説明

改良されたスクラロースの結晶形態およびその製造方法

【課題】ショ糖よりも数百倍の強い甘味を有する甘味料である結晶状のスクラロースおよびそれを製造する方法を提供する。
【解決手段】容器の内容物の連続的な除去および再循環を付与し、システム中のスクラロースに長い滞留時間を付与する工程によって水溶液からスクラロースを連続的に結晶化する方法。このようにして形成された結晶は、比較的低い長さ/直径の比であり、非対称な形態を有し、優れた安定性を示す。より大きな結晶は特に、先行技術の製品におけるロッド状のより大きな結晶と比較してテーパー状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、改良された取扱い特性を有する安定なスクラロース結晶、および該結晶を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
スクラロース(4,1’,6’−トリクロロ−4,1’,6’−トリデオキシガラクトスクロース;ショ糖のものよりも数百倍強い甘味を有する甘味料)は、4,1’および6’位のヒドロキシル基を塩素で置換することによってショ糖から作製される。非常に反応性のある第一級ヒドロキシル基を含む他のヒドロキシル基を保存しつつ、特定のヒドロキシル基を塩素原子で選択的に置換する必要性のため、スクラロースの合成は技術的に興味深い。この合成への非常に多くのアプローチが開発されてきた。例えば、米国特許第4,362,869号、第4,826,962号、第4,980,463号および第5,141,860号(これらは参照によって本書に明白に援用される)を参照。
【0003】
結晶化は、糖、スクラロース及び関連した物質を含むがこれらに限定されない化合物を精製および回収するために広く使用される。結晶化は、溶液中で結晶の形成を誘導することによって、次いで残る溶液(“母液”)から結晶を分離すること、即ち結晶を回収することによって行われる。
【0004】
例えば米国特許第4,343,934号、第5,136,031号、第4,980,463号、第4,977,254号、第5,530,106号、第5,498,709号および第4,950,746号に記載されるように、スクラロースは、典型的に水から針状の結晶として結晶化する。これらの結晶の多くは典型的に、約4:1〜約10:1の範囲(場合によってはさらに高い)の長さ対直径(L/D)の比を有する。実際に、本出願人が承知する全ての過去に知られた結晶化プロセスは、このタイプの針状晶を作り出す。典型的に、多くのこのような針は、壊れており、望ましくない塵(dust)を作り出す。それでもなお、針の少なくとも相当の部分は、高いL/D値を有するものとして残存する。このようなスクラロース結晶は乏しい取扱い特性(低流動性を含む)を有し、他の材料との配合物中に取り込むことを困難にする。
【0005】
これらの問題点を克服するための試みは特許文献において報告されてきた。例えばSankeyによる米国特許第5,932,720号は、該結晶材料を流動床において周囲温度で水の添加、次いで流動した乾燥相(fluidized drying phase)で処理することでスクラロース結晶の流動性を向上させる方法を開示する。
【0006】
ジャクソン等による米国特許第4,918,182において、最大でも10ミクロン(5ミクロンが好ましい)の平均粒度、最大粒度が平均の2倍より大きくない(好ましくは最大で10ミクロン))を有すると考えられるスクラロース結晶が開示される。この製品は、熱に対する向上した安定性を示すと考えられる。スクラロース結晶の熱安定性を向上する方法もまた開示されており、粒度を減少させるためにスクラロースをジェットミリング(jet milling)し、そしてサイズ分布を最大サイズが平均の2倍よりも大きくならな
いようにすることを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術にも拘らず、優れた流動特性を有する安定なスクラロース結晶への要求が残存する(好ましくは、結晶形状を修正するための結晶化後のプロセスを必要としない)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
一側面において、本発明は、スクラロース溶液から安定なスクラロース結晶を生産する方法である。該方法は以下を含む:
スクラロース溶液のフィードストリーム(feed stream)をシステムに導入すること;
システムにおいて連続的にスクラロース結晶を形成させること;
システムからスクラロース結晶を含むスクラロース溶液のアウトプットストリー
