説明

改良型ビード付きタイヤ

タイヤであって、2つのビード(20)、クラウンに合体する2つのサイドウォール(30)及びビードからサイドウォールを通ってクラウンまで延びる少なくとも1本のカーカス補強材(60)を有し、カーカス補強材は、各ビード内に到来部分(61)及び巻き上げ部分(62)を形成するように環状補強構造体(70)周りの上曲がり部によって2つのビード内に繋留され、各ビードは、ビードフィラー(110)及び外側バンド(120)を有し、外側バンドは、カーカス補強材とビードフィラーの両方の軸方向外側に配置され、ビードフィラー(110)及び外側バンド(120)により形成される組立体は、厚さE(r)を有し、rは、カーカス補強材の到来部分に垂直な方向とカーカス補強材との交点から環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所(71)までの距離であり、種々の位置の厚さE(r)は、タイヤの半径方向高さHの15%以上且つ50%以下の距離rの範囲内において、厚さの変化率が少なくとも5mmにわたって−0.25mm/mm以下であるようなものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車用のタイヤ、特にこれらタイヤのビードに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車用のタイヤは、通常、ホイールリムと接触関係をなすよう設計されている2つのビードを有し、各ビードは、少なくとも1つの環状補強構造体及びビードフィラーを有し、ビードフィラーは、環状補強構造体の半径方向外側に位置し、
ビードの半径方向外方に向かう延長部としての2つのサイドウォールを有し、2つのサイドウォールは、トレッドを載せたクラウン補強材を含むクラウンに合体し、
ビードからサイドウォールを通ってクラウンまで延びる少なくとも1本のカーカス補強材を有し、カーカス補強材は、複数本のカーカス補強要素を含む。極めて多くの場合、カーカス補強材は、各ビード内に「到来部分」及び「巻き上げ部分」を形成するように環状補強構造体周りの上曲がり部によって2つのビード内に繋留される。ビードフィラーは、少なくとも部分的にカーカス補強材の到来部分と巻き上げ部分との間に配置されている。
【0003】
米国特許第5526863号明細書は、ビードを軽量化すると共にこのようなタイヤの転がり抵抗を向上させる目的で特別なビードの提供を教示している。この米国特許明細書に開示されたタイヤは、ビードフィラーを有し、このビードフィラーは、先細になった半径方向断面の第1の部分を有し、第1の部分は、半径方向外側に向かって次第に細くなり、その後、第1の部分は、幅がほぼ一定の半径方向断面を備えた第2の部分になり、第2の部分は、第1の部分の半径方向外側に配置され、第2の部分は、先細になっている半径方向断面を備えた第3の部分になり、第3の部分は、第2の部分の半径方向外側に位置している。
【0004】
ビードフィラーは、ビードの環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所の半径方向外側にこの箇所からタイヤの半径方向高さHの30%以上である半径方向距離まで半径方向外方に延びている。
【0005】
各ビードは、カーカス補強材とビードフィラーの両方の軸方向外側に配置された外側バンドを更に有する。この外側バンドは、ビードの環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所からタイヤの半径方向高さHの20%以下の距離のところに位置した半径方向内端から半径方向外端まで半径方向外側に向かって延び、外側バンドの半径方向外端から外側バンドの半径方向内端までの半径方向距離は、タイヤの半径方向高さHの40%以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5526863号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この米国特許の発明以来、原油価格の上昇及び消費者の環境上の意識の高まりにより、タイヤの転がり抵抗を減少させる必要性が一段と増大した。というのは、タイヤの転がり抵抗は、燃料消費量に直接的な影響を及ぼすからである。米国特許第5526863号明細書に記載されたタイヤで得られる転がり抵抗の減少は、もはや十分ではなくなっている。
【0008】
本発明の目的の1つは、転がり抵抗が極めて小さい乗用車用タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、タイヤであって、
