説明

改変型IL−4ムテイン受容体アンタゴニスト

本発明は、ポリエチレングリコールとカップリングさせたIL-4ムテイン受容体アンタゴニストを含む、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストに関する。治療を目的とする、関連する製剤ならびにそれらの投与量および投与法も提供される。これらの改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト、組成物、および方法は、IL-4およびIL-13が媒介する気道過敏性および好酸球増加を阻害することにより、喘息などの呼吸器障害に苦しむ個人に対する治療選択肢を提供する。より具体的には、これらのアンタゴニストは、血漿内半減期が長いため、非改変型IL-4RAと比べて効果の持続時間が長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリエチレングリコールなどの非タンパク質性ポリマーにカップリングしたIL-4ムテイン受容体アンタゴニストに関する。さらに、関連する製剤、剤形15、および治療目的のためのその投与法を提供する。これらの改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト、ならびに関連する組成物および方法は、重症喘息、慢性閉塞性肺疾患、および関連する肺状態に苦しむ個体に対する治療的選択肢を提供するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
喘息は、変化しやすい可逆的な気流閉塞および気道過敏性(AHR)を特徴とし、これには気管支粘膜への活性化Tリンパ球(T細胞)および好酸球の浸潤が伴う。これらの細胞は、常在性気道マスト細胞とともに、この疾患の病因において根本的な役割を果たす種々のサイトカインおよびメディエーターを分泌する。CD4+ Th2細胞は、特定サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-9、およびIL-13)の放出を通じて、疾患プロセスを調整すると考えられている(1, 2)。特に、Th2サイトカインであるIL-4およびIL-13は、気道炎症および気道過敏性の発生および維持にとって極めて重要であると考えられている。
【0003】
いくつかのインビボ試験からも、喘息の病因におけるIL-4およびIL-13の中枢的役割が裏づけられている。いずれかのサイトカインを欠損した動物、またはIL-4もしくはIL-13どちらかの機能を無効化する試薬を用いて、気道炎症および気道過敏性をもたらす一次および二次免疫応答の調節においてこれらのサイトカインが重要な役割を果たすことが観察されている(3, 4)。以上を総合すると、これらのデータは、IL-4およびIL-13がアレルギー性気道応答において重複した役割および独立した役割の両方を果たしうること、ならびに、両サイトカインを標的にすることによっていずれかのサイトカインのみを標的にすることよりも著しい恩典が上乗せされうることを示唆している。
【0004】
IL-4のアンタゴニストは文献に報告されている。アンタゴニストとして機能するIL-4変異体には、IL-4アンタゴニストであるムテインIL-4/Y124D(Kruse, N., et al., Conversion of human interleukin-4 into a high affinity antagonist by a single amino acid replacement, Embo J. 11:3237-44, 1992)およびダブルムテインIL-4[R121D/Y124D](Tony, H., et al., Design of Human Interleukin-4 Antagonists in Inhibiting Interleukin-4-dependent and Interleukin-13-dependent responses in T-cells and B-cells with high efficiency, Eur. J. Biochem. 225:659-664 (1994))が含まれる。単一ムテインは、D-ヘリックス中にある124位のチロシンがアスパラギン酸で置換されたものである。ダブルムテインは、D-ヘリックス中にある121位のアルギニンがアスパラギン酸により、124位のチロシンがアスパラギン酸により置換されたものである。Dヘリックスのこの区域における差異は、第2の結合領域での相互作用の違いと正に相関する。
【0005】
野生型IL-4に対する作動性または拮抗性を示すIL-4の変異体は、IL-4の多面的作用の一つと関連する状態の治療に有用でありうる。例えば、IL-4のアンタゴニストは、喘息、アレルギー、またはその他の炎症反応関連状態などの、IL-4産生によって悪化する状態の治療に有用と考えられる。IL-4のアゴニストは、IL-4の存在が疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病などの自己免疫疾患の改善または減弱に関連するような状態を治療するために有用でありうる。これらの自己免疫疾患は、1型および2型(Th1、Th2)というヘルパーT細胞集団の生成における偏りを特徴とする。ナイーブCD4+ T細胞は、刺激時に存在するサイトカインに応じて、Th1またはTh2サブセットへと分化する。IL-4アゴニストは理想的には、望ましいヘルパーT細胞、すなわちTh2の方へと生成を推移させ、それによって治療効果を及ぼすと考えられる。
【0006】
PCT/US93/03613号は、αヘリックスドメイン内にPhe-Leu配列またはTyr-Leu配列を有し、かつ、このPhe-Leu配列またはTyr-Leu配列の直前または直後の2アミノ酸の内部に負に荷電したアミノ酸1つを有する、IL-4変異体を開示しており、該変異体は、中性アミノ酸が負に荷電したアミノ酸に置換されたためにIL-4受容体に対して高い親和性を有する。また、IL-4のαヘリックス内部におけるTrp-LeuまたはPhe-Leuの、負に荷電した残基の2残基以内の特異的置換が、親和性の向上をもたらすことも開示されている。この変異体は(ジフテリア毒素との)IL-4融合タンパク質である。
【0007】
アミノ酸配列の2つの部位が置換されたヒトIL-4由来の組換えムテインタンパク質(IL-4RA)は、米国特許第6,028,176号および第6,313,272号において、以前に報告されている。IL-4RAは、IL-4受容体複合体およびIL-13受容体複合体の両方の重要な機能性シグナル伝達成分であるヒトIL-4受容体α鎖と、高い親和性で結合する。このムテインはアゴニスト活性を有さず、強力な競合性のIL-4およびIL-13受容体アンタゴニストとしてインビトロで作用する(米国特許第6,028,176号および第6,313,272号を参照)。IL-4RA使用に対する重大な障害とは、インビボにおける半減期が比較的短い(約3〜6時間)ことである。霊長類喘息モデルにおけるIL-4RAの薬物動態学的/薬力学的モデル化により、最適な治療効果のための有効平均定常状態濃度は約60ng/mlであることが示されている。
【0008】
短い半減期を克服するためのアプローチの一つは、患者に対するIL-4RAムテインの頻回投与であるが、頻回投与(通常は注射または気管内挿管による)は、診療所における治療および治療投与に対する患者の許容性にとって極めて重大な障壁となる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、以前に報告されたムテインよりも半減期の長いIL-4RAムテインを提供する。本発明はまた、IL-4およびIL-13により媒介される免疫応答を阻害する試薬および方法も提供する。本発明の上記およびその他の局面は、以下に挙げる態様の1つまたは複数によって提供される。
【0010】
1つの態様において、本発明は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリオキシアルキレンからなる群より選択される非タンパク質性ポリマーにカップリングさせたIL-4ムテイン受容体アンタゴニストを含む、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストの精製調製物を提供する。本態様の1つの局面において、精製調製物には、SEQ ID NO: 32に記載のアミノ酸配列を含む改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストのポリペプチドが含まれる。本態様の1つの局面において、精製調製物には、SEQ ID NO: 33に記載のアミノ酸配列を含む改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストのポリペプチドが含まれる。本態様の別の局面において、ポリエチレングリコール(PEG)は直鎖状または分枝鎖状であり、約3 kD〜50 kDの範囲の分子量を有する。1つの態様において、PEG部分は約40 kDである。
【0011】
1つの態様において、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストのポリペプチドは、IL-4の28、36、37、38、104、105、または106位のアミノ酸残基において非タンパク質性ポリマーとカップリングされうる。このような位置は、野生型IL-4(すなわち、ヒトインターロイキン-4)のアミノ酸配列に従って番号付けされる。この態様の1つの局面において、28、36、37、38、104、105、または106位にあるアミノ酸残基はシステインである。この態様の別の局面において、121、124、および125位にあるアミノ酸残基はアスパラギン酸である。この態様の別の局面において、13位にあるアミノ酸残基はアスパラギン酸であり、かつ121および124位にあるアミノ酸残基はアスパラギン酸である。
【0012】
1つの態様において、本発明の改変型ムテイン受容体アンタゴニストは、IL-4受容体α鎖と、約0.1nM〜約10μM、約0.5nM〜約1μM、または約1.0nM〜約100nMの[[Kd]] KDで結合する。
【0013】
もう1つの態様において、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、IL-4に対するTF-1細胞の増殖性応答を、約0.1nM〜約10μM、15約0.5nM〜約1.0μM、または約1.0nM〜約100nMのIC50で阻害する。
【0014】
さらに別の態様において、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、IL-13に対するTF-1細胞の増殖性応答を、約0.1nM〜約10μM、約0.5nM〜約1μM、または約1.0nM〜約100nMより選択されるIC50で阻害する。
【0015】
さらなる態様において、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、IL-4に対するヒトB細胞の増殖性応答を、約0.1nM〜約10μM、約0.5nM〜約1.0μM、または約1.0nM〜約100nMより選択されるIC50で阻害する。
【0016】
もう1つの態様において、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、IL-4に対するヒトT細胞の増殖性応答を、約0.1nM〜約10μM、約0.5nM〜約1μM、約1.0nM〜約100nMからなる群より選択されるIC50で阻害する。
【0017】
さらに別の態様において、本発明の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストの血漿内半減期は、非改変IL-4受容体アンタゴニストよりも少なくとも約2〜10倍長い。
【0018】
また本発明は、(a) ヒトIL-4受容体に結合する改変IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト;および(b) 薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物も提供する。
【0019】
また本発明は、(a) SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、もしくはSEQ ID NO: 31に記載のヌクレオチド配列;または(b) SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 15、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 32、もしくはSEQ ID NO: 33に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、精製ポリヌクレオチドも提供する。
【0020】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0021】
さらに本発明は、(a)アンタゴニストが発現する条件下で上記の宿主細胞を培養する段階;および(b) 宿主細胞培養物からアンタゴニストを精製する段階を含む、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストを作製する方法を提供する。1つの特定の局面において、本発明の方法によって産生されるアンタゴニストは、IL-4およびIL-13により媒介される活性を阻害することができ、かつ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリオキシアルキレンからなる群より選択される非タンパク質性ポリマーとカップリングされている。
【0022】
本発明はまた、(a) IL-4およびIL-13の活性が増加している状態を有するヒトを提供する段階;ならびに(b)本発明の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストまたは本発明の薬学的組成物の有効量を前記ヒトに投与する段階を含む、IL-4およびIL-13の活性の増加に関連するヒト障害を治療するための方法も提供する。1つの局面において、障害とは、喘息、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫または慢性気管支炎など)、または関連する肺状態である。
【0023】
本発明はまた、活性型である改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストを調製する方法、該方法によって調製されたアンタゴニスト、そのようなアンタゴニストを含む組成物、ならびに、そのようなアンタゴニストおよびそのようなアンタゴニストを含む薬学的組成物を投与する段階を含むヒト障害の治療方法も提供する。本方法は、(a)アンタゴニストが発現する条件下で上記の宿主細胞を培養する段階;(b) アンタゴニストをジチオトレイトールの存在下でリフォールディングさせる段階;および(c) 宿主細胞培養物からアンタゴニストを精製する段階を含む。1つの態様において、本方法は、(d) アンタゴニストを非タンパク質性ポリマーとカップリングさせる段階;および(e) 非タンパク質性ポリマーとカップリングさせたアンタゴニストを精製する段階をさらに含む。
【0024】
本発明の具体的な好ましい態様は、特定の好ましい態様に関する以下のさらに詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】PEG化反応の化学の概略図である。
【図2】IL-4ダブルムテイン(IL-4DM)と、部位38Cに30kD直鎖PEGまたは40kD分枝PEGを有する同じ分子とを比較した、IL-4Rαに結合したBIAcore由来のデータを示すグラフである。
【図3】IL-4刺激によるTF-1増殖の阻害に由来するデータを示すグラフであり、これは、PEG化IL-4TM(T13D/R121D/Y124D)がPEG化IL-4DMよりも効力が高く、IL-4DM(R121D/Y124D)と同等の効力を有することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、非タンパク質性ポリマーとカップリングさせた、好ましくはポリエチレングリコール分子とカップリングさせたIL-4ムテイン受容体を含む、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストに関する。
【0027】
特記されない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。
【0028】
本明細書で用いる項の見出しは系統化のみを目的としており、記載された対象物を限定するとみなされるべきではない。本出願に引用されたすべての参考文献は、本明細書において参照により明確に組み入れられる。
【0029】
「ポリヌクレオチド」または「核酸配列」または「核酸分子」という用語は、DNA配列またはRNA配列を指す。上記用語は、DNAおよびRNAの、これらに限定されるわけではないが以下の公知の塩基アナログのいずれかより形成された分子を包含する:4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニル-シトシン、プソイドイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシ-メチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソ-ペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチル-グアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノ-メチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5'-メトキシカルボニル-メチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-5 N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン(oxybutoxosine)、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリン。
