説明

改良された結核ワクチン

本発明は、ツベルキュロシス複合体(M.ツベルキュロシス、M.ボビス、M.アフリカナム、M. ミクロティ)の種によって引き起こされる感染を予防、追加免疫、または治療するための免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物に関する。前記免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物は、M.ツベルキュロシス由来の1つ以上の飢餓抗原を含有する融合ポリぺプチドを含み、前記融合ポリぺプチド単位は、M.ツベルキュロシス抗原である。さらに本発明は、前記免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を調製するための、BCGと同時に、BCGと混合してあるいは異なる部位または経路で別々に投与される、本発明の融合ポリぺプチド配列または核酸配列を含有するワクチンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飢餓誘導抗原または飢餓の間に誘導されたヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis:マイコバクテリウム・ツベルキュロシス)に由来するポリペプチドに基づく免疫原性ポリペプチドの新規な融合ポリペプチド、ヒト/動物への投与に使用される免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物の調製のための、1つ以上の本発明の融合ポリペプチドまたは飢餓誘導抗原の使用、及びそのようなものとしての免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を開示する。
【背景技術】
【0002】
ヒト結核菌(M.ツベルキュロシス)を原因とするヒト型結核は、深刻な世界的健康問題であり、WHOによれば毎年約300万人の死者の原因となっている。新たな結核(TB)症状の世界的発生率は1960年代から1970年代にかけて低下してきたが、近年、一部にはAIDSの出現とM.ツベルキュロシスの多剤耐性菌株の出現により、この傾向は著しく変化している。
【0003】
現在、臨床的使用のために利用し得る唯一のワクチンはBCGであり、そのワクチンの有効性は依然として議論の事項のままである。BCGは、一般的に、TBの動物モデルにおいて高レベルの獲得耐性を誘導し、ヒトにおいて髄膜炎、粟粒結核等の播種型の結核から防御する。幼児に投与する場合、それは何年か結核から防御するが、その後有効性は変化する。種々の対照臨床試験により、成人におけるBCGの防御効果が、効果なしから80%防御までの有効範囲で顕著に変化することが明らかになった。このことにより、M.ツベルキュロシスに対する新規で改良されたワクチンの開発が緊急課題となっており、WHOにより非常に高い優先度を与えられている。
【0004】
マイコバクテリア防御物質を規定する多くの試みがなされており、様々な研究者が実験的ワクチン投与後の抵抗性の増大を報告している。M.ツベルキュロシスは、新規のM.ツベルキュロシスワクチンの生成に対して潜在的ないくつかの関連タンパク質を分泌するとともに保持する。候補分子の探索は、分裂する細菌から放出されるタンパク質に主に焦点を当てている。多数のこのようなタンパク質の特性解析にもかかわらず、これらのほんのわずかのみ、最も顕著にはESAT-6及びAg85B(Brandt et al 2000)が、動物モデルにおけるサブユニットワクチンとして防御免疫反応を誘導することを示した。しかし、BCGをワクチン接種したヒトにおける、BCGの潜在力または追加免疫する能力による、特定の長期防御免疫反応の実証は、まだ達成されていない。よくてもBCGを用いたBCGの追加免疫は効果を有しない(Colditz, 1994)。BCGの追加免疫はAg85aによりなされ(Brooks et al IAI 2001; WO0204018)、BCG単独と比較して有意に優れるものではなかったが、同系交配のマウス系統において、いくらかの防御を引き起こした。防御免疫反応を誘導するために、BCGはタンパク質の分離及び分泌を必要とするため、追加免疫効果の欠如は、主に、環境由来マイコバクテリアによる感作または一次BCGワクチン接種からの残存免疫反応のいずれかに起因する。両事象は、BCGに対する迅速な免疫反応を引き起こし、それによって、BCGの迅速な成長阻害及び除去をもたらす。
【0005】
M.ツベルキュロシスの感染経路は基本的に3相を通過する。急性相の間、細菌は、免疫反応が増大するまで臓器中で増殖する。特異的に感作されたCD4 Tリンパ球は感染の制御を仲介し、最も重要な仲介分子は、インターフェロン・ガンマ(IFN-γ)と考えられる。細菌負荷は減少し始め、潜伏相は細菌負荷が低レベルで安定に維持されたところで確立する。この相において、M.ツベルキュロシスは、活動的な増殖から休止状態へと進み、本質的に複製されなくなり、肉芽腫の内部に残る。いくつかの場合には、感染が再活性相に進み、休止状態の細菌が再び複製を開始する。初期感染から潜伏へのM.ツベルキュロシスの移行は、遺伝子発現の変化を伴うと示唆されている(Honer zu Bentrup, 2001)。また、細菌が活動的な複製から休止状態へ移行する間に遺伝子発現を調節するように、免疫反応の抗原特異性の変化が起こると考えられる。潜伏感染を制御する免疫反応の完全な性質及び再活性化を誘導する因子は大部分が知られていない。しかし、主要な細胞型において関与する変化のいくつかの証拠がある。CD4 T細胞は、急性相の間の感染の制御について本質的かつ十分であるのに対し、研究はCD8 T細胞応答が潜伏相においてより重要であることを示唆している。
【0006】
1998年にCole等は、M.ツベルキュロシスの完全なゲノム配列を発表し、ヌクレオチド配列及び推定タンパク質配列を開示する約4000のオープン・リーディング・フレーム(Cole et al 1998)の存在を予測した。しかし、重要なことに、この配列情報を用いて、DNAがin vivoにおいてタンパク質として翻訳され発現されるかどうかを予測することはできない。M.ツベルキュロシスのいくつかの遺伝子が擬似潜伏相の条件下で上方制御されることが知られている。しかし、これらは潜伏感染の間の全遺伝子発現の限定された一部である。さらに、当業者が容易に解するであろうように、遺伝子の発現はそれを優れたワクチン候補にするには十分でない。M.ツベルキュロシスによる潜伏感染の間に、タンパク質が免疫システムによって認識されるかどうかを判別する唯一の方法は、所定のタンパク質を生成し、本明細書に記載の適切なアッセイでそれを試験することである。多くのタンパク質は、感染後、比較的長期間にわたり主に発現されるため、特に重要であり、且つ遅発性抗原となる可能性を有し(潜伏感染の間に抗原として認識される)、そこでは免疫システムが最初の適応的防衛を開始し、環境がマイコバクテリアに対してより対立している。低酸素圧条件を模倣したin vitro低酸素培養条件は、この点において関連することが示唆されており、遺伝子発現の変化を分析するために用いられてきた。多くの抗原、例えば16kDaの抗原α−クリスタリン(Sherman 2001)、Rv2660c、及びRv2659c(Betts, 2002)がこれらの条件下で誘導され、または著しく上方制御されることが見出されている(我々自身の出願)。特に関心のある他の環境刺激は、肉芽腫(潜伏感染の位置)において栄養素が制限されること、及び飢餓下で上方制御された遺伝子によって発現される生成物が、それゆえ感染の潜伏段階の間の抗原標的として特に興味深いことを反映して設計される飢餓である。
【0007】
20000以上の抗原が、初期感染の間に発現されることが知られており、ワクチンとして試験され、半ダース未満が重要な潜在能を示した。今までのところ、唯一の抗原のみが治療用ワクチンとして何らかの潜在能を有することを示している(Lowrie, 1999)。しかし、このワクチンは、DNAワクチンとして与えられる場合にのみ機能し、このプロトコールを使用したワクチン接種が、非特異的防御または疾患の悪化さえ引き起こすと主張する他のグループとで議論を呼んでいる(Turner, 2000)。対照的に、本発明に記載されている融合ポリペプチドは、提示された実施例に示されているように、よく認識されたワクチン接種技術を使用するワクチンに組み込ませることができる。
【特許文献1】Brooks et al IAI 2001;国際公開第0204018号パンフレット
【特許文献2】WO 96/40718
【特許文献3】米国特許第4,608,251号
【特許文献4】米国特許第4,601,903号
【特許文献5】米国特許第4,599,231号
【特許文献6】米国特許第4,599,230号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、TBワクチンは排除免疫(sterilizing immunity)をもたらさず、むしろ感染を無症状レベルに制御する(それによってその後の潜伏感染の成立を引き起こす)ため、予防的且つ治療的活性を有する成分と組み合わせる多相ワクチン(multiphase vaccine)が本発明において記載されている。従来の予防ワクチン接種の後、主な免疫反応の回避及びそれに続く潜伏疾患の進行は、侵入する細菌の抗原プロフィールの変化におそらく少なくとも部分的に起因している。従って、潜伏期のTBに関連する抗原を用いたワクチン接種は、潜伏感染の確立を抑制または減少させ、それゆえ、最初の対数増殖相において及び潜伏疾患の間の両方で、細菌によって発現された抗原を組み込んだワクチンが、予防ワクチンとして使用される場合、長期間の免疫を改良するであろう。このような多相ワクチンは、治療ワクチンとしても明らかに有効であり、それによって、将来のTBワクチン接種を受ける第三世界の人口の大部分がすでに潜伏感染しているという問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、M.ツベルキュロシス複合体(M.ツベルキュロシス、M.ボビス(M. bovis)、M.アフリカナム(M. africanum)等)の種によって引き起こされる感染を予防する(追加ワクチン接種及び多相ワクチンを含む)及び/または治療するための免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物に関し、前記免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物は、飢餓誘導抗原または1つ以上の飢餓誘導M.ツベルキュロシス抗原を含む融合ポリペプチドを含み、前記融合ポリペプチドの単位は、M.ツベルキュロシス抗原である。また、本発明はこのような融合ポリペプチド及びこのような融合ポリペプチドをコードする核酸配列に関する。さらに本発明は、合成によりまたは組換えにより作製される、短いもしくは長い重複または非重複ペプチドの使用に関する。さらに本発明は、前記免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を調製するための、本発明の飢餓誘導抗原または融合ポリペプチド配列もしくは核酸配列の使用、及びこのようにして作製されたワクチンまたは製薬組成物に関する。さらに本発明は、前記免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を調製するための、BCGと同時に投与される、すなわちBCGと混合してまたは異なる部位もしくは経路で別々に投与される、本発明の飢餓誘導抗原または融合ポリペプチド配列もしくは核酸配列を含有するワクチンの使用に関する。さらに本発明は、BCG追加免疫として供与される飢餓誘導抗原または融合ポリペプチド配列もしくは核酸配列を含有するワクチンの使用に関する。さらに、自然感染の間の初期及び後期の両方に発現される抗原を含有することによって、ワクチンは、免疫システムが潜伏期間を含むある時点において最も有効であるどんなエピトープをも有する病原体と闘うことを可能にする2段階の免疫反応に誘導する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、飢餓誘導抗原または1つ以上の飢餓誘導抗原を含有する融合ポリペプチドを含む免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を開示する。
