改変されたAAVベクター
【課題】選択したAAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率n上昇した、改変AAVキャプシドを含むウイルスベクターの提供。
【解決手段】a)親のAAVキャプシド配列をアライメントにおいて機能的AAVキャプシド配列のライブラリーと比較する工程;(b)親のAAVキャプシド中の少なくとも1つのシングルトンを同定する工程であって、かつ、該シングルトンが、並置された機能的AAVキャプシド配列の対応する位置のアミノ酸が完全に保存されている親のAAVキャプシド中の該位置の可変アミノ酸である工程:(c)シングルトンを、機能的AAVキャプシド配列中の対応する該位置に位置するアミノ酸に改変する工程を含むことを特徴とする、ウイルスベクター。
【解決手段】a)親のAAVキャプシド配列をアライメントにおいて機能的AAVキャプシド配列のライブラリーと比較する工程;(b)親のAAVキャプシド中の少なくとも1つのシングルトンを同定する工程であって、かつ、該シングルトンが、並置された機能的AAVキャプシド配列の対応する位置のアミノ酸が完全に保存されている親のAAVキャプシド中の該位置の可変アミノ酸である工程:(c)シングルトンを、機能的AAVキャプシド配列中の対応する該位置に位置するアミノ酸に改変する工程を含むことを特徴とする、ウイルスベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率の上昇したAAVベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
パルボウイルス科の1メンバー、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、4.7キロ塩基対(kb)〜6kbの一本鎖の直鎖状DNAゲノムを有する小型のエンベロープを持たない20面体ウイルスである。AAVは、精製したアデノウイルスストック中の混入物質として発見されたため、該ウイルスはデペンドウイルス属(Dependovirus)に割り当てられている。AAVの生活環は、感染後のAAVゲノムが宿主染色体に部位特異的に組み込まれる潜伏期、およびアデノウイルスもしくは単純疱疹ウイルスいずれかの感染後に組み込まれたゲノムがその後レスキューされ、複製され、そして感染性ウイルスにパッケージングされる感染期を含む。非病原性の特性、非分裂細胞を含む感染性の広範な宿主範囲、および潜在的な部位特異的染色体組み込みが、AAVを遺伝子移入のための魅力的なツールとしている。
【0003】
AAVベクターは、治療および免疫原分子の両方に送達媒体としての使用が記載されてきた。今日まで、ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)から単離された数種の異なる十分に特徴づけられたAAVが存在する。
【0004】
最近、研究者達は多数のAAVの異なる配列を記載し[非特許文献1(2003年5月13日);特許文献1(2003年6月24日)]、そしてこれらのAAVを異なる血清型およびクレードに特徴付けた[非特許文献2(2004年6月);特許文献2]。異なる血清型のAAVが異なるトランスフェクション効率を表し、かつまた異なる細胞もしくは組織に対する向性も表すことが報告された。
【0005】
望まれているものは、異種分子を種々の細胞型に送達のためのAAVに基づく構築物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US−2003−0138772−A1
【特許文献2】国際公開第2005/033321号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G.Gao,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100(10):6081−6086
【非特許文献2】G.Gao,et al.,J.Virol.,78(12):6381−6388
【発明の概要】
【0008】
本発明は、非機能的および/または弱く機能する(perform)AAVから誘導されるベクターを改善する方法により取得できるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。
【0009】
1つの観点では、この方法は選択したAAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率を上げるために、選択したAAV配列のシングルトンを補正す
る方法を提供する。この方法には、このシングルトンを、並置された機能的AAVキャプシド配列の対応する位置(1もしくは複数)のアミノ酸と同じにするために、親のAAVキャプシド中の1もしくは複数のシングルトンを改変することが含まれる。
【0010】
別の観点では、本発明は修飾されたAAV配列、すなわち1もしくは複数のシングルトンが排除された配列を提供する。
【0011】
さらに別の観点では、本発明は本発明に従い修飾されたAAVキャプシドを有するAAVベクターを提供する。
【0012】
本発明の他の観点および利点は、本発明の以下の詳細な説明から容易に明らかとなるだろう。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明はAAVベクターの機能を改善する方法を提供する。本発明は、特に1もしくは複数のシングルトンを含むAAVのキャプシドを有するAAVベクターのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率を改善するために良く適している。さらに本発明は本発明に従い同定および調製した新規AAVキャプシド配列を提供する。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用するように、用語「含んでなる」および「含む」とは他の成分、要素、完全体(integer)、工程等を包含する。逆に用語「からなる」およびその変更体は、他の成分、要素、完全体(integer)、工程等を排除する。
【0015】
本発明のシングルトン法
本明細書で使用する用語「シングルトン」とは、選択した(すなわち親の)AAVキャプシド配列の所定位置の1つの可変アミノ酸を指す。可変アミノ酸の存在は、親のAAVキャプシドの配列を機能的なAAVキャプシド配列のライブラリーと並べることにより決定することができる。この配列は次いで分析されて親のAAVキャプシド中の可変アミノ酸の存在が決定され、ここで機能的AAVのライブラリー中のAAVの配列は完全な保存を有する。次いで親のAAV配列は、シングルトンを機能的AAVキャプシド配列中の該位置で同定された保存アミノ酸に変えるように改変(また、本発明に関し、「修飾」とも称す。)される。本発明に従い、親のAAV配列は1〜6、1〜5、1〜4、1〜3または2個のシングルトンを有することができる。親のAAV配列は6より多くのシングルトンを持つことができる。
【0016】
いったん改変または修飾されれば、修飾されたAAVキャプシドは、修飾されたキャプシドを有するAAVベクターを構築するために使用することができる。このベクターは当業者に既知の技術を使用して構築することができる。
【0017】
本発明の方法に従い修飾するために選択されるAAVは、以下の3つのAAVの機能的特性、すなわち親のAAVと比べた時の選択されたAAV配列のキャプシドを有するウイルス粒子へのパッケージング、形質導入効率の上昇、または遺伝子導入効率の上昇の1もしくは複数を上げることが望まれるものである。例えば親のAAVは、他の近縁のAAVに比べて低いパッケージング効率を有することを特徴とすることができる。別の例では、親のAAVは他の近縁のAAVに比べて低い形質導入効率を有するかもしれない。別の例では、親AAVは他の近縁のAAVに比べて低い遺伝子導入効率(すなわちインビボで標的分子を送達する能力が低い)を有するかもしれない。1つの実施態様では、親のAAVはこれら各範疇において十分な機能を特徴とするが、これら分野の1もしくは複数の機能の上昇が望まれる。
【0018】
このように本発明は、機能的AAVのライブラリー、選択した(親の)AAVと比べる配列を提供する。適当ならばライブラリーは、選択した親のAAVの改善のための標的とされる所望する機能を有するAAVを含む。換言すると、機能的AAVのライブラリー中の各配列は、所望するレベルのパッケージング能、所望するレベルのインビトロ形質導入効率、または所望するレベルのインビトロ遺伝子導入効率(すなわち個体の標的とする選択した標的組織もしくは細胞に送達する能力)を特徴とする。ライブラリーを構成する機能的AAVは、これらの機能的特徴の1、2もしくはすべてを個別に有することができる。ライブラリーに所望する他の機能は、当業者により容易に決定され得る。
【0019】
1つの態様では、機能的AAVは、AAV1、AAV2、AAV7、AAV8またはAAV9のいずれか1つと均等な、またはそれより高いパッケージングおよび形質導入効率を持つウイルス粒子を生産する能力により特徴つけられるAAVである。機能はAAV2repおよびAAV2ITRで設定するシュードタイピングで評価することができる。すなわち改変された親のAAVは通例の技術を使用して構築することができ、そしてAAVベクターはAAV2の生産と比べた時、ウイルスが少なくとも50%の力価で親のAAVから生産されるならば、AAVは機能的であると考える。さらにAAVが細胞を形質導入する能力は、当業者により容易に測定され得る。例えば親のAAVは、ウイルスの容易な検出を可能にするマーカー遺伝子を含むように構築することができる。例えばAAVは蛍光検出を可能にするeGFPもしくは他の遺伝子を含む。AAVがCMV−eGFPを含む場合、改変された親のAAVキャプシドから生産されたウイルスが293細胞に104の感染多重度で形質導入された時、機能は細胞が20の感染多重度で2時間、野生型ヒトアデノウイルス5型で前処理される内容で、形質導入効率が全細胞の5%GFP蛍光よりも大きい場合に証明される。
【0020】
適当にはライブラリーは、少なくとも2つの異なるクレードを表す少なくとも3つ、もしくは少なくとも4つの機能的AAVキャプシド配列からなる。好ましくは示した各クレードから少なくとも2つの配列がライブラリーに含まれる。特定の態様では、3、4、5、6以上のクレードが示される。
【0021】
「クレード」は、AAV vp1アミノ酸配列のアライメントに基づきネイバー−ジョイニング(Neighbor−Joining)アルゴリズムを用いて決定した場合に、(少なくとも1000個の複製物の)少なくとも75%のブーツストラップ値および0.05を超えないポアソン補正距離測定値により相互に系統発生的に関連づけられるAAVの一群である。
【0022】
ネイバー−ジョイニングアルゴリズムは文献に広範囲に記載されている。例えばM.Nei and S.Kumar、Molecular Evolution and Phylogenetics(オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、ニューヨーク(2000)を参照されたい。このアルゴリズムを実行するのに使用し得るコンピュータプログラムは入手可能である。例えば、MEGA v2.1プログラムは、修飾Nei−Gojoboriを実行する。これらの技術およびコンピュータプログラム、ならびにAAV vp1キャプシドタンパク質の配列を使用して、当業者は選択したAAVが本明細書で同定されるクレードの1つに含有されるか、別のクレードに含有されるか、若しくはこれらのクレードの外側にあるかどうかを容易に決定し得る。
【0023】
本明細書で定義されるクレードは、天然に存在するAAV vp1キャプシドに主として基づく一方、クレードは天然に存在するAAVに制限されない。クレードは、AAV vp1アミノ酸配列のアライメントに基づいて、ネイバー−ジョイニング アルゴリズム
を用いて決定した場合に、(少なくとも1000個の複製物の)少なくとも75%のおよび0.05を超えないポアソン補正距離測定値により系統発生学的に関連づけられる、組換え、修飾もしくは変更、キメラ、ハイブリッド、合成、人工などのAAVを制限なしに包含する天然に存在しないAAVを包含し得る。
【0024】
本明細書に記載されるクレードは、クレードA(AAV1およびAAV6により代表される)、クレードB(AAV2により代表される)ならびにクレードC(AAV2−AAV3ハイブリッドにより代表される)、クレードD(AAV7により代表される)、クレードE(AAV8により代表される)ならびにクレードF(ヒトAAV9により代表される)を包含する。これらのクレードは、以前に記述されたAAV血清型であるクレードの1メンバーにより代表される。以前に記述されたAAV1およびAAV6は、4種の単離物が3例のヒトから回収された単一クレード(クレードA)のメンバーである。以前に記述されたAAV3およびAAV5血清型は相互と明確に異なるが、しかし本明細書に記述されるスクリーニングで検出されず、また、これらのクレードのいずれにも包含されない。
【0025】
AAVのクレードに関するさらなる考察は、G.Gao, et al.,J.Virol.,78(12):6381−6388(2004年6月)および国際公開第2004/028817号および同第2005/033321号パンフレットに提供されている。参考により本明細書に編入する後者の文書は、新規ヒトAAV配列も提供する。
【0026】
1つの態様では、本発明の方法で使用するライブラリーはAAV5を除外する。別の態様では、本発明の方法で使用するライブラリーはAAV4を除外する。しかし特定の態様、例えば親のAAVがAAV5に類似する場合、これはアライメントにおいてこの配列に含むことが望ましいかもしれない。
【0027】
最少数の配列を含むライブラリーが構築され得るが、シングルトンを同定する効率は、より多い数の配列を含むライブラリーを使用することにより至適化することができる。適当には、ライブラリーは最少4つの配列を含み、少なくとも2つのクレードが示される。好ましくはライブラリーは示される各クレードから少なくとも2つの配列を含む。1つの態様では、ライブラリーは100以上のAAV配列を含む。別の態様では、ライブラリーは少なくとも3〜100のAAV配列を含む。さらに別の態様では、ライブラリーは少なくとも6〜50のAAV配列を含む。
【0028】
本発明の機能的ライブラリーに使用するために適するAAVには、例えばAAV1、AAV2、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9および記載された配列を含む[G.Gao,et al.,Proc Natl Acad Sci.100(10):6081:6086(2003年5月13日);国際公開第2004/042397号および同第2005/033321号パンフレット]。当該技術分野の1つの技術は、他のAAV、例えば国際公開第03/093460A1号パンフレット(2003年11月13日)および米国特許出願第2003−0138772A1号明細書(2003年7月24日)に記載された方法を使用して単離されたものを容易に選択できる。
【0029】
本発明に従い、ライブラリー中少なくとも3つの配列がそれらの並置されたキャプシド配列の完全長にわたり少なくとも85%同一である。
【0030】
用語「パーセント(%)同一性」とは、完全長のタンパク質またはそのフラグメントにわたり、アミノ酸配列について容易に決定され得る。適切には、フラグメントは少なくとも約8アミノ酸長であり、そして約700個までのアミノ酸であることができる。一般に、2つの異なるアデノ随伴ウイルス間の「同一性」、「相同性」もしくは「類似性」を指
す場合、「同一性」、「相同性」もしくは「類似性」は「整列した」に配列に関して決定される。「整列した」配列もしくは「アライメント」は、参照配列に比較して欠けているか、または付加的な塩基若しくはアミノ酸についての補正をしばしば含有する多数の核酸配列もしくはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。
【0031】
アライメントは、多様な公的にもしくは商業的に入手可能な複数の配列アライメントプログラム(Multiple Sequence Aligmnent Program)のいずれかを使用して実施する。配列のアライメントプログラムは、アミノ酸配列について、例えば「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」および「Match−Box」を利用することができる。一般に、これらのプログラムのいずれもデフォルトの設定で使用されるとは言え、当業者はこれらの設定を必要とされるように変更し得る。あるいは当業者は、少なくとも引用されたアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるもののような同一性もしくはアライメントのレベルを提供する別のアリゴリズムもしくはコンピュータプログラムを利用し得る。例えばJ.D.Thomsonら、Nucl.Acids.Res.,「多数の配列アライメントの包括的比較(A comprehensive comparison of multiple sequence alignments)」、27(13):2682−2690(1999)を参照されたい。
【0032】
複数の配列アライメントプログラムは、核酸配列についても利用することができる。こうしたプログラムの例は、「ClustalW」、「CAP Sequence Assembly」、「MAP」および「MEME」を包含し、これらはインターネット上のウェブサーバーを通じてアクセス可能である。こうしたプログラムの他の供給源は当業者に既知である。あるいは、Vector NTIユーティリティーもまた使用される。上述されたプログラムに含有されるものを包含する、ヌクレオチド配列の同一性を測定するのに使用し得る当該技術分野で既知の多数のアルゴリズムもまた存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCG Version6.1中のプログラムFasta(商標)を使用して比較し得る。Fasta(商標)はクエリ配列と参照配列の間の最良の重複領域のアライメントおよび配列の同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列の同一性パーセントは、GCG Version6.1(引用することにより本明細書に組み込まれる)で提供されるそのデフォルトのパラメータ(6のワードサイズおよびスコアリングマトリックスについてのNOPAM係数)を用いるFasta(商標)を使用して決定し得る。
【0033】
本発明に従い、シングルトンを含有すると思われる標的もしくは親AAVキャプシドの配列は、ライブラリー中のAAVキャプシドの配列と比較される。この比較はAAVキャプシドの完全長vp1タンパク質のアライメントを使用して行われる。
【0034】
AAV配列が並べられた時、選択された1つのアミノ酸位について1つのシングルトンが同定される場合、ライブラリー中のすべてのAAVは同じアミノ酸残基を有するが(すなわち完全に保存されている)、親のAAVは異なるアミノ酸残基を有する。
【0035】
典型的にはアライメントがAAVキャプシドvp1タンパク質に基づき準備された場合、アライメントは参照AAV配列(例えばAAV2)に対して挿入および欠失を含み、そしてそのように同定され、そしてアミノ酸残基の番号付けは、アライメントについて提供される参照スケールに基づく。しかし任意の上記AAV配列が参照スケールより少ないアミノ酸残基を有してもよい。本発明では、親のAAVおよび参照ライブラリーの配列を検討する場合、用語「同じ位置」または「対応する位置」は、並置された配列についての参照スケールに関して、各配列中で同じ残基番号に位置するアミノ酸を指す。しかしアライメントから取り出す場合、各AAV vp1タンパク質は、異なる残基番号に位置するこ
れらのアミノ酸を有することができる。
【0036】
場合により、本発明の方法は核酸アライメントを使用し、そして異なるアミノ酸をコードするコドンをシングルトンとして同定することにより行うことができる(すなわち、非類義的コドン)。所定のコドンの核酸配列が、ライブラリー中のそのコドンの配列と比べた時に親のAAVで同一ではないが、同じアミノ酸をコードする場合、それらは類義的と考え、そしてシングルトンではない。
【0037】
本発明に従い、シングルトンを含む親のAAVは、シングルトン残基がライブラリー中のAAVの保存されたアミノ酸残基に置き変えられるように改変される。
【0038】
この置き換えは、可変アミノ酸に関するコドンについて通常の部位特異的突然変異誘発技法を使用することにより都合よく行うことができる。典型的には部位特異的突然変異誘発法は、保存されたアミノ酸残基について所望するコドンを得るために必要なできる限り少ない工程を使用して行われる。そのような方法は当業者には周知であり、そして公開されている方法および/または市販されているキット[例えばストラタジーン(Stratagene)およびプロメガ(Promega)」を使用して行うことができる。部位特異的突然変異誘発法は、AAVゲノム配列について行うことができる。AAV配列は都合よくベクター(例えばプラスミド骨格)により運ばれることができる。あるいは当業者は、当該技術分野で既知の他の技法を使用して親のAAVを改変することができる。
【0039】
親のAAVは1より多くの例えば2、3、4、5、6個以上のシングルトンを有することができる。しかし機能における改善は、1個のシングルトンを補正した後に観察することができる。親のAAVが複数のシングルトンを持つ態様では、各シングルトンを1回で改変し、続いて修飾されたAAVの所望する機能の強化について評価することができる。あるいは所望する機能の強化について評価する前に、複数のシングルトンを改変してもよい。
【0040】
親のAAVが複数のシングルトンを含み、そして機能的改善が第1のシングルトンの改変で観察される場合でも、残りのシングルトン(1もしくは複数)を改変することにより機能を至適化することが望ましいかもしれない。
【0041】
典型的には、本発明の方法に従い改変された1もしくは複数のシングルトンを有する親のAAVが、AAVをAAV粒子にパッケージングすることによる機能について評価される。これらの方法は当業者には周知である。例えばG.Gao et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,(上記引用);Sambrook et al,モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨークを参照にされたい。
【0042】
これらの改変されたAAVは、本発明の方法に従い生産される新規キャプシドを有し、そして機能について評価される。AAV機能を評価するために適切な方法は本明細書に記載され、そして例えばDNAse保護粒子を生産する能力、インビトロ細胞形質導入効率および/またはインビボ遺伝子導入を含む。適切には本発明の改変されたAAVは、親のAAVの機能と比べた時、これらの特性の1つもしくは全部において機能を上げるために改変される十分な数のシングルトンを有する。
【0043】
II.本発明の新規AAV
本発明はさらに新規AAVが機能するかどうかを予想する方法を提供する。この方法には、本発明のシングルトン法を使用すること、および選択したAAVにシングルトンの不
存在を同定すること(すなわちシングルトンを欠くAAVの配列)が関与する。
【0044】
このように1つの態様では、本発明はベクターの生産に使用するためのAAVの選択法を提供する。この方法には、分析のための親のAAVキャプシド配列を選択すること、ならびに親のAAVキャプシド配列および機能的AAVキャプシド配列のライブラリーを含んでなるアライメント中に、親のAAVキャプシド中のシングルトンの不存在を分析し、そして同定することが関与する。いったん選択したAAVキャプシド中にシングルトンの不存在が決定されれば、AAVは既知の技術に従いベクターを生成するために使用することができる。
【0045】
核酸もしくはそのフラグメントを指す場合、「実質的相同性」もしくは「実質的類似性」という用語は、適切なヌクレオチドの挿入もしくは欠失を伴い別の核酸(もしくはその相補鎖)と至適に整列した場合に、該整列した配列の少なくとも約95〜99%にヌクレオチド配列の同一性が存在することを示す。好ましくは、相同性は、完全長配列、もしくはその1オープンリーディングフレーム、または少なくとも15ヌクレオチド長である別の適するフラグメントにわたる。適するフラグメントの例が本明細書に記載される。
【0046】
核酸配列の情況での「配列の同一性」「配列の同一性パーセント」もしくは「同一性パーセント」という用語は、最大の対応のため整列した場合に同じである2配列中の残基を指す。配列の同一性の比較の長さは、ゲノムの完全長、遺伝子コーディング配列の完全長にわたることができ、または少なくとも約500ないし5000ヌクレオチドのフラグメントが望ましい。しかし例えば少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約20〜24ヌクレオチド、少なくとも約28〜32ヌクレオチド、少なくとも約36以上のヌクレオチドのより小さいフラグメント間の同一性もまた望ましいかもしれない。
【0047】
アミノ酸もしくはそれらのフラグメントを指す場合の「実質的相同性」もしくは「実質的類似性」という用語は、適切なアミノ酸の挿入もしくは欠失を伴い別のアミノ酸(もしくはその相補鎖)と至適に整列した場合に、整列した配列の少なくとも約95〜約99%の、そして特定の態様では整列した配列の約97%のアミノ酸配列の同一性が存在することを示す。好ましくは、相同性は完全長配列、もしくはその1タンパク質、例えばcapタンパク質、repタンパク質、または長さが少なくとも8アミノ酸、もしくはより望ましくは少なくとも15アミノ酸であるそのフラグメントにわたる。適するフラグメントの例が本明細書に記載される。
【0048】
「高度に保存された」という用語により、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、およびより好ましくは97%を超える同一性を意味する。同一性は、当業者により既知のアルゴリズムおよびコンピュータプログラムを用いることにより当業者により容易に決定される。
【0049】
「血清型」という用語は、他のAAV血清型と血清学的に異なるキャプシドを有するAAVに関する差違である。血清学的特殊性は、他のAAVと比較して該AAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づき決定される。交差反応性は典型的には中和抗体アッセイで測定する。このアッセイのためには、ウサギもしくは他の適する動物モデルでアデノ随伴ウイルスを使用して特定のAAVに対するポリクローナル血清を生成させる。このアッセイでは、特異的AAVに対し生成させた血清をその後、同一(同種)もしくは異種いずれかのAAVを中和するその能力において試験する。50%中和を達成する希釈を中和抗体力価とみなす。2つのAAVについて、同種の力価により除算した異種の力価の商が相反する様式で16より低い場合は、それら2種のベクターは同一血清型とみなす。逆に、同種の力価に対する異種の力価の比が相反する様式で16もしくはそれより多くである場合、該2種のAAVは異なる血清型とみなす。
【0050】
さらなる態様では、本発明はrh.20、rh.32/33、rh.39、rh.46、rh.73およびrh.74を含む新規キャプシドを有するAAVを提供する。rh.20の配列は配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1の完全長にわたり95〜99%同一の配列を有する。rh.32/33のキャプシドは配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。rh.39のキャプシドは配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。rh.46のキャプシドは配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。rh.73のキャプシドは配列番号5のアミノ酸配列、または配列番号5の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。rh.74のキャプシドは配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。好ましくはこれら新規AAVキャプシドの配列同一性は、いかなるシングルトンも欠くようなものである。新規AAVの配列は、配列表に提供される。
【0051】
さらに別の態様では、本発明の新規AAV配列にはシングルトン補正(singleton−corrected)AAVキャプシドタンパク質およびこれらキャプシドタンパク質をコードする配列を含む。適切なシングルトン補正AAV配列の例には、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.1.2、rh.8R、rh.48.1、rh.48.2、rh.48.1.2、hu.44R1、hu.44R2hu.44R3、hu.29R、ch.5R1、rh.67、rh.54、hu.48R1、hu.48R2およびhu.48R3を含む。例えばAAV6.1、AAV6.2およびAAV6.12を含むシングルトン補正AAV6は、親のAAV6配列よりも有意に機能が改善されたことを示した。
【0052】
特に望ましいタンパク質には、上に確認したヌクレオチド配列によりコードされるAAVキャプシドタンパク質を含む。AAVキャプシドは、選択的スプライスバリアントである3つのタンパク質、vp1、vp2およびvp3からなる。キャプシドタンパク質の他の望ましいフラグメントは、超可変領域(HVR)間に位置する定常および可変領域を含む。キャプシドタンパク質の他の望ましいフラグメントには、HVR自体を含む。
【0053】
AAV2中の配列の異なる領域を決定するために開発されたアルゴリズムは12個の超可変領域(HVR)を生じ、そのうち5個は4種の以前に記述された可変領域と重複するかもしくはそれらの一部である。[Chioriniら、J.Virol、73:1309−19(1999);Rutledgeら、J.Virol.、72:309−319]このアルゴリズムおよび/若しくは本明細書に記述されるアライメント技術を使用して、新規AAV血清型のHVRを決定する。例えば、該HVRは以下のとおり配置される。すなわち、HVR1、aa146−152;HVR2、aa182−186;HVR3、aa262−264;HVR4、aa381−383;HVR5、aa450−474;HVR6、aa490−495;HVR7、aa500−504;HVR8、aa514−522;HVR9、aa534−555;HVR10、aa581−594;HVR11、aa658−667;およびHVR12、aa705−719[番号付け体系は、AAV2 vp1を参照の点として使用するアライメントに基づく]。Clustal Xプログラムをデフォルトの設定で使用して実施した本明細書に提供されるアライメントを使用して、または、他の商業的にもしくは公的に入手可能なアライメントプログラムを本明細書に記述されるようなデフォルトの設定で使用して、当業者は、本発明の新規AAVキャプシドの対応するフラグメントを容易に決定し得る。
【0054】
適切には、フラグメントは少なくとも8アミノ酸長である。しかし他の望ましい長さのフラグメントも容易に利用することができる。そのようなフラグメントは組換え的または例えば化学合成によるような他の適切な手段により生産することができる。
【0055】
本発明はさらに、本明細書に提供される配列情報を使用して同定される他のAAV配列を提供する。例えば、本明細書に提供される配列を仮定すれば、ゲノム歩行技術(genome walking technology)(Siebert et al.,1995、Nucleic Acid Research、23:1087−1088、Friezner−Degenら、1986、J.Biol.Chem.261:6972−6985、BD Biosciences Clontech、カリフォルニア州パロアルト)を使用して、感染源を単離しうる。ゲノム歩行は、本発明の方法により同定される新規配列に隣接する配列を同定および単離するのにとりわけよく適する。本技術は、本明細書に提供される新規AAVキャプシドおよびrep配列に基づいて新規AAVの逆方向末端反復配列(ITR)を単離するためにもまた有用である。
【0056】
新規AAVアミノ酸配列、ペプチドおよびタンパク質は、本発明のAAV核酸配列から発現させることができる。さらにこれらのアミノ酸配列は、ペプチドおよびタンパク質は、例えば化学合成により、他の合成技術により、もしくは他の方法を包含する当該技術分野で既知の他の方法により生成することができる。本明細書に提供されるいずれのAAVキャプシドの配列も、多様な技術を使用して容易に生成することができる。
【0057】
適する製造後術は当業者に公知である。例えば、Sambrook et al.,モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー出版(コールドスプリングハーバー、ニューヨーク)を参照されたい。あるいは、ペプチドは公知の固相ペプチド合成法(Merrifield、J.Am.Chem.Soc.、85:2149(1962);StewartとYoung、Solid Phase Peptide Synthesis(Freeman、サンフランシスコ、1969)pp.27−62)によってもまた合成することができる。これらおよび他の適する製造方法は当業者の知識内にあり、そして本発明で制限しない。
【0058】
本発明の配列、タンパク質およびフラグメントは、組換え製造、化学合成もしくは他の合成手段を包含するいずれの適する手段によっても製造し得る。こうした製造方法は当業者の知識内にありかつ本発明で制限しない。
【0059】
III.新規AAVキャプシドをもつrAAVの生産
本発明は、シングルトンを同定するための本発明の方法を使用した後、突然変異により生成される新規AAVキャプシド配列を包含する。本発明はさらに新規AAVrh.20、rh.32/33、rh.39、rh.46、rh.73およびrh.74キャプシド配列[配列番号1〜6]を包含する。
【0060】
別の観点では、本発明は、異種遺伝子もしくは他の核酸配列の標的細胞への送達において有用なウイルスベクターの生産のためにそれらのフラグメントを包含する本発明の新規AAV配列を利用する分子を提供する。
【0061】
AAV配列を含有する本発明の分子は、宿主細胞に送達され得るいかなる遺伝要素(ベクター)、例えば、その上で運搬される配列を移入する裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、ウイルス以外の送達ベヒクル(例えば脂質に基づく担体)中のタンパク質、ウイルスなども包含する。
【0062】
選択されたベクターは、トランスフェクション、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNA被覆ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を包含するいずれの適する方法によっても送達し得る。本発明のいずれの態様を構築するのに使用する方法も、核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学および合成技術を
包含する。例えば、Sambrookら、モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー出版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーを参照されたい。
【0063】
一態様において、本発明のベクターは、とりわけ、本発明のAAVキャプシドもしくはそのフラグメントをコードする配列を含有する。別の態様において、本発明のベクターは少なくともAAV repタンパク質もしくはそのフラグメントをコードする配列を含有する。場合によっては、本発明のベクターはAAV capおよびrepタンパク質双方を含有しうる。AAV repおよびcap双方が提供されるベクターにおいて、AAVrepおよびAAV cap配列は同じクレードのAAVから発し得る。あるいは、本発明は、rep配列がcap配列を提供しているAAV供給源と異なるAAV供給源に由来するベクターを提供する。一態様において、repおよびcap配列は別個の供給源(例えば別個のベクター、もしくは宿主細胞およびベクター)から発現される。別の態様において、これらのrep配列は、異なるAAV供給源のcap配列にインフレームで融合されてキメラAAVベクターを形成する。場合によっては、本発明のベクターは本発明のAAVキャプシドにパッケージングされたベクターである。これらのベクター、および本明細書に記述される他のベクターは、AAV 5’ITRおよびAAV 3’ITRにより挟まれる選択された導入遺伝子を含んでなるミニ遺伝子をさらに含むことができる。
【0064】
従って一態様において、本明細書に記述されるベクターは、単一のAAV配列からでありうる無傷のAAVキャプシドをコードする核酸配列を含有する。あるいはこれらのベクターは、異種AAVもしくはAAV以外のキャプシドタンパク質(またはそれらのフラグメント)に融合されたシングルトン補正AAVキャプシドの1もしくは複数のフラグメントを含有する人工的キャプシドをコードする配列を含有する。これらの人工的キャプシドタンパク質は、シングルトン補正キャプシドの連続しない部分もしくは他のAAVのキャプシドから選択される。これらの改変は、選択された発現系において、または別の所望の目的上(例えば向性を変える、すなわち中和抗体のエピトープを変える)、発現、収量を上げ、かつ/または精製を向上させるはずでありうる。
【0065】
本明細書に記述されるベクター、例えばプラスミドは多様な目的上有用であるが、しかし、AAV配列もしくはそれらのフラグメントを含んでなるキャプシドを含有するrAAVの製造における使用にとりわけ良好に適する。rAAVを包含するこれらのベクター、それらの要素、構築および用途は本明細書に詳細に記述される。
【0066】
一つの観点において、本発明は本発明のAAVキャプシドを有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法を提供する。こうした方法には、本明細書で定義する本発明の新規AAVキャプシドタンパク質もしくはそのフラグメント;機能的rep遺伝子;少なくともAAV逆方向末端反復配列(ITR)および導入遺伝子から構成されるミニ遺伝子;ならびに該ミニ遺伝子のAAV9/HU.14キャプシドタンパク質中へのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能をコードする核酸配列を含有する宿主細胞を培養することが関与する。
【0067】
AAVミニ遺伝子をAAVキャプシドにパッケージングするために宿主細胞中で培養されることが必要とされる成分は、宿主細胞にtransで供給しうる。あるいは、必要とされる成分(例えばミニ遺伝子、rep配列、cap配列および/もしくはヘルパー機能)の1もしくは複数は、必要とされる成分の1もしくは複数を含有するように当業者に既知の方法を使用して工作された安定な宿主細胞により提供しうる。最適には、こうした安定な宿主細胞は誘導可能なプロモーターの制御下に必要とされる成分(1もしくは複数)を含有することができる。しかし該必要とされる成分(1もしくは複数)は、構成的プロモーターの制御下にあり得る。適する誘導可能なおよび構成的プロモーターの例は、導入
