説明

改良された半導体構造を備える光導電性スイッチ

【課題】高周波での性能が改善された光導電性スイッチを提供する。
【解決手段】光導電性スイッチは、比較的広いエネルギーバンドギャップを有する第1及び第2の半導体、及びそれらの間に挟まれるように置かれる第3の半導体からなる光導電層を有する。第3の半導体のエネルギーバンドギャップは第1及び第2の半導体に比較して狭いものとされる。また、第1の半導体と第2の半導体とは、導電タイプ(p型又はn型)が相違し、これによりダブルヘテロ接合構造とされる。第1の半導体の表面に離間して電極が設けられる。低挿入損及び高アイソレーションの光導電性スイッチが実現される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般に、光電子装置に関するものであり、とりわけ、低コストで製造可能な高性能光導電性スイッチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】マイクロ波スイッチは、高周波数で機能し、ON/OFF比が改善され、挿入損失が減少し、アイソレーションが強化されるものと期待されている。光導電性スイッチ(PCS)は、光を利用して、その導電性を制御し、従って、それを通る電子信号を変調する。光導電性スイッチは、トランジスタのような同等の電子制御スイッチよりも漂遊電子インピーダンスが小さい。従って、光導電性スイッチは、潜在的に高周波及び高性能マイクロ波スイッチとして用いるのにより適している。
【0003】Austonに対する米国特許第3,917,943号には、超短光パルスによって駆動される、半導体基板上に製造された第1のタイプのPCSが開示されている。狭いギャップによって分離された2つの金のマイクロ・ストリップ伝送ラインが、吸光絶縁半導体基板の表面に配置されている。ギャップを通って基板に送り込まれる第1の光パルスが、ギャップ内における基板表面に多量の電荷を発生することによって、PCSをONにする。第1の光パルスの間に生じ、ギャップに送られる第2の光パルスが、接地面まで延びる基板の大部分に多量の電荷を発生する。これによって、マイクロ・ストリップ伝送ラインとアースが短絡し、PCSがOFFになる。基板を低温で成長させるか、又は、基板にイオン注入を施して、キャリヤの寿命を短縮することによって、極めて高速の応答が得られるようになる。しかし、これによって、キャリヤの移動度も低下し、PCSの挿入損失が大きくなる。
【0004】Derkits,Jr.による米国特許第4,755,663号には、AustonのPCSの欠点として、光パルスによって生じる電気インパルスが、キャリヤ輸送ではなく、キャリヤ再結合によって左右される点にあることが示されている。Derkitsは、ギャップを構成する基板の一部に、ある表面テクスチャを示す、漸変組成の感光半導体材料から構成される領域が含まれるPCSを開示している。感光半導体材料の表面に電荷キャリヤを発生するのに十分な強度の光ビームでギャップを照射すると、PCSが導通する。
【0005】図1には、Derkits,Jr.によって開示されたPCS1の実施形態が示されている。この場合、シリコンが望ましい半絶縁半導体基板10の主表面21上には、接地面電極11又はオーム接触が配置されている。基板の反対側の主表面22には、比較的広いエネルギー・バンド・ギャップを有する半導体材料による層18が配置されている。層18の上には、漸変組成の合金半導体材料による層19が重ねられている。ギャップ13によって分離された電極14及び15が、層19の表面に配置され、基板の主表面22の一部の上に延びている。電極は、層19とオーム接触領域17を形成している。
【0006】層19の材料は、2つの半導体材料W及びNの合金である。半導体材料Wは、広いエネルギー・バンド・ギャップを備え、半導体材料Nは、狭いエネルギー・バンド・ギャップを備えている。合金中における狭いエネルギー・バンド・ギャップ半導体材料Nの比率は、層18からの距離が長くなるにつれて、層18との接合におけるゼロ値から単調に増大する。グルーブ20又は他のテクスチャが、ギャップ13の下にある層19の部分に形成され、電荷分離体の働きをする。
【0007】光がギャップ13を通って層19に当たると、電極14と15の間を電気的に導通させる電荷キャリヤが生じる。光を消すと、電荷キャリヤを一掃して、層19の狭いエネルギー・バンド・ギャップ材料が主体の領域に送り込む準電界が発生することによって、PCSがOFFになる。この領域において、グルーブ20は、電荷キャリヤを分離し、電極セグメント間におけるそれ以上の導通を阻止する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】Derkitsの開示したPCSによれば、性能が向上するが、今日の技術の要件を満たすには、更に性能の向上したPCSが必要になる。
【0009】従って本発明の目的は、更なる性能の向上した光導電性スイッチ(PCS)を提供することをその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、従来のPCSに比べて挿入損失が少なく、アイソレーションに優れた光導電性スイッチ(PCS)が得られる。挿入損失は、本発明によるPCSのON抵抗Ronがより小さいために減少する。アイソレーションは、本発明によるPCSのOFFキャパシタンスCoffがより小さいために強くなる。従って、本発明によるPCSは、従来のPCSよりも低い性能指数F=Ron/Coffを備えることになる。性能指数が低いということは、より優れた性能を有するPCSであることを表している。
【0011】本発明によるPCSは、複数のヘテロ接合を含む多層半導体構造に基づくものである。各ヘテロ接合は、広いエネルギー・バンド・ギャップを備えた半導体材料(WB材料)の層と、狭いエネルギー・バンド・ギャップを備えた半導体材料(NB材料)の層との間の接合である。ヘテロ接合の1つを形成する半導体材料は、逆の導電タイプになるようにドープされる。従って、このヘテロ接合は、p型WB材料の層とn型NB材料の層との間か、又は、n型WB材料の層とp型NB材料の層との間に形成される。
【0012】本発明によるPCSには、上側閉じ込め層と下側閉じ込め層の間に挟まれたNB材料の光導電層から構成される3層半導体構造が含まれる。両閉じ込め層とも、WB材料の層である。上側閉じ込め層及び光導電層は、逆の導電タイプである。互いにギャップによって分離された第1の電極及び第2の電極は、上側閉じ込め層の光導電層から離れた側の表面に配置されている。光導電層は、適正な波長及び強度の入射光で照射されると、電極間に導電経路を形成する。
【0013】光導電層の導電タイプはp型であり、上側閉じ込め層の導電タイプはn型であるが、それは、この導電タイプの組み合わせによって、逆の組み合わせよりも導電率が高くなるからである。
【0014】説明したばかりの二重ヘテロ接合PCS構造は、電荷キャリヤが、層の平面に対して垂直な方向に拡散するのを阻止し、入射光に応答して電荷キャリヤが発生する効率を高める。この結果、ON抵抗Ronが小さくなり、従って、挿入損失が減少する。
【0015】説明したばかりの二重ヘテロ接合PCS構造は、また、OFFキャパシタンスCoffを減少させるので、そのOFF状態において、本発明によるPCSによって得られるアイソレーションが強化される。
【0016】本発明によるPCSには、更に、光導電層と上側閉じ込め層の間に配置されて、ON抵抗Ronを小さくする漸変組成層又は急変超格子を含むことも可能である。
【0017】本発明によるPCSには、更に、光導電層を通過する入射光を反射して、光導電層に戻し、ON抵抗Ronを更に小さくするように配置された、ミラー層を含むことも可能である。
【0018】本発明によるPCSの電極には、更に、ON抵抗Ronを更に小さくするため、半透明の導電材料を含むことも可能である。
【0019】本発明によるPCSには、更に、光導電層によって吸収される入射光の波長範囲において半透明の基板材料による基板を含むことも可能である。この基板は、少なくとも光導電層と上側閉じ込め層を支持する。入射光が、半透明の基板を通過して、光導電層を照射する。入射光の一部は、電極によって遮られないので、ON抵抗Ronが小さくなる。
【0020】その代わりに、本発明によるPCSには、二重ヘテロ接合PCS構造を支持する不透明基板を含むことも可能であり、この基板に、スルーホールを形成することによって、光導電層を照射する入射光を受け入れることが可能である。入射光の一部は、電極によって遮られないので、ON抵抗Ronはやはり小さくなる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明は、発明者が、先行技術のPCSに関連した下記の4つの問題を認識し、これらの問題に対して生み出した有効な解決法に基づくものである。
【0022】1.先行技術によるPCSは、低温で成長させた材料から構成されており、従って、こうした材料の低キャリア移動度のために挿入損失が大きくなる。
