説明

改良された噴霧乾燥装置を使用する均質な噴霧乾燥された固体の非晶質薬物分散物を製造する方法

【課題】改良された噴霧乾燥装置による固体の非晶質薬物分散物を製造する方法の提供。
【解決手段】従来の噴霧乾燥法が、圧力ノズル及び乾燥用ガスの流れを改良するために拡散板を組込み、さらに乾燥時間を増加するために乾燥室を伸長することによって改良された。さらに非晶質薬物とセルロース系ポリマーあるいは中和された酸性ポリマーとを含んでなる組成物が、このような改良によって、濃度向上ポリマー中の薬物の均質な固体の分散物として形成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
[発明の背景]
流動性供給原料から粉末を製造するために噴霧乾燥を使用することは公知であり、粉末ミルクからバルクの化学薬品及び医薬にわたって応用されている。米国特許第4,187,617号及びMujumber et al.,Drying 91,pages 56−73(1991)を参照されたい。薬物と濃度向上ポリマーとの固体の非晶質分散物を形成するために噴霧乾燥を使用することも知られている。本出願人の欧州特許出願番号0 901 786、1 027 886、1 027 887、1 027 888、並びに本出願人のPCT出願番号WO 00/168092及びWO 00/168055を参照されたい。また、ノズル霧化器を使用する噴霧乾燥器のための空気分散機として多孔板を使用することも、更に既知である。Masters,Spray Drying Handbook,pages 263−268(4thed 1985)を参照されたい。
【0002】
典型的な噴霧乾燥装置は、乾燥室、乾燥室に入る溶媒含有供給物を霧化するための霧化手段、乾燥室に流れ込んで、霧化された溶媒含有供給物から溶媒を除去する加熱された乾燥ガスの供給源、及び乾燥室の下流に位置する生成物回収手段を含んでなる。このような装置の例は、Niro Models PSD−1、PSD−2及びPDS−4(Niro A/S,Soeborg,Denmark)を含む。噴霧乾燥によって固体の非晶質分散物を形成させるために使用する場合、慣用的な知識によれば、均質な固体の非晶質分散物を形成するために必要である迅速な溶媒の除去を達成するためには、霧化された溶媒含有供給物の液滴が小さくなければならない。従って従来の技術では、溶媒含有供給物を霧化するために二流体ノズルを備えた噴霧乾燥装置を使用している。このようなノズルによって、供給物の溶液の小さい液滴(典型的には直径5ないし30μm)が製造され、そして液体供給物の液滴と乾燥用ガスとが乱流混合され、流体が迅速に乾燥され、固体粒子が形成される。前記の様式で使用する場合、このような噴霧乾燥装置は、使用の環境に導入された場合に濃度向上を示す、薬物とポリマーとの実質的に非晶質で、実質的に均質な固体の非晶質分散物を形成することにおいて有効である。しかしながら、先に記述したように、このような装置で製造された噴霧乾燥された粒子は、しばしば粒子サイズの中央値が小さく(直径約30μmより小さい)、大量の「微粉」(fines)(約10μmより小さい直径を持つ粒子)を有する。更に生成物は、典型的には高い比体積も有する。比体積は、噴霧乾燥された粉末の体積をその質量で割ったものであり、典型的にはcm/gの単位で表される。一般的には、粉末の比体積が大きくなると、その流動特性は悪化する。その結果、二流体ノズルを備えた噴霧乾燥装置を使用して製造した分散物は、相対的に流動特性および回収効率が悪い。
【0003】
本発明者は、50μm以上の平均液滴直径を有し、10μmより小さいサイズの液滴を約10容量%より少なく含む液滴を製造する霧化手段を備えた噴霧乾燥装置を使用することによって、噴霧乾燥された分散物の流動特性及び回収効率を改良することができることを見出した。このような霧化手段を、本明細書において「圧力ノズル」と呼ぶ。圧力ノズルを使用して形成した均質な固体の非晶質分散物は、粒子サイズの中央値が相対的に大きく、存在する微粉が最小であることが発見されている。従って、得られた分散物は、改良された流動特性及び改良された回収効率を有する。本出願人によって2002年2月1日に出願され、参照により本明細書に含まれるものとされる米国特許仮出願番号60/353,986(弁理士案件記録PC23203)を参照されたい。
【0004】
しかしながら、他が全て同じであるとして、圧力ノズルによって製造されたこのような大きい液滴からの溶媒の除去速度は、二流体ノズルによるより小さい液滴からの溶媒の除去速度より遅い。従来は、大きい液滴はより遅く乾燥するという傾向に対抗するため、乾燥用ガスが、霧化された液滴の流れと平行でない流れ方向に導入される。このように導入された乾燥用ガスによって、はじめは下方に向かっていた液滴又は粒子を、乾燥器の上部に戻す大きい循環気流が生じる。このような流れにより、乾燥用ガスと霧化された噴霧溶液との乱流混合が生じ、液滴がより迅速に乾燥される。しかしながら、大きい粒子を噴霧乾燥するためのこのような従来の方法は、(1)ノズルそれ自体、並びに乾燥用ガス入口付近の乾燥器表面に物質が蓄積する、(2)一部の粒子が過剰に迅速に乾燥されてしまう、さらに(3)乾燥条件がやや均一でない、という結果を生じる。その結果、製造された生成物は、内容物の均一性が悪く、比体積が大きく、流動特性が悪くなる傾向があり、さらに、高温の表面で蓄積が生じた場合、生成物が化学的分解してしまう可能性を有する傾向がある。従って、従来の噴霧乾燥装置へのこのような乾燥用ガスの非平行的導入は避けなければならない。
【0005】
従って、改良された流動特性、改良された内容物の均一性、及び改良された回収効率を有する固体の非晶質分散物を高収率で製造することができる、改良された噴霧乾燥法に対する必要性がこの技術分野において存在する。
【0006】
[発明の概要]
本発明によれば、濃度向上ポリマー中の医薬の均質な噴霧乾燥された固体の非晶質分散物を製造するための改良された方法が提供される。本発明の改良された方法は、乾燥用ガスの制御されたプラグフローを容易にするガス分散手段、特定の高さ及び体積を有する乾燥室、及び50μm又はそれより大きい液滴直径の中央値を有し、10μmより小さいサイズの液滴を約10容量%より少なく含有する液滴を製造する液滴霧化手段(本明細書において圧力ノズルとされる)の使用を含んでなる。
【0007】
[発明の詳細な説明]
図面(同じ数字は同じ要素を表す)を参照すると、図1は、典型的な従来技術の噴霧乾燥装置10を示す。以下の検討においては、噴霧乾燥装置が円筒形であると仮定している。しかしながら、乾燥器は、溶媒を含有する供給物を噴霧乾燥するために適した、正方形、矩形、及び八角形を始めとするあらゆる他の形状を取ることができる。また、噴霧乾燥装置は、一つの霧化手段を有するように描写されている。しかしながら、多数の霧化手段を噴霧乾燥装置に含めて、溶媒を含有する供給物の更に高い処理能力を達成することができる。
【0008】
図1に示した装置は、乾燥室20、乾燥室上面21、回収コーン22、回収コーンの末端部23に接続された接続ダクト26、サイクロン28、及び回収容器29を含んでなる。霧化器30は、溶媒を含有する供給物32を霧化することを示す。乾燥用ガス供給源(示されていない)からの乾燥用ガスは、乾燥用ガス入口31から(典型的には乾燥室上面21の環状開口部を経由して)、典型的には乾燥器の上面の中心から霧化手段30を経由して垂直に導入される霧化された液滴の流れに平行でない流れの方向で導入される。非平行の乾燥用ガスの流れは、典型的には室の中央付近の霧化された液滴に向かう内向きのベクトルと、中心から離れる流れである外向きのベクトルとを有する。このように導入された乾燥用ガスによって、円形の大規模な流れ(一般的に円筒形の室の周囲に平行)を誘導される。そしてこの流れは、液滴又は粒子を最初は下向きに、次いで乾燥室の上面21に戻し、大部分が、図1の矢印で示されるように乾燥用ガス入口31及び霧化手段30の近辺を通過するような大きな循環気流を作り出す。このような流れにより、乾燥用ガスと霧化された溶媒を含有する供給物32との迅速かつ乱流の混合が誘導され、液滴が迅速に乾燥され、分散物の固体粒子が形成される。固体の分散物粒子は、乾燥用ガスによって回収コーン22を通って接続ダクト26へ、そして次いでサイクロン28に伴出される。サイクロンにおいて、粒子は、乾燥用ガス及び蒸発した溶媒から分離されて、粒子が回収容器29に回収されることが可能になる。サイクロンの代わりに、乾燥用ガス及び蒸発した溶媒から粒子を分離および回収するために、フィルターを使用することができる。
【0009】
乾燥用ガスは、現実にはあらゆるガスであってよりが、可燃性蒸気の着火による発火又は爆発の危険性を最小限に抑え、さらに、薬物、濃度向上ポリマー、又は分散物中の他の物質の好ましくない酸化を最小限に抑えるために、窒素、窒素富化空気、又はアルゴンのような不活性ガスが使用される。乾燥用ガスの装置10のガス入口における温度は、典型的には約60℃から約300℃である。出口又は回収コーン22の末端部23における、生成物粒子、乾燥用ガス、蒸発した溶媒の温度は、典型的には約0℃ないし約100℃の範囲である。
【0010】
先に記述したように、従来の知識によると、低溶解度の薬物と濃度向上ポリマーとの均質な固体の非晶質分散物の形成には、霧化された液滴の迅速な固化が必要である。これを達成するために、従来の技術は、一般的には50μm又はそれより小さい中央値直径、そして典型的には5ないし30μmの平均液滴直径を持つ比較的小さい液滴を製造する、図3に示す二流体ノズルのような霧化手段を備えた、図1に示すような装置を使用している。このような二流体ノズルにおいて、溶媒含有供給物32は、空気又は窒素などの霧化用ガス36と混合され、供給物が小さい液滴に霧化される。この小さい液滴のサイズは、ノズル内、並びにノズル出口における乾燥用ガスの一部との乱流混合と共に、大きい表面積及び液滴からの溶媒の蒸発の推進力となり、液滴から溶媒を迅速に除去する。得られた分散物の粒子は、典型的には30μm又はそれより小さい中央値直径を有する。更に、大きい割合(典型的には約10容量%より大きい割合)の粒子が、10μmより小さい直径を有する微粉を構成し、これによって、分散物粒子の流動特性が比較的に悪くなる。これらの微粉によって、一般的に生成物の流動特性が悪化するだけでなく、微粉が充分に小さいため、表面積対質量比が大きく、しばしば生じる静電電荷が微粉の質量に対して大きくなる。結果として、これらは、サイクロン及びフィルターによる回収法において、回収効率が悪い。
【0011】
本発明者は、改良された特性を有する噴霧乾燥された分散物が、圧力ノズル(即ち、50μm又はそれより大きい中央値液滴直径を持つ液滴で、10μmより小さいサイズの液滴を約10容量%より少なく含有する液滴を製造する霧化手段)を使用することによって得ることができることを発見した。このような霧化手段によって製造された液滴は、二流体ノズルを備えたもののような従来の噴霧乾燥装置において使用されるものより有意に大きい。結果として、このような大きい液滴からの溶媒除去の速度は、より小さい液滴からの溶媒除去速度より遅い。この遅い溶媒除去の速度にもかかわらず、本発明者は、均質な噴霧乾燥された分散物をこのような霧化手段を使用して形成することができることを発見した。
【0012】
圧力ノズルが図1に示すような従来の噴霧乾燥装置で使用された場合、得られる非平行な流れは、先に記載したように大きい循環気流を作り出し、これは、乾燥用ガス及び霧化された噴霧溶液の迅速な、そして乱流の混合を起こし、大きい液滴を急速に乾燥させる。この方法は、圧力ノズルによって形成された大きい液滴を、慣用的な大きさの乾燥室で乾燥することを可能にするという利益を有する。結果として、この様式で、均質な固体の非晶質分散物を首尾良く得ることができる。しかしながら、それによる粒子の迅速な乾燥によって、比較的流動特性が悪く、比体積が大きい生成物が生じる。更に、液滴に対する乾燥条件は均一でないため、広い範囲の粒子サイズ、密度、及び形態を有する生成物が得られる。最後に、以下で説明するように、このような装置においては、その中で物質が蓄積してしまうため、収率が低下し、そして装置が頻繁に運転停止することがある。
【0013】
図1の従来の技術の装置(特に圧力ノズル霧化器を備えた場合)の主要な欠点は、乾燥用ガス入口31近辺の乾燥室上面21の内側、並びに噴霧ノズル30上及びその周囲への物質34の蓄積である。この物質34の蓄積は、部分的に、先に記載したように、そして図1中の矢印によって例示するような、液滴又は部分的に乾燥された粒子を室上面21まで運搬し、そして乾燥用ガス入口31及び霧化手段30を通過する循環気流のためであると信じられる。これは、溶媒を含有する供給物32の液滴、並びに部分的に乾燥された粒子が、乾燥室上面21及び霧化手段30の熱表面に、これらが完全に乾燥される前に接触させる。図2に描いた霧化器30及びその周囲への物質34の集積は、最終的に溶媒を含有する供給物32の流れを妨げ、これは次に、供給物の霧化を悪化させ、液滴サイズを変化させ、そして供給物の流れを減少させて、これによって噴霧乾燥装置の能力を低下させる。このため、高い生成物品質及び生産性を維持するために、装置の頻繁な運転停止及び清掃を必要となる。
【0014】
本発明者は、乾燥用ガスを、その流れの主軸が一般的に霧化手段30の軸と平行であり、そしてこれが、乾燥室内の流れが局部的には乱流ではあるが、乾燥室20の直径にわたって比較的均一に流れるように導入することによって、一般的に下向きの「制御されたプラグフロー」(以下に記載される)を室上面21から有意な距離離れるまで維持することができるという驚くべき発見をした。乾燥用ガスをこの様式で導入することにより、(1)室上面21への上向きに戻る粒子の循環を防止し;(2)霧化手段30、室上面21、及び乾燥用ガス入口31の物質34の蓄積を回避し;(3)液滴に対して更に均一な乾燥条件を与え、更に均一な生成物を生じさせ;そして(4)液滴の更に遅い乾燥を可能にして、改良された流動特性を有する、一般的に更に密度の高い、比体積の更に低い生成物の形成を可能にする。
【0015】
図4に、生成物の回収手段がすべて省略された改良された噴霧乾燥装置11の断面略図を示し、これは、乾燥室20内に、そして乾燥室上面21の下に位置するガス分散手段24を含む。ガス分散手段24は、乾燥用ガスを、図4の上部で、多数の下向きの矢印によって略図的に示されるように、これが最初一般的に霧化手段30の軸に平行であり、そして装置の直径にわたって比較的均等に分布されるように、室20に導入することを可能にする。従って乾燥用ガスは、噴霧乾燥器の上部を通るその流れが、装置の上面から離れる「制御されたプラグフロー」と記載することができるように導入される。「制御されたプラグフロー」とは、乾燥用ガスの流れが、以下の二つの条件のうち少なくとも一つを満足することを意味する。第1は、乾燥室の直径方向にわたるいずれもの点における、乾燥室20の壁面に平行な乾燥用ガスの速度ベクトルが、主として回収コーン22の末端部23に向かっていることである。第2は、乾燥室の上面近辺のいずれもの循環気流が小さく、循環気流の直径が乾燥室の直径の20%より小さく、循環気流がガス分散手段24の少なくとも20cm下に位置する。この乾燥器の上面から離れる制御されたプラグフローは、本質的に乾燥器の末端部まで伸長することができ、又は乾燥器の長さの下方の一部のみに伸長することができる。下向きの制御されたプラグフローが、あったとしてもわずかな液滴又は粒子しか、乾燥器の下部から乾燥器の上面のガス分散手段24及び霧化手段30の近傍に戻って循環することができないように、乾燥器の下方に十分に伸長される(少なくとも約20cm)ことのみが一般的に必要である。従って、乾燥用ガスの制御されたプラグフローは、液滴又は粒子を乾燥室の上部に戻す循環気流の形成を劇的に減少させる。
【0016】
制御されたプラグフローの更なる二つの利益は、
(1)乾燥用ガスの流速が乾燥室の全直径にわたって均一であり、乾燥室中の粒子の更に均一な滞留時間、並びに粒子サイズ、密度及び形態の改良された均一性が得られ、そして(2)粒子が一般的に更にゆっくりと乾燥され、従って更に密度の高い、更に低い比体積の粒子が形成されることを可能にすることである。このような低い比体積の生成物は、こ
れらが改良された流動特性を有するために、一般的に好ましい。
【0017】
図4は、先に記載した様式で乾燥用ガスの導入を達成するための一つの方法を例示し、そして乾燥室の一部分を下る所望の制御されたプラグフローが達成されることを示している。一つの態様において、ガス分散手段24は、乾燥室20の内部と同じ広がりを有する板からなり、そして板の表面積の約0.5ないし約5%、好ましくは約1%を占める多数の均等に分布された穿孔を保有し、それぞれの穿孔は、約0.1ないし約6mm、好ましくは約1.0ないし約3.0mmの直径を有する。もう一つの態様において、穿孔の密度は、霧化手段が板を通して乾燥室に伸長する拡散板の中心において低い。円筒形の乾燥室において、この低密度領域は、拡散板の中心から乾燥室の直径の約10%ないし約35%の直径まで広がる。この低密度領域の穿孔の密度は、拡散板の外側の部分における穿孔の密度の約10%ないし約50%である。ガス分散手段24は、乾燥用ガスの制御されたプラグフローを作り出し(図4の下向きの矢印によって描写される)、そして液滴及び粒子を、ガス分散手段24及び霧化手段30に運搬する大きい循環気流を劇的に減少する。これは、一般的にこれらの二つの領域における生成物の蓄積を大いに減少させる。
【0018】
しかしながら、図4に示した噴霧乾燥装置は、一般的に液滴、及び次に、物質34の乾燥室20の下部及び回収コーン22の壁面の過剰な蓄積なしに形成することができる生成物粒子のサイズを制約する。この問題を回避するための一つの方法は、より小さい液滴及び粒子を製造するために霧化条件を調節することである。第2の方法は、乾燥用ガスの入口温度(そして次に出口温度)を高くし、従ってより迅速な液滴の乾燥を誘導することである。これらの方法の両方は好結果ではあるが、これによって、より小さい粒子サイズ及び/又はより高い粒子比体積となってしまい、これらの両方によって、不良な流動特性を持つ生成物が得られるために好ましくない。しかしながら、本発明者は、乾燥室の高さ、即ち、回収コーン22のいずれもの表面までの最小距離を増加することよって、(1)増加した生成物収率(乾燥室又は回収コーンの内部表面への物質のわずかな蓄積又は蓄積がないため)、(2)増加した粒子サイズ及び(3)減少した比体積、を有する生成物を得ることができることを見出した。
【0019】
図5は、図4に記載したものと同じ設計のガス分散手段24を含む、本発明の変更された噴霧乾燥装置13の断面略図を示す。装置13も、更に慣用的な乾燥室の高さより大きい高さHを有する乾燥室20を有する。高さが大きいため、液滴が乾燥室20又は回収コーン22の壁面に衝突する前に移動する最小距離が増加され、乾燥室又は回収コーンの内部表面への物質34の蓄積が最小となるように、液滴を十分に乾燥することが可能になる。高さをより高くすることによって、加工条件の選択をより可能にし、これにより、生成物の分散物の改良された特性が得られる。例えば、高さをより高くすることによって、乾燥時間をより長くすることが可能になり、より大きい液滴を製造する霧化手段を使用することが可能になる。結果として、より大きい粒子、そして従って改良された流動特性及び回収効率を有する生成物の分散物を製造することができる。より大きい高さは、更に液滴のより遅い乾燥を導く工程条件の選択を可能にし、より低い比体積及び従って改良された流動特性を持つ生成物が得られる。50μm又はそれより大きい平均液滴直径を持ち、そして約10容量%より少ない10μmより小さいサイズを有する液滴を伴う液滴を製造する霧化手段30、乾燥用ガスの制御されたプラグフローを得るガス分散手段24、及び乾燥室20又は回収コーン22の壁面に衝突する前に粒子が移動する増加した最小距離を得るためのより大きい高さHを備えた変更された装置13の使用により、大きい粒子サイズ、最小の微粉、低い比体積、高い回収効率、及び良好な流動特性を有する均質な固体の非晶質分散物の形成が、霧化手段30、室の蓋21、乾燥用ガス入口31、乾燥室20又は回収コーン22への物質34の蓄積を最小にしつつ、高収率で得られる。
【0020】
乾燥室20又は回収コーン22の壁面に衝突する前に、液滴が移動する十分な最小距離
を与える乾燥室20の高さHは、(1)溶媒を含有する供給物の乾燥特質、(2)噴霧乾燥器への溶媒を含有する供給物及び乾燥用ガスの流速、(3)乾燥用ガスの入口温度、(4)液滴サイズ及び液滴サイズ分布、及び(5)噴霧乾燥器内の物質の平均滞留時間を含むいくつかの因子の関数である。
【0021】
本発明者は、乾燥室の高さのわずかな増加により、噴霧乾燥器の改良された性能が得られることを見出した。例えば、溶媒を含有する供給物で使用するために設計された慣用的なNiro PSD−1噴霧乾燥装置は、約0.8mの高さを有する。圧力ノズルをこのような乾燥器で使用する場合、液滴のかなりの部分が乾燥室及び回収コーンの壁面に衝突する前に、十分に乾燥されず、乾燥器内の物質の蓄積並びに不良な収率及び不良な内容物の均一性が得られる。しかしながら、高さを1.0mまで1.25倍高くすると、液滴が十分に乾燥されることができ、内部乾燥器表面の物質の蓄積が最小化される。
【0022】
本発明者は、更に慣用的なNiro PSD−1噴霧乾燥器の高さを3.25倍に増加(2.6mへ)させることによって、所望する特性を持つ均質な固体の非晶質の噴霧乾燥された分散物を製造することになお大きい適応性を可能にすることを示した。このような配置により、噴霧乾燥条件は、大きい粒子(即ち、50μmより大きい)、低い比体積(即ち、4mL/gmより小さい)を持つ分散物の高収率(即ち、95%より大きい)な形成を可能にするように選択することができる。このような特性を持つ分散物は、慣用的なPSD−1噴霧乾燥器では製造することができない。
【0023】
噴霧乾燥法についての実験及び有限要素モデル化によって、本発明者は、所定の薬物及び所定の濃度向上ポリマーの均質な固体の非晶質分散物を製造するために、乾燥室の高さは、液滴が乾燥装置の表面に衝突する前に移動するための十分な最小距離を確保するために、少なくとも1.0mでなければならないことを決定した。更に好ましくは、乾燥室の高さは少なくとも1.5m、そして最も好ましくは少なくとも2.0mである。これらの最低高さの必要値に合致する噴霧乾燥器は、乾燥用ガスの制御されたプラグフローが得られるガス分散手段及び圧力ノズルとの組み合わせで、高品質の生成物を高収率にて製造される。
【0024】
乾燥室の高さは、液滴が乾燥装置の表面に衝突する前に移動する最小距離を決定するために重大であるが、乾燥装置の体積も更に重要である。噴霧乾燥器の能力は、一部分では、溶媒を含有する供給物の流量を乾燥用ガスの温度及び流れに調和することによって決定される。簡単に言えば、乾燥用ガスの温度及び流量は、溶媒を含有する供給物を蒸発するために十分な熱が噴霧乾燥装置に放出されるように、十分に高くなければならない。従って、溶媒を含有する供給物の流量が増加された場合、乾燥用ガスの流量及び/又は温度が、所望する生成物の形成のために十分なエネルギーを与えるために増加されなければならない。乾燥用ガスの許容温度が、溶媒を含有する供給物中に存在する薬物の化学的安定性によってしばしば制約されるために、乾燥用ガスの流量が、噴霧乾燥装置の増加された能力(即ち、溶媒を含有する供給物の増加した流れ)が可能なようにしばしば増加される。所定の体積を持つ乾燥装置において、乾燥用ガスの流量の増加は、乾燥器中の液滴又は粒子の平均滞留時間を減少することになり、これは、乾燥室が慣用的な乾燥器より大きい高さを有していたとしても、噴霧乾燥器の表面に衝突する前に固体粒子を形成する、液滴からの溶媒の蒸発のために不十分な時間を導くことがあるものである。結果として、乾燥器の体積は、液滴が乾燥器の内部表面に衝突する時までに、物質の蓄積を防止するために十分に乾燥するように、十分に大きくなければならない。
【0025】
この乾燥時間を、噴霧乾燥装置の体積と乾燥装置に供給される乾燥用ガスの体積流量との比、或いは以下の式:
【0026】
【数1】