遺伝子との使用に適する調節エレメントの考察で本明細書に提供される。なお別の代替において、選択された安定な宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下の選択された成分(1もしくは複数)および1もしくは複数の誘導可能なプロモーターの制御下の他の選択された成分(1もしくは複数)を含有しうる。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下にE1ヘルパー機能を含有する)由来であるがしかし誘導可能なプロモーターの制御下にrepおよび/もしくはcapタンパク質を含有する安定な宿主細胞を生成することができる。さらに他の安定な宿主細胞を当業者により生成することができる。
【0068】
本発明のrAAVを生産するために必要とされるミニ遺伝子、rep配列、cap配列およびヘルパー機能は、その上で運搬される配列を移入するいずれかの遺伝要素の形態でパッケージング宿主細胞に送達することができる。選択された遺伝要素は、本明細書に記述されるものを包め、いずれの適する方法により送達し得る。本発明のいずれの態様を構築するのに使用される方法も核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学および合成技術を包む。例えば、Sambrookら、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー出版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーを参照されたい。同様に、rAAVビリオンの生成方法は公知であり、そして適する方法の選択は本発明に対する制限でない。例えばK.Fisher et al.,J.Virol.、70:520−532(1993)および米国特許第5,478,745号明細書を参照されたい。
【0069】
他に明記されない限り、AAV ITRおよび本明細書に記載する他の選択されたAAV成分は、限定するわけではないがAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9および本発明の他の新規AAV配列の1種を包含するいかなるAAVの中からも容易に選択しうる。これらのITRもしくは他のAAV成分は、当業者に利用可能な技術を使用してAAV配列から容易に単離することができる。こうしたAAVは単離しうるか、または学術的、商業的もしくは公的な供給源(例えばバージニア州マナサスのアメリカンタイプカルチャーコレクション)から得ることができる。あるいは、AAV配列は、文献、または例えばGenBank(商標)、PubMed(商標)などのようなデータベースで入手可能であるような公表された配列を参照することにより、合成もしくは他の適する手段により得ることができる。
【0070】
A.ミニ遺伝子
ミニ遺伝子は、少なくとも導入遺伝子およびその制御配列、ならびに5’および3’のAAV逆方向末端反復配列(ITR)から構成される。望ましい一態様において、AAV血清型2のITRを使用する。しかしながら他の適する供給源からのITRを選択することもできる。キャプシドタンパク質にパッケージングされかつ選択された宿主細胞に送達されるのはこのミニ遺伝子である。
【0071】
1.導入遺伝子
導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質もしくは他の産物をコードする、導入遺伝子を挟むベクター配列に対し異種の核酸配列である。核酸コーディング配列は、宿主細胞中での導入遺伝子の転写、翻訳および/もしくは発現を可能にする様式で調節成分に操作可能に連結される。
【0072】
導入遺伝子配列の組成は、生じるベクターが投入されるであろう使用に依存する。例えば、1つの型の導入遺伝子配列には、発現に際して検出可能なシグナルを生じるレポーター配列を包含する。こうしたレポーター遺伝子には、限定するわけではないがそれに向けられた高親和性抗体が存在するかもしくは通例の手段により製造され得るβ−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化GFP(EGFP)、クロラムフェニコールアセチ
ルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8を包含する膜結合タンパク質、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質および当該技術分野で公知の他のもの、ならびにとりわけヘマグルチニンもしくはMycからの抗原タグドメインに適切に融合された膜結合タンパク質を含んでなる融合タンパク質をコードするDNA配列を包含する。
【0073】
これらのコーディング配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントと会合される場合に、酵素、X線撮影、比色、蛍光もしくは他の分光学的アッセイ、蛍光標示式細胞分取アッセイ、ならびに酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学を包含する免疫学的アッセイを包含する通例の手段により検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、該シグナルを運搬するベクターの存在はベータ−ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。導入遺伝子が緑色結合タンパク質もしくはルシフェラーゼである場合、該シグナルを運搬するベクターは、ルミノメーターで色もしくは光の産生により視覚的に測定しうる。
【0074】
しかしながら望ましくは、導入遺伝子はタンパク質、ペプチド、RNA、酵素、ドミナントネガティブ変異体もしくは触媒的RNAのような生物学および医学で有用である産物をコードするマーカー以外の配列である。所望のRNA分子は、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒的RNA、siRNA、小分子ヘアピン型RNA、トランス−スプライシングRNAおよびアンチセンスRNAを包含する。有用なRNA配列の一例は、処置した動物で標的とされた核酸配列の発現を阻害もしくは消失させる配列である。典型的には、適する標的配列は腫瘍学的標的およびウイルス性疾患を包含する。こうした標的の例については、以下の免疫原に関する章にて同定される腫瘍学的標的およびウイルスを参照されたい。
【0075】
導入遺伝子は、正常な遺伝子が正常レベルより少なく発現されている欠損、または機能的遺伝子産物が発現されない欠損を包含しうる遺伝子欠損を是正もしくは改善するのに使用することができる。あるいは、導入遺伝子は、該細胞型もしくは宿主中で本来発現されない産物を細胞に提供しうる。好ましい型の導入遺伝子配列は、宿主細胞中で発現される治療用タンパク質もしくはポリペプチドをコードする。さらに本発明は、複数の導入遺伝子を使用することを包含する。特定の状況では、1タンパク質の各サブユニットをコードするために、または異なるペプチドもしくはタンパク質をコードするために異なる導入遺伝子を使用することができる。これはタンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい場合、例えば免疫グロブリン、血小板由来増殖因子もしくはジストロフィンタンパク質に望ましい。細胞が多サブユニットタンパク質を産生するためには、異なるサブユニットのそれぞれを含有する組換えウイルスに細胞を感染させる。あるいはタンパク質の異なるサブユニットを同じ導入遺伝子によりコードすることができる。この場合、単一の導入遺伝子がサブユニットのそれぞれをコードするDNAを含み、各サブユニットのDNAは配列内リボザイム進入部(IRES)により分離される。これは、サブユニットのそれぞれをコードするDNAのサイズが小さい、例えばサブユニットおよびIRESをコードするDNAのサイズの合計が5キロ塩基対未満である場合に望ましい。IRESに対する一代替として、DNAは、翻訳後反応(event)で自己切断する2Aペプチドをコードする配列により分離し得る。例えば、M.L.Donnellyら、J.Gen.Virol.、78(Pt 1):13−21(1997年1月);Furler,S.ら、Gene Ther.、8(11):864−873(2001年6月);Klump H.ら、Gene Ther.、8(10):811−817(2001年5月)を参照されたい。この2AペプチドはIRESより有意により小さく、空間が制限要因である使用にそれを良好に適するようにする。さらにしばしば、導入遺伝子が大きく多サブユニットよりなるか、または2種の導入遺伝子を共送達する場合、所望の導入遺伝子(1種
もしくは複数)またはサブユニットを運搬するrAAVを同時投与して、それらをin vivoで鎖状体化させて単一のベクターゲノムを形成させる。こうした一態様において、第一のAAVは単一の導入遺伝子を発現する発現カセットを運搬することができ、そして第二のAAVは、宿主細胞中での共発現のための異なる導入遺伝子を発現する発現カセットを運搬することができる。しかし選択された導入遺伝子は、いかなる生物学的活性産物もしくは他の産物、例えば研究に所望の産物もコードすることができる。
【0076】
適する導入遺伝子は当業者により容易に選択されうる。導入遺伝子の選択は本発明の制限であると考えられない。
【0077】
2.調節要素
ミニ遺伝子について上で同定された主要素に加え、ベクターは該プラスミドベクターでトランスフェクトしたか、もしくは本発明により生産したウイルスに感染させた細胞中での導入遺伝子の転写、翻訳および/もしくは発現を可能にする様式で導入遺伝子に操作可能に連結されている通例の調節領域も包含する。本明細書で使用される「操作可能に連結されている」配列は、目的の遺伝子と連続する発現制御配列、およびtransでもしくは離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列の双方を包含する。
【0078】
発現制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに、所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列を包含する。生来、構成的、誘導可能および/もしくは組織特異的であるプロモーターを包含する多数の発現制御配列が当該技術分野で知られ、しかも利用することができる。
【0079】
構成的プロモーターの例は、限定するわけではないがレトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によってはRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によってはCMVエンハンサーを伴う)[例えばBoshart et al.,Cell、41:521−530(1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1プロモーター[インビトロジェン(Invitrogen)]を包含する。誘導可能なプロモーターは遺伝子発現の調節を可能にし、そして外的に供給される化合物、温度のような環境因子、または特定の生理学的状態(例えば急性期、細胞の特定の分化状態、もしくは複製細胞のみの中)の存在により調節し得る。誘導可能なプロモーターおよび誘導可能な系は、限定するわけではないがインビトロジェン、クローンテック(Clontech)およびアライド(Ariad)を含む多様な商業的供給元から入手可能である。多くの他の系が記載され、そして当業者により容易に選択され得る。外的に供給される化合物により調節される誘導可能なプロモーターの例は、亜鉛で誘導可能なヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメサゾン(Dex)で誘導可能なマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系[国際特許公開第WO 98/10088号明細書];エクジソン昆虫プロモーター[No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346−3351(1996)]、テトラサイクリンで抑制可能な系[Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547−5551(1992)]、テトラサイクリンで誘導可能な系[Gossen et al.,Science、268:1766−1769(1995)、またHarvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512−518(1998)も参照されたい]、RU486で誘導可能な系[Wang et al.,Nat.Biotech.、15:239−243
(1997)およびWang et al.,Gene Ther.、4:432−441(1997)]、ならびにラパマイシンで誘導可能な系[Magari et al.,J.Clin.Invest.、100:2865−2872(1997)]を包含する。この内容で有用でありうる他の型の誘導可能なプロモーターは、特定の生理学的状態(例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態、もしくは複製細胞のみの中)により調節されるものである。
【0080】
別の態様において、導入遺伝子の本来のプロモーターを使用することができる。本来のプロモーターは、導入遺伝子の発現が本来の発現を模倣すべきであることが望ましい場合に好ましくなり得る。本来のプロモーターは、導入遺伝子の発現が一時的にもしくは発達的に、または組織特異的様式で、あるいは特定の転写刺激に応答して調節されなければならない場合に使用され得る。さらなる態様では、エンハンサー要素、ポリアデニル化部位もしくはコザックコンセンサス配列のような他の本来の発現調節領域を、本来の発現を模倣するのにもまた使用しうる。
【0081】
導入遺伝子の別の態様は、組織特異的プロモーターに操作可能に連結された遺伝子を包含する。例えば、骨格筋中での発現が望ましい場合は筋中で活性なプロモーターを使用すべきである。これらは、骨格β−アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子からのプロモーター、ならびに天然に存在するプロモーターよりも高い活性をもつ合成の筋プロモーターを包含する(Li et al.,Nat.Biotech.、17:241−245(1999)を参照されたい)。組織特異的であるプロモーターの例は、とりわけ、肝(アルブミン、Miyatake et al.,J.Virol.、71:5124−32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al.,Gene Ther.、3:1002−9(1996);α−フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnot et al.,、Hum.Gene Ther.、7:1503−14(1996))、骨オステオカルシン(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.、24:185−96(1997));骨シアロタンパク質(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.、11:654−64(1996))、リンパ球(CD2、Hansal et al.,J.Immunol.、161:1063−8(1998);免疫グロブリン重鎖;T細胞受容体鎖)、神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.、13:503−15(1993))、神経細糸軽鎖遺伝子(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5611−5(1991))、およびニューロン特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,、Neuron、15:373−84(1995))のような神経について既知である。
【0082】
場合によっては、治療上有用な導入遺伝子を運搬するプラスミドは選択可能なマーカーもまた含んでもよく、またはレポーター遺伝子はとりわけジェネチシン、ハイグロマイシン若しくはピューリマイシン耐性をコードする配列を含むことができる。アンピシリン耐性のような、こうした選択可能なレポーターもしくはマーカー遺伝子(好ましくは本発明の方法によりレスキューされるためにウイルスゲノムの外側に配置される)を、細菌細胞中のプラスミドの存在を知らせるために使用し得る。該プラスミドの他成分には複製起点を含んでもよい。これらおよび他のプロモーターおよびベクター要素の選択は通例であり、そして多くのこうした配列が利用可能である[例えばSambrook et al.,およびその中で引用される参考文献を参照されたい]。
【0083】
導入遺伝子、プロモーター/エンハンサー、ならびに5’および3’のAAV ITRの組み合わせは、言及の容易さのため本明細書で「ミニ遺伝子」と称される。本発明の教示とともに提供されるこうしたミニ遺伝子の設計は、通常の技術を用いることによりなし
得る。
【0084】
3.パッケージング宿主細胞へのミニ遺伝子の送達
ミニ遺伝子は、宿主細胞に送達される任意の適するベクター、例えばプラスミド上で運搬されることができる。本発明で有用なプラスミドは、それらが複製および場合によっては原核生物細胞、哺乳動物細胞、もしくは双方への組込みに適するように工作することができる。これらのプラスミド(もしくは5’AAV ITR−異種分子−3’AAV ITRを運搬する他のベクター)は、真核生物および/もしくは原核生物中でのミニ遺伝子ならびにこれらの系の選択マーカーの複製を可能にする配列を含有する。選択可能なマーカーもしくはレポーター遺伝子は、とりわけ、ジェネチシン、ハイグロマイシンもしくはピューリマイシン耐性をコードする配列を含むことができる。該プラスミドは、アンピシリン耐性のような、細菌細胞中のベクターの存在を知らせるために使用し得るある種の選択可能なレポーターもしくはマーカー遺伝子もまた含んでよい。プラスミドの他成分は複製起点、およびエプスタイン−バーウイルスの核抗原を使用するアンプリコン系のようなアンプリコンを含むことができる。このアンプリコン系もしくは他の類似のアンプリコン成分は、細胞中での高コピーのエピソーム複製を可能にする。好ましくは、ミニ遺伝子を運搬する分子を細胞にトランスフェクトし、それはそこで一過性に存在し得る。あるいはミニ遺伝子(5’AAV ITR−異種分子−3’AAV ITRを運搬する)は、染色体にもしくはエピソームとしてのいずれかで宿主細胞のゲノムに安定に組込まれ得る。特定の態様において、ミニ遺伝子は、場合によっては頭から頭、頭から尾もしくは尾から尾の鎖状体で複数コピーで存在することができる。適するトランスフェクション技術は既知であり、そして宿主細胞にミニ遺伝子を送達するために容易に利用することができる。
【0085】
一般に、ミニ遺伝子を含んでなるベクターをトランスフェクションにより送達する場合、該ベクターは、約5μgから約100μgまでのDNA、約10μgないし約50μgのDNAの量で、約1×104細胞ないし約1×1013細胞、もしくは約1×105細胞に送達する。しかしながら、宿主細胞に対するベクターDNAの相対量は、選択したベクター、送達方法および選択した宿主細胞のような因子を考慮に入れて当業者により調節され得る。
【0086】
B.RepおよびCap配列
ミニ遺伝子に加え、宿主細胞は宿主細胞中での本発明の新規AAVキャプシドタンパク質(もしくはそのフラグメントを含んでなるキャプシドタンパク質)の発現を駆動する配列、およびミニ遺伝子中で見出されるAAV ITRの供給源もしくは交差相補する供給源と同一の供給源のrep配列を含有する。AAVのcapおよびrep配列は、上記AAV供給源から独立に得ることができ、そして、上記の当業者に既知のいずれかの様式で宿主細胞に導入することができる。加えてAAVベクターをシュードタイピングする場合、必須なrepタンパク質のそれぞれをコードする配列を異なるAAV供給源(例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9)により供給しうる。例えば、rep78/68配列はAAV2に由来することができ、一方、rep52/40配列はAAV8に由来するものでよい。
【0087】
一態様において、宿主細胞は、上記のもののような適切なプロモーターの制御下にキャプシドタンパク質を安定に含有する。この態様において最も望ましくは、キャプシドタンパク質が誘導可能なプロモーターの制御下で発現される。別の態様では、キャプシドタンパク質はtransで宿主細胞に供給される。宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質は、選択されたキャプシドタンパク質の宿主細胞中での発現を指図するのに必要な配列を含有するプラスミドを介して送達され得る。最も望ましくは、宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質を運搬するプラスミドはrAAVをパッケージングするのに必要とされる他の配列、例えばrep配列もまた運搬する
。
【0088】
別の態様において、宿主細胞は、上記のもののごとく適するプロモーターの制御下にrep配列を安定に含有する。この態様において最も望ましくは、必須のrepタンパク質が誘導可能なプロモーターの制御下に発現される。別の態様では、repタンパク質はtransで宿主細胞に供給される。宿主細胞にtransで送達される場合、repタンパク質は、選択されたrepタンパク質の宿主細胞中での発現を指図するのに必要な配列を含有するプラスミドを介して送達され得る。最も望ましくは、宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質を運搬するプラスミドはrAAVをパッケージングするのに必要とされる他の配列、例えばrepおよびcap配列もまた運搬する。
【0089】
このように一態様において、repおよびcap配列は、単一の核酸分子上で宿主細胞にトランスフェクトされることができ、そして該細胞中で1個のエピソームとして安定に存在しうる。別の態様において、repおよびcap配列は細胞の染色体中に安定に組み込まれる。別の態様は、宿主細胞中で一過性に発現されるrepおよびcap配列を有する。例えばこうしたトランスフェクションのための有用な核酸分子は、5’から3’へ、プロモーター、プロモーターとrep遺伝子配列の開始部位との間に挿入された任意のスペーサー、AAV rep遺伝子配列、およびAAV cap遺伝子配列を含んでなる。
【0090】
場合によっては、repおよび/もしくはcap配列は、宿主細胞中に導入されるべきである他のDNA配列を含有する1ベクター上で供給することができる。例えば、ベクターはミニ遺伝子を含んでなるrAAV構築物を含有し得る。ベクターは、ヘルパー機能をコードする遺伝子、例えばアデノウイルスタンパク質E1、E2aおよびE4 ORF6、ならびにVAI RNAの遺伝子の1種もしくはそれより多くを含むことができる。
【0091】
好ましくは、本構築物で使用されるプロモーターは、当業者に既知の、または上で検討した構成的、誘導可能なもしくは本来のプロモーターのいずれでよい。一態様において、AAV P5プロモーター配列を使用する。これらの配列のいずれかを提供するためのAAVの選択は本発明を制限しない。
【0092】
別の好ましい態様において、repのプロモーターは、導入遺伝子の調節要素に関して上で検討したような誘導可能なプロモーターである。rep発現のための1種の好ましいプロモーターはT7プロモーターである。T7プロモーターにより調節されるrep遺伝子およびcap遺伝子を含んでなるベクターを、T7ポリメラーゼを構成的もしくは誘導可能のいずれかで発現する細胞にトランスフェクトもしくは形質転換する。1998年3月12日公開の国際公開第98/10088号パンフレットを参照されたい。
【0093】
スペーサーはベクターの設計における任意の一要素である。スペーサーは、プロモーターとrep遺伝子のATG開始部位との間に挿入されるDNA配列である。スペーサーは任意の所望の設計を有してもよい。すなわち、それはヌクレオチドの無作為の配列でよく、あるいはそれはマーカー遺伝子のような遺伝子産物をコードしてもよい。スペーサーは開始/終止およびポリA部位を典型的に組み込む遺伝子を含有し得る。スペーサーは、原核生物もしくは真核生物に由来する非コーディングDNA配列、反復非コーディング配列、転写制御を伴わないコーティング配列もしくは転写制御を伴うコーディング配列でよい。スペーサー配列の2種の例示的供給源はファージラダー配列もしくは酵母ラダー配列であり、それらは例えばとりわけギブコ(Gibco)もしくはインビトロジェン(Invitrogen)から市販されている。スペーサーは、rep52、rep40およびcap遺伝子産物を正常レベルで発現されるままにしてrep78およびrep68遺伝子産物の発現を低下させるのに十分ないかなるサイズノものであってもよい。スペーサーの長さは、従って約10bp〜約10.0kbpまで、好ましくは約100bp〜約8.0
kbpの範囲の範囲にわたることができる。組換えの可能性を低下させるため、スペーサーは、好ましくは長さ2kbp未満であるが;しかしながら、本発明はそのように制限されない。
【0094】
repおよびcapを提供する分子(1もしくは複数)は宿主細胞中に一過性に存在しうる(すなわちトランスフェクションにより)が、repおよびcapタンパク質の一方もしくは双方およびそれらの発現を制御するプロモーター(1もしくは複数)が、例えばエピソームとして、もしくは宿主細胞の染色体中への組み込みにより宿主細胞中で安定に発現されることが好ましい。本発明の態様を構築するために使用される方法は、上記参考文献に記載されるもののような通例の遺伝子工学もしくは組換え工学技術である。本明細は本明細書に提供される情報を使用して特定の構築物の具体的に説明する例を提供する一方、当業者は、スペーサー、P5プロモーター、および少なくとも1個の翻訳開始および終止シグナルを包含する他のエレメントの選択、ならびにポリアデニル化部位の任意の付加を使用して、他の適する構築物を選択し、そして設計することができる。
【0095】
本発明の別の態様において、repもしくはcapタンパク質は宿主細胞により安定に提供されうる。
【0096】
C.ヘルパー機能
パッケージング宿主細胞は、本発明のrAAVをパッケージングするためにヘルパー機能をもまた必要とする。場合によっては、これらの機能はヘルペスウイルスにより供給され得る。最も望ましくは、必要なヘルパー機能は、上記されたものおよび/もしくはアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、バージニア州マナサス(米国)を包含する多様な供給元から入手可能であるようなヒトもしくは非ヒトの霊長類のアデノウイルス源からそれぞれ提供される。現在好ましい一態様では、宿主細胞は、E1a遺伝子産物、E1b遺伝子産物、E2a遺伝子産物、および/もしくはE4 ORF6遺伝子産物が提供されかつ/もしくは含有する。宿主細胞はVAI RNAのような他のアデノウイルス遺伝子を含有しうるが、しかしこれらの遺伝子は必要とされない。好ましい一態様において、他のアデノウイルス遺伝子もしくは遺伝子機能は宿主細胞中に存在しない。
【0097】
「E1a遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNA」により、それはE1aもしくはいずれかの機能的E1a部分をコードするいかなるアデノウイルス配列も意味している。E2a遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNAおよびE4 ORF6遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNAが同様に定義される。アデノウイルス遺伝子もしくはその機能的部分のいかなる対立遺伝子もしくは他の修飾もまた包含される。こうした修飾は、アデノウイルスの機能を何らかの様式で高めるための通例の遺伝子工学もしくは変異原性技術を用いて意図的に導入することができ、ならびにそれらの天然に存在する対立遺伝子バリアントでありうる。これらのアデノウイルス遺伝子の機能を達成するようにDNAを操作するためのこうした修飾および方法は当業者に既知である。
【0098】
アデノウイルスE1a、E1b、E2aおよび/もしくはE4ORF6遺伝子産物、ならびにいずれかの他の所望のヘルパー機能は、細胞中でのそれらの発現を可能にするいずれの手段を使用しても提供し得る。これらの産物をコードする配列のそれぞれは別個のベクター上にありうるか、または1もしくは複数の遺伝子が同じベクター上にありうる。ベクターは、プラスミド、コスミドおよびウイルスを包含する当該技術分野で既知もしくは上で開示されたいずれかのベクターでありうる。ベクターの宿主細胞中への導入は、とりわけ、トランスフェクション、感染、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNA被覆ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を包含する当該技術分野で既知もしくは上で開示されたところのいずれの手段によっても達成しうる。アデノウイルス遺伝子の1もしくは複数が宿主細胞のゲノム中に安定に組み込まれうるか、エピソームと
して安定に発現されうるか、もしくは一過性に発現されうる。遺伝子産物は全部、エピソーム上で一過性に発現されうるか、もしくは安定に組込まれうるか、または遺伝子産物のいくつかが安定に発現されうる一方で他者が一過性に発現される。さらに、アデノウイルス遺伝子のそれぞれのプロモーターは、構成的プロモーター、誘導可能なプロモーターもしくは本来のアデノウイルスプロモーターから独立に選択しうる。プロモーターは、生物体もしくは細胞の特定の生理学的状態(すなわち分化状態により、または複製もしくは静止期細胞で)により、あるいは例えば外的に添加した因子により調節することができる。
【0099】
D.宿主細胞およびパッケージング細胞株
宿主細胞それ自体は、原核生物(例えば細菌)細胞、ならびに昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を含む真核生物細胞を包含する任意の生物学的生物体からも選択し得る。とりわけ望ましい宿主細胞は、限定するわけではないがA549、WEH1、3T3、10T1/2、BHK、MDCK、COS 1、COS 7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、WI38、HeLa、293細胞(機能的アデノウイルスE1を発現する)、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、ならびにヒト、サル、マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを含む哺乳動物由来の初代線維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞のような細胞を含む任意の哺乳動物種のなかから選択する。細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明を限定せず;また、哺乳動物細胞の型、すなわち繊維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞など限定しない。使用される細胞に対する要件は、それがE1、E2aおよび/もしくはE4 ORF6以外のいかなるアデノウイルス遺伝子も運搬せず;それがrAAVの産生の間に汚染するウイルスの相同的組換えをもたらし得るいかなる他のウイルス遺伝子も含有せず;そしてそれがDNAの感染もしくはトランスフェクションおよびトランスフェクトされたDNAの発現が可能であることである。好ましい態様では、宿主細胞は細胞中でrepおよびcapが安定にトランスフェクトされているものである。
【0100】
本発明で有用な一つの宿主細胞は、repおよびcapをコードする配列で安定に形質転換され、かつアデノウイルスE1、E2aおよびE4ORF6 DNAならびに上記のミニ遺伝子を運搬する構築物でトランスフェクトされている宿主細胞である。B−50(国際公開第99/15685号パンフレット)もしくは米国特許第5,658,785号明細書に記述されるもののような安定なrepおよび/もしくはcapを発現する細胞株もまた同様に使用し得る。別の所望の宿主細胞は、E4 ORF6を発現するのに十分である最少のアデノウイルスDNAを含有する。なお他の細胞株を、本発明の新規シングルトン補正AAVcap配列を使用して構築することができる。
【0101】
本発明の宿主細胞の調製は選択されたDNA配列の集成のような技術が関与する。この集成は慣習的技術を利用して達成しうる。こうした技術は、公知でありかつ上で引用されたSambrookらに記載されるcDNAおよびゲノムクローニング、ポリメラーゼ連鎖反応と組合せたアデノウイルスおよびAAVゲノムのオーバーラップオリゴヌクレオチド配列の使用、合成の方法、ならびに所望のヌクレオチド配列を提供する任意の他の適切な方法を包含する。
【0102】
宿主細胞中への(プラスミドもしくはウイルスとしての)分子の導入は、当業者に既知かつ本明細書を通じて検討される技術を使用してもまた達成しうる。好ましい態様において、標準的トランスフェクション技術、例えばCaPO4トランスフェクションもしくは電気穿孔法、および/またはヒト胎児由来腎臓細胞株HEK293(transに作用するE1タンパク質を提供する機能的アデノウイルスE1遺伝子を含有するヒト腎細胞株)のような細胞株中へのハイブリッドアデノウイルス/AAVベクターによる感染を使用する。
【0103】
当業者は、本発明の新規AAV配列をこれらおよびin vitro、ex vivoもしくはin vivo遺伝子送達のための他のウイルスベクター系での使用に容易に適合させ得ることを理解するであろう。同様に、当業者は、多様なrAAVおよびrAAV以外のベクター系での使用のために本発明のAAVゲノムの他のフラグメントを容易に選択することができる。こうしたベクター系は、例えば、とりわけ例えばレンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルスおよびアデノウイルス系を包含しうる。これらのベクター系の選択は本発明を制限しない。
【0104】
従って、本発明はさらに、本発明の新規AAVの核酸およびアミノ酸配列を使用して生成されるベクターを提供する。こうしたベクターは、治療的分子の送達およびワクチン処方での使用のためを包含する多様な目的上有用である。本発明の新規AAVのキャプシドを含有する組換えAAVが治療的分子の送達にとりわけ望ましい。これら、もしくは本発明の新規AAV配列を含有する他のベクター構築物を、ワクチン処方、例えばサイトカインの同時送達、もしくは免疫原それ自体の送達に使用しうる。
【0105】
IV.組換えウイルスおよびそれらの用途
本明細書に記載される技術を使用して、当業者は本発明のAAVのキャプシドを有する、または本発明のAAVの1もしくは複数のフラグメントを含有するキャプシドを有するrAAVを生成することができる。一態様において、シングルトン補正AAVからの完全長のキャプシドを利用し得る。
【0106】
A.ウイルスの送達
別の観点では、本発明は、本発明のシングルトン補正AAV(もしくはその機能的フラグメント)を用いて生成した組換えウイルスベクターで選択された宿主細胞をトランスフェクトもしくは感染させることが関与する、宿主への導入遺伝子の送達方法を提供する。送達方法は当業者に公知でありかつ本発明を制限しない。
【0107】
望ましい一態様において、本発明は宿主への導入遺伝子のAAVに媒介される送達方法を提供する。本方法は、選択された導入遺伝子の発現を指図する配列の制御下に選択された導入遺伝子およびキャプシドの修飾されたタンパク質を含有する組換えウイルスベクターで、選択された宿主細胞をトランスフェクトもしくは感染させることが関与する。
【0108】
場合によっては、宿主からのサンプルを、選択されたAAV供給源(例えば血清型)に対する抗体の存在について最初にアッセイしてもよい。中和抗体を検出するための多様なアッセイ形式が当業者に公知である。このようなアッセイの選択は本発明を制限しない。例えば、Fisher et al.,Nature Med.,3(3):306−312(1997年3月)およびW.C.Manning et al,Human Gene Therapy、9:477−485(1998年3月1日)を参照されたい。このアッセイの結果を使用して、特定の供給源のキャプシドタンパク質を含有するどのAAVベクターが送達に好ましいかを、例えばそのキャプシド供給源に特異的な中和抗体の不存在により決定することができる。
【0109】
本方法の一つの観点において、本発明のAAVキャプシドタンパク質を含むベクターの送達は、異なるAAVキャプシドタンパク質を含むベクターを介する遺伝子の送達に先行して、もしくはその後に続いてもよい。従って、rAAVベクターを介する遺伝子送達を、選択された宿主細胞への反復遺伝子送達に使用しうる。望ましくは、その後投与されるrAAVベクターは第一のrAAVベクターと同じ導入遺伝子を運搬するが、しかしその後投与されるベクターは第一のベクターと異なる供給源(および好ましくは異なる血清型)のキャプシドタンパク質を含有する。例えば、第一のベクターがシングルトン補正キャプシドタンパク質を有する場合、その後投与されるベクターは他のAAVのなかから、場
合によっては別の血清型もしくは別のクレードから選択されるキャプシドタンパク質を有することができる。
【0110】
場合によっては、複数のrAAVベクターを使用して、in vivoで鎖状体化して単一のベクターゲノムを形成するrAAVベクターの同時投与により大型の導入遺伝子もしくは複数の導入遺伝子を送達することができる。こうした一態様において、第一のAAVは単一導入遺伝子(もしくはその1サブユニット)を発現する発現カセットを運搬することができ、そして、第二のAAVは宿主細胞中での同時発現のため第二の導入遺伝子(もしくは異なるサブユニット)を発現する発現カセットを運搬しうる。第一のAAVは多シストロン性の構築物の第一の一片(例えばプロモーターおよび導入遺伝子もしくはサブユニット)である発現カセットを運搬することができ、そして第二のAAVは多シストロン性の構築物の第二の一片(例えば導入遺伝子もしくはサブユニットおよびポリA配列)である発現カセットを運搬しうる。多シストロン性の構築物のこれら二片がin vivoで鎖状体化して、第一および第二のAAVにより送達される導入遺伝子を共発現する単一のベクターゲノムを形成する。こうした態様では、第一の発現カセットを運搬するrAAVベクターおよび第二の発現カセットを運搬するrAAVベクターを単一の製薬学的組成物中で送達し得る。他の態様では、2以上のrAAVベクターが実質的に同時にまたは互いに直前もしくは後に投与しできる別個の製薬学的組成物として送達される。
