改良型ワクチン
【課題】病原体、特にウィルス病原体での感染に対する改善型ワクチンを提供する。
【解決手段】このワクチンはインフルエンザウイルス抗原、式R1-XZXZN-XZX-R2のペプチドおよびデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン残基を含有する免疫賦活性デオキシ核酸を含有する。
【解決手段】このワクチンはインフルエンザウイルス抗原、式R1-XZXZN-XZX-R2のペプチドおよびデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン残基を含有する免疫賦活性デオキシ核酸を含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良型ワクチン、特にウィルスワクチン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
侵入病原体からの宿主の防御は細胞性および体液性エフェクターに関係し、非適応(自然)免疫 および適応(後天性) 免疫の両方の共同行為から生じる。後者はレセプターにより媒介される特異的免疫学的認識に基づき、免疫系新規獲得であり、脊椎動物にのみ存在する。前者は適応免疫の発生前に発達し、生物全体にわたって分布している種々の細胞および分子からなり、潜在的病原体を制御下に置く役割を担っている。
【0003】
BおよびTリンパ球は後天性抗原特異的適応免疫のメディエーターであり、これには良好なワクチンの作製を主な目的とする免疫記憶の発生を含む。抗原提示細胞 (APC)は非常に特殊化した細胞であり、抗原を処理し、処理したフラグメントをリンパ球活性化のために必要な分子と共に細胞表面に提示することができる。これは、特異的免疫反応の開始にAPCが非常に重要であることを意味する。Tリンパ球活性化に対する主なAPCは樹状細胞(DCs)、マクロファージおよびB細胞であり、他方、B細胞に対する主なAPCは濾胞樹状細胞である。通常、静止期の抗原未感作のBおよびTリンパ球ならびに記憶BおよびTリンパ球を刺激する免疫反応の開始に関して、DCは最も強力なAPCである。
【0004】
APCの末梢(例えば、DCまたはランゲルハンス細胞)での本来の仕事は、抗原を捕獲して処理することにより、それにより活性化されるリンパ球第2シグナル(co-stimulatory)分子の発現、リンパ器官への遊走、サイトカインの分泌、異なるリンパ球細胞集団への抗原の提示を開始させて、抗原特異的免疫反応を開始させることである。これらはリンパ球を活性化させるのみならず、特定の環境下においてT細胞を抗原に対して寛容化させる。
【0005】
T細胞による抗原認識は主要組織適合遺伝子複合体 (MHC)拘束性である。所定のTリンパ球は、ペプチドが特定のMHC分子に結合している場合のみ抗原を認識する。通常、Tリンパ球は自己MHC分子の存在下でのみ刺激され、抗原は自己MHC分子に結合しているペプチドとしてのみ認識される。MHC拘束性は、認識される抗原という点、およびペプチドフラグメントに結合するMHC分子という点で、Tリンパ球特異性を規定する。
【0006】
細胞内および細胞外抗原は、認識及び適当な反応という両方の点で免疫系に対して完全に異なる抗原投与(challenge)を示す。抗原のT細胞への提示は、2つの異なるクラスであるMHC分子クラスI (MHC-I) およびMHC分子クラスII (MHC-II)により媒介され、これは異なる抗原プロセシング経路を利用する。主に、一方は、既に発達している2つの主要抗原プロセシング経路を区別することができる。細胞内抗原に由来するペプチドはMHCクラスI分子によりCD8+ T細胞に提示され、これは実質的に全ての細胞上で発現されるが、他方、細胞外抗原由来ペプチドはMHC-II分子によりCD4+ T細胞へと提示される。しかしながら、この二つの理論にはいくらか例外がある。いくつかの研究は、取り込まれた粒子から生じたペプチドまたは可溶性タンパク質がマクロファージ中および樹状細胞中でMHC-I分子上に提示されることを示した。従って、末梢にあり、細胞外抗原を捕獲し、処理する高い能力を示し、MHC-I分子上にてそれらをTリンパ球に提示する樹状細胞のようなAPCは、インビトロまたはインビボで抗原を用いて細胞外でそれらをパルスする際には興味深い標的である抗原と相互作用する。
【0007】
APCの重要かつ独特な役割(異なるタイプの白血球の活性を刺激することを含む)は、良好なワクチン開発の際の適切なストラテジー用の標的として中心的な位置を示す。理論上、そのような方法の1つは、本来の仕事である抗原の取込を向上または刺激することである。一旦、ワクチンが指向する適当な抗原でパルスされると、APCは取り込んだ抗原を処理し始め、それにより活性化され、リンパ球共刺激分子を発現し、リンパ器官まで遊走し、サイトカインを分泌して、異なるリンパ球集団に対する抗原を提示することにより免疫反応を開始する。
【0008】
通常、活性化T細胞は非常に制御されている様式で多数のエフェクターサイトカインを分泌する(例えば、インターロイキン2 (IL- 2)、IL-4、IL-5、IL-10およびインターフェロン−γ (IFN-g))。特定の抗原(腫瘍抗原のような通常、ワクチン中で投与される抗原)に応答する細胞傷害性Tリンパ球の機能的検出は、一般的には、ELISpotアッセイ(酵素結合型イムノスポットアッセイ)によりモニターされる(これは単一細胞レベルでのサイトカイン産生を分析する技術である)。本発明において、サイトカインIFN-gを促進する細胞性免疫(1型免疫反応)に対するELISpotアッセイは、良好な抗原特異的T細胞活性化をモニターするために使用される。さらに、サイトカインIL-4を2型反応(通常は強い体液性反応の促進に関連している)に対する指標として測定する。さらに、体液性免疫反応は、ELISAにより測定した(2型反応に対する指標としてIgG1、1型反応に対する指標としてIgG2b)。
【0009】
これまでに、ポリカチオンがMHCクラスI適合型ペプチドの腫瘍細胞への取込(「トランスローディング(TRANSloading)」と称されるペプチドまたはタンパク質パルシングプロセス)を上昇させることが示されていた。さらに、ポリカチオンはペプチドまたはタンパク質をインビボ又はインビトロで抗原提示細胞に「トランスロード(TRANSload)」することができることが示されている。さらに、マウスモデルにおいて、ポリ-L-アルギニンまたはポリ-L-リジンを適当なペプチドと混合してワクチンとして同時注射することにより、動物が腫瘍増殖から防御された。この化学的に規定されるワクチンは、非常に多数の抗原/ペプチド特異的T細胞を誘発することができる。すなわち、ポリカチオンにより媒介されるペプチドのAPCへの取込の上昇に少なくとも部分的に寄与しうることが示され、これはインビボで抗原を用いてパルスした場合、APCは投与した抗原に対するT細胞媒介性免疫を誘発できることが示されている。
【0010】
非常に特異的ではあるが比較的反応が遅い適応免疫とは対照的に、自然免疫は、宿主と比較した場合に異なっている微生物構成成分の構造により引き起こされるエフェクターメカニズムに基づく。これらのメカニズムはかなり迅速に初期反応を開始することができ、主に有害物質の中和を導く。自然免疫の反応は下等な門においては唯一の防御ストラテジーであり、脊椎動物においては適応的免疫系が動く前は第1の宿主防御ラインである。
【0011】
高等な脊椎動物において、自然免疫のエフェクター細胞は好中球、マクロファージ、およびナチュラルキラー細胞、そしておそらく樹状細胞であるが、この経路における体液性成分は補体カスケードであり、そして種々の異なる結合タンパク質である。
【0012】
迅速かつ有効な自然免疫成分は非常に多様な殺菌性ペプチドの産生であり、これは通常は約12〜約100アミノ酸残基長である。数百個の異なる抗菌性ペプチドが種々の生物(海綿動物、昆虫〜動物及びヒトにわたる)から単離されており、これらの分子が広範に分布することを指摘するものである。また、抗菌性ペプチドは競合生物に対する拮抗作用物質として細菌により産生される。
【0013】
CD4+ T細胞の主な2つのサブセット(1型ヘルパーT(Thl)および2型ヘルパーT (Th2))は、その異なるサイトカイン分泌プロフィールおよびその異なるエフェクター機能に基づいてマウス及びヒトにおいて同定されている。Th1細胞は主にいわゆる1型免疫反応の生成に関連しており、これは典型的には、遅延型過敏性反応、細胞媒介性免疫、IgG2a/IgG2bへのイムノグロブリンクラスのスイッチングおよび免疫接着(i.a.)インターフェロンγの分泌の誘導により特徴付けられる。反対に、Th2細胞はいわゆる2型反応の生成に関連しており、これは抗体産生(IgG1およびIgEへのクラススイッチングを含む)を導くB細胞の活性化の誘導による体液性免疫の誘発を特徴とする。また、2型反応は以下のサイトカインの分泌を特徴とする:IL-4、IL-5、IL-6およびIL-10。
【0014】
ほとんどの場合、誘発される反応の型(1型または2型)は、ワクチンの防御効率に重要な影響を与える。別のアジュバントは特定の型の反応に好都合な傾向がある。しかしながら、アジュバントの選択は機能的な予測不可能性および市販状況による制約および入手可能性などによっても複雑化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO 02/32451
