説明

改良された空調モジュールおよび方法

エアムーバー、吸入ポート、吐出ポートを含み、その吸入ポートあるいは吐出ポートのうちの少なくとも1つ、あるいはその両方が座席の表面と流体的に接続している、座席空調用アセンブリのための座席空調モジュール。エアムーバーとその少なくとも1つの吸入ポートおよび少なくとも1つの吐出ポートの間に可動に設けられた少なくとも2つの開口部を有するバルブアセンブリ。少なくとも2つの開口部を通る流体の流通を制御するために、バルブアセンブリを動かすための駆動装置。エアムーバーと座席の表面と流体的に接続している任意的な調整装置。その少なくとも2つの開口部のポジション、任意的な調整装置の駆動、エアムーバーの運転あるいはそれらの組合わせを少なくとも制御するための制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物の座席を空調する装置およびその方法に関し、より詳しくは、空気分配システムを介して自動車の座席の表面と連絡するために、少なくとも1セットの可動のバルブを使い、多数の空調モードを可能にする座席空調モジュールによって車の座席を空調する装置およびその方法を提供するためのものである。
【0002】
(優先権の主張)
本出願は、本明細書に言及により組み込まれた2007年12月10日提出の米国仮出願番号61/012,616の出願日の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
乗物が様々な特徴、より詳しくは、通気され、暖房および/または冷房された座席といった特徴(例えば、座席空調モジュール)を、その着席者の快適さを向上させるために備えることはよく知られている。これらの座席空調モジュールは、コストと、座席およびその組み立ての複雑さとを増す可能性がある。座席空調モジュールの部品数を最小限に抑えながら、多数の空調モード(例えば、周囲空気を吸引する(プルする)、周囲の空気を吹き出す(プッシュする)、空調された空気を吹き出す、抵抗暖房による直接暖房、またはこれらのいずれかの組み合わせ)が可能であるように座席空調モードを設計することが望ましい。この目的のため、本発明は、着席者のために空調モードを制御して向上させるための優れた流体制御システムおよび空調モジュールを使用し、従来の技術に改良を加えることを意図する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、着席者のために空調環境を向上させるために改良された座席空調モジュール、およびその優れた座席空調モジュールを使用する方法である。
【0005】
それゆえ、本発明の一つの態様によれば、
少なくとも1つの吸入ポート・少なくとも1つの吐出ポートと、あるいはその両方と流体的に接続された、流体を動かすためのエアムーバーであって、その吸入ポートと吐出ポートが空調される領域と分配通路を介して流体的に連絡している、エアムーバーと、
その1つ以上の吸入ポートおよび1つ以上の吐出ポートと空調される領域との間の流体の動きを制御するための、エアムーバーと少なくとも1つの吸入ポートおよび少なくとも1つの吐出ポートの間に可動に配置されていてよい、少なくとも2つの開口部を有するバルブアセンブリと、
流体の少なくとも2つの開口部またはポートを介した流体の流通を制御するために、バルブアセンブリを動かすことができる、少なくとも1つの駆動装置と、
エアムーバーおよび空調される領域と流体的に連絡する、任意的な空調装置と、
少なくともバルブアセンブリの2つ以上の開口部のポジション、任意的な空調装置の作動、エアムーバーの運転、またはこれらの何らかの組合わせを制御することができる制御装置と、を備える座席空調アセンブリ用の座席空調モジュールが意図されている。
【0006】
本発明は、その任意的な空調装置が流体を暖房・冷房するため、またはその両方のための熱電装置(熱電機器)であってもよいといったような、ここに説明された特徴の1つ、あるいはそのいずれかの組合わせを更に特徴とする。座席空調アセンブリは、座席の表面から25mm以内に配置された分離型ヒーターを含んでいてもよい。任意的な空調装置は、熱エネルギーを蓄えるために少なくとも1つ以上の熱収集装置を備えていてもよい。座席空調モジュールは、座席空調モジュールから座席の着席者のいる領域へ、座席の着席者のいる領域から、あるいはその両方向へ空気流体的に結ぶために、座席の表面に隣接して配置された通気システムを更に備えていてもよい。この通気システムは、シート空調モジュールと座席の表面に隣接して配置された通気開口部との間に配置された、温度調整装置を含んでいてよい。エアムーバーは、バルブアセンブリが取付けられており、少なくとも1つの吸入ポートと少なくとも1つの吐出ポートと流体的につながっていてもよい、少なくとも1つの開口部を備えていてもよい空間を画定する不通気性のハウジング中に配置されてよい。これらのポートのうちの少なくとも1つは、不通気性中空チューブ状の構造物により画定されてもよい。