【0111】
上記の組換えベクターは、公表された方法に従って宿主細胞に送達することができる。好ましくは生理学的に適合性の担体に懸濁したrAAVを、ヒトもしくは非ヒトの哺乳動物患者に投与し得る。適する担体は、移入ウイルスが向けられる適応症を鑑みて当業者により容易に選択され得る。例えば、一つの適する担体には、多様な緩衝溶液とともに配合できる生理的食塩水を包含する(例えばリン酸緩衝生理的食塩水)。他の例示的担体は、滅菌生理的食塩水、乳糖、ショ糖、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ラッカセイ油、ゴマ油および水を包含する。担体の選択は本発明を制限しない。
【0112】
場合によっては本発明の組成物は、rAAVおよび担体(1もしくは複数)に加え、保存剤もしくは化学的安定剤のような他の通例の製薬学的成分を含有してもよい。適する例示的保存剤はクロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化イオウ、没食子酸プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールを包含する。適する化学的安定剤はゼラチンおよびアルブミンを包含する。
【0113】
該ベクターは、細胞をトランスフェクトしかつ過度の有害な影響を伴わずにもしくは医学分野の当業者により決定され得る医学的に許容され得る生理学的効果を伴い治療上の利益を提供するのに十分なレベルの遺伝子導入および発現を提供するのに十分な量で投与される。慣習的および製薬学的に許容され得る投与経路には、限定するわけではないが所望の器官(例えば肝(場合によっては肝動脈を介して)もしくは肺)への直接送達、経口、吸入、鼻内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および他の非経口投与経路を挙げることができる。投与経路は所望の場合に組み合わせてもよい。
【0114】
ウイルスベクターの投薬用量は、主として処置されている状態、患者の齢、体重および健康状態のような因子に依存することができ、そして従って患者間で変動することができる。例えばウイルスベクターの治療上有効なヒトへの投薬用量は、一般に、約1×109から1×1016までのゲノムウイルスベクターの濃度を含有する約0.1mLから約100mLまでの溶液の範囲にある。大型の器官(例えば肝、筋、心および肺)への送達に好ましいヒト投薬用量は、約1ないし100mLの容量で1kgあたり約5×1010ないし5×1013AAVゲノムでありうる。眼への送達に好ましい投薬用量は、約0.1mLないし1mLの容量で約5×109ないし5×1012ゲノムコピーである。投薬用
量は、いかなる副作用に対して治療上の利益の均衡を調節することができ、そしてこうした投薬量は組換えベクターを使用する治療的応用に依存して変動してよい。導入遺伝子の発現のレベルをモニターして、ウイルスベクター、好ましくはミニ遺伝子を含有するAAVベクターをもたらす投薬頻度を決定することができる。場合によっては、治療の目的上記載されるものに類似の投薬用量計画を、本発明の組成物を使用する免疫感作に利用できる。
【0115】
本発明のAAV含有ベクターによる送達のための治療的生成物および免疫原性生成物の例を下に提供する。これらのベクターは、本明細書に記載する多様な治療もしくはワクチン処方に使用できる。加えて、これらのベクターは所望の治療および/もしくはワクチン処方中で1もしくは複数の他のベクターもしくは有効成分と組合せで送達してもよい。
【0116】
B.治療的導入遺伝子
導入遺伝子によりコードされる有用な治療用生成物には、限定するわけではないがインスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン成長因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGFα、アクチビン、インヒビンを包含するトランスフォーミング成長因子αスーパーファミリーのいずれか1種、もしくは骨形成タンパク質(BMP)BMP1〜15のいずれか、成長因子のヘレグルイン/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1種、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3およびNT−4/5、絨毛様神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのいずれか1種、ネトリン−1およびネトリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグならびにチロシン加水分解酵素を制限なしに包含するホルモンならびに増殖および分化因子を包含する。
【0117】
他の有用な導入遺伝子産物は、限定するわけではないがトロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1からIL−25(例えばIL−2、IL−4、IL−12およびIL−18を包含する)、単球化学遊走物質タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドのようなサイトカインおよびリンホカインを包含する免疫系を調節するタンパク質を含む。免疫系により産生される遺伝子産物もまた本発明で有用である。これらには、限定するわけではないが免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子、ならびに工作された免疫グロブリンおよびMHC分子を含む。また有用な遺伝子産物は、補体調節タンパク質、膜補助因子タンパク質(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59のような補体調節タンパク質も含む。
【0118】
さらに他の有用な遺伝子産物は、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質および免疫系タンパク質の受容体のいずれか1種を包含する。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、高密度リポタンパク質(HDL)受容体、超低密度リポタンパク質(VLDL)受容体およびスカベンジャー受容体を包含するコレステロール調節および/または脂質調節のための受容体を包含する。また本発明は、グルココ
ルチコイド受容体およびエストロゲン受容体、ビタミンD受容体ならびに他の核受容体を包含するステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーのような遺伝子産物も包含する。加えて、有用な遺伝子産物は、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP−1、AP2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETSボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATAボックス結合タンパク質、例えばGATA−3、ならびに翼状らせんタンパク質のフォークヘッドファミリーのような転写因子を包含する。
【0119】
他の有用な遺伝子産物は、カルバモイル合成酵素1、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸合成酵素、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸加水分解酵素、フェニルアラニン水酸化酵素、α−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素、シスタチオンβ−合成酵素、分枝状鎖ケト酸脱炭酸酵素、アルブミン、イソバレリル−coA脱水素酵素、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoA脱水素酵素、インスリン、β−グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシン脱炭酸酵素、H−プロテイン、T−プロテイン、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)配列、およびジストロフィン遺伝子産物[例えばミニもしくはミクロジストロフィン]を包含する。なお他の有用な遺伝子産物は、酵素の不足した活性から生じる多様な状態に有用である酵素補充療法で有用でとなり得るような酵素を包含する。例えば、マンノース−6−リン酸を含有する酵素は、リソゾーム蓄積症(例えば適する遺伝子はβ−グルクロニダーゼ(GUSB)をコードするものを包含する)の治療で利用することができる。
【0120】
なお他の有用な遺伝子産物は、血友病B(第IX因子を包含する)および血友病A(第VIII因子およびヘテロ二量体のL鎖およびH鎖およびB欠損ドメインのようなそのバリアントを包含する;米国特許第6,200,560号および同第6,221,349号明細書)を包含する血友病の処置に使用されるものを含む。第VIII因子遺伝子は2351アミノ酸をコードし、そして該タンパク質は6ドメインを有し、アミノから末端のカルボキシ末端までA1−A2−B−A3−C1−C2と呼称される[Wood et al.,Nature、312:330(1984);Vehar et al,Nature 312:337(1984);およびToole et al,Nature、342:337(1984)]。ヒト第VIII因子は細胞内でプロセシングされて、A1、A2およびBドメインを含有するH鎖ならびにA3、C1およびC2ドメインを含有するL鎖を主として含んでなるヘテロ二量体を生じる。一本鎖ポリペプチドおよびヘテロ二量体の双方が、Bドメインを遊離しかつA1およびA2ドメインよりなるH鎖をもたらすA2ドメインとBドメインの間のトロンビン切断により活性化されるまで、不活性前駆体として血漿中を循環する。Bドメインは活性化された凝血原の形態のタンパク質では除去されている。加えて、本来のタンパク質中でBドメインを挟む2本のポリペプチド鎖(「a」および「b」)は二価のカルシウム陽イオンに結合している。
【0121】
いくつかの態様において、ミニ遺伝子は10アミノ酸のシグナル配列をコードする第VIII因子H鎖の最初の57塩基対、ならびにヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化配列を含んでなる。代替の態様において、ミニ遺伝子はA1およびA2ドメイン、ならびにBドメインのN末端からの5アミノ酸および/もしくはBドメインのC末端の85アミノ酸、ならびにA3、C1およびC2ドメインをさらに含んでなる。さらに他の態様において、第VIII因子H鎖およびL鎖をコードする核酸が、Bドメインの14アミノ酸をコードする42核酸により分離される単一のミニ遺伝子で提供される[米国特許第6,200,560号明細書]。
【0122】
本明細書で使用される治療上有効な量は、個体の血液が凝固するのにかかる時間を短縮するのに十分な量の第VIII因子を産生するAAVベクターの量である。一般に、正常レベルの第VIII因子の1%未満を有する重症の血友病患者は、非血友病患者についてのおよそ10分に比較して60分より長い全血凝固時間を有する。
【0123】
本発明はいかなる特定の第VIII因子配列にも制限されない。多くの天然のおよび組換えの形態の第VIII因子が単離かつ生成されている。天然に存在するおよび組換えの形態の第VII因子の例は、米国特許第5,563,045号、同第5,451,521号、同第5,422,260号、同第5,004,803号、同第4,757,006号、同第5,661,008号、同第5,789,203号、同第5,681,746号、同第5,595,886号、同第5,045,455号、同第5,668,108号、同第5,633,150号、同第5,693,499号、同第5,587,310号、同第5,171,844号、同第5,149,637号、同第5,112,950号、同第4,886,876号明細書;国際公開第94/11503号、同第87/07144号、同第92/16557号、同第91/09122号、同第97/03195号、同第96/21035号および同第91/07490号パンフレット;欧州特許出願第EP 0 672 138号、同第EP 0 270 618号、同第EP 0 182 448号、同第EP 0 162 067号、同第EP 0 786 474号、同第EP 0 533 862号、同第EP 0 506 757号、同第EP 0 874 057号、同第EP 0 795 021号、同第EP 0 670 332号、同第EP 0 500 734号、同第EP 0 232 112号および同第EP 0 160 457号明細書;Sanberg et al.,XXth Int.Congress of the World Fed.Of Hemophilia(1992)、ならびにLind et al.,Eur.J.Biochem.、232:19(1995)を含む特許および学術文献に見出し得る。
【0124】
上述された第VIII因子をコードする核酸配列は、組換えの方法を使用して、または該配列を包含することが既知のベクターから誘導することにより得ることができる。さらに、所望の配列は、フェノール抽出およびcDNAもしくはゲノムDNAのPCRのような標準的技術を使用して、それを含有する細胞および組織から直接単離することができる[例えばSambrook et alを参照されたい]。ヌクレオチド配列はまた、クローン化されるよりはむしろ合成で製造し得る。完全な配列は、標準的方法により製造したオーバーラップオリゴヌクレオチドから集成し得、そして完全なコーディング配列に集成し得る[例えば、Edge、Nature 292:757(1981);Nambari et al,Science、223:1299(1984);およびJay et al,J.Biol.Chem.259:6311(1984)を参照されたい。
【0125】
さらに、本発明はヒト第VIII因子に制限されない。事実、本発明は限定するわけではないがコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコおよびウマ)、家畜(例えばウシ、ヤギおよびヒツジ)、実験動物、海棲哺乳類、大型のネコなどを挙げることができるヒト以外の動物からの第VIII因子を包含することを意図している。
【0126】
AAVベクターは、それ自体生物学的に活性でないがそれでもなお個体に投与される場合に血液凝固時間を改良もしくは復帰させる第VIII因子のフラグメントをコードする核酸を含有することができる。例えば上で検討したように、第VIII因子タンパク質は2個のポリペプチド鎖、すなわちプロセシングの間に切断されるBドメインにより分離されたH鎖およびL鎖を含んでなる。本発明により示されるとおり、第VIII因子の重および軽鎖でレシピエント細胞を同時形質導入することは、生物学的に活性の第VIII因子の発現に至る。大部分の血友病患者は該鎖の一方(例えば重もしくは軽鎖)のみに突然
変異もしくは欠失を含有するため、患者において欠損の鎖のみを投与して他方の鎖を供給することが可能でありうる。
【0127】
他の有用な遺伝子産物は、挿入、欠失もしくはアミノ酸置換を含有する自然に存在しないアミノ酸配列を有するキメラもしくはハイブリッドポリペプチドのような自然に存在しないポリペプチドを含む。例えば、一本鎖の工作された免疫グロブリンはある種の免疫無防備状態の患者で有用であり得る。他の型の天然に存在しない遺伝子配列は、アンチセンス分子、および標的の過剰発現を低下させるのに使用し得るリボザイムのような触媒的核酸を包含する。
【0128】
遺伝子の発現の低下および/もしくは調節は、癌および乾癬がそうであるように、過剰増殖する細胞を特徴とする過剰増殖状態の処置にとりわけ望ましい。標的ポリペプチドは、正常細胞と比較して過剰増殖細胞中で排他的にもしくはより高レベルで産生されるポリペプチドを包含する。標的抗原は、myb、myc、fynのような癌遺伝子、ならびに転位遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trkおよびEGRFによりコードされるポリペプチドを包含する。標的抗原としての癌遺伝子産物に加え、抗癌処置および保護的レジメンの標的ポリペプチドは、B細胞リンパ腫により作成される抗体の可変領域およびT細胞リンパ腫のT細胞受容体の可変領域を包含し、それらは、いくつかの態様において自己免疫疾患の標的抗原としてもまた使用される。モノクローナル抗体17−1Aにより認識されるポリペプチドおよび葉酸結合ポリペプチドを包含する、腫瘍細胞中でより高レベルで見出されるポリペプチドのような、他の腫瘍関連ポリペプチドを標的ポリペプチドとして使用することができる。
【0129】
他の適する治療的ポリペプチドおよびタンパク質は、細胞受容体および「自己」に向けられた抗体を産生する細胞を包含する自己免疫と関連する標的に対する広範囲にわたる保護免疫応答を与えることにより、自己免疫疾患および障害に罹患している個体を処置するのに有用でありうるものを包含する。T細胞媒介性の自己免疫疾患は、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、脈管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、クローン病および潰瘍性大腸炎を包含する。これらの疾患のそれぞれは、内因性抗原に結合しかつ自己免疫疾患に関連する炎症カスケードを開始するT細胞受容体(TCR)を特徴とする。
【0130】
C.免疫原性導入遺伝子
適当には、本発明のAAVベクターは、該ベクター内に含有されるAAV配列に対する免疫応答の生成を回避する。しかしこれらのベクターは、それにもかかわらず、該ベクターにより運搬される導入遺伝子の発現して選択された抗原に対する免疫応答を誘導できるようにする様式で配合することができる。例えば免疫応答を促進するため、導入遺伝子は構成的プロモーターから発現させることができ、ベクターは本明細書に記述されるとおり免疫増強し(adjuvanted)得、かつ/もしくは該ベクターを変性組織に置くことができる。
【0131】
適する免疫原性導入遺伝子の例は多様なウイルス科から選択されるものを包含する。免疫応答が望ましいとみられる所望のウイルス科の例は、一般的な風邪の症例の約50%の原因であるライノウイルス属を包含するピコルナウイルス科;ポリオウイルス、コックサッキーウイルス、エコーウイルスおよびA型肝炎ウイルスのようなヒトエンテロウイルスを包含するエンテロウイルス属;ならびに主としてヒト以外の動物での口蹄疫の原因であるアプトウイルス属を包含する。ウイルスのピコルナウイルス科内で、標的抗原はVP1、VP2、VP3、VP4およびVPGを包含する。他のウイルス科はアストロウイルスおよびカルシウイルス科を包含する。カルシウイルス科は、流行性胃腸炎の重要な原因病
原体であるノーウォーク群のウイルスを包含する。ヒトおよびヒト以外の動物で免疫応答を誘導するための抗原の標的設定での使用に望ましいさらに別のウイルス科は、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、ならびにベネズエラ、東部および西部ウマ脳炎ウイルスを包含するアルファウイルス属、ならびに風疹ウイルスを包含するルビウイルス属を包含するトガウイルス科である。フラビウイルス科は、デング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎およびダニ媒介脳炎ウイルスを包含する。他の標的抗原は、C型肝炎ウイルス、または感染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸ウイルス(ブタ)、ブタヘマグルチナチン(hemagglutinatin)脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)のような多数のヒト以外のウイルス、ならびに、一般的な風邪および/または非A、BもしくはC型肝炎を引き起こすことがありかつ重症急性呼吸器症候群(SARS)の推定の原因を包含するヒト呼吸器コロナウイルスを包含するコロナウイルス科から生成しうる。コロナウイルス科内で、標的抗原は、E1(Mすなわちマトリックスタンパク質ともまた呼ばれる)、E2(Sすなわちスパイクタンパク質ともまた呼ばれる)、E3(HEすなわちヘマグルチン−エルテロース(elterose)ともまた呼ばれる)糖タンパク質(全部のコロナウイルスに存在するわけではない)、またはN(ヌクレオキャプシド)を包含する。さらに他の抗原はアルテリウイルス科およびラブドウイルス科を標的としうる。ラブドウイルス科は、ベシクロウイルス属(例えば水疱性口内炎ウイルス)および一般的なリッサウイルス(例えば狂犬病)を包含する。ラブドウイルス科内で、適する抗原はGタンパク質もしくはNタンパク質に由来しうる。マルブルクおよびエボラウイルスのような出血性熱ウイルスを包含するフィロウイルス科が抗原の適する供給源となりうる。パラミクソウイルス科は、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹およびイヌジステンパーを包含するモルビリウイルス、ならびにRSウイルスを包含するニューモウイルスを包含する。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科内で分類され、そして抗原の適する供給源である(例えばHAタンパク質、N1タンパク質)。ブニヤウイルス科は、ブニヤウイルス(カリフォルニア脳炎、ラクロス)、フレボウイルス(ケニヤ出血熱)、ハンタウイルス(プレマラはヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス(ナイロビ羊病)属および多様な特定の属に割り当てられていないブンガウイルス(bungaviruse)含む。アレナウイルス科はLCMおよびラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。抗原の別の供給源はボルナウイルス科である。レオウイルス科は、レオウイルス、ロタウイルス(小児で急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルスおよびクルチウイルス(cultivirus)(コロラドダニ熱、レボンボ(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)属を包含する。レトロウイルス科は、ネコ白血病ウイルス、HTLVIおよびHTLVII、レンチビリナル(lentivirinal)(HIV、サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ウマ感染性貧血ウイルスおよびスプマビリナル(spumavirinal)を包含する)のようなヒトおよび家畜の疾患を包含するオンコウイルス(oncovirinal)亜科を包含する。
【0132】
HIVおよびSIVに関して、多くの適切な抗原が記載され、そして容易に選択され得る。適切なHIVおよびSIV抗原の例には、限定するわけではないが、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、TatおよびRevタンパク質ならびにそれらの種々のフラグメントを含む。例えばエンベロープ(env)タンパク質の適切なフラグメントには、例えばgp41、gp140およびgp120を含む。さらにこれらおよび他のHIVおよびSIV抗原に対する種々の修飾が記載された。この目的に適する抗原は当業者には既知である。例えば他のタンパク質の中でもgag、pol、VifおよびVpr、Env、TatおよびRevをコードする配列を選択することができる。例えば米国特許第5,972,596号明細書に記載されている修飾されたgagタンパク質を参照に
されたい。またD.H.Barouch,et al,J.Viol.,75(5):2462−2467(2001年3月)、およびR.R.Amara,et al,Science,292:69−74(2001年4月6日)に記載されているHIVおよびSIVタンパク質を参照されたい。これらのタンパク質またはそのサブユニットは、単独で、または別のベクターを介してもしくは単一ベクターから組み合わせて送達され得る。
【0133】
パボーバウイルス科は、ポリオーマウイルス亜科(BKUおよびJCUウイルス)ならびにパピローマウイルス亜科(癌もしくは乳頭腫の悪性の進行と関連する)を包含する。アデノウイルス科は呼吸器疾患および/もしくは腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)を包含する。パルボウイルス科はネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルスおよびブタパルボウイルスを包含する。ヘルペスウイルス科は、シンプレックスウイルス(HSVI、HSVII)、ワリセロウイルス(偽性狂犬病、帯状疱疹)属を包含するアルファヘルペスウイルス亜科、およびサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス)を包含するベータヘルペスウイルス亜科、ならびにリンホクリプトウイルス、EBV(バーキットリンパ腫)、6A、6Bおよび7型ヒトヘルペスウイルス、カポシ肉腫関連のヘルペスウイルスならびにセルコピテシン(cercopithecine)ヘルペスウイルス(Bウイルス)、感染性鼻気管炎、マレック病ウイルスならびにラディノウイルス属を包含するガンマヘルペスウイルス亜科を包含する。ポックスウイルス科は、オルトポックスウイルス(大疱瘡(天然痘)およびワクシニア(牛痘))、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス属を包含するチョルドポックスウイルス亜科、ならびにエントモポックスウイルス亜科を包含する。ヘパドナウイルス科はB型肝炎ウイルスを包含する。抗原の適する供給源となりうる1種の分類されないウイルスは、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスおよびプリオンである。抗原の供給源となる別のウイルスはニパンウイルスである。なお他のウイルス供給源は、トリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスおよびブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルスを包含しうる。アルファウイルス科はウマ動脈炎ウイルスおよび多様な脳炎ウイルスを包含する。
【0134】
本発明は、ヒトおよびヒト以外の脊椎動物を感染させる細菌、真菌、寄生性微生物もしくは多細胞寄生生物を包含する他の病原体に対しヒトもしくはヒト以外の動物を免疫するのに有用であるか、または癌細胞もしくは腫瘍細胞からである免疫原もまた包含しうる。細菌性病原体の例は、病原性グラム陽性球菌は肺炎球菌;ブドウ球菌(およびそれにより産生されるトキシン、例えばエンテロトキシンB);ならびに連鎖球菌を包含するを包含する。病原性のグラム陰性球菌は、髄膜炎菌;淋菌を包含する。病原性の腸グラム陰性桿菌は、腸内細菌科;シュードモナス、アシネトバクテリア(acinetobacteria)およびエイケネラ(eikenella);類鼻疽;サルモネラ(salmonella);シゲラ(shigella);ヘモフィルス(haemophilus);モラクセラ(moraxella);軟性下疳菌(H.ducreyi)(軟性下疳を引き起こす)、ブルセラ(brucella)種(ブルセラ症);野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病を引き起こす);ペスト菌(Yersinia pestis)(ペスト)および他のエルジニア(yersinia)(パスツレラ);ストレプトバチルス モニリフォルミス(streptobacillus moniliformis)およびスピリルムを包含し;グラム陽性桿菌はリステリア モノシトゲネス(listeria monocytogenes);エリジペロスリックス ルシパチエ(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ;炭疽菌(B.anthracis)(炭疽);ドノヴァン症(鼠径部肉芽腫);およびバルトネラ症を包含する。病原性嫌気性細菌により引き起こされる疾患は、破傷風;ボツリヌス中毒(クロストリズム ボツリヌム(Clostridum botulinu
m)およびそのトキシン);ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)およびそのεトキシン;他のクロストリジウム属;結核;らい;ならびに他のミコバクテリアを包含する。病原性のスピロヘータ疾患は梅毒;トレポネーマ症;イチゴ腫、ピンタおよび風土病性梅毒;ならびにレプトスピラ症を包含する。より高病原性の細菌および病原性真菌により引き起こされる他の感染症は、鼻疽(バークホルデリア マレイ(Burkholderia mallei));放線菌症;ノカルジア症;クリプトコックス症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症およびコクシジオイデス真菌症;カンジダ症、アスペルギルス症およびムコール症;スポロトリクス症;パラコクシジオイデス真菌症、ペトリエリジオーシス(petriellidiosis)、トルロプシス症、菌腫およびクロモミコーシス;ならびに皮膚糸状菌症を包含する。リケッチア感染症は、発疹チフス、ロッキー山熱、Q熱(コクシエラ ブルネティ(Coxiella burnetti))およびリケッチア痘を包含する。マイコプラスマおよびクラミジア感染症の例は:マイコプラスマ肺炎;性病性リンパ肉芽腫;オウム病;および周産期クラミジア感染症を包含する。病原性真核生物は病原性原生動物および蠕虫を包含し、また、それらにより生じられる感染症は:アメーバ症;マラリア;リーシュマニア;トリパノソーマ症;トキソプラスマ症;ニューモシスチス カリニ(Pneumocystis carinii);Trichans;トキソプラスマ(Toxoplasma gondii);バベシア症;ジアルジア症;旋毛虫症;フィラリア症;住血吸虫症;線虫;吸虫(trematodes)すなわち吸虫(flukes);および条虫(cestode)(条虫(tapeworm))感染症を包含する。
【0135】
これらの生物体および/もしくはそれらにより産生されるトキシンの多くは、生物学的攻撃での使用のための潜在性を有する作用物質として疾病対策センター(Centers
for Disease Control)[(CDC)、米国保健省の部門]により同定された。例えば、これらの生物学製剤のいくつかは、炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびそのトキシン(ボツリヌス中毒)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ペスト)、大疱瘡(天然痘)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)、ならびにウイルス性出血熱[フィロウイルス(例えばエボラ、マルブルク]、ならびにアレナウイルス[例えばラッサ、マチュポ])(それらの全部は現在カテゴリーAの作用物質に分類されている);コクシエラ ブルネティ(Coxiella burnetti)(Q熱);ブルセラ属(Brucella)の種(ブルセラ症)、バークホルデリア マレイ(Burkholderia mallei)(鼻疽)、バークホルデリア シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)(類鼻疽)、トウゴマ(Ricinus communis)およびそのトキシン(リシントキシン)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)およびそのトキシン(イプシロン トキシン)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)の種およびそれらのトキシン(エンテロトキシンB)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)(オウム病)、水の安全性に対する脅威(例えばコレラ菌(Vibrio cholerae)、クリトスポリジウム パルブム(Crytosporidium parvum))、発疹チフス(発疹チフスリケッチア(Richettsia powazekki))、ならびにウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えばベネズエラウマ脳炎;東部ウマ脳炎;西部ウマ脳炎);(それらの全部は現在カテゴリーBの作用物質として分類されている);ならびにニパンウイルスおよびハンタウイルス(現在カテゴリーCの作用物質として分類されている)を包含する。加えて、そのように分類されるかもしくは異なって分類される他の生物体が、将来同定かつ/もしくはこうした目的上使用されうる。本明細書に記述されるウイルスベクターおよび他の構築物が、これらの生物学的剤への感染症もしくはそれらとの他の有害反応を予防かつ/もしくは処置することができるこれらの生物体、ウイルス、それらのトキシンもしくは他の副生成物からの抗原を送達するのに有用であることが容易に理解されるであろう。
【0136】
T細胞の可変領域に対する免疫原を送達するための本発明のベクターの投与はそれらのT細胞を排除するためのCTLを含む免疫応答を導き出す。慢性関節リウマチ(RA)において、該疾患に関与するTCRの数個の特異的可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−3、V−14、V−17およびV−17を含む。従って、これらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする核酸配列の送達は、RAに関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。多発性硬化症(MS)において、該疾患に関与するTCRの数個の特異的可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−7およびV−10を包含する。従ってこれらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする核酸配列の送達は、MSに関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。強皮症において、該疾患に関与するTCRの数個の特異的可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−6、V−8、V−14およびV−16、V−3C、V−7、V−14、V−15、V−16、V−28およびV−12を含む。従って、これらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする核酸分子の送達は、強皮症に関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。
【0137】
従って本発明のrAAV由来の組換えウイルスベクターは、生物体が1もしくは複数のAAV供給源に対する中和抗体を有する場合であっても、選択した導入遺伝子を選択した宿主細胞にin vivoもしくはex vivoで送達し得る効率的な遺伝子移入ベヒクルを提供する。一態様において、rAAVおよび細胞をex vivoで混合し;感染した細胞を慣習的方法論を使用して培養し;そして形質導入された細胞を患者に再注入する。
【0138】
これらの組成物は、保護免疫を誘導することを包含する治療的目的上および免疫感作のための遺伝子送達にとりわけ良く適する。本発明のAAVおよびそれを含有する組成物は、「免疫原性分子の連続的アデノウイルスおよびAAV媒介型送達(Sequential Adenovirus and AAV−Mediated Delivery of Immunogenic Molecules)」について2004年4月28日に出願された共有する米国特許出願第60/565,936号明細書に記載されているもののような免疫感作処方に使用されることもできる。
【0139】
さらに本発明の組成物は所望の遺伝子産物のin vitroでの産生にもまた使用することができる。in vitro産生のため、所望の産物(例えばタンパク質)は、所望の産物をコードする分子を含有するrAAVでの宿主細胞のトランスフェクション、および発現を可能にする条件下で細胞培養物を培養することの後に所望の培養物から得ることができる。発現された産物をその後、所望のとおり精製かつ単離し得る。適するトランスフェクション、細胞培養、精製および単離技術は当業者に既知である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】シングルトン補正AAVベクターのインビトロ293形質導入を具体的に説明するグラフである。シングルトン補正は、存在する場合、ベクター名前の後に突然変異を行った番号を示すための番号で示される。
【図2】2A〜2Cは、101〜104の範囲の感染多重度で293細胞についてのAAVベクターの力価を具体的に説明する線グラフであり、図2Aでは親のrh.8とシングルトン補正rh.8(rh.8R)との間の比較を、親のrh.37と修飾rh.37との間の比較を(図2B)、そして図2CではAAV2とAAV8との間の比較を表す。対照として、AAV2およびAAV2/8 eGFP発現ベクターの類似滴定を提示する。eGFP陽性細胞のパーセント(%)をY−軸で提示し、そしてフローサイトメトリーでアッセイした。
【図3】AAV配列の系統発生樹であり、これはそれらの系統発生的関係およびクレードを示す。
【図4】4A〜4Lは、AAV2[配列番号7]、cy.5[配列番号8]、rh.10[配列番号9]、rh.13[配列番号10]、AAV1[配列番号11]、AAV3[配列番号12]、AAV6[配列番号13]、AAV7[配列番号14]、AAV8[配列番号15]、hu.13[配列番号16]、hu.26[配列番号17]、hu.37[配列番号18]、hu.53[配列番号19]、rh.39[配列番号20]、rh.43[配列番号21]およびrh.46[配列番号22]のキャプシドタンパク質(vp1)の核酸配列のアライメントである。
【図5】5A〜5Dは、AAV2[配列番号23]、cy.5[配列番号24]、rh.10[配列番号25]、rh.13[配列番号26]、AAV1[配列番号27]、AAV3[配列番号28]、AAV6[配列番号29]、AAV7[配列番号30]、AAV8[配列番号31]、hu.13[配列番号32]、hu.26[配列番号33]、hu.37[配列番号34]、hu.53[配列番号35]、rh.39[配列番号36]、rh.43[配列番号37]およびrh.46[配列番号38]のキャプシドタンパク質(vp1)のアミノ酸配列のアライメントである。
【図6】6A〜6Bは、rh.13[配列番号26]、rh.2[配列番号39]、rh.8[配列番号41]、hu.29[配列番号42]およびrh.64[配列番号43]のキャプシドタンパク質(vp1)のアミノ酸配列のアライメントである。
【0141】
以下の実施例は本発明のいくつかの観点および態様を具体的に説明する。