【特許文献2】WO 01/93905
【特許文献3】PCT/EP02/05448
【特許文献4】WO 97/30721
【特許文献5】WO 99/38528
【特許文献6】WO 01/24822
【特許文献7】オーストリア特許出願A 1973/2000
【特許文献8】オーストリア特許出願A 805/2001
【特許文献9】EP 0 468 520 A2
【特許文献10】WO 96/02555
【特許文献11】WO 98/16247
【特許文献12】WO 98/18810
【特許文献13】WO 98/37919
【特許文献14】WO 98/40100
【特許文献15】WO 98/52581
【特許文献16】WO 98/52962
【特許文献17】WO 99/51259
【特許文献18】WO 99/56755
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Nakajima, Y. (1997); Cho, J-H. (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
インフルエンザウィルスでの感染は、最も重要かつ頻繁に起こる感染であり、特に高齢者または免疫系に欠陥がある人にとっては特に重篤な死亡率を有する。現在のところ、多数のインフルエンザワクチンが市場に出ているが、しかし、ワクチン接種の全てがインフルエンザ感染に対する防御能力(protectivity)を導くわけではない。それゆえ、防御効率を増加させるために現在のインフルエンザワクチンを改良する必要性がある。
【0018】
さらに、現在のワクチンのほとんどは2型反応のみを導き、また、1型指向性の免疫反応を示す改良型ワクチンまたは2型反応に加えて重要な型の免疫反応をも可能とする改良型ワクチンに対する必要性が存在する。さらに、既に入手可能であるワクチンは1型反応の誘導を可能にする改良型で提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
それゆえ、本発明は抗原、式:R1-XZXZNXZX-R2で示されるペプチドならびにデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン残基を含む免疫賦活化デオキシ核酸を含有する、(ウィルス)感染に対する改良型ワクチンを提供する。
【0020】
本発明に従って行った実験によると、これら2個のタイプのImmunizerの組合せは抗原に関して相乗的効果を示した。具体的にはこれは、一般的なインフルエンザ抗原(特に血球凝集素およびノイラミニダーゼ)および肝炎ウィルス抗原に関して示されている。ウィルス抗原に対して特に相乗的な効果はこれらの物質クラスの既知の特性に由来するものではない。これら2個の各物質クラスは非常に優れた免疫賦活特性を有することが知られているが (WO 02/32451、WO 01/93905およびPCT/EP02/05448)、ウィルス病原体(特にインフルエンザ及び肝炎ウィルス抗原)に対する併用効果はこれら単独の有効性の単なる足し算から予測することができるものよりも有意にすぐれていた。
【発明の効果】
【0021】
本発明を用いて、本発明に記載の2つのタイプのImmunizerの組合せをさらに提供することにより、すでに入手可能となっている、または市販のウィルスワクチン(特にインフルエンザまたはA、BもしくはC型肝炎ウィルスワクチン)を顕著に改良することができる。
【0022】
それゆえ、本発明はウィルス感染を予防するためのワクチンを提供し、このワクチンは−抗原(特にウィルス抗原)、
−配列R1-XZXZNXZX-R2を含むペプチド(ここで、Nは3〜7の自然数(好ましくは5)であり、Xは正に荷電した天然および/または非天然のアミノ酸残基であり、ZはL、V、I、Fおよび/またはWからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、R1およびR2は-H、-NH2、-COCH3、-COH、20個までのアミノ酸残基のペプチドまたはペプチドを有するもしくは有さないペプチド反応性基またはペプチドリンカーからなる群から選択され、X-R2は該ペプチド(以下、「ペプチドA」と称する)のC末端アミノ酸残基のアミド、エステルまたはチオエステルであり得る)
−以下の式(I)の構造を有する免疫賦活性オリゴデオキシ核酸分子(ODN):
【化1】
[式中、
R1はヒポキサンチンおよびウラシルから選択され、
XはいずれもOまたはSであり、
NMPはいずれも、デオキシアデノシン−、デオキシグアノシン−、デオキシイノシン−、デオキシシトシン−、デオキシチミジン、2-メチル-デオキシイノシン-、5-メチル-デオキシシトシン-、デオキシシュードウリジン-、デオキシリボースプリン-、2-アミノ-デオキシリボースプリン-、6-S-デオキシグアニン-、2-ジメチル-デオキシグアノシン-またはN-イソペンテニル-デオキシアデノシン-モノホスフェートまたは-モノチオホスフェートからなる群から選択される2'-デオキシヌクレオシドモノフォスフェートまたはモノチオホスフェートであり
NUCは、デオキシアデノシン-、デオキシグアノシン-、デオキシイノシン-、デオキシシトシン-、デオキシイノシン-、デオキシチミジン-、2-メチル-デオキシウリジン-、5-メチル-デオキシシトシン-、デオキシシュードウリジン-、デオキシリボースプリン-、2-アミノ-デオキシリボースプリン-、6-S-デオキシグアニン-、2-ジメチル-デオキシグアノシン-またはN-イソペンテニル-デオキシアデノシンから選択される2'-デオキシヌクレオシドであり、
aおよびbは0〜100の整数であるが、ただし、a+bは4〜150であり、
BおよびEは核酸分子(以下、「I-/U-ODN」とも称する)の一般的な5'または3'末端基である]を含有する。
【0023】
当然のことながら、本発明のワクチンは、他の物質、例えば適当な製薬上許容される希釈剤またはキャリア、緩衝剤または安定化物質などをさらに含有してもよい。
【0024】
本発明のワクチンはさらなるアジュバント、特にAl(OH)3アジュバント(Alum)をさらに含有してもよい。
【0025】
本明細書で用いるAlumは、ヒト及び動物の医薬及び研究において用いられる全ての形態のAl3+ベースのアジュバントを含む。特に、Roempp、第10版、139/140頁に規定の水酸化アルミニウム形態、そのゲル形態、リン酸アルミニウム等の全ての形態を含む。
【0026】
これは、既に市販されており、上記Al(OH)3アジュバントを含むワクチンに対して特に好ましい。このような場合、本発明のImmunisersの組合せは、上記の既存のワクチンに単純に添加することができる。
【0027】
本発明の抗原はウィルス抗原であることが好ましい。明らかな(または唯一の)Th1の1型反応が特に必須であるべきならば、T細胞エピトープ(上記導入部を参照)が抗原として好ましい。好ましくは、抗原はウィルス抗原である。実施例の章において、本発明は原則として、そして特にインフルエンザおよび肝炎ウィルス抗原(すなわち、B型肝炎表面抗原およびC型肝炎抗原、これらは本発明において好ましい抗原である)で有効であると証明されている。
【0028】
当然のことながら、医薬調製物はまた、所望の免疫反応に応じて2種以上の抗原を含有してもよい。また、抗原は免疫反応をさらに増強するために改変されていてもよい。
【0029】
ウィルスまたは細菌病原体由来、真菌類または寄生虫由来、ならびに腫瘍抗原(癌ワクチン)または自己免疫疾患に関わっていると推定される抗原に由来するタンパク質またはペプチドは抗原として使用することができる(グリコシル化、脂質付加、糖脂質付加または水酸化された抗原のような誘導体化抗原を含む)。さらに、炭水化物、脂質または糖脂質は、それら自体を抗原として使用することができる。誘導体化プロセスは、特定のタンパク質またはペプチドの病原体からの精製、病原体の不活化ならびにこのようなタンパク質またはペプチドのタンパク質分解による、または化学的誘導体化または安定化を含みうる。あるいは、病原体自体もまた、抗原として使用することができる。抗原は、好ましくはペプチドまたはタンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質またはそれらの混合物である。
【0030】
好ましい態様において、T細胞エピトープを抗原として用いる。あるいは、T細胞エピトープとB細胞エピトープの組合せもまた好ましい。
【0031】