ム(output stream)を除去すること;および
該アウトプットストリームの一部を連続的にシステムに再循環させ、スクラロー
ス結晶をアウトプットストリームの残る部分から分離すること
ここにおいて、導入、除去および再循環の速度は、システムを通過するスクラロースが、システム中で少なくとも4時間の平均滞留時間を有するように制御され;そして
分離されたスクラロース結晶を約85°F以下の乾燥温度で乾燥する。
【0009】
別の側面において、本発明は、安定なスクラロース結晶を含む組成物である(少なくともスクラロース結晶の一部が夫々、複数のスクラロース結晶ドメインを含む)。
【0010】
更に別の側面において、本発明は、概してテーパー状の形状である安定なスクラロース結晶を含む組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明に従った結晶スクラロースを製造するのに適したクリスタライザーシステムの概略図である。
【図2】図2は、先行技術のスクラロース結晶の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、本発明に従ったスクラロース結晶の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、先行技術のスクラロース結晶の篩にかけられた画分の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、本発明に従ったスクラロース結晶の篩にかけられた画分の顕微鏡写真である。
【図6】図6は、先行技術のスクラロース結晶の粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図7】図7は、本発明に従ったスクラロース結晶のXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、図面を参照して説明される。このような図面は、制限よりもむしろ例証を意図し、本発明の説明を容易にするためにここに含まれる。本発明を実施するためのプロセス装置を示す図面は、実物大ではなく、工学的な図面としての使用を意図するのではない。
【0013】
ここで図1を参照して、本発明の1つの例証的な実施形態に従った、安定なスクラロース結晶を調製するために適した結晶化のシステムが図形に示される。クリスタライザー容器(crystallizer vessel)10は、懸濁したスクラロース結晶13を含むスクラロース
の水溶液12を含む。再循環ポンプ14は、再循環ストリーム16として容器10からアウトレットストリームの一部を再循環させ、これは熱交換器18を通過し加熱され、クリスタライザー容器10に戻され、このようにしてスクラロース結晶の循環の存在を提供する。外的な熱交換器が図1に示されるが(熱交換器18)、他の加熱の方法もまた、使用され得る(例えば、容器10上の内的に加熱コイルまたは加熱ジャケット)。容器10からのアウトレットストリームの一部は、遠心ポンプ(centrifuge pump)20によって引
き出され、結晶分離機(例えば遠心器22)に送られ、これは母液26から水分を含むスクラロース結晶24を分離する。この母液は別個のクリスタライザーユニット(示されていない)に渡され、容器10に戻される、破棄される又はこれらの組み合わせである。水分を含むスクラロース結晶24は、最終産物として乾燥したスクラロース結晶42(以下にさらに説明される)を提供するために、乾燥機40を通過される。
【0014】
図1の例証的な実施形態において示されるように、バキュームポンプ30によってクリスタライザー容器10から水蒸気が必要に応じて吸引され、液体水ストリーム34(これは破棄される)を形成するためにコンデンサー32中で凝縮され得る。容器10中の溶液12の温度を別の方法で制御することによって(例えば熱交換器18を使用して再循環ス
トリーム16の温度を制御することによって、および/または水を除去することによって)スクラロースの濃度は、飽和点まで上昇させられ、結果として更なるスクラロース結晶の形成を生じる。新たな水性スクラロースがクリスタライザー容器にフィードストリーム36として導入され、これはこの実施形態においては再循環ストリーム16に添加される。任意の撹拌器アセンブリ38が、懸濁したスクラロース結晶13の循環の維持を促進するため、および/またはその結晶の少なくとも一部を破砕するために、スクラロース溶液12の循環および/または乱流を増加するために使用されてもよい。
【0015】