【0023】2.先行技術による構造では、入射光に応答して発生するキャリヤが、電極間の導通に有効に寄与することができない。例えば、先行技術によるPCSには、入射光に応答して発生するキャリヤを特定の場所に閉じ込める構造が欠けている。代わりに、先行技術によるPCSでは、キャリヤが、それが形成される場所から拡散することができるので、電極間を導通させるために利用可能なキャリヤが減少する。
【0024】3.先行技術によるPCSの場合、入射光に応答して発生するキャリヤの一部は、電極に到達し、そこで、再結合する。この再結合によって、キャリヤ密度の低い領域が生じるが、この領域は抵抗率が高くなる。この結果、ON抵抗Ronが大きくなる。抵抗の大きい領域は、n−i−nデバイスにも見受けられる。
【0025】4.先行技術によるPCSにおける半導体層の表面におけるダングリング・ボンドによって、入射光に応答して発生するキャリヤの再結合が可能なトラップが形成される。これによって、入射光に応答してキャリヤの発生する効率が低下する。
【0026】図2及び図3には、本発明によるPCSの第1の基本実施形態100が示されている。PCS100は、WB材料、即ち、広いエネルギー・バンド・ギャップを備えた半導体材料の下側閉じ込め層104と、NB材料、即ち、狭いエネルギー・バンド・ギャップを備えた半導体材料の光導電層106と、WB材料の上側閉じ込め層108から構成されている。光導電層106が、下側閉じ込め層104と上側閉じ込め層108の間に挟まれている。上側閉じ込め層108の露出表面には、端子110及び120が配置されている。端子110は、ボンディング・パッド111に結合された電極112、113、及び、114から構成されている。端子120は、ボンディング・パッド121に結合された電極122、123、及び、124から構成されている。端子110の電極は、狭いギャップによって、端子120の電極から分離されている。
【0027】図3には、下側閉じ込め層104は、半導体基板102に成長又は堆積させられたWB材料の層として示されている。これによって、一般に利用可能な低コストの半導体材料を基板に用いることが可能になる。こうした材料は、通常WB材料ではない。しかし、基板の半導体材料が、InPのようなWB材料である場合、下側閉じ込め層と基板を一体化させることが可能であり、独立した下側閉じ込め層は不要になる。光導電層106及び上側閉じ込め層108は、下側閉じ込め層108の上に順次成長又は堆積させられる。
【0028】上側閉じ込め層108のWB材料の導電タイプは、光導電層106のNB材料の導電タイプとは逆である。上側閉じ込め層108のWB材料の導電タイプは、n型であり、光導電層106のNB材料の導電タイプは、p型であるが、WB材料とNB材料の導電タイプは、逆にすることも可能である。
【0029】下側閉じ込め層104のWB材料は、上側閉じ込め層108のWB材料と同じにすることが可能である。或いはまた、上側閉じ込め層108及び下側閉じ込め層104に、異なるWB材料を用いることも可能である。下側閉じ込め層のWB材料の導電タイプは、光導電層106の導電タイプと同じにすることもできるし、或いは、光導電層の導電タイプと逆にすることもできるし、或いは、下側閉じ込め層のWB材料は、アンドープ材料とすることも可能である。
【0030】閉じ込め層108がなければ、光導電層106の表面に、ダングリング・ボンドが存在することになる。こうしたダングリング・ボンドは、入射光142に応答して発生するキャリヤを捕獲し、キャリヤの再結合を促進する表面準位を生じさせる。PCS100の場合、上側閉じ込め層108が、光導電層106の表面を被覆し、光導電層106の表面に生じるダングリング・ボンド数を大幅に減少させる。従って、上側閉じ込め層108は、入射光の所定の強度に応答して、光導電層に存在するキャリヤ数を増加させる。
【0031】図3に示す部分132及び134のような、上側閉じ込め層108のうち端子110及び120によって被覆された部分だけが、閉じ込め層として機能する。図3には、電極112及び123によって被覆されない上側閉じ込め層の部分108A、108B、及び、108Cも示されている。上側閉じ込め層の部分108A、108B、及び、108Cの上部表面は、WB材料のバンド・ギャップにおける熱エネルギー(kT、ここで、kは、ボルツマン定数であり、Tは、絶対温度である)の数倍で強くピン止めされる表面エネルギ準位を備えている。結果として、これらの部分は、上側閉じ込め層の厚さ全体にわたって空乏化する。
【0032】上側閉じ込め層108の部分108A乃至108Cが層の厚さにわたって空乏化すると、端子110と120の間の上側閉じ込め層には、導電経路が存在しない。更に、入射光がなければ、上側閉じ込め層と光導電層106の間に存在する2つの背中合わせのp−n接合によって、光導電層106を介した端子間の導通が阻止される。PCS100が入射光142によって照射され、これによって、光導電層にキャリヤが発生する場合に限って、端子間の導通が生じる。
【0033】端子110を形成する電極112乃至114は、端子120の一部を形成する電極122乃至125と交互嵌合している。電極の形状及び位置は、PCS100が入射光142によって照射された場合に、端子110と120の間におけるON抵抗Ronを最小限に抑えるように最適化することが望ましい。図2には、入射光142によって照射される、PCS100の上部表面における略円形の領域が140で示されている。入射光ビームは、領域140によって、電極の交互嵌合領域の大部分がカバーされるような形状にされる。
【0034】従来の不透明な金属電極が、電極112乃至114及び122乃至125として用いられる場合、電極は、電極を照射する入射光142の一部を反射又は吸収する。この入射光の一部は、光導電層106に到達せず、キャリヤを発生させない。領域140の面積が制限される場合、電極によって被覆される領域140の一部と、それを通って入射光142が光導電層106に到達し、キャリヤを発生させることが可能になる、領域140の残りの部分との間で、トレード・オフを行うことが可能である。
【0035】閉じ込め層104及び108の望ましい特性は、次の通りである:閉じ込め層104及び108のWB材料のエネルギー・バンド・ギャップは、入射光142に応答して、光導電層に発生するキャリヤが閉じ込め層内に拡散するのを阻止するため、光導電層106のNB材料のエネルギー・バンド・ギャップよりも25meV高くすることが望ましい。25meVのエネルギー・バンド・ギャップ差は、室温における熱エネルギーに相当する。
【0036】それを通って入射光が光導電層106に到達する閉じ込め層、例えば、図2及び3に示す実施形態における閉じ込め層108は、出きる限り薄いことが望ましく、閉じ込め層のWB材料は、閉じ込め層を通って光導電層106に達する入射光の透過を最大にするため、入射光142の波長において透明度が高いことが望ましい。換言すれば、閉じ込め層の厚さtcと閉じ込め層のWB材料の吸収率αcの積は、1よりもかなり小さい、即ち、tcαc<<1であることが望ましい。トンネリング効果によって、閉じ込め層の最小厚さには実施上の制限が設定される。従って、入射光がそれを通って光導電層に到達する閉じ込め層の吸収率は、100cm-1未満であることが望ましい。
【0037】上側閉じ込め層108のWB材料は、高導電率が得られるように、電子移動度が高いことが望ましい。導電率が高いと、電極112乃至114及び122乃至125から閉じ込め層108を経て光導電層106に至る導電経路の抵抗が小さくなる。
【0038】上側閉じ込め層108のWB材料は、上側閉じ込め層の導電率を高くするため、高ドーピング濃度であることが望ましい。しかし、ドーピング濃度が高すぎると、所定の厚さの上側閉じ込め層の十分な空乏化が阻止される。上側閉じ込め層の厚さを薄くして、層の十分な空乏化を可能にすると、トンネル効果が増大する。従って、上側閉じ込め層のWB材料の最適なドーピング濃度には、これらの相反する要件間におけるトレード・オフが必要になる。略1×1017cm-3ほどのドーピング濃度が、許容可能な妥協案である。光導電層106の望ましい特性は、下記の通りである:光導電層106は、実際に製造可能な限り厚いのが望ましく、光導電層のNB材料は、入射光142の波長においてできる限り高い吸収率を備えることが望ましい。これらの特性によって、光導電層はできる限り多くの入射光142を吸収することが可能になり、従って、入射光に応答して、できる限り多くのキャリヤを発生することが可能になる。換言すれば、光導電層の厚さdと、入射光の波長における光導電層のNB材料の吸収率αpとの積は、約1を超えることが、即ち、dαp>約1であることが望ましい。光導電層の最大厚さに関するプロセス制限によって、光導電層のNB材料の吸収率が、入射光の波長において1000cm-1を超えることが望ましくなる。入射光の波長は、吸収率を最大にするため、入射光の光子エネルギが、光導電層のNB材料のエネルギー・バンド・ギャップよりも大きくなるように選択するのが望ましい。光導電層106のNB材料は、光導電層106の導電率を高くするため、高い光キャリヤ移動度を備えることが望ましい。導電率が高いと、光導電層の抵抗が小さくなり、ON抵抗Ronが小さくなる。光導電層106のNB材料におけるキャリヤは、PCS100を介した信号の伝送に寄与することができるように長寿命であることが望ましい。光導電層106のNB材料は、OFFキャパシタンスCoffを小さくするため、1×1017cm-3のドーピング濃度を備えることが望ましい。