当然のことながら、異なる抗原の混合物も本発明において使用することができる。好ましくは、ウィルスもしくは細菌病原体、または真菌もしくは寄生虫から単離したタンパク質またはペプチド(またはそれらの組換え対応物)をそのような抗原として使用することができる(誘導体化抗原またはグリコシル化もしくは脂質化抗原もしくはポリサッカリドもしくは脂質を含む)。別の好ましい抗原供給源は腫瘍抗原である。好ましい病原体は、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、A型またはB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス(HCV)または他のフラビウィルス科(例えば、日本脳炎ウィルス (JCV)、ラウス肉腫ウィルス (RSV)、エプスタインバールウィルス (EBV) インフルエンザウィルス、ヒトパピローマウィルス (HPV)、ロタウィルス、黄色ブドウ球菌、クラミジア・ニューモニア(Chlamydia pneumonias)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ヒト型結核菌((Mycobacterium tuberculosis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonias)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、マラリア原虫種(Plasmodium sp.)(熱帯熱マラリア原虫(Pl. falciparum)、三日熱マラリア原虫(Pl. vivax)等)、アスペルギルス種(Aspergillus sp)またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)から選択する。ペプチド抗原の場合はペプチドのミモトープ(mimotope)/アゴニスト/スーパーアゴニスト/アンタゴニストまたは特定の位置で免疫原特性に影響を与えることなく変更されているペプチド、あるいは非ペプチドのミモトープ/アゴニスト/スパーアゴニスト/アンタゴニストを用いることも本発明に含まれる。また、ペプチド抗原は、ペプチド抗原のカルボキシ末端またはアミノ末端のいずれかに、ポリカチオン性化合物または免疫賦活性化合物との相互作用を容易にする伸長を含んでいるかもしれない。
【0032】
また、抗原は、抗原提示を向上させる分子、および抗原提示細胞に抗原を標的化する分分子を含むように誘導体化されているかもしれない。
【0033】
本発明に用いられるインフルエンザ抗原または肝炎抗原は、通常は特定の形態に限定されず、おそらく本発明の効果はインフルエンザ、B型肝炎またはC型肝炎に対して病原体特異的に向上されているが、このインフルエンザまたはHBV病原体由来の特定の抗原型に対して特異的であるわけではない。しかしながら、標準インフルエンザまたはHBV抗原もまた、本発明のワクチン(すなわち、血球凝集素(haemagglutinin)抗原、ノイラミニダーゼ抗原、複合抗原またはこれらの抗原の1種以上の組合せ)で使用することが好ましい。
【0034】
好ましくは、インフルエンザウィルス、HBVまたはHCV供給源(例えば、細胞培養物)から単離したタンパク質またはペプチドあるいはそれらの組換え対応物を上記抗原(誘導体化抗原を含む)として使用する。
【0035】
本発明のワクチンは、好ましくは、(または、具体的にはインフルエンザ、HCVまたはHBVの場合、さらにはペプチドAの代わりに)ポリカチオン性ペプチドを含有する。
【0036】
本発明で用いるポリカチオン性のペプチドまたは化合物は、WO 97/30721に記載の特徴的な効果を示す任意のポリカチオン性化合物であってもよい。
【0037】
好ましいポリカチオン性化合物は、塩基性ポリペプチド、有機ポリカチオン、塩基性ポリアミノ酸またはそれらの混合物から選択される。これらのポリアミノ酸は少なくとも4アミノ酸残基の鎖長を有するべきである。ポリリジン、ポリアルギニン、および8を超える、特に20を超えるアミノ酸残基またはそれらの混合物のその範囲内において20%を超えて、特に50%を超えて塩基性アミノ酸残基を含有しているポリペプチドのようなペプチド結合を含む物質が特に好ましい。他の好ましいポリカチオンおよびそれらの医薬組成物は、WO 97/30721 (例えば、ポリエチレンイミン)およびWO 99/38528に記載されている。好ましくは、これらのポリペプチドは20〜500アミノ酸残基、特に30〜200アミノ酸残基を含む。
【0038】
これらのポリカチオン性化合物は、化学的または組換え技術により産生することができるか、または天然の供給源に由来するかもしれない。
【0039】
カチオン性(ポリ)ペプチドはまた、ポリカチオン性抗菌性微生物ペプチドであり得る。これらの(ポリ)ペプチドは原核生物起源または真核生物起源のものであり得、化学的または組換え技術により産生されうる。また、ペプチドは天然の抗菌性ペプチドのクラスに属するものであり得る。このような宿主防御ペプチドまたは防御手段もまた、好ましい形態の本発明のポリカチオン性ポリマーである。通常、好ましくはAPC(樹状細胞を含む)により媒介される適応免疫系の最終産物活性化(またはダウンレギュレーション)を可能とする化合物はポリカチオン性ポリマーとして使用することができる。
【0040】
さらに、(ヒト)成長ホルモン(例えば、WO01/24822に記載)のような神経作動性化合物を免疫賦活剤(Immunizers)として使用することができる。
【0041】
天然供給源由来のポリカチオン性化合物としては、HIV-REVまたはHIV-TAT (誘導体型カチオン性ペプチド、アンテナペディアペプチド、キトサンまたは他のキチン誘導体)または生化学的産生または組換え産生によるこれらのペプチドまたはタンパク質に由来する他のペプチドが挙げられる。他の好ましいポリカチオン性化合物はカトラン(cathelin)あるいはカテリシジン(cathelicidin)に関連する又は由来する物質化合物(特に、マウス、ウシまたは特にヒトカテリシジン)および/またはカテリシジンである。関連または由来するカテリシジン物質は、カテリシジン配列の全体または一部を少なくとも15〜20アミノ酸残基を含む。誘導体化には、天然のアミノ酸の、20個の標準的なアミノ酸の中に含まれないアミノ酸での置換または修飾を含みうる。さらに、このようなカテリシジン分子にさらなるカチオン性残基を導入することができる。これらのカテリシジン分子は本発明の抗原/ワクチン組成物と組み合わせることが好ましい。しかしながら、これらのカトラン分子は、驚くべきことに、さらなるアジュバントを添加することなく、抗原に対するアジュバントとしても有効であることが明らかになった。従って、このようなカテリシジン分子を有効なアジュバントとしてワクチン製剤中で、さらなる免疫賦活化物質を用いて、または用いずに、使用することが可能である。
【0042】
好ましくは、本発明のワクチンはペプチドA、KLKL5KLKとして、およびI-/U-ODNオリゴ-d (IC)13として含有する(ペプチドAおよびオリゴ-d (IC)13の組合せもまた、IC31と称する)。これら2種の物質は、本発明に従う実験において特に有利な結果を示した。
【0043】
本発明のワクチンは、さらに、(または、具体的にはインフルエンザ、HCVまたはHBVの場合、さらにはU-/I-ODNの代わりに)免疫調節核酸としてCpG-モチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを含有しうる。本発明で用いる免疫調節核酸は、合成性、原核生物起源、または真核生物起源のものであり得る。真核生物起源の場合、系統樹に基づくとDNAは低級種(less developed species)(例えば、昆虫など。しかし、これに限定しない)由来のものである。本発明の好ましい態様において、免疫原性オリゴデオキシヌクレオチド (ODN) は、合成により産生したDNA分子またはそのような分子の混合物である。ODNの誘導体または修飾物(例えば、例えば、米国特許US 5,723, 335およびUS 5,663, 153に記載されるようなチオホスフェート置換型アナログ(チオホスフェート残基がホスフェートと置き換わっている)および他の誘導体および改変体)(好ましくは免疫賦活化組成物を安定化するが、その免疫学的特性を変化させないもの)もまた、含まれる。好ましい配列モチーフは2個の5'プリンおよび2個の3'ピリミジン(5'-Pur-Pur-C-G-Pyr-Pyr-3')が隣接する(非メチル化) CpGジヌクレオチドを含有する6塩基DNAモチーフである。本発明のODNに含まれるCpGモチーフは高等脊椎動物のDNAにおけるよりも微生物においてより一般的なものであり、メチル化パターンに差異を示す。驚くべきことに、マウスAPCを刺激する配列はヒト細胞に関してはあまり効率のよいものではない。本発明に用いる好ましいパリンドロームまたは非パリンドロームODNは、例えば、オーストリア特許出願A 1973/2000、同A 805/2001、EP 0 468 520 A2、WO 96/02555、WO 98/16247、WO 98/18810、WO 98/37919、WO 98/40100、WO 98/52581、WO 98/52962、WO 99/51259およびWO 99/56755に開示されており、これらは全て本明細書中に参照して組み込む。ODN/DNAは、化学的または組換え技術により製造することができるか、または天然の供給源に由来してもよい。好ましい天然供給源は昆虫である。
【0044】