【0027】
として定義される「平均滞留時間」、τによって考慮することができる。ここでVdryerは、噴霧乾燥器の体積であり、Gは、乾燥器に供給される乾燥用ガスの体積流量である。乾燥器の体積は、乾燥室20及び回収コーン22の体積の合計である。直径D、乾燥室の高さH、及び回収コーンの高さLを持つ円筒形の乾燥装置に対して、乾燥器の体積Vdryerは、以下の式:
【0028】
【数2】

【0029】
として与えられる。本発明者は、液滴が噴霧乾燥器内の表面に衝突する前に、十分に乾燥する時間を有することを確実にするために、平均滞留時間が少なくとも10秒でなければならないことを決定した;更に好ましくは、平均滞留時間は、少なくとも15秒、そして最も好ましくは少なくとも20秒である。
【0030】
例えば、0.25m/秒の乾燥用ガスの体積流量及び20秒の平均滞留時間に対して、噴霧乾燥装置の必要な体積は、以下の式:
【0031】
【数3】

【0032】
によって計算することができる。従って、5mの体積、2.3mの高さ及び60°のコーン角度27(回収コーン22の高さLが、乾燥室20の直径Dと等しいこと、又はL=Dであることを意味する)を持つ回収コーン22を持つ噴霧乾燥器に対して、噴霧乾燥室の必要な直径Dは、上記の等式から以下のように求められる:
【0033】
【数4】

