説明

改良されたワイヤグリッド基板構造及び斯かる基板を製造する方法

本発明は、多層基板構造に関し、この多層基板構造は、少なくとも1つの担体層11と、第1の層12であって、上記担体層及び該第1の層が互いに接触する、第1の層と、上記第1の層とは異なる化学組成を持つ少なくとも1つの第2の層13であって、上記第1及び第2の層が互いに接触する、第2の層とを有し、上記第2の層が、開口を形成し、各開口は、回折限界より小さい少なくとも1つの面内寸法を持ち、上記回折限界が、励起光の放射線波長により定められる。本発明は更に、斯かる基板構造及び発光センサの使用及び製造プロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサにおいて使用する多層基板構造に関する。更に、本発明は、斯かる多層基板構造を使用及び製造する方法、並びに多層基板構造を有する発光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、標的分子の存在を検出する又はその量を定量的に測定することが可能なデバイスである。標的分子としては、例えば、しかし、以下に限定されるものではないが、例えば血液、血清、血漿及び唾液といったサンプル中におけるタンパク質、ウイルス、細菌、細胞要素、細胞膜、胞子、DNA、RNA等がある。標的分子は、検体とも呼ばれる。バイオセンサは、検体をキャプチャする特定の認識要素を有する表面を使用することができる。斯かる表面は、この表面に特定の分子を付けることにより修飾されることができる。この表面は、サンプル流体に存在する標的物質をバインドするのに適している。これらの分子は、分子リガンドと呼ばれる。斯かる分子リガンドの例は、ヌクレオチドプローブ、抗体などである。バイオセンサのアクティブ表面領域の、分子リガンドといった生体分子に対するインターフェースは、この表面にそれらを共有結合的に付けるよう調整された化学性に主に依存する。これにより、後続して起こる注目する特定の標的へのバインディングが促進される。
【0003】
マイクロ、又はナノ多孔性基板(膜)が、急速なバインディング動力学で広域を結合するバイオセンサ基板として提案されてきた。ガラス基板上の異なるワイヤグリッド構成が開示されるEP−06766040−A号において、斯かるセンサの例が示される。このバイオセンサのアクティブ領域は、ガラス上に堆積されるワイヤグリッドから成る。特に、下位回折限界ワイヤを備えるパターンを使用することにより、入射する偏光の強度が、表面近くの20〜30nm層内でのみ顕著となり、それを超えると抑制される。これは、局所バインディングの検出をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に検体濃度が低い(例えば1nM以下又は1pM以下)とき、拡散動力学はバイオセンサ分析の総合的な性能において重要な役割を持つ。特定の分子リガンドに対する検体の最適なバインディング効率のため、特定の表面領域及び短い拡散長さは、非常に有利である。
【0005】
本発明の目的は、例えば発光センサといったセンサにおける局所バインディング効率を最適化し、これにより信号対ノイズ比を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、励起光で照射される発光センサに使用する多層基板構造により実現され、この多層基板構造は、
少なくとも1つの担体層(11)と、
第1の層(12)であって、上記担体層及び該第1の層が互いに接触する、第1の層と、
上記第1の層とは異なる化学組成を持つ少なくとも1つの第2の層(13)であって、上記第1及び第2の層が互いに接触する、第2の層とを有し、上記第2の層が、開口を形成し、各開口は、回折限界より小さい少なくとも1つの面内(in-plane)寸法(W1)を持ち、上記回折限界が、上記励起光の放射線波長により定められる。
本発明による基板は、表面を形成する第1の層と、ワイヤを形成する第2の層とを有し、励起光の回折限界より小さい少なくとも1つの面内寸法(W1)を持つ開口が形成されるよう配置される。2つの層は、異なる化学組成を持ち、例えば2つの異なる物質でできている。2つの異なる化学組成を使用することにより、ワイヤ間の表面を形成する第1の層は、第2の層、即ちワイヤに対して化学的に異なった挙動をすることができる。これらの異なる化学的性質を使用することにより、生体分子のバインディングは、いずれかの層でだけ容易にされることができる。
【0007】
