説明

改良された診断試験装置

検定プロセスにおいて用いる装置は、多孔性の基部(18)を有する複数のウェル(14)を備えた前培養チャンバ(10)を含む。前培養チャンバ(10)は、多孔膜(32)を上部に担持し且つ吸収材料体(36)に接触したハウジング(12)に取付可能である。捕捉検体のパターンが多孔膜(32)上に担持されている。前培養チャンバの下面(20)から突き出たピンが、ハウジングの頂部の角部に設けられた穴の中に配置され、捕捉検体が前培養チャンバのウェルの基部の下に配置されるようにチャンバハウジングがハウジングの頂部の設定位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された診断試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素免疫検定法(ELISA)は、抗原に対して特異な抗体またはその特異抗体に結合する抗免疫グロブリン(anti-Ig)のいずれかに化学的に結合された酵素によって抗原または抗体を検出する、周知の検定法である。抗原または検出される抗体のいずれかが、小さなコンテナの表面またはプラスチックビーズに取り付けられ、特異抗体が結合できるようになる。結合される量は、加水分解時に発色する酵素用の基質を添加することによって実質的に測定される。
【0003】
通常のELISAの手順に含まれる工程は、標的抗原でコーティングしたプレートが利用可能である場合、以下の通りである:
1)サンプルおよび標準物質を希釈し、希釈したサンプルをマイクロウェルアレイプレート上で分割(アリコート化)する;
2)マイクロウェルアレイプレートを周囲温度または37℃までの温度で10分〜2時間培養する;
3)結合されていない検体および/または妨害物質が完全に除去されるように、プレートを厳密に洗浄してサンプルを除去する;
4)次に、希釈された一次抗体を添加する。通常、非接合型であるが、場合によっては、マーカープローブを直接担持している;
5)工程2(プレートの培養)を繰り返す;
6)工程3(洗浄工程)を繰り返す;
7)工程4で非接合型の一次抗体を添加した場合、マーカープローブに接合された二次抗体を添加する;
8)二次抗体を添加した場合、培養工程を繰り返す;
9)二次抗体を添加した場合、洗浄工程を繰り返す;
10)マーカープローブが酵素である場合、マーカープローブ用の基質を添加する;
11)特定の時間間隔で停止試薬(stopping reagent)を添加する。時間間隔は、二次抗体結合の性質に応じて変化し得る;
12)専用のプレート読取装置を用いて結果を測定する。
【0004】
培養工程を10分に制限し得且つ一次抗体をプローブに接合させた理想的なELISA分析において、上記手順を実施するのに最小で7工程、少なくとも30分の時間が必要である。より典型的には、上記手順を完了するのに11工程必要であり、2.5〜3時間かかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一定の計量精度を達成しつつ診断試験時間を短縮した診断試験装置を提供することを目的とする。
【0006】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、記事などの説明は、本発明の技術背景を提供するためのものに過ぎない。これらのいずれかまたは全てが、従来技術の基礎を構成するとか、本発明に関連する技術分野において本出願の各請求項の優先日以前に存在した一般に公知の事項であるなどと認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面において、検定プロセスにおいて用いる装置であって、
多孔性の基部を有するウェルを複数有する前培養チャンバと、
多孔膜を上部に担持し且つ吸収材料体に接触したハウジングとを備え、
捕捉検体のパターンが前記多孔膜上に担持され、捕捉検体が前記前培養チャンバの前記ウェルの前記基部の下に配置されるように前記前培養チャンバを前記ハウジングの頂部に配置する手段をさらに含むことを特徴とする装置が提供される。
【0008】
前記ハウジングは、前記前培養チャンバから分離されていてもよい。あるいは、前記ハウジングは、前記ウェルの前記多孔性の基部が前記膜に向かう方向および前記膜から離れる方向に移動可能である構成となるように、前記前培養チャンバに取り付けられてもよい。
【0009】
典型的には、前記分離したハウジングは、前記膜および前記吸収材料体が配置された矩形のフレームを規定する。前記膜もまた矩形であり且つ前記フレームとサイズおよび形状が略同一であり、そのことにより、前記フレームに挿入された場合、前記フレームの位置が前記膜の位置を規定するように構成されている。
【0010】
前記捕捉検体は、印刷によって、前記多孔膜上に、ストリップ状、列状、またはドットからなるアレイ状に配置されていてもよい。各ストリップは、狭い間隔で設けられた異なる捕捉検体からなる複数の列を含み、使用時に、各ウェルを用いて複数の試薬について同時に試験できるように構成されていてもよい。
【0011】
前記多孔性の基部は、フリットまたは多孔プラグを備えていてもよい。前記プラグは、前記前培養チャンバの下面より下側に突き出ていてもよい。
【0012】
前記前培養チャンバを前記ハウジングの頂部に配置する手段は、前記前培養チャンバの角部の下面から突き出たピンと、前記ハウジングの角部に設けられた前記ピンに対応する穴とを含んでもよい。