【0034】
噴霧乾燥器の直径を少なくとも1.5mとするならば、乾燥器中の粒子の平均滞留時間は少なくとも20秒となるものであり、そして圧力ノズルによって製造された液滴は、これらが乾燥器の表面に衝突するときまでに、乾燥室及び回収コーンの壁面の物質の蓄積を最小化するために十分に乾燥しているものである。
【0035】
これらの基準を使用して、薬物と濃度向上ポリマーとの均質な固体の非晶質分散物を高収率で、そして所望する特質を伴って形成するために必要な噴霧乾燥器の高さ及び体積を決定することができる。
【0036】
薬物
本発明は、薬物と濃度向上ポリマーとの固体の非晶質分散物の形成に有用である。「薬
物」という用語は、慣用的であり、動物(特にヒト)に投与した場合、有益な予防的特性及び/又は治療的特性を有する化合物を表す。低溶解度の薬物が本発明と共に使用するための好ましい群となるが、本発明の利益を得るために薬物が低溶解度の薬物である必要はない。所望する使用環境で相当な溶解度をなお示す薬物あっても、濃度向上ポリマーの添加によって治療的効果に必要な投与量を減少できる場合、或いは薬物の効果が迅速に開始されることを所望するときに薬物の吸収速度を増加させる場合、本発明によって可能になる増加した溶解度及び/又はバイオアベイラビリティを可能にする利益を得ることができる。
【0037】
本発明は、「低溶解度薬物」の固体の分散物の調製し、「低溶解度薬物」の溶解度を向上させるために特に適している。ここで、「低溶解度薬物」とは、薬物が、「実質的に水不溶性」(薬物が生理学的に関係するpH(例えば、pH1−8)において0.01mg/mL未満の最小の水溶性を有する薬物を意味する)、「難水溶解性」(即ち、約1ないし2mg/mL以下の水溶解性を有する)、或いは低ないし中程度の水溶解度(約1mg/mLないし高くても約20ないし40mg/mLの水溶解度を有する)のいずれであってもよいことを意味する。薬物の溶解度がより低い場合、本発明の有用性はより大きくなる。従って、本発明の組成物は、10mg/mLより小さい溶解度を有する低溶解度薬物に対して好ましく、1mg/mLより小さい溶解度を有する低溶解度薬物に対して更に好ましく、そして0.1mg/mLより小さい溶解度を有する低溶解度薬物に対してなお更に好ましい。一般に、薬物は、投与量と水溶性との比が10mLを超える(更に典型的には100mLより大きい)と言うことができる。ここで、薬物の溶解度(mg/mL)は、USP模倣胃腸緩衝液を始めとするあらゆる生理学的に関係する水溶液(例えば、1ないし8間のpH値を持つもの)中で観察された最低値であり、そして投与量はmgである。従って、投与量と水溶性との比は、投与量(mg)を溶解度(mg/mL)で割ることによって計算することができる。
【0038】
薬物の好ましい群には、これに制約されるものではないが、抗高血圧剤、抗不安剤、抗凝固剤、抗痙攣剤、血糖低下剤、鬱血除去剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、抗悪性腫瘍剤、ベータ遮断剤、抗炎症剤、抗精神病剤、向知性剤、抗アテローマ性硬化症剤、コレステロール減少剤、抗肥満剤、免疫性疾患剤、抗性的不全剤、抗細菌及び抗真菌剤、催眠剤、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、抗生物質、抗鬱剤、抗ウイルス剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、並びにコレステロールエステル運搬タンパク質阻害剤(CETP)が含まれる。
【0039】
それぞれの名前を挙げた薬物には、中性での薬物の形態、医薬的に受容可能な塩、およびプロドラッグが含まれるものと理解すべきである。抗高血圧剤の具体例には、プラゾシン、ニフェジピン、アムロジピンベシレート、トリマゾシン(trimazosin)及びドキサゾシンが含まれる。血糖値低下剤の具体例には、グリピジド(glipizide)及びクロルプロパミド(chlorpropamide)がある。抗性交不能剤の具体例には、シルデナフィル及びクエン酸シルデナフィルがある。抗悪性腫瘍剤の具体例には、クロランブシル(chlorambucil)、ロムスチン(lomustine)及びエチノマイシン(echinomycin)が含まれる。イミダゾール型の抗悪性腫瘍剤の具体例には、ツブラゾール(tubulazole)がある。抗高コレステロール血症剤の具体例には、アトルバスタチンカルシウムがある。抗不安剤の具体例には、塩酸ヒドロキシジン及び塩酸ドキセピン(doxepin)が含まれる。抗炎症剤の具体例には、ベタメタゾン、プレドニゾロン、アスピリン、ピロキシカム、バルデコキシブ(valdecoxib)、カルプロフェン(carprofen)、セレコキシブ(celecoxib)、フルルビプロフェン及び(+)−N−{4−[3−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ]−2−シクロペンテン−1−イル}−N−ヒドロキシウレアが含まれる。バルビツール剤の具体例には、フェノバルビタールがある。抗ウイルス剤の具体例に
は、アシクロビル、ネルフィナビル、及びビラゾール(virazole)が含まれる。ビタミン/栄養剤の具体例には、レチノール及びビタミンEが含まれる。ベータ遮断剤の具体例には、チモロール及びナドロールが含まれる。催吐剤の具体例には、アポモルフィネ(apomorphine)がある。利尿剤の具体例には、クロルタリドン及びスピロノラクトンが含まれる。抗凝結剤の具体例には、ジクマロール(dicumarol)がある。強心剤の具体例には、ジゴキシン及びジギトキシンが含まれる。アンドロゲンの具体例には、17−メチルテストステロン及びテストステロンが含まれる。鉱質コルチコイドの具体例には、デスオキシコルチコステロンがある。ステロイド系睡眠剤/麻酔剤の具体例には、アルファキサロン(alfaxalone)がある。タンパク質同化剤の具体例には、フルオキシメステロン及びメタンステノロン(methanstenolone)が含まれる。抗鬱剤の具体例には、スルピリド、[3,6−ジメチル−2−(2,4,6−トリメチル−フェノキシ)−ピリジン−4−イル]−(1−エチルプロピル)−アミン、3,5−ジメチル−4−(3’−ペントキシ)−2−(2’,4’,6’−トリメチルフェノキシ)ピリジン、ピロキシジン(pyroxidine)、フルオキセチン(fluoxetine)、パロキセチン、ベンラファキシン(venlafaxine)及びセルトラリン(sertraline)が含まれる。抗生物質の具体例には、カルベニシリン(carbenicillin)インダニルナトリウム、塩酸バカンピシリン、トロレアンドマイシン(troleandomycin)、ドキシサイクリン(doxycyline)ヒクラート(hyclate)、アムピシリン及びペニシリンGが含まれる。抗感染剤の具体例には、塩化ベンザルコニウム及びクロルヘキシジンが含まれる。冠状動脈血管拡張剤の具体例には、ニトログリセリン及びミオフラジン(mioflazine)が含まれる。覚醒剤の具体例には、エトミダート(etomidate)がある。炭酸脱水酵素阻害剤の具体例には、アセタゾラミド及びクロルゾラミド(chlorzolamide)が含まれる。抗真菌剤の具体例には、エコナゾール、テルコナゾール(terconazole)、フルコナゾール、ボリコナゾール(voriconazole)、及びグリセオフルビンが含まれる。抗原虫剤の具体例には、メトロニダゾールがある。駆虫剤の具体例には、チアベンダゾール(thiabendazole)及びオキシフェンダゾール(oxfendazole)及びモランテル(morantel)が含まれる。抗ヒスタミン剤の具体例には、アステミゾール(astemizole)、レボカバスチン、セチリジン、デカルボエトキシロラタジン(decarboethoxyloratadine)、及びシンナリジン(cinnarizine)が含まれる。抗精神病剤の具体例には、ジプラシドン(ziprasidone)、オランザピン、塩酸チオチキセン(thiothixene)、フルスピリレン(fluspirilene)、リスピリドン及びペンフルリドール(penfluridole)が含まれる。胃腸剤の具体例には、ロペラミド及びシサピリドが含まれる。セロトニンアンタゴニストの具体例には、ケタンセリン(ketanserin)及びミアンセリンが含まれる。麻酔剤の具体例には、リドカインがある。血糖降下剤の具体例には、アセトヘキサミドがある。制吐剤の具体例には、ジメンヒドリナートがある。抗細菌剤の具体例には、コツリモキサゾール(cotrimoxazole)がある。ドーパミン作動剤の具体例には、L−DOPAがある。抗アルツハイマー病剤の具体例には、THA及びドネペジルがある。抗潰瘍剤/H2アンタゴニストの具体例には、ファモトジンがある。鎮静/催眠剤の具体例には、クロルジアゼポキシド及びトリアゾラムが含まれる。血管拡張剤の具体例には、アルプロスタジルがある。血小板阻害剤の具体例には、プロスタサイクリン(prostacyclin)がある。ACE阻害剤/抗高血圧剤の具体例には、エナラプリル(enalaprilic)酸、キナプリル及びリシノプリルが含まれる。テトラサイクリン系抗生物質の具体例には、オキシテトラサイクリン及びミノサイクリンが含まれる。マクロライド系抗生物質の具体例には、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、及びスピラマイシン(spiramycin)が含まれる。アザリド系抗生物質の具体例には、アジスロマイシンがある。グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤の具体例には、[R−(R)]−5−クロロ−N−[2−ヒドロキシ−3−{メトキシメチルアミノ}−3−オキソ−1−(フェニルメチル)プロピル−1H−インドール−2−カルボキシアミド及び5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1S)−ベンジル−(2R)−ヒドロキシ−3−((3R,4S)−ジヒドロキシ−ピロリジン−1−イル−)−3−オキシプロピル]アミドが含まれる。コレステロールエステル運搬タンパク質阻害剤の具体例には、[2R,4S]−4−[アセチル−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸イソプロピルエステル、[2R,4S]4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル及び[2R,4S]4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸イソプロピルエステルが含まれる。
【0040】
固体薬物含有分散物
本発明の方法によって形成される噴霧乾燥された生成物は、薬物と少なくとも一つの濃度向上ポリマーとの分散物を含んでなる。分散物中の薬物の少なくとも大部分は非晶質である。本明細書中で使用される場合、薬物の「大部分」という用語は、分散物中の少なくとも60%の薬物が、結晶質の形態ではなく、非晶質の形態であることを意味する。「非晶質」によって、単純に薬物が結晶質ではない状態であることを意味する。好ましくは、分散物中の薬物は、実質的に非晶質である。本明細書中で使用される場合、「実質的に非晶質」とは、結晶質の形態である薬物の量が、約25%を超えないことを意味する。更に好ましくは、分散物中の薬物は、「殆ど完全に非晶質」であり、結晶質の形態である薬物の量が約10%を超えないことを意味する。結晶質の薬物の量は、粉末X線回折(PXRD)、走査電子顕微鏡(SEM)分析、示差走査熱量計(DSC)又はいずれもの標準的定量測定によって測定することができる。
【0041】
本発明の方法によって形成された組成物は、薬物の投与量及び濃度向上ポリマーの有効性にもよるが、約1ないし約80重量%の薬物を含有することができる。水中の薬物濃度及び相対的なバイオアベイラビリティの向上は、典型的には低い薬物量(典型的には約25ないし約40重量%より低い)で最良である。しかしながら、剤形のサイズの現実的な制約から、より多い薬物量がしばしば好ましく、そして多くの場合良好に機能する。
【0042】
非晶質の薬物は、固体の非晶質分散物内に純粋な相として、ポリマー中に均質に分布された薬物の固溶液として、又はこれらの状態のいずれもの組合せ、或いはこれらの中間にある状態で存在することができる。分散物は、好ましくは実質的に均質であり、非晶質の薬物は、ポリマー中に可能な限り均質に分散される。本明細書中で使用される「実質的に均質」は、固体分散物内の比較的純粋な非晶質の領域に存在する薬物の部分が、比較的小さく、薬物の全量の約20%より少ない、そして好ましくは10%より少ない次数であることを意味する。
【0043】
本発明の方法によって形成された分散物は、ある程度の薬物富化領域を有することができるが、分散物それ自体は単一のガラス転移温度(T)を有することが好ましく、これによって、分散物が実質的に均質であることが確認される。これは、純粋な非晶質の薬物粒子と純粋な非晶質のポリマー粒子との単純な物理的混合物と対照的である。この物理的混合物は、一般的に、一つが薬物のT、そして一つがポリマーのTといった、個別の二つのTを示す。本明細書中で使用される場合、Tは、ガラス質物質が、徐々に加熱されたときに、ガラス質の状態からゴム質の状態へ比較的迅速に(例えば、10ないし100秒)物理的変化を起こす特有の温度である。ポリマー、薬物又は分散物のような非晶質の物質のTは、動的機械分析器(DMA)、膨張計、誘電解析器、及びDSCによるものを始めとするいくつかの方法によって測定することができる。それぞれの方法で測定された正確な値は、わずかに異なっていることができるが、通常それぞれ他の値から10℃ないし30℃の範囲に入る。使用した方法にかかわらず、非晶質分散物が単一のTを示す場合、これは、分散物が実質的に均質であることを示す。実質的に均質である本発明の方法によって形成される分散物は、一般に、均質でない分散物と比べ物理的により安定であり、改良された濃度向上特性、さらには改良されたバイオアベイラビリティを有する。
【0044】
濃度向上ポリマー
本発明の方法によって形成される組成物において使用するために適した濃度向上ポリマーは、不活性でなければならない。不活性とは、濃度向上ポリマーが、薬物と不都合なように化学反応しないという意味である。ポリマーは、中性又はイオン化可能であることができ、さらに、少なくともpH1〜8の範囲のわたって0.1mg/mL以上の水溶解度を有していなければならない。
【0045】
ポリマーが「濃度向上ポリマー」であることは、ポリマーが、以下の条件の少なくとも一つ、そして好ましくは両方に合致することを意味する。第1の条件は、濃度向上ポリマーによって、等量の分散していない薬物からなり、濃度向上ポリマーを含まない対照組成物に対して、使用環境における薬物の最大薬物濃度(MDC)が増加することである。即ち、組成物が使用環境に導入されたときに、このポリマーは、薬物の水中濃度を対照組成物に対して増加させる。好ましくは、濃度向上ポリマーは、水溶液中の薬物のMDCを、対照組成物に対して少なくとも1.25倍、更に好ましくは少なくとも2倍、そして最も好ましくは3倍に増加させる。第2の条件は、濃度向上ポリマーが、使用環境における薬物の時間対濃度曲線下面積(AUC)を、薬物からなり、ポリマーを含まない対照組成物に対して増加させることである。(AUCの計算は、医薬分野において公知の手順であり、例えば、Welling,“Pharmacokinetics Processes and Mathematics,”ACS Monograph 185(1986)中に記載されている)。更に具体的には、使用環境において、薬物と濃度向上ポリマーとを含んでなる組成物は、使用環境への導入後約90分ないし約270分のいずれもの期間において、等量の薬物からなり、ポリマーを含まない対照組成物のAUCに対し、少なくとも1.25倍のAUCを与える。好ましくは、この組成物によって与えられるAUCは、対照組成物のAUCの少なくとも2倍、更に好ましくは少なくとも3倍である。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「使用環境」は、哺乳動物(特にヒト)のGI管のin
vivoの環境、または試験用液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液又は絶食十二指腸モデル(MFD)溶液など)中のin vitroの環境のいずれであってもよい。
【0047】
本発明に使用するために適した濃度向上ポリマーは、セルロース系又は非セルロース系であることができる。ポリマーは、水溶液中で中性又はイオン化可能であることができる。これらの中で、イオン化可能なポリマーおよびセルロース系のポリマーが好ましく、イオン化可能なセルロース系のポリマーが更に好ましい。
【0048】
濃度向上ポリマーは、その性質が、ポリマーが疎水性及び親水性の部分を有することを意味する「両親媒性」であることが好ましい。両親媒性ポリマーが好ましいのは、このようなポリマーが、薬物と比較的強い相互作用を有する傾向があり、そして溶液中で各種のポリマー/薬物の会合体の形成を促進することができると信じられるためである。両親媒性ポリマーの特に好ましい群は、イオン化可能なものであり、このようなポリマーのイオン化可能な部分は、イオン化された場合、ポリマーの親水性部分の少なくとも一部を構成する。例えば、特定の理論に束縛されることを望むものではないが、このようなポリマー/薬物の会合体は、濃度向上ポリマーによって、薬物に向かって内側に回転したポリマーの疎水性領域で取囲まれた疎水性の薬物のクラスターを含んでなることができ、そしてポ
リマーの親水性領域は、水性の環境に向かって外側に回転する。他には、薬物の具体的な化学的性質によるが、ポリマーのイオン化された官能基は、例えばイオン対又は水素結合を介して、薬物のイオン性基又は極性基と会合することができる。イオン化可能なポリマーの場合、ポリマーの親水性領域は、イオン化された官能基を含むものである。更に、このようなポリマー(ポリマーがイオン化可能な場合)のイオン化された基の同一電荷の斥力は、ポリマー/薬物の会合体のサイズをナノメートル又はミクロン以下の大きさに制約するために働くことがある。溶液中のこのような薬物/濃度向上ポリマーの会合体は、荷電した高分子ミセル状構造によく似ている。いずれの場合も、本発明者は、作用の機構にかかわらず、このような両親媒性ポリマー(特に以下に列挙するもののようなイオン化可能なセルロース系ポリマー)が、薬物と相互作用して、水性の使用環境においてより高い薬物濃度を維持することを観察している。
【0049】
本発明と共に使用するために適したポリマーの一つの群は、イオン化不可能な(中性の)非セルロース系ポリマーを含んでなる。例示的なポリマーとしては:ヒドロキシ、アルキルアシルオキシ、及び環式アミドからなる群より選択される少なくとも一つの置換基を有するビニルポリマー及びコポリマー;その繰返し単位の少なくとも一部を、加水分解されていない(酢酸ビニル)形態で有するポリビニルアルコール;ポリビニルアルコールポリ酢酸ビニルコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリエチレンポリビニルアルコールコポリマー並びにポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーがある。
【0050】
中性の非セルロース系ポリマーの好ましい群は、少なくとも一つの親水性のヒドロキシル基を含有する繰返し単位、及び少なくとも一つの疎水性のアルキル基又はアリール基を含有する繰返し単位のビニルコポリマーを含んでなる。このような中性のビニルコポリマーは、「両親媒性ヒドロキシル官能性ビニルコポリマー」と呼ばれる。両親媒性ヒドロキシル官能性ビニルコポリマーは、これらのコポリマーが両親媒性であって、疎水性の低溶解度の薬物と相互作用するのに十分な疎水性基とより良好な溶解のために十分な水中の溶解度を有する十分な親水性基との両方を与えるために、高い濃度向上がなされると信じられる。両親媒性ヒドロキシル官能性ビニルコポリマーの共重合構造によって、その親水性と疎水性を調節して、特定の低溶解度の薬物に対し最大の効果を発揮するようにすることが可能である。
【0051】
好ましいコポリマーは、以下の一般構造を有する:
【0052】
【化1】