【0030】
「精製された」または「単離された」ポリヌクレオチドという用語は、(1)供給源の細胞から全核酸を単離した場合に自然下で共に見出されるタンパク質、脂質、糖質もしくは他の物質の少なくとも約50パーセントから分離されている、(2)「単離された核酸分子」が自然下で連結しているポリヌクレオチドの全体もしくは一部分と連結していない、(3)自然下では連結していないポリヌクレオチドと機能的に連結している、または(4)より大きなポリヌクレオチド配列の一部としては自然下で存在しない、本発明の核酸分子のことを指す。本発明の単離された核酸分子は、いかなる他の混入核酸分子、および、ポリペプチド産生におけるその使用またはその治療、診断、予防、もしくは研究用の用途を妨げうる、その自然環境で認められる他の混入物も、実質的に含まないことが好ましい。
【0031】
本明細書にて使用される「野生型IL-4」または「wtIL-4」およびその同義語は互換的に使用され、本明細書に参照により組み入れられている米国特許第5,017,691号に開示されるように、天然ヒトIL-4の通常存在する129アミノ酸の配列を有する、天然または組み換え型のヒトインターロイキン-4を意味する。さらに、本明細書記載の改変型ヒトIL-4受容体アンタゴニストは、様々な挿入および/または欠失および/または非タンパク質性ポリマーとのカップリングを有してもよく、かつこれらはwtIL-4に基づいて番号付けされており、このことは、選択された特定のアミノ酸がwtIL-4内に通常存在するのと同じアミノ酸であることを意味する。したがって、例えば13位(スレオニン)、121位(アルギニン)、および/または124位(チロシン)に通常存在するアミノ酸をムテイン内に置き換えうることを、当業者は認識するであろう。よって、例えば38、102、および/または104のアミノ酸部位でのシステイン残基の挿入を、ムテインに置き換えることができる。しかし、置き換えられたSer(S)、Arg(R)、Tyr(Y)、または挿入されたCys(C)の位置は、検証および、隣接アミノ酸とwtIL-4内でSer、Arg、Tyr、またはCysに隣接するアミノ酸との相関によって決定される。
【0032】
さらに、ヒトIL-4タンパク質またはヒトIL-4タンパク質変異体をコードするDNA配列には、シグナル配列をコードするDNA配列が含まれても含まれなくてもよい。そのようなシグナル配列は、存在する場合、IL-4ムテインの発現のために選択された細胞によって認識されるものでなくてはならない。これは、原核細胞性でも真核細胞性でも両者の組み合わせでもよい。またこれは、天然IL-4のシグナル配列であってもよい。シグナル配列を含めることは、それが作製される組み換え細胞からのIL-4ムテインの分泌が望ましいかどうかに依存する。選択された細胞が原核細胞である場合、DNA配列は一般に、シグナル配列をコードしないが、発現を指示するためのN末端メチオニンを含むことが好ましい。選択された細胞が真核細胞である場合、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,028,176号に開示されるように、一般に、シグナル配列がコードされることが好ましく、野生型IL-4シグナル配列を使用することが最も好ましい。
【0033】
本明細書において用いる「ヒトIL-4タンパク質変異体」、「改変型ヒトIL-4受容体アンタゴニスト」、「mhIL-4」、「IL-4ムテイン」、「IL-4アンタゴニスト」、およびその同義語は互換的に使用され、これらは本発明の範囲に含まれる。これらのポリペプチドおよびその機能的断片は、成熟ヒトIL-4タンパク質への特異的アミノ酸置換が行われたポリペプチドを指す。これらのポリペプチドには本発明のmIL-4組成物が含まれ、これは、喘息の治療を必要とする対象に投与される。特に、本発明のmhIL-4は、少なくともR121D/Y124Dペアの置換を含む(「IL-4RA」)(SEQ ID NO: 31)。
【0034】
本明細書において用いる「機能的断片」とは、IL-4の拮抗作用を有するポリペプチドであり、より短いポリペプチドを含む。mhIL-4およびhIL-4改変についてのこれらおよびその他の局面は、米国特許第6,335,426号、第6,313,272号、および第6,028,176号に記載されており、その全内容が本明細書において参照により組み入れられている。
【0035】
「野生型IL-4に基づいて番号付けされる」とは、本発明者らは、選択したアミノ酸を、そのアミノ酸が野生型IL-4に通常存在する位置を参照して特定することを意味する。
【0036】
「ベクター」という用語は、コードする情報を宿主細胞に移行させるために用いられる任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)のことを指すために用いられる。
【0037】
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換のために適しており、かつ、挿入された異種核酸配列の発現を指示および/または制御する核酸配列を含む、ベクターを指す。発現には、転写、翻訳、およびRNAスプライシング(イントロンが存在する場合)などのプロセスが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書において用いられる「宿主細胞」という用語は、核酸配列によって形質転換されている細胞、または、核酸配列によって形質転換可能でありかつその後に選択された関心対象の遺伝子を発現することが可能な細胞を指す。この用語には親細胞の子孫も含まれるが、これは、選択された遺伝子が存在する限り、形態または遺伝的構成の点で子孫が元の親と同一であるか否かとは関係ない。
【0039】
「形質導入」という用語は、通常はファージによる、1つの細菌から別のものへの遺伝子の移行を指して用いられる。また「形質導入」は、レトロウイルスによる真核細胞配列の獲得および移行も指す。
【0040】
「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来性または外因性DNAの取り込みを指して用いられ、外因性DNAが細胞膜の内側に導入されている場合には、細胞は「トランスフェクト」されている。さまざまなトランスフェクション技術が当技術分野では周知であり、本明細書に開示されている。例えば、Graham et al, 1973, Virology 10 52:456; Sambrook et al, Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratories, 1989); Davis et al, Basic Methods in Molecular Biology (Elsevier, 1986); およびChu et al, 1981, Gene 13:197を参照されたい。このような技術は、1つまたは複数の外因性DNA部分を適切な宿主細胞に導入するために用いることができる。
【0041】
本明細書で用いる「形質転換」という用語は細胞の遺伝的特徴の変化を指し、細胞が新たなDNAを含むように改変されている場合には、この細胞は形質転換されている。例えば、細胞がその天然状態から遺伝的に改変される場合には、この細胞は形質転換されている。トランスフェクションまたは形質導入に続いて、形質転換用DNAを、細胞の染色体中に物理的に組み込むことによって細胞のDNAと組み換えてもよく、複製されないエピソームエレメントとして一過性に維持してもよく、またはプラスミドとして独立に複製させてもよい。DNAが細胞の分裂に伴って複製される場合、細胞は、安定的に形質転換されたとみなされる。
【0042】
当技術分野で公知であるように、「同一性」という用語は、配列の比較によって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つの核酸分子の配列間の関係を指す。当技術分野において、「同一性」とはまた、核酸分子またはポリペプチド間の配列関連性の程度も意味し、これは場合によっては、2つ以上のヌクレオチド配列または2つ以上のアミノ酸配列の連鎖間の一致によって決定される。「同一性」は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって扱われる(あれば)ギャップ付きアラインメントによる、2つ以上の配列のうち短い方の間での完全一致のパーセンテージを見積もるものである。
【0043】
「類似性」という用語は関連する概念であるが、「同一性」とは対照的に、「類似性」とは、完全一致および保存的置換一致の両方を含む、関連性の指標のことを指す。例えば、2つのポリペプチド配列で20個中10個のアミノ酸が同一であり、残りがすべて非保存的な置換であるならば、%同一性および%類似性はいずれも50%であると考えられる。同じ例において、保存的置換である部位がもう5つ存在する場合には、%同一性は50%のままであるが、%類似性は75%(20個中15個)になると考えられる。したがって、保存的置換が存在する場合には、2つのポリペプチド間の%類似性は、その2つのポリペプチド間の%同一性よりも高いと考えられる。
【0044】
関連のある核酸およびポリペプチドの同一性および類似性は、公知の方法によって容易に算出することができる。そのような方法には、COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY, (Lesk, A.M., ed.), 1988, Oxford University Press, New York; BIOCOMPUTING: INFORMATICS AND GENOME PROJECTS, (Smith, D.W., ed.), 1993, Academic Press, New York; COMPUTER ANALYSIS OF SEQUENCE DATA, Part 1, (Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds.), 1994, Humana Press, New Jersey; von Heinje, G., SEQUENCE ANALYSIS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1987, Academic Press; SEQUENCE ANALYSIS PRIMER, (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.), 1991, M. Stockton Press, New York; Carillo et al, 1988, SIAM J. Applied Math., 48:1073; およびDurbin et al, 1998, BIOLOGICAL SEQUENCE ANALYSIS, Cambridge University Press. に記載のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
同一性を決定するための好ましい方法は、検討する配列間で最大の一致が得られるように設計される。同一性を決定するための方法は、公に利用可能なコンピュータプログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法には、GAP(Devereux et al, 1984, Nucl. Acid. Res., 12:387; Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, WI)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul et al, 1990, J. Mol Biol, 215:403-410)を含むGCGプログラムパッケージが含まれるが、これに限定されるわけではない。BLASTXプログラムは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)およびその他の提供元より公に利用可能である(BLAST Manual, Altschul et al NCB/NLM/NIH Bethesda, MD 20894; Altschul et al, 1990, supra)。また、周知のSmith Watermanアルゴリズムを同一性の決定に用いることもできる。
【0046】
2つのアミノ酸配列のアラインメントを行うためのある種のアラインメント手法によって、2つの配列の短い領域のみをマッチングさせることができ、アラインメントがなされたこの短い領域は、2つの完全長配列の間には有意な関連がなくても、極めて高い配列同一性を有する可能性がある。したがって、ある特定の態様において、選択されたアラインメント方法(GAPプログラム)は、標的ポリペプチドの少なくとも50個の連続したアミノ酸の範囲にわたるアラインメントを行う。
【0047】
例えば、コンピュータアルゴリズムGAP(Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, WI)を用いて、配列同一性%を決定する2つのポリペプチドのアラインメントを、その各アミノ酸に関して最適なマッチングが得られるように行う(アルゴリズムによって決定される「マッチング範囲(matched span)」)。ある特定の態様において、ギャップオープニングペナルティー(gap opening penalty)(これは平均ダイアゴナルの3倍として計算される;ここで「平均ダイアゴナル」とは、用いる比較マトリックスのダイアゴナルの平均のことである;「ダイアゴナル」とは、特定の比較マトリックスにより、各々の完全アミノ酸一致に対して割り当てられるスコアまたは数のことである)およびギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)(これは通常、ギャップオープニングペナルティの10分の1である)、さらにはPAM250またはBLOSUM 62などの比較マトリックスが、このアルゴリズムとともに用いられる。ある特定の態様においては、標準的な比較マトリックス(PAM 250比較マトリックスに関しては、Dayhoff et al., 1978, Atlas of Protein Sequence and Structure, 5:345-352;BLOSUM 62比較マトリックスに関しては、Henikoff et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89:10915-10919を参照されたい)も、アルゴリズムによって用いられる。
【0048】
ある特定の態様において、ポリペプチド配列比較のためのパラメータには以下が含まれる。
アルゴリズム:Needleman et al, 1970, J. Mol Biol, 48:443-453
比較マトリックス:BLOSUM 62、Henikoff et al, 1992、上記
ギャップペナルティー:12
ギャップ長ペナルティー:4
類似性の閾値:0
GAPプログラムは、以上のパラメータを用いると有用であると考えられる。特定の態様において、前述のパラメータは、GAPアルゴリズムを用いるポリペプチド比較のためのデフォルトのパラメータである(このほか、末端ギャップに関してはペナルティーなしとする)。
【0049】
本明細書で用いる場合、20種の通常のアミノ酸およびそれらの略号は従来の使用法に従う。全ての目的に関して参照により本明細書に組み入れられる、IMMUNOLOGY--A SYNTHESIS, 2nd Edition, (E. S. Golub and D. R. Gren, Eds.), Sinauer Associates: Sunderland, MA, 1991を参照されたい。20種の通常のアミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸);非天然アミノ酸、例えばα,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、および他の特殊アミノ酸も、本発明のポリペプチドにとって適切な成分となる可能性がある。特殊アミノ酸の例には以下が含まれる:4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリシン、ε-N-アセチルリシン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、σ-N-メチルアルギニン、ならびにその他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば4-ヒドロキシプロリン)。本明細書で用いるポリペプチド表記法では、標準的な用法および慣例に合わせて、左方向がアミノ末端の方向であり、右方向がカルボキシル末端の方向である。
【0050】
天然に存在する残基は、側鎖の共通の特徴に基づいて複数のクラスに分類することができる:
1) 疎水性:ノルロイシン(Nor)、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2) 中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