フィードストリーム36は、水溶液中に1%から飽和点までのスクラロースを含み得る(約20重量%が典型的である)。フィードストリーム36は、約100°Fの温度でク
リスタライザーシステムに導入されてもよい。当業者は、より高い又はより低いスクラロースの濃度およびより高い又はより低い温度も、本発明の教示から逸脱することなく使用され得ることを理解する。
【0016】
フィードストリーム36のフロー速度は、プロセスから水34、水分を含むスクラロース結晶24および母液26を除去する速度との組合せで、スクラロース溶液12の容量との関連で、下限が約4時間、好ましくは約6時間、より好ましくは約12時間であるクリスタライザー容器10中のスクラロースの滞留時間を与えるように典型的に制御される。典型的に滞留時間は約100時間よりも短く、好ましくは約50時間よりも短く、より好ましくは約24時間よりも短い。
【0017】
図1の実施形態においてフィードストリーム36は、熱交換器18の前方の再循環ループに入るように示されるが、それは熱交換機の後に該ループに入ってもよく、またそれは結晶化容器10に直接入ってもよい。
【0018】
熱交換器18は、典型的にチューブ状の熱交換器であるが、他のタイプが使用されてもよい。それは、再循環ストリーム16において約2°Fの温度上昇を与えるために典型的に制御される。クリスタライザー容器10の温度は、典型的に約75°F〜約110°Fの範囲内であるように制御され、圧力は典型的に約0.7psi(ポンド/インチ)〜1.2psi(絶対圧)に制御される。当該結晶化の技術分野における当業者であれば、熱交換機での温度上昇、容器の温度および容器の圧力の種々の組合せが、表面下の沸騰を起こすことなく水の蒸発および除去を達成するために、当該技術分野において既知の方法によって、互いに関連して特定されるこれらのパラメーターを用いて使用され得ることを理解する。従って、温度が循環するスクラロース結晶13の融点を超えない限り、そしてクリスタライザー容器10における圧力が、十分な水の蒸発および除去ができるのに十分低い限り、温度および圧力の他の組合せも使用され得る。従って、これらの変数全てが、容器10中でのスクラロース結晶の形成を引き起こすために相互に関連し制御される。
【0019】
加熱された再循環ストリーム16は典型的にクリスタライザー容器10のヘッドスペースに導入され、そこで合体したフィードおよび再循環ストリーム17中の水の一部が容器10に入るときに蒸発し、それによって液を冷却しスクラロースの濃度を上昇させる。
【0020】
約2〜約15分、好ましくは、約4〜約8分でクリスタライザー容器の内容物のターンオーバーを与えるために、再循環ポンプ14は再循環ストリーム16の十分なフロー速度を作り出す。“ターンオーバー(turnover)”という用語は、クリスタライザー容器10におけるスクラロース溶液12の全容量に等しい液体容量の再循環ポンプ14を通った移動を示すようにここで使用される。再循環ポンプ14は連続的に運転される。
【0021】
ここで使用されるように“連続的(continuous)および連続的に(continuously)”という修飾されていない用語は、バッチ運転(batch operation)と異なり、完全に連続的
および断続的な運転の両方を包含すると理解される。如何なる特別な説明または理論によって拘束されることを意図することなく、本出願人は、ここに記載されるように与えられる連続的なターンオーバーが、本発明に従ったスクラロース結晶の形成に重要であると考える。
【0022】
図1に描写された本発明の実施形態において、産物の単離は遠心器22から水分を含むスクラロース結晶24を、典型的に約3重量%の湿分レベルで、放出することで開始する。遠心器から結晶は結晶を保持し、一方でそれらの乾燥機への供給を制御しているスクリューホッパー(screw hopper)に供給される。1つの適切な乾燥機はProcedyne
Continuous Fluid Bed Dryer(ニュージャージー州、New BrunswickのProcedyne Corporationから入手可能)である。本発明に従った使用に適した他の乾燥機は、2002年8月29日に公開された米国特許出願公開番号第2002/0120134 A1(参照によって本書に援用される)に記載される。乾燥機への供給は、エアロック(air lock)として働く回転バルブを通る。Procedyne乾燥機を使用して、空気は底の分配器からスクラロース結晶を通って供給され、それによって床を流動化し、セラミックフィルターを通って乾燥機から出る。その空気は冷却され、湿気が凝縮することを可能にし、再圧縮され、特定の温度に加熱され、そして乾燥機の底へ再度入るように戻される。窒素が空気の代わりに乾燥媒体として使用されてもよい。乾燥機中の流動化したスクラロース結晶層が一定のレベルに達した時、それは吐出管から溢れ、そして別のエアロックに入り、後に保存用に集められる。乾燥したスクラロース結晶42の含水率は、約0.2%〜約10%であり得る(典型的には約0.5%)。