ホイールリムと接触関係をなすよう設計されている2つのビードを有し、各ビードは、少なくとも1つの環状補強構造体を有し、
ビードの半径方向外方に向かう延長部としての2つのサイドウォールを有し、2つのサイドウォールは、トレッドを載せたクラウン補強材を含むクラウンに合体し、
ビードからサイドウォールを通ってクラウンまで延びる少なくとも1本のカーカス補強材を有し、カーカス補強材は、複数本のカーカス補強要素を含み、カーカス補強材は、各ビード内に到来部分及び巻き上げ部分を形成するように環状補強構造体周りの上曲がり部によって2つのビード内に繋留され、各巻き上げ部分は、半径方向外側に向かってビードの環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所から半径方向距離DRRのところに位置する端まで延び、半径方向距離DRRは、タイヤの半径方向高さHの15%以上であるようなタイヤによって達成される。
【0010】
各ビードは、ビードフィラーを有し、ビードフィラーは、環状補強構造体の半径方向外側に位置すると共に少なくとも部分的にカーカス補強材の到来部分と巻き上げ部分との間に配置される。ビードフィラーは、ビードの環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所の半径方向外側に該箇所から半径方向距離DRBにわたって延び、半径方向距離DRBは、タイヤの半径方向高さHの20%以上である。
【0011】
各ビードは、カーカス補強材とビードフィラーの両方の軸方向外側に配置された外側バンドを更に有し、各外側バンドは、ビードの環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所から距離DRIのところに位置した半径方向内端から半径方向外端まで半径方向外側に向かって延び、DRIは、タイヤの半径方向高さHの20%以下であり、外側バンドの半径方向外端から外側バンドの半径方向内端までの半径方向距離DRLは、タイヤの半径方向高さHの25%以上(好ましくは30%以上)である。
【0012】
ビードフィラー及び外側バンドにより形成される組立体は、厚さE(r)を有し、この厚さは、カーカス補強材の到来部分に垂直な方向と組立体との交差長さに相当し、rは、カーカス補強材の到来部分に垂直な方向とカーカス補強材との交点から環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所までの距離である。厚さE(r)は、距離rの関数として変化し、タイヤの半径方向高さHの15%以上且つ50%以下の距離rの範囲(変形例として、20mm以上且つ50mm以下の距離rの範囲)内において、厚さの変化率

は、少なくとも5mmにわたって−0.25mm/mm(好ましくは−0.3mm/mm)以下である。
【0013】
有利な実施形態では、アスペクト比Emax/DRL(Emaxは、カーカス補強材の到来部分に直角に測定され、DRLは、外側バンドの半径方向高さである)は、10%以上である。
【0014】
特定の一実施形態では、ビードフィラーは、先細になった半径方向断面の第1の部分を有し、第1の部分は、半径方向外側に向かって次第に細くなり、その後、第1の部分は、幅がほぼ一定の半径方向断面を備えた第2の部分になり、第2の部分は、第1の部分の半径方向外側に配置され、第2の部分は、先細になっている半径方向断面を備えた第3の部分になり、第3の部分は、第2の部分の半径方向外側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】先行技術のタイヤを示す図である。
【図2】先行技術のタイヤの部分斜視図である。
【図3】先行技術のタイヤの1/4の半径方向断面図である。
【図4】タイヤの高さHの求め方を示す図である。
【図5】図3の細部を示す図である。
【図6】本発明の実施形態としてのタイヤの一部分の半径方向断面図である。
【図7】本発明の実施形態としてのタイヤの一部分の半径方向断面図である。
【図8】本発明の実施形態としてのタイヤの一部分の半径方向断面図である。
【図9】ビードフィラー及び外側バンドで形成された組立体厚さの求め方を示す図である。
【図10】ビードフィラー及び外側バンドで形成された組立体の厚さの求め方を示す図である。
【図11】ビードフィラー及び外側バンドで形成された組立体の厚さが距離の関数としてどのように変化するか及びその変化率又は変分を示す図である。
【図12】ビードフィラー及び外側バンドで形成された組立体の厚さが距離の関数としてどのように変化するか及びその変化率又は変分を示す図である。