【0011】
これらの飢餓誘導(飢餓の間に6.5倍より高く上方制御される、または飢餓誘導遺伝子に遺伝的に連結した)抗原のアミノ酸及び核酸の配列は、以下の配列表により表される:
【表1】

【0012】
本明細書の文脈において、M.ツベルキュロシスに由来するポリペプチドに基づく個々の免疫原性ポリペプチドを、融合ポリペプチドの「単位」と称す。当該融合物は、2、3、4、5、6、7、8、9、またはさらには10個の異なる単位を含有してもよい。
【0013】
融合ポリペプチドの単位の順序は、任意の組み合わせであってよい。順序の条件において、任意の組み合わせにおける前記抗原のすべての融合ポリペプチドは本発明の範囲内にある。本発明の融合ポリペプチドは、以下に詳細に記載するように、免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物、特にBCG追加免疫ワクチンの調製に有用である。
【0014】
飢餓ポリペプチドとともに融合ポリペプチド単位を構成する好ましいポリペプチドは、以下のサンガー識別番号(Sanger identity number)及びアミノ酸配列を有する。
【表2】

【表3】

【0015】
融合ポリペプチドの好ましい組み合わせは、1つ以上の飢餓誘導抗原(X)を有する、単位の順序において種々の組み合わせで、以下のポリペプチド:ESAT6-Ag85A-X、ESAT6-Ag85B-X、Ag8A-X、Ag85B-X、TB10-Ag85A-X、TB10-Ag85B-Xを含有し、ここで、Xは飢餓誘導抗原のいずれかであり、抗原単位の順序は、例えば順序が逆であるまたはXが中間に位置するなど、任意の組み合わせであってよい。
【0016】
しかし、融合ポリペプチドは、1つ以上の飢餓誘導抗原と1つ以上のM.ツベルキュロシス抗原との任意の他の組み合わせから構築されてもよい。
【0017】
本発明の融合ポリペプチドの任意の1つの任意の部分に対し少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し且つ免疫原性である融合ポリペプチド、及び前記ポリペプチドをコードする核酸配列の類似体は本発明の範囲内にある。そのような類似体は、用語「本発明のポリペプチド」または「本発明の融合ポリペプチド」の中に含まれ、前記用語は明細書及び特許請求の範囲のすべてを通して互換的に用いられる。用語「本発明の核酸配列」とは、前記ポリペプチドをコードする核酸配列を意味する。さらに、本発明の融合ポリペプチドの任意の1つに対し少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し且つ免疫原性である、重複または非重複している短いまたは長いポリペプチドは、本発明の範囲内にある。
【0018】
本発明の現在好ましい実施態様は、事前のBCGワクチン接種からの追加免疫のためのワクチンであって、すなわち、あらかじめBCGをワクチン接種した個体にワクチンを投与することである。
【0019】
本発明の第1の態様は、前記ポリペプチドの自己アジュバント効果を可能にするように脂質化された、前記飢餓誘導抗原または融合ポリペプチドの変異体を含有する。
【0020】
本発明の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物は、粘膜送達によって、例えば経口的、経鼻的、口腔的、あるいは従来的に筋肉内に、皮内に、あるいは皮下注射によってまたは経皮的に、または任意の他の適切な経路、例えば経直腸的に投与され得る。
【0021】
別の実施態様において、本発明は、悪性のマイコバクテリウム、例えば、マイコバクテリウム・ツベルキュロシス、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・レプラ、またはマイコバクテリウム・アルセランスによって引き起こされる感染に対する、BCG、追加免疫ワクチン、または治療ワクチン接種とともに予防ワクチン接種に使用され得る免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を調製するための、前記に定義した飢餓誘導抗原または融合ポリペプチドの使用を開示する。
【0022】
第2の態様において、本発明は、前記に定義した飢餓誘導抗原または融合ポリぺプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、あるいは本発明の核酸配列に厳しい条件下でハイブリダイズし得るそれに相補的な核酸配列を含む免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を開示する。
【0023】
核酸フラグメントは、好ましくはDNAフラグメントである。当該フラグメントを、以下に検討するように製薬として使用することができる。
【0024】
一実施態様において、本発明は、場合によりベクター中に挿入されている本発明による核酸フラグメントを含有する免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を開示する。前記ワクチンは、ワクチンを投与されたヒトを含む動物による抗原のin vivo発現をもたらし、発現した抗原量は、悪性のマイコバクテリア、例えば、マイコバクテリウム・ツベルキュロシス、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・レプラ、またはマイコバクテリウム・アルセランスによって引き起こされる結核に対し、ヒトを含む動物において、実質的に増大した抵抗力を与えるのに効果的である。
【0025】
さらなる実施態様において、本発明は、悪性のマイコバクテリアによって引き起こされる結核に対する治療的ワクチン接種のための、本発明による核酸フラグメントを含有する免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物の使用を開示する。
【0026】
さらに別の実施態様において、本発明は、有効成分として非病原性微生物、例えばワクシニア、アデノウイルス、またはマイコバクテリウム・ボビスBCGを含み、前記に定義した融合ポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNAフラグメントの少なくとも1つのコピーは、微生物が融合ポリペプチドを発現及び場合によって分泌し得るように微生物中に組み込まれており(例えば、プラスミドまたはゲノム上に位置している)、悪性のマイコバクテリア、例えばマイコバクテリウム・ツベルキュロシス、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・レプラ、またはマイコバクテリウム・アルセランスによって引き起こされる結核に対して、ヒトを含む動物を免疫するための、BCGとともに予防的ワクチン接種のために、またはあらかじめBCGを用いてワクチン接種をしたヒトに対する追加免疫ワクチンとして使用され得る免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を開示する。
【0027】
別の実施態様において、本発明は、感染性発現ベクター、例えば、本発明による核酸フラグメントを含有するワクシニア、アデノウイルス、またはマイコバクテリウム・ボビスBCG、及び少なくとも1つの前記ベクターを有する形質転換細胞を開示する。
【0028】
第3の態様において、本発明は、悪性のマイコバクテリア、例えばマイコバクテリウム・ツベルキュロシス、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・レプラ、またはマイコバクテリウム・アルセランスによって引き起こされる結核に対し、ヒトを含む動物を免疫する及び追加免疫する方法であって、前記に定義した融合ポリペプチド、本発明による免疫原性組成物、または本発明によるワクチンを動物に投与することを含む方法を開示する。
【0029】
第4の態様において、本発明は、悪性のマイコバクテリア、例えばマイコバクテリウム・ツベルキュロシス、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・レプラ、またはマイコバクテリウム・アルセランスによって引き起こされる活動性または潜伏性の結核を有するヒトを含む動物を治療する方法であって、前記に定義した免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を動物に投与することを含む方法を開示する。
【0030】
第5の態様において、本発明は、M.ボビスBCGと組み合わせた免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を調製するための、悪性のマイコバクテリア、例えばマイコバクテリウム・ツベルキュロシス、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・レプラ、またはマイコバクテリウム・アルセランスによって引き起こされる感染に対する、例えば予防的(追加免疫を含む)または治療的ワクチン接種のための、前記に定義した飢餓誘導抗原または融合ポリペプチド、または核酸フラグメントの使用を開示する。
【0031】
本発明によるワクチン、免疫原性組成物、ワクチン及び製薬組成物を、悪性のマイコバクテリアに感染していない被験者において、またはM.ツベルキュロシスBCGであらかじめワクチン接種した個体において予防的に、あるいは悪性のマイコバクテリアに感染した被験者において治療的に使用することができる。
【0032】
本発明の第1の態様の実施態様、例えば記載された免疫原性ポリペプチドは、本発明の他のすべての態様にも適用することができ、その逆もまた同様である。
【0033】
この明細書の全体を通して、文脈が他の意味を必要としないならば、用語「含む(comprise)」またはその変形である「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」は、記載された要素もしくは整数(integer)、または要素もしくは整数の群を含むが、いかなる他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を排除するものではないことを示唆すると解される。
【0034】
[定義]
<飢餓>
用語「飢餓」は、生命体から炭素、窒素、またはエネルギー源、前記の任意の組み合わせまたはそれらのすべてさえを奪うことを意味する。
【0035】
<飢餓誘導タンパク質>
用語「飢餓誘導タンパク質」は、転写におけるタンパク質レベルが、飢餓によってマイコバクテリアにストレスを与えた後、少なくとも6.5倍に誘導(増大)される任意のタンパク質を意味する。
【0036】
<M.ボビスBCGとの組み合わせ>