【0023】
本発明のもう1つの例証的な実施形態において、バキュームポンプ30およびコンデンサー32は図1に示される実施形態から削除され得、スクラロースの結晶化は容器10における溶液12を冷却することによってもたらされ得、これによって溶解度の限界を超え、スクラロース結晶の形成を引き起こす。この冷却は、熱交換器18において又は溶液12を冷却する何らかの同等の手段によってもたらされ得る。更に、図1には外的な熱交換器が示されるが、他の冷却手段も使用され得、例えば内的な冷却コイルまたは容器10上の冷却ジャケットである。溶液12を冷却することによって、スクラロースの濃度は飽和点に上昇され、結果としてスクラロース結晶の形成を生じる。この代替的な実施形態において、新たな水性スクラロースは、スクラロース溶液12のものよりも高い温度で、フィードストリーム36としてクリスタライザー容器に導入される。好ましくは、フィードストリーム36は、スクラロース結晶の優れた収率が獲得され得るように、スクラロースで殆ど飽和している。第一の実施形態におけるように、任意の撹拌器アセンブリ38が、スクラロース溶液12の循環および/または乱流を増加させるために使用されてもよい。
【0024】
この実施形態において、典型的に水中に約50重量%のスクラロースを含むフィードストリーム36は、約200°Fの温度においてクリスタライザーシステムに導入される。熱交換器18(通常はチューブ状の熱交換器)は、再循環ストリーム16における約2°Fの温度降下を付与するように制御される。クリスタライザー容器10における温度は約75°F〜約110°Fの範囲内であるように制御される。フィードストリーム36は、該システムへ完全に連続的に供給されてもよく、また供給は断続的であってもよい。
【0025】
更に他の実施形態は、上記の2つの実施形態の何らかの組合せを含んでもよい。
【0026】
本発明の乾燥したスクラロース結晶42の貯蔵寿命は、先行技術の結晶よりも高いが乾燥条件に幾分高い感受性、およびそれらの中に保持された水分量により高い感受性を有することが見出された。結晶スクラロースの貯蔵寿命は、一般的に加速老化試験を実施することによって推定される。この試験において、結晶は50℃(122°F)に制御された
雰囲気中に維持され、定期的にサンプリングされる。各々のサンプルは、水中に溶解され、10%溶液のpHが、pHが1単位降下する(僅かなスクラロースの分解を示す)経過時間を測定するために追跡される。伝統的な方法で作製された結晶は、この試験において少なくとも3日までこのような分解が示されなければ安定だと考えられた。これは、約8年の周囲条件下での貯蔵寿命と同等であると考えられる。
【0027】
本発明に従った安定なスクラロース結晶(即ち、上記の貯蔵寿命試験を満たすスクラロース結晶)を得るために、結晶産物が乾燥される温度を約85°F以下に制限することが重要である。約50°F〜約70°Fの範囲の乾燥温度が好ましく、約60°Fの温度が典型的である。さらに、米国特許出願公開番号第2002/0120134 A1において開示されるように、結晶産物の水分率は安定性に本質的な影響を有し、より高いレベルは安定性を向上する傾向がある。本発明に従った安定な結晶産物を提供するために、約0.2重量%〜約10重量%の水分レベルが適切であり、0.5重量%が好ましい。好ましい温度において、そして前述した加速条件下で3日経過後のpHの降下を示す以前の結晶の典型的な水分レベルに乾燥された場合、新たな結晶は少なくとも3日、より典型的には4〜6日、そして多くの場合6日より長く降下を示さない。
【0028】
乾燥した結晶42の貯蔵寿命、即ち安定性はまた、クリスタライザーにおけるスクラロース溶液12のpHを制御することによっても向上し得る。この目的のために、約5.5〜約8.5、好ましくは約6.5〜約7.8、そしてより好ましくは約7〜7.8のpHにスクラロース溶液12を緩衝化することも有用である。例示的なバッファーには酢酸ナトリウムが含まれるが、他のものも使用され得る。
【0029】
ここで図2〜5に注目し、これらは先行技術のスクラロース結晶および本発明に従って作製された結晶の顕微鏡写真である。図2は典型的な先行技術のスクラロース結晶の分別されていないサンプルを示し、図3は、本発明に従って作成された典型的な産物の分別されていないサンプルを示す。