【0039】光導電層106のNB材料の特性によって、入射光142に応答して発生するキャリヤの寿命が決まる。上述のように、一般には、キャリヤの寿命を延長することが望ましい。しかし、キャリヤの寿命が長すぎると、PCSのスイッチング速度が損なわれる。従って、キャリヤの寿命は、PCS100の所望のスイッチング時間より短いことが望ましい。さもなければ、入射光に応答して発生するキャリヤは、入射光142がPCS100の照射をやめてから、かなりの時間存在し続けることになる。残りのキャリヤによって、そのOFF状態にあるPCSのコンダクタンスが増大し、その結果、そのOFF状態にあるPCSによって得られるアイソレーションが弱くなる。多くの用途では、約1msのスイッチング時間が許容可能である。極めてキャリヤ寿命の長いシリコンのようなNB材料でさえ、こうしたスイッチング速度を容易にもたらすことが可能である。より速いスイッチング速度が必要な場合には、GaAsのようなNB材料を利用することが可能である。
【0040】入射光142によってPCS100を照射すると、PCSはON状態になる。PCS100は、RF及びマイクロ波システムにおいて最も一般的に用いられるものであり、一般に、50Ωの特性インピーダンスを備えている。50Ωの特性インピーダンスを備えるシステムに用いられるPCSのON抵抗Ronは、50Ωに比較して小さければ、即ち、Ron<<50Ωであれば、許容可能に小さい。従って、こうしたPCSに対する入射光142が所定の強度の場合、ON抵抗を50Ωに比べて小さいレベルに低減する手段によって、PCSの性能が有効に改善される。しかし、同じ強度の入射光の場合に、ON抵抗を50Ωに比べて小さいレベル未満にまで低減する手段がPCSの性能に及ぼす効果は、ないに等しい。それにもかかわらず、こうした手段は、より低い入射光の強度で、ON抵抗を50Ωに比べて小さくすることができるので、実施する価値がある。これによって、熱の発生がより少ない、より単純で、より低コストの光源を利用して、入射光を発生することが可能になる。こうした光源は、一般に、寿命及び信頼性が改善され、電力消費が減少する。従って、以下に述べるPCS100のON抵抗Ronを低減させるための手段を、追加で、又は、代わりに用いることによって、ON抵抗が50Ωに比べて小さくなる、入射光の強度を低下させることが可能である。
【0041】図3に示すPCS100のON状態において、PCSのON抵抗Ronは、下記の式によって求められる:Ron=Rs(on)+Rcここで:
【0042】
【数1】


【0043】ここで:Ronは、端子110と120間において測定されるPCSのON抵抗であり、Rs(on)は、半導体経路のON抵抗、即ち、上側閉じ込め層108及び光導電層106を通る導電経路の抵抗であり、Rcは、端子110及び120と上側閉じ込め層108の間の接触抵抗であり、qは、単位電荷であり、μは、キャリヤ移動度であり、nは、入射光142に応答して発生するキャリヤ密度であり、wは、電極の幅であり、vは、電極間の距離であり、lは、図2の破線によって表示される、入射光によって照射される電極の周囲長であり、dは、光導電層106の厚さであり、hは、プランク定数であり、νは、入射光の周波数であり、τは、キャリヤの寿命であり、Dは、キャリヤの拡散定数であり、Pは、入射光の強度であり、αpは、光導電層の光吸収率であり、A及びBは、定数である。
【0044】上記式から明らかなように、入射光の強度であるPを増し、キャリヤ移動度μ、キャリヤ寿命τ、及び、光吸収率αpの値が高い半導体材料を選択すると、ON抵抗Ronが小さくなる。光吸収率αpは、入射光の周波数νが上昇するにつれて高くなるので、波長の短い入射光を用いることが望ましい。レンズを用いて、入射光を体積の小さい光導電層106に集束させ、強度Pを増すことが望ましい。これは、PCSの寸法が小さいことが望ましい、より高い周波数で用いられるPCSの実施形態において特に有効である。
【0045】ON抵抗Ronを低減させるため、入射光は、高い全変換効率で、キャリヤに変換されることが望ましい。全変換効率ηは、下記によって得られる:η(%)=ηc×ηs×ηr×ηa×ηiここで、ηcは、PCS100の受光領域140が実際に受ける入射光142の比率を決定する結合効率である(この実施形態の場合、95%)。ηsは、電極の透過率、即ち、電極112乃至114及び122乃至125によって吸収又は反射されない入射光の比率である。PCS100の場合、電極の透過率は、電極によって被覆されない受光領域140の比率に略等しい。ηrは、閉じ込め層を光導電層106まで透過する入射光の比率である。ηaは、光導電層106の吸光度である。ηiは、光導電層が光をキャリヤに変換する内部量子効率である。
【0046】図4には、入射光142のない、OFF状態のPCS100が示されている。そのOFF状態にあるPCSのインピーダンスは、そのOFF状態にあるPCSのオーム抵抗とOFFキャパシタンスCoffのリアクタンス1/2πf・Coffの並列組み合わせのインピーダンスであり、ここで、fは、PCSによってスイッチされる信号の周波数である。上述のように、本発明によるPCSは、RF及びマイクロ波システムにおいて最も一般的に用いられるものであり、一般に、50Ωの特性インピーダンスを備えている。RF及びマイクロ波周波数において、並列組み合わせのインピーダンスを決定する上で支配的な要素は、OFFキャパシタンスCoffのリアクタンスである。特性インピーダンスが50Ωのシステムに用いられるPCSのOFFキャパシタンスCoffは、そのリアクタンスが50Ωに比較して大きければ、即ち、1/2πf・Coff>>50Ωであれば、許容可能に小さいことになる。
【0047】特性インピーダンスが50Ωの用途に用いられるPCSの場合、OFFキャパシタンスCoffを低減させ、そのリアクタンスが所定の周波数で50Ωに比べて大きくなるようにする手段によって、PCSの性能が有効に改善される。しかし、OFFキャパシタンスを更に低減させる手段がPCSの性能に及ぼす効果は、ないに等しい。それにもかかわらず、こうした手段は、更に高い周波数において、OFFキャパシタンスのリアクタンスが、50Ωに比べて大きくなるようにすることができるので、追求する価値がある。これによって、本発明によるPCSを用いることが可能な適用範囲が拡大される。従って、以下に述べるOFFキャパシタンスCoffを低減するための手段を、追加で、又は、代わりに用いることによって、より高い動作周波数において、そのリアクタンスが50Ωに比べて大きいOFFキャパシタンスを得ることが可能になる。
【0048】OFFキャパシタンスCoffに主として影響するのは、(1)光伝導層106と上側閉じ込め層108との間における空乏層のキャパシタンス、(2)上側閉じ込め層108のダングリング・ボンドによって生じる空乏層のキャパシタンス、及び、(3)光導電層106と下側閉じ込め層104との間における空乏層のキャパシタンスである。もちろん、光導電層106と上側閉じ込め層108の間における空乏層のキャパシタンスが、支配的であり、OFFキャパシタンスCoffは、略、下記の式を用いて求めることが可能である:
【0049】
【数2】


【0050】ここで:
【0051】
【数3】


【0052】ここで:tは、空乏層の厚さであり、εnは、閉じ込め層の誘電率であり、εpは、光導電層の誘電率であり、lは、図2に破線150で示された電極の周囲長であり、wは、電極の幅であり、n及びpは、それぞれ、上側閉じ込め層108及び光導電層106のドーパント濃度であり、Φiは、ビルトイン・ポテンシャル(組み込み電位)であり、Vは、印加電圧である(この例では、V=0)。
【0053】光導電層106のドーパント濃度pが低下すると、OFFキャパシタンスCoffが低減するのは明らかである。しかし、最低ドーパント濃度は、後述するように、実施上の制限を受ける。
【0054】上記式によって、小さい性能指数Ron×Coffが得られるように、PCS100の設計を最適化することが可能になる。この性能指数は、高性能のPCSにとって1つの重要な測度である。
【0055】本開示において開示されているPCSの基板、閉じ込め層、及び、光導電層に利用可能な材料の組み合わせ例が、表1に示されている。光導電層106及び少なくとも上側閉じ込め層108の材料は、その導電タイプを決めるため、適正なドーパントがドープされている。
【0056】上述のように、下側閉じ込め層104及び上側閉じ込め層108は、材料の異なる層とすることが可能である。こうした場合の上側閉じ込め層の材料が、表1にリストアップされている。