【0007】
それゆえ、本発明の別の態様によれば、
(a)座席空調モジュールおよび分配通路を含む座席空調アセンブリを設けるステップであって、この座席空調モジュールはエアムーバー・少なくとも1つの吸入ポートとおよび少なくとも1つの吐出ポートとの間に配置された・少なくとも2つの可動開口部を備えていてよく、しかも分配通路と流体的に通じていてよく、その分配通路は乗物の座席の空調される領域と流体的に連絡していてよいステップと、
(b)座席空調モジュールの中に配置され、エアムーバーと流体的に接続している熱収集装置を含んでいてもよい、オプションとしての空調装置を設けるステップと、
(c)そのバルブシステムの少なくとも2つの開口部を、空気が座席空調モジュールと分配通路の間を流れることができるように動かし、さらに、乗物の座席を空調するために、空気を空調される領域へ、空調される領域から、あるいはその両方の方向へとバルブシステム経由で流体的に流通させるように、エアムーバーを駆動するステップと、を含む乗物の座席を空調する方法が意図されている。
【0008】
本発明は更に、メインと排気サイドをもつヒートポンプ(ペルティエ、スターリング、または伝統的な二相圧縮式ヒートポンプの原理)に代表される空調装置を含むというような、ここに説明される特徴の1つあるいは、それらの何らかの組み合わせを特徴としていてもよい。バルブシステムは、メインサイドを介した流れを遮断し、それによってヒートポンプのメインサイドに熱エネルギーあるいは冷気を集め、その後でメインサイドの流れが開となった時に、それを空調される領域に向けて放出するための条件をつくるように調整されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による一態様例の概略側面図。
【図2】本発明の一態様による、バルブの一連の開弁ポジションの概略図。
【図3】本発明による一態様例の一連の概略上面図。
【図4】本発明による一態様例の概略側面図。
【図5】本発明によるバルブの開弁ポジションの概略図。
【図6】本発明の別の態様による一連の概略上面図。
【図7】本発明による一態様例の概略側面図。
【図8】本発明の別の態様による一連のバルブの開弁ポジションの概略図。
【図9】本発明による一連の概略上面図
【図10】本発明の別の態様による一例の概略側面図である。
【図11】本発明によるバルブの一連の開弁ポジションの概略図。
【図12】本発明による一連の概略上面図。
【図13】本発明による一連の概略上面図。
【図14】本発明による一態様例の概略側面図。
【図15】本発明による一態様例の概略側面図。
【図16】本発明による抜粋概略平面図。
【図17】本発明による一態様例の概略側面図。
【図18】本発明による一態様例の概略側面図。
【図19】本発明による一態様例の概略側面図。
【図20】本発明による一態様例の概略側面図。
【図21】本発明による一態様例の分解透視図。
【図22】本発明による一態様例の分解透視図。
【図23】本発明による一態様例の側面図。
【図24】本発明による一態様例の側面図。
【図25】本発明による一態様例の上面透視図。
【図26】本発明による一態様例の概略側面図。
【図27】本発明による一態様例の概略側面図。
【図28】本発明による一態様例の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜28に示されるように、本発明は、自動車の座席の空調される領域52のために改善された空調効果を提供するための、改良された座席空調モジュール20およびその方法をめざすものである。全ての図において、矢印はエアフローおよびエアフローの方向を表わす。
【0011】
本発明の一態様は、一般的に、乗物の座席の座席空調アセンブリ22で使用するための、改良された座席空調モジュール20を意図している。座席空調モジュール20は、中空状チャンバを形成すると共に、そのチャンバをプルライン30およびプッシュライン32の2つの部分へと実質的に分けるエアムーバー28を備えた不通気性ハウジング24を含んでいてよい。プルライン30はエアムーバー28の吸入側に位置し、プッシュライン32はエアムーバー28の吐出側に位置している。さらに、ハウジング24は部分的にまたは完全に通気性であってもよいとも意図されてはいるが、できれば実質的に不通気性であるのが好ましい。ハウジング24は、他の構成部品(例えばワイアー、アセンブリ・ツーリング、モーター冷却フロー、ねじ用スペアホール、凝縮水のドレイン)用の開口部を含んでいてもよい。以下に説明する本発明の目的のため、エアムーバー28は流体を一方向に(例えば、プルラインからプッシュラインへ)動かすことを前提としているが、エアムーバーの機能は可逆であってもよいと意図されていることに留意されたい。