【0030】
図4は、80−メッシュ(mesh)の篩を通過したが、140−メッシュの篩上に保持されたスクラロース結晶の典型的な従来技術サンプルからの材料を示す。図5は、80−メッシュの篩を通過したが、140−メッシュの篩上に保持された、本発明に従ったスクラロース結晶の典型的なサンプルからの材料を示す。このようにして、図4および5は、従来技術および本発明のスクラロース産物各々に存在するより大きなサイズ画分の結晶をより明確に見ることを可能にする。
【0031】
図3において見られるように、本発明のスクラロース結晶は、概して幾分細長く非対称な外観を有する。完全な(分別されていない)サンプルを示す結晶は典型的に、サンプルの90重量%が約30μm〜約150μm、より典型的には約40μm〜約100μmよりも小さい粒度を有し、一方で10重量%は約3μm〜約40μm、より典型的には約4μm〜約9μmよりも小さい粒度を有するような粒度の分布を有する。本発明に従って作製されたスクラロース結晶はまた一般的に、与えられたサンプルについて平均で、約6よりも小さい長さ対直径(L/D)の割合を有し、好ましくは約4よりも小さい。ここで使用されるように、結晶の長さは、結晶の最も長い寸法の長さとしてとられ、幅は、最長の寸法に直角に測定できる最も大きい幅である。
【0032】
図4および5の比較において見られるように、本発明に従って作製されたスクラロース結晶のより大きい粒度の画分は、一般的に従来技術のスクラロースのより大きい粒度の画分を含む、長く、薄く実質的に対称的な針状晶と違った形状を有する結晶を含む。どちらかと言えば、本発明のより大きなサイズの画分の結晶は、概して実質的に全ての結晶上で平行な表面を欠くことによって特徴付けられ、それよりも、例えばテーパー状又は丸みの
あるテーパー状のセグメントによって特徴付けられる傾向がある。結晶の多くは単一のテーパー状のセグメントを含み。結晶の殆どは明らかな対称性のない不規則な形状である。
【0033】
如何なる特別な理論または説明によっても拘束されることを意図することなく、本出願人は、本発明のスクラロース結晶はその異例で有益な形状および特性を、クリスタライザーシステムを通る結晶の連続的な再循環および該システム中のスクラロースの比較的長い滞留時間を与えるためのインプットおよびアウトプット速度の制御に帰すると考える。これらの条件下、スクラロース結晶は、少なくとも結晶の一部、特に初期に形成され得る長く薄いものが破砕される十分な機械的乱流に曝されると考えられる。破砕は、再循環ポンプ14において、熱交換器18において、システムのパイプの曲がり目において結晶−結晶接触により、および/または他の方法によって起こり得る。
【0034】
このような結晶の破砕は、本発明に従って形成された結晶の比較的低いL/D比を少なくとも部分的に説明し得る。さらに、このような条件下で結晶が成長するための新たなサイトが現存の結晶上に生成され、溶液からこれらのサイト上へのスクラロースの後の析出が本発明の非対称および不規則な形状の結晶の形成を結果として生じると考えられる。おそらくこの新たなサイト上の結晶の成長に加えて、またはそれに代わって、該システム中のスクラロースの比較的長い滞留時間を考慮すると、より小さな結晶の凝集が本発明に従ったスクラロース結晶に典型的に見られる不規則な形状を形成するのかもしれない。このような結晶の成長および/または凝集に起因して、本発明の結晶の多くは複数のスクラロース結晶ドメインを含むことが更に考えられる。
【0035】
本発明に従ったスクラロース結晶は、優れた取扱い特性および流動性を有する。これらの特性の1つの基準は、結晶の山に保持され得る最も急な角度(水平に対して)として定義される安息角である。低い安息角は、よく流動する粉末(取扱いおよびスクラロースを含む配合物中の他の材料と混合する容易さに望ましい特徴)を示す。本発明に従ったスクラロース結晶は、概して約42°よりも小さい安息角を有する。先行技術の結晶化方法によって作製されたスクラロース結晶は、典型的に幾分高い安息角を示す。本発明のスクラロース結晶のもう1つの有利な性質は、単離された結晶に機械的縮小(diminution)プロセスが実施されない(幾つかの先行技術のプロセスと同様に)ので、該産物は相対的にダストフリーである。
【0036】
ここで図6および7について、本発明に従ったスクラロース結晶のXPRDパターンが、先行技術のスクラロース結晶のXPRDパターンと比較された。
【0037】