【実施例】
【0142】
実施例1
本発明の方法に従い、各クレードA、B、C、D、EおよびF(AAV9により表される)の代表を含む配列のライブラリーと並べて配置した時、AAV配列はシングルトンを有すると同定された。以下の表はキャプシド配列および保存された配列に改変されるべきシングルトンを具体的に説明する。特定の突然変異に関して、シングルトンに*が続き、その後、それを置き換えるアミノ酸残基が続く。他の突然変異に関しては、シングルトンにそのアミノ酸位、そしてそれに置き換わる残基が続く。
【0143】
アミノ酸の番号付けは、これらAAVキャプシドの各々について公開された配列に基づく。例えばG.Gao,et al.,J.Virol.,78(12)6381−6388(2004年6月)および国際公開第2004/042397号パンフレット[その中の全配列はGenBankに寄託された]、および2004年9月30日に出願された国際公開第2005/033321号パンフレット(引用により本明細書に編入する)を参照にされたい。
【0144】
例えば以下の表を参照にして、命名法は以下のように読むべきである。Cy5R1は配列番号24のアミノ酸配列を指し、これはアミノ酸残基13位にアスパラギン酸(D)を含むように修飾された;cy5は自然なアミノ酸配列の残基番号13にグリシンを有する。Cy5R2は配列番号24のアミノ酸配列を指し、これはアミノ酸13位にアスパラギン酸(D)を(自然な配列ではグリシン)、そしてアミノ酸403位にアスパラギンを(自然な配列ではアスパラギン酸)含むように修飾された。Cy5R3は配列番号24のアミノ酸配列を有し、これはCy5R2と同じ修飾を有するように修飾され、そしてさらに158位のリシン(天然ではアスパラギン)および161位のグルタミン(天然ではプロリン)が修飾された。この情報を与えれば、当業者は以下の表に挙げる他のシングルトン修飾を容易に決定することができる。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
実施例2
予備実験では、5個のクローンを選択して本発明のシングルトン法を試験した。以下の表は、5個のクローンの表現型の記載を提供する。予想されるシングルトンの数を、クレードおよび血清型分類と共に与える。
【0148】
パッケージング表現型は、それらの力価が1×1011GCより低い場合に不十分と、1×1012GCより低い場合に低いと、そして1×1013GCより低い場合に良好と、より高い場合には優れていると考える。
【0149】
遺伝子導入の表現型は、CB.A1AT遺伝子発現により確立され、そして以下のように示した;“+++”は標的組織のためのリード候補よりも良い、“++”、“+”および“−”は、リード候補のA1AT血清レベルよりもそれぞれ50%より良く、10〜50%の間、または10%より低い(筋肉:AAV1、肝臓:AAV8、肺:AAV9)。“n/a”は、ベクターがインビボの遺伝子導入実験について十分なレベルで生産できなかったことを示した。
【0150】
シングルトン補正のクローニングは、以下のようになった。元のパッケージングプラス
ミドから、部位特異的突然変異誘発法を行った。それに続いて、ベクターの骨格完全性をPstI消化によりアッセイし、そしてシングルトンの補正をシークエンシングにより確認した。次いでEGFP発現ベクターは、親のシングルトン含有ベクター、AAV2およびAAV2/8陽性対照、および陰性対照としてパッケージングプラスミドが存在しない生産を平行して12ウェル形式で3連で生産された。3回の凍結後に回収した等容量の溶解物を、293細胞でインキュベーションした。eGFP発現は、フローサイトメトリーにより形質導入から72時間後に監視した。
【0151】
クローンrh.37、rh.2、ch.5、rh.13およびrh.8のシングルトン残基の部位特異的突然変異誘発法を行った。これらの特定の配列を選択して、これまでに記録された種々の表現型を表した。
【0152】
【表3】
【0153】
ベクター発現における増加は、5個のクローンのうちの4個で認められた。この増加は、以前には低いパッケージング収量を有することが示されたrh.37およびrh.2ベクターで最も劇的であった。これらのベクターに関して、生産的粒子が検出に十分なレベルで生産された。ベクターrh.8およびrh.13は、形質導入に増加を示した。
【0154】
シングルトン突然変異の形質導入対パッケージングおよび集成に及ぼす効果を識別するために、小規模ベクター調製物を作成し、そしてDnase耐性粒子を定量的PCRにより滴定した。rh.37について、ベクター生産について2−logの増加が観察された。rh.8は力価において中程度の5倍増加を示し、一方rh.13は等しく機能した。シングルトン補正クローンのすべての力価は、AAV2およびAAV2/8生産と比べて許容され得る範囲内であり、そして大規模調製に拡大した時、rh.2は力価についてアッセイしなかった。
【0155】
引き続きシングルトン交換の効果は、細胞あたり等しい粒子数を用いた形質導入の設定でインビトロにて監視した。293細胞での滴定は、rh.8およびrh.13について行った。形質導入効率における中程度の増加は、すべてのMOIで記載された。
【0156】
この5クローンの最初のサブセットから、3つが細胞を生産的に形質導入した。2つのクローンはこの設定でいかなるeGFP発現も生じることができなかった。これはほとんどシングルトンの取り組みにより予測できなかったベクターのパッケージングにおける欠失によるらしい。
【0157】
本発明の方法を利用してAAVクローンhu.46、P156S R362C S393F A676の4つの予想されるシングルトンの位置を補正した。しかしこれらの修飾はレスキューできたAAVを生じず、hu.46配列に別の種類の致命的間違えを示した。
【0158】
実施例3−改変されたキャプシドを持つウイルスベクターのインビトロ分析
本発明の方法を使用して、rh.64およびhu.29のキャプシドタンパク質を改変し、次いで改変されたキャプシドを持つウイルスベクターを、実施例2およびG.Gao
et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99,11854−9(2002年9月3日)に記載されているようなシュードタイピングを使用して構築した。
【0159】
簡単に説明すると、強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現するベクターを使用して、ヒト内皮腎臓細胞(293細胞)中のベクターのインビトロ形質導入効率を調査した。これらの293細胞は、wtAd5で短時間プレインキュベーションした後、104GC/細胞のシュードタイプAAVCMVeGFP粒子の存在下でインキュベーションした。10,000個の全細胞あたりeGFP陽性細胞数が、5細胞/10Kの検出限界でFACS分析により測定された。
【0160】
本発明によるRh.64キャプシドの修飾は、R697W交換後に100倍以上高い効率であった修飾rh.64粒子をもたらした。引き続きV686Eの突然変異は、パッケージング能に2倍の増加をもたらした。
【0161】
本発明に従いHu.29キャプシドの修飾は、G396Eと交換することにより欠損パッケージング能からレスキューされた修飾rh.64ビリオンを与えた。生産に1000倍以上の増加が観察された。
【0162】
発現において改善を示した20を超える多くの修飾AAVビリオンには、AAV6.1、hu.48R1、hu.48R2、hu.44R2、hu.44R3、rh.48.2、rh.48.2、rh48.2.1を含む。
【0163】
実施例4−インビボ遺伝子導入の応用に及ぼすシングルトン効果
シングルトン変異体の効果は、インビボの設定で試験した。C57B/6マウスでの遺伝子導入実験は、本発明の方法に従い修飾したベクター数で開始した。特定の応用については現在のリード候補に対して筋肉を対象とした、および肝臓を対象とした実験を開始し、そしてベンチマークで試験した。
【0164】
ヒトα−アンチトリプシン(A1AT)はベクター中の感受性および定量的レポーター遺伝子として選択し、そしてCMV−強化ニワトリβ−アクチンプロモーターの制御下で発現した。CBプロモーターの採用により、高レベルの組織非特異的および構成的A1AT遺伝子導入が達成でき、そして同じベクター調製物の使用が任意の目的組織における遺伝子導入実験に可能となる。
【0165】
筋肉は最初の標的組織として選択した。40の異なる新規ベクター(24種のクローンに基づき、各々が各シングルトン変異体(1もしくは複数)を持つ)を、C57B/6マウスの後脚に筋肉内注射した。すべての実験は、CB.A1AT導入遺伝子カセットを用いて1×1011GC/動物で行った。ベクターは、各時点でマウスあたり、およびクレード群あたりの等容量(50μl)のアリコートに分けた。各個別の実験は、筋肉を標的化した遺伝子導入について、ベンチマークとして役立つ代表的な血清型であるAAV2/8およびAAV2/1を含む対照群を含め、1もしくは2つのクレードから成った。導入遺伝子発現は、注射後7、14、28および63日に検出し、そして特異的hA1AT ELISAにより評価される。
【0166】
幾つかの単離物およびシングルトン補正変更体について、門脈内(intraportal)肝臓対象化注入後のそれらの性能に関するデータを作成した。予備的結果は、補正クローンの大部分が元の単離物と等しいか、またはそれより良いことを示す。1つの特定
のクローン、すなわちcy.5について、シングルトン補正は筋肉の遺伝子導入に対して有益な効果と思われる。4つのシングルトン補正を持つクローンcy.5R4は、元の単離物によりすでに現されているまずまずの筋肉向性に対して遺伝子導入効率を改善した。cy.5R4の性能は、ベンチマーク対照AAV2/1およびAAV2/7に等しいか、またはわずかに良い。
【0167】
さらなる評価には、以前に低すぎる力価を生じた単離物、rh.64が1つのシングルトンの補正後に筋肉で極めて良い性能を果たした。rh.64R1はrh64.2より良く機能し、そして最も近縁の血清型AAV2/8だけでなくAAV2/7により達成されるレベルより高いhA1ATレベルを与えた。
【0168】
他の実験では、マウスにベクターをクレードに基づく群で注射した。1×1011GC/マウスに、CB.hA1ATを発現するベクターを投与した。hA1ATの血清レベルは、特異的hA1AT ELISAにより測定された。
【0169】
シングルトンがインビボ遺伝子導入に及ぼす効果は、単離物および標的組織に依存するようである。幾つかの興味深い考察がなされた。
【0170】
特定のシングルトンクローンについて、効果は筋肉および肝臓(例えばrh.2、rh.13またはcy.5)で量的に同様であった。単離物hu.48およびrh.48は、回復したシングルトンの数が増えると筋肉中の発現も増加した。
【0171】
rh.64およびAAV6のような他のクローンは、特定の発現プロファイルを示す。例えば単離物hu.48R2は、hu.48R3と比べた時、約10倍低い効率でパッケージするが、hu.48R3は筋肉に約5倍低い効率で形質導入する。AAV6は2つのシングルトンを含む。両方がパッケージングに中程度の効果を有し、そして合わせるとそれらはAAV6パッケージングをベンチマークレベルまでもっていく。インビトロで、親のクローンおよび異なるクローンの間に認識できる差異はほとんどない。インビボでは、筋肉でAAV6.1およびAAV6.1.2は低下した遺伝子導入を示すが、AAV6.2は中程度の増加を示す。
【0172】
実施例5−肺および肝臓におけるシングルトン補正AAVの評価
シングルトン残基の回復によりパッケージングおよび遺伝子導入効率について至適化されたAAVベクターは、さらに肺および肝臓で評価された。このデータはシングルトンを含有しないもの、またはシングルトン残基が保存されたアミノ酸に変換されたものと同定された両ベクターについて示される。
【0173】
A.pi2、rh32.33、AAV2/9、AAV2/5、rh.2R、ch5Rにより媒介される気管内注射後に、肺へのCB.A1AT AAV遺伝子導入の評価
幾つかのAAVキャプシドが、それらの肺を標的とする能力について比較される。hA1ATレベルを血清で測定した。評価したAAVは、シングルトン無し(pi2、rh32.33、AAV2/9、AAV2/5、rh.2R、ch5R)か、または1つのシングルトン残基(rh.2、rh8)を含むかのいずれかである。AAV2/5およびAAV2/9をベンチマークとして表す。
【0174】
遺伝子導入実験は、上記のキャプシド中、CB.A1AT発現カセット(すなわちAAV2 5’ITR、ニワトリβ−アクチンプロモーター(CB)、ヒトα1−アンチトリプシン(A1AT)、AAV23’ITR)またはCB.nLacZ発現カセット(すなわちAAV2,5’ITR、核局在化β−ガラクトシダーゼ(nLacZ)、AAV23’ITR)のいずれかを持つベクターを使用して、C57B/6マウス(オス、1群あた
り5)で行った。簡単に説明すると、50μLのこれらシングルトン補正またはシングルトン無しのベクターを、A1ATを持つベクターおよびnLacZ(1×1011ゲノムコピー(GC))を持つベクターと気管内に同時点滴した(1×1011GC))。
【0175】
12および20日に20の採血を行い、そしてA1ATの血清レベルを測定した(ngAAT/mL血清)。データは1×1011GCの気管内(IT)注射後、rh.2からrh.2Rに関する肺でのヒトα1−アンチトリプシン発現の劇的増加が示された。加えて、シングルトン残基を含まない種々のAAVベクターを評価した。すべてのベクターは肺で許容され得るレベルの発現を示した。
【0176】
B.AAV2/5およびAAV2/9と比較したAAV6シングルトンベクターの評価
AAV6シングルトン補正クローンを評価した。修飾したAAV6(AAV6.2)は本発明のシングルトン補正法、および本明細書に記載するシュードタイピング技法を使用して調製した。実施例5に記載するように調製したA1ATおよびLacZ発現カセットを持つAAV6.2粒子は、鼻内(1×1011GC)および気管内に同時注射した。AAT発現は血清および気管支肺胞液(BAL)でELISAにより評価した。発現レベルは全タンパク質について標準化した。LacZ発現は、肺ホモジネートからのβ−ガラクトシダーゼについてELISAにより測定した。検視を21日に行った。
【0177】
これらのベクターは、C57B1/6マウス(オス、n=8/群)を含む実験で、AAV2/6(現在、肺への遺伝子導入について臨床的な候補)、AAV2/5およびAAV2/9と比較した。
【0178】
AAV6.2は、血清A1AT排出においてAAV6を上回る統計的に有意な改善を示した。またAAV6.2は、AAV2/9およびAAV2/5を含む他のベクターに比べて高レベルのA1ATレベルを示した。BALにおける軽度の改善が、肺ホモジネート中のLacZ発現のように記録された。しかし動物の変動に対して大型な動物により、LacZ定量から結論を引き出せなかった。
【0179】
AAV遺伝子発現の局在化を評価する場合、AAV2/6に比べてAAV2/6.2群で核に局在化したLacZに関する優れた染色が観察された。これらは嚢胞性線維症のような疾患の主要な標的である肺気道上皮で、AAV2/6およびAAV2/5に優る改善が特記された。
【0180】
C.C57Bl/6マウスを対象としたクレードBおよびクレードCのAAVメンバーを用いたAAV.CB.A1AT(1×1011GC)の門脈内(iv)注射
使用したすべてのベクターは、単離物(AAV2/8、AAV2、hu.13、hu.51、hu.11、hu.53)から、または突然変異(hu.29R)のいずれによってもシングルトン残基が存在しない。すべてのベクターはベンチマークとしてAAV2/8(クレードE)と比較する。
【0181】
D.クレードEのAAVメンバーの静脈内注射。rh.64R1、rh.64R2、rh.2Rは、シングルトンが最適化されている。すべての他のベクターにはシングルトンが無い。
AAVクレードBおよびCのメンバーからの発現は、hu.29R(シングルトンが最適化されたクローン)を含むすべてのメンバーについて類似から等価であることが分かった。この特定のクローンはhu.29からのパッケージング能力で再構成され、そして今、ウイルスファミリーの他のメンバーと類似の遺伝子導入機能性を表す。
【0182】
評価したクレードEベクターについて、自然にシングルトンを含まないか、またはシン
グルトン残基について補正したいずれかのすべてのベクターは、肝臓に向けた遺伝子導入について現在最高の物、AAV2/8に順じた範囲で機能する。特にAAVrh64R1およびrh.64R2は興味深い。パッケージングが欠損していることがわかったrh.64は、1つ(rh.64R1)または2つ(rh.64R2)のシングルトンの転換後に、肝臓に向けられた遺伝子導入において等しく良く機能する。rh.2について、シングルトン補正は遺伝子送達において劇的な10倍以上の増加に対応する。
【0183】
特許を含め本明細書に引用するすべての刊行物は、参考により本明細書に編入する。本発明は特に好適な態様を参照にして記載してきたが、本発明の精神から逸脱せずに修飾を行うことができると考える。
【0184】
<本発明の特徴>
本発明の主たる特徴または態様を以下に挙げる。
【0185】
態様1:親のAAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率を上げる方法であって、(a)親のAAVキャプシド配列をアライメントにおいて機能的AAVキャプシド配列のライブラリーと比較し;(b)親のAAVキャプシド中の少なくとも1つのシングルトンを同定し、該シングルトンは、並置された機能的AAVキャプシド配列の対応する位置のアミノ酸が完全に保存されている親のAAVキャプシド中の該位置の可変アミノ酸であり:(c)シングルトンを、機能的AAVキャプシド配列中の対応する該位置に位置するアミノ酸に改変する、工程を含んで成る上記方法。
【0186】
態様2:並置された機能的AAVキャプシド配列が、並置されたvp1配列の完全長にわたり少なくとも85%同一である少なくとも4つのAAV配列を含んでなり、そして少なくとも2つの異なるAAVクレードに由来するAAV配列を含む、態様1に記載の方法。
【0187】
態様3:ライブラリーが各クレードに由来する少なくとも2つのAAV配列を含んでなる態様1に記載の方法。
【0188】
態様4:並置されたAAVキャプシド配列のライブラリーが、少なくとも3つの異なるクレードに由来するAAV配列を含んでなる態様1に記載の方法。
【0189】
態様5:並置されたAAVキャプシド配列のライブラリーが、少なくとも3〜100のAAV配列を含んでなる態様1に記載の方法。
【0190】
態様6:並置されたAAVキャプシド配列のライブラリーが、少なくとも6〜50のAAV配列を含んでなる態様1に記載の方法。
【0191】
態様7:ライブラリーが少なくとも12のAAV配列を含んでなる態様6に記載の方法。
【0192】
態様8:親のAAVが複数のシングルトンを含む態様1に記載の方法。
【0193】
態様9:親のAAVが2〜4のシングルトンを含む態様8に記載の方法。
【0194】
態様10:工程(c)が異なるシングルトンで繰り返される態様8に記載の方法。
【0195】
態様11:標的AAVが可変アミノ酸のコドンの部位特異的突然変異誘発法により改変される、態様1に記載の方法。
【0196】
態様12:部位特異的突然変異誘発法がプラスミド骨格上で運ばれる標的AAVについて
行われる態様11に記載方法。
【0197】
態様13:改変したAAVをAA粒子にパッケージングする工程をさらに含んでなる態様1に記載の方法。
【0198】
態様14:AAV粒子が標的AAVに比べて上昇したパッケージング効率を有する態様13に記載の方法。
【0199】
態様15:AAV粒子が標的AAVに比べて上昇した形質導入効率を有する態様13に記載の方法。
【0200】
態様16:AAV粒子が標的AAVに比べて上昇した遺伝子導入効率を有する態様13に記載の方法。
【0201】
態様17:態様1に記載の方法に従い改変されているAAVキャプシドを含んでなるウイルスベクター。
【0202】
態様18:配列番号1のアミノ酸配列を有するrh20、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;配列番号2のアミノ酸配列を有するrh32/33、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;配列番号3のアミノ酸配列を有するrh39、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列; 配列番号4のアミノ酸配列を有するrh46、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;配列番号5のアミノ酸配列を有するrh73、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;配列番号6のアミノ酸配列を有するrh74、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;からなる群から選択されるAAVキャプシドを含んでなるベクター。
【0203】
態様19:上記ウイルスベクターが遺伝子産物をコードする導入遺伝子を、宿主細胞中で該産物の発現を支配する調節配列の制御下に持つ態様18に記載のウイルスベクター。
【0204】
態様20:天然ではリシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1:天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にロイシンを有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するアミノ酸を有するAAV6.2:天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にリシンを、そして天然ではロイシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1.2;からなる群から選択されるアデノ随伴キャプシドタンパク質を有する修飾ウイルスベクター。
【0205】
態様21:天然ではアスパラギン酸であるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号41のアミノ酸配列を有するrh.8R;天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1;天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.2;天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を、そして天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1.2;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R1;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、そして天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R2;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシ
ンを、そして天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを、そして天然ではグリシンであるアミノ酸609位にアスパラギン酸を有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R3;天然ではグリシンであるアミノ酸396位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号42のアミノ酸配列を有するhu.29R;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R1;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、そして天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R2;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、そして天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含み、そして天然ではセリンであるアミノ酸残基552位にアスパラギンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R3;からなる群から選択される修飾されたアデノ随伴キャプシドを有するウイルスベクター。
【0206】
態様22:遺伝子産物を宿主細胞に送達するための薬剤の調製における態様17ないし21のいずれかに記載のウイルスベクターの使用。
【0207】
態様23:態様17ないし21のいずれかに記載のウイルスベクターを個体に送達することを含んでなる、個体に遺伝子産物を送達する方法。
【0208】
態様24:配列番号1のアミノ酸配列を有するrh20;配列番号2のアミノ酸配列を有するrh32/33;配列番号3のアミノ酸配列を有するrh39;配列番号4のアミノ酸配列を有するrh46;配列番号5のアミノ酸配列を有するrh73;配列番号6のアミノ酸配列を有するrh74;天然ではバリンであるアミノ酸残基404位にメチオニンを有することにより修飾された配列番号49のアミノ酸配列を有するrh54;天然ではリシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1;天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にロイシンを有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するアミノ酸を有するAAV6.2;天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にリシンを、そして天然ではロイシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1.2;天然ではアスパラギン酸であるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号41のアミノ酸配列を有するrh.8R;天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1;天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.2;天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を、そして天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1.2;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R1;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、そして天然ではプロリンであるアミノ酸残基446位にロイシンを有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R2;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、そして天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを、そして天然ではグリシンであるアミノ酸609位にアスパラギン酸を有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R3;天然ではグリシンであるアミノ酸396位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号42のアミノ酸配列を有するhu.29R;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R1;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、そして天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含む
ように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R2;および天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、そして天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含み、そして天然ではセリンであるアミノ酸残基552位にアスパラギンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R3;からなる群から選択されるAAV配列をコードする核酸配列を含んでなる核酸分子。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明は、遺伝子産物を宿主細胞に送達するために使用できる、AAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率の上昇した改変ウイルスベクターが提供されるので、例えば、遺伝子治療用の薬剤を効果的に提供できるので、医薬製造業において利用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率の上昇したAAVベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
パルボウイルス科の1メンバー、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、4.7キロ塩基対(kb)〜6kbの一本鎖の直鎖状DNAゲノムを有する小型のエンベロープを持たない20面体ウイルスである。AAVは、精製したアデノウイルスストック中の混入物質として発見されたため、該ウイルスはデペンドウイルス属(Dependovirus)に割り当てられている。AAVの生活環は、感染後のAAVゲノムが宿主染色体に部位特異的に組み込まれる潜伏期、およびアデノウイルスもしくは単純疱疹ウイルスいずれかの感染後に組み込まれたゲノムがその後レスキューされ、複製され、そして感染性ウイルスにパッケージングされる感染期を含む。非病原性の特性、非分裂細胞を含む感染性の広範な宿主範囲、および潜在的な部位特異的染色体組み込みが、AAVを遺伝子移入のための魅力的なツールとしている。
【0003】
AAVベクターは、治療および免疫原分子の両方に送達媒体としての使用が記載されてきた。今日まで、ヒトまたは非ヒト霊長類(NHP)から単離された数種の異なる十分に特徴づけられたAAVが存在する。
【0004】
最近、研究者達は多数のAAVの異なる配列を記載し[非特許文献1(2003年5月13日);特許文献1(2003年6月24日)]、そしてこれらのAAVを異なる血清型およびクレードに特徴付けた[非特許文献2(2004年6月);特許文献2]。異なる血清型のAAVが異なるトランスフェクション効率を表し、かつまた異なる細胞もしくは組織に対する向性も表すことが報告された。
【0005】
望まれているものは、異種分子を種々の細胞型に送達のためのAAVに基づく構築物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US−2003−0138772−A1
【特許文献2】国際公開第2005/033321号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G.Gao,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100(10):6081−6086
【非特許文献2】G.Gao,et al.,J.Virol.,78(12):6381−6388
【発明の概要】
【0008】
本発明は、非機能的および/または弱く機能する(perform)AAVから誘導されるベクターを改善する方法により取得できるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。
【0009】
1つの観点では、この方法は選択したAAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率を上げるために、選択したAAV配列のシングルトンを補正す
る方法を提供する。この方法には、このシングルトンを、並置された機能的AAVキャプシド配列の対応する位置(1もしくは複数)のアミノ酸と同じにするために、親のAAVキャプシド中の1もしくは複数のシングルトンを改変することが含まれる。
【0010】
別の観点では、本発明は修飾されたAAV配列、すなわち1もしくは複数のシングルトンが排除された配列を提供する。
【0011】
さらに別の観点では、本発明は本発明に従い修飾されたAAVキャプシドを有するAAVベクターを提供する。
【0012】
本発明の他の観点および利点は、本発明の以下の詳細な説明から容易に明らかとなるだろう。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明はAAVベクターの機能を改善する方法を提供する。本発明は、特に1もしくは複数のシングルトンを含むAAVのキャプシドを有するAAVベクターのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率を改善するために良く適している。さらに本発明は本発明に従い同定および調製した新規AAVキャプシド配列を提供する。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用するように、用語「含んでなる」および「含む」とは他の成分、要素、完全体(integer)、工程等を包含する。逆に用語「からなる」およびその変更体は、他の成分、要素、完全体(integer)、工程等を排除する。
【0015】
本発明のシングルトン法
本明細書で使用する用語「シングルトン」とは、選択した(すなわち親の)AAVキャプシド配列の所定位置の1つの可変アミノ酸を指す。可変アミノ酸の存在は、親のAAVキャプシドの配列を機能的なAAVキャプシド配列のライブラリーと並べることにより決定することができる。この配列は次いで分析されて親のAAVキャプシド中の可変アミノ酸の存在が決定され、ここで機能的AAVのライブラリー中のAAVの配列は完全な保存を有する。次いで親のAAV配列は、シングルトンを機能的AAVキャプシド配列中の該位置で同定された保存アミノ酸に変えるように改変(また、本発明に関し、「修飾」とも称す。)される。本発明に従い、親のAAV配列は1〜6、1〜5、1〜4、1〜3または2個のシングルトンを有することができる。親のAAV配列は6より多くのシングルトンを持つことができる。
【0016】
いったん改変または修飾されれば、修飾されたAAVキャプシドは、修飾されたキャプシドを有するAAVベクターを構築するために使用することができる。このベクターは当業者に既知の技術を使用して構築することができる。
【0017】
本発明の方法に従い修飾するために選択されるAAVは、以下の3つのAAVの機能的特性、すなわち親のAAVと比べた時の選択されたAAV配列のキャプシドを有するウイルス粒子へのパッケージング、形質導入効率の上昇、または遺伝子導入効率の上昇の1もしくは複数を上げることが望まれるものである。例えば親のAAVは、他の近縁のAAVに比べて低いパッケージング効率を有することを特徴とすることができる。別の例では、親のAAVは他の近縁のAAVに比べて低い形質導入効率を有するかもしれない。別の例では、親AAVは他の近縁のAAVに比べて低い遺伝子導入効率(すなわちインビボで標的分子を送達する能力が低い)を有するかもしれない。1つの実施態様では、親のAAVはこれら各範疇において十分な機能を特徴とするが、これら分野の1もしくは複数の機能の上昇が望まれる。
【0018】
このように本発明は、機能的AAVのライブラリー、選択した(親の)AAVと比べる配列を提供する。適当ならばライブラリーは、選択した親のAAVの改善のための標的とされる所望する機能を有するAAVを含む。換言すると、機能的AAVのライブラリー中の各配列は、所望するレベルのパッケージング能、所望するレベルのインビトロ形質導入効率、または所望するレベルのインビトロ遺伝子導入効率(すなわち個体の標的とする選択した標的組織もしくは細胞に送達する能力)を特徴とする。ライブラリーを構成する機能的AAVは、これらの機能的特徴の1、2もしくはすべてを個別に有することができる。ライブラリーに所望する他の機能は、当業者により容易に決定され得る。
【0019】
1つの態様では、機能的AAVは、AAV1、AAV2、AAV7、AAV8またはAAV9のいずれか1つと均等な、またはそれより高いパッケージングおよび形質導入効率を持つウイルス粒子を生産する能力により特徴つけられるAAVである。機能はAAV2repおよびAAV2ITRで設定するシュードタイピングで評価することができる。すなわち改変された親のAAVは通例の技術を使用して構築することができ、そしてAAVベクターはAAV2の生産と比べた時、ウイルスが少なくとも50%の力価で親のAAVから生産されるならば、AAVは機能的であると考える。さらにAAVが細胞を形質導入する能力は、当業者により容易に測定され得る。例えば親のAAVは、ウイルスの容易な検出を可能にするマーカー遺伝子を含むように構築することができる。例えばAAVは蛍光検出を可能にするeGFPもしくは他の遺伝子を含む。AAVがCMV−eGFPを含む場合、改変された親のAAVキャプシドから生産されたウイルスが293細胞に104の感染多重度で形質導入された時、機能は細胞が20の感染多重度で2時間、野生型ヒトアデノウイルス5型で前処理される内容で、形質導入効率が全細胞の5%GFP蛍光よりも大きい場合に証明される。
【0020】
適当にはライブラリーは、少なくとも2つの異なるクレードを表す少なくとも3つ、もしくは少なくとも4つの機能的AAVキャプシド配列からなる。好ましくは示した各クレードから少なくとも2つの配列がライブラリーに含まれる。特定の態様では、3、4、5、6以上のクレードが示される。
【0021】
「クレード」は、AAV vp1アミノ酸配列のアライメントに基づきネイバー−ジョイニング(Neighbor−Joining)アルゴリズムを用いて決定した場合に、(少なくとも1000個の複製物の)少なくとも75%のブーツストラップ値および0.05を超えないポアソン補正距離測定値により相互に系統発生的に関連づけられるAAVの一群である。
【0022】