【図13】本発明のタイヤで得られた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「半径方向」という用語を用いる際、当業者の間で用いられるこの言葉の数種類の異なる使い方を区別することが重要である。まず第1に、この表現は、タイヤの半径を意味している。この意味では、点P1が点P2よりもタイヤの回転軸線の近くに位置する場合、点P1は、点P2の「半径方向内側」に位置すると呼ばれる。これとは逆に、点P3が点P4よりもタイヤの回転軸線から見て遠くに位置する場合、点P3は、点P4の「半径方向外側」に位置すると呼ばれる。半径方向距離について説明している場合、このような用語についてもこの意味が当てはまる。「半径方向内側に向かって」という表現は、小さな半径に向かうことを意味し、「半径方向外側に向かって」という表現は、大きな半径に向かうことを意味する。
【0017】
しかしながら、細線又は補強材は、細線又は補強材の補強要素が周方向と80°以上且つ90°以下の角度をなす場合に「半径方向」と呼ばれる。注目されるべきこととして、本明細書においては、「細線」という用語は、最も広い意味に解されなければならず、細線は、細線の構成材料又はゴムとのその結合性を促進するために被着される被膜とは無関係に、モノフィラメント、マルチフィラメント、コード、ヤーン(糸)又はこれらと同等の集成体の形態をした細線を含む。
【0018】
最後に、「半径方向断面」という用語は、この場合、タイヤの回転軸線を含む平面に沿って取った断面を意味している。
【0019】
「軸方向」は、タイヤの回転軸線に平行な方向である。点P5が点P6よりもタイヤの中間平面の近くに位置する場合、点P5は、点P6の「軸方向内側」に位置すると呼ばれる。これとは逆に、点P7が点P8よりもタイヤの中間平面から見て遠くに位置する場合、点P7は、点P8の「軸方向外側」に位置すると呼ばれる。タイヤの「中間平面」は、タイヤの回転軸線に垂直であり且つ各ビードの環状補強構造体から等距離のところに位置する平面である。
【0020】
「周方向」は、タイヤの半径と軸方向の両方に対して垂直な方向である。
【0021】
「たが掛け補強材」又は「たが掛け層」(これは、「ブレーシング層(bracing layer)」とも呼ばれている)は、タイヤが高速で転動しているとき、クラウン補強材が膨張するのを阻止する周方向に整列した補強細線から成る層(フープに類似している)である。
【0022】
本明細書における説明の目的上、「ゴムコンパウンド」という用語は、少なくとも1種類のエラストマー及び少なくとも1種類のフィラーを含むゴムコンパウンドを意味している。
【0023】
図1は、先行技術のタイヤ10の略図である。タイヤ10は、トレッド40を載せたクラウン補強材(図1では見えない)を含むクラウンと、クラウンから半径方向内側に向かって延びる2つのサイドウォール30と、サイドウォール30の半径方向内側に設けられた2つのビード20とを有している。
【0024】
図2は、先行技術のタイヤ10の概略部分斜視図であり、図2は、このタイヤの種々のコンポーネントを示している。タイヤ10は、ゴムコンパウンドで被覆された細線61から成るカーカス補強材60と、各々がタイヤ10をホイールリム(図示せず)上に取り付けた状態に保持する環状補強構造体70を含む2つのビード20とを有している。カーカス補強材60は、ビード20の各々に繋留されている。タイヤ10は、2枚のプライ80,90を含むクラウン補強材を更に有している。各プライ80,90は、各層中で平行であり且つ一方の層から他方の層にクロス掛けされていて、周方向と10°〜70°の角度をなすフィラメント状補強要素81,91によって補強されている。タイヤは、クラウン補強材の半径方向外側に配置されたたが掛け補強材100を更に有している。このたが掛け補強材は、周方向に差し向けられると共に螺旋の状態に巻かれた補強要素101で構成されている。トレッド40がたが掛け補強材上に配置されており、タイヤ10と路面の接触をもたらすのは、このトレッド40である。図示のタイヤ10は、「チューブレス」タイヤであり、このタイヤは、インフレーションガスに対して不透過性であると共にタイヤの内面を覆うゴムコンパウンドで作られている内側ライナ50を有する。
【0025】
図3は、先行技術のタイヤの1/4の概略半径方向断面図である。タイヤ10は、ホイールリム(図示せず)と接触関係をなすよう設計された2つのビード20を有し、各ビード20は、少なくとも1つの環状補強構造体、この場合、ビードワイヤ70を有している。ビード20の半径方向外方の延長部として2つのサイドウォール30が設けられ、これらサイドウォール30は、補強材の第1の層80及び補強材の第2の層90で構成されたクラウン補強材を含むクラウン25に合体し、これら層の上には半径方向にトレッド40が載っている。各補強材層は、ゴムコンパウンドのマトリックスで被覆されているフィラメント状補強材から成る。各補強材層中の補強材は、互いにほぼ平行であり、2つの層の補強材は、いわゆるラジアルタイヤの技術分野における当業者には周知のように約20°の角度をなして一方の層から他方の層にクロス掛けされている。