Shimazu XRD−6000 粉末X線回折計を用いCu Kα放射を使用して、XRPD分析が実施された。この機器は高精度(fine focus)X−線管を備え付けている。管電圧およびアンペア数は、各々40kVおよび40mAに設定された。ダイバージェンス(divergence)およびスキャッタリング(scattering)スリットは1°に設定され、受信スリットは0.15mmに設定された。回折される電磁波は、NaIシンチレーション検出器によって検出された。3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)において2.5〜40°2θでシータ−ツーシータ(theta-two theta)連続スキャンが使用された
。機器のアライメントを調べるためにシリコンスタンダードが分析された。XRD−6000v.4.1を用いてデータは集められ分析された。
【0038】
図6は従来技術のスクラロースのXRPDパターンを示し、図7は本発明に従ったスクラロース結晶のXRPDパターンを示す。相対的なピークの強度(relative peak intensity)における違いが見られる。
【実施例】
【0039】
図1に見られるシステムは、垂直の円柱状タンクを4−フィートの直径、12フィートのストレートサイド、45°の錐底面および8インチのボトムディスチャージノズルを備えた保持したクリスタライザー容器として含む。
【0040】
クリスタライザー再循環ポンプ14は、Model MPAFの軸流遠心ポンプを備え、そのインレット、アウトレットおよびインペラーは全て直径10インチである(供給元:Goulds Pumps of Seneca Falls,NY)。ポンプは、約5分毎に容器の内容物のターンオーバーを与えるために十分な速さで完全に連続的に(即ち、断続的ではなく)運転される。
【0041】
再循環ストリームがクリスタライザー容器に入る点は、液体の接線的なエントリーを付与するように配置され、容器の内容物中に懸濁したスクラロース結晶の循環を維持することを補助する乱流または渦運動を結果として生じる。該システムはTEMAクラスBEM管式単一通過熱交換器(shell-and-tube single pass heat exchanger)18を備えてい
る。このような熱交換器は多くの製造業者から広く入手可能であり、当該業界において良く知られている。熱交換器は、0.5インチ〜1.5インチのチューブサイズを有し、2〜5フィートのスタティック液体ヘッドが交換器上に維持されるようにクリスタライザー容器10に対して位置決めされ、これによって水蒸気が容器のヘッドスペースに入る前に加熱された再循環ストリームから早期に急速に流れるのを防ぐ。典型的に、該システム中の液体の沸騰は、スクラロース結晶の制御されない核生成(nucleation)およびクリスタライザーの内側の表面上でスクラロース結晶のエンクラステーション(encrustations)
の形成を回避するために最小限に抑えられる。
【0042】
遠心器22はモデルHZ1250Ph(Pharmaceutical)Horizontal Peeler遠心器であり、ケンタッキー州FlorenceのKrauss−Maffei Process Technology Inc.から入手可能である。このユニットは補助ディスチャージユニットを装備し、直径49.2”×25.125”ディープオープニング(deep opening)を有し、内蔵の粗いバッキング(coarse backing)を保持した1ピースの縫い目のないポリエステルスクリーンを収容している。乾燥機はProcedyne Continuous Fluid Bed Dryerである。
【0043】
容器10は約半分満たされた状態で運転される。20%のスクラロース水溶液フィードストリームは、熱交換器18の前方の再循環ループに約100°Fの温度で断続的に導入され、熱交換器は再循環ストリームを2°F加熱するように設定された。容器の内容は、約100°Fの温度で維持され、熱交換器による入熱および水の急速な蒸発による蒸発冷却のバランスをとることによって制御がもたらされる。後者は容器のヘッドスペースの圧力を約1.0psi(絶対)に調節することによって制御されている。
【0044】
水、水分を含むスクラロース結晶および母液をプロセスから除去する速さとの組合せで、フィードストリームの流れの速さは、クリスタライザー容器中のスクラロースの約24時間の滞留時間を付与するように制御される。結晶は遠心器によって断続的に集められ、上述のProcedyne乾燥機を使用して、約0.5重量%の含水率を有する最終産物を得るために約60°Fの乾燥機の温度で乾燥される。
【0045】