ネイバー−ジョイニングアルゴリズムは文献に広範囲に記載されている。例えばM.Nei and S.Kumar、Molecular Evolution and Phylogenetics(オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、ニューヨーク(2000)を参照されたい。このアルゴリズムを実行するのに使用し得るコンピュータプログラムは入手可能である。例えば、MEGA v2.1プログラムは、修飾Nei−Gojoboriを実行する。これらの技術およびコンピュータプログラム、ならびにAAV vp1キャプシドタンパク質の配列を使用して、当業者は選択したAAVが本明細書で同定されるクレードの1つに含有されるか、別のクレードに含有されるか、若しくはこれらのクレードの外側にあるかどうかを容易に決定し得る。
【0023】
本明細書で定義されるクレードは、天然に存在するAAV vp1キャプシドに主として基づく一方、クレードは天然に存在するAAVに制限されない。クレードは、AAV vp1アミノ酸配列のアライメントに基づいて、ネイバー−ジョイニング アルゴリズム
を用いて決定した場合に、(少なくとも1000個の複製物の)少なくとも75%のおよび0.05を超えないポアソン補正距離測定値により系統発生学的に関連づけられる、組換え、修飾もしくは変更、キメラ、ハイブリッド、合成、人工などのAAVを制限なしに包含する天然に存在しないAAVを包含し得る。
【0024】
本明細書に記載されるクレードは、クレードA(AAV1およびAAV6により代表される)、クレードB(AAV2により代表される)ならびにクレードC(AAV2−AAV3ハイブリッドにより代表される)、クレードD(AAV7により代表される)、クレードE(AAV8により代表される)ならびにクレードF(ヒトAAV9により代表される)を包含する。これらのクレードは、以前に記述されたAAV血清型であるクレードの1メンバーにより代表される。以前に記述されたAAV1およびAAV6は、4種の単離物が3例のヒトから回収された単一クレード(クレードA)のメンバーである。以前に記述されたAAV3およびAAV5血清型は相互と明確に異なるが、しかし本明細書に記述されるスクリーニングで検出されず、また、これらのクレードのいずれにも包含されない。
【0025】
AAVのクレードに関するさらなる考察は、G.Gao, et al.,J.Virol.,78(12):6381−6388(2004年6月)および国際公開第2004/028817号および同第2005/033321号パンフレットに提供されている。参考により本明細書に編入する後者の文書は、新規ヒトAAV配列も提供する。
【0026】
1つの態様では、本発明の方法で使用するライブラリーはAAV5を除外する。別の態様では、本発明の方法で使用するライブラリーはAAV4を除外する。しかし特定の態様、例えば親のAAVがAAV5に類似する場合、これはアライメントにおいてこの配列に含むことが望ましいかもしれない。
【0027】
最少数の配列を含むライブラリーが構築され得るが、シングルトンを同定する効率は、より多い数の配列を含むライブラリーを使用することにより至適化することができる。適当には、ライブラリーは最少4つの配列を含み、少なくとも2つのクレードが示される。好ましくはライブラリーは示される各クレードから少なくとも2つの配列を含む。1つの態様では、ライブラリーは100以上のAAV配列を含む。別の態様では、ライブラリーは少なくとも3〜100のAAV配列を含む。さらに別の態様では、ライブラリーは少なくとも6〜50のAAV配列を含む。
【0028】
本発明の機能的ライブラリーに使用するために適するAAVには、例えばAAV1、AAV2、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9および記載された配列を含む[G.Gao,et al.,Proc Natl Acad Sci.100(10):6081:6086(2003年5月13日);国際公開第2004/042397号および同第2005/033321号パンフレット]。当該技術分野の1つの技術は、他のAAV、例えば国際公開第03/093460A1号パンフレット(2003年11月13日)および米国特許出願第2003−0138772A1号明細書(2003年7月24日)に記載された方法を使用して単離されたものを容易に選択できる。
【0029】
本発明に従い、ライブラリー中少なくとも3つの配列がそれらの並置されたキャプシド配列の完全長にわたり少なくとも85%同一である。
【0030】
用語「パーセント(%)同一性」とは、完全長のタンパク質またはそのフラグメントにわたり、アミノ酸配列について容易に決定され得る。適切には、フラグメントは少なくとも約8アミノ酸長であり、そして約700個までのアミノ酸であることができる。一般に、2つの異なるアデノ随伴ウイルス間の「同一性」、「相同性」もしくは「類似性」を指
す場合、「同一性」、「相同性」もしくは「類似性」は「整列した」に配列に関して決定される。「整列した」配列もしくは「アライメント」は、参照配列に比較して欠けているか、または付加的な塩基若しくはアミノ酸についての補正をしばしば含有する多数の核酸配列もしくはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。
【0031】
アライメントは、多様な公的にもしくは商業的に入手可能な複数の配列アライメントプログラム(Multiple Sequence Aligmnent Program)のいずれかを使用して実施する。配列のアライメントプログラムは、アミノ酸配列について、例えば「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」および「Match−Box」を利用することができる。一般に、これらのプログラムのいずれもデフォルトの設定で使用されるとは言え、当業者はこれらの設定を必要とされるように変更し得る。あるいは当業者は、少なくとも引用されたアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるもののような同一性もしくはアライメントのレベルを提供する別のアリゴリズムもしくはコンピュータプログラムを利用し得る。例えばJ.D.Thomsonら、Nucl.Acids.Res.,「多数の配列アライメントの包括的比較(A comprehensive comparison of multiple sequence alignments)」、27(13):2682−2690(1999)を参照されたい。
【0032】
複数の配列アライメントプログラムは、核酸配列についても利用することができる。こうしたプログラムの例は、「ClustalW」、「CAP Sequence Assembly」、「MAP」および「MEME」を包含し、これらはインターネット上のウェブサーバーを通じてアクセス可能である。こうしたプログラムの他の供給源は当業者に既知である。あるいは、Vector NTIユーティリティーもまた使用される。上述されたプログラムに含有されるものを包含する、ヌクレオチド配列の同一性を測定するのに使用し得る当該技術分野で既知の多数のアルゴリズムもまた存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCG Version6.1中のプログラムFasta(商標)を使用して比較し得る。Fasta(商標)はクエリ配列と参照配列の間の最良の重複領域のアライメントおよび配列の同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列の同一性パーセントは、GCG Version6.1(引用することにより本明細書に組み込まれる)で提供されるそのデフォルトのパラメータ(6のワードサイズおよびスコアリングマトリックスについてのNOPAM係数)を用いるFasta(商標)を使用して決定し得る。
【0033】
本発明に従い、シングルトンを含有すると思われる標的もしくは親AAVキャプシドの配列は、ライブラリー中のAAVキャプシドの配列と比較される。この比較はAAVキャプシドの完全長vp1タンパク質のアライメントを使用して行われる。
【0034】
AAV配列が並べられた時、選択された1つのアミノ酸位について1つのシングルトンが同定される場合、ライブラリー中のすべてのAAVは同じアミノ酸残基を有するが(すなわち完全に保存されている)、親のAAVは異なるアミノ酸残基を有する。
【0035】
典型的にはアライメントがAAVキャプシドvp1タンパク質に基づき準備された場合、アライメントは参照AAV配列(例えばAAV2)に対して挿入および欠失を含み、そしてそのように同定され、そしてアミノ酸残基の番号付けは、アライメントについて提供される参照スケールに基づく。しかし任意の上記AAV配列が参照スケールより少ないアミノ酸残基を有してもよい。本発明では、親のAAVおよび参照ライブラリーの配列を検討する場合、用語「同じ位置」または「対応する位置」は、並置された配列についての参照スケールに関して、各配列中で同じ残基番号に位置するアミノ酸を指す。しかしアライメントから取り出す場合、各AAV vp1タンパク質は、異なる残基番号に位置するこ
れらのアミノ酸を有することができる。
【0036】
場合により、本発明の方法は核酸アライメントを使用し、そして異なるアミノ酸をコードするコドンをシングルトンとして同定することにより行うことができる(すなわち、非類義的コドン)。所定のコドンの核酸配列が、ライブラリー中のそのコドンの配列と比べた時に親のAAVで同一ではないが、同じアミノ酸をコードする場合、それらは類義的と考え、そしてシングルトンではない。
【0037】
本発明に従い、シングルトンを含む親のAAVは、シングルトン残基がライブラリー中のAAVの保存されたアミノ酸残基に置き変えられるように改変される。
【0038】
この置き換えは、可変アミノ酸に関するコドンについて通常の部位特異的突然変異誘発技法を使用することにより都合よく行うことができる。典型的には部位特異的突然変異誘発法は、保存されたアミノ酸残基について所望するコドンを得るために必要なできる限り少ない工程を使用して行われる。そのような方法は当業者には周知であり、そして公開されている方法および/または市販されているキット[例えばストラタジーン(Stratagene)およびプロメガ(Promega)」を使用して行うことができる。部位特異的突然変異誘発法は、AAVゲノム配列について行うことができる。AAV配列は都合よくベクター(例えばプラスミド骨格)により運ばれることができる。あるいは当業者は、当該技術分野で既知の他の技法を使用して親のAAVを改変することができる。
【0039】
親のAAVは1より多くの例えば2、3、4、5、6個以上のシングルトンを有することができる。しかし機能における改善は、1個のシングルトンを補正した後に観察することができる。親のAAVが複数のシングルトンを持つ態様では、各シングルトンを1回で改変し、続いて修飾されたAAVの所望する機能の強化について評価することができる。あるいは所望する機能の強化について評価する前に、複数のシングルトンを改変してもよい。
【0040】
親のAAVが複数のシングルトンを含み、そして機能的改善が第1のシングルトンの改変で観察される場合でも、残りのシングルトン(1もしくは複数)を改変することにより機能を至適化することが望ましいかもしれない。
【0041】
典型的には、本発明の方法に従い改変された1もしくは複数のシングルトンを有する親のAAVが、AAVをAAV粒子にパッケージングすることによる機能について評価される。これらの方法は当業者には周知である。例えばG.Gao et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,(上記引用);Sambrook et al,モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨークを参照にされたい。
【0042】
これらの改変されたAAVは、本発明の方法に従い生産される新規キャプシドを有し、そして機能について評価される。AAV機能を評価するために適切な方法は本明細書に記載され、そして例えばDNAse保護粒子を生産する能力、インビトロ細胞形質導入効率および/またはインビボ遺伝子導入を含む。適切には本発明の改変されたAAVは、親のAAVの機能と比べた時、これらの特性の1つもしくは全部において機能を上げるために改変される十分な数のシングルトンを有する。
【0043】
II.本発明の新規AAV
本発明はさらに新規AAVが機能するかどうかを予想する方法を提供する。この方法には、本発明のシングルトン法を使用すること、および選択したAAVにシングルトンの不
存在を同定すること(すなわちシングルトンを欠くAAVの配列)が関与する。
【0044】
このように1つの態様では、本発明はベクターの生産に使用するためのAAVの選択法を提供する。この方法には、分析のための親のAAVキャプシド配列を選択すること、ならびに親のAAVキャプシド配列および機能的AAVキャプシド配列のライブラリーを含んでなるアライメント中に、親のAAVキャプシド中のシングルトンの不存在を分析し、そして同定することが関与する。いったん選択したAAVキャプシド中にシングルトンの不存在が決定されれば、AAVは既知の技術に従いベクターを生成するために使用することができる。
【0045】
核酸もしくはそのフラグメントを指す場合、「実質的相同性」もしくは「実質的類似性」という用語は、適切なヌクレオチドの挿入もしくは欠失を伴い別の核酸(もしくはその相補鎖)と至適に整列した場合に、該整列した配列の少なくとも約95〜99%にヌクレオチド配列の同一性が存在することを示す。好ましくは、相同性は、完全長配列、もしくはその1オープンリーディングフレーム、または少なくとも15ヌクレオチド長である別の適するフラグメントにわたる。適するフラグメントの例が本明細書に記載される。
【0046】
核酸配列の情況での「配列の同一性」「配列の同一性パーセント」もしくは「同一性パーセント」という用語は、最大の対応のため整列した場合に同じである2配列中の残基を指す。配列の同一性の比較の長さは、ゲノムの完全長、遺伝子コーディング配列の完全長にわたることができ、または少なくとも約500ないし5000ヌクレオチドのフラグメントが望ましい。しかし例えば少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約20〜24ヌクレオチド、少なくとも約28〜32ヌクレオチド、少なくとも約36以上のヌクレオチドのより小さいフラグメント間の同一性もまた望ましいかもしれない。
【0047】
アミノ酸もしくはそれらのフラグメントを指す場合の「実質的相同性」もしくは「実質的類似性」という用語は、適切なアミノ酸の挿入もしくは欠失を伴い別のアミノ酸(もしくはその相補鎖)と至適に整列した場合に、整列した配列の少なくとも約95〜約99%の、そして特定の態様では整列した配列の約97%のアミノ酸配列の同一性が存在することを示す。好ましくは、相同性は完全長配列、もしくはその1タンパク質、例えばcapタンパク質、repタンパク質、または長さが少なくとも8アミノ酸、もしくはより望ましくは少なくとも15アミノ酸であるそのフラグメントにわたる。適するフラグメントの例が本明細書に記載される。
【0048】
「高度に保存された」という用語により、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、およびより好ましくは97%を超える同一性を意味する。同一性は、当業者により既知のアルゴリズムおよびコンピュータプログラムを用いることにより当業者により容易に決定される。
【0049】
「血清型」という用語は、他のAAV血清型と血清学的に異なるキャプシドを有するAAVに関する差違である。血清学的特殊性は、他のAAVと比較して該AAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づき決定される。交差反応性は典型的には中和抗体アッセイで測定する。このアッセイのためには、ウサギもしくは他の適する動物モデルでアデノ随伴ウイルスを使用して特定のAAVに対するポリクローナル血清を生成させる。このアッセイでは、特異的AAVに対し生成させた血清をその後、同一(同種)もしくは異種いずれかのAAVを中和するその能力において試験する。50%中和を達成する希釈を中和抗体力価とみなす。2つのAAVについて、同種の力価により除算した異種の力価の商が相反する様式で16より低い場合は、それら2種のベクターは同一血清型とみなす。逆に、同種の力価に対する異種の力価の比が相反する様式で16もしくはそれより多くである場合、該2種のAAVは異なる血清型とみなす。
【0050】
さらなる態様では、本発明はrh.20、rh.32/33、rh.39、rh.46、rh.73およびrh.74を含む新規キャプシドを有するAAVを提供する。rh.20の配列は配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1の完全長にわたり95〜99%同一の配列を有する。rh.32/33のキャプシドは配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。rh.39のキャプシドは配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。rh.46のキャプシドは配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。rh.73のキャプシドは配列番号5のアミノ酸配列、または配列番号5の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。rh.74のキャプシドは配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6の完全長にわたりそれに95〜99%同一の配列を有する。好ましくはこれら新規AAVキャプシドの配列同一性は、いかなるシングルトンも欠くようなものである。新規AAVの配列は、配列表に提供される。
【0051】
さらに別の態様では、本発明の新規AAV配列にはシングルトン補正(singleton−corrected)AAVキャプシドタンパク質およびこれらキャプシドタンパク質をコードする配列を含む。適切なシングルトン補正AAV配列の例には、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.1.2、rh.8R、rh.48.1、rh.48.2、rh.48.1.2、hu.44R1、hu.44R2hu.44R3、hu.29R、ch.5R1、rh.67、rh.54、hu.48R1、hu.48R2およびhu.48R3を含む。例えばAAV6.1、AAV6.2およびAAV6.12を含むシングルトン補正AAV6は、親のAAV6配列よりも有意に機能が改善されたことを示した。
【0052】
特に望ましいタンパク質には、上に確認したヌクレオチド配列によりコードされるAAVキャプシドタンパク質を含む。AAVキャプシドは、選択的スプライスバリアントである3つのタンパク質、vp1、vp2およびvp3からなる。キャプシドタンパク質の他の望ましいフラグメントは、超可変領域(HVR)間に位置する定常および可変領域を含む。キャプシドタンパク質の他の望ましいフラグメントには、HVR自体を含む。
【0053】
AAV2中の配列の異なる領域を決定するために開発されたアルゴリズムは12個の超可変領域(HVR)を生じ、そのうち5個は4種の以前に記述された可変領域と重複するかもしくはそれらの一部である。[Chioriniら、J.Virol、73:1309−19(1999);Rutledgeら、J.Virol.、72:309−319]このアルゴリズムおよび/若しくは本明細書に記述されるアライメント技術を使用して、新規AAV血清型のHVRを決定する。例えば、該HVRは以下のとおり配置される。すなわち、HVR1、aa146−152;HVR2、aa182−186;HVR3、aa262−264;HVR4、aa381−383;HVR5、aa450−474;HVR6、aa490−495;HVR7、aa500−504;HVR8、aa514−522;HVR9、aa534−555;HVR10、aa581−594;HVR11、aa658−667;およびHVR12、aa705−719[番号付け体系は、AAV2 vp1を参照の点として使用するアライメントに基づく]。Clustal Xプログラムをデフォルトの設定で使用して実施した本明細書に提供されるアライメントを使用して、または、他の商業的にもしくは公的に入手可能なアライメントプログラムを本明細書に記述されるようなデフォルトの設定で使用して、当業者は、本発明の新規AAVキャプシドの対応するフラグメントを容易に決定し得る。
【0054】
適切には、フラグメントは少なくとも8アミノ酸長である。しかし他の望ましい長さのフラグメントも容易に利用することができる。そのようなフラグメントは組換え的または例えば化学合成によるような他の適切な手段により生産することができる。
【0055】
本発明はさらに、本明細書に提供される配列情報を使用して同定される他のAAV配列を提供する。例えば、本明細書に提供される配列を仮定すれば、ゲノム歩行技術(genome walking technology)(Siebert et al.,1995、Nucleic Acid Research、23:1087−1088、Friezner−Degenら、1986、J.Biol.Chem.261:6972−6985、BD Biosciences Clontech、カリフォルニア州パロアルト)を使用して、感染源を単離しうる。ゲノム歩行は、本発明の方法により同定される新規配列に隣接する配列を同定および単離するのにとりわけよく適する。本技術は、本明細書に提供される新規AAVキャプシドおよびrep配列に基づいて新規AAVの逆方向末端反復配列(ITR)を単離するためにもまた有用である。
【0056】
新規AAVアミノ酸配列、ペプチドおよびタンパク質は、本発明のAAV核酸配列から発現させることができる。さらにこれらのアミノ酸配列は、ペプチドおよびタンパク質は、例えば化学合成により、他の合成技術により、もしくは他の方法を包含する当該技術分野で既知の他の方法により生成することができる。本明細書に提供されるいずれのAAVキャプシドの配列も、多様な技術を使用して容易に生成することができる。
【0057】
適する製造後術は当業者に公知である。例えば、Sambrook et al.,モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー出版(コールドスプリングハーバー、ニューヨーク)を参照されたい。あるいは、ペプチドは公知の固相ペプチド合成法(Merrifield、J.Am.Chem.Soc.、85:2149(1962);StewartとYoung、Solid Phase Peptide Synthesis(Freeman、サンフランシスコ、1969)pp.27−62)によってもまた合成することができる。これらおよび他の適する製造方法は当業者の知識内にあり、そして本発明で制限しない。
【0058】
本発明の配列、タンパク質およびフラグメントは、組換え製造、化学合成もしくは他の合成手段を包含するいずれの適する手段によっても製造し得る。こうした製造方法は当業者の知識内にありかつ本発明で制限しない。
【0059】
III.新規AAVキャプシドをもつrAAVの生産
本発明は、シングルトンを同定するための本発明の方法を使用した後、突然変異により生成される新規AAVキャプシド配列を包含する。本発明はさらに新規AAVrh.20、rh.32/33、rh.39、rh.46、rh.73およびrh.74キャプシド配列[配列番号1〜6]を包含する。
【0060】
別の観点では、本発明は、異種遺伝子もしくは他の核酸配列の標的細胞への送達において有用なウイルスベクターの生産のためにそれらのフラグメントを包含する本発明の新規AAV配列を利用する分子を提供する。
【0061】
AAV配列を含有する本発明の分子は、宿主細胞に送達され得るいかなる遺伝要素(ベクター)、例えば、その上で運搬される配列を移入する裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、ウイルス以外の送達ベヒクル(例えば脂質に基づく担体)中のタンパク質、ウイルスなども包含する。
【0062】
選択されたベクターは、トランスフェクション、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNA被覆ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を包含するいずれの適する方法によっても送達し得る。本発明のいずれの態様を構築するのに使用する方法も、核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学および合成技術を
包含する。例えば、Sambrookら、モレキュラークローニング、ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー出版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーを参照されたい。
【0063】
一態様において、本発明のベクターは、とりわけ、本発明のAAVキャプシドもしくはそのフラグメントをコードする配列を含有する。別の態様において、本発明のベクターは少なくともAAV repタンパク質もしくはそのフラグメントをコードする配列を含有する。場合によっては、本発明のベクターはAAV capおよびrepタンパク質双方を含有しうる。AAV repおよびcap双方が提供されるベクターにおいて、AAVrepおよびAAV cap配列は同じクレードのAAVから発し得る。あるいは、本発明は、rep配列がcap配列を提供しているAAV供給源と異なるAAV供給源に由来するベクターを提供する。一態様において、repおよびcap配列は別個の供給源(例えば別個のベクター、もしくは宿主細胞およびベクター)から発現される。別の態様において、これらのrep配列は、異なるAAV供給源のcap配列にインフレームで融合されてキメラAAVベクターを形成する。場合によっては、本発明のベクターは本発明のAAVキャプシドにパッケージングされたベクターである。これらのベクター、および本明細書に記述される他のベクターは、AAV 5’ITRおよびAAV 3’ITRにより挟まれる選択された導入遺伝子を含んでなるミニ遺伝子をさらに含むことができる。
【0064】
従って一態様において、本明細書に記述されるベクターは、単一のAAV配列からでありうる無傷のAAVキャプシドをコードする核酸配列を含有する。あるいはこれらのベクターは、異種AAVもしくはAAV以外のキャプシドタンパク質(またはそれらのフラグメント)に融合されたシングルトン補正AAVキャプシドの1もしくは複数のフラグメントを含有する人工的キャプシドをコードする配列を含有する。これらの人工的キャプシドタンパク質は、シングルトン補正キャプシドの連続しない部分もしくは他のAAVのキャプシドから選択される。これらの改変は、選択された発現系において、または別の所望の目的上(例えば向性を変える、すなわち中和抗体のエピトープを変える)、発現、収量を上げ、かつ/または精製を向上させるはずでありうる。
【0065】
本明細書に記述されるベクター、例えばプラスミドは多様な目的上有用であるが、しかし、AAV配列もしくはそれらのフラグメントを含んでなるキャプシドを含有するrAAVの製造における使用にとりわけ良好に適する。rAAVを包含するこれらのベクター、それらの要素、構築および用途は本明細書に詳細に記述される。
【0066】
一つの観点において、本発明は本発明のAAVキャプシドを有する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法を提供する。こうした方法には、本明細書で定義する本発明の新規AAVキャプシドタンパク質もしくはそのフラグメント;機能的rep遺伝子;少なくともAAV逆方向末端反復配列(ITR)および導入遺伝子から構成されるミニ遺伝子;ならびに該ミニ遺伝子のAAV9/HU.14キャプシドタンパク質中へのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能をコードする核酸配列を含有する宿主細胞を培養することが関与する。
【0067】
AAVミニ遺伝子をAAVキャプシドにパッケージングするために宿主細胞中で培養されることが必要とされる成分は、宿主細胞にtransで供給しうる。あるいは、必要とされる成分(例えばミニ遺伝子、rep配列、cap配列および/もしくはヘルパー機能)の1もしくは複数は、必要とされる成分の1もしくは複数を含有するように当業者に既知の方法を使用して工作された安定な宿主細胞により提供しうる。最適には、こうした安定な宿主細胞は誘導可能なプロモーターの制御下に必要とされる成分(1もしくは複数)を含有することができる。しかし該必要とされる成分(1もしくは複数)は、構成的プロモーターの制御下にあり得る。適する誘導可能なおよび構成的プロモーターの例は、導入
遺伝子との使用に適する調節エレメントの考察で本明細書に提供される。なお別の代替において、選択された安定な宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下の選択された成分(1もしくは複数)および1もしくは複数の誘導可能なプロモーターの制御下の他の選択された成分(1もしくは複数)を含有しうる。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下にE1ヘルパー機能を含有する)由来であるがしかし誘導可能なプロモーターの制御下にrepおよび/もしくはcapタンパク質を含有する安定な宿主細胞を生成することができる。さらに他の安定な宿主細胞を当業者により生成することができる。
【0068】
本発明のrAAVを生産するために必要とされるミニ遺伝子、rep配列、cap配列およびヘルパー機能は、その上で運搬される配列を移入するいずれかの遺伝要素の形態でパッケージング宿主細胞に送達することができる。選択された遺伝要素は、本明細書に記述されるものを包め、いずれの適する方法により送達し得る。本発明のいずれの態様を構築するのに使用される方法も核酸操作の当業者に既知であり、そして遺伝子工学、組換え工学および合成技術を包む。例えば、Sambrookら、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー出版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーを参照されたい。同様に、rAAVビリオンの生成方法は公知であり、そして適する方法の選択は本発明に対する制限でない。例えばK.Fisher et al.,J.Virol.、70:520−532(1993)および米国特許第5,478,745号明細書を参照されたい。
【0069】
他に明記されない限り、AAV ITRおよび本明細書に記載する他の選択されたAAV成分は、限定するわけではないがAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9および本発明の他の新規AAV配列の1種を包含するいかなるAAVの中からも容易に選択しうる。これらのITRもしくは他のAAV成分は、当業者に利用可能な技術を使用してAAV配列から容易に単離することができる。こうしたAAVは単離しうるか、または学術的、商業的もしくは公的な供給源(例えばバージニア州マナサスのアメリカンタイプカルチャーコレクション)から得ることができる。あるいは、AAV配列は、文献、または例えばGenBank(商標)、PubMed(商標)などのようなデータベースで入手可能であるような公表された配列を参照することにより、合成もしくは他の適する手段により得ることができる。
【0070】
A.ミニ遺伝子
ミニ遺伝子は、少なくとも導入遺伝子およびその制御配列、ならびに5’および3’のAAV逆方向末端反復配列(ITR)から構成される。望ましい一態様において、AAV血清型2のITRを使用する。しかしながら他の適する供給源からのITRを選択することもできる。キャプシドタンパク質にパッケージングされかつ選択された宿主細胞に送達されるのはこのミニ遺伝子である。
【0071】
1.導入遺伝子
導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質もしくは他の産物をコードする、導入遺伝子を挟むベクター配列に対し異種の核酸配列である。核酸コーディング配列は、宿主細胞中での導入遺伝子の転写、翻訳および/もしくは発現を可能にする様式で調節成分に操作可能に連結される。
【0072】
導入遺伝子配列の組成は、生じるベクターが投入されるであろう使用に依存する。例えば、1つの型の導入遺伝子配列には、発現に際して検出可能なシグナルを生じるレポーター配列を包含する。こうしたレポーター遺伝子には、限定するわけではないがそれに向けられた高親和性抗体が存在するかもしくは通例の手段により製造され得るβ−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化GFP(EGFP)、クロラムフェニコールアセチ
ルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8を包含する膜結合タンパク質、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質および当該技術分野で公知の他のもの、ならびにとりわけヘマグルチニンもしくはMycからの抗原タグドメインに適切に融合された膜結合タンパク質を含んでなる融合タンパク質をコードするDNA配列を包含する。
【0073】
これらのコーディング配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントと会合される場合に、酵素、X線撮影、比色、蛍光もしくは他の分光学的アッセイ、蛍光標示式細胞分取アッセイ、ならびに酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学を包含する免疫学的アッセイを包含する通例の手段により検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、該シグナルを運搬するベクターの存在はベータ−ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。導入遺伝子が緑色結合タンパク質もしくはルシフェラーゼである場合、該シグナルを運搬するベクターは、ルミノメーターで色もしくは光の産生により視覚的に測定しうる。
【0074】
しかしながら望ましくは、導入遺伝子はタンパク質、ペプチド、RNA、酵素、ドミナントネガティブ変異体もしくは触媒的RNAのような生物学および医学で有用である産物をコードするマーカー以外の配列である。所望のRNA分子は、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒的RNA、siRNA、小分子ヘアピン型RNA、トランス−スプライシングRNAおよびアンチセンスRNAを包含する。有用なRNA配列の一例は、処置した動物で標的とされた核酸配列の発現を阻害もしくは消失させる配列である。典型的には、適する標的配列は腫瘍学的標的およびウイルス性疾患を包含する。こうした標的の例については、以下の免疫原に関する章にて同定される腫瘍学的標的およびウイルスを参照されたい。
【0075】
導入遺伝子は、正常な遺伝子が正常レベルより少なく発現されている欠損、または機能的遺伝子産物が発現されない欠損を包含しうる遺伝子欠損を是正もしくは改善するのに使用することができる。あるいは、導入遺伝子は、該細胞型もしくは宿主中で本来発現されない産物を細胞に提供しうる。好ましい型の導入遺伝子配列は、宿主細胞中で発現される治療用タンパク質もしくはポリペプチドをコードする。さらに本発明は、複数の導入遺伝子を使用することを包含する。特定の状況では、1タンパク質の各サブユニットをコードするために、または異なるペプチドもしくはタンパク質をコードするために異なる導入遺伝子を使用することができる。これはタンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい場合、例えば免疫グロブリン、血小板由来増殖因子もしくはジストロフィンタンパク質に望ましい。細胞が多サブユニットタンパク質を産生するためには、異なるサブユニットのそれぞれを含有する組換えウイルスに細胞を感染させる。あるいはタンパク質の異なるサブユニットを同じ導入遺伝子によりコードすることができる。この場合、単一の導入遺伝子がサブユニットのそれぞれをコードするDNAを含み、各サブユニットのDNAは配列内リボザイム進入部(IRES)により分離される。これは、サブユニットのそれぞれをコードするDNAのサイズが小さい、例えばサブユニットおよびIRESをコードするDNAのサイズの合計が5キロ塩基対未満である場合に望ましい。IRESに対する一代替として、DNAは、翻訳後反応(event)で自己切断する2Aペプチドをコードする配列により分離し得る。例えば、M.L.Donnellyら、J.Gen.Virol.、78(Pt 1):13−21(1997年1月);Furler,S.ら、Gene Ther.、8(11):864−873(2001年6月);Klump H.ら、Gene Ther.、8(10):811−817(2001年5月)を参照されたい。この2AペプチドはIRESより有意により小さく、空間が制限要因である使用にそれを良好に適するようにする。さらにしばしば、導入遺伝子が大きく多サブユニットよりなるか、または2種の導入遺伝子を共送達する場合、所望の導入遺伝子(1種
もしくは複数)またはサブユニットを運搬するrAAVを同時投与して、それらをin vivoで鎖状体化させて単一のベクターゲノムを形成させる。こうした一態様において、第一のAAVは単一の導入遺伝子を発現する発現カセットを運搬することができ、そして第二のAAVは、宿主細胞中での共発現のための異なる導入遺伝子を発現する発現カセットを運搬することができる。しかし選択された導入遺伝子は、いかなる生物学的活性産物もしくは他の産物、例えば研究に所望の産物もコードすることができる。
【0076】
適する導入遺伝子は当業者により容易に選択されうる。導入遺伝子の選択は本発明の制限であると考えられない。
【0077】
2.調節要素
ミニ遺伝子について上で同定された主要素に加え、ベクターは該プラスミドベクターでトランスフェクトしたか、もしくは本発明により生産したウイルスに感染させた細胞中での導入遺伝子の転写、翻訳および/もしくは発現を可能にする様式で導入遺伝子に操作可能に連結されている通例の調節領域も包含する。本明細書で使用される「操作可能に連結されている」配列は、目的の遺伝子と連続する発現制御配列、およびtransでもしくは離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列の双方を包含する。
【0078】
発現制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的RNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに、所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列を包含する。生来、構成的、誘導可能および/もしくは組織特異的であるプロモーターを包含する多数の発現制御配列が当該技術分野で知られ、しかも利用することができる。
【0079】