【0026】
タイヤ10は、ビード20からサイドウォール30に沿ってクラウン25まで延びるカーカス補強材60を更に有する。このカーカス補強材60は、この場合、ほぼ半径方向に差し向けられたフィラメント状補強材から成り、このことは、フィラメント状補強要素が周方向と80°以上且つ90°以下の角度をなすことを意味している。
【0027】
カーカス補強材60は、複数本のカーカス補強要素を含み、カーカス補強材は、各ビード20内に到来部分61及び巻き上げ部分62を形成するようにビードワイヤ70周りの上曲がり部によって2つのビード20内に繋留されている。到来部分61と巻き上げ部分62との間の境界部は、カーカス補強材60とタイヤの回転軸線に垂直であり且つビード内のカーカス補強材60の半径方向最も内側の箇所を含む平面の交差部のところに位置すると考えられる。巻き上げ部分は、半径方向外側に向かってビードの環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所71から半径方向距離DRRのところに位置する端63まで延び、半径方向距離DRRは、タイヤの半径方向高さHの15%以上である。
【0028】
タイヤの「半径方向」高さHは、タイヤ10をホイールリム5(図4に示されている)に取り付けてその使用圧力までインフレートさせたとき、ビード20の環状補強構造体70の半径方向最も内側の箇所71とトレッド40の半径方向最も内側の箇所41(図4)との間の半径方向距離であると定義される。
【0029】
各ビードは、ビードフィラー110を更に有し、ビードフィラーは、ビードワイヤ70の半径方向外側に位置し、その大部分は、カーカス補強材60の到来部分61と巻き上げ部分62との間に位置している。
【0030】
図5は、図3に見えるタイヤのビードフィラーを示している。ビードフィラーは、テーパした半径方向断面の第1の部分111を有している。この第1の部分111は、半径方向外側に向かって次第に細くなり、その後、第2の部分112になり又はこれに合体し、ここでは、その半径方向断面は、これが第2の部分112の長さに沿う変化が5%未満であるという意味でほぼ一定の軸方向幅LAを有する。第2の部分は、第1の部分111の半径方向外側に位置し、この第2の部分は、先細になっている半径方向断面を備えた第3の部分113になり又はこれに合体し、この第3の部分は、第2の部分112の半径方向外側に位置している。
【0031】
ビードフィラーは、ビードの環状補強構造体の半径方向最も内側の箇所71の半径方向外側にこの箇所から半径方向距離DRBにわたって延び、半径方向距離DRBは、タイヤの半径方向高さHの20%以上である。この場合、ビードフィラー110は、タイヤの赤道までずっと延びている。本明細書における説明の目的上、タイヤの「赤道」は、カーカス補強材の最も大きな軸方向広がりの箇所の半径方向高さである。タイヤの半径方向断面で見て、赤道は、タイヤをホイールリムに取り付けてこれをインフレートさせたときにカーカス補強材がその最も大きな軸方向幅を持つ箇所を通る真っ直ぐな軸方向線として現われる。カーカス補強材が数箇所でこの最も大きな軸方向幅に達すると、タイヤの中間高さH/2の最も近くの箇所の半径方向高さがタイヤの赤道であると見なされる。このようにして定められた赤道は、先行技術の特許文献において「赤道」と呼ばれている場合のあるタイヤの中間平面130と混同されてはならない。DRBは、好ましくは、ビードフィラーがタイヤの赤道の半径方向外側に延びることのないよう選択される。
【0032】
タイヤ10の内面は、内側ライナ50で覆われている。
【0033】
また、図6に示されたタイヤの場合のようにカーカス補強材とビードフィラーの両方の軸方向外側に配置された外側バンド120を提供することが慣例である。各外側バンドは、ビードの環状補強構造体70の半径方向最も内側の箇所71から半径方向距離DRIのところに位置した半径方向内端121から半径方向外端122まで半径方向外側に向かって延び、DRIは、タイヤの半径方向高さHの20%以下であり、外側バンドの半径方向外端122と外側バンドの半径方向内端121との間の半径方向距離DRLは、タイヤの半径方向高さHの25%以上(好ましくは30%以上)である。
【0034】
本発明の目的は、先行技術のタイヤよりも転がり抵抗が小さい乗用車用タイヤ、例えば図3に示されているタイヤを提供することにある。
【0035】