【0053】
ここで、A及びBは、それぞれ「親水性ヒドロキシル含有」置換基と「疎水性」置換基とを表し、n及びmはそれぞれ、ポリマー分子あたりの、親水性ビニル繰返し単位の平均数と、疎水性ビニル繰返し単位の平均数とを表す。コポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーであってよく、また、これらは、これらの両極端の間のいずれの構造をとることができる。nとmの合計は、一般的に約50ないし約20,000であり、従ってポリマーは、約2,500ないし約1,000,000ダルトンの分子量を有する。
【0054】
親水性のヒドロキシル含有繰返し単位「A」は、単純にヒドロキシル(−OH)であることができ、或いはこれは、一つ又はそれより多いヒドロキシルがそれに接続した、いずれもの短鎖の1ないし6個の炭素のアルキルであることができる。ヒドロキシル置換アルキルは、炭素−炭素またはエーテル結合を介してビニル骨格に接続されてもよい。従って
、例示的な「A」構造は、ヒドロキシル基自体に加えて、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシメトキシ、ヒドロキシエトキシ、及びヒドロキシプロポキシを含む。
【0055】
疎水性置換基「B」は:単純に水素(−H)、この場合、疎水性繰返し単位はエチレンである;メチル、エチル又はフェニルのような炭素−炭素結合を経由して接続された12個までの炭素を持つアルキル又はアリール置換基;メトキシ、エトキシ又はフェノキシのようなエーテル連結を経由して接続された12個までの炭素を持つアルキル又はアリール置換基;酢酸基、プロピオン酸基、酪酸基又は安息香酸基のようなエステル連結を経由して接続された12個までの炭素を持つアルキル又はアリール置換基であることができる。本発明の両親媒性ヒドロキシル感応性ビニルコポリマーは、置換ビニルコポリマーを合成するために用いられる慣用的なあらゆる方法によって合成することができる。ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニルのようないくつかの置換されたビニルコポリマーは、公知であり、そして商業的に入手可能である。
【0056】
合成するために特に都合のよい両親媒性ヒドロキシル感応性ビニルコポリマーのサブクラスは、疎水性置換基「B」が親水性置換基「A」を含んでなるものであって、この「A」にはアルキレート又はアリレート基がAの一以上のヒドロキシルにエステル結合を介して結合している。このようなコポリマーは、先ず置換基Bを有する疎水性ビニル繰返し単位のホモポリマーを形成し、続いてエステル基の一部を加水分解して、疎水性繰返し単位の一部を、置換基Aを有する親水性のヒドロキシル含有繰返し単位に転換することによって合成することができる。例えば、ホモポリマーのポリビニルブチレートの部分的加水分解により、Aがヒドロキシル(−OH)であり、Bが酪酸基(−OOC−CHCHCH)であるコポリマーのビニルアルコール/ビニルブチレートコポリマーを得る。
【0057】
全ての種類のコポリマーにおいて、得られたコポリマーが少なくとも部分的に水溶性であるように、nの値は、mの値に対して十分に大きくなければならない。n/mの比の値は、A及びBの性質によって変化するが、一般的に少なくとも約1、そして更に普通には約2又はそれより多い。n/mの比は、200程度に大きくてもよい。コポリマーが疎水性ホモポリマーの加水分解によって形成された場合、n及びmの比は、典型的には「加水分解パーセント」で報告され、これは、加水分解された又はヒドロキシルの形態であるコポリマーの全繰返し単位の端数(パーセントで表示される)である。加水分解パーセントHは、以下の式として与えられる:
【0058】
【数5】