3) 酸性:Asp、Glu;
4) 塩基性:His、Lys、Arg;
5) 鎖の方向に影響を与える残基:Gly、Pro;および
6) 芳香族性:Trp、Tyr、Phe。
【0051】
保存的アミノ酸置換物には、これらのクラスの構成要素の1つと、同じクラスの別の構成要素との交換が含まれうる。保存的アミノ酸置換物は天然に存在しないアミノ酸残基を含んでもよく、これらは通常、生体システムにおける合成ではなく、ペプチド化学合成によって組み入れられる。これには、ペプチド模倣物、およびその他の逆転型または逆方向型のアミノ酸部分が含まれる。
【0052】
非保存的置換物には、これらのクラスの構成要素の1つと、別のクラスの構成要素の1つとの交換が含まれうる。このような置換残基は、非ヒトタンパク質と相同なヒトタンパク質の領域内に導入されてもよく、該分子の非相同領域内に導入されてもよい。
【0053】
このような変化を加える際に、ある特定の態様によると、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮してもよい。それぞれのアミノ酸には、その疎水性および荷電特性に基づいて、疎水性親水性指標が割り当てられている。それらは以下の通りである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。
【0054】
相互作用性の生物機能をタンパク質に付与する際のアミノ酸の疎水性親水性指標の重要性は、当技術分野では理解されている(例えば、Kyte et al., 1982, J. Mol. Biol. 157: 105-131を参照されたい)。ある種のアミノ酸で、類似した疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸を置換してもよく、これは類似した生物活性を保持し続けることが知られている。疎水性親水性指標に基づいて変化を加える際、ある特定の態様において、疎水性親水性指標が±2以内であるアミノ酸同士の置換が含まれる。ある特定の態様においては、±1以内であるアミノ酸同士が含まれ、ある特定の態様においては、±0.5以内であるアミノ酸同士が含まれる。
【0055】
また、それによって作製される生物学的に機能性のタンパク質またはペプチドを本明細書で開示するような免疫学的態様において使用することが意図される場合には特に、親水性に基づいて、類似のアミノ酸同士の置換を効果的に行うことができることが、当技術分野では理解されている。ある特定の態様において、それに隣接するアミノ酸の親水性に左右される、あるタンパク質の最大局所平均親水性は、その免疫原性および抗原性と、すなわちそのタンパク質の生物学的特性と相関する。
【0056】
以下の親水性の値は、そのアミノ酸残基に対して割り当てられたものである:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);およびトリプトファン(-3.4)。親水性の値の類似に基づいて変化を加える際、ある特定の態様においては、親水性の値が±2以内であるアミノ酸同士の置換が含まれ、ある特定の態様においては、±1以内であるアミノ酸同士が含まれ、ある特定の態様においては、±0.5以内であるアミノ酸同士が含まれる。また、親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定することもできる。これらの領域は「エピトープ性コア領域」とも呼ばれる。
【0057】
アミノ酸置換の例を表1に示す。
【0058】
(表1)アミノ酸置換

【0059】
当業者は、周知の技術を用いて、本明細書に記載したようなポリペプチドの適切な変異体を決定できるであろう。ある特定の態様において、当業者は、活性を破壊することなく変化させうる分子の適切な領域を、活性にとって重要ではないと考えられている領域を標的とすることにより、同定することができる。別の態様において、当業者は、類似したポリペプチド間で保存されている分子の残基および部分を同定することができる。さらなる態様においては、生物活性または構造のために重要である可能性のある領域さえも、生物活性を破壊することもポリペプチド構造に有害な影響を及ぼすこともなく、保存的アミノ酸置換に供することができる。
【0060】
さらに当業者は、活性または構造のために重要である、類似したポリペプチドにおける残基を特定する構造機能解析を詳しく検討することができる。このような比較を考慮して、当業者は、類似したタンパク質における活性または構造にとって重要なアミノ酸残基に対応する、タンパク質におけるアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、このような重要であると予測されたアミノ酸残基に対して、化学的に類似したアミノ酸の置換を選択することができる。
【0061】
当業者はまた、三次元構造およびアミノ酸配列を、類似したポリペプチドにおける三次元構造と関連づけて解析することもできる。このような情報を考慮し、当業者は、その三次元構造を基準にしてポリペプチドのアミノ酸残基のアラインメントを予測することができる。ある特定の態様において、当業者は、タンパク質の表面にあると予想されるアミノ酸残基には根本的な変化を加えないように選択してもよく、これはこのような残基が他の分子との重要な相互作用に関与している可能性があるためである。さらに当業者は、所望のアミノ酸残基それぞれにアミノ酸置換を一つずつ含む、複数の試験変異体を作製することもできる。これらの変異体を次に、当業者に公知の活性アッセイ法を用いてスクリーニングすることができる。このような変異体を用いて、適切な変異体に関する情報を集めることができる。例えば、特定のアミノ酸残基に対する変化によって活性が破壊されるか、望ましくない低下を示すか、または不適切となることが発見された場合、そのような変化を有する変異体を回避することができる。言い換えれば、このようなルーチン的な実験から集められた情報に基づいて、当業者は、単独のまたは他の変異と組み合わせたさらなる置換は回避すべきであるアミノ酸を、容易に決定することができる。
【0062】
いくつかの科学刊行物が二次構造の予測に向けられている。Moult, 1996, Curr. Op. in Biotech. 7: 422-427; Chou et al, 1974, Biochemistry 13:222-245; Chou et al, 1974, Biochemistry 113:211-222; Chou et al, 1978, Adv. Enzymol Relat. Areas Mol. BiOl 47:45-148; Chou et al, 1979, Ann. Rev. Biochem. 47:251-276; およびChou et al, 1979, Biophys. J. 26:367-384を参照されたい。さらに、二次構造の予測を支援するためのコンピュータプログラムが現在利用可能である。二次構造を予測する1つの方法は、相同性モデリングに基づいている。例えば、30%を上回る配列同一性または40%を上回る類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、類似した構造トポロジーを有することが多い。タンパク質構造データベース(PDB)の最近の拡大により、ポリペプチドまたはタンパク質の構造内の潜在的な折りたたみ回数を含む、二次構造の予測性の向上がもたらされた。Holm et al, 1999, Nucl. Acid. Res. 27:244-247を参照されたい。所与のポリペプチドまたはタンパク質において折り畳み回数は制限されていること、および、5構造の重要な数が解明されれば構造予測は劇的に正確になると考えられることが示唆されている(Brenner et al., 1997, Curr. Op. Struct. Biol. 7: 369-376)。
【0063】
さらなる二次構造予測法には、「スレッディング法」(Jones, 1997, Curr. Opin. Struct. Biol. 7:377-87; Sippl et al, 1996, Structure 4:15-19)、「プロファイル解析」(Bowie et al, 1991, Science 253:164-170; Gribskov et al, 1990, Meth. Enzym. 183:146-159; Gribskov et al, 1987, Proc. Nat. Acad. Sci 84:4355-4358)、および「進化的連鎖(evolutionary linkage)」(Holm, 1999、上記;およびBrenner, 1997、上記を参照)が含まれる。
【0064】
ある特定の態様において、タンパク質変異体には、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比べてグリコシル化部位の数および/または種類が変化しているグリコシル化変異体が含まれる。ある特定の態様において、タンパク質変異体には、天然タンパク質よりも多いまたは少ない数のN連結型グリコシル化部位が含まれる。N連結型グリコシル化部位は、配列:Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrを特徴とし、ここでXと表記されたアミノ酸残基は、プロリンを除く任意のアミノ酸残基であってよい。この配列を作製するためのアミノ酸残基の置換により、N連結型糖鎖の付加のための潜在的な新しい部位が得られる。または、この配列を消失させる置換により、既存のN連結型糖鎖が除去されると考えられる。1つまたは複数のN連結型グリコシル化部位(典型的には天然に存在するもの)が消失して1つまたは複数の新たなN連結型部位が作製されるような、N連結型糖鎖の再配列も提供される。そのほかの好ましい変異体には、親アミノ酸配列と比較して、1つまたは複数のシステイン残基が欠失しているかまたは別のアミノ酸(例えば、セリン)に置換されているような、システイン変異体が含まれる。システイン変異体は、不溶性封入体の単離後など、生物活性を持つ立体構造へとタンパク質がリフォールディングされなければならない場合には、有用でありうる。システイン変異体は一般に、天然のタンパク質よりも少ないシステイン残基を有し、典型的には、非対合システインに起因する相互作用を最小限に抑えるために偶数で有する。
【0065】
さらなる態様において、タンパク質変異体は、置換、付加、欠失、またはその任意の組み合わせなどの変異を含むことができ、かつこれは典型的に、本明細書記載の方法に従っておよび当技術分野で公知の方法に従って1つまたは複数の変異誘発性オリゴヌクレオチドを用いる部位特異的変位誘発により作製される。(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 3rd Ed., 2001, Cold Spring Harbor, N. Y.およびBerger and Kimmel, METHODS IN ENZYMOLOGY, Volume 152, Guide to Molecular Cloning Techniques, 1987, Academic Press, Inc., San Diego, CAを参照されたい)。
【0066】
ある特定の態様によると、アミノ酸置換とは、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体の形成に関する結合親和性を変化させ、(4)結合親和性を変化させ、かつ/または(5)そのようなポリペプチドに対して他の物理化学的または機能的な特性を付与するかもしくは改変するものである。ある特定の態様によれば、単一または複数のアミノ酸置換(ある特定の態様においては、保存的なアミノ酸置換)を、天然に存在する配列に(ある特定の態様においては、分子間接触を形成するドメイン外のポリペプチドの部分に)施すことができる。好ましい態様において、保存的アミノ酸置換は典型的に、親配列の構造的特徴を実質的には変化させない(例えば、置換アミノ酸には、親配列に存在するヘリックスを破壊したり、または親配列を特徴づける他の種類の二次構造を乱したりする傾向があるべきではない)。当技術分野で認識されているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、そのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられている、PROTEINS, STRUCTURES AND MOLECULAR PRINCIPLES, (Creighton, Ed.), 1984, W. H. Freeman and Company, New York;INTRODUCTION TO PROTEIN STRUCTURE (C. Branden and J. Tooze, eds.), 1991, Garland Publishing, New York, N. Y.;およびThornton et al., 1991, Nature 354:105に記載されている。
【0067】
ペプチドアナログは、テンプレートペプチドと類似した特性を備えた非ペプチド薬として製薬業界で一般的に使用されている。これらの種類の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物」または「ペプチド模倣薬」と称する。全ての目的に関して参照により本明細書に組み入れられる、Fauchere, 1986, Adv. Drug Res. 15:29;Veber & Freidinger, 1985, TINS p.392;およびEvans et al, 1987, J. Med. Chem. 30: 1229を参照されたい。このような化合物は、コンピュータ分子モデリングの助けを借りて開発されることが多い。治療的に有用なペプチドと構造的に類似しているペプチド模倣物を、同様の治療効果または予防効果を得るために用いることができる。一般にペプチド模倣物は、典型的なポリペプチド(すなわち、生化学的活性または薬理活性を有するポリペプチド)、例えばヒト抗体などと構造的に類似しているが、当技術分野で周知の方法により-CH2-NH-、-CH2-S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、および-CH2SO-より選択される連結で置き換えられていてもよい、1つまたは複数のペプチド連結を有する。ある特定の態様においては、コンセンサス配列のアミノ酸1つまたは複数の、同じ型のD-アミノ酸(例えば、L-リシンの代わりにD-リシン)による体系的な置換を用いて、より安定性の高いペプチドを作製することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変形物を含む拘束性ペプチドを、当技術分野で公知の方法により(全ての目的に関して参照により本明細書に組み入れられる、Rizo & Gierasch, 1992, Ann. Rev. Biochem. 61: 387);例えば、ペプチドを環状化する分子内ジスルフィド架橋を形成できる内部システイン残基を付加することにより、作製することができる。
【0068】
本発明の文脈において、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする配列に言及する場合、「核酸配列」という句は、開示された配列および、相同的なタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの配列をコードする変性核酸配列を含めることを意図している。
【0069】
(a) 改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストの特徴
本明細書で使用される「改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト」とは、成熟IL-4タンパク質の1つまたは複数の部位にさらなるアミノ酸置換を有する米国特許第6,028,176号および第6,313,272号(その全文が参照により本明細書に組み入れられる)に記載のIL-4RAムテインを含む。例示的なトリプルムテイン(triple mutein)は、これらに限定されるわけではないが、以下を含む:D-へリックスにおいて121位のアルギニンをアスパラギン酸で置換、124位のチロシンをアスパラギン酸で置換、および125位のセリンをアスパラギン酸で置換;ならびに、D-へリックスにおいて13位のスレオニンをアスパラギン酸で置換、121位のアルギニンをアスパラギン酸で置換、および124位のチロシンをアスパラギン酸で置換。一態様において、トリプルムテインはN末端のメチオニンをさらに含む。Dヘリックスのこの区域における差異は、第2の結合領域での相互作用の違いと正に相関する。改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコール(PEG)の分子などの非タンパク質性ポリマーの少なくとも1つをムテインに対して部位特異的カップリングさせることができる1つまたは複数の置換をさらに含んでもよい。PEGの部位特異的カップリングによって、例えば、ポリエチレン-グリコシル化(PEG化)分子の利点をもつ、すなわち血漿内半減期が増大しかつ免疫原性が低下する一方で、N末端およびリシン側鎖のPEG化といった非特異的PEG化戦略を上回る強い効力を維持している、改変型ムテインが作製される。
【0070】
本発明のムテインのPEG化の最適化にとって、付着したPEG部分の構造が重要であることを理解されたい。1つの態様において、PEG部分は直鎖状である。直鎖PEG部分は製造プロセスによって長さが制限される、なぜならPEGの分子量が増加するのに伴いPEG-ジオールの量が増えるためである。直鎖部分を用いると、ムテイン上のPEG付着部位の数が増えることによって、PEG-ムテイン分子の大きさは典型的には増大する。これによって、薬理学的プロファイルが最適以下になることが多い。別の態様において、PEG部分は単一の付着部位から分岐する。分枝鎖状PEG部分は、付着部位の数を増加させることなくPEG部分の大きさが増加するという利点を有する。