用語「M.ボビスBCGとの組み合わせ」は、有意に増大した特異的免疫反応をもたらす量、または動物モデルもしくはヒトにおいて、前記に定義した1つ以上の融合ポリぺプチドまたはこれらをコードする1つ以上の核酸フラグメントのいずれかとともに有意な防御をもたらす量で、あるいは同時にではあるが異なる部位または経路で投与される、パスツール(Pasteur)、フィップス(Phipps)、フラピエ(Frappier)、コンノート(Connaught)、タイス(Tice)、デンマーク(Denmark)、グラクソ(Glaxo)、プラハ(Prague)、バークホーグ(Birkhaug)、スウェーデン(Sweden)、日本(Japan)、モロー(Moreau)、及び ロシア(Russia)を含む任意のM.ボビスBCG株との共投与を意味する。
【0037】
<M.ボビスBCGの追加免疫>
用語「M.ボビスBCGの追加免疫」は、有意に増大した特異的免疫反応をもたらす量、または動物モデルもしくはヒトにおいて有意に増大した防御をもたらす量で、パスツール(Pasteur)、フィップス(Phipps)、フラピエ(Frappier)、コンノート(Connaught)、タイス(Tice)、デンマーク(Denmark)、グラクソ(Glaxo)、プラハ(Prague)、バークホーグ(Birkhaug)、スウェーデン(Sweden)、日本(Japan)、モロー(Moreau )、及び ロシア(Russia)を含む任意のM.ボビスBCG株を用いたワクチン接種後の任意の期間において、前記に定義した1つ以上の融合ポリぺプチドまたはこれらをコードする1つ以上の核酸フラグメントを投与することを意味する。
【0038】
<ポリぺプチド>
本発明の融合ポリぺプチドの単位として使用される好ましいポリぺプチドは、M.ツベルキュロシス由来の免疫原性ポリぺプチドである。当該ポリぺプチドは、例えばM.ツベルキュロシス細胞及び/またはM.ツベルキュロシス培養ろ液に由来するポリぺプチドに基づいてよい。当該ポリぺプチドは、通常、組換えまたは合成ポリぺプチドであり、免疫原性ポリぺプチド、その免疫原性部分からなっていてもよく、または付加的配列を含有してもよい。前記付加的配列は、天然のM.ツベルキュロシス抗原に由来しても、異種(heterologous)であってもよく、且つ前記配列は免疫原性であってもよいが、そうである必要はない。
【0039】
用語「融合ポリぺプチド」は、任意の長さ及び配列のアミノ酸スペーサーと融合した、または融合していない、M.ツベルキュロシス由来のランダムな順序の2つ以上の免疫原性ポリぺプチドまたはその類似体を意味する。
【0040】
本発明において、用語「ポリぺプチド」は、その通常の意味を有する。それは、全長のタンパク質、オリゴぺプチド、それらの短鎖ぺプチド及びフラグメント、並びに融合ポリぺプチドを含む任意の長さのアミノ酸鎖であって、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結している。
【0041】
前記ポリぺプチドは、グリコシル化されることによって、脂質化されることによって(例えば、Mowat et al. 1991による記載のパルミトイルオキシスクシンイミドを用いた化学的脂質化、またはLustig et al. 1976による記載のドデカノイルクロリドを用いた化学的脂質化)、補欠分子族を含有することによって、または付加的アミノ酸、例えばHisタグまたはシグナルぺプチド等を含有することによって、化学的に修飾されてもよい。
【0042】
各免疫原性ポリペプチドは、特定のアミノ酸により特徴付けられ、及び特定の核酸配列によりコードされる。組換えまたは合成方法により生成されるこのような配列及び類似体及び変異体は本発明の範囲内にあり、前記ポリペプチド配列は、組換えポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基の置換、挿入、付加、または欠失により修飾され、本明細書に記載の任意の生物学的アッセイにおいて、依然として免疫原性である。
【0043】
置換は、好ましくは「保存的」である。これらは下記の表に従って定義される。2列目の同一枠内にある、好ましくは3列目の同一行内にあるアミノ酸は、互いに置換されていてもよい。3列目にあるアミノ酸は1文字コードで示されている。
【0044】
【表4】

【0045】
各ポリペプチドは、特定の核酸配列によってコードされている。1つ以上の核酸の置換、挿入、付加、または欠失により修飾された類似体及びそのような核酸配列は、本発明の範囲内にある。置換は、好ましくはコドン使用頻度におけるサイレント置換であり、アミノ酸配列にいかなる変化ももたらさないが、当該タンパク質の発現を促進するように導入され得る。
【0046】
<核酸フラグメント>
用語「核酸フラグメント」及び「核酸配列」は、DNA、RNA、LNA(locked nucleic acids:固定された核酸)、PNA、RNA、dsRNA、及びRNA-DNA-ハイブリッドを含む任意の核酸分子を意味する。非天然生成ヌクレオシド(non-naturally occurring nucleosides)を含有する核酸分子も含まれる。前記用語は、任意の長さ、例えば、用途に応じて10〜10000ヌクレオチドの長さの核酸分子を含有する。前記核酸分子が、製薬として、例えばDNA治療において使用される場合、または本発明によるポリペプチドを作製するための使用される場合、好ましくは、約18〜約1000ヌクレオチドの長さを有する、少なくとも1つのエピトープをコードする分子が使用され、前記分子は場合によってベクター中に挿入されている。前記核酸分子が、プローブとして、プライマーとして、またはアンチセンス治療において使用される場合、10〜100の長さを有する分子が好ましくは使用される。本発明によれば、他の分子の長さ、例えば、少なくとも12、15、21、24、27、30、33、36、39、42、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、または1000ヌクレオチド(またはヌクレオチド誘導体)を有する分子、あるいは多くても10000、5000、4000、3000、2000、1000、700、500、400、300、200、100、50、40、30、または20ヌクレオチド(またはヌクレオチド誘導体)を有する分子を使用することができる。
【0047】
用語「厳しい」は、ハイブリダイゼーション条件と関連して使用される場合は、当該技術分野で定義されているとおりであり、すなわち、ハイブリダイゼーションが、融点Tmよりせいぜい15〜20℃下の温度で実施される(Sambrook et al, 1989, pages 11.45- 11.49 を参照)。好ましくは、当該条件は「高度に厳しい」、すなわち、融点Tmより5〜10℃下である。
【0048】
<配列同一性>
用語「配列同一性」は、実質的に同じ長さの2つのアミノ酸配列間、または実質的に同じ長さの2つの核酸配列間の相同性の程度についての定量的尺度を意味する。比較されるべき2つの配列を、ギャップの挿入あるいはタンパク質配列の末端における切断で、最もよく一致するように整列させなければならない。配列同一性を:
【数1】

として算出することができ、ただし、Ndifは整列させた場合の2つの配列中の非同一残基の総数であり、Nrefは当該配列の1つの残基数である。従って、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATC(Ndif=2及びNref=8)と75%の配列同一性を有する。ギャップは、特定残基の非同一性として数えられ、すなわち、DNA配列AGTGTCは、DNA配列AGTCAGTC(Ndif=2及びNref=8)と75%の配列同一性を有する。あるいは、配列同一性を、BLASTプログラム、例えばBLASTPプログラム(Pearson W. R and D. J. Lipman (1988))によって算出することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST)。本発明の一実施態様において、Thompson J. et al. 1994により記載されたデフォルトパラメータを有するクラスタルダブル(ClustalW)配列整列法(http://www2.ebi.ac.uk/clustalw/において入手可能)を用いて整列を行う。
【0049】
配列同一性の好ましい最小パーセンテージは、少なくとも80%、例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及び少なくとも99.5%である。好ましくは、融合ポリぺプチド中の1つ以上のアミノ酸残基の置換、挿入、付加、または欠失の数は限定され、すなわち、M.ツベルキュロシスに由来するポリぺプチドに基づく免疫原性ポリぺプチド単位と比較して、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の置換、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の挿入、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の付加、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の欠失である。
【0050】
<免疫原性部分>
本発明のポリぺプチドは、免疫原性部分、例えばB細胞またはT細胞に対するエピトープを含む。
免疫原性ポリぺプチドの免疫原性部分は、ポリぺプチドの部分であり、本明細書に記載の任意の生物学的アッセイによって測定された動物またはヒトにおいて、及び/または生体サンプルにおいて免疫反応を引き出す。ポリぺプチドの免疫原性部分は、T細胞エピトープまたはB細胞エピトープであってよい。免疫原性部分は、ポリぺプチドの1つまたは少数の比較的小さな部分に関連してよく、それらはポリぺプチド配列の全体に分散していてもよく、またはポリぺプチドの特定の部分に位置していてもよい。少数のポリぺプチドに対し、全配列をカバーするポリぺプチドの全体にわたり、エピトープが分散されていることがさらに示されている(Ravn et al 1999)。
【0051】
免疫反応の間に認められる関連するT細胞エピトープを同定するため、「しらみつぶしの(brute force)」方法を使用することができ、T細胞エピトープが直鎖状であるため、ポリぺプチドの欠失変異体が体系的に構築されている場合、ポリぺプチドのどの領域が免疫認識に必須であるかを、例えば、これらの欠失変異体を例えば本明細書に記載のIFNアッセイに供することによって明らかにする。別の方法は、好ましくは合成の、例えば当該ポリぺプチドに由来する20アミノ酸残基の長さを有する、MHCクラスIIエピトープの検出用の重複オリゴぺプチドを利用する。これらのぺプチドは、生物学的アッセイ(例えば、本明細書に記載のIFNアッセイ)によって試験することができ、且つこれらのいくつかは、当該ぺプチド中にT細胞エピトープが存在する証拠として陽性の反応(従って、免疫原性である)を示す。MHCクラスIエピトープの検出用に、結合するペプチドを予測し(Stryhn et al. 1996)、その後これらのぺプチドを合成的に生成し、及び関連する生物学的アッセイ、例えば、本明細書に記載のIFNアッセイによってこれらを試験することが可能である。好ましくは、例えば8〜11アミノ酸残基の長さを有するぺプチドは、当該ポリぺプチドに由来する。B細胞エピトープは、例えば、Harboe et al 1998に記載されているように、対象のポリぺプチドをカバーする重複ぺプチドに対するB細胞の認識を分析することによって決定され得る。
【0052】