【0057】表1にリストアップされた材料の組み合わせの利点の1つは、隣接層間における格子不整合が最小限に抑えられ、従って、格子不整合がもっと大きい組み合わせよりもキャリヤの寿命が長くなるという点にある。
【0058】
【表1】


【0059】上記組み合わせのうちでは、電子移動度が高くて、キャリヤの寿命が長く、利用可能な十分なエピタキシャル成長及びプロセス技術を用いて製造することができるので、組み合わせ1乃至4及び7が好ましい。
【0060】組み合わせ4及び5の基板材料は、InPであり、これは、WB材料である。組み合わせ4又は組み合わせ5を利用して製造されるPCSの場合、下側閉じ込め層104は、基板102と一体化することが可能であり、光導電層106は、基板表面に直接堆積させることが可能である。また、組み合わせ7の基板材料は、シリコンであり、これは、WB材料である。シリコン基板を備えたPCSの場合、下側閉じ込め層は、基板と一体化することが可能であり、光導電層は、基板表面に直接堆積させることが可能である。
【0061】入射光142は、任意の適合する光源を利用して発生させることが可能である。半導体発光素子のような小型光源が望ましい。半導体レーザは、マイクロ秒範囲のスイッチング速度でマイクロ波信号をスイッチするPCSに用いるのが最も望ましい。半導体レーザは、サイズが小さく、所望のスイッチング速度を実現するのに十分な速さで動作し、低コストである。0.40乃至1.55μmの波長範囲で発光することが可能な半導体レーザが利用可能である。上記組み合わせの大部分が、この波長範囲の光を発生するレーザに応答して、動作する。所定の組み合わせの材料の場合、入射光の波長は、光がそれを通って光導電層に達する閉じ込め層の材料によって透過され、光導電層の材料によって吸収される波長範囲内になければならない。
【0062】説明したばかりのPCS100のON抵抗は、上側閉じ込め層108と光導電層106の間のヘテロ接合に漸変組成層又は急変超格子多層薄膜を配置することによって更に低減させることが可能である。漸変組成層のエネルギー・バンド・ギャップは、層の厚さわたって漸次変化するが、急変超格子多層薄膜のエネルギー・バンド・ギャップは、薄膜の厚さにわたって段差をつけて変化し、それにより連続した漸変組成の効果を擬似したものとなる。
【0063】次に、図5に関連して、本発明によるPCSの第2の実施形態200について述べることにする。
【0064】PCS200は、アンドープの70nm厚のAl0.3Ga0.7As下側閉じ込め層204、p型GaAs光導電層206(1.70μm厚で、ドーピング濃度がp=2×1016cm-3)、及び、n型Al0.23Ga0.77As上側閉じ込め層208(70nm厚で、ドーピング濃度がn=3×1017cm-3)から構成されている。これらの層は、分子ビーム・エピタキシ(MBE)又は別の適合するエピタキシャル成長技法を用いて、半絶縁GaAs基板202上に順次成長させられる。閉じ込め層は、説明したばかりのものとは異なる組成比を備えることが可能である。しかし、上側閉じ込め層208におけるアルミニウムの比率は、0.25未満が望ましい。上側閉じ込め層のアルミニウムの比率が0.25を超えると、23 JPN.J.APPL.PHYS.,1954(1984)においてM.Tachikawa他が解説しているように、上側閉じ込め層における深い準位又はDXセンタが急激に増大する。DXセンタは、上側閉じ込め層における自由電子濃度を急激に低下させ、このため、ON抵抗Ronが大幅に小さくなる。
【0065】ドーピング濃度がn=3×1017cm-3の、即ち、上側閉じ込め層208と同じドーピング濃度のn型半導体材料から形成される漸変組成層207及び250が、それぞれ、上側閉じ込め層208の成長前後に、エピタキシャル成長させられる。
【0066】漸変組成層207は、厚さ30nmで、n型のAlxGa1-xAsから構成されており、アルミニウムの比率値xは、光導電層206におけるゼロから上側閉じ込め層208における0.23まで漸増する。
【0067】同様に、漸変組成層250は、厚さ30nmで、n型のAlxGa1-xAsから構成されており、アルミニウムの比率値xは、上側閉じ込め層208における0.23からGaAsキャップ層252におけるゼロまで漸減する。
【0068】厚さ200nmで、ドーピング濃度がn=5×1018cm-3のn型GaAsキャップ層252は、漸変組成層250上に成長させられる。厚さが20nmで、n=2×1019cm-3と多量ドープされた、n型In0.5Ga0.5As接触層254が、キャップ層252上に成長させられる。接触層は、接触層との非合金接触を形成する金属電極212乃至214及び222乃至225を支持している。電極212乃至214及び222乃至225のうち、図5には、電極212、213、及び、223だけが示されている。電極は、全厚が300nmのチタン、プラチナ、及び、金の層から構成することが可能である。当該技術において、他の多くの電極材料が既知であり、Ti/W、W/Si、Mo/Au、Pd/Au、及び、Ti/Pd/Auが含まれる。キャップ層252及び接触層254は、漸減組成層250と電極212乃至214及び222乃至225の間の接触抵抗を低減させる。この接触抵抗の低減は、アニーリングのような熱処理を施さずに実現される。接触抵抗を低減させるためのこの方法及び構造は、28 ELECTRON.LETT.,1150(1992)においてF.Ren他によって解説されたヘテロ接合トランジスタ(HBT)の製造方法に基づくものである。
【0069】PCS200は、層204、206、207、208、250、252、及び、254を順次成長させ、次に、電極212乃至214及び222乃至225が形成されるTi/Pt/Au層を堆積させることによって製造される。次に、電極層にパターン形成を施して、個別電極が形成される。次に、漸変組成層250、キャップ層252、及び、接触層254の半導体材料にエッチングが施される。エッチングは、上側閉じ込め層208において阻止される。電極は、層250、252、及び、254のエッチングで除去されない部分を形成するエッチング用マスクとして利用することが可能である。
【0070】最後に、窒化珪素(Si34)及び反射防止コーティング256が、電極212乃至214及び222乃至225と上側閉じ込め層208の露出表面を含むPCS100の上部表面に堆積させられる。反射防止コーティングの厚さは、100nmである。反射防止コーティングは、別様であれば、上側閉じ込め層208のAlGaAsと空気のような周囲との屈折率の差が大きいために生じるであろう入射光の反射を防止するか、又は、低減させる。
【0071】PCS200は、半導体レーザによって発生する入射光で照射することによってONになる。入射光の波長は、閉じ込め層による吸収を最小限に抑えるため、光子当たりのエネルギーが、入射光がそれを通って、光導電層206に達する閉じ込め層、即ち、この例の場合、上側閉じ込め層208のWB材料のバンド・エッジ未満になる波長が選択される。入射光の波長は、また、光導電層による入射光の吸収を最大にするため、光子当たりのエネルギが、光導電層206のNB材料のバンド・エッジを超えることになる波長が選択される。説明したばかりの例の場合、入射光の波長は約0.78μmであった。入射光のビームは、直径約30μmの略円形の断面を備えている。市販の半導体レーザを用いて、入射光142を発生することができるので、小型PCS200は低コストで製造可能である。
【0072】入射光142のビーム特性、GaAsの物理的特性、及び、光導電層206の光吸収率αp=9,000cm-1、キャリヤ寿命τ=10ns、キャリヤ移動度μ=6,300cm2/Vs、電極幅w=3μm、及び、電極間の間隔v=2μmといったデバイス・パラメータを利用して、PCS200の半導体経路ON抵抗Rs(on)が計算される。半導体経路ON抵抗は、PCS200が入射光によって照射された場合の、上側閉じ込め層208及び光導電層206を通る導電路の抵抗である。図6は、入射光を発生するレーザ・パワーに対する半導体経路ON抵抗の変動を示すグラフである。この実施形態の場合、光導電層206の厚さdは、少なくとも1.7μmであり、これは、吸光長αp-1=1.1μmより長い。
【0073】説明したばかりの特性を備えるテスト・サンプルが製造された。テスト・サンプルは、5mWレーザによって生じる入射光で照射され、そのON抵抗が測定された。端子110及び120間で測定されたON抵抗Ronは、3乃至5オームの範囲内であった。しかし、端子110及び120と上側閉じ込め層208の間の異常に大きい接触抵抗Rcが、ON抵抗の大部分を占めることが明らかになった。追加測定によって、半導体経路のON抵抗Rs(on)は約1オームであることが分かった。現在製造中の追加サンプルの接触抵抗Rcは、半導体経路ON抵抗Rs(on)未満になることが予測される。こうしたサンプルは、マイクロ波スイッチとして用いるのに許容し得るON抵抗を備えることになる。