【0013】
診断装置および方法を説明するために当該技術分野において使用される用語は紛らわしく、いくつかのケースでは、試験の異なる構成要素を説明するのに同じ用語が用いられ得る。誤解を避けるため、上記説明において、説明に用いた以下の用語は次のように定義される。「試薬(reagent)」は、検定によって検出される化合物タンパク質またはその他の試薬を指す。「捕捉検体(capture analyte)」は、膜に結合され且つ試薬が結合する化合物を指す。「検出検体(detection analyte)」は、試薬に結合し且つトレーサーを担持する化合物若しくはその存在が可視光下であるか蛍光下であるかに拘わらず検出され得る(通常は視覚的に検出され得る)その他の元素を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の特定的な実施形態を、添付の図面を参照しつつ、例示のみにより説明する。
【0015】
図面を参照すると、図1は、診断装置の2つの構成部分、すなわち、前培養チャンバ10およびフロースルーカセット12の形態を有するハウジングを示す。前培養チャンバは、プラスチック材料からモールド形成された矩形のブロック11の形態であり、96個のウェル14(各列8個のウェル×12列)を有している。図3および図3aを参照すると、各ウェルは、略円筒の形状を有し、円筒の深さ方向の大部分において略一定の円形の断面を有すると共に、ウェルがくびれた小径部16を有している。小径部16よりも下には、多孔プラグの形態のポリエチレンフリット18が嵌め込まれている。プラグ18の最下部は、ブロック11の下面20よりも下に突き出ている。図1から最もよくわかるように、ピン22が前培養チャンバ10の各角部から突き出ている。
【0016】
フロースルーカセット12は、プラスチック材料からモールド形成されたブロックを含む。このブロックは、4つの隆起した領域を有しており、これらの領域は、矩形の膜/パッドアセンブリ32を受け取って配置するように設けられた矩形フレームの4つの側部24,26,28,30を規定している。前培養チャンバの各角部には、穴34が設けられている。これらの穴は、前培養チャンバ10の突出したピン22を収容するように配置・構成されている。
【0017】
図2を参照すると、パッド/膜アセンブリ32は、吸収材パッド34および印刷されたニトロセルロース膜36を備えている。吸収材パッド34は、通常、吸収紙から形成される。抗体(捕捉検体)の8つのストリップ38が膜の上面に設けられている。これらは、シリンジポンプを用いて膜上に印刷されている。各ストリップは、抗体の列を緊密な間隔で3列有しており、合計で、24列の抗体が設けられている。3つの抗体からなる各ストリップは、異なる捕捉検体からなる3つの列を含み、各ストリップは、同じ3つの捕捉検体を含んでいる。各ストリップは、異なる試薬を検出する。より多くの試薬を検出するために、より多くのストリップを用い得る。
【0018】
ニトロセルロース膜は、接着剤を用いてパッド34に取り付けられる。図2に示すように、接着剤40の列がパッドの上側表面に設けられている。接着剤の列は、検定の結果に影響を及ぼさないように、膜をパッド上に接着する際に、印刷された抗体のストリップ38のいずれかの側に配置される。接着剤の列は、シリンジポンプを用いてパッド34上に印刷してもよい。
【0019】
図4を参照すると、使用時、診断試験によって検出される試薬と検出検体、すなわちコロイド状の免疫金コンジュゲートとを含むサンプルを、自動液体取扱手段を用いて前培養チャンバのウェル14に投入する。その後、検出検体がサンプル中の任意の試薬に結合した状態で、短時間の前培養工程を行う。この工程は通常2分間行われる。
【0020】
コロイド状の免疫金コンジュゲートを添加する代わりに、サンプルが免疫金を抽出し、膜36に接触するように流通し得るように、プラグ18上またはプラグ上方の接触している層内にコンジュゲートを固定化し得る。
【0021】
次に、ピン22および穴34を用いて前培養チャンバ10をフロースルーカセット12に嵌め合わせて、抗体のストリップがウェルの基部を規定するプラグ18の下に配置されるように、チャンバを確実に正確な位置に配置する。これを図4に示す。この段階において、前培養チャンバのウェルの基部に設けられている多孔プラグ18は、ニトロセルロース膜36に接触し、前培養チャンバのウェル内のサンプルが吸収材パッド32によって吸い上げられる。印刷されたニトロセルロース膜上の抗体に結合された試薬は、サンプルが吸収材パッド内に吸い上げられると、それら抗体によって捕捉される。
【0022】
サンプルの濾過を行った後、慎重に制御された量の洗浄緩衝液を分割して前培養チャンバのウェル内に投入する。その後、ハウジング10を取り外し、専用の読取装置内にフロースルーカセットを配置して、検定の結果を確認する。
【0023】
上記のプロセスでは、工程が合計で7工程しかなく、プロセスは約8分で行われる。免疫金コンジュゲートをプラグ18上に固定化する変形例では、コロイド状の免疫金コンジュゲートをサンプルに添加する工程が省略され、約10〜20秒の短い時間が短縮される。
【0024】
上記プロセスは、1.5〜2時間かかる通常のELISA試験測定と同等でありながら、大幅な時間短縮を提供する。