【0059】
従って、75%の加水分解パーセントを有するビニルブチレート/ビニルアルコールコポリマー(酪酸基の一部の加水分解により得られる)は、n/m比が3である。
両親媒性ヒドロキシル感応性ビニルコポリマーの特に好ましいファミリーは、Aがヒドロキシであり、そしてBが酢酸基であるものである。このようなコポリマーは、酢酸ビニル/ビニルアルコールコポリマーと呼ばれる。いくつかの商業用のものは、時には単純にポリビニルアルコールとも呼ばれる。しかしながら、真のホモポリマーのポリビニルアルコールは、両親媒性ではなく、そして殆ど完全に水溶性である。好ましい酢酸ビニル/ビニルアルコールコポリマーは、Hが約67%ないし99.5%の間、又はn/mが約2ないし200の間の値を有するものである。好ましい平均分子量は、約2500ないし1,000,000ダルトン、そして更に好ましくは約3000ないし約100,000ダルトンの間である。
【0060】
本発明で使用するために適したポリマーのもう一つの群は、イオン化可能な非セルロース系ポリマーを含んでなる。例示的なポリマーは:カルボン酸官能化ポリメタクリレート及びカルボン酸官能化ポリアクリレートのようなカルボン酸官能化ビニルポリマー(Malden,MassachusettsのRohm Tech Inc.によって製造されたEUDRAGIT(登録商標)シリーズなど);アミン官能化ポリアクリレート及びポリメタクリレート;ゼラチン及びアルブミンのようなタンパク質;並びにグリコール酸デンプンのようなカルボン酸官能化デンプンを含む。
【0061】
両親媒性である非セルロース系ポリマーは、比較的親水性及び比較的疎水性のモノマーのコポリマーである。例は、アクリレート及びメタクリレートコポリマーを含む。このようなコポリマーの商業級のものは、EUDRAGIT(登録商標)系列を含み、これは、メタクリレート及びアクリレートのコポリマーである。
【0062】
ポリマーの好ましい群には、イオン化可能な及び中性の(又はイオン化不可能な)セルロース系ポリマーが含まれ、このポリマーは、少なくとも一つのエステル及び/又はエーテル連結置換基を有し、それぞれの置換基に対して少なくとも0.05の置換度を有する。本明細書中で使用されるポリマーの命名において、エーテル連結置換基は、エーテル基に接続された部分として「セルロース」の前に記されることに注意すべきである。例えば、「エチル安息香酸セルロース」は、エトキシ安息香酸置換基を有する。類似的に、エステル連結置換基は、「セルロース」の後に、カルボキシレートのように記される。例えば、「セルロースフタレート」は、ポリマーにエステル連結したそれぞれのフタル酸基部分の一つのカルボン酸を有し、そして他方のカルボン酸は未反応である。
【0063】
「セルロースアセテートフタレート」(CAP)のようなポリマーの名前は、セルロース系ポリマーのヒドロキシル基の有意な部分にエステル連結を経由して接続された、酢酸及びフタル酸基を有するセルロース系ポリマーのファミリーのいずれをも表すことも更に注意すべきである。一般的に、それぞれの置換基の置換度は、ポリマーの他の基準が合致する限り、0.05ないし2.9の範囲であることができる。「置換度」は、セルロース鎖の糖繰返し単位当たりの三つのヒドロキシルの、置換された平均数である。例えば、セルロース鎖のヒドロキシルの全てがフタル酸基で置換された場合、フタル酸基の置換度は3である。それぞれのポリマーファミリーの種類に更に含まれるものは、ポリマーの性能を実質的に変更しないような比較的少量の更なる置換基が加えられたセルロース系ポリマーである。
【0064】
両親媒性セルロース系誘導体は、母体セルロース系ポリマーが、それぞれの糖繰返し単位に存在する3個のヒドロキシル基のいずれか又は全てにおいて、少なくとも一つの比較的疎水性の置換基で置換されたポリマーを含んでなる。疎水性置換基は、十分に高い水準又は置換度で置換されたときに、セルロース系ポリマーを本質的に水不溶性にすることができるいずれもの置換基であることができる。疎水性置換基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のエーテル連結アルキル基;又は酢酸基、プロピオン酸基、酪酸基等のエステル連結アルキル基;並びにフェニル、安息香酸基、又はフェニレートのようなエーテル及び/又はエステル連結アリール基を含む。ポリマーの親水性領域は、置換されていないヒドロキシルがそれ自体比較的親水性であるために、比較的置換されていない部分、或いは親水性置換基で置換された領域のいずれかであることができる。親水性置換基は、ヒドロキシアルキル置換基ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、及びエトキシエトキシ又はメトキシエトキシのようなアルキルエーテル基のようなエーテル又はエステル連結のイオン化不可能な基を含む。特に好ましい親水性置換基は、カルボン酸、チオカルボン酸、置換されたフェノキシ基、アミン、リン酸基、スルホン酸基のような、エーテル又はエステル連結のイオン化可能な基であるものである。
【0065】
セルロース系ポリマーの一つの群は、ポリマーが、水溶液中で実質的にイオン化不可能であることを意味する中性のポリマーを含んでなる。このようなポリマーは、エーテル連結又はエステル連結のいずれかであることができるイオン化不可能な置換基を含有する。例示的なエーテル連結のイオン化不可能な置換基は:メチル、エチル、プロピル、ブチル、等のようなアルキル基;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、等のようなヒドロキシアルキル基;及びフェニルのようなアリール基を含む。例示的なエステル連結のイオン化不可能な置換基は:酢酸基、プロピオン酸基、酪酸基、等のようなアルキル基;及び石炭酸基のようなアリール基を含む。しかしながら、アリール基が含まれる場合、ポリマーが、1ないし8の生理学的に関係するいずれものpHにおいて少なくともある程度の水に対する溶解度を有するように、ポリマーは、十分な量の親水性置換基を含むことが必要であることができる。
【0066】
ポリマーとして使用することができる例示的なイオン化不可能なセルロース系ポリマーは:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート、及びヒドロキシエチルエチルセルロースを含む。
【0067】
中性のセルロース系ポリマーの好ましいセットは、両親媒性であるものである。例示的なポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースアセテートであって、置換されていないヒドロキシル又はヒドロキシプロピル置換基に対して、比較的大きい数のメチル又は酢酸置換基を有するセルロース系繰返し単位が、ポリマーの他の繰返し単位に対して疎水性領域を構成するものが含まれる。
【0068】
セルロース系ポリマーの好ましい群は、生理学的に関係するpHにおいて少なくとも部分的にイオン化可能なポリマーを含んでなり、少なくとも一つのイオン化可能な置換基(エーテル連結又はエステル連結のいずれかであることができる)を含む。例示的なエーテル連結のイオン化可能な置換基は:酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸、エトキシ安息香酸又はプロポキシ安息香酸のようなアルコキシ安息香酸、エトキシフタル酸及びエトキシイソフタル酸のようなアルコキシフタル酸の各種の異性体、エトキシニコチン酸のようなアルコキシニコチン酸の各種の異性体、並びにエトキシピコリン酸のようなピコリン酸の各種の異性体、等のようなカルボン酸;チオ酢酸のようなチオカルボン酸;ヒドロキシフェノキシ、等のような置換されたフェノキシ基;アミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、トリメチルアミノエトキシ、等のようなアミン;リン酸エトキシのようなリン酸基;並びにスルホン酸エトキシのようなスルホン酸基を含む。例示的なエステル連結のイオン化可能な置換基は:コハク酸基、クエン酸基、フタル酸基、テレフタル酸基、イソフタル酸基、トリメリト酸基、及びピリジンジカルボン酸の各種の異性体、等のようなカルボン酸;チオコハク酸基のようなチオカルボン酸;アミノサリチル酸のような置換されたフェノキシ基;アラニン又はフェニルアラニンのような天然又は合成アミノ酸のようなアミン;アセチルリン酸基のようなリン酸基;並びにアセチルスルホン酸基のようなスルホン酸基を含む。芳香族置換ポリマーが必要な水溶解度をも有するためには、ヒドロキシプロピル又はカルボン酸官能基のような十分な親水性基がポリマーに接続されて、少なくともいずれかのイオン化可能な基がイオン化されるpH値において、ポリマーが水可溶性にされることも好ましい。ある場合には、芳香族置換基それ自体がフタル酸基又はトリメリト酸基の置換基のように、イオン化可能であることができる。
【0069】
生理学的に関係するpHにおいて少なくとも部分的にイオン化可能である例示的なセルロース系ポリマーは:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテ
ートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートスクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテート、及びエチルピコリン酸セルロースアセテートを含む。
【0070】
親水性及び疎水性領域を有する両親媒性の定義に合致する例示的なセルロース系ポリマーには、セルロースアセテートフタレート及びセルロースアセテートトリメリテートのようなポリマーであって、一つ又はそれより多い酢酸置換基を有するセルロースの繰返し単位が、酢酸置換基を有しないセルロース単位に対して疎水性であるか、或いは一つ又はそれより多いイオン化されたフタル酸基若しくはトリメリト酸基の置換基を有するポリマーが含まれる。
【0071】
セルロース系のイオン化可能なポリマーの特に好ましいサブセットは、カルボン酸官能性芳香族置換基及びアルキレート置換基の両方を保有し、そして従って両親媒性であるものである。例示的なポリマーは、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートスクシネート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートスクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテート、及びエチルピコリン酸セルロースアセテートを含む。
【0072】
セルロース系のイオン化可能なポリマーのもう一つの特に好ましいサブセットは、非芳香族カルボン酸置換基を保有するものである。例示的なポリマーは、ヒドロキシプロピル
メチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートスクシネート及びカルボキシメチルエチルセルロースを含む。生理学的に関係するpHにおいて少なくとも部分的にイオン化されるこれらのセルロース系ポリマーの中で、本発明者は、次のものが最も好ましいことを見出した:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート及びカルボキシメチルエチルセルロース。最も好ましいものは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)である。
【0073】
もう一つの好ましいポリマーの群は、中和された酸性のポリマーからなる。「中和された酸性のポリマー」とは、「酸性部分」又は「酸性置換基」のかなりの部分が「中和された」(即ち、その脱プロトンされた形態で存在する)あらゆる酸性ポリマーを意味する。「中和された酸性のセルロース系ポリマー」とは、その「酸性部分」又は「酸性置換基」のかなりの部分が「中和された」あらゆるセルロース系「酸性ポリマー」を意味する。「酸性ポリマー」とは、有意な数の酸性部分を保有するあらゆるポリマーを意味する。一般的に、有意な数の酸性部分は、ポリマーのグラム当たり約0.1ミリ当量より大きい又はそれに等しい酸性部分であるものである。「酸性部分」は、水と接触又はそれに溶解された場合、少なくとも部分的に水素カチオンを水に供与することによって水素イオン濃度を増加させることができる、十分に酸性のあらゆる官能基を含む。この定義には、約10未満のpKを有するような。あらゆる官能基又は「置換基」(ポリマーに共有的に接続された場合にこのように命名される)が含まれる。上記の説明に含まれる官能基の例示的な群は、カルボン酸、チオカルボン酸、リン酸基、フェノール基、及びスルホン酸基を含む。このような官能基は、ポリアクリル酸のようにポリマーの一次構造を構成することができるが、より一般的には、母体ポリマーの骨格に共有的に接続されるため「置換基」と名付けられる。中和された酸性のポリマーは、その関連する開示が本明細書中に参考文献として援用される、2001年6月22日に出願された同一出願人による米国特許出願番号60/300,255中に更に詳細に記載されている。
【0074】
特定的なポリマーが、本発明によって形成可能な分散物中で使用するために適しているものとして検討されてきたが、このようなポリマーの配合物も更に適していることができる。従って、「濃度向上ポリマー」という用語には、単一種のポリマーに加えて、ポリマーの配合物が含まれるものと意図される。
【0075】
本発明によって形成される噴霧乾燥分散物中に存在する薬物の量に対する濃度向上ポリマーの量は、薬物及び濃度向上ポリマーに依存し、そして0.01ないし5の薬物とポリマーの重量比で広く変化することができる。しかしながら、薬物の投与量が非常に低い(例えば25mg又はそれより少ない場合)を除き、殆どの場合、薬物とポリマーの比が、0.05より大きく、そして2.5より小さいことが好ましく、そしてしばしば薬物濃度又は相対的なバイオアベイラビリティの向上は、1又はそれより少ない、或いはある薬物に対しては0.2又はそれより少ない薬物とポリマーの比においてさえ観察される。薬物の投与量が約25mg又はそれより少ない場合、薬物とポリマーの重量比は、0.05より有意に少ないものであることができる。一般的に、投与量にかかわらず、薬物濃度又は相対的バイオアベイラビリティの向上は、薬物とポリマーの重量比が小さくなるに伴って増加する。しかしながら、錠剤、カプセル又は懸濁液の合計質量を低く保つ現実的な制約のために、満足な結果が得られる限り、比較的高い薬物とポリマーの比を使用することがしばしば好ましい。満足な結果を得る薬物:ポリマーの最大の比は、薬物によって変化し、そして以下に記載されるin vitro及び/又はin vivo溶解試験において最良に決定される。
【0076】
一般的に、薬物の、薬物濃度又は相対的バイオアベイラビリティを最大にするために、薬物とポリマーの比が低いことが好ましい。薬物とポリマーとの比が低いと、溶液中に利用可能な十分な濃度向上ポリマーが存在し、溶液からの薬物の沈殿又は結晶化を阻害することが確実になり、そのため、薬物の平均濃度が更に高くなる。薬物とポリマーの比が高いと、溶液中に十分な濃度向上ポリマーが存在することができず、そして薬物の沈殿又は結晶化が更に容易に起こることができる。しかしながら、剤形中で使用することができる濃度向上ポリマーの量は、受容可能な剤形の最大の合計質量によってしばしば制約される。例えば、ヒトに対する経口投与が所望される場合、薬物/ポリマー比が低いと、薬物及びポリマーの合計質量が、単一の錠剤又はカプセル中の所望する投与量を放出するためには受容不可能なほど大きくなることがある。従って、特定の剤形で、使用環境に容易に放出するために十分に小さい剤形で十分な薬物の投与量を与えるために、最大の薬物濃度又は相対的バイオアベイラビリティを得るそれより少ない薬物/ポリマーの比を使用することがしばしば必要である。
【0077】
濃度向上
濃度向上ポリマーは、本発明によって形成される噴霧乾燥された分散物中に、使用環境における薬物の濃度を対照組成物に対して改良するために十分な量で存在する。最低でも、本発明によって形成される組成物は、分散されていない薬物単独からなる対照に対して濃度を向上させる。従って、濃度向上ポリマーによって、組成物が使用環境に投与された場合、等量の結晶質の薬物からなり、濃度向上ポリマーが存在しない対照よりも、本発明の組成物が改良された薬物濃度を与えるのに十分な量で存在する。
【0078】
薬物と濃度向上ポリマーとを含んでなる、本発明の方法によって形成される組成物は、in vitro溶解試験において溶解された薬物の向上した濃度を与える。MFD溶液又はPBS溶液中のin vitro溶解試験おける向上した薬物濃度が、in vivoの性能及びバイオアベイラビリティの良好な指標であることが決定されている。適当なPBS溶液は、20mMのNaHPO、47mMのKHPO、87mMのNaCl、及び0.2mMのKClを含んでなり、NaOHでpH6.5に調節された水溶液である。適当なMFD溶液は、7.3mMのタウロコール酸ナトリウム及び1.4mMの1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが更に存在する同一のPBS溶液である。特に、本発明の方法によって形成された組成物は、これをMFD又はPBS溶液に加え、そして溶解を促進するために撹拌することによって溶解試験することができる。一般的に、試験溶液に加えられる組成物の量は、組成物中の全ての薬物が溶解された場合、試験用液における薬物単独の平衡溶解度の少なくとも約2倍、そして好ましくは約10倍の薬物濃度を生じる量である。より高い水準の溶解された薬物の濃度は、なお大量の組成物の添加によって証明することができる。
【0079】
一つの側面において、本発明の方法によって形成される組成物は、等量の薬物からなるがポリマーを含まない対照組成物の平衡濃度の、少なくとも1.25倍であるMDCを与える。言い換えれば、対照組成物によって与えられる平衡濃度が1μg/mLである場合、本発明の方法によって形成された組成物は、少なくとも約1.25μg/mLのMDCを与える。比較組成物は、慣用的には分散されていない薬物単独(例えば、典型的には、その最も熱力学的に安定な結晶型の結晶質の薬物、又は薬物の結晶型が未知の場合、対照は非晶質の薬物単独であることができる)又は薬物及び試験組成物中のポリマーの重量と等重量の不活性希釈剤である。好ましくは、本発明の方法によって形成された組成物により達成される薬物のMDCは、対照組成物の平衡濃度に対して少なくとも約2倍、更に好ましくは少なくとも約3倍である。
【0080】
別の方法として、本発明の方法によって形成された組成物は、水性の使用環境において
、使用環境への導入後少なくとも約90分から約270分までのいずれもの期間に対する、等量の分散されていない薬物からなる対照組成物のAUCの少なくとも約1.25倍、好ましくは少なくとも約2倍、そして最も好ましくは少なくとも約3倍であるAUCを与える。
【0081】
水溶液中の向上した薬物濃度を評価するためのin vitro試験は、(1)十分な量の対照組成物、典型的には薬物単独を、MFD又はPBS溶液のようなin vitro試験媒体中に撹拌しながら加えて、薬物の平衡濃度を達成し;(2)十分な量の試験組成物(例えば薬物及びポリマー)を同一試験媒体中に、全ての薬物が溶解した場合、薬物の理論的濃度が薬物の平衡濃度を少なくとも2の係数、そして好ましくは少なくとも10の係数で超えるように撹拌しながら加え;そして(3)試験媒体中の試験組成物の測定されたMDC及び/又は水中のAUCを、対照組成物の平衡濃度及び/又は水中のAUCと比較することによって行うことができる。このような溶解試験を行う場合、使用される試験組成物又は対照組成物の量は、薬物の全てが溶解された場合、薬物濃度が平衡濃度のそれの少なくとも2倍、そして好ましくは少なくとも10倍であるような量である。実際に、ある種の極端に不溶性の薬物において、達成されるMDCを同定するために、薬物の全てが溶解された場合、薬物濃度が、薬物の平衡濃度のそれの100倍又はそれよりなお多いような量の試験化合物を使用することが必要である。
【0082】
溶解された薬物の濃度は、典型的には試験媒体を採取し、そしてMCDを確認することができるように、試験媒体中の薬物濃度を時間に対してプロットすることによって時間の関数として測定される。MCDは、試験の期間にわたって測定された溶解した薬物の最大値とみなされる。水中のAUCは、時間対濃度曲線を、水性の使用環境への組成物の導入の時間(このとき時間はゼロである)ないし使用環境への導入後270分(このとき時間は270分である)の間の、いずれもの90分の時間にわたって積分することによって計算される。典型的には、組成物がそのMDCに迅速に、例えば約30分より少ない時間で達した場合、AUCを計算するために使用される時間間隔は、時間ゼロから時間90分までである。しかしながら、先に記載したいずれもの90分の時間にわたる組成物のAUCが、本発明の基準に合致する場合、形成された組成物は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0083】
誤った測定結果を与えるものである大きい薬物の粒子を回避するために、試験溶液は濾過又は遠心のいずれかをされる。「溶解された薬物」は、典型的には0.45μmのシリンジフィルターを通過するか、又は別に、遠心後の上清中に残った物質のいずれかの物質とみなされる。濾過は、Scientific Resources of Eatontown,New JerseyによってTITAN(登録商標)の商標で販売されている、13mmの0.45μmのポリ二フッ化ビニリデンシリンジフィルターを使用して行うことができる。遠心は、典型的にはポリプロピレンのマイクロ遠心管で13,000Gで60秒間遠心することによって行われる。他の同様な濾過又は遠心法を使用し、そして有用な結果を得ることができる。例えば、他の種類のマイクロフィルターの使用は、上記で規定したフィルターで得られるそれよりやや高い又は低い(±10−40%)値を得ることができるが、しかしなお好ましい分散物の同定を可能にするものである。この「溶解された薬物」の定義が、規定した溶解試験において濾液又は上清中に存在する、単体の溶媒和された薬物分子だけでなく、薬物集合体、ポリマー及び薬物の混合物の集合体、ミセル、高分子ミセル、コロイド状粒子又はナノ結晶、ポリマー/薬物複合体及び他のこのような薬物含有種のようなサブミクロンの寸法を有するポリマー/薬物会合体のような広範囲の種をも包含することは認識されるべきである。
【0084】
別の方法として、本発明の方法によって形成される組成物は、ヒト又は他の動物に経口的に投与された場合、等量の分散されていない薬物からなる対照組成物が投与された場合
に観察されるAUCの少なくとも約1.25倍の血中の薬物濃度のAUCを与える。このような組成物が、更に約1.25の相対的バイオアベイラビリティを有すると言うことができることも注意される。投与を容易にするために、投与用ベヒクルを、投与量の投与のために使用することができる。投与用ベヒクルは好ましくは水であるが、試験又は対照組成物を懸濁するための物質を、これらの物質が、組成物を溶解せず又はin vivoの薬物の溶解度を変化しないことを条件に、更に含有することができる。好ましくは、本発明の方法によって形成される組成物は、ヒト又は他の動物に経口的に投与された場合、等量の分散されていない薬物からなる対照組成物を投与した場合に観察されるそれの、少なくとも約2倍、更に好ましくは少なくとも約3倍の血中の薬物濃度のAUCを与える。従って、本発明の方法によって形成される組成物は、in vitro又はin vivo試験のいずれか、或いは両方によって評価することができる。
【0085】
本発明の方法によって形成される分散物中の薬物の相対的バイオアベイラビリティは、動物又はヒトのin vivoで、このような決定を行うための慣用的な方法を使用して試験することができる。交差研究のようなin vivo試験を、薬物と濃度向上ポリマーとの組成物が、先に記載したような薬物からなり、しかしポリマーを含まない対照組成物と比較して向上した相対的バイオアベイラビリティを与えるか否かを決定するために使用することができる。In vivoの交差研究において、薬物及びポリマーの試験組成物を、試験被検体のグループの半数に投与し、そして適当な洗い出し期間(例えば1週間)後に、同一被検体に試験組成物と等量の薬物からなり、しかしポリマーが存在しない対照組成物を投与する。グループの他の半数は、先ず対照組成物が、続いて試験組成物が投与される。相対的バイオアベイラビリティは、試験グループに対して決定された時間対血中(血清又は血漿)濃度の曲線下面積(AUC)を対照組成物によって与えられた血中のAUCで割ってものとして測定される。好ましくは、この試験/対照の比は、それぞれの被検体に対して決定し、そして次いで比を研究の全ての被検体にわたって平均する。In vivoのAUCの決定は、薬物の血清又は血漿濃度を縦軸(y軸)に沿って、横軸(x軸)に沿った時間に対してプロットすることによって行うことができる。AUCの決定は、公知の手順であり、そして例えば、Welling,“Pharmacokinetics Processes and Mathematics”,ACS Nomograph 185(1986)中に記載されている。
【0086】
組成物の調製
薬物と濃度向上ポリマーとの分散物は、噴霧乾燥法によって製造され、これは、少なくとも大部分(少なくとも60%)が非晶質の状態である薬物が得られる。分散物は、一般的に、薬物が、実質的に非晶質で、そして実質的に均質にポリマー中に分布されるようにポリマー中に分散された場合に、その最大のバイオアベイラビリティ及び安定性を有する。一般的に、分散物の均質性の程度が増加すると、薬物の水中濃度及び相対的バイオアベイラビリティの向上が同様に増加する。従って、最も好ましいものは、高い程度の均質性を示す単一のガラス転移温度を有する分散物である。
【0087】
噴霧乾燥法において、薬物及び一つ又はそれより多い濃度向上ポリマーは、共通の溶媒中に溶解される。ここで「共通の」は、薬物及びポリマー(類)の両方を溶解する溶媒(化合物の混合物であってよい)である。薬物及びポリマーの両方が溶解された後、溶媒は噴霧乾燥装置内で蒸発によって迅速に除去され、実質的に均質な固体の非晶質分散物の形成が得られる。このような分散物中で、薬物は、ポリマー中に可能な限り均質に分散され、そして分散物が熱力学的に安定であるポリマー(類)中に分散された薬物の固溶液と考えることができ、ポリマー中の薬物の濃度がその平衡値であるか又はそれより低いか、或いは分散ポリマー(類)中の薬物濃度がその平衡値より高い過飽和固溶液であると考えることができることを意味する。
【0088】
溶媒は、噴霧乾燥法によって除去される。「噴霧乾燥」という用語は、慣用的に、そして広く使用され、液体混合物を小さい液滴に分割(霧化)し、そして溶媒を、液滴からの溶媒の蒸発のための強力な推進力が存在する噴霧乾燥装置内で混合物から迅速に除去することを含む方法を指す。噴霧乾燥法及び噴霧乾燥機器は、一般的にPerry’s Chemical Engineers’Handbok,pages 20−54ないし20−57(Sixth Edition 1984)中に記載されている。噴霧乾燥法及び機器の更に詳細は、Marshall,“Atomization and Spray−Drying”,50 Chem.Eng.Prog.Monogr.Series 2(1954)及びMasters,Spray Drying Handbook(Fourth Edition 1985)によって概説されている。溶媒蒸発のための強力な推進力は、一般的に、溶媒の噴霧乾燥装置内の分圧を、乾燥される液滴の温度における溶媒の蒸気圧より十分に低く維持することによって与えられる。これは、(1)噴霧乾燥装置内の圧力を部分真空(例えば、0.01ないし0.5気圧)に維持すること;又は(2)液体の液滴を暖かい乾燥用ガスと混合すること;或いは(1)及び(2)の両方によって達成される。更に、溶媒の蒸発に必要な熱の一部は、噴霧溶液を加熱することによって与えることができる。
【0089】
噴霧乾燥に適した溶媒は、その中で薬物及びポリマーが相互に可溶であるいずれもの有機化合物であることができる。好ましくは、溶媒は、更に150℃又はそれより低い沸点をもつ揮発性物質である。更に、溶媒は、比較的低い毒性を有し、そして分散物から医薬品規制調和国際会議(ICH)の指針に従って受容可能な水準まで除去されなければならない。この水準までの溶媒の除去は、トレイ乾燥のようなその後の加工工程を必要とすることができる。好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、及びブタノールのようなアルコール;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソ−ブチルケトンのようなケトン;酢酸エチル及び酢酸プロピルのようなエステル;並びにアセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、及び1,1,1−トリクロロエタンのような他の各種の溶媒を含む。ジメチルアセトアミド又はジメチルスルホキシドのような低揮発性溶媒も更に使用することができる。50%メタノール及び50%アセトンのような溶媒の混合物も、ポリマー及び薬物が十分に可溶であって、噴霧乾燥法を実行可能とする限り、水との混合物が使用できるように、使用することができる。
【0090】
溶媒を含有する供給物の組成は、分散物中の薬物とポリマーの所望する比並びに溶媒中の薬物及びポリマーの溶解度に依存するものである。一般的に、薬物及びポリマーが、溶媒中に溶解して、固体の非晶質分散物を形成するために除去されなければならない溶媒の合計量を減少することを条件として、溶媒を含有する供給物中の可能な限り高い組合された薬物及びポリマーの濃度を使用することが好ましい。従って、溶媒を含有する供給物は、一般的に少なくとも約0.1重量%、好ましくは少なくとも約1重量%、そして更に好ましくは少なくとも約10重量%の組合された薬物及びポリマー濃度を有するものである。しかしながら、低い組合された薬物及びポリマー濃度を持つ溶媒を含有する供給物を、適した固体の非晶質分散物を形成するために使用することができる。
【0091】
薬物及びポリマーを含んでなる溶媒を含有する供給物は、圧力ノズルを通って霧化される。「圧力ノズル」によって、50μm又はそれより大きい平均液滴直径を持ち、約10%より少ない、約10μmより小さいサイズを有する液滴を伴う液滴を製造する霧化器を意味する。一般的に、適当に大きさを決められ、そして設計された圧力ノズルは、噴霧溶液がノズルを通して所望の速度でポンプで送られた場合、このサイズの範囲の液滴を製造するものであるものである。従って、例えば、400g/分の噴霧溶液をPSD−1乾燥器に放出することが所望される場合、ノズルは、所望する平均液滴サイズを達成するために、溶液の粘度及び流量に合致するように選択されなければならない。大きすぎるノズルは、所望する流量で操作された場合、大きすぎる液滴サイズを放出するものである。これは、噴霧溶液の粘度がより高い場合に特に真実である。大きすぎる液滴は、乾燥速度が遅すぎることとなり、これは、不均質な分散物を得ることができる。小さすぎるノズルの使用は、望ましくなく小さい液滴を得るか、又は所望する流量を達成するために、特に高粘度の供給物溶液に対して受容不可能に高いポンプ圧力を必要とすることができる。
【0092】
大多数の霧化器は、液体供給物をサイズの分布を伴う液滴に霧化する。霧化器によって製造される液滴のサイズの分布は、溶融ワックス及び冷凍液滴技術のような機械的技術;電荷に関連する方法及び熱に関連する方法などの電気的技術;並びに写真及び光散乱技術のような光学的技術を含むいくつかの技術によって測定することができる。霧化手段によって製造された液滴サイズの分布を決定するための更に普通の方法の一つは、Malvern Instrument Ltd.of Framingham,Massachusettsから入手可能なMalvern Particle Size Analyzerの使用による。このような計器を使用する液滴サイズ及び液滴サイズ分布を決定するために使用される原理についての更なる詳細は、Lefebvre,Atomization and Sprays(1989)中に見出すことができる。
【0093】
液滴サイズ分析器を使用して得られたデータは、いくつかの液滴の特徴的直径を決定するために使用することができる。これらの一つは、D10であり、それに等しい又はそれより小さい直径の液滴を含有する、合計液体体積の10%を構成する液滴の直径に対応する液滴直径である。言い換えれば、D10が10μmに等しい場合、液滴の10容量%が10μmより小さいか又は等しい直径を有する。従って、霧化手段がD10が、約10μmより大きいような液滴を製造することが好ましく、液滴の90容量%が約10μmより大きい直径を有することを意味する。この要求値は、固化された生成物中の微粉(即ち、10μmより小さい直径を持つ粒子)の数が最小化されることを確実にする。好ましくは、D10は、約15μmより大きく、更に好ましくは約20μmより大きい。
【0094】
霧化器によって製造される液滴のもう一つの有用な特徴的直径は、D90であり、それに等しい又はそれより小さい直径の液滴を含有する、合計液体体積の90%を構成する液滴の直径に対応する液滴直径である。言い換えれば、D90が100μmに等しい場合、液滴の90容量%が100μmより小さいか又は等しい直径を有する。本発明の技術を使用して実質的に均質で、実質的に非晶質の分散物を製造するために、本発明者は、D90が約300μmより小さく、好ましくは250μmより小さくなければならないことを見出した。D90が高すぎる場合、大きい液滴の乾燥速度は遅すぎるものであることができ、これは、非均質な分散物を得ることができる。
【0095】
もう一つの有用なパラメーターは、以下の式:
【0096】
【数6】