好ましくは、本発明のワクチンはポリカチオン性ペプチドおよびCpG-モチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを組み合わせて含みうる。本発明の過程において、CpG-ODNおよびポリカチオン性ペプチドの併用はインフルエンザワクチン組成物の効果の改善を示し、これはペプチドAおよびI-/U-ODNの併用効果に匹敵し、ペプチドAおよびI-/U-ODNと組み合わせるのみならず、その代わりに使用することさえできる。当然のことながら、異なる免疫賦活化核酸(I-/U-ODN、CpG-ODN、...)およびペプチドA改変体(ならびに他のImmunizers)の混合物もまた、本発明で用いることができる。
【0045】
別の局面において、本発明はまた、ウィルス病原体、特にインフルエンザウィルス、HCVまたはHBV、HIV、HPVまたはJEVに対するワクチンの防御効率を改善するためのペプチドAおよびI-/U-ODNの組合せ(これらは両方とも本発明に従い定義する通りである)の使用に関する。具体的には、ウィルス病原体、特にインフルエンザウィルス、HCVまたはHBV、HIV、HPVまたはJEVに対するワクチンの抗原特異的1型反応、特にIgG2抗体反応またはIFN-γ反応が特に改善され、同時にこのワクチンの2型反応(特にIgG1-抗体反応またはインターロイキン4(IL-4)反応)が維持されうるか、または好ましくはこれも向上する。
【0046】
これまでに、天然のカテリシジン由来抗菌ペプチドまたはそれらの誘導体は免疫反応刺激活性を有し、それゆえ非常に有効性の高い1型誘導アジュバント (Immunizer)を構成することが知られていた(WO02/13857)。抗菌ペプチドの主な供給源は好中球および気道、胃腸管および尿生殖路の内側を成す上皮細胞の顆粒である。通常、これらは身体構造上最も微生物侵襲にさらされている部位で見出され、内部体液中に分泌されるか、またはプロフェッショナル食細胞(professional phagocyte;好中球)の細胞質顆粒内に保存される。
【0047】
WO 02/32451は、特定の同時投与抗原に対する免疫反応を強く増強することができ、それゆえ非常に有効性の高いアジュバントを構成する1型誘発アジュバント (Immunizer)である、配列R1-XZXZNXZX-R2を含むペプチドAを開示する。特に好ましいペプチドはKLKLLLLLKLKである。天然の抗菌ペプチドのほかに、合成性抗菌ペプチドが製造され、研究されている。合成性抗菌ペプチドであるKLKLLLLLKLK-NH2は、黄色ブドウ球菌感染マウスにおいて顕著な化学療法活性を有することが示されており、ヒト好中球は細胞表面カルレティキュリン(calreticulin)を介してスーパーオキシドアニオン(O2−)を産生するように活性化されている。KおよびLの正確な数および位置が合成ペプチドの抗菌活性に重要であることが見出されている (Nakajima, Y. (1997); Cho, J-H. (1999))。
【0048】
本発明は併用医薬を皮下、筋肉内、皮内または経皮的などにより投与する場合に、特に有益である。しかしながら、他の適用形態(例えば、非経口、静脈内、鼻腔内、経口または局所適用)もまた、本発明に適している。
【0049】
インフルエンザ抗原は本発明のアジュバント(Immunizer) (組成物)と混合してもよいし、あるいは具体的にはリポソーム、遅延製剤などとして製剤化してもよい。
【0050】
本発明のワクチンはインフルエンザワクチン接種の分野の当業者に公知の有効量で個体に投与することができる。抗原量およびImmunizer量の最適化は、確立されている量から、利用可能な方法を用いて開始することができる。
【0051】
本発明を以下の実施例および図面によりさらに詳細に記載するが、当然のことながら本発明の限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、異なるODNと同時注射したカチオン性ペプチドが、市販のインフルエンザ-ワクチンに対して強い体液性1型反応(IgG2b)を相乗的に誘発することを示す。
【図2】図2は、KLK/o-d (IC)13が市販のインフルエンザワクチンの有効性を強く改善することを示す。
【図3a】図3aは、KLK/o-d (IC)13の単回注射が、市販のインフルエンザワクチンに対する細胞性1型反応および体液性1型および2型反応を相乗的に強く誘導することを示す。
【図3b】図3bは、KLK/o-d (IC)13の単回注射が、市販のインフルエンザワクチンに対する細胞性1型反応および体液性1型および2型反応を相乗的に強く誘導することを示す。
【図4】図4は、KLK/o-d (IC)13の単回注射が、市販のインフルエンザワクチンの有効性を強く改善することを示す。
【図5a】図5aは、インフルエンザAウィルスからのncORF誘導体ペプチドをKLK/o-d (IC)13と組み合わせて用いたワクチン接種が強力なIFN-γ産生T細胞を誘発し、ウィルス接種に対する防御を誘発することを示す。
【図5b】図5bは、インフルエンザAウィルスからのncORF誘導体ペプチドをKLK/o-d (IC)13と組み合わせて用いたワクチン接種が強力なIFN-γ産生T細胞を誘発し、ウィルス接種に対する防御を誘発することを示す。
【図6】図6は、KLK/o-d (IC)13がHCV-ペプチド特異的1型細胞性免疫反応を誘発することを示す。
【図7】図7は、異なるODNと同時投与したカチオン性ペプチドがHBsAg特異的細胞性1型反応(IFN-γ産生)を誘発し、他方、HBsAg誘発2型反応(IL-4産生)は影響を受けないか、または減少することを示す。
【図8a】図8aは、カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチドo-d (IC)13 (ODN1a)と少量の市販のインフルエンザワクチン(Agrippal S1) の組合せとの単回注射の結果としてワクチン特異的細胞性1型免疫反応が強く相乗的に誘発されることを示す。
【図8b】図8bは、カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)と少量の市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)との組合せの単回注射の結果として、1型/2型混合型の体液性免疫反応が相乗的に強く誘発されることを示す。
【図9a】図9aは、カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)との組合せを低用量で単回注射した結果として、市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)に対する強い細胞性免疫反応が相乗的に誘発されることを示す。
【図9b】図9bは、カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)と少量の市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)の組み合わせを低用量で単回注射した結果として、1型/2型の混合型の体液性免疫反応が相乗的に強く誘発されることを示す。
【図10】図10は、カチオン性抗菌ペプチドKLKおよび合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)と組み合わせた市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)の単回注射の結果を、他のアジュバントと比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
実施例1:
異なるオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(CpI、ntCpI、o-d(IC)13)とカチオン性ペプチド(pRまたはKLK)との同時注射は、市販のインフルエンザワクチン (Fluvirin)に対する1型体液性反応(IgG2b)を相乗的に強く誘発する。
【表1】
【0054】
実験群(12マウス/群):
1.未投薬
2.Fluワクチン
3.Fluワクチン+pR
4.Fluワクチン+KLK
5.Fluワクチン+Al(OH)3
6.Fluワクチン+o-d(IC)13
7.Fluワクチン+I-ODN2
8.Fluワクチン+I-ODN2b
9.Fluワクチン+pR+I-ODN 2
10.Fluワクチン+KLK+o-d(IC)13
11.Fluワクチン+KLK+I-ODN 2
12.Fluワクチン+KLK+I-ODN 2b
【0055】
0、28および56日目に、C57BL/6マウスの両後肢足蹠部に総体積100μl/マウス(50μl/足蹠部)で上記化合物を含有する注射(s.c.)を行った。26、54および82日目に血清を回収し、インフルエンザワクチン特異的IgG1およびIgG2b抗体についてELISAで分析した。力価はOD405nmの最大半量を得た血清の希釈率に対応する。
【0056】
図1は、カチオン性ペプチド(pRまたはKLK)と異なるODN(I-ODN 2、I-ODN 2bまたはo-d (IC)13)との併用注射により、非常に強力な抗原(インフルエンザワクチン)特異的体液性1型反応(IgG2b)が相乗的な様式で誘発されることを示す。インフルエンザワクチン(の単独またはAl(OH)3(カチオン性ペプチド(pR、KLK))のみまたは異なるODN (I-ODN 2を除く)のみとの組み合わせを注射すると、非特異的IgG2b反応が検出される。追加免疫接種は、観察可能な反応を強く上昇させる。