この目的は、図7及び図8に示されているタイヤのように「ずんぐりとしている」、即ち、短く且つ幅の広い外側バンド120を有するタイヤで達成される。この種の外側バンドを用いた場合の利点は、この外側バンドがタイヤの転がり抵抗を減少させるということにある。
【0036】
これらの実施形態は、多種多様な点で特徴付けが可能である。一手法は、ビードフィラー及び外側バンドで形成された組立体の任意の半径方向断面における厚さE(r)を考慮することである。
【0037】
図9及び図10は、厚さE(r)の測定の仕方を示しており、図10は、図9において符号200で示されたボックス内に含まれる領域の拡大図である。各補強材60の到来部分61とビードフィラー110との間のインターフェイスについて考察する。このインターフェイス上の各箇所は、環状補強構造体70の半径方向最も内側の箇所71から距離Rのところに位置している。環状補強構造体上に数個の半径方向最も内側の箇所が存在する場合、これら箇所のうちの任意のものを基準として選択することができる。所与の距離rの場合、インターフェイス上の対応の箇所65は、図9に示されているように環状補強構造体70の半径方向最も内側の箇所71周りに半径rの円140を描くことにより見出される。次に、インターフェイスの箇所65を通るカーカス補強材60の到来部分61に垂直な方向150を描く。ビードフィラー及び外側バンドで形成された組立体厚さのE(r)は、方向150とこの組立体の交差部の長さに相当している。方向150が巻き上げ部分62との交差部を持つ場合、巻き上げ部分62の厚さを無視する。
【0038】
図11は、厚さEが4通りのタイヤ幾何学的形状に関する距離rの関数としてどのように変化するかを示している。幾何学的形状“A”(破線;記号:菱形)は、例えば図3に示された先行技術のタイヤに対応している。幾何学的形状“B”(破線;記号:正方形)、“C”(実線;記号:三角形)及び“D”(実線;記号:円)は、それぞれ、図6〜図8に示されたタイヤに対応している。20〜50mmの半径の範囲では、厚さの変化率が形態“C”及び“D”について大きい領域が存在することが理解される。(検討中の例では、Hは、112mmに等しく、このことは、20mmから50mmまでの距離rの範囲が半径方向高さHの17.9%から半径方向高さHの44.6%までの範囲に属する値に対応しているということを意味している。)
【0039】
図12に示されているように半径rの関数として変化率V(これは、単に関数

である)を考察した場合にこの観察結果を定量化できる。形態“C”及び“D”の場合、厚さE(r)は、20mmから50mmまでの距離rの範囲では(基準Fにより示されている)、厚さの変化率

が少なくとも5mmにわたり−0.25mm/mm以下であるようにrの関数として変化する。形態“C”の場合、変化率Vは、ほぼ0.4mm/mmのところで「頂点に達し」、即ち、これは、約12mmにわたって−0.25mm/mm以下であり、約8mmにわたって−0.3mm/mm以下である。同様に、形態“D”の場合、変化率Vは、ほぼ0.4mm/mmのところで「頂点に達し」、即ち、これは、約16mmにわたって−0.25mm/mm以下であり、約12mmにわたって−0.3mm/mm以下である。
【0040】
好ましい実施形態を特徴付ける第2の仕方は、アスペクト比Emax/DRLを考察することであり、Emaxは、ビードフィラー及び外側バンドで形成された組立体の最大幅であり、カーカス補強材の到来部分に直角に測定され、DRLは、外側バンドの半径方向高さである。アスペクト比Emax/DRLが10%以上である場合、転がり抵抗が著しく減少する。
【0041】
値Emax及び値DRLが図7及び図8に示されたタイヤについて示されている。図7に見えるタイヤ(換言すると、形態“C”)のアスペクト比Emax/DRLは、13%であり、図8のタイヤ(形態“D”)のアスペクト比Emax/DRLは、15%である。比較として挙げると、形態“B”(図6)のアスペクト比は、7%である。
【0042】
図13は、483daNの荷重におけるタイヤDのコーナリング剛性の関数としての4つの形態の転がり抵抗RR(単位:1t当たりのkg)を示している。表Iは、試験した形態の幾何学的形状及び種々の部分の化学的組成をまとめて記載している。
【表1】

表I
【0043】
形態“B”を基準とする。この形態“B”を形態“A”と比較することにより理解できるように、外側バンドを追加することにより、タイヤのコーナリング剛性及びその転がり抵抗が増大する。外側バンドの幾何学的形状を変更することにより(形態“B”から形態“C”又は形態“D”に切り換えることにより)、転がり抵抗が減少する。形態“C”又は形態“D”の選択は、転がり剛性の要求によって決まり、低い剛性が望ましい場合、形態“C”が選択される。他方、高いコーナリング剛性が望ましい場合、形態“D”が好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって、