【0097】
のように定義される「スパン」であり、ここでD50は、それに等しいか又はそれより小さい直径の液滴を含有する、合計液体体積の50%を構成する液滴の直径に対応する直径であり、そしてD90及びD10は、上記で定義したとおりである。時に当技術分野において相対的スパン係数又はRSFと呼ばれるスパンは、液滴サイズ分布の均一性を示す無次元のパラメーターである。一般的に、スパンが低ければ、霧化手段によって製造された液滴サイズ分布は狭い。より狭い液滴サイズ分布は、一般的に乾燥された粒子のより狭い粒子サイズ分布に導き、改良された流動特性が得られる。好ましくは、本発明によって製造される液滴のスパンは、約3より小さく、更に好ましくは約2より小さく、そして最も
好ましくは約1.5より小さい。
【0098】
噴霧乾燥器で形成された固体の分散物粒子のサイズは、一般的に霧化手段によって製造された液滴のサイズよりわずかに小さい。典型的には、分散物粒子の特徴的直径は、液滴の特徴的直径の約80%である。従って、一つの側面において、本発明の方法は、約40μm又はそれより大きい平均直径を持ち、約10容量%より少ない約8μmより小さいサイズを有する粒子を含む固体の非晶質分散物を製造する。好ましくは、分散物粒子の少なくとも80容量%、そして更に好ましくは少なくとも90容量%が、10μmより大きい直径を有する。粒子は、5mL/gより小さい、そして好ましくは4mL/gより小さい嵩比体積を有することができる。粒子は、少なくとも40μm、好ましくは少なくとも50μmの平均粒子サイズを有することができる。
【0099】
均質な固体の非晶質分散物を形成するために使用するための霧化器を選択する場合、所望する流量、最大許容液体圧力、並びに溶媒を含有する供給物の粘度及び表面張力を含むいくつかの因子を考慮しなければならない。これらの因子間の関係並びに液滴サイズ及び液滴サイズ分布に対するこれらの影響は、当技術分野において公知である。
【0100】
先に記述したように、霧化器の選択は、使用される噴霧乾燥装置の規模に依存するものである。小規模な装置に対して、適した霧化器の例は、Spraying Systems,Inc.of Wheaton,Illinoisから得られるSK及びTX噴霧乾燥ノズル系列;Delavan LTV of Widnes,Cheshire,Englandから得られるWG系列;及びDusen Schlick GMBH of Untersiemau,Germanyから得られるモデル121ノズルを含む。より大きい規模の装置に対して、例示的な霧化器は、Delavan LTVから得られるSDX及びSDX IIIノズルを含む。
【0101】
多くの場合、溶媒を含有する供給物は、圧力下で霧化器に放出される。必要な液体圧力は、圧力ノズル、ノズルのオリフィスのサイズ、溶媒を含有する供給物の粘度及び他の特質、並びに所望する液滴サイズ及びサイズ分布の設計によって決定される。一般的に、液体圧力は、2ないし200気圧又はそれより高い範囲であるべきであり、4ないし150気圧が更に典型的である。
【0102】
液滴の大きい表面と体積の比及び溶媒の蒸発のための大きい推進力は、液滴の迅速な固化時間に導く。固化時間は、約20秒より少なく、好ましくは約10秒より少なく、そして更に好ましくは1秒より少なくなければならない。この迅速な固化は、粒子を、薬物富化及びポリマー富化相に分離させずに、均一で均質な分散物に維持するためにしばしば重要である。先に記述したように、濃度及びバイオアベイラビリティの大きい向上を得るために、可能な限り均質な分散物を得ることがしばしば必要である。
【0103】
先に記述したように、乾燥室内の粒子の平均滞留時間は、少なくとも10秒、好ましくは少なくとも20秒でなければならない。しかしながら、先に計算したように、粉末が乾燥室内に留まる実際の時間は、典型的には最小乾燥時間より長い。典型的には、固化後、形成された粉末は、噴霧乾燥室内に約5ないし60秒留まり、溶媒の更なる蒸発を起こす。乾燥器を出るときの固体分散物の最終溶媒含有率は、これが分散物中の薬物分子の移動性を減少し、それによってその安定性を改良するために、低くなくてなならない。一般的に、噴霧乾燥室を去るときの分散物の溶媒含有率は、約10重量%より少なく、好ましくは約3重量%より少なく、そして最も好ましくは約1重量%より少なくなければならない。トレイ乾燥のようなその後の加工工程を、溶媒をこの水準まで除去するために使用することができる。
【0104】
賦形剤及び剤形
固体の非晶質分散物中に存在する鍵となる成分は、単純に薬物及び濃度向上ポリマーであるが、分散物の性能、取扱い性、又は加工性を改良するために、他の賦形剤を分散物中に含めることができる。所望により、一旦形成された場合、分散物は、組成物を錠剤、カプセル、座薬、懸濁液、懸濁用散薬、クリーム、経皮貼布、貯留物、等に処方するために他の賦形剤と混合することができる。分散物は、本質的に、薬物を実質的に変化しないいずれもの様式で他の剤形成分に加えることができる。賦形剤は、分散物から分離した及び/又は分散物中に含めるかのいずれかであることができる。
【0105】
一般的に、界面活性剤、pH改良剤、充填剤、マトリックス物質、複合化剤、安定剤、顔料、潤滑剤、滑剤、芳香剤、等のような賦形剤は、慣例的な目的で、そして組成物の特性に不都合な影響を伴わない典型的な量で使用することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(18th ed.1990)を参照されたい。
【0106】
一つの非常に有用な賦形剤の群は、界面活性剤であり、好ましくは0ないし10重量%存在する。適した界面活性剤は、脂肪酸及びスルホン酸アルキル;塩化ベンザルコニウム(HYAMINE(登録商標)1622、Lonza,Inc.,Fairlawn,New Jerseyから入手可能);スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DOCUSATE SODIUM、Mallinckrodt Spec.Chem.,St.Louis,Missouriから入手可能);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TWEEN(登録商標)、ICI Americas Inc.,Wilmington,Delawareから入手可能;LIPOSORB(登録商標)O−20、Lipochem Inc.,Patterson New Jerseyから入手可能;CAPMUL(登録商標)POE−0、Abitec Corp.,Janesville,Wisconsinから入手可能)のような商業的な界面活性剤;並びにタウロコール酸ナトリウム、1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、レシチン、及び他のリン脂質並びにモノ−及びジグリセリドのような天然の界面活性剤を含む。例えば、湿潤化を促進することによって溶解速度を増加する、又はさもなければ剤形からの薬物の放出の速度を増加するこのような物質を、好都合に使用することができる。
【0107】
酸、塩基、又は緩衝液のようなpH改良剤の添加は、利益があることができ、組成物の溶解を遅延し(例えば、濃度向上ポリマーがアニオン性である場合、クエン酸又はコハク酸のような酸)、又は別の方法として、組成物の溶解速度を向上する(例えば、ポリマーがカチオン性である場合、酢酸ナトリウム又はアミンのような塩基)。
【0108】
慣用的なマトリックス物質、複合化剤、安定剤、可溶化剤、充填剤、崩壊性薬剤(崩壊剤)、又は結合剤も、組成物それ自体の一部として更に加えることができ、或いは湿式若しくは機械式又は他の手段による粒状化によって加えることができる。これらの物質は、組成物の90重量%までを構成することができる。
【0109】
マトリックス物質、充填剤、又は希釈剤の例は、ラクトース、マンニトール、キシリトール、微結晶セルロース、二塩基性リン酸カルシウム(無水及び二水塩)及びデンプンを含む。
【0110】
崩壊剤の例は、グリコール酸デンプンナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、及びクロスカルメロースナトリウム、並びにCROSPOVIDONE(BASF Corporationから入手可能)の商標名で市販されているもののようなポリビニルピロリドンの架橋された形態を含む。
【0111】
結合剤の例は、メチルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、グアールガム、及びトラガカントゴムのようなゴムを含む。
潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸を含む。
【0112】
保存剤の例は、亜硫酸塩(抗酸化剤)、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール及び安息香酸ナトリウムを含む。
懸濁剤又は増粘剤の例は、キサンタンガム、デンプン、グアールガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及び二酸化チタンを含む。
【0113】
凝結防止剤又は充填剤の例は、酸化ケイ素及びラクトースを含む。
可溶化剤の例は、エタノール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールを含む。
【0114】
他の慣用的な賦形剤は、当技術において公知の賦形剤を含んで本発明の組成物中で使用することができる。一般的に、顔料、潤滑剤、芳香剤、等のような賦形剤は、慣例的な目的で、そして典型的な量で、組成物の特性に不都合に影響することなく使用することができる。
【0115】
本発明の組成物は、制約されるものではないが、経口、鼻腔、直腸、膣、皮下、静脈内、及び肺を含む広範囲の経路で放出することができる。一般的に、経口経路が好ましい。
【0116】
本発明の組成物は、更に薬物の投与のために広範囲の剤形で使用することもできる。例示的な剤形は、乾燥状態又は水若しくは他の液体の添加によって再構成されて、ペースト、スラリー、懸濁液又は溶液;錠剤;カプセル;多球剤;及び丸薬を形成するかのいずれかで、経口的に摂取することができる散薬又は顆粒である。各種の添加物を、本発明の組成物と混合、粉砕又は粒状化して、上記の剤形に適した物質を形成することができる。
【0117】
本発明の組成物は、これらが液体ベヒクル中の懸濁液として放出されるように各種の形態に処方することができる。このような懸濁液は、製造の時点で液体又はペーストとして処方することができるか、又はこれらは、後刻、しかし経口投与に先立って加えられる液体、典型的には水を伴う乾燥散薬として処方することができる。懸濁物に構成されるこのような散薬は、しばしばサッシェ又は構成用経口散薬(OPC)と呼ばれる。このような剤形は、いずれもの既知の手順によって再構成することができる。最も簡単な方法は、剤形を、単純に水を加え、そして撹拌することによって再構成される乾燥散薬として処方することである。別の方法として、剤形は、混合し、そして撹拌して、経口懸濁物を形成する、液体及び乾燥散薬として処方することができる。なおもう一つの態様において、剤形は、先ず水を一つの散薬に加えて、溶液を形成し、これに第2の散薬を撹拌しながら混合して、懸濁液を形成することによって再構成される、二つの散薬として処方することができる。
【0118】
一般的に、薬物の分散物が、これが薬物の化学的及び物理的安定性を助長するために、乾燥状態の長期の保存のために処方されることが好ましい。
本発明の組成物は、薬物を投与することによって治療されるいずれもの症状の治療に使用することができる。
【実施例】
【0119】
実施例1
固体の非晶質分散物を、実質的に図5に示したものと同じ構成の噴霧乾燥装置を使用し
て調製した。分散物は、25重量%の低溶解度の薬物、4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル(「薬物1」)及び75重量%の両親媒性ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)から構成されていた。薬物1を、溶媒(アセトン)中に「中程度微粉」級(AQUOT−MF)のHPMCAS(Shin Etsu製)といっしょに混合して、噴霧溶液を形成した。噴霧溶液は、2.5重量%の薬物1、7.5重量%のHPMCAS、及び90重量%のアセトンから構成されていた。噴霧溶液を、高圧ポンプ(Zenith,Inc.of Sanford,North Carolinaから得たZ−Drive 2000高圧ギアーポンプ)を使用して、圧力ノズル(噴霧装置圧力ノズル及び本体、Model No.SK 71−16)を備えた噴霧乾燥器(液体原料容器を持つNiro type XP可搬式噴霧乾燥器、Model No.PSD−1)に送入した。この圧力ノズルによって製造された液滴のサイズは、Malvern粒子サイズ分析器を使用して決定し、次の結果を得た:平均液滴直径は、125μmであり、D10は64μmであり、D50は110μmであり、そしてD90は206μmであり、スパンは1.3となった。
【0120】
噴霧乾燥器を、乾燥室の高さが標準的なPSD−1乾燥器で供給されるものより大きくなるように改良した。噴霧乾燥器の寸法は、以下:
D=0.8m
H=1.0m
L=0.8m
のとおりである。従って、噴霧乾燥装置の体積は、以下の式:
【0121】
【数7】