【0057】
インフルエンザワクチンのAl(OH)3、KLKまたはpR/I-ODN 2、KLK/I-ODN 2、KLK/I-ODN 2bもしくはKLK/o-d (IC)13の組合せとの同時投与により、インフルエンザワクチン特異的IgG1の産生を誘発する (2型反応)。
【0058】
実施例2:
KLK/o-d (IC)13との組合せにより、市販のインフルエンザ-ワクチン (Fluvirin)の有効性は強く改善される。
【表2】
【0059】
実験群(12マウス/群):
1.未接種
2.Fluワクチン
3.Fluワクチン+Al(OH)3
4.Fluワクチン+KLK+o-d (IC)13
【0060】
0、28および56日目に、BALB/cマウスの両後肢足蹠部に総体積100μl/マウス(50μl/足蹠部)で上記化合物を含有する注射を行った(s.c.)。26、54および82日目に血清を回収し、標準赤血球凝集阻害アッセイを用いて抗血球凝集素中和抗体について分析した。簡単に説明すると、ウィルス表面に血球凝集素が存在すると赤血球の血球凝集が誘発され、これは抗血球凝集素中和抗体により阻害することができる。異なるウィルス株の血球凝集素に対する抗体力価 (Al=A/ニューカレドニア/20/99 (H1N1)様株;A2=A/パナマ/2007/99RESVIR-17;B=B/四川/379/99様株)を測定した。血清の力価は阻害を示す最終希釈に対応する。
【0061】
インフルエンザワクチンの単独注射またはAl(OH)3と組み合わせての注射とは反対に、インフルエンザワクチン+KLKおよびo-d (IC)13の同時注射により試験した3種の血球凝集素全てに対する中和抗体が高レベルで誘発される(図2)。インフルエンザワクチンの有効性は抗血球凝集素抗体の血清力価と対応することが示されているので、得られた結果により、インフルエンザに対する防御の誘発についてKLK/o-d (IC)13は非常に強力であることが示される。
【0062】
実施例3
カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13の組合せの単回注射は、市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)に対する強い細胞性1型および体液性1型/2型免疫反応を相乗的に誘発する。
【0063】
材料
【表3】
【0064】
実験設定(マウス10匹/群)
1.未接種
2.Agrippal S1
3.Fluad
4.Agrippal S1+KLK+o-d(IC)13
0日目に、BALB/cマウスの両後肢大腿筋に、上記化合物を含有する総体積100μlワクチン/マウス(50μl/筋肉)を筋肉内注射した。21日目に血清を回収し、インフルエンザワクチン特異的IgG1およびIgG2a抗体についてELISAで分析した。力価はOD405nmの最大半量を得た血清希釈に対応する。さらに、各実験群の脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。脾細胞のアリコートを、磁性ソーティング(magnetic sorting)(CD4 MACSソート, Miltenyi)によりCD4+ T細胞に分けた。未分離の脾細胞および分離したCD4+ T細胞を非照射抗原提示細胞(APC;未接種マウス由来)と組み合わせて96ウェルELIspotプレート中で刺激して、各実験群についてAgrippal S1抗原特異的サイトカイン産生細胞の数を数えた。以下のサイトカイン産生を分析した:
IFN-γ(細胞性1型反応についての指標として)、
IL-4およびIL-5(細胞性2型反応についての指標として)。
【0065】
結果(図3a)
少量のインフルエンザワクチンAgrippal S1 (非アジュバント加)およびFluad (MF59 アジュバント加(adjuvanted))のみを少量注射した場合、CD4+ T細胞によるワクチン (Agrippal S1)特異的IFN-γ産生は誘発することはできなかったが、KLK/o-d (IC)13と組み合わせてAgrippal S1を注射すると、CD4+ T細胞による強力なワクチン(Agrippal S1)特異的IFN-γ産生が観察された。未接種のマウスと比較すると、Agrippal S1単独ではCD4+ T細胞によるIL-4の産生はわずかに誘発するのみであり、KLK/o-d (IC)13のワクチンへの添加によるさらなる上昇は示されなかった。しかしながら、FluadはCD4+ T細胞によるIL-4産生および未分離の脾細胞によるIL-5産生の強力な誘導因子である。IL-5はAgrippal Slの単独注射の際に非常に低レベルでのみ検出可能であるが、KLK/o-d (IC)13と組合せた場合は検出可能ではない。未分離の脾細胞の再刺激の際に、同様の結果が得られた。
【0066】
結果 (図3b)
図3bは、アジュバント加インフルエンザワクチンFluadの単独注射は強力なワクチン(Agrippal Sl)特異的体液性2型反応(IgG1)を誘発するが、1型反応(IgG2a)は弱い反応のみであった。しかしながら、アジュバント加インフルエンザワクチンのKLK/o-d (IC)13との併用注射により、非常に強力なワクチン(Agrippal S1)特異的IgG2a (体液性1型免疫反応)およびAgrippal S1単独の場合よりも高レベルのIgG1を誘発する。インフルエンザに対する防御はワクチン抗原特異的IgG2a抗体の存在と相関するので、得られた結果はインフルエンザワクチンに対する強力なアジュバントとして非常に強力なKLK/o-d (IC)13を示す。
【0067】
実施例4:
KLK/o-d (IC)13の組み合わせは、市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)の有効性を単回注射で非常によく改善する。
【0068】
材料
【表4】
【0069】
実験設定 (マウス10匹/群)
1.未接種
2.Agrippal S1
3.Fluad
4.Agrippal S1+KLK+o-d(IC)13
【0070】
0日目に、BALB/cマウスの両後肢大腿筋に、全体積100μlワクチン/マウス(50μl/筋肉)で上記化合物を含有する筋肉内注射を行った。21日目に血清を回収し、ヒト血清に対する標準血球凝集素阻害(HI)アッセイを用いて抗血球凝集素中和抗体について分析した。異なるウィルス株由来であるインフルエンザワクチンAggripal S1およびFluad (材料の項を参照)の両方に由来する、血球凝集素に対する抗体力価を測定した。
【0071】
結果(図4)
Agrippal S1の単独注射とは反対に、インフルエンザワクチンを少量のKLK/o-d (IC)13と同時注射すると、試験したインフルエンザA株2種(A/ニューカレドニア/20/99; A/パナマ/2007/99)に対する中和抗体レベルの強い上昇が誘発される。しかしながら、Fluadでの免疫感作により、Agrippal S1と少量のKLK/o-d (IC)13との同時注射の場合と同レベルの中和抗体が誘発される。インフルエンザワクチンの有効性は抗血球凝集素抗体の血清力価と相関することが示されているので、本発明の結果は、KLK/o-d (IC) 13がインフルエンザに対する防御を誘発するためのアジュバントである可能性が高いことを示す。
【0072】
実施例5:
KLK/o-d (IC)13と組み合わせてのインフルエンザAウィルス由来のncORF由来ペプチドを用いたワクチン接種。特異的T細胞反応をワクチン接種の7日後に測定し、続けて動物にマウス順化インフルエンザAウィルス(x31)を致死用量で接種した。15日間に生存をモニターする。
【0073】
材料
【表5】
【0074】
実験設定(マウス15匹/群)
1.p1574+KLK+o-d(IC)13
2.p1569+KLK+o-d(IC)13
3.p1600+KLK+o-d(IC)13
4.p1664+KLK+o-d(IC)13
5.p1600+p1569+KLK+o-d(IC)13
【0075】
0日目に、マウスの両後肢足蹠部にワクチン総体積100μl/マウス(50μl/足蹠部)で上記化合物を含有する注射(s.c.)を行った。7日目に、マウス5匹由来の未分離の脾細胞を96ウェルELIspotプレート中で刺激し、ペプチド特異的IFN-γ産生細胞の数を各実験群について数えた。残りのマウス10匹にマウス順化x31 インフルエンザAウィルス(5*10E5 pfu)を抗原投与した。15日間、生存をモニターした。
【0076】
結果(ELIspot(図5a))
第1群および第3群(ペプチドsp1574およびp1600) 由来の脾細胞は個々のペプチドでの再刺激の後では何ら特異的なスポットは示さなかった。第2群および第4群(p1569およびp1664) は、再刺激後に特にIFN-γを遊離する。第5群には2種のペプチドを個別にワクチン接種した(p1600およびp1569の混合物としてではない)。両方のペプチドの混合物またはp1569のいずれかを用いて再刺激すると、特異的なサイトカイン放出が検出される。反対に、p1600単独での再刺激の際には、IFN-γスポットは検出されない。これは第3群(p1600単独)と一致する。
【0077】
結果(抗原投与(図5b))