【0012】
流体は座席空調モジュール20に入り、そこから出て行き、プルライン30およびプッシュライン32のそれぞれに入り、出て、少なくとも2つ以上のポート34を通って制御可能なバルブシステム36に入るのが望ましい。これらのポート34から、空気は流体的に座席の中の分配システム38・単数または複数の通気ダクト40・吐出ポート42ならびに単数または複数の吸入ポート44を含む単数または複数の分配通路58に接続していて、さらにそこへ、及び/またはそこから流れる、移動してモジュールに戻る、またはこれらの何らかの組み合わせであってもよい。これについては以下に更に詳しく説明する。これらのポート34はすべて、座席の表面46に所望の空調効果を提供するのに十分な流体がその中を通るのに十分な大きさのものである限りは、様々な形および/またはサイズであってよい。また、空気あるいは別の流体がモジュールの中へまたはモジュールから流れることを可能にするために、制御可能なバルブシステム36の一部ではない流体通路(例えば、オープンホールまたはモジュールの壁の中につけた機械的に独立したバルブ(不図示))を備えることが望ましいだろうと意図されている。
【0013】
座席空調モジュール20は、(その中に、または離れたところに)制御機構または装置(不図示)を含んでいてもよい。この制御装置は、制御(例えば、スイッチのオン、オフ)および/またはモジュールの機能(例えば、エアムーバー、バルブシステム、追加の空調装置、空調モードなど)の一部あるいは全てに様々なパワーレベルを提供する。この制御装置は、以下に更に詳しく説明する色々な「モード」を制御することを可能にする、予めプログラムされた機能上の情報を記憶するメモリー機能を含んでいてよい。
【0014】
本発明の別の態様においては、上記のような改良された座席空調モジュール20はまた温度調整装置48(例えば、熱電暖房/冷房ユニットまたは“TED”、乗物環境制御ユニットである“HVAC”へのインターフェース、ヒートポンプなど)を含んでいてもよい。温度調整装置48がモジュールに一体化された(例えば、中空状チャンバ中に設置される)場合は、モジュールのプッシュライン32領域の中に配置されているのが好ましい。温度調整装置48がモジュールから分離している場合(例えば、HVACの場合)には、プルライン30の側でモジュールに接続されることが好ましいだろう。このような温度調整装置48を組み入れることによって、座席空調モジュール20が温めた空気あるいは冷却した空気を提供でき、本発明の目的を達成するのに役立つことになるだろう。
【0015】
本発明のまた別の態様においては、温度調整装置48を含んだ改良型座席空調モジュール20が、熱エネルギー収集装置50、さらには任意的に断熱層55も含んでよいことが意図されている。この収集装置は“バースト”と表現できるモードにおいて、熱エネルギーを集めかつ蓄えるように働くことができる。この“バースト”モードは更なる温度調整(例えば、熱エネルギーあるいは冷気)の比較的短い(例えば、数秒から数分までの)バーストを、座席の表面46付近の空調領域52へと提供するよう働くことができる。
【0016】
システムの実装を説明する一般的な例が、図25〜27に示されている。
【0017】
(バルブシステム36)
本発明の目的を達成するために、バルブシステム36は、座席空調モジュール20への及びそこからの流体フローのうち、全てではないにしても実質的にほとんどを制御する機能を有する複数の(すなわち2つ以上の)貫通穴、開口部、またはポート34を備えた、実質的に不通気性の一層あるいは複数の層54(例えば金属あるいはプラスチックのプレート)ということができる。バルブシステム36の機能は、多くの構造上の構成によって達成できると意図されている。例えば、バルブシステム36は駆動手段56(例えば、電気モーター、ニューマチック、ハイドローリックによるなど)を使って直線あるいは回転の動きをする、一連の開口部(複数のポート34)を有する1つのプレート部材あるいは複数のプレート部材(不通気性の層54)を含むこともできるであろう。これはまた開口部を有する、筒型・テーパー状・球状またはその他のいかなる軸対称の形状であってもよい。