【0074】PCS200の全変換効率は、η=ηc×ηs×ηr×ηa×ηi=95%×60%×99%×75%×95%=40%であり、ここで、ηc=95%、ηs=60%、ηr=99%、ηa=75%、及び、ηi=95%である。変換効率ηを低下させる2つの主要素は、電極透過率ηsと光導電層106の吸光度ηaである。電極透過率ηsの低い値は、電極212乃至214及び222乃至225によって、入射光のかなりの部分が光導電層206に到達するのを阻止されることを表している。光導電層206の吸光度ηaの値が低いのは、光導電層に達する入射光の大部分が、吸収されずに、光導電層を通過することを表している。
【0075】PCS200のOFFキャパシタンスCoffの主要素は、光導電層206と上側閉じ込め層208との間の空乏層のキャパシタンスであり、光導電層におけるドーピング濃度によって決まる。図7には、光導電層のドーピング濃度と対照して作図されたOFFキャパシタンスが示されている。OFFキャパシタンスCoffは、ドーピング濃度が増すにつれて増大するので、ドーピング濃度が低くなると、OFFキャパシタンスCoffは低減する。
【0076】しかし、ドーピング濃度が過剰に低下すると、空乏層の厚さが過剰に増大する。この結果、PCS200のパンチスルー電圧(突き抜け電圧)が低下する。PCSによってスイッチされる信号の振幅が突き抜け電圧を超えると、PCSのインピーダンスは、小さい値まで降下し、そのOFF状態において、もはやPCSによるアイソレーションが得られない。更に、現在の結晶成長技術では、低ドーピング・レベルにおけるドーピング濃度の制御は困難である。従って、光導電層のドーピング濃度は、1×1015cm-3乃至1×1017cm-3の範囲内であることが望ましい。ドーピング濃度がこの範囲内であれば、OFFキャパシタンスCoffと突き抜け電圧の間における許容可能なトレード・オフが可能である。また、電極212乃至214及び222乃至225の面積を縮小すると、やはり、OFFキャパシタンスCoffが低減する。上述のように、特性インピーダンスが50Ωのシステムに用いられるPCSの実施形態の場合、OFFキャパシタンスCoffは、スイッチされる信号の周波数fにおけるそのリアクタンスが、50Ωに比べて大きい、即ち、1/2πf・Coff>>50ΩであるOFFキャパシタンスCoffと同程度である必要がある。
【0077】図5に示すPCS200は、OFFキャパシタンスCoffが60fFで、性能指数Ron×Coffが0.06ΩpFである。これは、従来の高周波スイッチよりも小さく、従って、優れている。
【0078】図8には、変換効率が更に向上する、本発明によるPCSの第3の実施形態が示されている。PCS300の構造は、図5に示すPCSの構造と同様である。PCS200の構成要素に対応するPCS300の構成要素は、同じ参照番号で示されており、ここでは説明を繰り返さないことにする。上述のように、PCS200の全変換効率ηを低下させる主要因は、電極の透過率ηs及び光導電層106の吸光度ηaである。PCS300の場合、下側閉じ込め層は、ミラー層304としての構造が付与されている。ミラー層は、吸収によって光導電層に戻されずに、光導電層206を通過する入射光の一部を反射することによって、光導電層の吸光度ηaを有効に高める。
【0079】図示の例の場合、ミラー304は、半導体材料の複数の副層対から構成される分布ブラッグ反射器である。副層対360は、64nm厚のAl0.3Ga0.7As副層362と73nm厚のAlAs副層364から構成されている。各副層の厚さtmは、副層の材料における入射光142の波長λの1/4の奇整数倍に等しい、即ち、tm=mλ/4nであるが、ここで:mは、奇整数であり、λは、自由空間における入射光142の波長であり、nは、波長μにおける副層の材料の屈折率である。
【0080】PCS300の実際の実施形態の1つでは、ミラー層304を構成する副層の材料は、n型ドーピングが施され、ミラー層は、10対の副層から構成され、ミラー層の反射率は、約90%であった。PCS200の下側閉じ込め層204の反射率は、約0.08%である。
【0081】PCS300では、ミラー層304によって、光導電層206の吸光度ηaが、PCS200における60%に比べると、98%まで有効に高められる。この結果、全変換効率ηが66%にまで向上し、半導体経路のON抵抗Rs(on)がPCS200の2/3まで低減する。
【0082】上述のように、PCS200の全変換効率ηを低下させる主要因は、電極透過率ηs及び光導電層206の吸光度である。電極は、通常、不透明又は反射性であるため、電極透過率は、通常、電極212乃至214及び222乃至225によって被覆されない受光領域140(図2)比率に等しい。電極は、それを照射する入射光の一部を吸収又は反射するので、入射光のこの部分が、上側閉じ込め層208を通って、導電層206に達するのが阻止される。電極によって、光導電層に到達するのを阻止される入射光が、たとえあるとしても、ほとんどないように、本発明によるPCSを構成することによって、電極透過率は、100近くまで高めることが可能であり、PCSの変換効率は、更に高めることが可能である。
【0083】例えば、図8に示すPCS300は、電極212乃至214及び222乃至225(そのうちの212、223、及び、213だけが示されている)を半透明材料で製造することによって、電極によって、入射光142のわずかな部分だけしか光導電層206への到達が阻止されないように構成することが可能である。当該技術において、いくつかの適合する導電性半透明材料が既知のところであり、例えば、酸化インジウム・スズ(ITO)及び銀の薄層が含まれている。
【0084】他の案として、PCSは、その電極によって、入射光が透過して、光導電層に達するのが全く阻止されないように構成することも可能である。これは、入射光が、入射光を吸収又は反射する電極が存在しない下側閉じ込め層を通って、光導電層に到達するようにPCSを構成することによって実施される。
【0085】図9には、変換効率が更に向上する、本発明によるPCSの第4の実施形態が示されている。PCS400の構造は、図5に示すPCS200の構造と同様である。PCS200の構成要素に対応するPCS400の構成要素は、同じ参照番号で表示されており、ここでは説明を繰り返さない。PCS400の全変換効率ηは、電極透過率ηsを高め、光導電層の吸光度ηaを有効に高めることによって、向上する。
【0086】PCS400の場合、基板402は、光導電層406によって吸収される入射光142の波長範囲内において半透明である材料によるウェーハである。これによって、PCS400は、入射光の一部を吸収又は反射する電極の存在しない基板を介して入射光を受光することが可能になる。これによって、電極透過率ηsが100%近くまで向上する。また、PCS400には、PCSの基板から離れた側の表面上に重ねられたミラー層456も含まれている。ミラー層456は、吸収によって光導電層に戻されずに、光導電層を通過する入射光を反射することによって、光導電層406の吸光度ηaを有効に高める。
【0087】図示の例の場合、基板402は、InPのウェーハであり、光導電層406は、InGaAsの層であり、上側閉じ込め層408は、(AlxGa1-x0.5In0.5Asの層である。基板材料は、WB材料であり、従って、下側閉じ込め層404は、図示の例のように基板と一体化される。更に、上述のように、基板材料は、光導電層406によって吸収される入射光142の波長範囲内において半透明である。基板402、光導電層406、及び、上側閉じ込め層408として、他の材料を利用することも可能である。更に、下側閉じ込め層404は、基板と一体化せずに、基板402の上に堆積又は成長させられたWB材料の独立した層とすることも可能である。
【0088】電極212、213、及び、223だけしか示されていない、電極から離れた側の基板表面480には、基板表面480による入射光142の反射を減少させるため、100nm厚の窒化珪素(Si34)の層である、反射防止コーティング462が施されている。
【0089】PCS400は、入射光が基板402の表面480を照射できるように取り付けられる。例えば、フリップ・フロップ・ボンディング技法を利用して、入射光を発生するレーザ又はLEDから入射光142を受光するように基板の配向を施して、適合するヘッダ(図示せず)にPCSを取り付けることが可能である。入射光は、基板を通過して、光導電層406に達する。入射光の光路内には電極が配置されていないので、電極透過率ηsは、100%に近くなる。