ポリペプチドの免疫原性部分は、遺伝的に異種のヒト集団の大きな部分(高頻度)または小さな部分(低頻度)によって認識され得る。さらに、いくつかの免疫原性部分は、高い免疫反応(優位な)を誘導するが、その他は低いが依然として重要な免疫反応(やや優位な(subdominant))を誘導する。高頻度または低頻度は、広範囲に分布したMHC分子(HLA型)に、または複数のMHC分子(Kilgus et al. 1991, Sinigaglia et al 1988)に結合している免疫原性部分に関連し得る。
【0053】
<類似体>
本発明の融合ポリペプチドの共通の特性は、実施例において説明されるように、免疫反応を誘導するそれらの能力である。置換、挿入、付加、または欠失によって作製され、また、本明細書に記載された任意のアッセイによって免疫原性と測定される本発明の融合ポリペプチドの類似体は、本発明の範囲内にあると解される。
【0054】
<実質的に純粋な>
本明細書において、用語「実質的に純粋なポリペプチド」は、それが本来的に、あるいは組換えまたは合成の作製の間に関連している、最大で5重量%の他のポリペプチド材料を含むポリペプチド調製物を意味する(他のポリペプチド材料のより低いパーセンテージ、例えば最大で4%、最大で3%、最大で2%、最大で1%、及び最大で1/2%が好ましい)。実質的に純粋なポリぺプチドは、少なくとも96%純粋、すなわち、当該ポリぺプチドが、調製物中に存在するポリぺプチド材料全体の少なくとも96重量%を構成するのが好ましく、より高いパーセンテージ、例えば、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.25%、少なくとも99.5%、及び少なくとも99.75%が好ましい。ポリぺプチドは「本質的に純粋な形態」であり、すなわち、当該ポリぺプチドが本来的に関連する任意の他の抗原を本質的に有さない、すなわち、ツベルキュロシス複合体または悪性のマイコバクテリウムに属する細菌由来の任意の他の抗原を有さないことが特に好ましい。このことは、以下に詳細に記載するように、非マイコバクテリア宿主細胞中で組換え法によりポリぺプチドを調製することによって、あるいは固相または液相ぺプチド合成の既知の方法により、例えば、Merrifieldにより記載されている方法またはその変形法によりポリぺプチドを合成することによって、及び当業者に周知の適切な精製方法を用いることによって達成され得る。
【0055】
<悪性のマイコバクテリウム、現在感染している個体、及び免疫個体>
用語「悪性のマイコバクテリウム」は、動物またはヒトにおいてツベルキュロシス疾患の原因となり得る細菌を意味する。悪性のマイコバクテリアの例は、マイコバクテリウム・ツベルキュロシス、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・ボビス、マイコバクテリウム・レプラ、またはマイコバクテリウム・アルセランスである。関連する動物の例は、畜牛、フクロギツネ(possum)、アナグマ、バッファロー、ライオン、クルス(kurus)、及びカンガルーである。
【0056】
「悪性のマイコバクテリウムに現在感染している動物またはヒト」は、培養または顕微鏡によって、悪性のマイコバクテリウムの感染が証明された個体、及び/またはTBで臨床的に診断された個体及び抗TB化学療法に反応するものを意味する。培養、顕微鏡、及びTBの臨床診断は、当業者に公知である。
【0057】
免疫個体は、悪性のマイコバクテリウムによる感染を排除しているまたは制御している、あるいはM.ボビスBCGを用いたワクチン接種を受けた動物またはヒトとして定義される。
【0058】
<免疫原性>
免疫原性ポリぺプチドは、免疫反応を誘導するポリぺプチドとして定義される。免疫反応を、以下の方法の1つによってモニターすることができる。
【0059】
in vitro細胞性反応を、関連するサイトカイン、例えば、悪性のマイコバクテリアに現在または以前に感染した動物もしくはヒトから採取したリンパ球からのIFNの放出によって、またはこれらT細胞の増殖の検出によって測定する。ウェル当たり1×105〜3×105個の細胞を含有する懸濁液へのポリぺプチドまたは免疫原性部分の添加によって、誘導を行う。当該細胞を、血液、脾臓、肝臓、または肺臓のいずれかから単離し、ポリぺプチドまたはポリぺプチドの免疫原性部分の添加により、懸濁液1mL当たり20μg以下の濃度となり、2〜5日間の刺激を行う。細胞増殖をモニターするために、当該細胞を放射性標識チミジンによりパルスし、16〜22時間のインキュベーション後に当該細胞の増殖を液体シンチレーションカウンティングにより検出する。陽性の反応は、バックグラウンド+2標準偏差より大きい反応である。IFNの放出を、当業者に公知であるELISA法によって測定することができる。バックグラウンド+2標準偏差より大きい反応である。IFN以外の他のサイトカイン、例えば、IL-12、TNF、IL-4、IL-5、IL-I0、IL-6、TGF等は、当該ポリぺプチドに対する免疫反応をモニターする場合に関与し得る。サイトカイン(例えばINF)の存在を測定するための別の及びより高感度な方法はELISPOT法であり、血液、脾臓、肝臓、または肺臓のいずれかから単離した細胞を、好ましくは1〜4×106細胞/mLの濃度に希釈し、1mL当たり20μg以下の濃度になるポリぺプチドまたはポリぺプチドの免疫原性部分の存在下で、18〜22時間インキュベートする。その後、細胞懸濁液を1〜2×106/mLの濃度に希釈し、抗IFNで被覆したMaxisorpプレートに移し、好ましくは4〜16時間インキュベートする。IFN産生細胞を、標識二次抗IFN抗体及びスポットをもたらす関連基質の使用によって測定し、解剖顕微鏡によりそれらを列挙することができる。PCRの技術を用いることによって、関連するサイトカインをコードするmRNAの存在を測定することも可能である。通常、1つ以上のサイトカインは、例えばPCR、ELISPOT、またはELISAを利用することによって測定される。特定のポリぺプチドにより誘導されるこれらのサイトカインのいくつかの量の顕著な増加または減少を、当該ポリぺプチドの免疫活性の評価に使用し得ることは当業者によって解されるであろう。
【0060】
in vitro細胞性反応を、免疫個体またはM.ツベルキュロシス感染者に由来するT細胞株を用いて測定することもでき、前記T細胞株は生きたマイコバクテリア、細菌細胞からの抽出物、またはIL-2の添加による10〜20日間の培養ろ液のいずれかにより促進されている。懸濁液1mL当たり20μg以下のポリペプチドをウェル当たり1×105〜3×105個の細胞を含有するT細胞株へ添加することによって誘導を行い、2〜6日間インキュベーションを行う。IFNの誘導または他の関連するサイトカインの放出をELISAによって検出する。T細胞の刺激を、前述のような放射性標識チミジンを用いて細胞増殖を検出することによってモニターすることもできる。両アッセイについて、陽性反応は、バックグラウンド+2標準偏差より大きい反応である。
【0061】
in vivo細胞性反応を、悪性のマイコバクテリウムに臨床的または無症状的に感染した個体に、最大で約100μgの当該ポリぺプチドまたは免疫原性部分を皮内注射または局所パッチ適用した後の陽性のDTH反応として測定することもでき、陽性反応は、注射または適用の72〜96時間後に少なくとも5mmの直径を有する。
【0062】
in vitro体液性反応を、免疫個体または感染した個体における特異的抗体反応によって測定する。抗体の存在を、当該ポリペプチドまたは当該免疫原性部分がニトロセルロース膜またはポリスチレン表面のいずれかに吸収されているELISA技術またはウェスタンブロットによって測定することができる。血清を、好ましくはPBS中に1:10〜1:100に希釈し、吸収されたポリペプチドに加えて、1〜12時間インキュベーションする。標識二次抗体の使用によって、特異的な標識の存在または非存在を決定することにより、例えば、陽性反応がバックグラウンド+2標準偏差より大きい反応であるELISA、あるいはウェスタンブロットの視覚的な反応により、特異的抗体の存在を判別することができる。
【0063】
別の関連するパラメータは、アジュバント中のポリペプチドを用いたワクチン接種後またはDNAワクチン接種後に誘導された動物モデルにおける防御の測定である。適切な動物モデルは、霊長類、モルモット、またはマウスを含み、それらに悪性のマイコバクテリウムの感染を負荷する。誘導された防御についての読み取り情報(readout)は、非ワクチン接種動物と比較して標的臓器中の細菌負荷を減少し、非ワクチン接種動物と比較して生存時間を延長し、且つ非ワクチン接種動物と比較して体重減少または病状を軽減し得る。
【0064】
<調製方法>
一般に、本発明の融合ポリぺプチド、及び前記融合ポリぺプチドをコードするDNA配列は、種々の方法の任意の1つを用いることによって調製され得る。
【0065】
発現ベクターに挿入され、好適な宿主において発現される、ポリぺプチドをコードするDNA配列を用いることによって、融合ポリぺプチドを組換え的に調製することができる。宿主細胞の例は、E. coliである。約100個より少ないアミノ酸、一般に50個より少ないアミノ酸を有する融合ポリぺプチドを、合成的に調製することができ、且つ当業者に公知の技術、例えばアミノ酸が伸長するアミノ酸鎖に順次付加される商業的に入手可能な固相技術等を使用することによって作製することもできる。
【0066】
融合ポリペプチドを、さらなる融合パートナーとともに作製することもでき、当該方法によって、本発明のポリペプチドのより優れた特性を達成することができる。例えば、組換え的に作製される場合に当該ポリぺプチドの輸送を容易にする融合パートナー、当該ポリぺプチドの精製を容易にする融合パートナー、及び本発明のポリぺプチドの免疫原性を高める融合パートナーはすべて興味深い。本発明は、特に、M.ツベルキュロシスに由来するポリペプチドに基づく2つ以上の免疫原性ポリペプチドの融合を含む融合ポリペプチドに関連する。
【0067】
生成物の免疫原性を高め得る他の融合パートナーは、リンホカイン、例えばIFN-γ、IL-2、及びIL-12である。発現及び/または精製を容易にするために、融合パートナーは、:例えば細菌線毛タンパク質、例えば線毛成分pilin及びpapA;タンパク質A;ZZ-ぺプチド(ZZ-融合物がスウェーデンのPharmacia社から販売されている);マルトース結合タンパク質;グルタチオンS-トランスフェラーゼ;β-ガラクトシダーゼ;またはポリヒスチジンであってよい。融合タンパク質を、宿主細胞内で組換え的に作製することができ、それはE. coliであってよく、それは異なる融合パートナー間のリンカー領域を誘導し得る。例えば、個々の免疫原性ポリぺプチド単位の間のリンカー領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸を含有してよい。
【0068】
興味深い融合ペプチドは、免疫原性ポリペプチドが免疫システムに適切に提供されるように脂質化されている本発明のポリペプチドである。この効果は、例えばWO 96/40718Aに記載されているボレリアブルグトフェリ(Borrelia burgdorferi)OspAポリペプチドに基づくワクチンまたは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)OprIリポプロテイン(Cote-Sierra J 1998)に基づくワクチンで知られている。別の可能性は、既知のシグナル配列のN末端融合及び免疫原性ポリペプチドに対するN末端システインである。このような融合は、適切な産生宿主において産生された場合、N末端システインにおける免疫原性融合ポリペプチドの脂質化をもたらす。
【0069】
<ワクチン>
本発明の重要な態様は、本発明による融合ポリペプチドを含有するワクチン組成物に関連する。前記ワクチン組成物の最良の性能を保証するため、免疫学的及び薬学的に許容されるキャリア、媒体、またはアジュバントを含有することが好ましい。