寄生濃度デプリ−ションは、標的分子のバインディングがこの標的が検出される部位に制限されないプロセスである。これは、検出領域に含まれる標的のバインディング率の減少を生じさせることになる。非アクティブセンサ領域に対する標的分子のバインディングを最小化する、例えば、第2層に対するバインディングを最小化することは、検出領域に含まれる標的のバインディング率の誘発を生じさせるであろう。寄生濃度デプリ−ションは、非アクティブセンサ領域に対する標的分子のバインディングを最小化することにより、現在の基板構造内に制限される。
【0008】
好ましくは、担体層及び第1の層は、基板の下に光源及び/又は検出器を配置することを可能にするために、励起光に対して実質的に透過的である。実質的に透過的であるというのは、励起光に対する透過率が少なくとも10%、好ましくは1/e(36.8%)以上であることを意味する。
【0009】
より好ましくは、第1の層は、5〜10nmの厚さを持つ。この厚みは、励起光が層を通過することを可能にする。金でできている第1の層に対しては、200nmから1100nmの間の光の波長に対して、その1/e強度崩壊長は、11nmから21nmの間のあるという虚数の(imaginary)屈折率(ソース:Palik)に従う。
【0010】
好ましい実施形態において、第1の層は、好ましくは金、チタン、プラチナ及びパラジウム又はこれらの組み合わせを有するグループから選択される不活性金属を有する。
【0011】
好ましい実施形態において、ワイヤを形成する第2の物質は、アルミニウム、酸化アルミニウム又はこれらの組み合わせである。
【0012】
好ましい実施形態において、第1の層は、分子標的の固定を容易にするために化学的に修飾される。効率的な標的の固定は、バイオセンサの基本的な特徴の1つである。固定の後、検体バインディングの量が、視覚化されることができる。表面に生体分子を付けるために、この表面は、例えば硫黄又はアミン成分を介して修飾されることができる。
【0013】
好ましい実施形態において、第1の層の表面は、チオール基で官能化される。チオールは、S原子を介して金属面上に共有結合的に付く。これは、例えば分子リガンド又はプローブといった生体分子に対するアンカーを共有結合的に提供する優雅で簡単な方法を提供する。好ましくは、チオール分子は、10〜18の炭素原子長を持つアシル鎖を有する。
【0014】
好ましくは、第1の層の表面は、分子リガンドで官能化される。このリガンドは、特定の捕捉プローブを含むがこれに限定されるものではない。分子リガンドは、例えばDNA、RNA、アプタマー、抗体、Fabフラグメント、Fcテールといった核酸とすることができる。それらは、例えばレセプタ、抗体といったタンパク質でもよい。抗体は、ポリクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体の形で使用されることができる。分子リガンドは、薬又は細胞又は他の化合物でもよい。
【0015】
好ましい実施形態において、第2の層は、官能化されない。官能化されないということは、官能基が第1の層に特異的に配置され、第2の層には配置されないことを意味する。しかしながら、これは、第2の層に何らかの官能基が存在することを排除するものではない。第2の層に存在する官能基の量は好ましくは、第1の層に存在する量と比べて20%未満、さらにより好ましくは10%未満である。
【0016】
本発明は更に、発光センサに関し、このセンサは、請求項1に記載の多層基板構造と、上記センサを照射する励起放射線源(31)と、発光放射線を検出する検出器(32)とを有する。好ましくは、発光センサは、発光バイオセンサである。
【0017】
本発明は更に、本発明による基板構造を製造する方法に関し、
担体層(11)を与えるステップと、
上記担体層の上に第1の層(12)を加えるステップと、
上記第1の層の上に第2の層(13)を加えるステップと、
上記第2層のパターン化により、回折限界より小さい少なくとも1つの面内寸法(W1)を持つ開口を規定するステップとを有する。
【0018】
本発明は、本発明による基板構造及び標的分子の検出のための発光センサの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のある実施形態による基板構造を示す図である。
【図2】上記基板構造の化学的修飾を示す図である。
【図3】発光センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による多層基板構造及び発光センサシステムは、標的要素の定性的又は定量的検出に非常に適している。ここで、標的要素は、例えば生体分子、複合体、細胞分数又は細胞といった生物学的物質とすることができる。「標的」という用語は、検出されることができる可能性のあるラベル粒子を含む何らかの特性(例えば光学濃度、磁感受性、電荷又は発光)を持ち、こうして関連付けられる標的要素の存在を(間接的に)明らかにする任意の粒子(原子、分子、複合体、ナノ粒子、微粒子その他)を表す。「標的」及び「ラベル粒子」は、同一でもよい。