図5bは、マウス順化インフルエンザAウィルスx31を致死用量で抗原投与したマウスの生存率を示す。第1群(p1574、H2-Dbに対する防御エピトープと報告されている)は、抗原投与した全マウスの30%を防御する。ペプチドp1569は全く防御しなかった(0%)。反対に、ペプチドsp1600およびp1664は抗原投与した動物をそれぞれ50%および62%で防御した。動物に2種の異なるペプチド(第5群、ペプチドsp1600および1569)をワクチン接種すると、最大70%の動物が防御される。
【0078】
実施例6
強力なHCV特異的1型細胞性反応が、5種の異なるHCV由来ペプチド、抗菌性ペプチドKLKおよび合成デオキシヌクレオチドo-d (IC)13の混合注射により誘発される。
【表6】
【0079】
実験設定(マウス5匹/群):
1.HCVペプチド
2.HCVペプチド+KLK+o-d (IC)13
【0080】
0、14および28日目に、HHD.1マウスの両後肢足蹠部に合計100μl/マウス(50μl/足蹠部)の上記化合物を含有する注射(s.c.)を行った。35日目(最後のワクチン接種から7日目)に、CD4+およびCD8+ T細胞を磁気分離(MACS, Miltenyi)により脾細胞の単一細胞懸濁液から単離した。T細胞を培地(バックグラウンドコントロール)と共にインキュベートするか、またはワクチン接種に用いた異なるペプチドまたは無関係なペプチドp1274のいずれかの存在下で未接種のHHD.1マウス由来の非照射脾細胞をAPCとして用いて再度刺激した。一晩インキュベートした後、IFN-γ産生をELIspotアッセイを用いて分析した。図6は、5個のHCV由来ペプチドをKLK/o-d (IC)13と共に同時注射すると、CD4+細胞によりp84、p87、p89、p1426に対する大量のIFN-γの産生が誘導された。さらに、CD8+ T細胞によるp87、p89に対する強いIFN-γ産生を検出した。
【0081】
実施例7
異なるオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(CpI、ntCpI、o-d (IC)13)と同時注射したカチオン性ペプチド(pRまたはKLK)はB型肝炎表面抗原に対する強い1型細胞性反応(IFN-γ)を相乗的に誘発する。
【表7】
【0082】
実験設定 (マウス5匹/群/1時点):
1.HBsAg
2.HBsAg+Alum
3.HBsAg+I-ODN 2
4.HBsAg+I-ODN 2b
5.HBsAg+o-d(IC)13
6.HBsAg+pR
7.HBsAg+KLK
8.HBsAg+pR+I-ODN 2
9.HBsAg+pR+I-ODN 2b
10.HBsAg+pR+o-d(IC)13
11.HBsAg+KLK+I-ODN 2
12.HBsAg+KLK+I-ODN 2b
13.HBsAg+KLK+o-d(IC)13
【0083】
0日目および56日目に、マウス右脇腹に上記化合物を含有する皮下注射を全体積100μl/マウスで行った。免疫応答の分析を、1回目の注射および2回目の注射の7日目、21日目および50日目にそれぞれ行った。各時点あたり1群5匹のマウスの脾細胞を10μg/ml HbsAgで生体外で再度刺激し、HBsAg特異的IFN-γ(1型免疫反応)およびIL-4 (2型免疫反応)の産生を分析するためにELIspotアッセイを行った。
【0084】
結果(図7)
単独またはAlumと組み合わせてのHBsAg注射はIFN-γを誘発しないか、または非常に低いレベルでのみ誘発する。他方、pR/ODNまたはKLK/ODNと組み合わせてHBsAgを注射すると、HBsAg特異的IFN-γ産生が誘発され、これは追加免疫感作によりさらに増加させることができる。追加免疫の後のAlum、pRおよびKLKの同時注射、ならびにKLK/ODN組合せの同時注射の際に、HBsAg単独注射の場合と比較してわずかにIL-4産生の増加を観察することができる。
【0085】
実施例8
カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC) 13 (ODN1a)、および少量の市販インフルエンザワクチン (Agrippal S1) の組合せは、単回注射により相乗的に、強いワクチン特異的細胞性1型免疫反応を誘発する。
材料
【表8】
【0086】
実験設定(マウス10匹/群)
1.未接種
2.9μg Agrippal S1
3.0.1μg Agrippal S1
4.0.1μg Agrippal S1+100nmol KLK+4nmol ODN1a
5.0.1μg Agrippal S1+35nmol KLK+1.4nmol ODN1a
6.0.1μg Agrippal S1+10nmol KLK+0.4nmol ODN1a
【0087】
0日目に、BALB/cマウスの両後肢大腿筋に、上記化合物を含有する合計100μlワクチン/マウス(50μl/筋肉)を筋肉内注射した。21日目に、血清を回収し、インフルエンザワクチン特異的IgG1およびIgG2a抗体についてELISAで分析した。力価はOD405nmの最大半量を得た血清の希釈率に対応する。さらに、各実験群の脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。脾細胞のアリコートを、磁性ソーティング(magnetic sorting)(CD4およびCD8 MACSソート, Miltenyi)によりCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞に分けた。未分離の脾細胞または分離したCD4+ TおよびCD8+ T細胞のいずれかを非照射抗原提示細胞(APC;未接種マウス由来)と組み合わせて96ウェルELIspotプレート中で刺激して、各実験群についてAgrippal S1抗原特異的サイトカイン産生細胞の数を数えた。以下のサイトカイン産生を分析した:
IFN-γ(細胞性1型反応についての指標として)、
IL-4およびIL-5(細胞性2型反応についての指標として)。
【0088】
結果(図8a)
Agrippal S1を単独で9μgおよび0.1μgで用いてマウスにワクチン接種した場合、CD4+脾細胞によるワクチン特異的IFN-γを誘導することができなかったが、他方、Agrippal S1を異なる濃度のKLK/o-d (IC)13と組み合わせて注射した場合は、CD4+脾細胞によるIFN-γの強い産生を観察した。しかしながら、CD8+脾細胞はIFN-γを誘導することはできなかった。未接種のマウスと比較して、Agrippal S1単独では非分離の脾細胞およびCD4+脾細胞によるIL-4の産生をわずかに誘導するのみであり、KLK/o-d (IC)13のワクチンへの添加によるさらなる増加は示されなかった。しかし、Agrippal S1が誘導したIL-5はKLK/o-d (IC)13との同時注射の際に完全には停止しなかった。非分離の脾細胞の再刺激の際に、同様の結果が得られる。
【0089】
結果(図8b)
図8bに示すように、少量の非アジュバント加インフルエンザワクチンと異なる濃度のKLK/o-d (IC)13との混合注射は、非常に強力なワクチン (Agrippal S1)特異的IgG2a (体液性1型免疫反応)を誘導し、少量のAgrippal S1単独の場合よりも高レベルでIgG1を誘導した。しかし、高用量のAgrippal S1の場合に、最も高い力価のワクチン特異的IgG1抗体が示された。インフルエンザに対する防御はワクチン抗原特異的IgG2a抗体の存在と関連しているので、得られた結果はKLK/o-d (IC)13がインフルエンザワクチンに対する強力なアジュバントである可能性が高いことを示す。
【0090】
実施例9
低用量のカチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)との単回注射により、市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)に対する強力なワクチン特異的細胞性I型免疫反応を相乗的に誘発する。
【0091】
材料
【表9】
【0092】
実験の設定(マウス5匹/群)
1.未接種
2.9pg Agrippal S1
3.1μg Agrippal S1
4.1μg Agrippal S1+10nmol KLK+0.4nmol ODN1a
5.1μg Agrippal S1+5nmol KLK+0.2nmol ODN1a
6.1μg Agrippal S1+1nmol KLK+0.04nmol ODN1a
【0093】
0日目に、BALB/cマウスの両後肢大腿筋に、上記化合物を含有する総体積100μlワクチン/マウス(50μl/筋肉)で筋肉内注射を行った。21日目に、血清を回収し、インフルエンザワクチン特異的IgG1およびIgG2a抗体についてELISAで分析した。力価はOD405nmの最大半量を得た血清の希釈率に対応する。さらに、各実験群の脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。各実験群についてAgrippal S1抗原特異的サイトカイン産生細胞の数を数えるために96ウェルELIspotプレート中で脾細胞を刺激した。以下のサイトカイン産生を分析した:
IFN-γ(細胞性1型反応についての指標として)、