【0071】
したがって、1つの局面において、ポリエチレングリコール(PEG)部分は約3 kD〜50 kDの範囲の分子量を有する。1つの態様において、PEG部分は約40 kDである。PEGの薬物への共有結合的付着(「PEG化」として知られる)は、公知の化学反応および/または合成技術によって達成されうる。例えば、本発明の1つの局面において、タンパク質のPEG化は、NHS活性化PEGとムテインとを適切な反応条件下で反応させることによって達成されうる。本発明の別の局面において、タンパク質のPEG化は、マレイミド活性化PEGとタンパク質中のシステイン残基のスルフヒドリル基とを適切な反応条件下で反応させることによって達成されうる。
【0072】
3つの異なる方法で、PEG-ムテイン結合体を作製することができる:単一の大きなPEG部分をムテイン上の単一部位に付着させることができる;分枝鎖状PEG部分(すなわちリンカーを介して共に連結された2つ以上の中程度のPEG鎖)をムテイン上の単一部位に付着させることができる;あるいは、複数の短い鎖をムテイン上の複数の部位に付着させてもよい。受容体結合ドメインでまたはその近傍でPEG付着が起こる可能性はほとんど無いため、理論上は、単一部位(monosite)PEG化ムテインが最も高い活性を有する。
【0073】
PEG化およびその他の種類の翻訳後修飾(PTM)における改善点は多岐にわたり、今日では多数のPTM技術および試薬が当技術分野で知られており、新しいものが定期的に開発されている。PEG化のための技術および試薬には、たとえば以下が含まれる:(i) 特殊化されたリンカーおよびカップリング化学;(ii)単一の結合部位へのさらなるPEG基の付着を効果的に行う、分枝PEG;(iii) 部位特異的モノPEG化を含む、部位特異的PEG化;ならびに (iv) 部位特異的酵素PEG化(例えばトランスグルタミナーゼ反応を用いる)。数多くの商業的供給業者より入手可能なさらなる技術および試薬も存在する(例えば、Nektar/Shearwater(ウェブ上のnektar.com)、Sunbio(ウェブ上のsunbio.comおよびsunbio.com/peg-shop)、Celares GmbH(ウェブ上のcelares.com)、NOF Corporation(ウェブ上のpeg-drug.com)などを参照されたい)。
【0074】
また、発現後の分子の適切なフォールディングを可能にする具体的なアミノ酸置換部位の選択も、本発明に含まれる。改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、IL-4RAと比べて10倍以下の親和性喪失でIL-4およびIL-13と結合する。改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、IL-4RAと比べて10倍以下の効力喪失で、IL-4およびIL-13により媒介される活性を阻害する。加えて、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、非改変IL-4RAよりも少なくとも2〜10倍長い血漿内半減期を有する。
【0075】
また、本発明のIL-4ムテインは、天然IL-4ポリペプチド鎖における1つまたは複数の部位での、またはそれの他の残基での、アミノ酸の挿入、欠失、置換、および修飾によっても特徴づけられうる。本発明によれば、あらゆるそのような挿入、欠失、置換、および修飾は、そのIL-4関連活性を保持するIL-4ムテインをもたらすであろう。
【0076】
本発明のさらにもう1つの局面は、実施例2に示したようなタンパク質を発現させリフォールディングさせる方法において提供される。IL-4ムテインは、効率的なPEG化が可能になるように適切に精製されなければならない。例示的な精製法は、以下の実施例2に記載されている。スルフヒドリル保護剤の存在下でムテインがリフォールディングされる時、IL-4ムテインの遊離システインと保護剤との間にジスルフィド共有結合が形成される。対照的に、酸化して安定なジスルフィド結合を形成するスルフヒドリル保護剤のジチオトレイトール(DTT)の使用は、IL-4ムテインの遊離システインとは共有結合を形成せず、このため、そのスルフヒドリル基はPEGマレイミド試薬と自由に反応することができる。スルフヒドリル保護剤の存在下でのリフォールディング後に精製されたIL-4ムテインは、DTTで処理された場合にはPEG試薬と反応できるが、モノPEG化産物と多PEG化産物との混合物が生じ、このことから、既存のIL-4システインもPEG化されることが示唆される。既存のシステインのPEG化は、活性の無い、ミスフォールドした産物をもたらすと考えられる。
【0077】
IL-4受容体に対する、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストの[[Kd]] KDは、実施例4に概要を述べたリアルタイム二分子相互作用解析(BIA)などの技術を含む、当技術分野で公知の任意の方法を用いてアッセイすることができる。BIAは、相互作用物を全く標識することなく、生体分子特異的相互作用をリアルタイムで検討するための技術である(例えば、BIAcore(商標))。光学現象である表面プラズモン共鳴(SPR)の変化は、生体分子間のリアルタイム反応の指標として用いることができる。
【0078】
改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストが免疫細胞の増殖応答を阻害する能力は、実施例5に概要を述べた増殖アッセイ法を用いて評価することができ、この能力は阻害濃度50%(IC50)として表すことができる。
【0079】
BIAcore(商標)アッセイ法において、本発明の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、約1.0nM〜約100nMの範囲にある好ましい[[Kd]] KDでヒトIL-4受容体と特異的に結合する。本発明のより好ましい態様は、ヒトIL-4受容体と約0.5nM〜約1.0μMの[[Kd]] KDで結合する。本発明のさらにより好ましい態様は、ヒトIL-4受容体と約0.1nM〜約10μMの[[Kd]] KDで結合する。さらに、本発明の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストは、想定される通り、約1.0nM〜約100nMの範囲にある好ましいIC50で、ヒトIL-4受容体と結合して、免疫細胞の増殖を促進するその能力を中和すると考えられる。より好ましいヒトアンタゴニストは、約0.5nM〜1μMの範囲にあるIC50で、IL-4受容体と結合して、その免疫細胞増殖能力を中和すると考えられ、本発明の最も好ましいアンタゴニストは、約0.1nM〜約10μMのIC50で、IL-4受容体と結合して阻害する。
【0080】
また本発明の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストのこの態様は、非改変IL-4RAよりも好ましくは少なくとも2〜10倍長い血漿内半減期も示し、本発明の最も好ましい態様は、非改変IL-4RAよりも10〜100倍長い血漿内半減期を示す(実施例7参照)。
【0081】
上記の特徴を備えたいくつかの改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストが、上記のアッセイ法を用いて候補をスクリーニングすることによって同定されている。本発明の態様は、表2に示すポリペプチド配列を有する(SEQ ID NO: 10〜16および32〜33)。
【0082】
(表2)ポリペプチド配列

【0083】
(b) 改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストをコードするポリペプチド
本発明はまた、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストをコードするポリヌクレオチドも提供する。これらのポリヌクレオチドを用いて、例えば、治療用途のために多量のアンタゴニストを産生することができる。本発明は、同じ改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストをコードする変性DNA配列をさらに提供する。所与のポリヌクレオチド配列と同じアミノ酸配列を発現することができる変性DNA配列を構築および発現させる方法が、当技術分野で公知である。
【0084】
本発明のポリヌクレオチドは、化学合成、cDNAライブラリもしくはゲノムライブラリのスクリーニング、発現ライブラリのスクリーニング、および/またはcDNAのPCR増幅を非制限的に含む、さまざまな方法で容易に入手できる。
【0085】
本明細書に記載の組み換えDNA法は概して、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)および/またはCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al, eds., Green Publishers Inc. and Wiley and Sons 1994)に記載の方法である。本発明は、本明細書に記載の核酸分子、および、このような分子を入手するための方法を提供する。
【0086】
適切な核酸配列を入手するための一つの方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。この方法では、逆転写酵素という酵素を用いて、ポリ(A)+RNAまたは全RNAからcDNAを調製する。続いて、典型的には改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストcDNAの2つの別々の領域に対して相補的である、2つのプライマーを、TaqポリメラーゼなどのポリメラーゼとともにcDNAに添加して、ポリメラーゼが2つのプライマー間のcDNA領域を増幅する。
【0087】
本発明の核酸分子を調製するための別の方法は、Engels et al, 1989, Angew. Chem. Intl. Ed. 28:716-34に記載のものなどの当業者に周知の方法を用いた、化学合成である。これらの方法には、特に、核酸合成のためのホスホトリエステル法、ホスホラミダイト法、およびH-ホスホネート法が含まれる。このような化学合成のための1つの好ましい方法は、標準的なホスホラミダイト化学を用いるポリマー支持合成である。典型的には、DNAは数百ヌクレオチド長であると考えられる。これらの方法を用いて、約100ヌクレオチドよりも長い核酸を、複数の断片として合成することができる。続いて断片を一緒にライゲーションすることができる。当業者に公知である他の方法を用いてもよい。
【0088】
改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストをコードさせるために用いうる本発明のポリヌクレオチドは、表3に示されている(SEQ ID NO: 2〜8および31)。
【0089】
(表3)ポリヌクレオチド配列



【0090】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0091】
標準的なライゲーション技術を用いて、本発明のポリヌクレオチドを適切な発現ベクターに挿入することができる。典型的には、用いる特定の宿主細胞において機能を有するようにベクターを選択する(すなわち、ベクターは、遺伝子の増幅および/または遺伝子の発現などが起こりうるように、宿主細胞の機構と適合性がある)。本発明のポリヌクレオチドは、原核生物、酵母、昆虫(バキュロウイルス系)、および/または真核生物の宿主細胞において発現させることができる。宿主細胞の選択は、所望の発現レベルなどのさまざまな要素に依存する。発現ベクターの評価については、Meth. Enz., vol. 185(D. V. Goeddel, ed., Academic Press 1990)を参照されたい。
【0092】
典型的には、宿主細胞内で用いられる発現ベクターは、プラスミドの維持のため、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含む。ある特定の態様において「隣接配列」と総称されるこのような配列は、典型的に、以下のヌクレオチド配列のうち1つまたは複数を含むと考えられる:プロモーター、1つまたは複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、スプライスドナー部位およびアクセプター部位を含む完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現させるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択マーカーエレメント。これらの配列のそれぞれについて、以下に述べる。
【0093】
隣接配列は、同種(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または株に由来)、異種(すなわち、宿主細胞の種または株以外の種に由来)、ハイブリッド(すなわち、複数の供給源からの隣接配列の組み合わせ)または合成のいずれであってもよく、あるいは隣接配列は、IL-4ムテイン受容体アンタゴニストの発現を調節するように通常機能する天然配列であってもよい。このため、隣接配列が宿主細胞の機構において機能性であり、かつそれによって活性化されうる限り、該隣接配列の供給源は、任意の原核生物もしくは真核生物、任意の脊椎動物もしくは無脊椎動物、または任意の植物であってよい。
【0094】
本発明のベクターにおいて有用な隣接配列は、当技術分野で周知のいくつかの方法のいずれかによって入手されうる。典型的には、本明細書において有用な隣接配列、すなわちIL-4ムテイン受容体アンタゴニスト遺伝子の隣接配列以外のものは、マッピングおよび/または制限エンドヌクレアーゼ消化によってこれまでに同定されており、このため、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いて適切な組織源から単離することができる。場合によっては、隣接配列の完全なヌクレオチド配列が公知のこともある。この場合、隣接配列は、核酸合成またはクローニングのための本明細書に記載の方法を用いて合成してもよい。
【0095】
隣接配列の全体または一部のみが公知である場合には、PCRを用いて、かつ/または、同じ種もしくは別の種に由来する適切なオリゴヌクレオチドおよび/もしくは隣接配列断片によるゲノムライブラリのスクリーニングによって、それを入手することができる。隣接配列が未知である場合には、例えばコード配列またはさらには1つもしくは複数の別の遺伝子も含む可能性のあるより大きなDNA片から、隣接配列を含むDNAの断片が単離できる。単離は、適切なDNA断片を作製するための制限エンドヌクレアーゼ消化に続き、アガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth, CA)、または当業者に公知の他の方法を用いる単離によって、行うことができる。この目的を達成するのに適した酵素の選択は、当業者には容易に明らかとなろう。
【0096】
複製起点とは典型的に、市販の原核生物発現ベクターの一部であり、該起点は宿主細胞における該ベクターの増幅を補助する。選択したベクターが複製起点部位を含まない場合には、既知の配列に基づいて化学合成し、ベクター中に連結することができる。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs, Beverly, MA)由来の複製起点は大部分のグラム陰性菌に適しており、種々の起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、またはHPVもしくはBPVなどのパピローマウイルス)が、哺乳動物細胞におけるベクターのクローニングに有用である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターにとっては必要ではない(例えばSV40起点は、単にこれが初期プロモーターを含むという理由で用いられることが多い)。
【0097】
転写終結配列は典型的に、ポリペプチドコード領域の3'端に位置し、転写を終結させる役割を果たす。通常、原核細胞における転写終結配列は、G-Cリッチ断片の後にポリ-T配列が続くというものである。この配列はライブラリから容易にクローニングでき、さらにはベクターの一部として市販されてもいるが、本明細書記載のものなどの核酸合成法を用いて容易に合成することもできる。
【0098】
選択マーカー遺伝子エレメントは、選択培地中で増殖する宿主細胞の生存および増殖のために必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、以下を行うタンパク質をコードする:(a)原核宿主細胞に対して、アンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンなどの抗生物質または他の毒素に対する耐性を付与する;(b)細胞の栄養要求欠損を補完する;あるいは(c)複合培地からは得られない必須栄養素を供給する。好ましい選択マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子である。ネオマイシン耐性遺伝子は、原核宿主細胞および真核宿主細胞における選択に用いることもできる。