【0021】
バイオセンサのアクティブ表面領域の生体分子に対するインターフェースは、例えば捕捉プローブといった分子リガンドを表面に共有結合的に付けるよう調整された化学性に依存し、これにより、注目する特定の標的の捕捉が促進される。
【0022】
ガラス面は、アルデヒド基を露出させるためアルキルシリル(alkylsilyl)アルデヒドを用いて容易に修飾されることができる。これは、生体分子(タンパク質、合成オリゴヌクレオチド)において多量に存在する一級アミンと反応することになる。同様に、エポキシシラン(epoxysilane)が同じ目的で使用されることができる。これにより、一級アミンと反応するエポキシド基で表面がコーティングされる。代替的に、アミノシランを用いた処理は、アミノ基の有無にかかわらず、生体分子とクロスリンクするアミノ基をガラス面上で露出させる。例えば、DNAバックボーンのリン酸基が、紫外線への露出の際の安定的及び効率的なバインディングにとって充分である。しかしながら、これらの修飾戦略は、ガラス上でだけでなくAl/Al上でも効率的である。後者は、光学センサに用いられるワイヤグリッドパターンにとって好ましい物質である。
【0023】
従来のワイヤグリッド基板において、アルミニウム・ワイヤグリッドは、ワイヤ間のスペースを充填する媒体において、回折限界を下回る間隔W1(ワイヤ間のオープンスペース)でガラス基板上へ堆積される。ワイヤ間の空間に関する好適な値は70nmである。これは、オープン/クローズ比率1/1に対して140nmの期間を生じさせる。ここで、ワイヤ間のスペースを充填する媒体における回折限界は、(真空における)波長の0.5倍とワイヤ間のスペースを充填する媒体の屈折率の実部との間の比率として規定される。周期構造の場合、寄生的な回折効果を回避するために回折限界を下回る周期的間隔を持つことが好ましい。周期構造は好まれる。なぜなら、これは、バインディングに関して利用可能な第1の層の最も大きい領域を生じさせるからである。これらを考慮すると、ワイヤ間の空間に関する値は、700nmより小さい励起波長に関して140nm未満であることが好ましく、より好ましくは100nm未満である。有効な測定体積は、(ワイヤの間隔に基づき)ガラス面の上のわずか20〜30nmの薄い層にまで減らされる。励起光は、20〜30nmの崩壊長を持つ。環境状態において、Alワイヤの表面は、酸化される(Al)。斯かるナノ構造化された表面上への捕捉プローブの共有結合の従来の戦略は、ガラスのシラン化(silanization)を有し、結果としてAlワイヤのシラン化も有する。その結果として、分子標的は、ワイヤ間のガラス面に対してだけでなくワイヤ自体に付くことができる。これにより、寄生濃度デプリ−ションが原因でセンサの感度が減少される。これは注目する標的が、ワイヤの間、及びワイヤ上の至る所でバインドすることができるが、一方、アクティブセンサ領域は、ワイヤ間のガラス面に制限されることを意味する。寄生濃度デプリ−ションは、非アクティブセンサ領域に対する標的分子のバインディングを最小化することにより減らされることができる。アクティブセンサ領域に対する標的分子のバインディングも、濃度デプリ−ションを生じさせる。しかし、これは許容可能である。なぜなら、これは、測定された信号の増加も生じさせるからである。ワイヤ間の層に対する分子リガンドの特定のターゲティングは、検出感度を増加させるために有利である。
【0024】
ワイヤ自身と比較してワイヤ間で異なる化学組成を持つ基板を形成することが好ましい。これにより、標的の選択的なバインディングが実現されることができる。図1は、斯かる基板の概略的な概要を示す。担体層11は、第1の物質の第1の層12によりカバーされる。この第1の層の上に、ワイヤグリッドのワイヤを形成する第2の層13が配置される。ワイヤグリッドが開口を形成する。開口はそれぞれ、回折限界より小さい少なくとも1つの平面内寸法(W1)を持ち、回折限界は、励起光の放射線波長により定められる。
【0025】
好ましくは、第1の層は実質的に、不活性金属で形成される。不活性金属の化学的特徴は、純粋なAl又はAl酸化物の特徴とは異なる。その結果、特定の化学処理は、ワイヤでなく不活性金属に影響を及ぼすことになる。逆もまた同じである。ワイヤの間の表面上にだけ分子標的を固定するため、第1の実施形態では、この第1の層は、分子標的の固定を容易にするために化学的に修飾される。複数の修飾が、想定されることができる。これらの修飾は、標的に特有のプローブ又はリガンドの後のバインディングを容易にするものである。第2の実施形態では、第1の層が標的バインディングのための分子リガンドを有するという態様で修飾されるような修飾が想定される。第3のオプションは、特定の分子リガンドを必要とせずに、標的の即時的なバインディングを容易にする第1の層の修飾とすることができる。