【0070】
本発明の融合ポリペプチドが動物によって認識される有効なワクチンは、悪性のマイコバクテリアを用いた負荷後、動物モデルにおいて、非ワクチン接種動物と比較して、標的臓器における細菌負荷を減少させ、生存時間を延長し、及び/または体重減少もしくは病状を軽減し得る。
【0071】
適切なキャリアは、ポリペプチドが疎水性の非共有相互作用によって結合しているポリマー、例えばポリスチレン等のプラスチック、またはポリペプチドが共有結合しているポリマー、例えば多糖、あるいはポリペプチド、例えばウシ血清アルブミン、卵白アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニンからなる群から選択される。適切な媒体は、希釈剤または懸濁化剤からなる群から選択される。アジュバントは、好ましくは、臭化ジメチルオクタデシルアンモニウム(DDA)、臭化ジメチルオクタデセニルアンモニウム(DODAC)、Quil A、poly I:C、水酸化アルミニウム、フロイント不完全アジュバント、IFN、IL-2、IL-12、モノホスホリルリピッドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、トレハロースジベヘネート、及びムラミルジペプチド(MDP)、またはマイコバクテリア脂質抽出物、特にPCT/DK2004/000488に開示されている非極性脂質抽出物からなる群から選択される。
【0072】
活性成分としてポリペプチドを含有するワクチンの調製は、そのすべてが参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第4,608,251号、第4,601,903号、第4,599,231号、及び第4,599,230号によって例示されるように、一般に当該技術分野において十分に解されている。
【0073】
ワクチン用のアジュバント効果を獲得する他の方法は、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム(ミョウバン)等の作用物質の使用を含み、糖の合成ポリマー(カルボポール)、加熱処理によるワクチン中のタンパク質の凝集物、アルブミンに対するペプシン処理抗体(Fab)を用いた再活性化による凝集物、C. Parvum等の細菌細胞との混合物、あるいはグラム陰性菌のエンドトキシンまたはリポ多糖成分、マンニドモノオレート(mannide mono-oleate)(Aracel A)等の生理学的に許容されるオイル媒体中のエマルジョン、あるいはブロック代替物として用いられるペルフルオロカーボンの20パーセント溶液(Fluosol-DA)を用いたエマルジョンを使用してもよい。他の可能性は、前述のアジュバントと組み合わせた、サイトカイン、合成IFN-γ誘導剤、例えばpoly I:C等の免疫調節物質の使用を含む。
【0074】
アジュバントの効果を獲得するための別の興味深い可能性は、Gosselin et al., 1992(参照によって本明細書に組み込まれている)に記載の技術を使用することである。要するに、本発明の抗原等の関連する抗原を、単球/マクロファージ上のFc受容体に対する抗体(または抗体フラグメントに結合する抗原)に連結させることができる。
BCGワクチンを改良するため、本発明の1つ以上の融合ポリペプチド等の1つ以上の関連抗原を、投与前にBCGワクチンと混合し、BCGワクチンとともに注射し、それによってより優れた防御をもたらす相乗効果を得ることができる。相乗効果を獲得するための別の興味深い可能性は、BCGワクチン及び本発明の融合ポリペプチドを別々に保持するが、それらを同時に使用し、且つそれらを異なる部位または異なる経路を介して投与することである。
【0075】
現在使用しているBCGワクチンを追加免疫するために、例えば本発明の1つ以上の融合ポリペプチド等の関連抗原を、BCGワクチンが典型的に弱くなり始めるまたはその前の時点で、BCG接種の例えば2、5、10、15、20、25、30、35、40、50、55、60、65、または70年後に投与することができる。その後、例えば1、2、3、4、5、または10年等の一定間隔で、5回までそれを供与することができる。
【0076】
用量製剤と適合する方法で、且つ予防的または治療的に有効且つ免疫原性である量でワクチンを投与する。投与される量は、例えば、免疫反応を開始する個人の免疫システムの能力、及び所望される防御の程度を含んだ、治療される被験者に依存する。適切な投与量範囲は、好ましくは約0.1μg〜1000μgの範囲、例えば約1μg〜300μgの範囲、特に約10μg〜100μgの範囲のワクチン接種当たり、数百マイクログラムのオーダーの本発明の融合ポリペプチドの量である。初回投与及び追加投与用の適切な投薬計画もまた可変であるが、初期投与、次いでそれに続く接種または他の投与が典型となっている。
【0077】
適用方法は大幅に変化し得る。ワクチン投与のための従来の方法のいずれかを適用できる。これらは、活性成分を含有する固体形態(例えば、丸薬、坐薬、またはカプセル)、あるいは生理学的に許容される分散物、例えばスプレー、粉末、または液体のいずれかによる経口、経鼻、または粘膜適用を含み、あるいは非経口的、注射により、例えば皮内、皮下、筋肉内、または経皮的に適用される。ワクチンの投与量は投与経路に依存し、ワクチン接種されるヒトの年齢、及びそれ程の重要性はないが、ワクチン接種されるヒトの大きさに応じて変化する。現在、大部分のワクチンは注射針による筋肉内に投与され、これは標準的な経路として続く可能性が高い。しかし、典型的には経口または粘膜送達による粘膜免疫を誘導するワクチン製剤が開発されている。粘膜免疫を誘導するための送達システムの非常に広範な研究の1つは、コレラ毒素(CT)またはそのBサブユニットを含む。このタンパク質は、ワクチン製剤中に与えられると、粘膜免疫反応を促進し、IgA産生を誘導する。利点は、経口または経鼻ワクチンの送達が容易なことである。毒性を低下させるが免疫刺激能を保持した、他の細菌種由来の修飾された毒素、例えばグラム陰性菌またはブドウ球菌エンテロトキシン由来の修飾された易熱性毒素を用いて、同様の効果をもたらすことができる。これらの分子は粘膜投与に適している。
【0078】
ワクチンは、従来、非経口的に、注射により、例えば皮下または筋肉内に投与される。他の投与様式に適したさらなる製剤は、坐薬、及びいくつかの場合における経口製剤を含む。坐薬用に、従来の結合剤及びキャリアは、例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含んでよく、前記坐薬は、0.5%〜10%、好ましくは1〜2%の範囲の活性成分を含有する混合物から形成されてよい。経口製剤は、通常、用いられる賦形剤、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含有する。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放製剤、または粉末の形態をとり、有利には10〜95%、好ましくは25〜70%の活性成分を含む。
【0079】
多くの場合、ワクチンの反復投与が必要となる。特に、悪性のマイコバクテリアによる感染を予防するために及び/または確立したマイコバクテリアの感染を治療するために、またはあらかじめBCGワクチン接種したヒトを追加免疫するために、ワクチンを投与し得る。感染を予防するために投与される場合、感染の確実な臨床的徴候または症候が存在する前に、ワクチンを予防的に供与する。
【0080】
遺伝的多様性のために、異なる個体は、同じポリペプチドに対して種々の強さの免疫反応で反応し得る。従って、本発明によるワクチンは、免疫反応を増大させるためのいくつかの異なる融合ポリペプチド及び/またはポリペプチドを含有してもよい。前記ワクチンは、2つ以上の融合ポリペプチド、あるいは飢餓誘導ポリペプチドまたはその免疫原性部分を含有してよく、前記飢餓誘導抗原のすべてまたは融合ポリペプチドは前記に定義したとおりであり、またはすべてではないがいくつかのポリペプチドは悪性のマイコバクテリアに由来してよい。後者の例において、融合ポリペプチド用に、前記に示した基準を必ずしも満たさないポリペプチドは、それら自身の免疫原性により作用してもまたは単にアジュバントとして作用してもよい。
【0081】
ワクチンは1〜20、例えば2〜20、またはさらには3〜20の異なるポリペプチドまたは融合ポリペプチド、例えば3〜10の異なるポリペプチドまたは融合ポリペプチドを含有してよい。
【0082】
本発明はまた、悪性のマイコバクテリアによって引き起こされるTBに対し、ヒトを含む動物を免疫する方法であって、動物に本発明の融合ポリペプチド、または前記のような本発明のワクチン組成物、または前記の生ワクチンを投与する工程を含む方法に関する。好ましい実施態様において、動物またはヒトは、前記に定義したような免疫個体である。
【0083】
本発明はまた、本発明による免疫原性組成物の作製方法に関し、前記方法は本発明による融合ポリペプチドを調製、合成、または単離する工程、及びワクチン用に融合ポリペプチドを媒体中に溶解または分散させる工程を含み、場合によって他のM.ツベルキュロシス抗原及び/またはキャリア、媒体、及び/またはアジュバント物質を加える工程を含む。
【0084】
本発明の核酸フラグメントを、免疫原性ポリペプチドのin vivo発現を実施するのに使用し得、すなわち、参照として含まれるUlmer et al 1993に概説されているように、核酸フラグメントをいわゆるDNAワクチンとして使用し得る。
【0085】
規定されたDNAワクチン接種に使用される、融合ポリペプチドをコードするプラスミドDNAの構築及び調製において、E. coli等の宿主株を使用し得る。次いで、対象のプラスミドを有する宿主株を一晩培養し、例えば、エンドトキシン除去工程を含むQiagen Gigaプラスミドカラムキット(Qiagen, Santa Clarita, CA, USA)を用いて精製することによって、プラスミドDNAを調製することができる。DNAワクチン接種に用いられるプラスミドDNAは、エンドトキシンを有しないことが必須である。
【0086】
従って、本発明はまた、本発明による核酸フラグメントを含有するワクチンに関し、前記ワクチンは、ワクチンを投与されたヒトを含む動物によって免疫原性ポリペプチドのin vivo発現をもたらし、発現したポリペプチドの量は、ヒトを含む動物において、悪性のマイコバクテリアによって引き起こされる感染に対し、実質的に増大した抵抗性を与えるのに効果的である。
【0087】
前記DNAワクチンの有効性は、免疫反応を調節する能力を有するポリペプチドをコードするDNAフラグメントとともに、発現生成物をコードする遺伝子を投与することによって促進され得る。
【0088】
細胞性免疫反応を効果的に活性化するための1つの可能性は、非病原性微生物またはウイルスにおける関連免疫原性ポリペプチドを発現させることによって達成され得る。このような微生物の公知の例は、マイコバクテリウム・ボビスBCG、サルモネラ菌、及びシュードモナスであり、ウイルスの例は、ワクシニアウイルス及びアデノウイルスである。
【0089】
従って、本発明の別の重要な態様は、現在入手可能な生BCGワクチンの改良であり、ここで、前記に定義した1つ以上の融合ポリペプチドをコードするDNA配列の1つ以上のコピーは、微生物が前記融合ポリペプチドを発現且つ分泌できるように、前記微生物のゲノム内に組み込まれている。1コピーを超える本発明の核酸配列の組込みは、免疫応答を促進するように考慮されている。
【0090】