産物の粒度分析はCoulter LS100Q Particle Size Analyzer(フロリダ州マイアミのCoulter Corporationから入手可能)を使用して実施された。分析器は、IsoparTM G 流動イソパラフィン(テキサス州ヒューストンのExxonMobil Chemicalから入手可能)を分散媒質として使用し、光散乱によって作動する。スクラロース結晶産物は、サンプルの9
0重量%が62μmよりも小さい粒度を有し、一方で10重量%が約4μmよりも小さい粒度を有し、30μmの平均を保持するような粒度分布を有する。
【0046】
前述の加速老化試験における本製品の安定性は少なくとも3日であり、これは典型的な周囲保存条件下での約8年の貯蔵寿命と一致する。
【0047】
本発明は特定の実施形態を参照してここに例証され説明されるが、本発明は示された項目に限定されることを意図するのではない。むしろ、種々の修飾が本願特許請求の範囲と同等の範囲(scope and range)内で本発明の真の目的および範囲から逸脱することなく
詳細においてなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定なスクラロース結晶をスクラロース溶液から生成する方法であって、該方法は以下を含む:
スクラロース溶液のフィードストリームをシステムに導入すること;
該システムにおいて連続的にスクラロース結晶の形成を起こすこと;
該システムからスクラロース結晶を含むスクラロース溶液のアウトプットストリームを除去すること;および
該アウトプットストリームの一部を該システムに連続的に再循環させ、該アウトプットストリームの残る部分からスクラロース結晶を分離すること;
ここにおいて、該導入、除去および再循環の速度は、該システムを通過するスクラロースが、該システム中で少なくとも4時間の平均滞留時間を有するように制御され;そして該分離されたスクラロース結晶を約85°F以下の乾燥温度で乾燥させる。
【請求項2】
該導入、再循環および除去のステップの少なくとも1つが完全に連続的に実施される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該導入、および除去のステップの少なくとも1つが断続的に実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該導入ステップが、内容物において渦運動を作り出すために、該フィードストリームと該アウトプットストリームの再循環部分の少なくとも1種を該システムの内容物に接線的に導入することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該導入ステップの前に、該フィードストリームと該アウトプットストリームの再循環部分を合体することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該滞留時間が約6時間〜約50時間である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該滞留時間が約12時間〜約24時間である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該アウトプットストリームを除去するステップが、約2分〜約15分の該システムにおける液体のターンオーバー時間を付与する速さで実施される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該アウトプットストリームを除去するステップが、約4分〜約8分の該システムにおける液体のターンオーバー時間を付与する速さで実施される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該再循環が、該スクラロース結晶を少なくともその一部を破砕するために十分な機械的乱流(mechanical disturbance)に曝すことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該システムから水を除去することおよび該システムを冷却することの両方の1つによってスクラロース結晶の形成が引き起こされる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
該圧力および温度を制御するステップが、該システムにおいて水の一部を蒸発させるための該圧力および温度を選択することを含み、該方法は該システムから蒸発した水を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法