あるいは、例えばカーブのあるトンネル、例えば螺旋形状の通路の中を動く、台形の横断面図を有するスライダーであってもよい。あるいは、カーブのあるスロット状のトンネルを通る“ベルト・アンド・ドラッグ”であってもよい。扁球状セグメントは、同じルートに沿ってではなく、極座標を動いてもよい。この動きは、開口部をプルライン30とプッシュライン32およびそれに対応する分配通路58(例えば、座席内の単数または複数の分配システム38、単数または複数の通気ダクト40、単数または複数の吐出ポート42、単数または複数の吸入ポート44など)の上の所望の部分に位置決めする手段として使われてよい。別の例においては、バルブシステム36は1つの可動フラップあるいは一連の可動フラップとして構成されていてもよく、ここでも流体をモジュールと所望の分配通路58の間で動かすことができる。上述の様々なバルブシステムの幾つかの例が図21〜24に示される。特に、図21は回転型ベントの例を示す。図22は、リニア式バルブシステムの例を示す。図23〜24は、フラップ式バルブシステムの例を示す。さらに、バルブ、とりわけフラップ型60のバルブの場合には、機械的に連結されても、独立して作動されても、またはこれらの組み合わせであってもよいと意図されている。
【0018】
バルブシステム36は上記の構造を使用するか、あるいはこれらを組み合わせたもの、または同様か類似の機能を果たす流体制御構造のいずれかを使用できる。開口部を有するバルブアセンブリの可動部材(またはアセンブリそのもの)は、流体媒体を空調へ/から運ぶ構造物(ダクト)を備えた、十分に流体密なインターフェースを支持することができる様々な形状であってよい。
【0019】
(制御装置(不図示))
本発明の目的を果たすため、制御装置(不図示)は座席空調モジュール20の機能性および/または構成部品を制御および/または動かす機能をもつ装置あるいは機構といえる。これは例えばプログラム可能な電子制御モジュールを使うことによって達成できる。制御モジュールは、自動または手動で駆動され、主に座席空調用コンポーネントに駆動せよと(例えば、電気信号によって)指示する。例えば、制御モジュールは特定の方向に空気を動かすようエアムーバーに指示し、駆動するよう温度調整装置48に指示し、所望のポート34を開けるようバルブシステム36に指示し、またはこれらの動作の組合わせ、またはそれ以上の指示を出すことができる。
【0020】
(温度調整装置48)
本発明の目的を達するため、温度調整装置48は流体環境(例えば、暖房または冷房)の熱エネルギーを変換する装置といえる。図示の例は熱電装置(熱電機器(TED))ユニット64、乗物のHVACユニット(不図示)、ヒートポンプ(不図示)、抵抗ヒーター(不図示)などを含む。乗物のHVACユニットを使うことができる座席空調モジュール20の一例は、図19および20に示される。この例においては、吸入ポート44および可能な1つのアウトプットポート70が、通気システム66を介してHVACユニットと流体的に接続されている。さらに、分離型のヒーター装置68(例えば、電気抵抗ヒーター)は、座席の表面46から約35mm以内に配置されることが好ましく、より好ましくは座席の表面46から約25mm以下のところに設置される。これにより所望の座席の表面46の暖房の全てあるいは一部を提供することによって、システム全体の機能性をサポートできるであろう。
【0021】
(熱エネルギー収集装置50)
本発明の目的のため、熱エネルギー収集装置50は温度調整装置から熱エネルギーを取得し、そのエネルギーを後々の使用のために蓄える装置といえる。例えば、これは電熱性材料の上か、近くに、あるいはその両方に配置された多くの電熱性材料(例えば、金属、プラスチック、液体、ガス、相転移材料なども使える)を利用することにより達成できる。これは、ヒートポンプのメイン側のヒートシンクと熱的に通じた実質体であってもいいし、またはヒートシンクそのものが通常よりも重くできていてもよい。いずれのシンクもこの機能性を有してはいるが、通常シンクは軽く、エネルギーを収集するために設計されてはいない。ある例においては、熱エネルギー収集装置50はヒートシンク(伝熱性ペーストにより取付けられている)と接続されたスチールプレートであってもよい。アルミニウム、銅、スチールが適した材料の例であるが、他の材料を使ってもよい。
【0022】
(分配システム38)