【0090】PCS400は、まず、PCS200と略同じ構造を形成することによって製造される。しかし、上述のように、基板402、閉じ込め層404及び408、及び、光導電層406には、異なる材料が用いられる。また、Si34反射防止コーティング256が、省略され、代わりに、ミラー層456は、PCSの基板402から離れた側の表面に配置されている。この例の場合、ミラー層456は、誘電体材料による複数の副層対から構成された分布ブラッグ反射器である。例証となる副層対が460で示されている。副層対460は、147nm厚のSiO2層及び99nm厚のTiO2層から構成されている。これらの厚さは、上述のように、それぞれの材料における入射光142の波長の1/4に相当する。副層のSiO2とTiO2との屈折率の差が大きいので(SiO2が1.45で、TiO2が2.15)、約90%の反射率を得るのに必要な副層は3対だけである。こうした反射率によって、光導電層406の有効吸光度ηaは、約98%まで高められる。ミラー層を堆積させた後、ボンディング・パッド111及び121(図2)上に重なるミラー層456の部分は、エッチングで除去される。最後に、100nm厚の窒化珪素(Si34)層である、反射防止コーティング462が、基板表面480上に堆積させられる。
【0091】PCS400の全変換効率は、η=ηc×ηs×ηr×ηa×ηi=95%×100%×99%×98%×95%=88%である。この全変換効率の向上によって、半導体経路ON抵抗Rs(on)は、PCS200の約1/2になる。電極212乃至214及び222乃至225が、従来の不透明な電極材料ではなく、半透明な電極材料である、酸化インジウム・スズ(ITO)から製造されている、図8に示すPCS300に基づく実施形態ついても、同様の結果が予測される。
【0092】図10には、全変換効率ηが説明したばかりのPCS400の全変換効率とされる、本発明によるPCSの第5の実施形態が示されている。上述のPCS200及び400の構成要素に対応するPCS500の構成要素は、同じ参照番号で表示されており、ここでは説明を繰り返さない。PCS400と同様、PCS500の全変換効率ηは、電極透過率ηsを高め、且つ、光導電層の吸光度ηaを有効に高めることによって、向上する。PCS500には、入射光が下側閉じ込め層204を照射し、下側閉じ込め層を通過して、光導電層206に到達することができるように、基板502の厚さにわたってエッチングされたスルー・ホール560が含まれている。入射光の光路内に電極が配置されていないので、この結果、電極透過率ηaは100%近くまで高められ、基板材料は、光導電層によって吸収される入射光の波長範囲内において不透明とすることが可能になる。PCS500には、上述のように、光導電層206の吸光度を有効に高める、基板502から離れた側のPCS表面上におけるミラー層456も含まれている。
【0093】図示の例の場合、基板502は、GaAsのウェーハであり、光導電層206は、AlxGa1-xAsの1層であり、閉じ込め層204及び208は、AlyGa1-yAsの層である(ここで、x<y)。基板材料は、光導電層によって吸収される入射光142の波長範囲内において吸収性である。基板材料は、PCSを製造することが可能な材料の他の組み合わせによる光導電層によって吸収される入射光の波長範囲内においても吸収性である。基板材料が、光導電層によって吸収される入射光の波長範囲内において公称では半透明であるPCSの実施形態の場合であっても、基板の厚さにわたるスルー・ホール560のエッチングを施すことは、そのスルー・ホールによって、別様であれば、入射光が基板の厚さを通過する結果として生じるであろう、入射光の吸収が低減するので、やはり有効である。
【0094】スルー・ホール560のエッチングによって、スルー・ホールが、基板502の全厚にわたって貫通するが、下側閉じ込め層204の全部又は一部を除去することがないように、エッチング・プロセスに制御を加える問題が生じる。これは、下側閉じ込め層の厚さが基板の厚さに比べて極めて薄いので(100μmに比べて0.1μm未満)、とりわけ困難である。発明者は、所定のエッチング液によってエッチングを施される速度が、基板材料よりもかなり遅い下側閉じ込め層用の材料を用いることによって、この問題を解決した。これによって、下側閉じ込め層がエッチング・プロセスに対するエッチング・ストップの働きをすることが可能になる。例えば、基板材料がGaAsの場合、下側閉じ込め層204は、GaAsのエッチング時に、有効なエッチング・ストップの働きをするAlGaAs層とすることが可能である。このスルー・ホール560の形成方法は、31JPN.J.APPL.PHYS.,1597(1992)においてH.Tanobe他によって解説された面発光レーザの製造方法に基づくものであり、ここでは、これ以上の詳述は控えることにする。
【0095】PCS500は、基板502、光導電層206、及び上側閉じ込め層208の材料が異なる点を除けば、PCS400の製造に関して上述の方法に基づく方法によって製造される。また、図示の例の場合、基板上にWB材料の独立した層を堆積させて、PCS200の場合のように、下側閉じ込め層204が形成される。ミラー層456の堆積が済み、ボンディング・パッド111及び121(図2)の上に重なるミラー層の部分がエッチングで除去されると、ミラー層456から離れた側の基板502の表面580が、スルー・ホール560を配置すべき領域を除いて、フォトレジスト層によってマスキングされる。次に、AlGaAsよりかなり速い速度で、GaAsにエッチングを施す化学エッチング液を用いて、PCSのエッチングが実施される。10:1を超えるエッチング速度比をもたらすアンモニウム系のエッチング液が、当該技術において既知のところである。こうしたエッチング液の一例が、過酸化水素と水酸化アンモニウムの混合物である。こうしたエッチング液を用いることによって、下側閉じ込め層204は、スルー・ホールのエッチング時におけるエッチング・ストップの働きをすることが可能になる。
【0096】基板502におけるスルー・ホール560のエッチングが済むと、基板表面580、スルー・ホールの側壁、及び、下側閉じ込め層204の露出表面上に、100nm厚の窒化珪素(Si34)層である、反射防止コーティング562が堆積させられる。
【0097】PCS500の全変換効率は、η=ηc×ηs×ηr×ηa×ηi=95%×100%×99%×98%×95%=88%である。この全変換効率ηの向上によって、半導体経路のON抵抗Rs(on)は、PCS200の約1/2になる。
【0098】この開示では、本発明の例証となる実施形態について詳述されたが、もちろん、本発明は、解説された実施形態によって制限されるものではなく、付属の請求項に定義された本発明の範囲内において、さまざまな修正を加えることが可能である。
【0099】本発明を上述の実施形態に即して説明すると、本発明は、第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び第1の導電タイプを備えた第1の半導体材料による第1の閉じ込め層と、第2のエネルギー・バンド・ギャップを備えた第2の半導体材料による第2の閉じ込め層と、前記第1及び第2のエネルギー・バンド・ギャップより狭い第3のエネルギー・バンド・ギャップ、及び前記第1の導電タイプとは相違する第2の導電タイプを備える第3の半導体材料からなり、前記第1の閉じ込め層と前記第2の閉じ込め層の間に挟まれている光導電層と、互いに独立している、前記光導電層から離れた側の前記第1の閉じ込め層の表面上に配置された第1の電極及び第2の電極が設けられており、入射光によって前記光導電層の一部が照射されるとき、前記第1の電極と前記第2の電極の間における前記光導電層の導電性が高められることを特徴とする光導電性スイッチを提供する。
【0100】好ましくは、前記第1のエネルギー・バンド・ギャップと前記第2のエネルギー・バンド・ギャップとが、前記第3のエネルギー・バンド・ギャップより少なくとも25meV広くされる。
【0101】好ましくは、更に、(a)漸変組成、及び(b)急変超格子多層フィルムの一方を含む層が含まれており、該層が、前記光導電層と前記第1の閉じ込め層の間に挟まれる。
【0102】好ましくは、第1の半導体材料が、AlyGa1-yAsであり、ここで、0.02<y<1.0であり、第3の半導体材料が、AlxGa1-xAsであり、ここで、x<yである。
【0103】好ましくは、前記光導電性スイッチに、更に、前記入射光によって前記光導電層を照射するように配置された光源が含まれ、前記第1の閉じ込め層及び前記光導電層が、それぞれtc及びdの厚さを備えており、前記第1の半導体材料と前記第3の半導体材料が、それぞれ、前記入射光に対してαc及びαpの吸収率を備え、前記第1の閉じ込め層の前記厚さと前記第1の半導体材料の前記吸収率の積tcαcが、1に比較して小さい値を備え、前記光導電層の前記厚さと前記第3の半導体材料の前記吸収率の積dαpが、約1を超える値を備える。