【0122】
であった。
噴霧乾燥器に更にガス分散器も設置して、これを通して乾燥用ガスの制御されたプラグフローを生じさせた。ガス分散器は、直径0.8mのステンレス鋼の板からなり、これは乾燥室の上面に伸長していた。板は、板の表面積の約1%を占める複数の1/16インチ(1.7mm)の穿孔を有していた。穿孔は、ガス分散板の中心の0.2mの穿孔の密度が板の外側の部分の穿孔の密度の約25%であった以外は、板を通して均一に分布された。拡散板の使用は、乾燥室を通る乾燥用ガスの制御されたプラグフローとなり、そして噴霧乾燥器内の生成物の再循環を劇的に減少した。圧力ノズルは、操作中ガス分散板と同じ高さのままであった。
【0123】
噴霧溶液を、噴霧乾燥器に180g/分で、19気圧(262psig)の圧力でポンプで送入した。乾燥用ガス(窒素)を、ガス分散板に、103℃の入口温度及び1.6標準m/分の流速で放出した。蒸発した溶媒及び乾燥用ガスは、51±4℃の温度で噴霧乾燥器を出た。
【0124】
噴霧乾燥器内の液滴の最小滞留時間は、次の式:
【0125】
【数8】

【0126】
のように計算された。
この方法によって形成された噴霧乾燥された分散物を、サイクロンで回収し、そして次いで溶媒トレイ乾燥器中で、噴霧乾燥された粒子をポリエチレンでライニングされたトレイ上に1cm以下の厚さで広げ、そして次いでこれを40℃で16時間乾燥することによって乾燥した。乾燥後、実施例1の固体分散物は、25重量%の薬物1を含有していた。表1に使用した噴霧乾燥条件を要約する。この方法の全般的収率は、96%であった。分散物の形成後の噴霧乾燥器の検査は、噴霧乾燥器上面、圧力ノズル、乾燥室の壁面、又は室コーンへの生成物の蓄積の証拠を示していなかった。
【0127】
HPMCAS−MFを伴う薬物1の固体の非晶質分散物からなる対照1(C1)を、同じ装置を使用して、二流体噴霧ノズル(並流、外部混合、1.0mmの液体オリフィスを持つNiro Model No.15698−0100)を使用して噴霧乾燥した。噴霧乾燥の条件を表1に要約する。
【0128】
【表1】

【0129】
実施例1の試料を、各種の方法によって分析して、分散物の物理的特質を決定した。先ず、実施例1に、Bruker,Inc.of Madison,Wisconsinから得たAXS D8 Advanceを使用して、粉末X線回折分析を行った。この分析は、回折図に結晶のピークを示さず、分散物中の薬物が殆ど完全に非晶質であることを示した。
【0130】
実施例1の分散物によって与えられた濃度向上を、溶解試験で証明した。この試験において、7.2mgの実施例1を含有する試料を、二重で、マイクロ遠心管に加えた。管を37℃に温度調節された室に入れ、そしてpH6.5及び290mOsm/kgのPBSを1.8mL加えた。試料を渦混合器を使用して約60秒間急速に混合した。試料を13,000Gで、37℃で1分間遠心した。次いで得られた上清溶液を採取し、そしてメタノールで1:6(体積による)に希釈し、そして次いでWaters Symmetry C8カラム及び15%(0.2%のH3PO4)/85%のメタノールからなる移動相を使用した高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって256nmのUV吸光度で分析した。管の内容物を渦混合器で混合し、そして37℃で次の試料を採取するまで静かに静置させた。試料の回収は、4、10、20、40、90及び1200分に行った。対照1及び結晶質の薬物1を、同じ手順を使用して試験した。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】