本発明の目的のため、分配システム38は、流体(例えば空気)を座席の表面へ/から(例えば、通気性トリム層を通って)流通させる何らかのシステムまたは方法(例えば、単数または複数のマニホールド、単数または複数のスペーサー層など)といえる。少なくとも座席の内部にあり座席空調モジュール20の上に置かれている、このような分配システム38は、米国特許6,786,541号;7,052,091号;7,083,227号および7,114,771号に教示、説明されている。改良された座席空調モジュール20から座席の表面46へおよび/または、からの流体を流通する製品または方法を説明するという明らかな目的のため、これらの参考文献の全ては言及によって本明細書に組み込まれる。
【0023】
米国特許6,786,541号に説明されているような分配システムの一例においては、分配システムは、通気された座席用のパッドアセンブリを含む。このパッドアセンブリは、空気分配プレナムを提供する、より高密度のフォームでできたインサート部材をもつクッション部材を含む。その開いた上部が高密度フォーム材カバーによって閉じられた通路が、より高密度のインサート部材の中でプレナムを形成する。覆いの部材はインサート部材に一体化された部品であるのが望ましい。トリム層は、通常はインサートおよびインサート通路カバーを含めて、クッションを覆っている。連続フォーム層は、座席に人が座っている間に、クッションプレナムに向かって、またはそこから横方向の空気を通りやすくするために、装飾的なトリム層とインサートおよびインサート通路カバーを含んだクッションの間で使うことができるだろう。
【0024】
米国特許7,083,227号に説明されているような分配システムの2つ目の例では、分配システムは、各々の通気された構成部品のトリム表面の下に配置されたインサートを含む。このインサートは、その中に一体化されたヒーターを有する第一層およびスペーサーの材料からできた第二層を有しており、この第二層は1つのオープンなスペースを画定する。インサートと流体ムーバーの間に流体的な連絡をもたらすため、システム内に筒状の構造物が設けられると好ましい。
【0025】
(通気ダクト40)
本発明の目的を達するため、通気ダクト40は少なくとも1つの半剛体の材料からできた、中空状の通路部材(例えば、チューブ、導管、エアプレナムなど)であるといえる。ダクト40も柔軟であるかまたは蝶番で取付けてあり、局部的に調整可能(例えば、ユーザーがエアフローの方向を変えることができるなど)であってもよい。ダクト40は、ダクトの下端部にある開口部72を介して座席の空調モジュール20と流体的に接続されていてよい。
【0026】
ダクトは、ノズル開口部74あるいはダクト上端部にある1セットの開口部を介して座席の着席領域と流体的に通じている。ノズル開口部74は、座席表面46から少なくともおよそ100m、より好ましくは約75mm、もっとも好ましくはおよそ25mm以下のところにあるのが好ましい。空気出力が着席者の身体の色々な箇所(例えば、着席者の頭、肩、首、足、腕など)に向けて、あるいはそれらの組み合わせに向けられるように、ノズル開口部が配置されることが意図されている。また、ノズル開口部74が座席の表面と同じ高さあるいはその局部的なへこみの中に配置されてよい。ノズル開口部74は、直径約0.01mmの構造のようなピンホールから、幅10mm以上の丸・正方形三角形の孔までと、どんな形状およびサイズであってよい。ノズル開口部74は、通気性織物、スクリーンあるいはフィルター材料に覆われていてもよい。
【0027】
通気ダクト40は、中空状の通路部材の内側に・近くにあるいはノズル開口部74に隣接してであっても、温度調整装置76を有してもよい。この温度調整装置76はその型式において上記の温度調整装置48のそれと類似していてよい。また、他の集中型温度管理システムから配給される液状媒体によって加熱または冷却される熱交換装置であってもよい。この温度調整装置76は、座席の表面46あるいは通気ダクト40の空気出力が届く領域のすべてに、追加の暖房あるいは冷却を提供するのに役立つだろう。
【0028】
(吐出ポート42)
本発明の目的のため、吐出ポート42は、必ずしも座席の表面46に向っているとは限らない(例えば、マニホールドシステム80経由で遠くへと導かれる)座席空調モジュール20からの流体の出口点としての役目をするポート、あるいは開口部といえる。例えば、本発明が熱電暖房/冷房ユニット(TEDユニット64)を使用する時には、吐出ポート42は普通熱電モジュールの排気サイドとして知られているものからの加熱または冷却された空気の出口として使われてよい。
【0029】
(吸入ポート44)