【0099】
その他の選択遺伝子を用いて、発現される遺伝子を増幅させてもよい。増幅とは、増殖に不可欠なタンパク質の産生のために需要が大きい遺伝子を、組換え細胞の後続世代の染色体内で直列に反復させるプロセスである。哺乳動物細胞に適した選択マーカーの例には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼが含まれる。哺乳動物細胞の形質転換体を、ベクター中に存在する選択遺伝子の効力によってその形質転換体のみが生存に唯一適合化されているような選択圧下に置く。培地中の選択作用物質の濃度を継続的に変化させ、それにより選択遺伝子および改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストをコードするDNAの両方の増幅がもたらされるような条件下で、形質転換細胞を培養することによって、選択圧を課す。その結果として、増幅されたDNAから、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストが大量に合成される。
【0100】
リボソーム結合部位は通常、mRNAの翻訳開始のために必要であり、これはシャイン-ダルガーノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)によって特徴づけられる。このエレメントは典型的に、プロモーターの3'側かつ改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストのコード配列の5'側に位置する。シャイン-ダルガーノ配列はさまざまであるが、典型的にはポリプリンである(すなわち、A-G含有量が多い)。数多くのシャイン-ダルガーノ配列が同定されており、そのそれぞれを本明細書に示した方法を用いて容易に合成し、原核生物ベクター中で用いることができる。
【0101】
改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストを宿主細胞の外に導くために、リーダー配列またはシグナル配列を用いてもよい。典型的に、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列は、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト核酸分子のコード領域内に、または改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストコード領域の5'端に直接、配置される。数多くのシグナル配列が同定されており、選択した宿主細胞において機能性であるそのいずれかを、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト核酸分子と組み合わせて用いることができる。このため、シグナル配列は、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト核酸分子に対して同種(天然に存在する)でも異種でもよい。さらに、本明細書記載の方法を用いて、シグナル配列を化学合成してもよい。ほとんどの場合には、シグナルペプチドの存在を介した、宿主細胞からの改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストの分泌により、分泌された改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストからシグナルペプチドが除去される。シグナル配列はベクターの成分でもよく、または、ベクター中に挿入された改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト核酸分子の一部でもよい。
【0102】
多くの場合には、核酸分子の転写は、ベクター中に1つまたは複数のイントロンが存在することによって増強される;これは特に、ポリペプチドが真核生物宿主細胞、特に哺乳動物宿主細胞である場合にあてはまる。用いるイントロンは、用いる遺伝子が完全長ゲノム配列またはその断片である場合には特に、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト遺伝子内に天然に存在するものでよい。遺伝子内にイントロンが天然に存在しない場合には、イントロンを別の供給源から入手することができる。イントロンが有効性を現すためには転写されなければならないため、隣接配列および改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト遺伝子に対するイントロンの位置は一般に重要である。したがって、本発明の核酸分子を転写させる場合、イントロンの好ましい位置は、転写開始部位の3'側かつポリ-A転写終結配列の5'側である。コード配列が中断されないように、1つまたは複数のイントロンをcDNAのどちらか一方の端(すなわち、5'側または3'側)に配置することが好ましい。挿入される宿主細胞と適合性がある限り、ウイルス、原核生物、および真核生物(植物または動物)を含む任意の供給源からの任意のイントロンを用いて、本発明を実施することができる。合成イントロンも本明細書に含まれる。複数のイントロンをベクター中で用いてもよい。
【0103】
典型的には、本発明の発現ベクターおよびクローニングベクターは、宿主生物によって認識されかつ本発明の核酸分子と機能的に連結しているプロモーターを含むと考えられる。プロモーターとは、構造遺伝子(一般的には約100〜1000bp以内)の開始コドンの上流(すなわち、5'側)に位置しかつ該構造遺伝子の転写を制御する、転写されない配列である。プロモーターは慣例的に以下の2つのクラスのいずれかに分類される:誘導性プロモーターおよび構成性プロモーター。誘導性プロモーターは、栄養素の有無または温度変化といった何らかの培養条件の変化に反応して、その制御下にあるDNAからの高レベルの転写を開始させる。一方、構成性プロモーターは、遺伝子産物の連続的な産生を開始させる;すなわち、遺伝子発現の制御はほとんどまたは全く行われない。種々の宿主細胞候補によって認識される、多数のプロモーターがよく知られている。供給源のDNAから制限酵素消化によってプロモーターを取り出し、所望のプロモーター配列をベクターに挿入することにより、適切なプロモーターを本発明の核酸分子と機能的に連結させることができる。本発明の核酸分子の増幅および/または発現を導くために、天然型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストのプロモーター配列を用いることができる。しかし、天然プロモーターと比較してより顕著な転写およびより高収率の発現タンパク質が可能であり、かつ使用を選択した宿主細胞系との適合性があるならば、異種プロモーターが好ましい。
【0104】
原核生物宿主とともに用いるのに適したプロモーターには、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系;アルカリホスファターゼ;トリプトファン(trp)プロモーター系;ならびにtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。他の公知の細菌プロモーターも適している。上記配列は公開されており、そのため当業者は、任意の有用な制限部位を供給するために必要に応じてリンカーまたはアダプターを用いて、それらを所望のDNA配列とライゲーションすることが可能である。
【0105】
酵母宿主とともに用いるのに適したプロモーターも当技術分野で周知である。酵母エンハンサーは酵母プロモーターとともに用いるのが好都合である。哺乳動物宿主細胞とともに用いるのに適したプロモーターは周知であり、これには、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、最も好ましくはサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。その他の適した哺乳動物プロモーターには、異種哺乳動物プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。
【0106】
遺伝子発現の制御において関心対象となりうるさらなるプロモーターには、以下が非制限的に含まれる: SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-10);CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの3'末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamoto, et al, 1980, Cell 22:787-97);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 78:1444-45);メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al, 1982, Nature 296:39-42);β-ラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroff et al, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 75:3727-31)などの原核生物発現ベクター;またはtacプロモーター(DeBoer et al, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 80:21-25)。同じく、組織特異性を示しかつトランスジェニック動物において利用されている以下の動物転写制御領域も、関心対象となる:膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al, 1984, Cell 38:639-46; Ornitz et al, 1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol 50:399-409 (1986); MacDonald, 1987, Hepatology 7:425-515);膵β細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-22);リンパ球系細胞において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al, 1984, Cell 38:647-58; Adames et al, 1985, Nature 318:533-38; Alexander et al, 1987, Mol. Cell. Biol, 7:1436-44);精巣細胞、乳房細胞、リンパ球系細胞、および肥満細胞において活性なマウス乳癌ウイルス制御領域(Leder et al, 1986, Cell 45:485-95);肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al, 1987, Genes and Devel 1:268-76);肝臓において活性なα-フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al, 1985, Mol. Cell. Biol, 5:1639-48; Hammer et al, 1987, Science 235:53-58);肝臓において活性なα1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al, 1987, Genes and Devel. 1:161-71);骨髄系細胞において活性なβ-グロビン遺伝子制御領域(Mogram et al, 1985, Nature 315:338-40; Kollias et al, 1986, Cell 46:89-94);脳内のオリゴデンドロサイト細胞において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al, 1987, Cell 48:703-12);骨格筋において活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani, 1985, Nature 314:283-86);ならびに、視床下部において活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al, 1986, Science 234:1372-78)。
【0107】
高等真核生物による本発明の核酸分子の転写を増大させるために、エンハンサー配列をベクター中に挿入することができる。エンハンサーはDNAのシス作用性エレメントで通常は約10〜300bp長であり、プロモーターに対して作用して転写を増強する。エンハンサーは比較的、向きおよび位置に対して非依存的である。これらは転写単位に対して5'側および3'側で認められている。哺乳動物遺伝子から入手可能なエンハンサー配列がいくつか知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインスリン)。しかし典型的には、ウイルス由来のエンハンサーを用いる。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための促進性エレメントの例である。エンハンサーは、ベクター中において本発明の核酸分子の5'側または3'側の位置に接合させてもよいが、典型的にはプロモーターの5'側の部位に配置される。
【0108】
本発明の発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築することができる。このようなベクターは、所望の隣接配列のすべてを含んでいても、含んでいなくてもよい。本明細書に記載した隣接配列の1つまたは複数がベクター中にまだ存在していない場合には、それらを個別に入手してベクター中にライゲーションすることができる。それぞれの隣接配列を入手するために用いる方法は、当業者に周知である。
【0109】
本発明を実施するために好ましいベクターは、細菌、昆虫、および哺乳動物の宿主細胞と適合性のあるものである。そのようなベクターには、特に、pCRII、pCR3、およびpcDNA3.1(Invitrogen, San Diego, CA)、pBSII(Stratagene, La Jolla, CA)、pET15(Novagen, Madison, WI)、pGEX(Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)、pEGFP-N2(Clontech, Palo Alto, CA)、pETL(BlueBacII, Invitrogen)、pDSR-α(PCT公開公報第WO 90/14363号)、ならびにpFastBacDual(Gibco-BRL, Grand Island, NY)が含まれる。
【0110】
そのほかの適したベクターには、コスミド、プラスミド、または改変ウイルスが非限定的に含まれるが、選択した宿主細胞との適合性をベクター系が有さねばならないことを当業者は認識するであろう。このようなベクターには、Bluescript(登録商標)プラスミド誘導体(ColE1に基づく高コピー数のファージミド、Stratagene Cloning Systems, La Jolla CA)、Taqにより増幅されたPCR産物のクローニング用に設計されたPCRクローニングプラスミド(例えば、TOPO(商標)TA Cloning(登録商標) Kit、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体、Invitrogen, Carlsbad, CA)、および哺乳動物ベクター、酵母ベクター、またはウイルスベクター、例えばバキュロウイルス発現系(pBacPAKプラスミド誘導体、Clontech, Palo Alto, CA)などのプラスミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
ベクターを構築して、ベクターの適切な部位に本発明の核酸分子を挿入した後に、完成したベクターを、増幅および/またはポリペプチド発現用の適切な宿主細胞に挿入することができる。選択した宿主細胞への本発明の発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、感染、塩化カルシウム、電気穿孔法、微量注入法、リポフェクション法、DEAE-デキストラン法、またはその他の公知の技法などの方法を含む周知の方法によって達成できる。選択される方法は、使用する宿主細胞の種類に一部依存する。
【0112】
これらの方法およびその他の適した方法は当業者に周知であり、例えば、Sambrook et al., 前記に記載されている。
【0113】
宿主細胞は原核宿主細胞(大腸菌(E. coli)など)でもよく、真核宿主細胞(酵母、昆虫、または脊椎動物細胞)でもよい。適切な条件下で培養された場合、宿主細胞は改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストを合成し、次にこれを、(宿主細胞が培地中に分泌する場合)培地からまたは(分泌されない場合)産生している宿主細胞から直接、採取することができる。適切な宿主細胞の選択は、望ましい発現レベル、活性のために望ましいまたは必要なポリペプチドの修飾(グリコシル化またはリン酸化など)、およびフォールディングして生物活性分子となることが容易かといった、さまざまな要素に依存する。
【0114】