【0104】好ましくは、前記第1の半導体材料と前記第3の半導体材料の組み合わせは、(AlyGa1-y0.5In0.5P(ここで、0.0≦y≦1.0)及びAlxGa1-xAs(ここで、0.0≦x<0.5)と;(AlyGa1-y)As(ここで、0.0<y<1.0)及びInxGa1-xAs(ここで、0.01<x<0.3)と;(AlxGa1-x0.5In0.5As(ここで、0.01<x<1.0)及びIn0.5Ga0.5Asと;(AlxGa1-x0.5In0.5As(ここで、0.01<x<1.0)及びGaAs0.5Sb0.5と;AlxGa1-xN(ここで、0.01<x<1.0)及びGaNと;Si及びGexSi1-x(ここで、0.05<x<1.0)と;Si及びSiCと;ZnyMg1-yzSe1-z(ここで、0<y<1.0及び0<z<1.0)及びZnSxSe1-x(ここで、0<x<1)と;AlxGa1-xSb(ここで、0.01<x<1.0)及びGaSbと;PbxCd1-xTe(ここで、0.01<x<1.0)及びPbTeとから構成されるグループから選択される。
【0105】好ましくは、第1の導電タイプはn型である。
【0106】好ましくは、前記第1の半導体材料は、前記第3の半導体材料よりも多量にドープされている。
【0107】好ましくは、前記第3の半導体材料のドーピング濃度は、1×1017cm-3未満である。
【0108】好ましくは、更に、前記閉じ込め層の1つの表面に施された反射防止コーティングが含まれる。
【0109】好ましくは、前記第2の閉じ込め層に、ミラー層が含まれる。
【0110】好ましくは、前記ミラー層に、屈折率の異なる1対の材料層が含まれる。
【0111】好ましくは、前記光導電性スイッチに、更に、前記第2の閉じ込め層を支持する基板が含まれ、前記基板に、前記第2の閉じ込め層の一部を露出させるスルーホールが形成されている。
【0112】好ましくは、更に、前記スルーホールによって露出する、前記第2の閉じ込め層の表面に施された反射防止コーティングが含まれる。
【0113】好ましくは、更に、前記第1の閉じ込め層の表面上におけるミラー層が含まれる。
【0114】好ましくは、前記電極に半透明の導電材料が含まれる。
【0115】好ましくは、前記光導電性スイッチに、更に、前記光導電層によって吸収される前記入射光の波長範囲内において半透明な材料による基板が含まれていることと、該基板によって、前記光導電層と前記第1の閉じ込め層が支持される。
【0116】好ましくは、前記光導電性スイッチに、更に、基板が含まれることと、前記第2の閉じ込め層が前記基板と一体である。
【0117】好ましくは、前記基板に、前記光導電層によって吸収される前記入射光の波長範囲内において半透明な材料が含まれる。
【0118】更に本発明は、第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び第1の導電タイプを備えた第1の半導体材料による第1の閉じ込め層と、異なる屈折率及びそれぞれのエネルギー・バンド・ギャップを備えた半導体材料による1対の副層を含むミラー層と、前記第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び前記ミラー層の前記半導体材料の前記エネルギー・バンド・ギャップより狭い第3のエネルギー・バンド・ギャップと、前記第1の導電タイプとは逆の第2の導電タイプを備え、前記第1の閉じ込め層と前記ミラー層の間に挟まれた、第3の半導体材料による光導電層と、互いに独立している、前記第1の閉じ込め層の前記光導電層から離れた側の表面に配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の閉じ込め層の少なくとも一部に隣接した反射防止コーティングが含まれていることを特徴とする光導電性スイッチを提供する。
【0119】好ましくは、更に、前記入射光によって前記光導電層を照射するように配置された光源が含まれており、前記第1の閉じ込め層及び前記光導電層が、それぞれ、tc及びdの厚さを備え、前記第1の半導体材料と前記第3の半導体材料が、それぞれ、前記入射光に対してαc及びαpの吸収率を備え、前記第1の閉じ込め層の前記厚さと前記第1の半導体材料の前記吸収率の積tcαcが、1に比較して小さい値を備え、前記光導電層の前記厚さと前記第3の半導体材料の前記吸収率の積dαpが、約1を超える値を備える。
【0120】更に本発明は、スルーホールが形成された基板と、第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び第1の導電タイプを備えた第1の半導体材料による第1の閉じ込め層と、前記基板に隣接し、前記スルーホールを略被覆する、第2のエネルギー・バンド・ギャップを備えた第2の半導体材料による第2の閉じ込め層と、前記第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び前記第2のエネルギー・バンド・ギャップより狭い第3のエネルギー・バンド・ギャップ、及び、前記第1の導電タイプとは逆の第2の導電タイプを備え、前記第1の閉じ込め層と前記第2の閉じ込め層の間に挟まれた、第3の半導体材料による光導電層と、互いに独立している、前記第1の閉じ込め層の前記光導電層から離れた側の表面に配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の閉じ込め層に隣接したミラー層とが含まれていることを特徴とする光導電性スイッチを提供する。
【0121】前記光導電性スイッチに、更に、入射光で前記光導電層を照射するように配置された光源が含まれ、前記第1の閉じ込め層及び前記光導電層が、それぞれ、tc及びdの厚さを備え、前記第1の半導体材料と前記第3の半導体材料が、それぞれ、前記入射光に対してαc及びαpの吸収率を備え、前記第1の閉じ込め層の前記厚さと前記第1の半導体材料の前記吸収率の積tcαcが、1に比較して小さい値を備え、前記光導電層の前記厚さと前記第3の半導体材料の前記吸収率の積dαpが、約1を超える値を備える。
【0122】好ましくは、前記ミラー層に、屈折率の異なる誘電体材料による1対の副層が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】先行技術による光導電性スイッチ(PCS)の断面図である。
【図2】その導通状態における本発明によるPCSの第1の実施形態に関する平面図である。
【図3】図2の線3−3に沿って描かれた本発明によるPCSの断面図である。
【図4】その非導通状態における本発明によるPCSの第1の実施形態の一部に関する断面図である。
【図5】その導通状態における本発明によるPCSの第2の実施形態の一部に関する断面図である。
【図6】図5に示すPCSの実施形態における、入射光を発生するレーザ・パワーに対する半導体経路ON抵抗Rs(on)の変動を示すグラフである。半導体経路ON抵抗は、二重ヘテロ接合PCS構造の上側閉じ込め層及び光導電層を通る導電経路のON抵抗である。
【図7】図5に示すPCSの実施形態における光導電層のドーパント濃度に対するOFFキャパシタンスCoffの変動を示すグラフである。
【図8】その導通状態における本発明によるPCSの第3の実施形態の一部に関する断面図である。
【図9】その導通状態における本発明によるPCSの第4の実施形態の一部に関する断面図である。
【図10】その導通状態における本発明によるPCSの第5の実施形態の一部に関する断面図である。
【符号の説明】
100;200;300;400;500 光導電性スイッチ
108;208;408 第1の閉じ込め層
104;204;404 第2の閉じ込め層
106;206;406 光導電層
112,113,114,123,124、125;212、213、222、223 電極
256、462,562 反射防止コーティング
304、456 ミラー層
102、202、402、502 基板
560 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び第1の導電タイプを備えた第1の半導体材料による第1の閉じ込め層と、第2のエネルギー・バンド・ギャップを備えた第2の半導体材料による第2の閉じ込め層と、前記第1及び第2のエネルギー・バンド・ギャップより狭い第3のエネルギー・バンド・ギャップ、及び前記第1の導電タイプとは相違する第2の導電タイプを備える第3の半導体材料からなり、前記第1の閉じ込め層と前記第2の閉じ込め層との間に挟まれている光導電層と、互いに独立している、前記光導電層から離れた側の前記第1の閉じ込め層の表面上に配置された第1の電極及び第2の電極が設けられており、入射光によって前記光導電層の一部が照射されるとき、前記第1の電極と前記第2の電極の間における前記光導電層の導電性が高められることを特徴とする光導電性スイッチ。