IL-4およびIL-5(細胞性2型反応についての指標として)。
【0094】
結果(図9a)
Agrippal S1(9μgおよび1μg)単独でマウスにワクチン接種するとやはりマウス脾細胞によるワクチン特異的IFN-γの誘導は可能ではなかったが(図8aをも参照のこと)、他方、異なる濃度(低用量)のKLK/o-d (IC)13と併用してAgrippal S1を注射すると、強力なIFN-γ産生が観察された。未接種のマウスと比較すると、Agrippal S1単独のみがマウス脾細胞によるIL-4の産生をほんのわずか増加させ、KLK/o-d(IC)13のワクチンへの添加は効果がなかった。Agrippal S1が誘発したIL-5は、KLK/o-d(IC)13との同時注射の際に濃度依存的に停止した。非常に低い投与量の場合でさえ、KLK/o-d(IC)13の組合せは強い細胞性I型免疫反応を誘発する。
【0095】
結果(図9b)
少量の非アジュバント加インフルエンザワクチンを異なる濃度のKLK/o-d (IC)13と混合注射することにより、非常に強力なワクチン (Agrippal S1)特異的IgG2a (体液性1型免疫反応) および少量のAgrippal S1単独の場合とほぼ匹敵するレベルのIgG1を誘発した。しかしながら、高用量のAgrippal S1単独ではワクチン特異的IgG1抗体の力価はわずかな上昇を示し、Agrippal S1および最低濃度のKLK/o-d (IC)13を同時注射した場合と同等レベルのIgG2a抗体が示された。インフルエンザに対する防御はワクチン抗原特異的IgG2a抗体の存在と相関関係があり、得られた結果は、非常に低い用量でさえ、KLK/o-d (IC)13のインフルエンザワクチン用の強力なアジュバントとしての高い可能性を示す。
【0096】
実施例10
カチオン性抗菌ペプチドKLKおよび合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13(ODN1a)と組み合わせた場合の市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)単回注射の、他のアジュバントとの比較
【0097】
材料
【表10】
【0098】
実験の設定(マウス5匹/群)
1.未接種
2.9μg Fluad
3.9μg Agrippal S1
4.1μg Agrippal S1
5.1μg Agrippal S1+10nmol KLK+0.4nmol ODN1a
6.1μg Agrippal S1+5nmol CpG1668
7.1μg Agrippal S1+100μg pR43
8.1μg Agrippal S1+100nmol KLK
9.1μg Agrippal S1+Alum
10.1μg Agrippal S1+CFA
11.1μg Agrippal S1+IFA
【0099】
0日目に、BALB/cマウスの両大腿筋に上記化合物を含むワクチンを総量100μl/マウス(50μl/筋肉)で筋肉内注射した。21日目に各実験群の脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。各実験群についてAgrippal S1抗原特異的サイトカイン産生細胞数を測定するために、脾細胞を96-ウェルELIspotプレート中で刺激した。以下のサイトカインの産生を分析した:
IFN-γ(細胞性1型反応についての指標として)、
IL-4およびIL-5(細胞性2型反応についての指標として)。
【0100】
結果(図10)
少量の非アジュバント加インフルエンザワクチンを低用量のKLK/o-d (IC)13と混合注射すると、Agrippal S1およびFluad単独で免疫感作させた場合と比較して、マウス脾細胞によるワクチン (Agrippal S1)-特異的IFN-γが高レベルで誘導された。
【0101】
匹敵する量のIFN-γはCFAでのワクチン接種の場合でのみで達成され、他の全ての実験群はAgrippal S1単独の場合と比較してマウス脾細胞によるIFN-γ産生はほとんど上昇しなかった(pR43、Alum、IFA)か、またはわずかに上昇した(CpG1668、KLK)。未接種のマウスと比較すると、Fluadのみがマウス脾細胞によるIL-4の産生を顕著に誘導したが、他の全ての実験群ではほとんど同じ低レベルのIL-4を示した。ワクチン抗原特異的IL-5は、マウスのFluadでのワクチン接種に基づいて非常に高いレベルで検出され、Agrippal S1単独またはKLKとの組み合わせての注射の際には中程度のレベルで検出された。Agrippal S1とpR、AlumまたはIFAとの同時注射は、IL-5のレベルをわずかに上昇させるのみであり、他の全ての群はIL-5産生の減少を示した。
【技術分野】
【0001】
本発明は改良型ワクチン、特にウィルスワクチン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
侵入病原体からの宿主の防御は細胞性および体液性エフェクターに関係し、非適応(自然)免疫 および適応(後天性) 免疫の両方の共同行為から生じる。後者はレセプターにより媒介される特異的免疫学的認識に基づき、免疫系新規獲得であり、脊椎動物にのみ存在する。前者は適応免疫の発生前に発達し、生物全体にわたって分布している種々の細胞および分子からなり、潜在的病原体を制御下に置く役割を担っている。
【0003】
BおよびTリンパ球は後天性抗原特異的適応免疫のメディエーターであり、これには良好なワクチンの作製を主な目的とする免疫記憶の発生を含む。抗原提示細胞 (APC)は非常に特殊化した細胞であり、抗原を処理し、処理したフラグメントをリンパ球活性化のために必要な分子と共に細胞表面に提示することができる。これは、特異的免疫反応の開始にAPCが非常に重要であることを意味する。Tリンパ球活性化に対する主なAPCは樹状細胞(DCs)、マクロファージおよびB細胞であり、他方、B細胞に対する主なAPCは濾胞樹状細胞である。通常、静止期の抗原未感作のBおよびTリンパ球ならびに記憶BおよびTリンパ球を刺激する免疫反応の開始に関して、DCは最も強力なAPCである。
【0004】
APCの末梢(例えば、DCまたはランゲルハンス細胞)での本来の仕事は、抗原を捕獲して処理することにより、それにより活性化されるリンパ球第2シグナル(co-stimulatory)分子の発現、リンパ器官への遊走、サイトカインの分泌、異なるリンパ球細胞集団への抗原の提示を開始させて、抗原特異的免疫反応を開始させることである。これらはリンパ球を活性化させるのみならず、特定の環境下においてT細胞を抗原に対して寛容化させる。
【0005】
T細胞による抗原認識は主要組織適合遺伝子複合体 (MHC)拘束性である。所定のTリンパ球は、ペプチドが特定のMHC分子に結合している場合のみ抗原を認識する。通常、Tリンパ球は自己MHC分子の存在下でのみ刺激され、抗原は自己MHC分子に結合しているペプチドとしてのみ認識される。MHC拘束性は、認識される抗原という点、およびペプチドフラグメントに結合するMHC分子という点で、Tリンパ球特異性を規定する。
【0006】
細胞内および細胞外抗原は、認識及び適当な反応という両方の点で免疫系に対して完全に異なる抗原投与(challenge)を示す。抗原のT細胞への提示は、2つの異なるクラスであるMHC分子クラスI (MHC-I) およびMHC分子クラスII (MHC-II)により媒介され、これは異なる抗原プロセシング経路を利用する。主に、一方は、既に発達している2つの主要抗原プロセシング経路を区別することができる。細胞内抗原に由来するペプチドはMHCクラスI分子によりCD8+ T細胞に提示され、これは実質的に全ての細胞上で発現されるが、他方、細胞外抗原由来ペプチドはMHC-II分子によりCD4+ T細胞へと提示される。しかしながら、この二つの理論にはいくらか例外がある。いくつかの研究は、取り込まれた粒子から生じたペプチドまたは可溶性タンパク質がマクロファージ中および樹状細胞中でMHC-I分子上に提示されることを示した。従って、末梢にあり、細胞外抗原を捕獲し、処理する高い能力を示し、MHC-I分子上にてそれらをTリンパ球に提示する樹状細胞のようなAPCは、インビトロまたはインビボで抗原を用いて細胞外でそれらをパルスする際には興味深い標的である抗原と相互作用する。
【0007】
APCの重要かつ独特な役割(異なるタイプの白血球の活性を刺激することを含む)は、良好なワクチン開発の際の適切なストラテジー用の標的として中心的な位置を示す。理論上、そのような方法の1つは、本来の仕事である抗原の取込を向上または刺激することである。一旦、ワクチンが指向する適当な抗原でパルスされると、APCは取り込んだ抗原を処理し始め、それにより活性化され、リンパ球共刺激分子を発現し、リンパ器官まで遊走し、サイトカインを分泌して、異なるリンパ球集団に対する抗原を提示することにより免疫反応を開始する。
【0008】