別の可能性は、弱毒化したウイルス、例えばワクシニアウイルスまたはアデノウイルスに、本発明による融合ポリペプチドをコードするDNAを組み入れることである(Rolph et al 1997)。組換えワクシニアウイルスは、感染した宿主細胞の細胞質または核酸の中に入ることができ、それによって、対象の融合ポリペプチドは、TBに対する防御を誘導するように想定されている免疫反応を誘導し得る。
【0091】
本発明はまた、D. Lowry(Lowry et al 1999)により例示された文献に記載されているような、本発明による融合ポリペプチドまたは核酸の治療用ワクチンとしての使用に関する。ワクチンとして投与される場合、実験動物におけるM.ツベルキュロシス感染の重症度を軽減する能力、または以前の感染の再活性化を抑制する能力に基づいて、治療特性を有する抗原を同定することができる。治療ワクチンに使用される組成物は、ワクチンに対して前記に記載したように調製され得る。
【実施例】
【0092】
[材料及び方法]
<動物>
Bomholtegaard、デンマークから得た、8〜16週齢の、メスの特定病原体未感染のC57BL/6xBalb/C FlまたはC57BL/6マウスを、免疫反応の分析及びCFU分析によって評価される防御の試験に使用した。感染試験をStatens Serum InstituteのBSL3施設において行った。動物を分離ケージに収容し、水と無菌食を不断給餌した。すべての動物は実験開始前に1週間の休養を許された。
【0093】
<組換え抗原調製物>
組換えAg85B-ESAT6(Hybrid1)を、以前に記載されたようにして作製した(Olsen, van Pinxteren et al. 2001)。要するに、Hisタグを付加したタンパク質を大腸菌XL-I Blueにおいて発現させ、Talonカラム、続いてHiTrap Qカラム(Pharmacia, Uppsala, スウェーデン)を用いたタンパク質陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによって精製した。希釈及び保存前に、サンプルを25mM HEPES緩衝液(pH8.0)−0.15M NaCl−10%グリセロール−0.01% Tween20に対して透析した。
【0094】
他の小さなマイコバクテリアタンパク質に対して以前に記載された方法(Skjot, Oettinger et al. 2000)と同じ方法によって、組換えRv2660cを作製した。要するに、全長Rv2660c遺伝子を、M.ツベルキュロシスゲノムDNAからPCR-増幅し、発現プラスミドpDest17中にサブクローニングした。組換えタンパク質を、大腸菌Bl21 blueにおいて産生し、実質的に以前に記載されているように(Theisen, Vuust et al. 1995)、ただし、8Mの尿素を含有するリン酸緩衝液を用いて、Ni+カラムによる金属イオンアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、精製後に尿素を除去した。
【0095】
Hybrid56(Ag85B-ESAT6-Rv2660c)、Hybrid32(Ag85b-ESAT6-Rv2031c)、HyVac21(Ag85a-TB10.4-Rv2660c)、及びHyVac28(Ag85b-TB10.4-Rv2660c)融合タンパク質を、メーカーの説明書に従って、部位特異的組換えによって発現ベクターpDest17(Invitrogen)中にクローニングした。
【0096】
前記融合タンパク質を、IPTGによる誘導後、大腸菌株BL21において発現させた。穏やかな界面活性剤(B-PER, Sigma)及び超音波処理による細胞の破砕後、4つすべての組換え融合タンパク質を封入体として回収した。洗浄した封入体を、pH4.9の20mM NaOAc+8M尿素中に溶解し、Qセファロースカラムに通して、エンドトキシンを捕捉した。回収した素通り物を、ビス−トリス緩衝液+8M尿素pH 6.5中に希釈し、pHを6.5に調整した。次いで、当該タンパク質をCMセファロースに通して不純物を捕捉した後、Qセファロースカラムで捕捉した。カラムをビス−トリス緩衝液pH6.5+3M尿素で洗浄した。結合しているタンパク質をNaClで溶出させた。次いで、タンパク質を、セファデックスカラムで25mMトリス−HCl pH 8及び10%グリセロールに緩衝液交換した。
【0097】
<ヒト認識−血清学>
20μLの大腸菌抽出物(S3761, Promega, Madison, WI)を200μLの血清サンプルに加え、次いで室温で4時間、撹拌しながらインキュベーションすることによって、ELISAにおける使用前に、交差反応性抗体からすべての血清を除去した。遠心分離(10.000×g、10分間)後、上清に0.05%のアジ化ナトリウムを加えた。ELISAを以下のように実施した。96ウェルのMaxisorp(Nunc, Roskilde, デンマーク)マイクロタイタープレートを、一晩4℃で、炭酸−重炭酸緩衝液(pH 9.6)中の1.0μg/mL(ウェル当たり100μL)の抗原で被覆した。次いで、プレートを0.05% Tween20を含有するPBS(PBS-T)で3回洗浄した。血清サンプルは、0.2% Tween20及び1.0%(wt/vol)ウシ血清アルブミンを含有するPBS(希釈緩衝液)中で1:100に希釈し、0.1mLの希釈血清を2通りで(in duplicate)ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。PBS-Tで3回洗浄した後、希釈緩衝液中で1:8000に希釈したペルオキシダーゼコンジュゲートウサギ抗ヒトIg(P212, DAKO, Glostrup, デンマーク)100μLとともに、プレートを1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tで3回洗浄し、テトラメチルベンジジン基質(TMB plus, Kem-En-Tec, ***, デンマーク)とともに30分間インキュベートし、1M H2SO4を加えることにより発色を停止させた。次いで、405nmにおける吸光度(OD405)を測定した。
【0098】
<ワクチン調製及び免疫付与操作>
最近記載されているように(Olsen, van Pinxteren et al. 2001)、総容量200μLの臭化ジオクタデシルアンモニウム(DDA, 250μg/用量, Eastman Kodak, Inc., Rochester, N. Y.)中に乳化した25μgのモノホスホリル脂質A(MPL, Corixa, WA, USA)で送達された5μgの組換えワクチン(Rv2659c, Rv2660c, Hybrid56, HyVac21, HyVac28、またはHybrid32のいずれか)でマウスを免疫した。当該ワクチン(0.2mL/マウス)を背中に2週間隔で3回皮下(s.c.)注射した。単回投与量のBCG Danish 1331(5×104細菌/マウス)を最初のサブユニットワクチン接種と同時に尾の基部に皮下注射し、追加免疫注射は行わなかった。負荷前(prechallenge)の免疫を、典型的に、血液リンパ球に関しては最初のワクチン接種の5及び7週間後に、及び脾細胞に関しては最初のワクチン接種の7週間後に評価した。
【0099】
<実験的感染及び臓器中の細菌計数>
防御のレベルを評価するために、最初の免疫化の10週間後に、肺当たり約100CFUのM.ツベルキュロシスErdmanを送達するように調整されたGlas-Col吸入曝露システムにおけるエアロゾル経路によってマウスを負荷した。2、6、12、または24週間後(Hybrid56)に、あるいは7、13、24、35、または44週間後(Hybrid32)にマウスを犠牲にし、細菌計数用に肺及び脾臓を取り除いた。臓器を無菌生理食塩水中で別々にホモジナイズし、1mL当たり2mgの2-チオフェン-カルボン酸ヒドラジドを補充したMiddlebrook 7HII寒天上で連続希釈物を平板培養し、試験臓器中の残存BCGの成長を選択的に阻害した。37℃におけるインキュベーションの2〜3週間後に、コロニーを数えた。
【0100】
<リンパ球培養>
完全RPMI(GIBCO, Grand Island, NY, 2mMグルタミン、各100U/mLペニシリン6-カリウム及びストレプトマイシン硫酸塩、0% FCS、及び50mM 2-MEを含有する)中の微細メッシュステンレススチールのふるいを介した浸溶(maceration)によって、臓器をホモジナイズした。血液リンパ球を、密度勾配(Cedarlane, Hornby, Ontario, カナダ)で精製した。細胞を各グループ中の5匹のマウスからプールし、5×10-5M 2-メルカプトエタノール、1mMグルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシン、5%(vol/vol)ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640培地200μLの容量中に2×105細胞を含有する、丸底マイクロタイターウェル(96ウェル;Nunc, Roskilde, デンマーク)中で、3通りで(in triplicate)培養した。マイコバクテリア抗原を、5〜0.2mg/mLの範囲の濃度で用いた。培養物を、10%CO2中で3日間、37℃でインキュベーション後、以下に記載するように、酵素免疫測定法(ELISA)によってガンマインターフェロン(IFN-γ)測定用に、上清100μLを取り除いた。
【0101】
<IFN-γ用の酵素免疫測定法(ELISA)>
IFN-γアッセイ用の市販キットを使用し、メーカーの指示に従って(Mabtech, AB.スウェーデン)、二重サンドイッチELISA法を用いて、培養上清の二重滴定法によりIFN-γの量を定量化した。サンプル中のIFN-γの濃度を、組換えIFN-γ(Life Technologies)から得られる標準曲線を用いて算出し、結果をpg/mLで表示した。2通りのものの間の差は、常に平均の10%未満であった。
【0102】
<実験的感染及びモルモットモデルにおけるワクチン有効性の評価>
Charles River Laboratories(North Wilmington, Mass.)から購入した非近交系のメスHartleyモルモットに、103CFUを1回、あるいは免疫化の間の3週間の休息時間を設けてDDA/MPL中に乳化したAg85b-ESAT6またはAg85b-ESAT6-Rv2660cのいずれか20μgの3回の用量で、BCGを皮内投与した。3回目の免疫化の6週間後、各モルモットの肺に約20の細菌を送達するように調整した装置(Glas-Col, Terre Haute, Ind.)を用いて、エアロゾルMTB負荷を行った。食物消費の変化、呼吸困難の徴候、及び行動変化について動物を毎日観察することによって、感染したモルモットの生存期間を測定した。さらに、疾患を示す数日にわたる持続的な体重の減少を観察するまで、動物を週一回の頻度で体重測定した。
【0103】
<実施例1:飢餓誘導抗原のヒト認識>
WHO結核試料バンクから提供されたウガンダの肺TB患者パネルにおいて、ヒト認識についてRv2660cを評価した。陰性及び陽性のHIV感染状況を有する両方の患者が含まれた(それぞれ、N==94 及び N=73)。コントロール群は、>90%の推定BCG普及率を有する100人の健常なデンマーク居住者のドナーから構成された。
【0104】
マイクロタイタープレートを、1.0μg/mL(ウェル当たり100μL)のRv2660cタンパク質で被覆し、100倍に希釈した血清サンプルとともにインキュベートし、ペルオキシダーゼコンジュゲートウサギ抗ヒトIg及び基質としてのテトラメチルベンジジンを用いて発色させた(結果を図1に示す)。