構成的プロモーターの例は、限定するわけではないがレトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によってはRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によってはCMVエンハンサーを伴う)[例えばBoshart et al.,Cell、41:521−530(1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1プロモーター[インビトロジェン(Invitrogen)]を包含する。誘導可能なプロモーターは遺伝子発現の調節を可能にし、そして外的に供給される化合物、温度のような環境因子、または特定の生理学的状態(例えば急性期、細胞の特定の分化状態、もしくは複製細胞のみの中)の存在により調節し得る。誘導可能なプロモーターおよび誘導可能な系は、限定するわけではないがインビトロジェン、クローンテック(Clontech)およびアライド(Ariad)を含む多様な商業的供給元から入手可能である。多くの他の系が記載され、そして当業者により容易に選択され得る。外的に供給される化合物により調節される誘導可能なプロモーターの例は、亜鉛で誘導可能なヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメサゾン(Dex)で誘導可能なマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系[国際特許公開第WO 98/10088号明細書];エクジソン昆虫プロモーター[No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346−3351(1996)]、テトラサイクリンで抑制可能な系[Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547−5551(1992)]、テトラサイクリンで誘導可能な系[Gossen et al.,Science、268:1766−1769(1995)、またHarvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512−518(1998)も参照されたい]、RU486で誘導可能な系[Wang et al.,Nat.Biotech.、15:239−243
(1997)およびWang et al.,Gene Ther.、4:432−441(1997)]、ならびにラパマイシンで誘導可能な系[Magari et al.,J.Clin.Invest.、100:2865−2872(1997)]を包含する。この内容で有用でありうる他の型の誘導可能なプロモーターは、特定の生理学的状態(例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態、もしくは複製細胞のみの中)により調節されるものである。
【0080】
別の態様において、導入遺伝子の本来のプロモーターを使用することができる。本来のプロモーターは、導入遺伝子の発現が本来の発現を模倣すべきであることが望ましい場合に好ましくなり得る。本来のプロモーターは、導入遺伝子の発現が一時的にもしくは発達的に、または組織特異的様式で、あるいは特定の転写刺激に応答して調節されなければならない場合に使用され得る。さらなる態様では、エンハンサー要素、ポリアデニル化部位もしくはコザックコンセンサス配列のような他の本来の発現調節領域を、本来の発現を模倣するのにもまた使用しうる。
【0081】
導入遺伝子の別の態様は、組織特異的プロモーターに操作可能に連結された遺伝子を包含する。例えば、骨格筋中での発現が望ましい場合は筋中で活性なプロモーターを使用すべきである。これらは、骨格β−アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子からのプロモーター、ならびに天然に存在するプロモーターよりも高い活性をもつ合成の筋プロモーターを包含する(Li et al.,Nat.Biotech.、17:241−245(1999)を参照されたい)。組織特異的であるプロモーターの例は、とりわけ、肝(アルブミン、Miyatake et al.,J.Virol.、71:5124−32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al.,Gene Ther.、3:1002−9(1996);α−フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnot et al.,、Hum.Gene Ther.、7:1503−14(1996))、骨オステオカルシン(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.、24:185−96(1997));骨シアロタンパク質(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.、11:654−64(1996))、リンパ球(CD2、Hansal et al.,J.Immunol.、161:1063−8(1998);免疫グロブリン重鎖;T細胞受容体鎖)、神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.、13:503−15(1993))、神経細糸軽鎖遺伝子(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5611−5(1991))、およびニューロン特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,、Neuron、15:373−84(1995))のような神経について既知である。
【0082】
場合によっては、治療上有用な導入遺伝子を運搬するプラスミドは選択可能なマーカーもまた含んでもよく、またはレポーター遺伝子はとりわけジェネチシン、ハイグロマイシン若しくはピューリマイシン耐性をコードする配列を含むことができる。アンピシリン耐性のような、こうした選択可能なレポーターもしくはマーカー遺伝子(好ましくは本発明の方法によりレスキューされるためにウイルスゲノムの外側に配置される)を、細菌細胞中のプラスミドの存在を知らせるために使用し得る。該プラスミドの他成分には複製起点を含んでもよい。これらおよび他のプロモーターおよびベクター要素の選択は通例であり、そして多くのこうした配列が利用可能である[例えばSambrook et al.,およびその中で引用される参考文献を参照されたい]。
【0083】
導入遺伝子、プロモーター/エンハンサー、ならびに5’および3’のAAV ITRの組み合わせは、言及の容易さのため本明細書で「ミニ遺伝子」と称される。本発明の教示とともに提供されるこうしたミニ遺伝子の設計は、通常の技術を用いることによりなし
得る。
【0084】
3.パッケージング宿主細胞へのミニ遺伝子の送達
ミニ遺伝子は、宿主細胞に送達される任意の適するベクター、例えばプラスミド上で運搬されることができる。本発明で有用なプラスミドは、それらが複製および場合によっては原核生物細胞、哺乳動物細胞、もしくは双方への組込みに適するように工作することができる。これらのプラスミド(もしくは5’AAV ITR−異種分子−3’AAV ITRを運搬する他のベクター)は、真核生物および/もしくは原核生物中でのミニ遺伝子ならびにこれらの系の選択マーカーの複製を可能にする配列を含有する。選択可能なマーカーもしくはレポーター遺伝子は、とりわけ、ジェネチシン、ハイグロマイシンもしくはピューリマイシン耐性をコードする配列を含むことができる。該プラスミドは、アンピシリン耐性のような、細菌細胞中のベクターの存在を知らせるために使用し得るある種の選択可能なレポーターもしくはマーカー遺伝子もまた含んでよい。プラスミドの他成分は複製起点、およびエプスタイン−バーウイルスの核抗原を使用するアンプリコン系のようなアンプリコンを含むことができる。このアンプリコン系もしくは他の類似のアンプリコン成分は、細胞中での高コピーのエピソーム複製を可能にする。好ましくは、ミニ遺伝子を運搬する分子を細胞にトランスフェクトし、それはそこで一過性に存在し得る。あるいはミニ遺伝子(5’AAV ITR−異種分子−3’AAV ITRを運搬する)は、染色体にもしくはエピソームとしてのいずれかで宿主細胞のゲノムに安定に組込まれ得る。特定の態様において、ミニ遺伝子は、場合によっては頭から頭、頭から尾もしくは尾から尾の鎖状体で複数コピーで存在することができる。適するトランスフェクション技術は既知であり、そして宿主細胞にミニ遺伝子を送達するために容易に利用することができる。
【0085】
一般に、ミニ遺伝子を含んでなるベクターをトランスフェクションにより送達する場合、該ベクターは、約5μgから約100μgまでのDNA、約10μgないし約50μgのDNAの量で、約1×104細胞ないし約1×1013細胞、もしくは約1×105細胞に送達する。しかしながら、宿主細胞に対するベクターDNAの相対量は、選択したベクター、送達方法および選択した宿主細胞のような因子を考慮に入れて当業者により調節され得る。
【0086】
B.RepおよびCap配列
ミニ遺伝子に加え、宿主細胞は宿主細胞中での本発明の新規AAVキャプシドタンパク質(もしくはそのフラグメントを含んでなるキャプシドタンパク質)の発現を駆動する配列、およびミニ遺伝子中で見出されるAAV ITRの供給源もしくは交差相補する供給源と同一の供給源のrep配列を含有する。AAVのcapおよびrep配列は、上記AAV供給源から独立に得ることができ、そして、上記の当業者に既知のいずれかの様式で宿主細胞に導入することができる。加えてAAVベクターをシュードタイピングする場合、必須なrepタンパク質のそれぞれをコードする配列を異なるAAV供給源(例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9)により供給しうる。例えば、rep78/68配列はAAV2に由来することができ、一方、rep52/40配列はAAV8に由来するものでよい。
【0087】
一態様において、宿主細胞は、上記のもののような適切なプロモーターの制御下にキャプシドタンパク質を安定に含有する。この態様において最も望ましくは、キャプシドタンパク質が誘導可能なプロモーターの制御下で発現される。別の態様では、キャプシドタンパク質はtransで宿主細胞に供給される。宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質は、選択されたキャプシドタンパク質の宿主細胞中での発現を指図するのに必要な配列を含有するプラスミドを介して送達され得る。最も望ましくは、宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質を運搬するプラスミドはrAAVをパッケージングするのに必要とされる他の配列、例えばrep配列もまた運搬する
。
【0088】
別の態様において、宿主細胞は、上記のもののごとく適するプロモーターの制御下にrep配列を安定に含有する。この態様において最も望ましくは、必須のrepタンパク質が誘導可能なプロモーターの制御下に発現される。別の態様では、repタンパク質はtransで宿主細胞に供給される。宿主細胞にtransで送達される場合、repタンパク質は、選択されたrepタンパク質の宿主細胞中での発現を指図するのに必要な配列を含有するプラスミドを介して送達され得る。最も望ましくは、宿主細胞にtransで送達される場合、キャプシドタンパク質を運搬するプラスミドはrAAVをパッケージングするのに必要とされる他の配列、例えばrepおよびcap配列もまた運搬する。
【0089】
このように一態様において、repおよびcap配列は、単一の核酸分子上で宿主細胞にトランスフェクトされることができ、そして該細胞中で1個のエピソームとして安定に存在しうる。別の態様において、repおよびcap配列は細胞の染色体中に安定に組み込まれる。別の態様は、宿主細胞中で一過性に発現されるrepおよびcap配列を有する。例えばこうしたトランスフェクションのための有用な核酸分子は、5’から3’へ、プロモーター、プロモーターとrep遺伝子配列の開始部位との間に挿入された任意のスペーサー、AAV rep遺伝子配列、およびAAV cap遺伝子配列を含んでなる。
【0090】
場合によっては、repおよび/もしくはcap配列は、宿主細胞中に導入されるべきである他のDNA配列を含有する1ベクター上で供給することができる。例えば、ベクターはミニ遺伝子を含んでなるrAAV構築物を含有し得る。ベクターは、ヘルパー機能をコードする遺伝子、例えばアデノウイルスタンパク質E1、E2aおよびE4 ORF6、ならびにVAI RNAの遺伝子の1種もしくはそれより多くを含むことができる。
【0091】
好ましくは、本構築物で使用されるプロモーターは、当業者に既知の、または上で検討した構成的、誘導可能なもしくは本来のプロモーターのいずれでよい。一態様において、AAV P5プロモーター配列を使用する。これらの配列のいずれかを提供するためのAAVの選択は本発明を制限しない。
【0092】
別の好ましい態様において、repのプロモーターは、導入遺伝子の調節要素に関して上で検討したような誘導可能なプロモーターである。rep発現のための1種の好ましいプロモーターはT7プロモーターである。T7プロモーターにより調節されるrep遺伝子およびcap遺伝子を含んでなるベクターを、T7ポリメラーゼを構成的もしくは誘導可能のいずれかで発現する細胞にトランスフェクトもしくは形質転換する。1998年3月12日公開の国際公開第98/10088号パンフレットを参照されたい。
【0093】
スペーサーはベクターの設計における任意の一要素である。スペーサーは、プロモーターとrep遺伝子のATG開始部位との間に挿入されるDNA配列である。スペーサーは任意の所望の設計を有してもよい。すなわち、それはヌクレオチドの無作為の配列でよく、あるいはそれはマーカー遺伝子のような遺伝子産物をコードしてもよい。スペーサーは開始/終止およびポリA部位を典型的に組み込む遺伝子を含有し得る。スペーサーは、原核生物もしくは真核生物に由来する非コーディングDNA配列、反復非コーディング配列、転写制御を伴わないコーティング配列もしくは転写制御を伴うコーディング配列でよい。スペーサー配列の2種の例示的供給源はファージラダー配列もしくは酵母ラダー配列であり、それらは例えばとりわけギブコ(Gibco)もしくはインビトロジェン(Invitrogen)から市販されている。スペーサーは、rep52、rep40およびcap遺伝子産物を正常レベルで発現されるままにしてrep78およびrep68遺伝子産物の発現を低下させるのに十分ないかなるサイズノものであってもよい。スペーサーの長さは、従って約10bp〜約10.0kbpまで、好ましくは約100bp〜約8.0
kbpの範囲の範囲にわたることができる。組換えの可能性を低下させるため、スペーサーは、好ましくは長さ2kbp未満であるが;しかしながら、本発明はそのように制限されない。
【0094】
repおよびcapを提供する分子(1もしくは複数)は宿主細胞中に一過性に存在しうる(すなわちトランスフェクションにより)が、repおよびcapタンパク質の一方もしくは双方およびそれらの発現を制御するプロモーター(1もしくは複数)が、例えばエピソームとして、もしくは宿主細胞の染色体中への組み込みにより宿主細胞中で安定に発現されることが好ましい。本発明の態様を構築するために使用される方法は、上記参考文献に記載されるもののような通例の遺伝子工学もしくは組換え工学技術である。本明細は本明細書に提供される情報を使用して特定の構築物の具体的に説明する例を提供する一方、当業者は、スペーサー、P5プロモーター、および少なくとも1個の翻訳開始および終止シグナルを包含する他のエレメントの選択、ならびにポリアデニル化部位の任意の付加を使用して、他の適する構築物を選択し、そして設計することができる。
【0095】
本発明の別の態様において、repもしくはcapタンパク質は宿主細胞により安定に提供されうる。
【0096】
C.ヘルパー機能
パッケージング宿主細胞は、本発明のrAAVをパッケージングするためにヘルパー機能をもまた必要とする。場合によっては、これらの機能はヘルペスウイルスにより供給され得る。最も望ましくは、必要なヘルパー機能は、上記されたものおよび/もしくはアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、バージニア州マナサス(米国)を包含する多様な供給元から入手可能であるようなヒトもしくは非ヒトの霊長類のアデノウイルス源からそれぞれ提供される。現在好ましい一態様では、宿主細胞は、E1a遺伝子産物、E1b遺伝子産物、E2a遺伝子産物、および/もしくはE4 ORF6遺伝子産物が提供されかつ/もしくは含有する。宿主細胞はVAI RNAのような他のアデノウイルス遺伝子を含有しうるが、しかしこれらの遺伝子は必要とされない。好ましい一態様において、他のアデノウイルス遺伝子もしくは遺伝子機能は宿主細胞中に存在しない。
【0097】
「E1a遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNA」により、それはE1aもしくはいずれかの機能的E1a部分をコードするいかなるアデノウイルス配列も意味している。E2a遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNAおよびE4 ORF6遺伝子産物を発現するアデノウイルスDNAが同様に定義される。アデノウイルス遺伝子もしくはその機能的部分のいかなる対立遺伝子もしくは他の修飾もまた包含される。こうした修飾は、アデノウイルスの機能を何らかの様式で高めるための通例の遺伝子工学もしくは変異原性技術を用いて意図的に導入することができ、ならびにそれらの天然に存在する対立遺伝子バリアントでありうる。これらのアデノウイルス遺伝子の機能を達成するようにDNAを操作するためのこうした修飾および方法は当業者に既知である。
【0098】
アデノウイルスE1a、E1b、E2aおよび/もしくはE4ORF6遺伝子産物、ならびにいずれかの他の所望のヘルパー機能は、細胞中でのそれらの発現を可能にするいずれの手段を使用しても提供し得る。これらの産物をコードする配列のそれぞれは別個のベクター上にありうるか、または1もしくは複数の遺伝子が同じベクター上にありうる。ベクターは、プラスミド、コスミドおよびウイルスを包含する当該技術分野で既知もしくは上で開示されたいずれかのベクターでありうる。ベクターの宿主細胞中への導入は、とりわけ、トランスフェクション、感染、電気穿孔法、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNA被覆ペレット、ウイルス感染およびプロトプラスト融合を包含する当該技術分野で既知もしくは上で開示されたところのいずれの手段によっても達成しうる。アデノウイルス遺伝子の1もしくは複数が宿主細胞のゲノム中に安定に組み込まれうるか、エピソームと
して安定に発現されうるか、もしくは一過性に発現されうる。遺伝子産物は全部、エピソーム上で一過性に発現されうるか、もしくは安定に組込まれうるか、または遺伝子産物のいくつかが安定に発現されうる一方で他者が一過性に発現される。さらに、アデノウイルス遺伝子のそれぞれのプロモーターは、構成的プロモーター、誘導可能なプロモーターもしくは本来のアデノウイルスプロモーターから独立に選択しうる。プロモーターは、生物体もしくは細胞の特定の生理学的状態(すなわち分化状態により、または複製もしくは静止期細胞で)により、あるいは例えば外的に添加した因子により調節することができる。
【0099】
D.宿主細胞およびパッケージング細胞株
宿主細胞それ自体は、原核生物(例えば細菌)細胞、ならびに昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を含む真核生物細胞を包含する任意の生物学的生物体からも選択し得る。とりわけ望ましい宿主細胞は、限定するわけではないがA549、WEH1、3T3、10T1/2、BHK、MDCK、COS 1、COS 7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、WI38、HeLa、293細胞(機能的アデノウイルスE1を発現する)、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、ならびにヒト、サル、マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを含む哺乳動物由来の初代線維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞のような細胞を含む任意の哺乳動物種のなかから選択する。細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明を限定せず;また、哺乳動物細胞の型、すなわち繊維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞など限定しない。使用される細胞に対する要件は、それがE1、E2aおよび/もしくはE4 ORF6以外のいかなるアデノウイルス遺伝子も運搬せず;それがrAAVの産生の間に汚染するウイルスの相同的組換えをもたらし得るいかなる他のウイルス遺伝子も含有せず;そしてそれがDNAの感染もしくはトランスフェクションおよびトランスフェクトされたDNAの発現が可能であることである。好ましい態様では、宿主細胞は細胞中でrepおよびcapが安定にトランスフェクトされているものである。
【0100】
本発明で有用な一つの宿主細胞は、repおよびcapをコードする配列で安定に形質転換され、かつアデノウイルスE1、E2aおよびE4ORF6 DNAならびに上記のミニ遺伝子を運搬する構築物でトランスフェクトされている宿主細胞である。B−50(国際公開第99/15685号パンフレット)もしくは米国特許第5,658,785号明細書に記述されるもののような安定なrepおよび/もしくはcapを発現する細胞株もまた同様に使用し得る。別の所望の宿主細胞は、E4 ORF6を発現するのに十分である最少のアデノウイルスDNAを含有する。なお他の細胞株を、本発明の新規シングルトン補正AAVcap配列を使用して構築することができる。
【0101】
本発明の宿主細胞の調製は選択されたDNA配列の集成のような技術が関与する。この集成は慣習的技術を利用して達成しうる。こうした技術は、公知でありかつ上で引用されたSambrookらに記載されるcDNAおよびゲノムクローニング、ポリメラーゼ連鎖反応と組合せたアデノウイルスおよびAAVゲノムのオーバーラップオリゴヌクレオチド配列の使用、合成の方法、ならびに所望のヌクレオチド配列を提供する任意の他の適切な方法を包含する。
【0102】
宿主細胞中への(プラスミドもしくはウイルスとしての)分子の導入は、当業者に既知かつ本明細書を通じて検討される技術を使用してもまた達成しうる。好ましい態様において、標準的トランスフェクション技術、例えばCaPO4トランスフェクションもしくは電気穿孔法、および/またはヒト胎児由来腎臓細胞株HEK293(transに作用するE1タンパク質を提供する機能的アデノウイルスE1遺伝子を含有するヒト腎細胞株)のような細胞株中へのハイブリッドアデノウイルス/AAVベクターによる感染を使用する。
【0103】
当業者は、本発明の新規AAV配列をこれらおよびin vitro、ex vivoもしくはin vivo遺伝子送達のための他のウイルスベクター系での使用に容易に適合させ得ることを理解するであろう。同様に、当業者は、多様なrAAVおよびrAAV以外のベクター系での使用のために本発明のAAVゲノムの他のフラグメントを容易に選択することができる。こうしたベクター系は、例えば、とりわけ例えばレンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルスおよびアデノウイルス系を包含しうる。これらのベクター系の選択は本発明を制限しない。
【0104】
従って、本発明はさらに、本発明の新規AAVの核酸およびアミノ酸配列を使用して生成されるベクターを提供する。こうしたベクターは、治療的分子の送達およびワクチン処方での使用のためを包含する多様な目的上有用である。本発明の新規AAVのキャプシドを含有する組換えAAVが治療的分子の送達にとりわけ望ましい。これら、もしくは本発明の新規AAV配列を含有する他のベクター構築物を、ワクチン処方、例えばサイトカインの同時送達、もしくは免疫原それ自体の送達に使用しうる。
【0105】
IV.組換えウイルスおよびそれらの用途
本明細書に記載される技術を使用して、当業者は本発明のAAVのキャプシドを有する、または本発明のAAVの1もしくは複数のフラグメントを含有するキャプシドを有するrAAVを生成することができる。一態様において、シングルトン補正AAVからの完全長のキャプシドを利用し得る。
【0106】
A.ウイルスの送達
別の観点では、本発明は、本発明のシングルトン補正AAV(もしくはその機能的フラグメント)を用いて生成した組換えウイルスベクターで選択された宿主細胞をトランスフェクトもしくは感染させることが関与する、宿主への導入遺伝子の送達方法を提供する。送達方法は当業者に公知でありかつ本発明を制限しない。
【0107】
望ましい一態様において、本発明は宿主への導入遺伝子のAAVに媒介される送達方法を提供する。本方法は、選択された導入遺伝子の発現を指図する配列の制御下に選択された導入遺伝子およびキャプシドの修飾されたタンパク質を含有する組換えウイルスベクターで、選択された宿主細胞をトランスフェクトもしくは感染させることが関与する。
【0108】
場合によっては、宿主からのサンプルを、選択されたAAV供給源(例えば血清型)に対する抗体の存在について最初にアッセイしてもよい。中和抗体を検出するための多様なアッセイ形式が当業者に公知である。このようなアッセイの選択は本発明を制限しない。例えば、Fisher et al.,Nature Med.,3(3):306−312(1997年3月)およびW.C.Manning et al,Human Gene Therapy、9:477−485(1998年3月1日)を参照されたい。このアッセイの結果を使用して、特定の供給源のキャプシドタンパク質を含有するどのAAVベクターが送達に好ましいかを、例えばそのキャプシド供給源に特異的な中和抗体の不存在により決定することができる。
【0109】
本方法の一つの観点において、本発明のAAVキャプシドタンパク質を含むベクターの送達は、異なるAAVキャプシドタンパク質を含むベクターを介する遺伝子の送達に先行して、もしくはその後に続いてもよい。従って、rAAVベクターを介する遺伝子送達を、選択された宿主細胞への反復遺伝子送達に使用しうる。望ましくは、その後投与されるrAAVベクターは第一のrAAVベクターと同じ導入遺伝子を運搬するが、しかしその後投与されるベクターは第一のベクターと異なる供給源(および好ましくは異なる血清型)のキャプシドタンパク質を含有する。例えば、第一のベクターがシングルトン補正キャプシドタンパク質を有する場合、その後投与されるベクターは他のAAVのなかから、場
合によっては別の血清型もしくは別のクレードから選択されるキャプシドタンパク質を有することができる。
【0110】
場合によっては、複数のrAAVベクターを使用して、in vivoで鎖状体化して単一のベクターゲノムを形成するrAAVベクターの同時投与により大型の導入遺伝子もしくは複数の導入遺伝子を送達することができる。こうした一態様において、第一のAAVは単一導入遺伝子(もしくはその1サブユニット)を発現する発現カセットを運搬することができ、そして、第二のAAVは宿主細胞中での同時発現のため第二の導入遺伝子(もしくは異なるサブユニット)を発現する発現カセットを運搬しうる。第一のAAVは多シストロン性の構築物の第一の一片(例えばプロモーターおよび導入遺伝子もしくはサブユニット)である発現カセットを運搬することができ、そして第二のAAVは多シストロン性の構築物の第二の一片(例えば導入遺伝子もしくはサブユニットおよびポリA配列)である発現カセットを運搬しうる。多シストロン性の構築物のこれら二片がin vivoで鎖状体化して、第一および第二のAAVにより送達される導入遺伝子を共発現する単一のベクターゲノムを形成する。こうした態様では、第一の発現カセットを運搬するrAAVベクターおよび第二の発現カセットを運搬するrAAVベクターを単一の製薬学的組成物中で送達し得る。他の態様では、2以上のrAAVベクターが実質的に同時にまたは互いに直前もしくは後に投与しできる別個の製薬学的組成物として送達される。
【0111】
上記の組換えベクターは、公表された方法に従って宿主細胞に送達することができる。好ましくは生理学的に適合性の担体に懸濁したrAAVを、ヒトもしくは非ヒトの哺乳動物患者に投与し得る。適する担体は、移入ウイルスが向けられる適応症を鑑みて当業者により容易に選択され得る。例えば、一つの適する担体には、多様な緩衝溶液とともに配合できる生理的食塩水を包含する(例えばリン酸緩衝生理的食塩水)。他の例示的担体は、滅菌生理的食塩水、乳糖、ショ糖、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ラッカセイ油、ゴマ油および水を包含する。担体の選択は本発明を制限しない。
【0112】
場合によっては本発明の組成物は、rAAVおよび担体(1もしくは複数)に加え、保存剤もしくは化学的安定剤のような他の通例の製薬学的成分を含有してもよい。適する例示的保存剤はクロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化イオウ、没食子酸プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールを包含する。適する化学的安定剤はゼラチンおよびアルブミンを包含する。
【0113】
該ベクターは、細胞をトランスフェクトしかつ過度の有害な影響を伴わずにもしくは医学分野の当業者により決定され得る医学的に許容され得る生理学的効果を伴い治療上の利益を提供するのに十分なレベルの遺伝子導入および発現を提供するのに十分な量で投与される。慣習的および製薬学的に許容され得る投与経路には、限定するわけではないが所望の器官(例えば肝(場合によっては肝動脈を介して)もしくは肺)への直接送達、経口、吸入、鼻内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および他の非経口投与経路を挙げることができる。投与経路は所望の場合に組み合わせてもよい。
【0114】
ウイルスベクターの投薬用量は、主として処置されている状態、患者の齢、体重および健康状態のような因子に依存することができ、そして従って患者間で変動することができる。例えばウイルスベクターの治療上有効なヒトへの投薬用量は、一般に、約1×109から1×1016までのゲノムウイルスベクターの濃度を含有する約0.1mLから約100mLまでの溶液の範囲にある。大型の器官(例えば肝、筋、心および肺)への送達に好ましいヒト投薬用量は、約1ないし100mLの容量で1kgあたり約5×1010ないし5×1013AAVゲノムでありうる。眼への送達に好ましい投薬用量は、約0.1mLないし1mLの容量で約5×109ないし5×1012ゲノムコピーである。投薬用
量は、いかなる副作用に対して治療上の利益の均衡を調節することができ、そしてこうした投薬量は組換えベクターを使用する治療的応用に依存して変動してよい。導入遺伝子の発現のレベルをモニターして、ウイルスベクター、好ましくはミニ遺伝子を含有するAAVベクターをもたらす投薬頻度を決定することができる。場合によっては、治療の目的上記載されるものに類似の投薬用量計画を、本発明の組成物を使用する免疫感作に利用できる。
【0115】
本発明のAAV含有ベクターによる送達のための治療的生成物および免疫原性生成物の例を下に提供する。これらのベクターは、本明細書に記載する多様な治療もしくはワクチン処方に使用できる。加えて、これらのベクターは所望の治療および/もしくはワクチン処方中で1もしくは複数の他のベクターもしくは有効成分と組合せで送達してもよい。
【0116】
B.治療的導入遺伝子
導入遺伝子によりコードされる有用な治療用生成物には、限定するわけではないがインスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン成長因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGFα、アクチビン、インヒビンを包含するトランスフォーミング成長因子αスーパーファミリーのいずれか1種、もしくは骨形成タンパク質(BMP)BMP1〜15のいずれか、成長因子のヘレグルイン/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1種、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3およびNT−4/5、絨毛様神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのいずれか1種、ネトリン−1およびネトリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグならびにチロシン加水分解酵素を制限なしに包含するホルモンならびに増殖および分化因子を包含する。
【0117】
他の有用な導入遺伝子産物は、限定するわけではないがトロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1からIL−25(例えばIL−2、IL−4、IL−12およびIL−18を包含する)、単球化学遊走物質タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドのようなサイトカインおよびリンホカインを包含する免疫系を調節するタンパク質を含む。免疫系により産生される遺伝子産物もまた本発明で有用である。これらには、限定するわけではないが免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子、ならびに工作された免疫グロブリンおよびMHC分子を含む。また有用な遺伝子産物は、補体調節タンパク質、膜補助因子タンパク質(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59のような補体調節タンパク質も含む。
【0118】
さらに他の有用な遺伝子産物は、ホルモン、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質および免疫系タンパク質の受容体のいずれか1種を包含する。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、高密度リポタンパク質(HDL)受容体、超低密度リポタンパク質(VLDL)受容体およびスカベンジャー受容体を包含するコレステロール調節および/または脂質調節のための受容体を包含する。また本発明は、グルココ
ルチコイド受容体およびエストロゲン受容体、ビタミンD受容体ならびに他の核受容体を包含するステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーのような遺伝子産物も包含する。加えて、有用な遺伝子産物は、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP−1、AP2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETSボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATAボックス結合タンパク質、例えばGATA−3、ならびに翼状らせんタンパク質のフォークヘッドファミリーのような転写因子を包含する。
【0119】
他の有用な遺伝子産物は、カルバモイル合成酵素1、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸合成酵素、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸加水分解酵素、フェニルアラニン水酸化酵素、α−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素、シスタチオンβ−合成酵素、分枝状鎖ケト酸脱炭酸酵素、アルブミン、イソバレリル−coA脱水素酵素、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoA脱水素酵素、インスリン、β−グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシン脱炭酸酵素、H−プロテイン、T−プロテイン、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)配列、およびジストロフィン遺伝子産物[例えばミニもしくはミクロジストロフィン]を包含する。なお他の有用な遺伝子産物は、酵素の不足した活性から生じる多様な状態に有用である酵素補充療法で有用でとなり得るような酵素を包含する。例えば、マンノース−6−リン酸を含有する酵素は、リソゾーム蓄積症(例えば適する遺伝子はβ−グルクロニダーゼ(GUSB)をコードするものを包含する)の治療で利用することができる。
【0120】
なお他の有用な遺伝子産物は、血友病B(第IX因子を包含する)および血友病A(第VIII因子およびヘテロ二量体のL鎖およびH鎖およびB欠損ドメインのようなそのバリアントを包含する;米国特許第6,200,560号および同第6,221,349号明細書)を包含する血友病の処置に使用されるものを含む。第VIII因子遺伝子は2351アミノ酸をコードし、そして該タンパク質は6ドメインを有し、アミノから末端のカルボキシ末端までA1−A2−B−A3−C1−C2と呼称される[Wood et al.,Nature、312:330(1984);Vehar et al,Nature 312:337(1984);およびToole et al,Nature、342:337(1984)]。ヒト第VIII因子は細胞内でプロセシングされて、A1、A2およびBドメインを含有するH鎖ならびにA3、C1およびC2ドメインを含有するL鎖を主として含んでなるヘテロ二量体を生じる。一本鎖ポリペプチドおよびヘテロ二量体の双方が、Bドメインを遊離しかつA1およびA2ドメインよりなるH鎖をもたらすA2ドメインとBドメインの間のトロンビン切断により活性化されるまで、不活性前駆体として血漿中を循環する。Bドメインは活性化された凝血原の形態のタンパク質では除去されている。加えて、本来のタンパク質中でBドメインを挟む2本のポリペプチド鎖(「a」および「b」)は二価のカルシウム陽イオンに結合している。
【0121】
いくつかの態様において、ミニ遺伝子は10アミノ酸のシグナル配列をコードする第VIII因子H鎖の最初の57塩基対、ならびにヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化配列を含んでなる。代替の態様において、ミニ遺伝子はA1およびA2ドメイン、ならびにBドメインのN末端からの5アミノ酸および/もしくはBドメインのC末端の85アミノ酸、ならびにA3、C1およびC2ドメインをさらに含んでなる。さらに他の態様において、第VIII因子H鎖およびL鎖をコードする核酸が、Bドメインの14アミノ酸をコードする42核酸により分離される単一のミニ遺伝子で提供される[米国特許第6,200,560号明細書]。
【0122】