【0026】
第1の層の起こりうる化学修飾の例は、不活性金属で実質的に形成される第1の層をチオールと反応させることとすることができる。チオールは、S原子を介して金属面上に共有結合的に付く。これは、図2Aに概略的に表される。使用されるチオールに基づき、これらは、表面に再適合することができる。これにより、分子スタック、いわゆる自己組織化単分子層23(SAM)が形成される。好ましくは、チオール分子は、10〜18の炭素原子長を持つアシル鎖を有する。チオールが特定の官能基(R)(例えばカルボン酸塩、チオール、アミン)を含む場合、これらの基は表面上へ露出されることになり、分子標的(21、図2)を共有結合的に固定するためのアンカーとして機能する。この戦略を採用することにより、生体分子はワイヤ間のアクティブセンサ領域上に特異的にバインドすることになる。これにより、センサ感度が増加される。図2Bは、図1Aからのチオール分子を介した、生体分子又は分子又は分子リガンドの共有的結合を示す。例として、抗体22が、センサ表面12に結合される。ワイヤグリッド上での非特異的な分子付着が、従来のブロック試薬(例えばBSA)により追加的に防止されることができる。
【0027】
本発明による基板構造は、標的バインド測定を容易にするため、発光センサシステムにおいて使用されることができる。ある側面によるこの発光センサシステムが、図3に概略的に示され、好ましくは、以下の要素を有する。
【0028】
a) 担体層、第1の層及び第2の層を有する基板。透過的構成において、担体は所与のスペクトル範囲の光に対して、特に以下に規定される光源により発される光に対して、好ましくは高い透過性を持つ。基板の担体は、例えばガラス又は何らかの透明なプラスチックから生み出されることができる。担体は、浸透性であってもよい。それは、回折限界より小さい平面開口寸法(W1)において最少のサイズを持つ担体上に与えられる構造を規定する開口を搬送する機能を提供する。
【0029】
この基板は、標的要素が集まることができる第1のバインディング表面層を有する。「バインディング面」という用語は、物質の第1の層の表面を一意に参照するものとして、ここでは主に選択される。バインディング面によりバインドされ、このバインディング面からサンプルチャンバに向かって離れて崩壊長にわたり延在する検出ボリュームにおいて、バインディング面に入射する放射線に応じてバインディング面でエバネッセント放射線を提供する第2の層が提供される。所与の媒体における「エバネッセント放射線」という用語は、所与の媒体の波数(それは、真空における波数を媒体の屈折率倍したものである)より大きい空間周波数を持つ非伝播波を指す点に留意されたい。本発明によれば、エバネッセント波は、全反射により生成されるか、又は下位回折限界開口上への入射により発生される。この開口は、本発明による第2の層である。特に、エバネッセント波領域は、照射光に基づき通常10〜500nmの1/e崩壊長で減衰することになる。更に、光学構造体が好ましくは、エバネッセント領域が光学構造体を通り実質的には伝播しない種類であることに留意されたい。これは、開口規定構造の面外寸法(out of plane dimension)が、1/eの崩壊長より実質的に大きいことを意味する。
【0030】
b) 以下において「入射光ビーム」と呼ばれる放射線のビーム34を、それが少なくとも担体のバインディング表面での検査領域において反射されるよう上述の担体へと放出する源31。光源は例えば、入射光ビームを形成及び方向付ける何らかの光学機器がオプションで提供される、レーザー又は発光ダイオード(LED)とすることができる。検査領域は、バインディング表面の部分領域とすることができるか、又は完全なバインディング表面を有することができる。この源は、概して、入射光ビームにより照射される実質的に円形の点の形状を持つことになる。
【0031】
c) 源から放出された入射放射線に基づき、検出ボリューム36に存在する標的要素からの放射線35を検出し、可能であれば記録モジュール33に接続される検出器32。「標的要素からの放射線」という用語は、標的要素の存在を検出するのに適した任意の放射線も含み、可能であれば任意のラベル粒子も含むことに留意されたい。以下に限定されるものではないが、放射線は、散乱、反射、発光タイプのいずれでもよい。検出器は、所与のスペクトルの光が検出されることができる任意の適切なセンサ又は複数のセンサを有することができる。センサは例えば、フォトダイオード、光レジスタ、光電池又は光増倍管とすることができる。この明細書において光又は放射線という用語が使用される場合、全てのタイプの電磁放射線を含むものとして意図される。特に、文脈に応じて、可視だけでなく、非可視の電磁放射線を含む。