【0105】
(結論)
この調査において、飢餓誘導タンパク質認識を試験した。97%の感度を用いることによってコントロール群から決定した区切り線に基づき、HIV−症例の45%及びHIV+症例の61%においてTB感染を確認することができた。MTB感染の間に、Rv2660cタンパク質が発現し、免疫システムにより認識されることを明らかに示している。
【0106】
<実施例2:飢餓誘導抗原(Rv2659c)の曝露後の投与による、免疫原性及び再活性化の抑制>
細菌負荷を減少させ、検出レベルに近い細菌負荷を有する潜伏感染の段階に入るために、マウスをM.ツベルキュロシスに感染させ、抗体で処理した。感染の潜伏段階の間、アジュバント(例えば、DDA/MPL)中のRv2659cを用いて、2週間隔で3回、マウスをワクチン接種した。最終ワクチン接種の1週間後、Rv2659cを用いた刺激後、血液細胞をINF-γ分泌についてELISAにより分析した(図2)。
【0107】
<M.ツベルキュロシスの再活性化に対する防御を誘導するための、飢餓誘導タンパク質Rv2659cの能力>
潜伏M.ツベルキュロシスを有するマウスの群を、アジュバント(例えば、DDA/MPL)中に配合したRv2659cを用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種し、非ワクチン接種(潜伏感染した)マウスと比較した場合の肺及び脾臓からのコロニー形成単位(CFU)の減少によって、防御有効性を評価した。再活性化に対する防御を、ワクチン接種の3カ月後に評価した。Rv2659cは、再活性化した非免疫化の潜伏感染したマウスと比較して、肺の細菌レベルの3〜90倍の減少をもたらした(図3)。潜伏感染マウスにおいて、起こり得る病状進行へのRv2659cワクチン接種の影響を評価するために、組織病理学的検査用に、潜伏感染ワクチン接種マウスから肺組織を採取した。顕著なネクローシス、線維化、または鉱化(mineralisation)は病巣において検出されず、且つ炎症細胞の浸潤増大は観察されなかった。
【0108】
(結論)
この調査において、治療ワクチンとしての飢餓誘導タンパク質Rv2659cの潜在能を試験した。組合せアジュバントの臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム−モノホスホリル脂質A中で、マウスにRv2659cタンパク質を投与した場合、強い免疫反応が誘導され/促進された。免疫化は、肺における細菌負荷の0.5〜1.0logの低下をもたらした。従って、我々の調査は、曝露後ワクチン接種が、肺の免疫病状を引き起こすことなく、M.ツベルキュロシスの再活性化を低減または遅延させることを示唆している。
【0109】
<実施例3:飢餓誘導抗原Rv2660cによる、エアロゾルM.ツベルキュロシス感染に対する免疫原性及び防御>
アジュバント(例えば、DDA/MPL)中のRv2660cを用いて、2週間隔で3回、マウスをワクチン接種する。最終ワクチン接種の1週間後、Rv2660cを用いた刺激後、血液細胞をIFN-γ分泌についてELISAにより分析した(図4A)。最終ワクチン接種の3週間後、Rv2660cを用いた刺激後、脾臓細胞をIFN-γ分泌について分析し(図4B)、血液細胞を抗原特異的増殖反応について分析した(図4C)。
【0110】
アジュバント(例えば、DDA/MPL)中に配合したRv2660cを用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種したマウスの群を、M.ツベルキュロシスを用いたエアロゾル感染によって負荷し、非ワクチン接種マウスと比較した場合の、肺から単離されたコロニー形成単位(CFU)の減少によって防御有効性を評価した。ワクチン接種の12週間後に、防御を評価した。Rv2660cは、非免疫化感染マウスと比較して、肺の細菌レベルの1/2 log(10)の低下をもたらした(図5)。
【0111】
(結論)
この調査において、ワクチン抗原としての飢餓誘導タンパク質Rv2660cの潜在能を試験した。組合せアジュバントの臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム−モノホスホリル脂質A中で、マウスにRv2660cタンパク質を投与した場合、強い免疫反応が誘導された。免疫化は、肺における細菌負荷の約0.5 log(10)の低下をもたらした。
【0112】
<実施例4:飢餓誘導抗原の予防ワクチン(多相ワクチン)への融合>
三重融合タンパク質を用いた免疫化後の免疫反応
マウスの群を、アジュバント(例えば、DDA/MPL)中の融合ポリぺプチドHybrid56, HyVac21、またはHyVac28を用いて、2週間隔で2回、皮下にワクチン接種した。最終ワクチン接種の1週間後、1μg/mLの免疫化融合タンパク質または融合タンパク質中の単一の成分を用いた刺激後、血液細胞をINF-γ分泌について分析した(図6A−C)。Hybrid56を用いた最終ワクチン接種の3週間後、0.2、1、または5μg/mLの融合タンパク質中の単一の成分を用いた刺激後、脾臓細胞をINF-γ分泌についてELISAにより分析した(図6D)。最終ワクチン接種の3週間後、血液細胞を抗原特異的増殖反応について分析した(図6E)。
【0113】
<マウスにおけるM.ツベルキュロシス感染に対する防御を誘導するための、3つの融合ポリぺプチドの能力>
マウスの群を、アジュバント(DDA/MPL)中の融合ポリぺプチドHybridl, Hybrid56、及びHybrid32を用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種し、エアロゾル感染後の天然(非ワクチン接種)マウスと比較した場合の、肺及び脾臓からのコロニー形成単位(CFU)の減少によって防御有効性を評価した。防御に対するポジティブコントロールとして、BCG Danish 1331の単回投与量(5×104細菌/マウス)を、最初のワクチン接種と同時に尾の基部に皮下注射した(図7A及びB)。
【0114】
<モルモットにおける、エアロゾルM.ツベルキュロシス感染に対するポリぺプチドHybrid56(Ag85b-ESAT6-Rv2660c)の防御能力>
モルモットの群を、アジュバント(例えば、DDA/MPL)中の融合ポリぺプチドを用いて、3週間隔で3回、皮下にワクチン接種し、主に、各動物の体重を週一回の頻度で測定することによって防御有効性を評価した。防御に対するポジティブコントロールとして、BCG Danish 1331の単回投与量(5×104 細菌/マウス)を、最初のワクチン接種と同時に皮内(i.d.)注射した(図8)。結果を図8に生存曲線として示す。
【0115】
(結論)
この調査において、3つの融合ぺプチド(Hybrid56, HyVac21、及びHyVac28)の免疫潜在能を検討した。混合アジュバントの臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム−モノホスホリル脂質A中で、マウスに融合タンパク質を投与した場合、強い用量依存的な免疫反応が3つのすべての単一タンパク質成分に対して誘導され、多相ワクチンとしての潜在能を示した。例としてHybrid56を選択することにより、誘導された免疫反応は、時間とともに増大する高レベルの防御免疫力をともない、古典的なMTBワクチンであるマイコバクテリウム・ボビスBCGを用いて到達される防御レベルを明らかに超えるレベルに到達した。さらに、Rv2660cの代わりに古典的なMTB潜伏抗原Rv2031c(Ag85b-ESAT6-Rv2031c)を含む類似の三重融合タンパク質は、経時的に改良された防御を示さなかった。最後に、Hybrid56に対する高レベルの防御を、より感受性の高いモルモットモデルにおいて確認した。
【0116】
<実施例5:曝露後に(治療的に)投与される飢餓誘導抗原及び予防ワクチン(多相ワクチン)の融合物の活性>
細菌負荷を減少させ、低い細菌負荷での潜伏感染の段階に入るために、マウスをM.ツベルキュロシスに感染させ、抗体で処理した。感染の潜伏段階の間、アジュバント(例えば、DDA/MPL)中の融合ペプチドを用いて、2週間隔で3回、マウスをワクチン接種した。最終ワクチン接種の15週間後、0.2、1、または5μg/mLの融合タンパク質中の単一成分を用いた刺激後、血液細胞をINF-γ分泌についてELISAにより分析した(図9A)。
【0117】
<M.ツベルキュロシスの再活性化に対する防御を誘導するための融合ポリぺプチドの能力>
潜伏M.ツベルキュロシスを有するマウスの群を、アジュバント(例えば、DDA/MPL)中に配合された融合ポリぺプチドを用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種し、さらに非ワクチン接種(潜伏感染した)マウスと比較した場合の、肺からのコロニー形成単位(CFU)の減少によって、防御有効性を評価した。ワクチン接種から3カ月後に、再活性化に対する防御を評価した。融合ポリペプチドは再活性化の有意な低下を誘導し、再活性化された非免疫化潜伏感染マウスと比較して、肺の細菌レベルの減少をもたらした(図9B)。
【0118】
(結論)
この調査において、抗原Rv2660c、ESAT6(Rv3875)及び抗原85B(RvI886c)の融合タンパク質に基づいたツベルキュロシスサブユニットワクチンの、治療ワクチンとしての潜在能を検討した。混合アジュバントの臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム−モノホスホリル脂質A中で、マウスに融合タンパク質を投与した場合、強い免疫反応が誘導され/促進された。免疫化は、潜伏感染の再活性化の間の肺における細菌負荷の低下をもたらした。従って、我々の調査は、飢餓誘導抗原及び予防ワクチン(多相ワクチン)の融合による曝露後のワクチン接種が、M.ツベルキュロシスの再活性化を低減または遅延させることを示唆している。
【0119】
(参考文献)


【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1:ウガンダからのHIV陰性(TB+/HIV−)及びHIV陽性(TB+/HIV+)TB患者、並びにデンマークからの健常者(コントロール)についての、Rv2660c対する抗体反応。区切り線は、97%の特異性レベルを有するROC曲線解析に基づいた。観察された感度を、データのグラフ表示の上に示す。
【図2】図2:Rv2659cの免疫原性。Fl(Balb/cxC57BL/6)マウスの群を、DDA/MPL中のRv2659cを用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種した。最終ワクチン接種の1週間後、5μg/mLのRv2659cを用いた刺激後、PBMCsをINF-γ分泌についてELISAにより分析した。
【図3】図3:Rv2659cはM.ツベルキュロシスによる感染に対する防御を誘導する。Balb/c-C57BL/6マウスの群を、Rv2659cを用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種し、肺におけるCFU数の減少によって防御有効性を評価し、さらにワクチン接種の12週間後の非免疫化マウス及びBCG免疫化マウスと比較した。結果を、肺におけるlog10コロニー形成単位(CFU)として表す。当該結果は、実験群当たり6匹のマウスからの平均の結果である。