ホイールリム(5)と接触関係をなすよう設計されている2つのビード(20)であって、各ビードが少なくとも1つの環状補強構造体(70)を有するビードと、
前記ビードの半径方向外方に向かう延長部としての2つのサイドウォール(30)であって、トレッド(40)を載せたクラウン補強材(80,90,100)を含むクラウンに合体する2つのサイドウォールと、
前記ビードから前記サイドウォールを通って前記クラウンまで延びる少なくとも1本のカーカス補強材(60)とを備え、前記カーカス補強材は、複数本のカーカス補強要素を含み、前記カーカス補強材は、各ビード内に到来部分(61)及び巻き上げ部分(62)を形成するように前記環状補強構造体周りの上曲がり部によって前記2つのビード内に繋留され、各巻き上げ部分は、半径方向外側に向かって前記ビードの前記環状補強構造体の前記半径方向最も内側の箇所(71)から半径方向距離DRRのところに位置する端(63)まで延び、前記半径方向距離DRRは、前記タイヤの半径方向高さHの15%以上であり、
各ビードは、ビードフィラー(110)を有し、前記ビードフィラーは、前記環状補強構造体の半径方向外側に位置すると共に少なくとも部分的に前記カーカス補強材の前記到来部分と前記巻き上げ部分との間に配置され、前記ビードフィラーは、前記ビードの前記環状補強構造体の前記半径方向最も内側の箇所(71)の半径方向外側に該箇所から半径方向距離DRBにわたって延び、前記半径方向距離DRBは、前記タイヤの前記半径方向高さHの20%以上であり、
各ビードは、前記カーカス補強材と前記ビードフィラーの両方の軸方向外側に配置された外側バンド(120)を更に有し、各外側バンドは、前記ビードの前記環状補強構造体の前記半径方向最も内側の箇所(71)から距離DRIのところに位置した半径方向内端(121)から半径方向外端(122)まで半径方向外側に向かって延び、DRIは、前記タイヤの前記半径方向高さHの20%以下であり、前記外側バンドの前記半径方向外端(122)から前記外側バンドの前記半径方向内端(121)までの前記半径方向距離DRLは、前記タイヤの前記半径方向高さHの25%以上であり、
前記ビードフィラー(110)及び前記外側バンド(120)により形成される組立体は、厚さE(r)を有し、この厚さは、前記カーカス補強材(60)の前記到来部分(61)に垂直な前記方向(150)と前記組立体との交差長さに相当し、rは、前記カーカス補強材の前記到来部分に垂直な前記方向と前記カーカス補強材との交点から前記環状補強構造体の前記半径方向最も内側の箇所(71)までの距離であり、前記厚さE(r)は、前記距離rの関数として変化し、前記タイヤの前記半径方向高さHの15%以上且つ50%以下の距離rの範囲内において、前記厚さの変化率は、少なくとも5mmにわたって−0.25mm/mm以下である、
ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
アスペクト比Emax/DRLは、10%以上であり、Emaxは、前記カーカス補強材の前記到来部分(61)に直角に測定され、DRLは、前記外側バンドの半径方向高さである、
請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ビードフィラーは、先細になった半径方向断面の第1の部分(111)を有し、前記第1の部分は、半径方向外側に向かって次第に細くなり、その後、前記第1の部分は、幅がほぼ一定の半径方向断面を備えた第2の部分(112)になり、前記第2の部分は、前記第1の部分(111)の半径方向外側に配置され、前記第2の部分は、先細になっている半径方向断面を備えた第3の部分(113)になり、前記第3の部分は、前記第2の部分(112)の半径方向外側に位置している、
請求項1又は2記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−513332(P2012−513332A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541505(P2011−541505)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067697
【国際公開番号】WO2010/072737
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)