【請求項13】
該圧力が約0.7psi〜約1.2psiであり、該温度が約75°F〜約110°Fである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
圧力および温度を制御するステップが該システムにおける液体を冷却することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
スクラロース結晶を乾燥させるステップが、約50°F〜約70°F間の温度で実施され、分離された結晶が約0.2重量%〜約10重量%の含水率を有する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
スクラロース結晶を分離するステップの後に、該結晶を約60°Fの温度で乾燥させることを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
スクラロース結晶の少なくとも一部が、各々複数の結晶スクラロースドメインを含む、安定なスクラロース結晶を含む組成物。
【請求項18】
42°よりも小さい安息角を有する請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
スクラロース結晶各々が、結晶の長さ(結晶の長さはそれの最も長い寸法である)および該結晶の長さに対して直角で測定される最大結晶幅を有し、ここで該結晶の長さと最大結晶幅の比が平均で6よりも小さい請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
スクラロース結晶各々が、その結晶の長さ(該結晶の長さは最も長い寸法である)および該結晶の長さに対して直角で測定される最大結晶幅を有し、ここで該結晶の長さと最大結晶幅の比が平均で4よりも小さい請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
該サンプルの90重量%が約30μm〜約150μmよりも小さい粒度を有し、10重量%が約3μm〜約40μmよりも小さい粒度を有する請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
スクラロース結晶が、約0.2%〜約10%の含水率を有する請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
スクラロース結晶が、概してテーパー状である(tapered)安定なスクラロース結晶を含
む組成物。
【請求項24】
スクラロース結晶の各々が、結晶の長さ(結晶の長さはそれの最も長い寸法である)および該結晶の長さに対して直角で測定される最大結晶幅を有し、ここで該結晶の長さと最大結晶幅の比が平均で6よりも小さい請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
スクラロース結晶の各々が、結晶の長さ(結晶の長さはそれの最も長い寸法である)および該結晶の長さに対して直角で測定される最大結晶幅を有し、ここで該結晶の長さと最大結晶幅の比が平均で4よりも小さい請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
該サンプルの90重量%が約30μm〜約150μmよりも小さい粒度を有し、10重量%が約3μm〜約40μmよりも小さい粒度を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
42°よりも小さい安息角を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
該スクラロース結晶が、約0.2%〜約10%の含水率を有する請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1の方法によって調製された安定なスクラロース結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−225591(P2011−225591A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137098(P2011−137098)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【分割の表示】特願2006−506176(P2006−506176)の分割
【原出願日】平成16年4月26日(2004.4.26)
【出願人】(509178806)テート アンド ライル テクノロジー リミテッド (17)
【Fターム(参考)】