【請求項2】前記第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び前記第2のエネルギー・バンド・ギャップは、前記第3のエネルギー・バンド・ギャップよりも少なくとも25meV広いことを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項3】更に、(a)漸変組成、及び(b)急変超格子多層フィルムの一方を含む層が含まれており、該層が、前記光導電層と前記第1の閉じ込め層との間に挟まれていることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項4】第1の半導体材料が、AlyGa1-yAsであり、ここで、0.02<y<1.0であることと、第3の半導体材料が、AlxGa1-xAsであり、ここで、x<yであることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項5】前記光導電性スイッチに、更に、前記入射光によって前記光導電層を照射するように配置された光源が含まれていることと、前記第1の閉じ込め層及び前記光導電層が、それぞれtc及びdの厚さを備えていることと、前記第1の半導体材料と前記第3の半導体材料が、それぞれ、前記入射光に対してαc及びαpの吸収率を備えることと、前記第1の閉じ込め層の前記厚さと前記第1の半導体材料の前記吸収率の積tcαcが、1に比較して小さい値を備えることと、前記光導電層の前記厚さと前記第3の半導体材料の前記吸収率の積dαpが、約1を超える値を備えることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項6】(a)前記第1の半導体材料と(b)前記第3の半導体材料の組み合わせが、(AlyGa1-y0.5In0.5P(ここで、0.0≦y≦1.0)及びAlxGa1-xAs(ここで、0.0≦x<0.5)と;(AlyGa1-y)As(ここで、0.0<y<1.0)及びInxGa1-xAs(ここで、0.01<x<0.3)と;(AlxGa1-x0.5In0.5As(ここで、0.01<x<1.0)及びIn0.5Ga0.5Asと;(AlxGa1-x0.5In0.5As(ここで、0.01<x<1.0)及びGaAs0.5Sb0.5と;AlxGa1-xN(ここで、0.01<x<1.0)及びGaNと;Si及びGexSi1-x(ここで、0.05<x<1.0)と;Si及びSiCと;ZnyMg1-yzSe1-z(ここで、0<y<1.0及び0<z<1.0)及びZnSxSe1-x(ここで、0<x<1)と;AlxGa1-xSb(ここで、0.01<x<1.0)及びGaSbと;PbxCd1-xTe(ここで、0.01<x<1.0)及びPbTeとから構成されるグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項7】第1の導電タイプがn型であることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項8】前記第1の半導体材料は、前記第3の半導体材料よりも多量にドープされていることを特徴とする、請求項7に記載の光導電性スイッチ。
【請求項9】前記第3の半導体材料のドーピング濃度は、1×1017cm-3未満であることを特徴とする、請求項8に記載の光導電性スイッチ。
【請求項10】更に、前記閉じ込め層の1つの表面に施された反射防止コーティングが含まれることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項11】前記第2の閉じ込め層に、ミラー層が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項12】前記ミラー層に、屈折率の異なる1対の材料層が含まれることを特徴とする、請求項11に記載の光導電性スイッチ。
【請求項13】前記光導電性スイッチに、更に、前記第2の閉じ込め層を支持する基板が含まれることと、前記基板に、前記第2の閉じ込め層の一部を露出させるスルーホールが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項14】更に、前記スルーホールによって露出する、前記第2の閉じ込め層の表面に施された反射防止コーティングが含まれることを特徴とする、請求項13に記載の光導電性スイッチ。
【請求項15】更に、前記第1の閉じ込め層の表面上におけるミラー層が含まれることを特徴とする、請求項13に記載の光導電性スイッチ。
【請求項16】前記電極に半透明の導電材料が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項17】前記光導電性スイッチに、更に、前記光導電層によって吸収される前記入射光の波長範囲内において半透明な材料による基板が含まれていることと、該基板によって、前記光導電層と前記第1の閉じ込め層が支持されることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項18】前記光導電性スイッチに、更に、基板が含まれることと、前記第2の閉じ込め層が前記基板と一体であることを特徴とする、請求項1に記載の光導電性スイッチ。
【請求項19】前記基板に、前記光導電層によって吸収される前記入射光の波長範囲内において半透明な材料が含まれることを特徴とする、請求項18に記載の光導電性スイッチ。
【請求項20】第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び第1の導電タイプを備えた第1の半導体材料による第1の閉じ込め層と、異なる屈折率及びそれぞれのエネルギー・バンド・ギャップを備えた半導体材料による1対の副層を含むミラー層と、前記第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び前記ミラー層の前記半導体材料の前記エネルギー・バンド・ギャップより弱い第3のエネルギー・バンド・ギャップと、前記第1の導電タイプとは逆の第2の導電タイプを備え、前記第1の閉じ込め層と前記ミラー層の間に挟まれた、第3の半導体材料による光導電層と、互いに独立している、前記第1の閉じ込め層の前記光導電層から離れた側の表面に配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の閉じ込め層の少なくとも一部に隣接した反射防止コーティングが含まれていることを特徴とする光導電性スイッチ。
【請求項21】光導電性スイッチに、更に、前記入射光によって前記光導電層を照射するように配置された光源が含まれていることと、前記第1の閉じ込め層及び前記光導電層が、それぞれ、tc及びdの厚さを備えていることと、前記第1の半導体材料と前記第3の半導体材料が、それぞれ、前記入射光に対してαc及びαpの吸収率を備えることと、前記第1の閉じ込め層の前記厚さと前記第1の半導体材料の前記吸収率の積tcαcが、1に比較して小さい値を備えることと、前記光導電層の前記厚さと前記第3の半導体材料の前記吸収率の積dαpが、約1を超える値を備えることを特徴とする、請求項20に記載の光導電性スイッチ。
【請求項22】スルーホールが形成された基板と、第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び第1の導電タイプを備えた第1の半導体材料による第1の閉じ込め層と、前記基板に隣接し、前記スルーホールを略被覆する、第2のエネルギー・バンド・ギャップを備えた第2の半導体材料による第2の閉じ込め層と、前記第1のエネルギー・バンド・ギャップ及び前記第2のエネルギー・バンド・ギャップより狭い第3のエネルギー・バンド・ギャップ、及び、前記第1の導電タイプとは逆の第2の導電タイプを備え、前記第1の閉じ込め層と前記第2の閉じ込め層の間に挟まれた、第3の半導体材料による光導電層と、互いに独立している、前記第1の閉じ込め層の前記光導電層から離れた側の表面に配置された第1の電極及び第2の電極と、前記第1の閉じ込め層に隣接したミラー層とが含まれていることを特徴とする光導電性スイッチ。
【請求項23】前記光導電性スイッチに、更に、入射光で前記光導電層を照射するように配置された光源が含まれることと、前記第1の閉じ込め層及び前記光導電層が、それぞれ、tc及びdの厚さを備えていることと、前記第1の半導体材料と前記第3の半導体材料が、それぞれ、前記入射光に対してαc及びαpの吸収率を備えることと、前記第1の閉じ込め層の前記厚さと前記第1の半導体材料の前記吸収率の積tcαcが、1に比較して小さい値を備えることと、前記光導電層の前記厚さと前記第3の半導体材料の前記吸収率の積dαpが、約1を超える値を備えることを特徴とする、請求項22に記載の光導電性スイッチ。
【請求項24】前記ミラー層に、屈折率の異なる誘電体材料による1対の副層が含まれることを特徴とする、請求項22に記載の光導電性スイッチ。

【図4】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図9】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図10】
image rotate


【公開番号】特開2001−36101(P2001−36101A)
【公開日】平成13年2月9日(2001.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−178910(P2000−178910)
【出願日】平成12年6月14日(2000.6.14)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.