本発明の目的のために、吸入ポート44は、外部環境からバルブシステム36を経て座席空調モジュール20への流体の入口となりうるポートあるいは開口部といえる。言い換えれば、吸入ポート44はバルブシステムの上方、座席空調モジュール20のプルライン30側に配置されることができ、そこを通って流体がエアムーバー28に供給される。このポートはマニホールドシステム80を介して、少なくとも流体の一部が乗物のHVACシステムと流体的につながっている、あるいは少なくとも遠くから空気をモジュールから吸入することができるようにダクトを設けていてもよいことが意図されている。
【0030】
(座席空調モジュールの動作)
本発明では、座席空調ユニットが多数の「モード」で動作することが意図されている。下記の例で詳細に説明されると共に図1〜20に示されるこれらのモードは、(座席への)「プッシュモード」、(一部ノズルフローを伴う)「プッシュモード」、「ノズルフロー・オンリー」、「プッシュ−プルモード」および「プルモード」である。上記の様々な機能の全体を説明する図を図16に示す。
【0031】
これらのモードのそれぞれは、任意的な温度調整装置48および76、ならびに/または熱エネルギー収集装置50の有無によらず利用可能であるということに注目されたい。さらに、特別なモードが通気ダクト40のノズル74の使用を必要とするのではなければ、通気ダクト40を含むことは全く任意的であってよい。
【0032】
それに加えて、幾つかのバルブのタイプ(例えば、フラップタイプ、スライドプレート型あるいはロータリープレート型)が例示の図に示されている。これらはモードの機能性を制限することを意図するものではなく、代替のバルブ形式の例として示されているだけである。
【0033】
(“プッシュモード”)
プッシュモードとは一般的に、エアムーバーが、分配システムを介して、実質的に全ての空気を座席の表面46に吹き入れる時のことである。図1〜12にその例が示されており、これは以下により詳しく説明される。矢印はエアフローの方向を表す。
【0034】
プッシュモードの種々の説明図が、オプションとしての通気システムが設けられると共に調整装置48が設けられない状態で、図1〜3に示されている。エアムーバーは、実質的に全ての空気を分配システム38を介して座席の表面46に向け流通させるように駆動される。図1および3は、プッシュモードの概略を示す。図3は、バルブ開口部(例えば、ポート34)のポジションの概略を示す。
【0035】
図4〜6に示されるような別の図示例においては、温度調整装置の例、熱エネルギー収集装置50および排気ポート42が示され、かつ使用されている。この例は上記のものに類似しているが、幾つかの例外がある。その第一は、流体のいくらかは排気ポート42を経てシステムから出てゆくことであり、第二は、熱エネルギー収集装置50に蓄えられた熱エネルギーが全て、すでに説明したような「バースト」モードにおけるように、空調領域52へと行く流体フローに流通されることである。図5はバルブの開弁(例えば、ポート34)ポジションの概略図を示す。
【0036】
図7〜9に示されるような別の図示例においては、図示の例が図4〜6のそれに類似しているが、任意的な通気ダクト40がついていないという点は異なる。図8はバルブ開弁(例えば、ポート34)のポジションの概略図を示す。
【0037】
図10〜12に示されるような別の図示例においては、図示の例は図1〜3のそれに類似しているが、線滝的なリモート・マニホールドシステム80が示されており、通気ダクト40が存在しない点で異なる。図9はバルブ開弁(例えば、ポート34)ポジションの概略図を示す。
【0038】
((一部ノズルフローを伴う)“プッシュモード”)
一部ノズルフローを伴うプッシュモードとは、一般的にはエアムーバーが空調システムから分配システム38を経て座席の表面46へ、それから通気ダクト40のノズル74へと空気を吹き出す場合のことである。図示例が図2、3、5、6、13および18に示されており、以下でより詳しく説明する。矢印はエアフローの方向を表す。
図2および5は、バルブ開弁(例えばポート34)のポジションを示す。図3、6、13および18は調整装置48を備えた例を示しているが、これはこの運転モードが機能するために必須であるわけではない。
【0039】
(“ノズルフロー・オンリー”)
ノズルフロー・オンリーとは、実質的に全ての空気が通気ダクト40を通り、単数または複数のノズル74を介してモジュールから吹き出す運転モードのことである。図2、3、5、6および14に説明例を示す。図2および5は、バルブが開いた(例えば、ポート34)ポジションの概略図である。図3、6および14は、モジュール内の調整装置48および調整装置76を有する例を示しているが、これはこの運転モードが機能するために必須であるわけではない。
【0040】