【図4】図4:Rv2660cの免疫原性。Fl(Balb/cxC57BL/6)マウスを、DDA/MPL中の組換えRv2660cタンパク質を用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種した。(A)最終ワクチン接種の1週間後、0.2、1、または5μg/mLのRv2660cを用いた刺激後、PBMCsをIFN-γ分泌についてELISAにより分析した。最終ワクチン接種の3週間後、0.2、1、または5μg/mLの組換えRv2660cを用いた刺激後、脾臓細胞(B)をINF-γ分泌についてELISAにより分析し、さらに0.2、1、または5μg/mLの組換えRv2660cを用いた刺激後、PBMCs(C)を増殖反応について分析した。
【図5】図5:Rv2660cによって誘導された、マイコバクテリウム・ツベルキュロシスによる感染に対する防御。Balb/c-C57BL/6マウスの群を、Rv2660cを用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種し、肺におけるCFU数によって防御有効性を評価し、エアロゾル感染の6週間後の非免疫化マウス及びBCG免疫化マウスと比較した。結果を、肺におけるlog10コロニー形成単位(CFU)として表す。当該結果は、実験群当たり6匹のマウスからの平均の結果である。ポジティブコントロールとして、BCG Danish 1331 (5×104細菌/マウス)の単回投与量を、最初のサブユニットワクチン接種と同時に、尾の基部に皮下注射し、追加免疫注射を行わなかった。
【図6】図6:Hybrid56, HyVac21、及びHyVac28の免疫原性。Fl(Balb/cxC57BL/6)マウスの群を、DDA/TDB(LipoVac)中の5μgのAg85b-ESAT6-Rv2660c(H56)、Ag85a-TB10.4-Rv2660c(H21)、またはAg85b-TB10.4-Rv2660c(H28)を用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種した。最終ワクチン接種の1週間後、1μg/mLの免疫化に用られる融合タンパク質Ag85b、TB10.4、またはRv2660c(図6A−C)を用いた刺激後、PBMCsをIFN-γ放出についてELISAにより分析した。Ag85b-ESAT6-Rv2660cを用いた最終ワクチン接種の3週間後、0.2、1、または5μg/mLの組換えAg85B、ESAT6、またはRv2660cを用いた刺激後、脾臓細胞(D)をINF-γ分泌についてELISAにより分析し、さらにPBMCs(E)を1μg/mLの同じ抗原に対する増殖反応について分析した。
【図7】図7:Hybrid56を用いた免疫化後のM.ツベルキュロシス感染に対する強い防御。(A)Balb/c-C57BL/6マウスの群を、Ag85B-ESAT6-Rv2660c(Hybrid56)を用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種し、肺におけるCFU数によって防御有効性を評価し、さらにエアロゾル感染の2、6、12、及び24週間後の非免疫化マウス及びBCG免疫化マウスと比較した。(B)B6マウスの群を、Ag85b-ESAT6(Hybrid1)またはAg85b-ESAT6-Rv2031c(Hybrid32)のいずれかを用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種し、肺におけるCFU数によって防御有効性を評価し、さらにエアロゾル感染の7、13、24、35、及び44週間後の非免疫化マウス及びBCG免疫マウスと比較した。結果を、肺におけるlog10コロニー形成単位(CFU)として表す。当該結果は、実験群当たり6匹のマウスからの平均の結果である。ポジティブコントロールとして、BCG Danish 1331(5×104細胞/マウス)の単回投与量を、最初のサブユニットワクチン接種と同時に、尾の基部に皮下注射し、追加免疫注射を行わなかった。
【図8】図8:カプラン−マイヤー生存曲線(n=7)。低用量のエアロゾルM.ツベルキュロシスの負荷後の、Ag85b-ESAT6-Rv2660c融合タンパク質を用いたモルモットの免疫付化は、生存期間をBCG免疫化動物のレベルまで延長させた。
【図9】図9:Hybrid56(Ag85b-ESAT6-Rv2660c)誘導免疫原性及び防御。Fl(Balb/cxC57BL/6)マウスを、DDA/MPL中のAg85b-ESAT6-Rv2660c(Hybrid56)を用いて、2週間隔で3回、皮下にワクチン接種した。最終ワクチン接種の10週間後、0.2、1、または5μg/mLのAg85B、ESAT6、またはRv2660c(図9A参照)を用いた刺激後、脾臓細胞をINF-γ分泌についてELISAにより分析した。肺におけるCFU数の減少によって防御有効性を評価し、免疫接種の10週間後、アジュバントコントロール免疫化マウスと比較した。結果を、実験群当たり12匹のマウスからの肺におけるlog10コロニー形成単位(CFU)として表す(図9B)。
【0121】
(配列表)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、及び86から選択される、1つ以上の飢餓誘導抗原またはポリペプチドの1つ以上のフラグメントを含有する融合ポリペプチドを含む、免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項2】
飢餓誘導ポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントが、ESAT6、Ag85B、TB10.4、及びAg85A、またはそれらの類似体に、任意の組み合わせ及び位置順序で融合している、請求項1に規定される融合ポリペプチドを含む免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項3】
予防的使用、治療的使用、多相ワクチンのための、または事前のBCGワクチン接種からの追加免疫のために使用される、請求項1または2に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項4】
皮内に、経皮的に、皮下に、筋肉内に、または粘膜に投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項5】
融合ポリペプチドが、2つの異なる免疫原性ポリペプチドまたはそれらの類似体を含有する、請求項2に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項6】
融合ポリペプチドが、3つの異なる免疫原性ポリペプチドまたはそれらの類似体を含有する、請求項2に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項7】
融合ポリペプチドが、4つの異なる免疫原性ポリペプチドまたはそれらの類似体を含有する、請求項2に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項8】
Xが飢餓誘導抗原のいずれかであり、且つ抗原単位の順序が、例えば順序が逆であるまたはXが中間に位置するなどの任意の組み合わせであってよい、ESAT6-Ag85A-X、ESAT6-Ag85B-X、Ag8A-X、Ag85B-X、TB10-Ag85A-X、TB10-Ag85B-Xと組み合わせた融合ポリペプチドを含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項9】
任意の順序のポリペプチド単位で、以下の融合ポリペプチド:
Ag85B-ESAT6-Rv2660c;
Ag85B-ESAT6-Rv2659c;
Ag85B-TB10.4-Rv2660c;
Ag85B-TB10.4-Rv2659c;
Ag85B-Rv2660c;
Ag85B-Rv2659c;
Ag85A-Rv2660c;
Ag85A-Rv2659c;
Ag85A-ESAT6-Rv2660c;
Ag85A-ESAT6-Rv2659c;
Ag85A-TB10.4-Rv2660c;
Ag85A-TB10.4-Rv2659c;
Rv2660c-Rv2659c;
Ag85B-ESAT6-Rv2660c-Rv2659c;
またはそれらの類似体をコードするアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項8に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に規定される融合ポリペプチド。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に規定される融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する核酸フラグメントを含む、ワクチンまたは製薬組成物。
【請求項12】
予防的使用、治療的使用、またはその両方、多相ワクチンのための、あるいは事前のBCGワクチン接種からの追加免疫のために使用される、請求項11に記載のワクチンまたは製薬組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に規定される融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する核酸フラグメントを含む、ワクチンまたは製薬組成物。
【請求項14】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、及び86から選択される、1つ以上の飢餓誘導抗原またはポリペプチドの1つ以上のフラグメントを含有する、免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項15】
予防的使用、治療的使用、多相ワクチンのための、または事前のBCGワクチン接種からの追加免疫のために使用される、請求項14に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項16】
皮内に、経皮的に、皮下に、筋肉内に、または粘膜に投与される、請求項14または15に記載の免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物。
【請求項17】
飢餓誘導抗原またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含有する核酸フラグメントを含む、ワクチンまたは製薬組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に規定される免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を動物に投与する工程を含む、動物の免疫化方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に規定される免疫原性組成物、ワクチン、または製薬組成物を動物に投与する工程を含む、悪性のマイコバクテリウムによって引き起こされる活動性または潜伏性の結核を有する動物の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−543890(P2008−543890A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517321(P2008−517321)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000356
【国際公開番号】WO2006/136162
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507419068)ステイテンス・セラム・インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】