【0132】
これらの試料で得られた薬物の濃度を、最初の90分の薬物の最大濃度(Cmax90)及び最初の90分の時間に対する薬物濃度の曲線下面積(AUC90)の値を決定するために使用した。結果を表3に示す。これらのデータは、実施例1の分散物が、結晶質の対照のそれより717倍大きいCmax90を与え、一方AUC90は、結晶質の対照のそれの670倍大きいことを示す。データは、更に圧力ノズルを使用して製造した実施例1の分散物が、二流体ノズルを使用して製造した対照1の分散物のそれと概略同じ濃度向上を与えることも示す。
【0133】
【表3】

【0134】
実施例1及び対照1C1の分散物の粒子サイズ分布を、Horiba,Inc.of Irvine,Californiaから得たLA−910 Model光散乱粒子サイズ分析器を使用して、それぞれの乾燥固体分散物の光散乱分析によって決定した。図6は、実施例1及び対照C1の粒子直径(μm)に対する体積頻度(%)を示す。これらのデータから、平均粒子直径(体積頻度曲線のピーク)及び微粉パーセント(約10μmより小さい粒子サイズにおける体積頻度曲線下面積を合計の曲線下面積で割る)を、表4に要約する。これらのデータは、圧力ノズル及び図5の設計の噴霧乾燥器を使用して形成した分散物粒子(実施例1)の平均直径が、二流体ノズルを使用した同じ噴霧乾燥器によって形成された分散物粒子(対照C1)の平均直径より大きいことを示す。更に、実施例1の分散物中の微粉の数は、大幅に減少された。
【0135】
【表4】

【0136】
実施例1の分散物の、嵩比体積及びタップ後比体積を、以下の手順を使用して決定した。実施例1の分散物の試料を、その風袋が測定された100mLのメスシリンダー中に注ぎ、そして試料の体積及び重量を記録した。体積を重量で割って、4.8mL/gの嵩比体積を得た。次に、分散物を含有するシリンダーを、VanKelタップ密度計Model 50−1200を使用して1000回震盪した。震盪後の体積を分散物の同じ重量で割って、3.1mL/gのタップ後比体積を得た。同様な試験を対照C1の分散物で行った。表5に報告した結果は、圧力ノズルで製造した分散物(実施例1)が、二流体ノズルを使用して製造した分散物(対照C1)より低い比体積(嵩及びタップ後の両方)を有することを示す。より低い比体積は、分散物の改良された流動特性となる。
【0137】
【表5】

【0138】
比較実施例1
実施例1のそれと同じ組成の固体の非晶質分散物を、実施例1と同じ構成のガス分散板を持ち、そして以下の寸法:
D=0.8m
H=0.8m
L=0.8m
を有する、図4に示すような実質的に同じ構成の噴霧乾燥装置を使用して製造する。噴霧乾燥装置の体積は、0.53mと計算される。
【0139】
このような噴霧乾燥器を実施例1と同じ条件下で操作した場合、乾燥室及び回収コーン壁面への物質の蓄積が予測され、内容物の均一性及び収率が悪くなる。
【0140】
実施例2
固体の非晶質分散物を、乾燥室の高さHが2.3mであり、乾燥室がより大きい体積と
なった以外は、実施例1のような同じ噴霧乾燥器の構成で実施例1のように調製した。従って、噴霧乾燥装置の体積は、1.29mであった。表6に使用した噴霧乾燥条件を与える。窒素の乾燥用ガスを、ガス分散板を通して45℃の入口温度及び1.4標準m/分の流速で循環した。蒸発した溶媒及び湿った乾燥用ガスは、10℃の温度で噴霧乾燥器を出た。
【0141】
上記の式Iを参照して、噴霧乾燥器内の液滴の最小滞留時間は、以下の式のように計算された:
【0142】
【数9】

【0143】
【表6】

【0144】
分散物の形成後の噴霧乾燥器の検査は、噴霧乾燥器上面、圧力ノズル、乾燥室の壁面、又は室コーンへの生成物の蓄積の証拠を示していなかった。
実施例2の分散物の物理的特性を実施例1のように決定した。結果を表7に要約し、これは更に実施例1、対照C1、及び結晶質薬物1の結果も含む。
【0145】
【表7】

【0146】
結果は、実施例2のより大きい体積の噴霧乾燥器で製造された分散物が、実施例1及び対照C1の分散物と同様な溶解特性を有し、結晶質の薬物1単独のそれより720倍大きいCmax90値、及び結晶質の薬物1単独のそれより626倍大きいAUC90値を与えたことを示す。更に、実施例2の分散物の平均粒子サイズは、二流体ノズルを使用して製造した分散物(対照C1)より大きく、そして実施例2の分散物中には有意に少ない微粉しか存在しなかった。実施例2のより大きい体積の噴霧乾燥器の使用により、更により低い比体積を持つ生成物が得られ、これは、改良された流動特性を与える。
【0147】
実施例3
50重量%の低溶解度の薬物、5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1
S)−ベンジル−(2R)−ヒドロキシ−3−((3R,4S)−ジヒドロキシ−ピロリジン−1−イル−)−3−オキシプロピル]アミド(「薬物2」)をHPMCAS−MFと共に含んでなる固体の非晶質分散物を、実施例1の噴霧乾燥装置を使用して、アセトン中の10重量%の水の混合物を含んでなる溶媒を使用して製造した。噴霧乾燥条件を表8に与える。窒素の乾燥用ガスを、ガス分散板に103℃の入口温度及び1.6標準m/分の流速で放出した。蒸発した溶媒及び乾燥用ガスは、51±4℃の温度で噴霧簡素器を出た。
【0148】
上記の式Iを参照して、噴霧乾燥器内の液滴の最小滞留時間は、以下の式のように計算された:
【0149】
【数10】

【0150】
分散物の形成後の噴霧乾燥器の検査は、噴霧乾燥器上面、圧力ノズル、乾燥室の壁面、又は室コーンへの生成物の蓄積の証拠を示していなかった。
薬物2のHPMCAS−MFを伴う分散物からなる対照2(C2)を、Niro二流体外部混合噴霧ノズルを使用して、実施例1と同じ装置を使用して噴霧乾燥した。対照C2は、50重量%の薬物2を含有していた。噴霧条件を表8に記述する。
【0151】
【表8】

【0152】
実施例3、対照2C及び結晶質薬物2の分散物単独の分散物の物理的特性を、次の例外を伴って実施例1のように決定した。濃度向上のために、薬物の全てが溶解した場合、得られる濃度が2000μg/mLであるようにマイクロ遠心管に十分な量の分散物を加えた。試料をHPLC(Hewlett Packard 1100 HPLC、Zorbax SB C18カラム、35%のアセトニトリル/65%のHO)で、297nmの吸光度で分析した。
【0153】
これらの物理的特性試験の結果を、表9に要約し、そして圧力ノズル及び図5の噴霧乾燥器の設計を使用して製造した分散物(実施例3)が、二流体ノズルを持つ同じ乾燥器の設計を使用して製造した分散物(対照C2)より大きい平均粒子直径を有し、そしてより少ない微粉を有することを示す。図7は、実施例3(圧力ノズルで製造)及び対照C2の粒子直径に対する体積頻度を示す。実施例3の分散物の溶解性能は、二流体ノズルを使用して製造した分散物のそれよりわずかに良好であった。実施例3の分散物は、結晶質の対照のそれの4.9倍であるCmax90、及び結晶質の対照のそれの4.1倍であるAUC90を与えた。最後に、実施例3の分散物は、対照C2のそれより低い比体積を有し、改良された流動特性を持つ生成物が得られた。
【0154】
【表9】

【0155】
上記の明細書中で使用された用語及び表現は、本明細書において説明するための用語として使用され、制約するものではない。そして、そのような用語及び表現の使用に、示し及び記載した特徴の均等物又はその部分を排除する意図はなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義され、そして制約されるものと、認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、乾燥用ガスと霧化された溶媒含有供給物との迅速な混合を促進するための、乾燥用ガスの従来の非平行導入を備えた噴霧乾燥装置の断面略図である。
【図2】図2は、霧化器周辺の生成物の蓄積を描写した、図1に示した装置の部分断面略図である。
【図3】図3は、典型的な二流体噴霧ノズルの略図である。
【図4】図4は、乾燥用ガスの制御されたプラグフローを与えるガス分散手段を備えた、図1に示す装置の断面略図である。
【図5】図5は、ガス分散手段と乾燥室の伸長との両方を備えた、図1に示した装置の断面略図である。
【図6】図6は、従来の噴霧乾燥装置および本発明の装置を使用して製造された噴霧乾燥された薬物分散物の、粒子サイズの中央値及び粒子サイズ分布を比較するグラフである。
【図7】図7は、従来の噴霧乾燥装置および本発明の装置を使用して製造された噴霧乾燥された薬物分散物の、粒子サイズの中央値及び粒子サイズ分布を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)薬物と濃度向上ポリマーと溶媒とを含んでなる供給物の溶液を調製し;
(b)前記供給物の溶液を、下記(i)〜(iv)を含んでなる噴霧乾燥装置に導き:
(i)体積Vdryer及び高さHを有する乾燥室、
(ii)前記供給物の溶液を液滴に霧化するための霧化手段、
(iii)前記液滴を乾燥するための加熱された乾燥用ガスの供給源、ここで、前記供給源は、前記乾燥用ガスを前記乾燥室にGの流速で放出する;及び
(iv)前記乾燥用ガスを前記乾燥室内に分散するためのガス分散手段、ここで、前記ガス分散手段は、前記乾燥用ガスの制御されたプラグフローを起こす、
ここにおいてVdryerは、mで測定され、Hは、少なくとも1mであり、Gは、m/秒で測定され、そしてここにおいて、以下の数学的関係:
【数1】

が満足される;
(c)前記供給物の溶液を前記乾燥室内で前記霧化手段によって液滴に霧化し、ここで、前記液滴は、少なくとも50μmの平均直径及び少なくとも10μmのD10を有し;
(d)前記液滴を前記加熱された乾燥用ガスと接触させて、前記薬物と前記濃度向上ポリマーとの固体の非晶質分散物の粒子を形成させ;そして
(e)前記粒子を回収する;
の工程を含んでなる医薬組成物を製造するための方法であって、
ここにおいて、前記固体の非晶質分散物が、使用環境において、本質的に等量の前記薬物単独からなる対照組成物に対して、前記薬物の濃度向上を与えるために十分な量で、前記濃度向上ポリマーが前記溶液中に存在する、上記方法。
【請求項2】
前記ガス分散手段が多孔板である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥用ガスが、約60°ないし約300℃の入口温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥用ガスが、約0°ないし約100℃の出口温度を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記液滴が、約3より小さいスパンを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子の少なくとも80容量%が、10μmより大きい直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分散物中の前記薬物が実質的に非晶質であり、そして前記分散物が実質的に均質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、以下の性能のいずれかを与える、請求項1に記載の方法:
(a)前記対照組成物によって与えられる最大濃度の少なくとも約1.25倍である、前記使用環境における前記薬物の最大濃度;又は
(b)前記使用環境への導入から、導入後約270分までの時間中のいずれもの90分の時間に対して、前記対照組成物によって与えられるそれの少なくとも1.25倍である、前記使用環境における時間対薬物濃度曲線下面積。
【請求項9】
前記組成物が、前記対照組成物の相対的バイオアベイラビリティの少なくとも1.25倍である前記薬物の相対的バイオアベイラビリティを与える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬物が、抗高血圧剤、抗不安剤、抗凝結剤、抗痙攣剤、血糖低下剤、鬱血除去剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、抗悪性腫瘍剤、ベータ遮断剤、抗炎症剤、抗精神病剤、向知性剤、抗アテローマ性硬化症剤、コレステロール減少剤、抗肥満剤、自己免疫性疾患剤、抗性交不能剤、抗細菌及び抗真菌剤、催眠剤、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、抗生物質、抗鬱剤、抗ウイルス剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、並びにコレステロールエステル運搬タンパク質阻害剤からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬物が、
[R−(R)]−5−クロロ−N−[2−ヒドロキシ−3−{メトキシメチルアミノ}−3−オキソ−1−(フェニルメチル)プロピル−1H−インドール−2−カルボキシアミド;
5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1S)−ベンジル−(2R)−ヒドロキシ−3−((3R,4S)−ジヒドロキシ−ピロリジン−1−イル−)−3−オキシプロピル]アミド;
[2R,4S]−4−[アセチル−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸イソプロピルエステル;
[2R,4S]4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル;及び
[2R,4S]4−[(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸イソプロピルエステルからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記濃度向上ポリマーが、イオン化可能なセルロース系ポリマー、イオン化不可能なセルロース系ポリマー、イオン化可能な非セルロース系ポリマー、イオン化不可能な非セルロース系ポリマー、中和された酸性ポリマー及びこれらの配合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、その繰り返し単位の少なくとも一部を加水分解された形態で有するポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー及びこれらの配合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法の生成物。
【請求項15】
薬物及びポリマーを含んでなる複数の固体の非晶質分散物の粒子を含んでなる組成物であって、
ここにおいて前記粒子が、少なくとも40μmの平均直径及び5mL/gより小さい嵩比体積を有し、そしてここにおいて前記粒子の少なくとも80容量%が、10μmより大きい直径を有する、前記組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−149683(P2009−149683A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50080(P2009−50080)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【分割の表示】特願2003−563516(P2003−563516)の分割
【原出願日】平成15年1月20日(2003.1.20)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】