【0032】
本発明によるセンサデバイスは、バインディング面での検査領域における標的要素の感知的かつ正確な定量検出又は定性検出を可能にする。上記の光学的検出手順の1つの利点は、精度を有する点にある。なぜなら、担体に隣接する開口の端から開口へと通常10〜30nm延在する少ないボリュームだけをエバネッセント波が調査するからである。こうして、例えばこのボリュームの後のバルク材料からの散乱、反射、発光といった障害が回避される。
【0033】
発光センサシステムは、標的要素の定性的な検出に関して使用されることができる。これは、例えば存在する又はしないといった、特定の標的分子に対する単純なバイナリ反応を生み出す。しかしながら、この発光センサシステムは、検出された反射光から検査領域における標的要素の量を定量的に決定する評価モジュールを有することができる。これは例えば、エバネッセント光波における光の量、即ち標的要素により吸収又は散乱される光の量が、検査領域におけるこれらの標的要素の濃度に比例するという事実に基づかれることができる。検査領域における標的要素の量は、関連付けられるバインディングプロセスの動力学に基づき、開口と通信するサンプル流体におけるこれらの要素の濃度を順に表すものとすることができる。
【0034】
本発明の文脈におけるサンプルは、生物学的ソースから生じるものとすることができる。例えばリンパ、尿、脳体液、ブロンコ力流体(BAL)、血液、唾液、血清、排泄物又は精液といった生物流体が含まれる。また、例えば上皮組織、結合組織、骨、筋組織(例えば内臓筋又は平滑筋及び骨格筋)、神経組織、骨髄、軟骨、皮膚、粘膜又は毛髪といった組織が含まれる。本発明の文脈におけるサンプルは、植物サンプル、水サンプル、土壌サンプルといった環境ソースから生じるサンプルとすることもでき、家庭若しくは産業ソースから生じるサンプルとすることもでき、又は食品若しくは飲料サンプルとすることもできる。本発明の文脈におけるサンプルは、生化学であるか化学反応から生じるサンプル、又は製薬、化学、若しくは生化学作成から生じるサンプルとすることもできる。必要に応じて、例えば固体サンプル又は粘着性懸濁液の場合、サンプルは、液体サンプルを得るために本発明による使用の前に、溶媒を用いて可溶性にされ、均質化され、又は抽出されることを必要とする場合がある。これにより、液体サンプルは、溶液又は懸濁液の状態でもよい。液体サンプルは、本発明による使用の前に1つ又は複数の前処理に従属されることができる。斯かる前処理は、希釈、濾過、遠心分離、事前濃度(pre-concentration)、堆積、透析、溶解、eluation、抽出を含むが、これらに限定されるわけではない。前処理は、例えば酸、塩基、バッファ、塩、溶媒、反応的な染料、洗剤、乳化剤、キレート化剤、酵素、カオトロピック剤といった溶液に化学又は生化学物質を追加することを含むこともできる。
【0035】
本願明細書に表される本発明の文脈において、「the」「a」又は「one」及びこれと均等な表現は、特に明記しない限り、単一の存在を参照するのではなく、複数の同一の存在を参照することができる点を理解されたい。本書では、単数形は、読者の便宜のために使用される。
【0036】
用語又は規定は、単に本発明を理解するためだけに設けられている。特に示されない限り、これらの規定は当業者により理解されるより少ない範囲を持つものとして解釈されるべきではない。図面、開示及び添付の請求の範囲の研究から、開示された実施形態に対する他の変形例が、請求項に記載の本発明を実施する際、当業者により理解及び実行されることができる。
【0037】
実施例1
本発明による基板構造の製造
【0038】
透明なガラス基板上に、厚さ5〜10nmのAu層が蒸発される。そして、続いて厚さ160nmのアルミニウム層が蒸発される。アルミニウム層の上で、ゾルゲルマスクが、ゾルゲルエンボシングにより規定される(M. Verschuuren及びH. van Sprangによる「3D Photonic Structures by Sol-Gel Imprint Lithography」、MRS 2007 Spring Meeting(サンフランシスコ)(vol. 1008, 2007)参照)。ワイヤは、金の層へと下方にアルミニウム層にエッチングすることで定められる。
【0039】
実施例2
基板構造の自己組織化単分子層(SAM)コーティング
【0040】
MercaptoUndecanoic酸、即ちエタノール中に溶解されるHS−C1020−COOH(SAM溶液)を含むガラス瓶において不活性金属の第1の層を持つ基板を配置する。
【0041】
暗闇で3時間室温にて培養する。
【0042】
