVE(登録商標)Pro性能は、VIRESOLVE(登録商標)ProでのSHCを伴うプロテインA標準工程溶離プール実験と比較して潜在的な質量スループットが予期しないおよそ18倍の改善を生じる。
【0216】
B. VIRESOLVE(登録商標)Pro CHOP及びSEC実験
VIRESOLVE(登録商標)Pro実験シークエンス中に異なった点で試料を採取し、CHOP及びSECについてアッセイした。インラインでSHCを伴うプロテインA標準工程シーケンスはかなり低いCHOPレベルであったが、凝集物を尚も含んでいた。凝集物レベルは、異なったプロセス工程を通じたプロテインApH段階勾配実験において低いままであり、凝集物1%未満のエンドプールが生じた。この結果は、標準的な工程のプールによって送達されるプールに対して顕著な改善であった。更に、pH段階勾配SHC−VIRESOLVE(登録商標)Proプールに対するCHOPレベルは、カチオン交換メンブランを用いた標準的な工程の実験におけるレベルに匹敵していた。レベルはSHCでの標準的な工程からのものよりも僅かに低かった。表4A及び4Bを参照のこと。これらの結果は、pH段階勾配法が標準的な工程のプールと比較して高い質量スループットを生じたばかりでなく、また匹敵するかより良好な純度を作り出したことを示している。


【0217】
実施例9:プロテインAでのプロテインA完全pH勾配溶離
プロテインA完全勾配溶離をまた試験した。全ての相及びバッファーは、pH段階勾配で使用された35−60%Bが勾配の開始時に25−60%まで減少させられ、これがより高いpH開始勾配(約pH4.6で開始し、約pH3.7で終了する)を生じたことを除いて、実施例1に記載されたpH段階勾配法で使用されたものと同じであった。25%Bは、pH4.58、18.75mMのアセテート及び6.25mMのホルマートのバッファー組成、及び1141uS/cmのバッファー導電率の溶離バッファーに対応する。60%Bは、pH3.69、10mMアセテート及び15mMのホルマートのバッファー組成、及び763uS/cmのバッファー導電率の溶離バッファーに対応する。表5を参照のこと。

【0218】
完全な勾配の溶離形状を図15に示す。全ての生成物はpH減少の終わりまでに溶離された。完全pH勾配のクロマトグラムは、抗体溶離が高いpHで始まることを除いて、全ての相においてpH段階勾配と同じである。勾配の開始時における初期の高いUV280スパイクの欠如は勾配の始まりにおいて低い濃度の画分を生じ、より多くのタンパク質が溶離相の残りを通して分散した。これは、単量体よりも高いpHで優先的に溶離する種の大なる分離を可能にした。よって、この技術は、低pHで所望の生成物から分離する不純物を除去するのに等しく効果的であり得るが(つまり、段階勾配を使用して凝集物及びCHOPが分離される)、pH段階勾配と比較してエンドプール体積のような唯一の欠点を伴う(勾配開始時の低い画分濃度が所望の収率のモックプールを達成するために多くの画分を合わせてプール化する必要性に置き換えられる)。この完全な勾配に対するSECトレース及び積分は低pHでの単量体からの凝集物の分離をまた証明しており、pH段階勾配の効果と利用性が完全な勾配にも拡張できることを示唆している。
【0219】
実施例10:プロテインA研究での凝集物形成
凝集物が低pH又はpH段階勾配溶離のテールエンドにおいても形成されておらず、プロテインApH段階勾配法が、凝集物の形成を引き起こすよりはむしろ凝集物から単量体を確かに分離することを担保するために、精製された材料を使用して、供給物の凝集物レベルが、HCCF成分を含むか含まないでプロテインAでのプロセシングによって増加しなかったことを示した。表6を参照のこと。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法において、ポリペプチドをプロテインAに結合させ、5.0以下で始まるpH勾配で溶離させることを含む方法。
【請求項2】
pH勾配が約pH4.2で始まる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
pH勾配が約pH4.3で始まる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
pH勾配が約pH4.6で始まる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
pH勾配が3.0以上で終了する請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
pH勾配が約3.7で終了する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
宿主細胞不純物がポリペプチドから分離される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
宿主細胞不純物がチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
凝集物がポリペプチドから分離される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ウイルスフィルター汚染物質がポリペプチドから分離される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ウイルス粒子又はウイルス様粒子がポリペプチドから分離される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
塩基性ポリペプチド変異体がポリペプチドから分離される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
2/C3領域が免疫グロブリンのFc領域を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ポリペプチドが抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポリペプチドがイムノアドヘシンである請求項1に記載の方法。
【請求項17】
精製されたポリペプチドが少なくとも約98%の単量体の純度を有している請求項1に記載の方法。
【請求項18】
精製されたポリペプチドが少なくとも約99%の単量体の純度を有している請求項1に記載の方法。
【請求項19】
精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比が段階溶離法によって精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約20%低く、段階溶離法がポリペプチドをプロテインAに結合させ、3.6以下で始まるpHで溶離させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比が段階溶離法によって精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約60%低く、段階溶離法がポリペプチドをプロテインAに結合させ、3.6以下で始まるpHで溶離させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
精製されたポリペプチドがポリペプチド単量体である請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
プロテインAが修飾又は非修飾プロテインAリガンドである請求項1に記載の方法。
【請求項23】
精製が製造スケールプロセスである請求項1に記載の方法。
【請求項24】
プロテインAがプロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂又はプロテインAクロマトグラフィー吸着剤である請求項1に記載の方法。
【請求項25】
プロテインAクロマトグラフィー吸着剤がメンブラン又はモノリスである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
プロテインAがプロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂であり、ポリペプチドの精製された画分が約12以下のプロテインAカラム体積を含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ポリペプチドにウイルス濾過工程を施すことを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ポリペプチドにイオン交換クロマトグラフィー工程を施すことを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項29】
イオン交換クロマトグラフィー工程が請求項1のpH勾配精製工程後に連続的に実施される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
凝集物を除去するための更なる精製工程を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項31】
ウイルスフィルター汚染物質を除去するための更なる精製工程を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項32】
2/C3領域を含むポリペプチドを精製する方法において、
(a)ポリペプチドをプロテインAに結合させる工程と、
(b)溶離バッファーを使用して5.0以下で始まるpH勾配でポリペプチドを溶離させる工程を含み、ここで溶離バッファーが低pHバッファー及び高pHバッファーを含み、pH勾配が溶離バッファー中の各pHバッファーの割合を調整することによって形成される方法。
【請求項33】
高pHバッファーが約pH5.0であり、低pHバッファーが約pH2.7である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
低pHバッファーの割合が約35%で始まる請求項32に記載の方法。
【請求項35】
約35%で低pHバッファーを含む溶離バッファーが約16.25mMのアセテートと約8.75mMのホルマートを含有する請求項34に記載の方法。
【請求項36】
低pHバッファーの割合が約25%で始まる請求項32に記載の方法。
【請求項37】
約25%で低pHバッファーを含む溶離バッファーが約18.75mMのアセテートと6.25mMのホルマートを含有する請求項36に記載の方法。
【請求項38】
低pHバッファーの割合が約40%で始まる請求項32に記載の方法。
【請求項39】
約40%で低pHバッファーを含む溶離バッファーが約15mMのアセテートと10mMのホルマートを含有する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ポリペプチドが約14g/Lで始まる充填密度で充填される請求項32に記載の方法。
【請求項41】
プロテインAがプロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂又はプロテインAクロマトグラフィー吸着剤である請求項32に記載の方法。
【請求項42】
プロテインAクロマトグラフィー吸着剤がメンブラン又はモノリスである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
プロテインAがプロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂であり、ポリペプチドが約5カラム体積/hrから約25カラム体積/hrの範囲の溶離流量を有している請求項41に記載の方法。
【請求項44】
pH勾配が約pH4.2で始まる請求項32に記載の方法。
【請求項45】
pH勾配が約pH4.3で始まる請求項32に記載の方法。
【請求項46】
pH勾配が約pH4.6で始まる請求項32に記載の方法。
【請求項47】
pH勾配が3.0以上で終了する請求項32及び44から46の何れか一項に記載の方法。
【請求項48】
pH勾配が約3.7で終了する請求項47に記載の方法。
【請求項49】
宿主細胞不純物がポリペプチドから分離される請求項32に記載の方法。
【請求項50】
宿主細胞不純物がチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)である請求項49に記載の方法。
【請求項51】
凝集物がポリペプチドから分離される請求項32に記載の方法。
【請求項52】
ウイルスフィルター汚染物質がポリペプチドから分離される請求項32に記載の方法。
【請求項53】
ウイルス粒子又はウイルス様粒子がポリペプチドから分離される請求項32に記載の方法。
【請求項54】
塩基性ポリペプチド変異体がポリペプチドから分離される請求項32に記載の方法。
【請求項55】
2/C3領域が免疫グロブリンのFc領域を含む請求項32に記載の方法。
【請求項56】
ポリペプチドが抗体である請求項32に記載の方法。
【請求項57】
抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片である請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ポリペプチドがイムノアドヘシンである請求項32に記載の方法。
【請求項59】
ポリペプチドが少なくとも約98%の単量体の純度を有している請求項32に記載の方法。
【請求項60】
ポリペプチドが少なくとも約99%の単量体の純度を有している請求項32に記載の方法。
【請求項61】
精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比が段階溶離法によって精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約20%低く、段階溶離法がポリペプチドをプロテインAに結合させ、3.6以下で始まるpHで溶離させることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項62】
精製されたポリペプチドに対する宿主細胞不純物の比が段階溶離法によって精製されたポリペプチドにおける比よりも少なくとも約60%低く、段階溶離法がポリペプチドをプロテインAに結合させ、3.6以下で始まるpHで溶離させることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項63】
精製されたポリペプチドがポリペプチド単量体である請求項61又は62に記載の方法。
【請求項64】
プロテインAが修飾又は非修飾プロテインAリガンドである請求項32に記載の方法。
【請求項65】
精製が製造スケールプロセスである請求項32に記載の方法。
【請求項66】
プロテインAがプロテインAカラムクロマトグラフィー樹脂であり、ポリペプチドの精製された画分が約12以下のプロテインAカラム体積を含む請求項41に記載の方法。
【請求項67】
ポリペプチドにウイルス濾過工程を施すことを更に含む請求項32に記載の方法。
【請求項68】
ポリペプチドにイオン交換クロマトグラフィー工程を施すことを更に含む請求項32に記載の方法。
【請求項69】
イオン交換クロマトグラフィー工程が工程(b)後に連続的に実施される請求項68に記載の方法。
【請求項70】
凝集物を除去するための更なる精製工程を含まない請求項32に記載の方法。
【請求項71】
ウイルスフィルター汚染物質を除去するための更なる精製工程を含まない請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−503877(P2013−503877A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527990(P2012−527990)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/047448
【国際公開番号】WO2011/028753
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】