本明細書で使用される治療上有効な量は、個体の血液が凝固するのにかかる時間を短縮するのに十分な量の第VIII因子を産生するAAVベクターの量である。一般に、正常レベルの第VIII因子の1%未満を有する重症の血友病患者は、非血友病患者についてのおよそ10分に比較して60分より長い全血凝固時間を有する。
【0123】
本発明はいかなる特定の第VIII因子配列にも制限されない。多くの天然のおよび組換えの形態の第VIII因子が単離かつ生成されている。天然に存在するおよび組換えの形態の第VII因子の例は、米国特許第5,563,045号、同第5,451,521号、同第5,422,260号、同第5,004,803号、同第4,757,006号、同第5,661,008号、同第5,789,203号、同第5,681,746号、同第5,595,886号、同第5,045,455号、同第5,668,108号、同第5,633,150号、同第5,693,499号、同第5,587,310号、同第5,171,844号、同第5,149,637号、同第5,112,950号、同第4,886,876号明細書;国際公開第94/11503号、同第87/07144号、同第92/16557号、同第91/09122号、同第97/03195号、同第96/21035号および同第91/07490号パンフレット;欧州特許出願第EP 0 672 138号、同第EP 0 270 618号、同第EP 0 182 448号、同第EP 0 162 067号、同第EP 0 786 474号、同第EP 0 533 862号、同第EP 0 506 757号、同第EP 0 874 057号、同第EP 0 795 021号、同第EP 0 670 332号、同第EP 0 500 734号、同第EP 0 232 112号および同第EP 0 160 457号明細書;Sanberg et al.,XXth Int.Congress of the World Fed.Of Hemophilia(1992)、ならびにLind et al.,Eur.J.Biochem.、232:19(1995)を含む特許および学術文献に見出し得る。
【0124】
上述された第VIII因子をコードする核酸配列は、組換えの方法を使用して、または該配列を包含することが既知のベクターから誘導することにより得ることができる。さらに、所望の配列は、フェノール抽出およびcDNAもしくはゲノムDNAのPCRのような標準的技術を使用して、それを含有する細胞および組織から直接単離することができる[例えばSambrook et alを参照されたい]。ヌクレオチド配列はまた、クローン化されるよりはむしろ合成で製造し得る。完全な配列は、標準的方法により製造したオーバーラップオリゴヌクレオチドから集成し得、そして完全なコーディング配列に集成し得る[例えば、Edge、Nature 292:757(1981);Nambari et al,Science、223:1299(1984);およびJay et al,J.Biol.Chem.259:6311(1984)を参照されたい。
【0125】
さらに、本発明はヒト第VIII因子に制限されない。事実、本発明は限定するわけではないがコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコおよびウマ)、家畜(例えばウシ、ヤギおよびヒツジ)、実験動物、海棲哺乳類、大型のネコなどを挙げることができるヒト以外の動物からの第VIII因子を包含することを意図している。
【0126】
AAVベクターは、それ自体生物学的に活性でないがそれでもなお個体に投与される場合に血液凝固時間を改良もしくは復帰させる第VIII因子のフラグメントをコードする核酸を含有することができる。例えば上で検討したように、第VIII因子タンパク質は2個のポリペプチド鎖、すなわちプロセシングの間に切断されるBドメインにより分離されたH鎖およびL鎖を含んでなる。本発明により示されるとおり、第VIII因子の重および軽鎖でレシピエント細胞を同時形質導入することは、生物学的に活性の第VIII因子の発現に至る。大部分の血友病患者は該鎖の一方(例えば重もしくは軽鎖)のみに突然
変異もしくは欠失を含有するため、患者において欠損の鎖のみを投与して他方の鎖を供給することが可能でありうる。
【0127】
他の有用な遺伝子産物は、挿入、欠失もしくはアミノ酸置換を含有する自然に存在しないアミノ酸配列を有するキメラもしくはハイブリッドポリペプチドのような自然に存在しないポリペプチドを含む。例えば、一本鎖の工作された免疫グロブリンはある種の免疫無防備状態の患者で有用であり得る。他の型の天然に存在しない遺伝子配列は、アンチセンス分子、および標的の過剰発現を低下させるのに使用し得るリボザイムのような触媒的核酸を包含する。
【0128】
遺伝子の発現の低下および/もしくは調節は、癌および乾癬がそうであるように、過剰増殖する細胞を特徴とする過剰増殖状態の処置にとりわけ望ましい。標的ポリペプチドは、正常細胞と比較して過剰増殖細胞中で排他的にもしくはより高レベルで産生されるポリペプチドを包含する。標的抗原は、myb、myc、fynのような癌遺伝子、ならびに転位遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trkおよびEGRFによりコードされるポリペプチドを包含する。標的抗原としての癌遺伝子産物に加え、抗癌処置および保護的レジメンの標的ポリペプチドは、B細胞リンパ腫により作成される抗体の可変領域およびT細胞リンパ腫のT細胞受容体の可変領域を包含し、それらは、いくつかの態様において自己免疫疾患の標的抗原としてもまた使用される。モノクローナル抗体17−1Aにより認識されるポリペプチドおよび葉酸結合ポリペプチドを包含する、腫瘍細胞中でより高レベルで見出されるポリペプチドのような、他の腫瘍関連ポリペプチドを標的ポリペプチドとして使用することができる。
【0129】
他の適する治療的ポリペプチドおよびタンパク質は、細胞受容体および「自己」に向けられた抗体を産生する細胞を包含する自己免疫と関連する標的に対する広範囲にわたる保護免疫応答を与えることにより、自己免疫疾患および障害に罹患している個体を処置するのに有用でありうるものを包含する。T細胞媒介性の自己免疫疾患は、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、脈管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、クローン病および潰瘍性大腸炎を包含する。これらの疾患のそれぞれは、内因性抗原に結合しかつ自己免疫疾患に関連する炎症カスケードを開始するT細胞受容体(TCR)を特徴とする。
【0130】
C.免疫原性導入遺伝子
適当には、本発明のAAVベクターは、該ベクター内に含有されるAAV配列に対する免疫応答の生成を回避する。しかしこれらのベクターは、それにもかかわらず、該ベクターにより運搬される導入遺伝子の発現して選択された抗原に対する免疫応答を誘導できるようにする様式で配合することができる。例えば免疫応答を促進するため、導入遺伝子は構成的プロモーターから発現させることができ、ベクターは本明細書に記述されるとおり免疫増強し(adjuvanted)得、かつ/もしくは該ベクターを変性組織に置くことができる。
【0131】
適する免疫原性導入遺伝子の例は多様なウイルス科から選択されるものを包含する。免疫応答が望ましいとみられる所望のウイルス科の例は、一般的な風邪の症例の約50%の原因であるライノウイルス属を包含するピコルナウイルス科;ポリオウイルス、コックサッキーウイルス、エコーウイルスおよびA型肝炎ウイルスのようなヒトエンテロウイルスを包含するエンテロウイルス属;ならびに主としてヒト以外の動物での口蹄疫の原因であるアプトウイルス属を包含する。ウイルスのピコルナウイルス科内で、標的抗原はVP1、VP2、VP3、VP4およびVPGを包含する。他のウイルス科はアストロウイルスおよびカルシウイルス科を包含する。カルシウイルス科は、流行性胃腸炎の重要な原因病
原体であるノーウォーク群のウイルスを包含する。ヒトおよびヒト以外の動物で免疫応答を誘導するための抗原の標的設定での使用に望ましいさらに別のウイルス科は、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、ならびにベネズエラ、東部および西部ウマ脳炎ウイルスを包含するアルファウイルス属、ならびに風疹ウイルスを包含するルビウイルス属を包含するトガウイルス科である。フラビウイルス科は、デング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎およびダニ媒介脳炎ウイルスを包含する。他の標的抗原は、C型肝炎ウイルス、または感染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸ウイルス(ブタ)、ブタヘマグルチナチン(hemagglutinatin)脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ感染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)のような多数のヒト以外のウイルス、ならびに、一般的な風邪および/または非A、BもしくはC型肝炎を引き起こすことがありかつ重症急性呼吸器症候群(SARS)の推定の原因を包含するヒト呼吸器コロナウイルスを包含するコロナウイルス科から生成しうる。コロナウイルス科内で、標的抗原は、E1(Mすなわちマトリックスタンパク質ともまた呼ばれる)、E2(Sすなわちスパイクタンパク質ともまた呼ばれる)、E3(HEすなわちヘマグルチン−エルテロース(elterose)ともまた呼ばれる)糖タンパク質(全部のコロナウイルスに存在するわけではない)、またはN(ヌクレオキャプシド)を包含する。さらに他の抗原はアルテリウイルス科およびラブドウイルス科を標的としうる。ラブドウイルス科は、ベシクロウイルス属(例えば水疱性口内炎ウイルス)および一般的なリッサウイルス(例えば狂犬病)を包含する。ラブドウイルス科内で、適する抗原はGタンパク質もしくはNタンパク質に由来しうる。マルブルクおよびエボラウイルスのような出血性熱ウイルスを包含するフィロウイルス科が抗原の適する供給源となりうる。パラミクソウイルス科は、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹およびイヌジステンパーを包含するモルビリウイルス、ならびにRSウイルスを包含するニューモウイルスを包含する。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科内で分類され、そして抗原の適する供給源である(例えばHAタンパク質、N1タンパク質)。ブニヤウイルス科は、ブニヤウイルス(カリフォルニア脳炎、ラクロス)、フレボウイルス(ケニヤ出血熱)、ハンタウイルス(プレマラはヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス(ナイロビ羊病)属および多様な特定の属に割り当てられていないブンガウイルス(bungaviruse)含む。アレナウイルス科はLCMおよびラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。抗原の別の供給源はボルナウイルス科である。レオウイルス科は、レオウイルス、ロタウイルス(小児で急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルスおよびクルチウイルス(cultivirus)(コロラドダニ熱、レボンボ(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)属を包含する。レトロウイルス科は、ネコ白血病ウイルス、HTLVIおよびHTLVII、レンチビリナル(lentivirinal)(HIV、サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ウマ感染性貧血ウイルスおよびスプマビリナル(spumavirinal)を包含する)のようなヒトおよび家畜の疾患を包含するオンコウイルス(oncovirinal)亜科を包含する。
【0132】
HIVおよびSIVに関して、多くの適切な抗原が記載され、そして容易に選択され得る。適切なHIVおよびSIV抗原の例には、限定するわけではないが、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、TatおよびRevタンパク質ならびにそれらの種々のフラグメントを含む。例えばエンベロープ(env)タンパク質の適切なフラグメントには、例えばgp41、gp140およびgp120を含む。さらにこれらおよび他のHIVおよびSIV抗原に対する種々の修飾が記載された。この目的に適する抗原は当業者には既知である。例えば他のタンパク質の中でもgag、pol、VifおよびVpr、Env、TatおよびRevをコードする配列を選択することができる。例えば米国特許第5,972,596号明細書に記載されている修飾されたgagタンパク質を参照に
されたい。またD.H.Barouch,et al,J.Viol.,75(5):2462−2467(2001年3月)、およびR.R.Amara,et al,Science,292:69−74(2001年4月6日)に記載されているHIVおよびSIVタンパク質を参照されたい。これらのタンパク質またはそのサブユニットは、単独で、または別のベクターを介してもしくは単一ベクターから組み合わせて送達され得る。
【0133】
パボーバウイルス科は、ポリオーマウイルス亜科(BKUおよびJCUウイルス)ならびにパピローマウイルス亜科(癌もしくは乳頭腫の悪性の進行と関連する)を包含する。アデノウイルス科は呼吸器疾患および/もしくは腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)を包含する。パルボウイルス科はネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルスおよびブタパルボウイルスを包含する。ヘルペスウイルス科は、シンプレックスウイルス(HSVI、HSVII)、ワリセロウイルス(偽性狂犬病、帯状疱疹)属を包含するアルファヘルペスウイルス亜科、およびサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス)を包含するベータヘルペスウイルス亜科、ならびにリンホクリプトウイルス、EBV(バーキットリンパ腫)、6A、6Bおよび7型ヒトヘルペスウイルス、カポシ肉腫関連のヘルペスウイルスならびにセルコピテシン(cercopithecine)ヘルペスウイルス(Bウイルス)、感染性鼻気管炎、マレック病ウイルスならびにラディノウイルス属を包含するガンマヘルペスウイルス亜科を包含する。ポックスウイルス科は、オルトポックスウイルス(大疱瘡(天然痘)およびワクシニア(牛痘))、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス属を包含するチョルドポックスウイルス亜科、ならびにエントモポックスウイルス亜科を包含する。ヘパドナウイルス科はB型肝炎ウイルスを包含する。抗原の適する供給源となりうる1種の分類されないウイルスは、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスおよびプリオンである。抗原の供給源となる別のウイルスはニパンウイルスである。なお他のウイルス供給源は、トリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスおよびブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルスを包含しうる。アルファウイルス科はウマ動脈炎ウイルスおよび多様な脳炎ウイルスを包含する。
【0134】
本発明は、ヒトおよびヒト以外の脊椎動物を感染させる細菌、真菌、寄生性微生物もしくは多細胞寄生生物を包含する他の病原体に対しヒトもしくはヒト以外の動物を免疫するのに有用であるか、または癌細胞もしくは腫瘍細胞からである免疫原もまた包含しうる。細菌性病原体の例は、病原性グラム陽性球菌は肺炎球菌;ブドウ球菌(およびそれにより産生されるトキシン、例えばエンテロトキシンB);ならびに連鎖球菌を包含するを包含する。病原性のグラム陰性球菌は、髄膜炎菌;淋菌を包含する。病原性の腸グラム陰性桿菌は、腸内細菌科;シュードモナス、アシネトバクテリア(acinetobacteria)およびエイケネラ(eikenella);類鼻疽;サルモネラ(salmonella);シゲラ(shigella);ヘモフィルス(haemophilus);モラクセラ(moraxella);軟性下疳菌(H.ducreyi)(軟性下疳を引き起こす)、ブルセラ(brucella)種(ブルセラ症);野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病を引き起こす);ペスト菌(Yersinia pestis)(ペスト)および他のエルジニア(yersinia)(パスツレラ);ストレプトバチルス モニリフォルミス(streptobacillus moniliformis)およびスピリルムを包含し;グラム陽性桿菌はリステリア モノシトゲネス(listeria monocytogenes);エリジペロスリックス ルシパチエ(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ;炭疽菌(B.anthracis)(炭疽);ドノヴァン症(鼠径部肉芽腫);およびバルトネラ症を包含する。病原性嫌気性細菌により引き起こされる疾患は、破傷風;ボツリヌス中毒(クロストリズム ボツリヌム(Clostridum botulinu
m)およびそのトキシン);ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)およびそのεトキシン;他のクロストリジウム属;結核;らい;ならびに他のミコバクテリアを包含する。病原性のスピロヘータ疾患は梅毒;トレポネーマ症;イチゴ腫、ピンタおよび風土病性梅毒;ならびにレプトスピラ症を包含する。より高病原性の細菌および病原性真菌により引き起こされる他の感染症は、鼻疽(バークホルデリア マレイ(Burkholderia mallei));放線菌症;ノカルジア症;クリプトコックス症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症およびコクシジオイデス真菌症;カンジダ症、アスペルギルス症およびムコール症;スポロトリクス症;パラコクシジオイデス真菌症、ペトリエリジオーシス(petriellidiosis)、トルロプシス症、菌腫およびクロモミコーシス;ならびに皮膚糸状菌症を包含する。リケッチア感染症は、発疹チフス、ロッキー山熱、Q熱(コクシエラ ブルネティ(Coxiella burnetti))およびリケッチア痘を包含する。マイコプラスマおよびクラミジア感染症の例は:マイコプラスマ肺炎;性病性リンパ肉芽腫;オウム病;および周産期クラミジア感染症を包含する。病原性真核生物は病原性原生動物および蠕虫を包含し、また、それらにより生じられる感染症は:アメーバ症;マラリア;リーシュマニア;トリパノソーマ症;トキソプラスマ症;ニューモシスチス カリニ(Pneumocystis carinii);Trichans;トキソプラスマ(Toxoplasma gondii);バベシア症;ジアルジア症;旋毛虫症;フィラリア症;住血吸虫症;線虫;吸虫(trematodes)すなわち吸虫(flukes);および条虫(cestode)(条虫(tapeworm))感染症を包含する。
【0135】
これらの生物体および/もしくはそれらにより産生されるトキシンの多くは、生物学的攻撃での使用のための潜在性を有する作用物質として疾病対策センター(Centers
for Disease Control)[(CDC)、米国保健省の部門]により同定された。例えば、これらの生物学製剤のいくつかは、炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびそのトキシン(ボツリヌス中毒)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ペスト)、大疱瘡(天然痘)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)、ならびにウイルス性出血熱[フィロウイルス(例えばエボラ、マルブルク]、ならびにアレナウイルス[例えばラッサ、マチュポ])(それらの全部は現在カテゴリーAの作用物質に分類されている);コクシエラ ブルネティ(Coxiella burnetti)(Q熱);ブルセラ属(Brucella)の種(ブルセラ症)、バークホルデリア マレイ(Burkholderia mallei)(鼻疽)、バークホルデリア シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)(類鼻疽)、トウゴマ(Ricinus communis)およびそのトキシン(リシントキシン)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)およびそのトキシン(イプシロン トキシン)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)の種およびそれらのトキシン(エンテロトキシンB)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)(オウム病)、水の安全性に対する脅威(例えばコレラ菌(Vibrio cholerae)、クリトスポリジウム パルブム(Crytosporidium parvum))、発疹チフス(発疹チフスリケッチア(Richettsia powazekki))、ならびにウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えばベネズエラウマ脳炎;東部ウマ脳炎;西部ウマ脳炎);(それらの全部は現在カテゴリーBの作用物質として分類されている);ならびにニパンウイルスおよびハンタウイルス(現在カテゴリーCの作用物質として分類されている)を包含する。加えて、そのように分類されるかもしくは異なって分類される他の生物体が、将来同定かつ/もしくはこうした目的上使用されうる。本明細書に記述されるウイルスベクターおよび他の構築物が、これらの生物学的剤への感染症もしくはそれらとの他の有害反応を予防かつ/もしくは処置することができるこれらの生物体、ウイルス、それらのトキシンもしくは他の副生成物からの抗原を送達するのに有用であることが容易に理解されるであろう。
【0136】
T細胞の可変領域に対する免疫原を送達するための本発明のベクターの投与はそれらのT細胞を排除するためのCTLを含む免疫応答を導き出す。慢性関節リウマチ(RA)において、該疾患に関与するTCRの数個の特異的可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−3、V−14、V−17およびV−17を含む。従って、これらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする核酸配列の送達は、RAに関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。多発性硬化症(MS)において、該疾患に関与するTCRの数個の特異的可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−7およびV−10を包含する。従ってこれらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする核酸配列の送達は、MSに関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。強皮症において、該疾患に関与するTCRの数個の特異的可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−6、V−8、V−14およびV−16、V−3C、V−7、V−14、V−15、V−16、V−28およびV−12を含む。従って、これらのポリペプチドの少なくとも1種をコードする核酸分子の送達は、強皮症に関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。
【0137】
従って本発明のrAAV由来の組換えウイルスベクターは、生物体が1もしくは複数のAAV供給源に対する中和抗体を有する場合であっても、選択した導入遺伝子を選択した宿主細胞にin vivoもしくはex vivoで送達し得る効率的な遺伝子移入ベヒクルを提供する。一態様において、rAAVおよび細胞をex vivoで混合し;感染した細胞を慣習的方法論を使用して培養し;そして形質導入された細胞を患者に再注入する。
【0138】
これらの組成物は、保護免疫を誘導することを包含する治療的目的上および免疫感作のための遺伝子送達にとりわけ良く適する。本発明のAAVおよびそれを含有する組成物は、「免疫原性分子の連続的アデノウイルスおよびAAV媒介型送達(Sequential Adenovirus and AAV−Mediated Delivery of Immunogenic Molecules)」について2004年4月28日に出願された共有する米国特許出願第60/565,936号明細書に記載されているもののような免疫感作処方に使用されることもできる。
【0139】
さらに本発明の組成物は所望の遺伝子産物のin vitroでの産生にもまた使用することができる。in vitro産生のため、所望の産物(例えばタンパク質)は、所望の産物をコードする分子を含有するrAAVでの宿主細胞のトランスフェクション、および発現を可能にする条件下で細胞培養物を培養することの後に所望の培養物から得ることができる。発現された産物をその後、所望のとおり精製かつ単離し得る。適するトランスフェクション、細胞培養、精製および単離技術は当業者に既知である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】シングルトン補正AAVベクターのインビトロ293形質導入を具体的に説明するグラフである。シングルトン補正は、存在する場合、ベクター名前の後に突然変異を行った番号を示すための番号で示される。
【図2】2A〜2Cは、101〜104の範囲の感染多重度で293細胞についてのAAVベクターの力価を具体的に説明する線グラフであり、図2Aでは親のrh.8とシングルトン補正rh.8(rh.8R)との間の比較を、親のrh.37と修飾rh.37との間の比較を(図2B)、そして図2CではAAV2とAAV8との間の比較を表す。対照として、AAV2およびAAV2/8 eGFP発現ベクターの類似滴定を提示する。eGFP陽性細胞のパーセント(%)をY−軸で提示し、そしてフローサイトメトリーでアッセイした。
【図3】AAV配列の系統発生樹であり、これはそれらの系統発生的関係およびクレードを示す。
【図4】4A〜4Lは、AAV2[配列番号7]、cy.5[配列番号8]、rh.10[配列番号9]、rh.13[配列番号10]、AAV1[配列番号11]、AAV3[配列番号12]、AAV6[配列番号13]、AAV7[配列番号14]、AAV8[配列番号15]、hu.13[配列番号16]、hu.26[配列番号17]、hu.37[配列番号18]、hu.53[配列番号19]、rh.39[配列番号20]、rh.43[配列番号21]およびrh.46[配列番号22]のキャプシドタンパク質(vp1)の核酸配列のアライメントである。
【図5】5A〜5Dは、AAV2[配列番号23]、cy.5[配列番号24]、rh.10[配列番号25]、rh.13[配列番号26]、AAV1[配列番号27]、AAV3[配列番号28]、AAV6[配列番号29]、AAV7[配列番号30]、AAV8[配列番号31]、hu.13[配列番号32]、hu.26[配列番号33]、hu.37[配列番号34]、hu.53[配列番号35]、rh.39[配列番号36]、rh.43[配列番号37]およびrh.46[配列番号38]のキャプシドタンパク質(vp1)のアミノ酸配列のアライメントである。
【図6】6A〜6Bは、rh.13[配列番号26]、rh.2[配列番号39]、rh.8[配列番号41]、hu.29[配列番号42]およびrh.64[配列番号43]のキャプシドタンパク質(vp1)のアミノ酸配列のアライメントである。
【0141】
以下の実施例は本発明のいくつかの観点および態様を具体的に説明する。
【実施例】
【0142】
実施例1
本発明の方法に従い、各クレードA、B、C、D、EおよびF(AAV9により表される)の代表を含む配列のライブラリーと並べて配置した時、AAV配列はシングルトンを有すると同定された。以下の表はキャプシド配列および保存された配列に改変されるべきシングルトンを具体的に説明する。特定の突然変異に関して、シングルトンに*が続き、その後、それを置き換えるアミノ酸残基が続く。他の突然変異に関しては、シングルトンにそのアミノ酸位、そしてそれに置き換わる残基が続く。
【0143】
アミノ酸の番号付けは、これらAAVキャプシドの各々について公開された配列に基づく。例えばG.Gao,et al.,J.Virol.,78(12)6381−6388(2004年6月)および国際公開第2004/042397号パンフレット[その中の全配列はGenBankに寄託された]、および2004年9月30日に出願された国際公開第2005/033321号パンフレット(引用により本明細書に編入する)を参照にされたい。
【0144】
例えば以下の表を参照にして、命名法は以下のように読むべきである。Cy5R1は配列番号24のアミノ酸配列を指し、これはアミノ酸残基13位にアスパラギン酸(D)を含むように修飾された;cy5は自然なアミノ酸配列の残基番号13にグリシンを有する。Cy5R2は配列番号24のアミノ酸配列を指し、これはアミノ酸13位にアスパラギン酸(D)を(自然な配列ではグリシン)、そしてアミノ酸403位にアスパラギンを(自然な配列ではアスパラギン酸)含むように修飾された。Cy5R3は配列番号24のアミノ酸配列を有し、これはCy5R2と同じ修飾を有するように修飾され、そしてさらに158位のリシン(天然ではアスパラギン)および161位のグルタミン(天然ではプロリン)が修飾された。この情報を与えれば、当業者は以下の表に挙げる他のシングルトン修飾を容易に決定することができる。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
実施例2
予備実験では、5個のクローンを選択して本発明のシングルトン法を試験した。以下の表は、5個のクローンの表現型の記載を提供する。予想されるシングルトンの数を、クレードおよび血清型分類と共に与える。
【0148】
パッケージング表現型は、それらの力価が1×1011GCより低い場合に不十分と、1×1012GCより低い場合に低いと、そして1×1013GCより低い場合に良好と、より高い場合には優れていると考える。
【0149】
遺伝子導入の表現型は、CB.A1AT遺伝子発現により確立され、そして以下のように示した;“+++”は標的組織のためのリード候補よりも良い、“++”、“+”および“−”は、リード候補のA1AT血清レベルよりもそれぞれ50%より良く、10〜50%の間、または10%より低い(筋肉:AAV1、肝臓:AAV8、肺:AAV9)。“n/a”は、ベクターがインビボの遺伝子導入実験について十分なレベルで生産できなかったことを示した。
【0150】
シングルトン補正のクローニングは、以下のようになった。元のパッケージングプラス
ミドから、部位特異的突然変異誘発法を行った。それに続いて、ベクターの骨格完全性をPstI消化によりアッセイし、そしてシングルトンの補正をシークエンシングにより確認した。次いでEGFP発現ベクターは、親のシングルトン含有ベクター、AAV2およびAAV2/8陽性対照、および陰性対照としてパッケージングプラスミドが存在しない生産を平行して12ウェル形式で3連で生産された。3回の凍結後に回収した等容量の溶解物を、293細胞でインキュベーションした。eGFP発現は、フローサイトメトリーにより形質導入から72時間後に監視した。
【0151】
クローンrh.37、rh.2、ch.5、rh.13およびrh.8のシングルトン残基の部位特異的突然変異誘発法を行った。これらの特定の配列を選択して、これまでに記録された種々の表現型を表した。
【0152】
【表3】
【0153】
ベクター発現における増加は、5個のクローンのうちの4個で認められた。この増加は、以前には低いパッケージング収量を有することが示されたrh.37およびrh.2ベクターで最も劇的であった。これらのベクターに関して、生産的粒子が検出に十分なレベルで生産された。ベクターrh.8およびrh.13は、形質導入に増加を示した。
【0154】
シングルトン突然変異の形質導入対パッケージングおよび集成に及ぼす効果を識別するために、小規模ベクター調製物を作成し、そしてDnase耐性粒子を定量的PCRにより滴定した。rh.37について、ベクター生産について2−logの増加が観察された。rh.8は力価において中程度の5倍増加を示し、一方rh.13は等しく機能した。シングルトン補正クローンのすべての力価は、AAV2およびAAV2/8生産と比べて許容され得る範囲内であり、そして大規模調製に拡大した時、rh.2は力価についてアッセイしなかった。
【0155】
引き続きシングルトン交換の効果は、細胞あたり等しい粒子数を用いた形質導入の設定でインビトロにて監視した。293細胞での滴定は、rh.8およびrh.13について行った。形質導入効率における中程度の増加は、すべてのMOIで記載された。
【0156】
この5クローンの最初のサブセットから、3つが細胞を生産的に形質導入した。2つのクローンはこの設定でいかなるeGFP発現も生じることができなかった。これはほとんどシングルトンの取り組みにより予測できなかったベクターのパッケージングにおける欠失によるらしい。
【0157】
本発明の方法を利用してAAVクローンhu.46、P156S R362C S393F A676の4つの予想されるシングルトンの位置を補正した。しかしこれらの修飾はレスキューできたAAVを生じず、hu.46配列に別の種類の致命的間違えを示した。
【0158】
実施例3−改変されたキャプシドを持つウイルスベクターのインビトロ分析
本発明の方法を使用して、rh.64およびhu.29のキャプシドタンパク質を改変し、次いで改変されたキャプシドを持つウイルスベクターを、実施例2およびG.Gao
et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99,11854−9(2002年9月3日)に記載されているようなシュードタイピングを使用して構築した。
【0159】
簡単に説明すると、強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現するベクターを使用して、ヒト内皮腎臓細胞(293細胞)中のベクターのインビトロ形質導入効率を調査した。これらの293細胞は、wtAd5で短時間プレインキュベーションした後、104GC/細胞のシュードタイプAAVCMVeGFP粒子の存在下でインキュベーションした。10,000個の全細胞あたりeGFP陽性細胞数が、5細胞/10Kの検出限界でFACS分析により測定された。
【0160】
本発明によるRh.64キャプシドの修飾は、R697W交換後に100倍以上高い効率であった修飾rh.64粒子をもたらした。引き続きV686Eの突然変異は、パッケージング能に2倍の増加をもたらした。
【0161】
本発明に従いHu.29キャプシドの修飾は、G396Eと交換することにより欠損パッケージング能からレスキューされた修飾rh.64ビリオンを与えた。生産に1000倍以上の増加が観察された。
【0162】
発現において改善を示した20を超える多くの修飾AAVビリオンには、AAV6.1、hu.48R1、hu.48R2、hu.44R2、hu.44R3、rh.48.2、rh.48.2、rh48.2.1を含む。
【0163】
実施例4−インビボ遺伝子導入の応用に及ぼすシングルトン効果
シングルトン変異体の効果は、インビボの設定で試験した。C57B/6マウスでの遺伝子導入実験は、本発明の方法に従い修飾したベクター数で開始した。特定の応用については現在のリード候補に対して筋肉を対象とした、および肝臓を対象とした実験を開始し、そしてベンチマークで試験した。
【0164】
ヒトα−アンチトリプシン(A1AT)はベクター中の感受性および定量的レポーター遺伝子として選択し、そしてCMV−強化ニワトリβ−アクチンプロモーターの制御下で発現した。CBプロモーターの採用により、高レベルの組織非特異的および構成的A1AT遺伝子導入が達成でき、そして同じベクター調製物の使用が任意の目的組織における遺伝子導入実験に可能となる。
【0165】
筋肉は最初の標的組織として選択した。40の異なる新規ベクター(24種のクローンに基づき、各々が各シングルトン変異体(1もしくは複数)を持つ)を、C57B/6マウスの後脚に筋肉内注射した。すべての実験は、CB.A1AT導入遺伝子カセットを用いて1×1011GC/動物で行った。ベクターは、各時点でマウスあたり、およびクレード群あたりの等容量(50μl)のアリコートに分けた。各個別の実験は、筋肉を標的化した遺伝子導入について、ベンチマークとして役立つ代表的な血清型であるAAV2/8およびAAV2/1を含む対照群を含め、1もしくは2つのクレードから成った。導入遺伝子発現は、注射後7、14、28および63日に検出し、そして特異的hA1AT ELISAにより評価される。
【0166】
幾つかの単離物およびシングルトン補正変更体について、門脈内(intraportal)肝臓対象化注入後のそれらの性能に関するデータを作成した。予備的結果は、補正クローンの大部分が元の単離物と等しいか、またはそれより良いことを示す。1つの特定
のクローン、すなわちcy.5について、シングルトン補正は筋肉の遺伝子導入に対して有益な効果と思われる。4つのシングルトン補正を持つクローンcy.5R4は、元の単離物によりすでに現されているまずまずの筋肉向性に対して遺伝子導入効率を改善した。cy.5R4の性能は、ベンチマーク対照AAV2/1およびAAV2/7に等しいか、またはわずかに良い。
【0167】
さらなる評価には、以前に低すぎる力価を生じた単離物、rh.64が1つのシングルトンの補正後に筋肉で極めて良い性能を果たした。rh.64R1はrh64.2より良く機能し、そして最も近縁の血清型AAV2/8だけでなくAAV2/7により達成されるレベルより高いhA1ATレベルを与えた。
【0168】
他の実験では、マウスにベクターをクレードに基づく群で注射した。1×1011GC/マウスに、CB.hA1ATを発現するベクターを投与した。hA1ATの血清レベルは、特異的hA1AT ELISAにより測定された。
【0169】
シングルトンがインビボ遺伝子導入に及ぼす効果は、単離物および標的組織に依存するようである。幾つかの興味深い考察がなされた。
【0170】
特定のシングルトンクローンについて、効果は筋肉および肝臓(例えばrh.2、rh.13またはcy.5)で量的に同様であった。単離物hu.48およびrh.48は、回復したシングルトンの数が増えると筋肉中の発現も増加した。
【0171】