いくつかの適切な宿主細胞が当技術分野では公知であり、その多くがAmerican Type Culture Collection(ATCC), Manassas, VAより入手可能である。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、CHO DHFR(-)細胞(Urlaub et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97: 4216-20)、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞もしくは293T細胞、または3T3細胞などの哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。適切な哺乳動物宿主細胞、ならびに形質転換、培養、増幅、スクリーニング、産物の産生、および精製のための方法は当技術分野で公知である。その他の適した哺乳動物細胞株には、サルCOS-1細胞株およびCOS-7細胞株ならびにCV-1細胞株がある。哺乳動物宿主細胞のさらなる例には、形質転換細胞株を含む、霊長類細胞株および齧歯類細胞株が含まれる。正常二倍体細胞、初代組織のインビトロ培養物に由来する株化細胞、および初代エクスプラントも適している。候補細胞は遺伝子型的に選択遺伝子を欠損していてもよく、または優性作用性の選択遺伝子を含んでもよい。その他の適した哺乳動物細胞株には、マウス神経芽腫N2A細胞、HeLa細胞、マウスL-929細胞、Swiss、Balb-c、またはNIHマウスに由来する3T3細胞株、BHKまたはHaKハムスター細胞株が含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの細胞株はそれぞれ、タンパク質発現の分野の当業者には公知でありかつ入手可能である。
【0115】
同様に、細菌細胞も本発明に適した宿主細胞として有用である。例えば、バイオテクノロジーの分野では、種々の大腸菌株(例えば、HB101、DH5D、DH10、およびMCI061)が宿主細胞として周知である。枯草菌(B. subtilis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、他のバシラス属(Bacillus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)などの種々の株を、本方法に用いることもできる。
【0116】
当業者に公知である酵母細胞の多くの株を、本発明のポリペプチドの発現のための宿主細胞として利用することもできる。好ましい酵母細胞には、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerivisae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。
【0117】
さらに、必要に応じて、昆虫細胞系を本発明の方法に利用することもできる。そのような系は、例えば、Kitts et al, 1993, Biotechniques, 14:810-17; Lucklow, 1993, Curr. Opin. Biotechnol. 4:564-72; およびLucklow et al, 1993, J Virol, 67:4566-79に記載されている。好ましい昆虫細胞は、Sf-9およびHi5(Invitrogen)である。
【0118】
宿主細胞内に存在する本発明のポリヌクレオチドは、膜成分、タンパク質、および脂質などのその他の細胞成分を含まないように単離することができる。ポリヌクレオチドを、標準的な核酸精製技術を用いて細胞から単離することができ、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅技術を用いてもしくは自動合成装置を用いることによって合成することができる。ポリヌクレオチドを単離するための方法はルーチン的であり、当技術分野で公知である。ポリヌクレオチドを入手するためのあらゆるそのような技術を、本発明のアンタゴニストをコードする単離ポリヌクレオチドを入手するために用いることができる。例えば、制限酵素およびプローブを用いて、アンタゴニストをコードするポリヌクレオチドを単離することができる。好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、他の分子を含まないか、または少なくとも70、80、もしくは90%は他の分子を含まない調製物として存在する。
【0119】
本明細書に記載の核酸分子およびポリペプチド分子を組換えおよび他の手段によって産生してもよいことが、当業者には理解されよう。例えば、本発明の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストのcDNA分子は、mRNAをテンプレートとして用いて標準的な分子生物学技術によって作製することができる。その後に、当技術分野で公知であって実施例1に記載されている分子生物学技術を用いて、cDNA分子を複製することができる。実施例2は、本発明の改変型ムテインアンタゴニストの作製に用いた5具体的な組換え発現および精製の技術を述べている。
【0120】
(c) ヒトアンタゴニストの治療的有用性の評価
アレルギー性喘息の治療における特定のアンタゴニストの潜在的有効性を評価するために、アンタゴニストを、実施例5および6に詳述したように細胞増殖アッセイ法にてインビトロで試験することが可能である。さらに、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストの血漿内半減期を、実施例6に従ったラット薬物動態試験によってインビボで測定することができる。
【0121】
(d) 薬学的組成物
任意の上記改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストを、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物として提供することができる。薬学的に許容される担体は、非発熱性であることが好ましい。組成物は、単独で、または安定化化合物などの少なくとも1つの他の作用物質と組み合わせて投与することができ、これは生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、および水を非制限的に含む任意の無菌かつ生体適合性のある薬学的担体中に投与することができる。例えば0.4%食塩水、0.3%グリシンといった、さまざまな水性担体を用いることもできる。これらの溶液は無菌性であり、粒子状物質を一般に含まない。これらの溶液は、従来の周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって無菌化してもよい。
【0122】
組成物は必要に応じて、薬学的に許容される補助物質を含んでもよい。許容される補助物質は、用いる投与量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であることが好ましい。薬学的組成物は、例えば該組成物のpH、浸透圧、粘度、清澄度、色調、等張性、におい、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸収、または浸透を改変、維持、または保持するための補助物質を含むことができる。適した配合材料には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシンなど)、抗菌薬、抗酸化物質(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝剤(ホウ酸、重炭酸、Tris-HCl、クエン酸、リン酸、または他の有機酸など)、増量剤(マンニトールまたはグリシンなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど)、賦形剤、単糖類、二糖類、および他の糖質(グルコース、マンノース、またはデキストリンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど)、着色・芳香・希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、塩形成性対イオン(ナトリウムなど)、保存料(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素など)、溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど)、懸濁剤、界面活性剤、または湿潤剤(プルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート類、例えばポリソルベート20もしくはポリソルベート80など;トリトン;トロメタミン;レシチン;コレステロール、またはチロキサポールなど)、安定性増強剤(スクロースまたはソルビトールなど)、張性増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物――好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム――またはマンニトール ソルビトールなど)、送達媒体、希釈剤、添加剤、および/または薬学的アジュバント。Remington's Pharmaceutical Sciences(18th Ed., A.R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company 1990)を参照されたい。
【0123】
このような薬学的製剤における本発明のアンタゴニストの濃度は、広範囲にさわたって、すなわち、約0.5重量%未満、通常は約1重量%または少なくとも約1重量%から15重量%または20重量%程度の大きさまでの範囲にわたって変動することができ、かつこれは、選択される具体的な投与様式に従い、液体の容積、粘度などに主に基づいて選択されると考えられる。望ましいならば、複数種類のアンタゴニスト、例えばIL-4受容体結合に関して異なる[[Kd]]KDをもつものを、1つの薬学的組成物に含めることができる。
【0124】
患者に対して、単独で、または他の作用因子、薬物、またはホルモンとともに、組成物を投与することができる。これらの薬学的組成物には、有効成分に加えて、活性化合物を薬学的に使用可能な製剤へと処理することを容易にする添加剤および補助物質を含む、適切な薬学的に許容される担体を含めることができる。
【0125】
許容される配合材料は、用いる投与量および濃度でレシピエントに対して非毒性であることが好ましい。
【0126】
薬学的組成物は、例えば組成物のpH、浸透圧、粘度、清澄度、色調、等張性、におい、無菌性、安定性、溶解速度もしくは放出速度、吸収、または浸透を、改変、維持、または保持するための配合材料を含むことができる。適切な配合材料には以下のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない:アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシンなど)、抗菌薬、抗酸化物質(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝剤(ホウ酸、重炭酸、Tris-HCl、クエン酸、リン酸、または他の有機酸など)、増量剤(マンニトールまたはグリシンなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど)、賦形剤、単糖類、二糖類、および他の糖質(グルコース、マンノース、またはデキストリンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど)、着色・芳香・希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、塩形成性対イオン(ナトリウムなど)、保存料(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素など)、溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど)、懸濁剤、界面活性剤、または湿潤剤(プルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート類、例えばポリソルベート20もしくはポリソルベート80など;トリトン;トロメタミン;レシチン;コレステロール、またはチロキサポールなど)、安定性増強剤(スクロースまたはソルビトールなど)、張性増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物――好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム――またはマンニトール ソルビトールなど)、送達媒体、希釈剤、添加剤、および/または薬学的アジュバント。Remington's Pharmaceutical Sciences(18th Ed., A.R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company 1990)を参照されたい。
【0127】
最適な薬学的組成物は、例えば、意図する投与経路、送達様式、および所望の投与量に応じて、当業者によって決定されうる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、上記を参照されたい。このような組成物は、本発明の核酸分子または骨密度調節薬の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボ排出速度に影響を及ぼす可能性がある。
【0128】
薬学的組成物における主要な媒体または担体は、本質的に水性でも非水性でもよい。例えば、注射のために適した媒体または担体は、場合により非経口投与用の組成物において一般的な他の材料を添加した、水、生理的食塩水、または人工脳脊髄液であり得る。中性緩衝生理食塩水、または血清アルブミンと混合した生理食塩水は、さらなる例示的媒体である。他の例示的な薬学的組成物は、pHが約7.0〜8.5のTris緩衝液、またはpHが約4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含み、これはさらにソルビトールまたは適切な代替物も含みうる。本発明の1つの態様において、所望の純度を有する選択した組成物を任意の配合剤(Remington's Pharmaceutical Sciences、前記)と混合することにより、本発明の薬学的組成物を、凍結乾燥した固形物または水溶液の形態として、貯蔵用に調製することができる。さらに、組成物を、スクロースなどの適切な添加剤を用いて凍結乾燥物として製剤化することもできる。
【0129】
薬学的組成物を、非経口的送達用に選択することができる。または、組成物を吸入用、または消化管を通じた送達用(経口など)のために選択することができる。このような薬学的に許容される組成物の調製は当技術分野の範囲内にある。
【0130】
製剤の成分は、投与部位にとって許容可能な濃度で存在する。例えば、緩衝液は、組成物を生理的pHまたはそれよりも幾分低いpHに、典型的には約5〜約8のpH範囲に維持するために用いられる。
【0131】
非経口的投与を意図している場合には、本発明に用いるための治療用組成物は、薬学的に許容される媒体中に本発明の所望の分子を含む、発熱物質非含有の、非経口的に許容される水溶液の形態であってよい。非経口的注入のために特に適した媒体は、適切に保存された無菌性等張液として分子が配合されている滅菌蒸留水である。さらにもう1つの調製物は、生成物の制御放出または持続放出をもたらし、かつその後蓄積注射物を介して送達されうるような、所望の分子と注射用マイクロスフェア、生体分解性の(bio-erodible)粒子、高分子化合物(ポリ乳酸またはポリグリコール酸など)、ビーズ、またはリポソームなどの作用物質との配合物を含みうる。ヒアルロン酸を用いることもでき、これは循環中での持続期間を向上させる効果を有しうる。所望の分子の導入のためのその他の適切な手段には、埋め込み型の薬物送達デバイスが含まれる。
【0132】
1つの態様においては、薬学的組成物を吸入用に製剤化することができる。例えば、本発明の核酸分子または骨密度調節薬を、吸入用の乾燥粉末として製剤化することができる。吸入用溶液を、エアロゾル送達のための噴霧剤とともに製剤化することもできる。さらにもう1つの態様において、溶液を霧状にすることもできる。肺への投与は、化学修飾タンパク質の肺送達を記載している国際公開公報第94/20069号にさらに記載されている。
【0133】
他の態様において、ある種の製剤を経口投与することができる。本発明の1つの態様において、この様式で投与される本発明の核酸分子または骨密度調節薬を、錠剤およびカプセル剤などの固体剤形の調合に通常用いられている担体とともにまたはこれを伴わずに製剤化することができる。例えば、生物学的利用能が最大となりかつ全身移行前の分解が最小限に抑えられるような消化管内の箇所で、製剤の活性部分を放出するように、カプセルを設計することができる。本発明の分子または調節薬の吸収を促進させるために別の作用物質を含めることもできる。希釈剤、芳香剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤を用いることもできる。
【0134】
もう1つの薬学的組成物は、本発明の核酸分子または骨密度調節薬の有効量を、錠剤の製造に適した非毒性添加剤との混合物として含みうる。錠剤を滅菌水または別の適切な媒体中に溶解させることにより、溶液を単位用量剤形として調製することができる。適した添加剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸水素ナトリウム、ラクトース、もしくはリン酸カルシウムなどの不活性希釈剤;またはデンプン、ゼラチン、もしくはアラビアゴムなどの結合剤;またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、もしくはタルクなどの潤滑剤が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0135】