(“プッシュ・プル・モード”)
図2〜3に示されるような実施例においては、可能なプッシュ・プル・モードの構成が説明されている。この例では、吸入ポート44が座席の分配システム38と吸入ポート44の両方から、座席空調モジュール20へと流体を流通させることができるように、バルブシステムが構成、配置されている。これはまた、流体を吐出ポート42および通気ダクト40から流れ出させることができるようにも構成されている。
【0041】
(“プルモード”)
図3、5、13および18に示されるような実施例は、可能なプルモードの構成を説明する例を図示している。図18に示された例においては、実質的には座席の分配システム38から座席空調モジュール20へとしか吸入ポート44によって流体が流れないように、バルブシステムが構成されかつ配置されている。これはまた、流体を排気ポート42から流れさせるように構成されていてもよい。図13で示された例においては、バルブシステムは空気が吸入ポート44から、座席表面からそして通気ダクト40から吸引されるように構成されている。例えば熱エネルギー収集装置50を有する例えば温度調整装置48がある場合には、これらの装置はオプションとして後の時点および後の「モード」のための熱エネルギーを蓄えるために駆動可能であることを意図している。
【0042】
(組合わせモード)
上記の運転モードはどれも、優れた快適さを着席者に提供するために、経時的に次々と(例えば、プルモード−プッシュモード−ノズルフロー−など)組み合わせ可能であることが意図されている。これは温度調整マッサージの一種ということができる。多数のモードの組合せを前もって設定し、制御装置にプログラミングできるようになっている。それゆえ、ユーザーは、選択としてあらかじめプログラミングされた組合せを選ぶか、または独自の組合せをつくる事ができる。
【0043】
特に断りがない限り、本明細書に説明されている種々の構造の寸法および形状は本発明を制限する意図はなく、他の寸法あるいは形状も可能である。複数の構造の構成部品の代わりに単一の一体型の構造を使ってよい。代わりに、単一の一体型の構造が別々の複数の構成部品に分けられてもよいであろう。さらには、本発明の1つの特徴は唯一の実施例の内容において説明されているかもしれないが、そのような特徴はどんな所定の応用用途に対しても、他の実施例の1つあるいは複数の特徴と組合わせることができる。また上記から、この中の優れた特徴的な構造の製造およびその運転も、本発明による方法を構成する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態が開示された。しかし、通常の技術を有する当業者であれば、この発明の教示の範囲内において、ある種の変更が可能であることがわかるであろう。それゆえ、本発明の範囲および内容を正しく判断するためには、以下の特許請求の範囲によらなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席空調アセンブリ用の座席空調モジュールであって、
少なくとも1つの吸入ポートおよび少なくとも1つの吐出ポートと流体的に接続された流体を動かすためのエアムーバーであって、少なくとも前記吸入ポートあるいは前記吐出ポートのうちの1つ、またはその両方が分配通路経由で空調される領域と流体的に接続している、エアムーバーと、
前記少なくとも1つの吸入ポートと前記少なくとも1つの吐出ポートと空調される領域との間の流体の動きを制御するために、前記エアムーバーと前記少なくとも1つの吸入ポートおよび前記少なくとも1つの吐出ポートとの間に可動に設置された少なくとも2つの開口部を有する、バルブアセンブリと、
前記少なくとも2つの開口部を通る流体の流通を制御するために前記バルブアセンブリを動かす少なくとも1つの駆動装置と、
少なくとも、前記バルブアセンブリのその少なくとも2つの開口部のポジション、任意的な調整装置の駆動、前記エアムーバーの運転、またはこれらの組合わせを制御するための制御装置と、を備える座席空調モジュール。
【請求項2】
前記エアムーバーおよび前記空調される領域と流体的に接続する調整装置をさらに含む、請求項1記載の座席空調モジュール。
【請求項3】
前記調整装置が、流体を温める、冷却する、またはその両方のための熱電装置である、請求項2記載の座席空調モジュール。
【請求項4】
前記座席空調アセンブリが、前記座席の表面から25mm以内に配置された分離型ヒーター装置を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の座席空調モジュール。
【請求項5】