rh.64およびAAV6のような他のクローンは、特定の発現プロファイルを示す。例えば単離物hu.48R2は、hu.48R3と比べた時、約10倍低い効率でパッケージするが、hu.48R3は筋肉に約5倍低い効率で形質導入する。AAV6は2つのシングルトンを含む。両方がパッケージングに中程度の効果を有し、そして合わせるとそれらはAAV6パッケージングをベンチマークレベルまでもっていく。インビトロで、親のクローンおよび異なるクローンの間に認識できる差異はほとんどない。インビボでは、筋肉でAAV6.1およびAAV6.1.2は低下した遺伝子導入を示すが、AAV6.2は中程度の増加を示す。
【0172】
実施例5−肺および肝臓におけるシングルトン補正AAVの評価
シングルトン残基の回復によりパッケージングおよび遺伝子導入効率について至適化されたAAVベクターは、さらに肺および肝臓で評価された。このデータはシングルトンを含有しないもの、またはシングルトン残基が保存されたアミノ酸に変換されたものと同定された両ベクターについて示される。
【0173】
A.pi2、rh32.33、AAV2/9、AAV2/5、rh.2R、ch5Rにより媒介される気管内注射後に、肺へのCB.A1AT AAV遺伝子導入の評価
幾つかのAAVキャプシドが、それらの肺を標的とする能力について比較される。hA1ATレベルを血清で測定した。評価したAAVは、シングルトン無し(pi2、rh32.33、AAV2/9、AAV2/5、rh.2R、ch5R)か、または1つのシングルトン残基(rh.2、rh8)を含むかのいずれかである。AAV2/5およびAAV2/9をベンチマークとして表す。
【0174】
遺伝子導入実験は、上記のキャプシド中、CB.A1AT発現カセット(すなわちAAV2 5’ITR、ニワトリβ−アクチンプロモーター(CB)、ヒトα1−アンチトリプシン(A1AT)、AAV23’ITR)またはCB.nLacZ発現カセット(すなわちAAV2,5’ITR、核局在化β−ガラクトシダーゼ(nLacZ)、AAV23’ITR)のいずれかを持つベクターを使用して、C57B/6マウス(オス、1群あた
り5)で行った。簡単に説明すると、50μLのこれらシングルトン補正またはシングルトン無しのベクターを、A1ATを持つベクターおよびnLacZ(1×1011ゲノムコピー(GC))を持つベクターと気管内に同時点滴した(1×1011GC))。
【0175】
12および20日に20の採血を行い、そしてA1ATの血清レベルを測定した(ngAAT/mL血清)。データは1×1011GCの気管内(IT)注射後、rh.2からrh.2Rに関する肺でのヒトα1−アンチトリプシン発現の劇的増加が示された。加えて、シングルトン残基を含まない種々のAAVベクターを評価した。すべてのベクターは肺で許容され得るレベルの発現を示した。
【0176】
B.AAV2/5およびAAV2/9と比較したAAV6シングルトンベクターの評価
AAV6シングルトン補正クローンを評価した。修飾したAAV6(AAV6.2)は本発明のシングルトン補正法、および本明細書に記載するシュードタイピング技法を使用して調製した。実施例5に記載するように調製したA1ATおよびLacZ発現カセットを持つAAV6.2粒子は、鼻内(1×1011GC)および気管内に同時注射した。AAT発現は血清および気管支肺胞液(BAL)でELISAにより評価した。発現レベルは全タンパク質について標準化した。LacZ発現は、肺ホモジネートからのβ−ガラクトシダーゼについてELISAにより測定した。検視を21日に行った。
【0177】
これらのベクターは、C57B1/6マウス(オス、n=8/群)を含む実験で、AAV2/6(現在、肺への遺伝子導入について臨床的な候補)、AAV2/5およびAAV2/9と比較した。
【0178】
AAV6.2は、血清A1AT排出においてAAV6を上回る統計的に有意な改善を示した。またAAV6.2は、AAV2/9およびAAV2/5を含む他のベクターに比べて高レベルのA1ATレベルを示した。BALにおける軽度の改善が、肺ホモジネート中のLacZ発現のように記録された。しかし動物の変動に対して大型な動物により、LacZ定量から結論を引き出せなかった。
【0179】
AAV遺伝子発現の局在化を評価する場合、AAV2/6に比べてAAV2/6.2群で核に局在化したLacZに関する優れた染色が観察された。これらは嚢胞性線維症のような疾患の主要な標的である肺気道上皮で、AAV2/6およびAAV2/5に優る改善が特記された。
【0180】
C.C57Bl/6マウスを対象としたクレードBおよびクレードCのAAVメンバーを用いたAAV.CB.A1AT(1×1011GC)の門脈内(iv)注射
使用したすべてのベクターは、単離物(AAV2/8、AAV2、hu.13、hu.51、hu.11、hu.53)から、または突然変異(hu.29R)のいずれによってもシングルトン残基が存在しない。すべてのベクターはベンチマークとしてAAV2/8(クレードE)と比較する。
【0181】
D.クレードEのAAVメンバーの静脈内注射。rh.64R1、rh.64R2、rh.2Rは、シングルトンが最適化されている。すべての他のベクターにはシングルトンが無い。
AAVクレードBおよびCのメンバーからの発現は、hu.29R(シングルトンが最適化されたクローン)を含むすべてのメンバーについて類似から等価であることが分かった。この特定のクローンはhu.29からのパッケージング能力で再構成され、そして今、ウイルスファミリーの他のメンバーと類似の遺伝子導入機能性を表す。
【0182】
評価したクレードEベクターについて、自然にシングルトンを含まないか、またはシン
グルトン残基について補正したいずれかのすべてのベクターは、肝臓に向けた遺伝子導入について現在最高の物、AAV2/8に順じた範囲で機能する。特にAAVrh64R1およびrh.64R2は興味深い。パッケージングが欠損していることがわかったrh.64は、1つ(rh.64R1)または2つ(rh.64R2)のシングルトンの転換後に、肝臓に向けられた遺伝子導入において等しく良く機能する。rh.2について、シングルトン補正は遺伝子送達において劇的な10倍以上の増加に対応する。
【0183】
特許を含め本明細書に引用するすべての刊行物は、参考により本明細書に編入する。本発明は特に好適な態様を参照にして記載してきたが、本発明の精神から逸脱せずに修飾を行うことができると考える。
【0184】
<本発明の特徴>
本発明の主たる特徴または態様を以下に挙げる。
【0185】
態様1:親のAAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率を上げる方法であって、(a)親のAAVキャプシド配列をアライメントにおいて機能的AAVキャプシド配列のライブラリーと比較し;(b)親のAAVキャプシド中の少なくとも1つのシングルトンを同定し、該シングルトンは、並置された機能的AAVキャプシド配列の対応する位置のアミノ酸が完全に保存されている親のAAVキャプシド中の該位置の可変アミノ酸であり:(c)シングルトンを、機能的AAVキャプシド配列中の対応する該位置に位置するアミノ酸に改変する、工程を含んで成る上記方法。
【0186】
態様2:並置された機能的AAVキャプシド配列が、並置されたvp1配列の完全長にわたり少なくとも85%同一である少なくとも4つのAAV配列を含んでなり、そして少なくとも2つの異なるAAVクレードに由来するAAV配列を含む、態様1に記載の方法。
【0187】
態様3:ライブラリーが各クレードに由来する少なくとも2つのAAV配列を含んでなる態様1に記載の方法。
【0188】
態様4:並置されたAAVキャプシド配列のライブラリーが、少なくとも3つの異なるクレードに由来するAAV配列を含んでなる態様1に記載の方法。
【0189】
態様5:並置されたAAVキャプシド配列のライブラリーが、少なくとも3〜100のAAV配列を含んでなる態様1に記載の方法。
【0190】
態様6:並置されたAAVキャプシド配列のライブラリーが、少なくとも6〜50のAAV配列を含んでなる態様1に記載の方法。
【0191】
態様7:ライブラリーが少なくとも12のAAV配列を含んでなる態様6に記載の方法。
【0192】
態様8:親のAAVが複数のシングルトンを含む態様1に記載の方法。
【0193】
態様9:親のAAVが2〜4のシングルトンを含む態様8に記載の方法。
【0194】
態様10:工程(c)が異なるシングルトンで繰り返される態様8に記載の方法。
【0195】
態様11:標的AAVが可変アミノ酸のコドンの部位特異的突然変異誘発法により改変される、態様1に記載の方法。
【0196】
態様12:部位特異的突然変異誘発法がプラスミド骨格上で運ばれる標的AAVについて
行われる態様11に記載方法。
【0197】
態様13:改変したAAVをAA粒子にパッケージングする工程をさらに含んでなる態様1に記載の方法。
【0198】
態様14:AAV粒子が標的AAVに比べて上昇したパッケージング効率を有する態様13に記載の方法。
【0199】
態様15:AAV粒子が標的AAVに比べて上昇した形質導入効率を有する態様13に記載の方法。
【0200】
態様16:AAV粒子が標的AAVに比べて上昇した遺伝子導入効率を有する態様13に記載の方法。
【0201】
態様17:態様1に記載の方法に従い改変されているAAVキャプシドを含んでなるウイルスベクター。
【0202】
態様18:配列番号1のアミノ酸配列を有するrh20、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;配列番号2のアミノ酸配列を有するrh32/33、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;配列番号3のアミノ酸配列を有するrh39、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列; 配列番号4のアミノ酸配列を有するrh46、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;配列番号5のアミノ酸配列を有するrh73、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;配列番号6のアミノ酸配列を有するrh74、またはそれに少なくとも97%の同一性を有する配列;からなる群から選択されるAAVキャプシドを含んでなるベクター。
【0203】
態様19:上記ウイルスベクターが遺伝子産物をコードする導入遺伝子を、宿主細胞中で該産物の発現を支配する調節配列の制御下に持つ態様18に記載のウイルスベクター。
【0204】
態様20:天然ではリシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1:天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にロイシンを有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するアミノ酸を有するAAV6.2:天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にリシンを、そして天然ではロイシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1.2;からなる群から選択されるアデノ随伴キャプシドタンパク質を有する修飾ウイルスベクター。
【0205】
態様21:天然ではアスパラギン酸であるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号41のアミノ酸配列を有するrh.8R;天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1;天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.2;天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を、そして天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1.2;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R1;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、そして天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R2;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシ
ンを、そして天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを、そして天然ではグリシンであるアミノ酸609位にアスパラギン酸を有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R3;天然ではグリシンであるアミノ酸396位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号42のアミノ酸配列を有するhu.29R;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R1;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、そして天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R2;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、そして天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含み、そして天然ではセリンであるアミノ酸残基552位にアスパラギンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R3;からなる群から選択される修飾されたアデノ随伴キャプシドを有するウイルスベクター。
【0206】
態様22:遺伝子産物を宿主細胞に送達するための薬剤の調製における態様17ないし21のいずれかに記載のウイルスベクターの使用。
【0207】
態様23:態様17ないし21のいずれかに記載のウイルスベクターを個体に送達することを含んでなる、個体に遺伝子産物を送達する方法。
【0208】
態様24:配列番号1のアミノ酸配列を有するrh20;配列番号2のアミノ酸配列を有するrh32/33;配列番号3のアミノ酸配列を有するrh39;配列番号4のアミノ酸配列を有するrh46;配列番号5のアミノ酸配列を有するrh73;配列番号6のアミノ酸配列を有するrh74;天然ではバリンであるアミノ酸残基404位にメチオニンを有することにより修飾された配列番号49のアミノ酸配列を有するrh54;天然ではリシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1;天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にロイシンを有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するアミノ酸を有するAAV6.2;天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にリシンを、そして天然ではロイシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより修飾された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1.2;天然ではアスパラギン酸であるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号41のアミノ酸配列を有するrh.8R;天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1;天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.2;天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を、そして天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾される配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1.2;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R1;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、そして天然ではプロリンであるアミノ酸残基446位にロイシンを有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R2;天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、そして天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを、そして天然ではグリシンであるアミノ酸609位にアスパラギン酸を有するように修飾される配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R3;天然ではグリシンであるアミノ酸396位にグルタミン酸を有するように修飾される配列番号42のアミノ酸配列を有するhu.29R;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R1;天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、そして天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含む
ように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R2;および天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、そして天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含み、そして天然ではセリンであるアミノ酸残基552位にアスパラギンを含むように修飾された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R3;からなる群から選択されるAAV配列をコードする核酸配列を含んでなる核酸分子。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明は、遺伝子産物を宿主細胞に送達するために使用できる、AAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率の上昇した改変ウイルスベクターが提供されるので、例えば、遺伝子治療用の薬剤を効果的に提供できるので、医薬製造業において利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親のAAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率を上げる方法に従い改変されたAAVキャプシドを含んでなるウイルスベクターであって、該方法が、
(a)親のAAVキャプシド配列をアライメントにおいて機能的AAVキャプシド配列のライブラリーと比較する工程;(b)親のAAVキャプシド中の少なくとも1つのシングルトンを同定する工程であって、かつ、該シングルトンが、並置された機能的AAVキャプシド配列の対応する位置のアミノ酸が完全に保存されている親のAAVキャプシド中の該位置の可変アミノ酸である工程:(c)シングルトンを、機能的AAVキャプシド配列中の対応する該位置に位置するアミノ酸に改変する工程を含むことを特徴とする、ウイルスベクター。
【請求項2】
天然ではリシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより改変されている配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1;
天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にロイシンを有することにより改変されている配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.2;
天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にリシンを、かつ、天然ではロイシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより改変されている配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1.2;
天然ではアスパラギン酸であるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号41のアミノ酸配列を有するrh.8R;
天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1;
天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.2;
天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を、かつ、天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1.2;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R1;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、かつ、天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R2;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、かつ、天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを、かつ、天然ではグリシンであるアミノ酸609位にアスパラギン酸を有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R3;
天然ではグリシンであるアミノ酸396位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号42のアミノ酸配列を有するhu.29R;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含むように改変された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R1;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、かつ、天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含むように改変された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R2;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、かつ、天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含み、かつ、天然ではセリンであるアミノ酸残基552位にアスパラギンを含むように改変された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R3;
からなる群から選択される改変されたアデノ随伴キャプシドを有するウイルスベクター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のウイルスベクターを有効成分として含む遺伝子産物を宿主細胞に送達するための製薬学的製剤。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列を有するrh20;
配列番号2のアミノ酸配列を有するrh32/33;
配列番号3のアミノ酸配列を有するrh39;
配列番号4のアミノ酸配列を有するrh46;
配列番号5のアミノ酸配列を有するrh73;
配列番号6のアミノ酸配列を有するrh74;
天然ではバリンであるアミノ酸残基404位にメチオニンを有することにより改変された配列番号49のアミノ酸配列を有するrh54;
天然ではリシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより改変された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1;
天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にロイシンを有することにより改変された配列番号29のアミノ酸配列を有するアミノ酸を有するAAV6.2;
天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にリシンを、かつ、天然ではロイシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより改変された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1.2;
天然ではアスパラギン酸であるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号41のアミノ酸配列を有するrh.8R;
天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1;
天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.2;
天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を、かつ、天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1.2;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R1;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、かつ、天然ではプロリンであるアミノ酸残基446位にロイシンを有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R2;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、かつ、天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを、かつ、天然ではグリシンであるアミノ酸609位にアスパラギン酸を有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R3;
天然ではグリシンであるアミノ酸396位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号42のアミノ酸配列を有するhu.29R;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含むように改変されている配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R1;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、かつ、天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含むように改変されている配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R2;および
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、かつ、天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含み、かつ、天然ではセリンであるアミノ酸残基552位にアスパラギンを含むようにされている配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R3;
からなる群から選択されるAAV配列をコードする核酸配列を含んでなる核酸分子。
【請求項1】
親のAAVのパッケージング収量、形質導入効率および/または遺伝子導入効率を上げる方法に従い改変されたAAVキャプシドを含んでなるウイルスベクターであって、該方法が、
(a)親のAAVキャプシド配列をアライメントにおいて機能的AAVキャプシド配列のライブラリーと比較する工程;(b)親のAAVキャプシド中の少なくとも1つのシングルトンを同定する工程であって、かつ、該シングルトンが、並置された機能的AAVキャプシド配列の対応する位置のアミノ酸が完全に保存されている親のAAVキャプシド中の該位置の可変アミノ酸である工程:(c)シングルトンを、機能的AAVキャプシド配列中の対応する該位置に位置するアミノ酸に改変する工程を含むことを特徴とする、ウイルスベクター。
【請求項2】
天然ではリシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより改変されている配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1;
天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にロイシンを有することにより改変されている配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.2;
天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にリシンを、かつ、天然ではロイシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより改変されている配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1.2;
天然ではアスパラギン酸であるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号41のアミノ酸配列を有するrh.8R;
天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1;
天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように修飾されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.2;
天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を、かつ、天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1.2;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R1;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、かつ、天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R2;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、かつ、天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを、かつ、天然ではグリシンであるアミノ酸609位にアスパラギン酸を有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R3;
天然ではグリシンであるアミノ酸396位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号42のアミノ酸配列を有するhu.29R;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含むように改変された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R1;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、かつ、天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含むように改変された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R2;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、かつ、天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含み、かつ、天然ではセリンであるアミノ酸残基552位にアスパラギンを含むように改変された配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R3;
からなる群から選択される改変されたアデノ随伴キャプシドを有するウイルスベクター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のウイルスベクターを有効成分として含む遺伝子産物を宿主細胞に送達するための製薬学的製剤。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列を有するrh20;
配列番号2のアミノ酸配列を有するrh32/33;
配列番号3のアミノ酸配列を有するrh39;
配列番号4のアミノ酸配列を有するrh46;
配列番号5のアミノ酸配列を有するrh73;
配列番号6のアミノ酸配列を有するrh74;
天然ではバリンであるアミノ酸残基404位にメチオニンを有することにより改変された配列番号49のアミノ酸配列を有するrh54;
天然ではリシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより改変された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1;
天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にロイシンを有することにより改変された配列番号29のアミノ酸配列を有するアミノ酸を有するAAV6.2;
天然ではフェニルアラニンであるアミノ酸残基129位にリシンを、かつ、天然ではロイシンであるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有することにより改変された配列番号29のアミノ酸配列を有するAAV6.1.2;
天然ではアスパラギン酸であるアミノ酸残基531位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号41のアミノ酸配列を有するrh.8R;
天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1;
天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.2;
天然ではリシンであるアミノ酸残基217位にグルタミン酸を、かつ、天然ではセリンであるアミノ酸残基304位にアスパラギンを有するように改変されている配列番号44のアミノ酸配列を有するrh.48.1.2;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R1;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、かつ、天然ではプロリンであるアミノ酸残基446位にロイシンを有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R2;
天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基137位にリシンを、かつ、天然ではプロリンであるアミノ酸446位にロイシンを、かつ、天然ではグリシンであるアミノ酸609位にアスパラギン酸を有するように改変されている配列番号45のアミノ酸配列を有するhu.44R3;
天然ではグリシンであるアミノ酸396位にグルタミン酸を有するように改変されている配列番号42のアミノ酸配列を有するhu.29R;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含むように改変されている配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R1;
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、かつ、天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含むように改変されている配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R2;および
天然ではグリシンであるアミノ酸残基277位にセリンを含み、かつ、天然ではグルタミン酸であるアミノ酸残基322位にリシンを含み、かつ、天然ではセリンであるアミノ酸残基552位にアスパラギンを含むようにされている配列番号50のアミノ酸配列を有するhu.48R3;
からなる群から選択されるAAV配列をコードする核酸配列を含んでなる核酸分子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図4J】
【図4K】
【図4L】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図4J】
【図4K】
【図4L】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【公開番号】特開2012−165744(P2012−165744A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−55665(P2012−55665)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【分割の表示】特願2008−505635(P2008−505635)の分割
【原出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(502409813)ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【分割の表示】特願2008−505635(P2008−505635)の分割
【原出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(502409813)ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア (37)
【Fターム(参考)】
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