基板を取り出し、エタノールですすぐ。
【0043】
窒素銃を用いて基板を乾燥させる。
【0044】
水1ml当たり76.6mgの1−エチル−3−[3−ジメチルアミノ・プロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)を量る。
【0045】
水1ml当たり12.5mgのN−ヒドロキシ・スルホ・スクシンイミド(NHS)を量る。
【0046】
使用のちょうど前に1:1の比率でEDC及びNHSを混合して、基板上に液滴を置く。
【0047】
湿った大気中で7分培養する。
【0048】
サイフォンを使用して、水で1秒基板をすすぐ。
【0049】
窒素銃を用いて基板を乾燥させる。
【0050】
チップ上に抗体/捕捉プローブ(1mg/ml)の液滴を置く。湿った大気中の暗闇で30分培養する。
【0051】
サイフォンを使用して、1倍リン酸塩バッファ食塩水(PBS)で1秒基板をすすぐ。
【0052】
窒素銃を用いて基板を乾燥させる。
【0053】
これで、基板は、使用する準備が整う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光で照射されるセンサに使用する多層基板構造であって、
少なくとも1つの担体層と、
第1の層であって、前記担体層及び該第1の層が互いに接触する、第1の層と、
前記第1の層とは異なる化学組成を持つ少なくとも1つの第2の層であって、前記第1及び第2の層が互いに接触する、第2の層とを有し、
前記第2の層が、開口を形成し、各開口は、回折限界より小さい少なくとも1つの面内寸法を持ち、前記回折限界が、前記励起光の放射線波長により定められる、多層基板構造。
【請求項2】
前記担体層及び第1の層が、励起光に対して実質的に透過的である、請求項1に記載の基板構造。
【請求項3】
前記第1の層が、5〜10nmの厚さを持つ、請求項1又は2に記載の基板構造。
【請求項4】
前記第1の層が、不活性金属を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板構造。
【請求項5】
前記第2の層が、アルミニウム、酸化アルミニウム又はこれらの組み合わせで実質的に形成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板構造。
【請求項6】
前記第1の層が、分子標的の固定を容易にするために化学的に修飾される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板構造。
【請求項7】
前記第1の層の表面が、チオール基で官能化される、請求項6に記載の基板構造。
【請求項8】
前記第1の層の表面が、分子リガンドで官能化される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基板構造。
【請求項9】
前記第2の層が、官能化されない、請求項7又は8に記載の基板。
【請求項10】
発光センサであって、請求項1に記載の多層基板構造と、前記センサを照射する励起放射線源と、発光放射線を検出する検出器とを有する、発光センサ。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の基板構造を製造する方法において、
担体層を形成するステップと、
前記担体層の上に第1の層を加えるステップと、
前記第1の層の上に第2の層を加えるステップと、
前記第2の層のパターン化により、回折限界より小さい少なくとも1つの面内寸法を持つ開口を規定するステップとを有する、方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の層が、蒸発を介して加えられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の層が、捕捉プローブバインディングを容易にするために化学的に修飾される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の基板構造の使用、又は標的分子の検出に関する請求項10に記載の発光センサの使用。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−502273(P2012−502273A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525673(P2011−525673)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053916
【国際公開番号】WO2010/029498
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】