熱エネルギーを蓄えるための少なくとも1つの熱収集装置をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項記載の座席空調モジュール。
【請求項6】
前記座席空調モジュールから前記座席の着席者のいる領域へ、前記座席の着席者のいる領域から、またはその両方向に空気を流体的に流通するために、前記座席の表面に隣接して設置された通気システムをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の座席空調モジュール。
【請求項7】
前記通気システムが、前記座席空調モジュールと、前記座席の表面に隣接して設けられた通気開口部と、の間に設置された温度調整装置を含む、請求項6記載の座席空調モジュール。
【請求項8】
前記エアムーバーが、中空状チャンバを画定する不通気性のハウジングの中に設置されており、
前記ハウジングが、バルブアセンブリが配置されると共に前記少なくとも1つの吸入ポートおよび前記少なくとも1つの吐出ポートと流体的に接続される開口部を少なくとも1つ含み、
これらのポートの少なくとも1つが、不通気性の中空状のチューブ状構造物により画定されている、請求項1〜7のいずれか1項記載の座席空調モジュール。
【請求項9】
乗物の座席の座席空調アセンブリにおいて使用するための座席空調モジュールであって、
中空状チャンバを画定する不通気性ハウジングであって、前記ハウジングへ、および前記ハウジングから流体を流通させるための少なくとも2つの流通孔が配置される、ハウジングと、
前記中空状チャンバをプルラインおよびプッシュラインの2つの部分に分けるエアムーバーであって、前記プルラインが前記エアムーバーの吸入側に配置され、前記プッシュラインが前記エアムーバーの吐出側に配置され、前記少なくとも2つの流通孔のうち少なくとも1つが前記プルライン内に1つが前記プッシュライン内に配置される、エアムーバーと、を備える座席空調モジュール。
【請求項10】
乗物の座席を空調する方法であって、
(a)座席空調モジュールおよび少なくとも1つの分配通路を含む座席空調アセンブリを設けるステップであって、前記座席空調モジュールがエアムーバーを含み、少なくとも1つの分配通路と流体的に接続している、少なくとも2つの可動な開口部を含むバルブシステムが少なくとも1つの吸入ポートと少なくとも1つの吐出ポートとの間に配置されており、前記少なくとも1つの分配通路は前記乗物の座席の空調される領域と流体的に接続されている、ステップと、
(b)前記座席空調モジュール内に配置されると共に、前記エアムーバーと流体的に接続している、任意の調整装置を設けるステップと、
(c)前記座席空調モジュール内に配置されると共に、前記エアムーバーと流体的に接続している、任意の熱収集装置を設けるステップと、
(d)前記座席空調モジュールと前記少なくとも1つの分配通路との間を空気が少なくとも流れるように、前記バルブシステムの前記少なくとも2つの開口部を動かすステップと、
(e)前記乗物の座席を空調するために、前記バルブシステムを介して空調される領域へ、空調される領域から、またはその両方向へと空気を通流させるように前記エアムーバーを駆動するステップと、を備える方法。
【請求項11】
メインサイドおよび排気サイドを有するヒートポンプ(ペルティエ、スターリングまたは伝統的な二相圧縮式ヒートポンプの原理)に代表される前記調整装置をさらに含み、
前記バルブシステムは、メインサイドを経ての流れを遮断し、それにより前記ヒートポンプの前記メインサイドに熱エネルギーあるいは冷気を収集し、その後前記メインサイドの流れが開となった時に、それを前記空調される領域に向けて放出するための条件をつくりだすように調整されている、請求項10記載の方法。
【請求項12】
収集された熱エネルギーまたは冷気を一気に空調される領域へと放出するステップをさらに含む、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2011−506178(P2011−506178A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538053(P2010−538053)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/085344
【国際公開番号】WO2009/076123
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(599067662)ヴィー・エー・テー・オートモーティヴ・システムス・アクチェンゲゼルシャフト (29)
【Fターム(参考)】