持続送達または制御送達用の製剤中に本発明の核酸分子または骨密度調節薬を含む製剤を含め、そのほかの薬学的組成物は当業者には明らかであろう。リポソーム担体、生体分解性の微粒子、または多孔性ビーズおよび蓄積注射といった、さまざまなその他の持続送達または制御送達の手段を策定するための技術も当業者には公知である。例えば、薬学的組成物の送達のための多孔性高分子微粒子の制御5放出について記載しているPCT/US93/00829を参照されたい。
【0136】
持続放出製剤の別の例には、例えば膜またはマイクロカプセルなどの成形物品の形態の半透過性ポリマーマトリックスが含まれる。持続放出マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号および欧州特許第058481号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸との共重合体(Sidman et al., 1983, Biopolymers 22: 547-56)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langer et al., 1981, J. Biomed. Mater. Res. 15: 167-277およびLanger, 1982, Chem. Tech. 12: 98-105)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.、前記)またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)が含まれうる。持続放出組成物には15また、当技術分野で公知のいくつかの方法のうちいずれかによって調製できるリポソームも含まれうる。例えば、Eppstein et al., 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688-92;ならびに欧州特許第036676号、第088046号、および第143949号を参照されたい。
【0137】
インビボ投与に用いる薬学的組成物は通常、無菌性でなければならない。これは、無菌濾過膜を通す濾過によって達成できる。組成物を凍結乾燥させる場合には、この方法を用いる滅菌を、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかで行うことができる。非経口的投与のための組成物は、凍結乾燥形態で、または溶液として保存することができる。加えて、非経口的組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射用針によって貫通しうる栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0138】
本発明の薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、非経口、局所、舌下、または直腸内手段を非限定的に含む本明細書に記載したいくつもの経路によって、投与することができる。
【0139】
薬学的組成物を調製した後に、それらを適切な容器に入れ、指示される状態の処置に関して標識することができる。このような標識には、投与の量、頻度、および方法が含まれる。
【0140】
(d) 治療的方法
本発明は、IL-4受容体α鎖を結合させて、IL-4およびIL-13が媒介する活性を阻害することにより、障害の症状を改善する方法を提供する。これらの障害には、喘息および他の免疫疾患またはアレルギー性疾患に関連する、マスト細胞、好酸球、およびリンパ球の動員および活性化を含む気道過敏性および気道炎症が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0141】
本発明の1つの態様において、本発明の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストおよび/または本発明の薬学的組成物の治療的有効量を、上述の障害のようなIL-4およびIL-13の活性の増大を特徴とする障害をもつ患者に対して投与する。
【0142】
(e) 治療的有効量の決定
治療的有効量の決定は、十分な当業者の能力範囲内にある。治療的有効量とは、治療的有効量なしで認められる有効性と比較して効果的に喘息を治療するために用いられるアンタゴニストの量のことを指す。
【0143】
治療的有効量はまず、動物モデルで、通常はラット、マウス、ウサギ、イヌ、ブタ、または非ヒト霊長動物で予想可能である。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を決定するためにも用いることができる。続いて、このような情報を用いて、ヒトにおける投与のための有用な用量および経路を決定することができる。
【0144】
ヒトアンタゴニストの治療有効性および毒性、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効である量)およびLD50(集団の50%に対して致死的である用量)は、細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性対治療的有効性の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50比として表記することができる。
【0145】
治療指数の大きな薬学的組成物が好ましい。動物実験によって得られたデータを、ヒトに用いるための投与量範囲の設定に用いる。このような組成物に含まれる投与量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性のないED50を含む血中濃度の範囲にある。投与量は、用いる剤形、患者の感受性,および投与経路に応じて、この範囲内で異なる。
【0146】
厳密な投与量は、治療を必要とする患者に関係する要素に鑑みて、臨床医によって決定されるであろう。投与量および投与は、十分なレベルのアンタゴニストが得られるように、または所望の効果が維持されるように調整される。考慮されうる要素には、疾患状態の重篤度、被験体の全身健康状態、被験体の年齢、体重、および性別、食事内容、投与の時期および頻度、併用薬剤、反応感受性、ならびに療法に対する耐容性/応答性が含まれる。長時間作用型の薬学的組成物は、個々の製剤の半減期および排出速度に応じて、3〜4日毎、週1回、または2週間に1回投与することができる。
【0147】
本発明の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストをコードするポリヌクレオチドを構築して、以下を非制限的に含む、十分に確立された技術を用いて、エクスビボまたはインビボのいずれかで細胞に導入することができる:トランスフェリン-ポリカチオンを介したDNA移入、裸のまたは封入された核酸によるトランスフェクション、リポソームを介した細胞融合、DNAでコーティングしたラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、電気穿孔法、「遺伝子銃」、およびDEAEまたはリン酸カルシウムを介したトランスフェクション。
【0148】
アンタゴニストの有効インビボ投与量は、約5μg〜約50μg/kg、約50μg〜約5mg/kg、約100μg〜約500μg/kg(患者体重)、および約200〜約250μg/g(患者体重)の範囲内である。アンタゴニストをコードするポリヌクレオチドの投与に関して、有効インビボ投与量は、DNA約100ng〜約200ng、500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgの範囲内である。
【0149】
改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストを含む本発明の薬学的組成物の投与様式は、アンタゴニストが宿主に送達される任意の適切な経路であってよい。本発明の薬学的組成物は、非経口投与、すなわち、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、気管内(intracheal)または鼻腔内投与、およびその他の肺への投与様式のために特に有用である。
【0150】
本開示において引用したすべての特許および特許出願は、参照により本明細書に明確に組み入れられる。上記の開示は、本発明を概説するものである。以下の具体的な実施例を参照することによってより完全に理解することができるが、これらは説明の目的のみに提供されるものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0151】
実施例1
IL-4-RAおよびIL-4-REシステインムテインの組換え産生
pET Directional TOPO(登録商標)発現システム(Invitrogen)をIL-4の組換え発現のために選択した。このシステムは、関心対象の遺伝子の大腸菌における高レベルおよびIPTG誘導性発現を目的として平滑末端PCR産物およびT7lacプロモーターの定方向クローニングを行うために、高効率一段階「TOPO(登録商標)Cloning」戦略を用いる。そのほかの特徴には、基礎的な転写を低下させるためのlacI遺伝子、プラスミドの複製および維持のためのpBR322起点、ならびに選択用のアンピシリン耐性遺伝子が含まれる。
【0152】
組換えIL-4タンパク質の産生のためにIL-4をpET101/D-TOPOベクター中にクローニングした。オリゴヌクレオチドプライマーは表4に示されている。フォワードPCRプライマーは、定方向クローニングを容易にするための5'CACC突出部の後にサブクローニング用の固有のNdel制限酵素部位および最初のATG開始コドンが続くものを用いて設計した。リバースPCRプライマーは、c末端タグが確実に組み入れられないようにするための2つの終止コドンおよびサブクローニング用の固有のBamHI制限酵素部位を含む。平滑末端IL-4PCR産物は、以前にクローニングされたヒトIL-4をテンプレートとして用いて作製した。その産物をゲル精製し、塩溶液およびTOPO(登録商標)ベクターとともに室温で5分間インキュベーションして、pET101/D-TOPOベクター中への定方向クローニングを行わせた。この組換えベクターを、化学的コンピテント(chemically competent)One Shot TOP 10大腸菌に形質転換導入した。組換えプラスミドDNAを、正しい配列を確かめるためのDNAシークエンシングに供した。
【0153】
(表4)IL-4 REシステインムテインを作製するためのオリゴヌクレオチドプライマー

【0154】
IL-4/pET101/D-TOPOを、Strategene社製のQuikChange(登録商標)Site-Directed Mutagenesis Kitを用いてIL-4REシステインムテインを作製するためのテンプレートとして用いた。各々のシステインムテインは、ベクターの対向鎖に対してそれぞれ相補的であって、所望のシステイン変異を組み入れるためにコドンTGCまたはGCAを含む、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて作製した。表4に、IL-4REムテインを作製するために用いたプライマーの一覧を示している。互い違いに位置するニック(staggered nick)を含む変異プラスミドを、製造元のプロトコールに定められたサイクルパラメータおよび条件を用いて作製した。この産物をDpnIエンドヌクレアーゼにより37℃で1時間処理し、メチル化された非変異型の親DNAテンプレートを消化した。DpnIで処理したDNAをXL-1 Blueスーパーコンピテント細胞に形質転換導入し、そこで変異プラスミド中のニックを修復させた。配列の正しさを確かめるために、この変異誘発性5プラスミドDNAを標準的なシークエンシング手法によって解析した。
【0155】
実施例2
組換え発現および精製
プラスミドを含むタンパク質による形質転換を受けたBL21 Star(DE3)One Shot細胞(Invitrogen)を至適発現の特徴に関して調べた上で、0D600が約0.4に達するまで37℃で増殖させ、1mM IPTG(Invitrogen)による誘導処理を37℃で3時間行った。1リットル分の細胞を13,000rpmで10分間遠心してペレット化し、秤量した上で-80℃で保存した。凍結細胞ペレットを、細胞1グラム当たり8mlの細胞破壊用緩衝液(0.1Mリン酸緩衝液 pH7.3、0.1% Triton X100、1mM EDTA)中に再懸濁させ、1分間ずつの間をおいて1分間×4回の超音波処理を行った。細胞溶解物を35,000g、10分間の遠心処理によって除去した。続いて細胞ペレットを、30mlの細胞破壊用緩衝液中に再懸濁させ、1分間の超音波処理の後に遠心処理を行うことを2〜3回繰り返して洗浄した。最終的な細胞ペレットである封入体を-20℃で保存した。封入体を、細胞1グラム当たり5mlの可溶化緩衝液(0.2M Tris pH9、7M塩酸グアニジン)中に再懸濁させた。スルホトライシス(Sulphotolysis)試薬(細胞1グラム当たり亜硫酸ナトリウム0.16グラム、テトラチオン酸カリウム0.08グラム)を添加し、封入体を室温で2時間攪拌した。続いて、溶解しなかった成分を35,000gでの20分間の遠心によって除去し、可溶化した封入体のみを残した。続いて、タンパク質を単離するために封入体をSuperdex200サイズ排除カラム(Akta)にかけた。カラムをカラム容量(CV)の2倍の6M塩酸グアニジン/PBS pH7により流速1ml/分で平衡化し、タンパク質を1.5 CVに溶出させた。ピーク画分(各1.5ml)を採取し、12%または4〜20%のBis-Tris-SDSゲル電気泳動によりスクリーニングした。タンパク質を含む画分をプールし、タンパク質分子を還元するために最終濃度7.5mMのDTTを添加した。室温での2時間のインキュベーションの後に、この混合物を水で5倍に希釈し、4.5Lの3mM NaHPO、7mM NaHPO、2mM KCl、120mM NaClに対する透析に供した。透析は、新たな緩衝液に少なくとも3回交換しながら3〜4日間続けた。続いて透析材料を0.2μmフィルターに通して濾過し、酢酸を用いてpHを5に調整した。カラムを10 CVの緩衝液1(25mM酢酸アンモニウム pH5)で平衡化し、続いて注入後に20分間の勾配で100%緩衝液B(25mM酢酸アンモニウム pH5/1M NaCl)にした。ピーク画分(各0.5ml)を採取し、12%または4〜20%のBis-Tris-SDSゲル電気泳動によりスクリーニングした。産物を含む画分をプールし、緩衝液A(0.1% TFA/水)で2倍に希釈した。続いてタンパク質を、C4逆相-HPLC(Beckman system Gold)により、5mlループおよび流速1ml/分を用い、以下のプログラムを用いてクロマトグラフィー処理した:注入期間は10%緩衝液A、10分間の勾配で40%緩衝液B(0.1% TFA/ACN)に、30分間の勾配で50%緩衝液Bに、5分間の勾配で100%緩衝液Bに。ピーク画分(各0.5ml)を採取し、12%または4〜20%のBis-Tris-SDSゲル電気泳動によりスクリーニングした。タンパク質を含む画分を吸引乾燥させ、解析およびアッセイのために0.1M MES pH6.1中に再懸濁させた。
【0156】
実施例3
部位特異的システインPEG化および精製
タンパク質のスルフヒドリルと、直鎖22kDメトキシ-ポリエチレングリコール-マレイミド誘導体(Nektar Therapeutics)のマレイミド基との間の安定的なチオエステル連結を介して、システインを含むIL4 RAムテインをPEG化するためのプロトコールを確立した。2倍モル過剰量のmPEG-MAL 22kD試薬を、反応緩衝液(0.1M MES、pH6)中に溶解したタンパク質60μMに添加した。室温に0.5時間おいた後に、mPEG-MAL 22kDに対して2倍モル過剰量のシステインによって反応を停止させた(図1)。PEG化タンパク質を、反応しなかったmPEG-MAL 22kD(システインにより反応停止させた)および反応しなかったIL4 RAシステインムテインから、陽イオン交換およびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。粗反応混合物を、0.4mLの0.1M MES、pH6で平衡化したVivapure Mini S陽イオン交換カラム(Vivascience)にかけた。カラムを0.4mLの0.1M MES、pH6で2回洗浄し、各洗浄後に2,000×gで遠心した。0.4mLの0.6M NaCl/0.1M MES、pH6を用いたカラムからの遠心処理によって試料を溶出させた。0.4mLの溶出液を、Beckman HPLC system Goldを用いるTSK-GEL G2000SWXL HPLCサイジングカラム(Tosoh Biosep)にかけた。リン酸緩衝食塩水(Dulbecco's PBS)の移動相を流速1ml/分で30分間用いて試料を分離した。ピーク画分(0.5ml)を採取し、4〜12%のBis-Tris-SDSゲル電気泳動によってPEG化タンパク質に関して評価した。産物を含む画分をプールした上で、解析およびインビトロアッセイのために、Ultrafree Biomax-5装置(Millipore)を製造元のプロトコールに従って用いて濃縮し、約60μM(またはほぼ1mg/ml)とした。PEG化タンパク質の最終濃度はアミノ酸解析によって決定した。最終的な収率は表5に示されている。