【0025】
ELISA法よりも優れているさらなる利点は、複数の捕捉検体の列をストライプ状に設けることによって、1つのウェル内に複数の検体を検出し得る点にある。例えば、図2に示す印刷されたニトロセルロース膜には、各ウェルに対して3列の検体列が示されている。
【0026】
ある変形例において、前培養チャンバのウェル内のサンプルが零れる可能性を低減し、且つ、跳ね返りの可能性を低減するために、プロセスの間、前培養チャンバ10を覆うようにスナップ嵌め可能なカバー(図示せず)を設けてもよい。
【0027】
さらなる変形例において、過剰な材料を前培養チャンバ10の下側から吸引する手段を設けることも考えられる。例えば、底部プレート12は、真空ポンプに取り付けられ得る多孔膜の下に空間を設けるように設計してもよい。
【0028】
当業者は、概説した本発明の趣旨および範囲から逸れることなく、具体的な実施形態に示すように、本発明に対してさまざまな改変および/または修正を行い得ることを理解する。したがって、本明細書に記載の実施形態は、あらゆる点について、本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではないと理解されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】診断試験装置の前培養チャンバおよびフロースルーカセットを示す図である。
【図2】フロースルーカセットに担持される吸収材パッド/膜を示す図である。
【図3】前培養チャンバの垂直断面を示す図である。
【図3a】図3の断面図の一部を拡大した図である。
【図4】前培養チャンバをフロースルーカセットに嵌め合わせる様子を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検定プロセスにおいて用いる装置であって、
多孔性の基部を有するウェルを複数有する前培養チャンバと、
多孔膜を上部に担持し且つ吸収材料体に接触したハウジングとを備え、
捕捉検体のパターンが前記多孔膜上に担持され、捕捉検体が前記前培養チャンバの前記ウェルの前記基部の下に配置されるように前記前培養チャンバを前記ハウジングの頂部に配置する手段をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1の装置において、
前記ハウジングは、前記前培養チャンバから分離されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1の装置において、
前記ハウジングは、前記ウェルの前記多孔性の基部が前記膜に向かう方向および前記膜から離れる方向に移動可能である構成となるように、前記前培養チャンバに取り付けられることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2の装置において、
前記分離したハウジングは、前記膜および前記吸収材料体が配置された矩形のフレームを規定し、前記膜もまた矩形であり且つ前記フレームとサイズおよび形状が略同一であり、そのことにより、前記フレームに挿入された場合、前記フレームの位置が前記膜の位置を規定するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載の装置において、
前記捕捉検体は、印刷によって、前記多孔膜上に、ストリップ状、列状、またはドットからなるアレイ状に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5の装置において、
各ストリップは、狭い間隔で設けられた異なる捕捉検体からなる複数の列を含み、使用時に、各ウェルを用いて複数の試薬について同時に試験できるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
前記請求項のいずれかに記載の装置において、
前記多孔性の基部は、前記前培養チャンバの下面より下側に突き出たフリットまたは多孔プラグを備えていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項2および請求項7〜4(請求項2に従属する場合)のいずれか1つに記載の装置において、
前記前培養チャンバを前記ハウジングの頂部に配置する手段を備え、前記手段は、前記前培養チャンバの角部の下面から突き出たピンと、前記ハウジングの角部に設けられた穴とを含むことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3a】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−531532(P2007−531532A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506612(P2007−506612)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000490
【国際公開番号】WO2005/098432
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(503352291)プロテオム システムズ インテレクチュアル プロパティ プロプライエタリー リミテッド (8)
【Fターム(参考)】