【0157】
(表5)PEG化IL-4RAシステインムテインの精製収率

【0158】
実施例4
BiaCore IL-4受容体結合アッセイ
IL-4受容体を、BIAcore CM5研究用グレードセンサーチップ上にアミンカップリングによって固定化した。センサー表面をEDC/NHSパルスにより活性化させた。IL-4受容体を10mM酢酸緩衝液(pH 5.0)中に溶解させてフローセル2に注入し、その後に表面を失活させるために1.0Mエタノールアミン-HCLのパルスを与えた。受容体の固定化レベルはほぼ300RUであった。フローセル1はリガンドを用いずに活性化させ、ブランクとして用いた。動態解析の実施にはBiacore Wizardを用いた。IL-4REアンタゴニストの候補をHBS-EP(泳動緩衝液)中に希釈し、30μl/分の流速で3分間注入し、解離時間は15分間とした。チップの再生処理は、一連の濃度における次の注入の前にベースラインに対する10mMグリシン pH2.5(流速100μl/分)の30秒間の2回の注入によって行った。解離定数(KD)値を、直接結合による反応速度論に基づいて各候補について算出した(表5)。その結果、構築物IL4-RE-A104C、IL4-RE-N105CおよびIL4-RE-Q106Cのすべてで0.6nM未満の解離定数が得られたことが示された。
【0159】
実施例5
TF-1細胞増殖アッセイ
IL-4(0.5ng/ml、0.033nM)またはIL-13(5ng/ml、0.416nM)に対するTF-1細胞の増殖応答を用いて、IL-4RE分子の機能的拮抗活性を評価した。このアッセイでは、96ウェルプレート(1×104個/ウェル、容積100μl)において、10%血清を加えたRPMI中で、IL-4またはIL-13およびIL-4RE分子の存在下または非存在下でTF-1細胞を2〜4日間培養した。GM-CSF処理を陽性対照として用いた。最終的な読み取りの24時間前に、10μlのAlamarBlue(容積比10%)を各ウェルに添加した。530/590nmでの蛍光を、WALLAC Victor 2を用いて測定した。阻害濃度50%(IC50)はIL-4RE分子候補の用量漸増法によって決定した。IL-4およびIL-13の阻害に関するTF-1バイオアッセイの結果の要約が表6に示されている。これらの結果は、構築物IL4-RE-K37C、IL4-RE-N38CおよびIL4-RE-Al04Cが、IL-4またはIL-13の存在下でIL-4-RAのそれと同程度のIC50値を示したことを示している。
【0160】
(表6)PEG-IL-4RE BIAcore結合アッセイ、ならびにTF-1細胞増殖アッセイにおけるIL-4RAに対するPEG化ムテインの生物活性評価

【0161】
実施例6
初代細胞増殖アッセイ
IL-4RE分子の前処理後に、IL-4に対するヒト初代細胞(T細胞およびB細胞)の増殖応答も評価した。末梢血単核細胞(PBMC)を末梢血から単離し、T細胞芽球化を誘導するためにその一部をPHAで4日間処理した。同じくPBMCを抗CD40でも処理してB細胞活性を活性化させ、直ちに用いた。細胞を96ウェルプレート(1ウェル当たり細胞105個)に播いた。PHA T細胞芽球およびB細胞調製物を、種々の濃度のIL-4RE分子の存在下で、IL-4(10ng/ml、0.667nM)により3日間刺激した。インキュベーションの最後の20時間におけるトリチウム標識チミジンの取り込みを増殖の指標として用いた。これらのアッセイの結果は表7に示されている。これらの結果は、どちらの初代細胞アッセイに関しても、すべてのPEG化構築物がIL-4RAの5倍未満のIC50を示したことを示している。
【0162】
(表7)B細胞およびT細胞芽球の増殖アッセイにおけるPEG-IL4RE生物活性の評価

【0163】
実施例7
ラット薬物動態試験
体重250〜300グラムの成体雄性Sprague-Dawleyラットを用いた。血液試料の採取のために、ラットに頸静脈カテーテルを挿管した。さらに、静脈内(IV)投与群のラットには、薬剤投与のために大腿静脈カテーテルも挿管した。
【0164】
ラットに対して、IL-4RAまたは改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストのいずれかを、それぞれ1mg/kgおよび0.5mg/kgの用量で投与した。IV経路およびSC(皮下)経路の両方を用いた。IV投与は、留置した大腿静脈カテーテルからの直接注入によって行った。SC投与は胸背領域への注射によって行った。各投与群には3匹ずつのラットを用いた。
【0165】
単回ボーラス注入(IVまたはSC)の後に、血液試料を、投薬前および投薬後の所定の時点(168時間後まで)で採取した。試料に対する遠心処理は採取1時間以内に開始した。血漿を収集し、ドライアイス上に置いた後に約-70℃で保存した。
【0166】
IL-4RAおよび改変ムテインの血漿中濃度は、固相酵素免疫アッセイを用いて定量した。抗IL-4抗体をコーティング用および検出用の試薬として用いた。このアッセイの定量域の下限は0.2ng/mlであった。薬物動態パラメータは、WinNonlin(Pharsight, Mountain view, CA)を用いるノンコンパートメント解析によって得た。特に注目したのは、吸収および排出の動態、分布容積ならびに吸収された量の評価である。
【0167】
実施例8
大腸菌がコードするIL-4ムテイン
高純度で高収率の封入体発現は、製造能力および費用に直接影響を与える。ヒトDNAコドンを利用したIL-4トリプルムテイン構築物を大腸菌での発現に適したプラスミドベクター中に含めることにより、実験室においてIL-4トリプルムテイン分子を作製できることが示されている。ヒトコドンを用いたIL-4トリプルムテイン構築物からは少量の封入体しか得られないが、大腸菌発酵手法は手間がかからない。ヒトコドンを用いたIL-4トリプルムテイン構築物の発現は大腸菌細胞にとって有毒であり溶菌を引き起こすことが観察されており、このため、封入体の収率は低下する。特定の理論に縛られるわけではないが、この知見は、大腸菌内のヒトコドンの量が限られていることに依る可能性がある。この手法を改善するために、大腸菌コドンのIL-4RAプラスミドを用いて、大腸菌がコードするIL4-RE-T13DをQuickChange(Strategene)により作製した。概説すると、QuickChangeおよび適切なプライマーによってIL-4RAプラスミドを改変し、アラニン104(コドンGCT)またはアスパラギン38(コドンAAC)のいずれかの部位のコドンをシステイン(コドンTGC)に改変した。2つの大腸菌コドンのIL4-RE-T13Dプラスミドを、IL-4TM(IL4-RE-T13D)分子をコードするよう作製した(表8)。
【0168】
(表8)大腸菌コドンIL-4TMプラスミド


【0169】
実施例9
PEG化IL-4/IL-13阻害剤
マレイミド-PEG(Nektar、Dow、もしくはNOF製の20 kDa直鎖;Nektar、Dow、もしくはNOF製の30 kDa直鎖;Nektar、Dow、もしくはNOF製の40 kDa直鎖;または、NektarもしくはNOF製の40 kDa分枝鎖)を用いてIL-4TM-N38CまたはIL-4TM-A104CをPEG化する場合、BIAcore法、TF-1細胞ベースのアッセイ法、または末梢血由来の初代Bリンパ球もしくは初代Tリンパ球を用いてアッセイすると活性が有意に低下する(図2)。
【0170】
さらに、追加のシステインを配置する部位が重要であることが認められた。表9に示すように、TF-1活性アッセイ法において、PEG化104Cの活性はPEG化38Cよりも約1/2低下している。
【0171】
(表9)IL-4DMとPEG化IL-4TMの活性の比較

【0172】
この活性低下を相殺するために、QuikChange、適切なプライマー、および大腸菌コドンのN38Cプラスミドを用いてIL-4TM-N38CにさらなるT13D変異を含めた。このT13D変異は、IL-4Rαへの結合親和性を高めることが以前に示されている(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,028,176号を参照されたい)。図3に示すように、40kDaの分枝PEGを有するPEG化T13D-N38Cは、非PEG化IL-4DM(R121D/Y124D)と同等のBIAcoreを有するが、しかしながら、PEG化は全てのPEG化IL-4TM分子のオンレート(on-rate)に影響を与えるため、このデータでは正確に細胞ベースのアッセイを予測することはできない。バイオアッセイにおいて一般に効力を決定するのは、オフレート(off-rate)である。TF-1細胞ベースのアッセイを用いると、40kDaの分枝PEGを有するPEG化T13D-N38CはIL-4DMと同等の活性を有している。
【0173】
類似した結果が、初代T細胞アッセイ法で得られた。このアッセイ法において、ドナー10名から全血を採血し、PBMCを単離した。PBMCをPHA-Pと共に4日間インキュベーションし、その後これらの「芽球」をアッセイ法に用いた。IL-4TM試験化合物の希釈物12種のいずれか一つおよびIL-4と共に、芽球を3日間インキュベーションした。最後の18時間、3H-チミジンを培養物に添加した。細胞を回収し、3H-チミジンが組み込まれたDNAをb-カウンタで定量した。表10は、PEG化による効力の低下および、104Cと比べて38CでのPEG化で増加した効力の改善を実証するものである。
【0174】
(表10)

【0175】
初代B細胞においても試験を実施した。同様に、ドナー5名から全血を採血し、PBMCを単離した。IL-4TM試験化合物の希釈物12種のいずれか一つ、マウス抗ヒトCD40抗体、およびIL-4と共に、PBMCを3日間インキュベーションした。最後の18時間、3H-チミジンを培養物に添加した。細胞を回収し、3H-チミジンが組み込まれたDNAをb-カウンタで定量した(表11)。
【0176】
(表11)

【0177】
同様に、部位104Cと比べて部位38CにおけるPEG化の改善が観察され、かつまた、IL-4DM(R121D/Y124D)と比べてT13DおよびT13D 4OB構築物それぞれの効力が増加したか同等であることも観察された。
【0178】
実施例10
IL-4/IL-13阻害剤のリフォールディング収率の改善
IL-4TM(T13D/R121D/Y124D)は、タンパク質配列の部位38Cまたは104Cのいずれかに7番目のシステイン残基を含む。この奇妙なシステイン残基は、封入体由来のIL-4TMのリフォールディング効率を低下させる。IL-4TMリフォールディング緩衝液へのグルタチオンの添加は、マレイミド連結PEG分子により38Cまたは104CがPEG化される能力を維持しながら、IL-4TMリフォールディングの収率を最適化する。リフォールディング混合液にグルタチオンを添加することに加えて、PEG化に関してIL-4TMの収率を最適化するためのリフォールディングの時間依存性が存在する。タンパク質リフォールディング収率の最大化は、BIAcoreアッセイ法によってモニターされる。最大のリフォールディング効率が達成されたら、リフォールディング溶液のpHを、システインの酸化作用が無効となるpHまで、酸を用いて低下させる。システイン-マレイミド結合が形成されるさらに中性のpHにおいてIL-4TMがマレイミド-PEGと反応するまで、低pHを維持する。
【0179】
参考文献

【0180】
本明細書には電子的手段により配列表を添付しており、これは、USPTOの電子出願方式によってアップロードされたものである。配列表の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。ファイルの詳細は以下のように表示される。
(a) 「AERO1210_4SEQLIST.txt」 - 32 Kilobytes
配列表「AERO1210_4SEQLIST.txt」は、2007年11月14日に作成され、2007年11月14日にアップロードされた。
【0181】
上述の実施例を参照して本発明を説明したが、修正および改変が本発明の精神および範囲内に包含されることを理解されたい。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-4の28、36、37、38、104、105、106位のアミノ酸残基において非タンパク質性ポリマーとカップリングした改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニストであって、13、121、および124位のアミノ酸がアスパラギン酸であり、前記アミノ酸は野生型ヒトIL-4に基づいて番号付けされており、かつ、非タンパク質性ポリマーがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンである、改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項2】
非タンパク質性ポリマーがIL-4の37、38、または104位のアミノ酸残基でカップリングしている、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項3】
SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項4】
非タンパク質性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項5】
ポリエチレングリコールが直鎖状である、請求項4記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項6】
ポリエチレングリコールが分枝鎖状である、請求項4記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項7】
ポリエチレングリコールが約3kD〜50kDである、請求項6記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項8】
ポリエチレングリコールが40kDである、請求項7記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項9】
(a) 請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト;および
(b) 薬学的に許容される担体
を含む、薬学的組成物。
【請求項10】
(a) 請求項8記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト;および
(b) 薬学的に許容される担体
を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
改変型ムテイン受容体アンタゴニストが、約0.1 nM〜約10 μM、約0.5 nM〜約1 μM、または約1.0 nM〜約100 nMのKDでIL-4受容体α鎖に結合する、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項12】
IL-4に対するTF-1細胞の増殖応答を、約0.1nM〜約10μM、約0.5nM〜約1μM、または約1.0nM〜約100nMのIC50で阻害する、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項13】
IL-13に対するTF-1細胞の増殖応答を、約0.1nM〜約10μM、約0.5nM〜約1μM、または約1.0nM〜約100nMのIC50で阻害する、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項14】
IL-4に対するヒトB細胞の増殖応答を、約0.1nM〜約10μM、約0.5nM〜約1μM、または約1.0nM〜約100nMのIC50で阻害する、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項15】
IL-4に対するヒトT細胞の増殖応答を、約0.1nM〜約10μM、約0.5nM〜約1μM、または約1.0nM〜約100nMのIC50で阻害する、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項16】
非改変型IL-4受容体アンタゴニストより少なくとも約2〜10倍長い血漿内半減期を有する、請求項1記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項17】
非改変型IL-4受容体アンタゴニストより少なくとも約10〜100倍長い血漿内半減期を有する、請求項18記載の改変型IL-4ムテイン受容体アンタゴニスト。
【請求項18】
SEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、精製ポリヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−503204(P2011−503204A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534214(P2010−534214)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083589
【国際公開番号】WO2009/065007
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(510133148)アエロヴァンス インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】