通常、活性化T細胞は非常に制御されている様式で多数のエフェクターサイトカインを分泌する(例えば、インターロイキン2 (IL- 2)、IL-4、IL-5、IL-10およびインターフェロン−γ (IFN-g))。特定の抗原(腫瘍抗原のような通常、ワクチン中で投与される抗原)に応答する細胞傷害性Tリンパ球の機能的検出は、一般的には、ELISpotアッセイ(酵素結合型イムノスポットアッセイ)によりモニターされる(これは単一細胞レベルでのサイトカイン産生を分析する技術である)。本発明において、サイトカインIFN-gを促進する細胞性免疫(1型免疫反応)に対するELISpotアッセイは、良好な抗原特異的T細胞活性化をモニターするために使用される。さらに、サイトカインIL-4を2型反応(通常は強い体液性反応の促進に関連している)に対する指標として測定する。さらに、体液性免疫反応は、ELISAにより測定した(2型反応に対する指標としてIgG1、1型反応に対する指標としてIgG2b)。
【0009】
これまでに、ポリカチオンがMHCクラスI適合型ペプチドの腫瘍細胞への取込(「トランスローディング(TRANSloading)」と称されるペプチドまたはタンパク質パルシングプロセス)を上昇させることが示されていた。さらに、ポリカチオンはペプチドまたはタンパク質をインビボ又はインビトロで抗原提示細胞に「トランスロード(TRANSload)」することができることが示されている。さらに、マウスモデルにおいて、ポリ-L-アルギニンまたはポリ-L-リジンを適当なペプチドと混合してワクチンとして同時注射することにより、動物が腫瘍増殖から防御された。この化学的に規定されるワクチンは、非常に多数の抗原/ペプチド特異的T細胞を誘発することができる。すなわち、ポリカチオンにより媒介されるペプチドのAPCへの取込の上昇に少なくとも部分的に寄与しうることが示され、これはインビボで抗原を用いてパルスした場合、APCは投与した抗原に対するT細胞媒介性免疫を誘発できることが示されている。
【0010】
非常に特異的ではあるが比較的反応が遅い適応免疫とは対照的に、自然免疫は、宿主と比較した場合に異なっている微生物構成成分の構造により引き起こされるエフェクターメカニズムに基づく。これらのメカニズムはかなり迅速に初期反応を開始することができ、主に有害物質の中和を導く。自然免疫の反応は下等な門においては唯一の防御ストラテジーであり、脊椎動物においては適応的免疫系が動く前は第1の宿主防御ラインである。
【0011】
高等な脊椎動物において、自然免疫のエフェクター細胞は好中球、マクロファージ、およびナチュラルキラー細胞、そしておそらく樹状細胞であるが、この経路における体液性成分は補体カスケードであり、そして種々の異なる結合タンパク質である。
【0012】
迅速かつ有効な自然免疫成分は非常に多様な殺菌性ペプチドの産生であり、これは通常は約12〜約100アミノ酸残基長である。数百個の異なる抗菌性ペプチドが種々の生物(海綿動物、昆虫〜動物及びヒトにわたる)から単離されており、これらの分子が広範に分布することを指摘するものである。また、抗菌性ペプチドは競合生物に対する拮抗作用物質として細菌により産生される。
【0013】
CD4+ T細胞の主な2つのサブセット(1型ヘルパーT(Thl)および2型ヘルパーT (Th2))は、その異なるサイトカイン分泌プロフィールおよびその異なるエフェクター機能に基づいてマウス及びヒトにおいて同定されている。Th1細胞は主にいわゆる1型免疫反応の生成に関連しており、これは典型的には、遅延型過敏性反応、細胞媒介性免疫、IgG2a/IgG2bへのイムノグロブリンクラスのスイッチングおよび免疫接着(i.a.)インターフェロンγの分泌の誘導により特徴付けられる。反対に、Th2細胞はいわゆる2型反応の生成に関連しており、これは抗体産生(IgG1およびIgEへのクラススイッチングを含む)を導くB細胞の活性化の誘導による体液性免疫の誘発を特徴とする。また、2型反応は以下のサイトカインの分泌を特徴とする:IL-4、IL-5、IL-6およびIL-10。
【0014】
ほとんどの場合、誘発される反応の型(1型または2型)は、ワクチンの防御効率に重要な影響を与える。別のアジュバントは特定の型の反応に好都合な傾向がある。しかしながら、アジュバントの選択は機能的な予測不可能性および市販状況による制約および入手可能性などによっても複雑化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO 02/32451
【特許文献2】WO 01/93905
【特許文献3】PCT/EP02/05448
【特許文献4】WO 97/30721
【特許文献5】WO 99/38528
【特許文献6】WO 01/24822
【特許文献7】オーストリア特許出願A 1973/2000
【特許文献8】オーストリア特許出願A 805/2001
【特許文献9】EP 0 468 520 A2
【特許文献10】WO 96/02555
【特許文献11】WO 98/16247
【特許文献12】WO 98/18810
【特許文献13】WO 98/37919
【特許文献14】WO 98/40100
【特許文献15】WO 98/52581
【特許文献16】WO 98/52962
【特許文献17】WO 99/51259
【特許文献18】WO 99/56755
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Nakajima, Y. (1997); Cho, J-H. (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
インフルエンザウィルスでの感染は、最も重要かつ頻繁に起こる感染であり、特に高齢者または免疫系に欠陥がある人にとっては特に重篤な死亡率を有する。現在のところ、多数のインフルエンザワクチンが市場に出ているが、しかし、ワクチン接種の全てがインフルエンザ感染に対する防御能力(protectivity)を導くわけではない。それゆえ、防御効率を増加させるために現在のインフルエンザワクチンを改良する必要性がある。
【0018】
さらに、現在のワクチンのほとんどは2型反応のみを導き、また、1型指向性の免疫反応を示す改良型ワクチンまたは2型反応に加えて重要な型の免疫反応をも可能とする改良型ワクチンに対する必要性が存在する。さらに、既に入手可能であるワクチンは1型反応の誘導を可能にする改良型で提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
それゆえ、本発明は抗原、式:R1-XZXZNXZX-R2で示されるペプチドならびにデオキシイノシンおよび/またはデオキシウリジン残基を含む免疫賦活化デオキシ核酸を含有する、(ウィルス)感染に対する改良型ワクチンを提供する。
【0020】
本発明に従って行った実験によると、これら2個のタイプのImmunizerの組合せは抗原に関して相乗的効果を示した。具体的にはこれは、一般的なインフルエンザ抗原(特に血球凝集素およびノイラミニダーゼ)および肝炎ウィルス抗原に関して示されている。ウィルス抗原に対して特に相乗的な効果はこれらの物質クラスの既知の特性に由来するものではない。これら2個の各物質クラスは非常に優れた免疫賦活特性を有することが知られているが (WO 02/32451、WO 01/93905およびPCT/EP02/05448)、ウィルス病原体(特にインフルエンザ及び肝炎ウィルス抗原)に対する併用効果はこれら単独の有効性の単なる足し算から予測することができるものよりも有意にすぐれていた。
【発明の効果】
【0021】
本発明を用いて、本発明に記載の2つのタイプのImmunizerの組合せをさらに提供することにより、すでに入手可能となっている、または市販のウィルスワクチン(特にインフルエンザまたはA、BもしくはC型肝炎ウィルスワクチン)を顕著に改良することができる。
【0022】
それゆえ、本発明はウィルス感染を予防するためのワクチンを提供し、このワクチンは−抗原(特にウィルス抗原)、
−配列R1-XZXZNXZX-R2を含むペプチド(ここで、Nは3〜7の自然数(好ましくは5)であり、Xは正に荷電した天然および/または非天然のアミノ酸残基であり、ZはL、V、I、Fおよび/またはWからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、R1およびR2は-H、-NH2、-COCH3、-COH、20個までのアミノ酸残基のペプチドまたはペプチドを有するもしくは有さないペプチド反応性基またはペプチドリンカーからなる群から選択され、X-R2は該ペプチド(以下、「ペプチドA」と称する)のC末端アミノ酸残基のアミド、エステルまたはチオエステルであり得る)
−以下の式(I)の構造を有する免疫賦活性オリゴデオキシ核酸分子(ODN):
【化1】
[式中、
R1はヒポキサンチンおよびウラシルから選択され、
XはいずれもOまたはSであり、
NMPはいずれも、デオキシアデノシン−、デオキシグアノシン−、デオキシイノシン−、デオキシシトシン−、デオキシチミジン、2-メチル-デオキシイノシン-、5-メチル-デオキシシトシン-、デオキシシュードウリジン-、デオキシリボースプリン-、2-アミノ-デオキシリボースプリン-、6-S-デオキシグアニン-、2-ジメチル-デオキシグアノシン-またはN-イソペンテニル-デオキシアデノシン-モノホスフェートまたは-モノチオホスフェートからなる群から選択される2'-デオキシヌクレオシドモノフォスフェートまたはモノチオホスフェートであり
NUCは、デオキシアデノシン-、デオキシグアノシン-、デオキシイノシン-、デオキシシトシン-、デオキシイノシン-、デオキシチミジン-、2-メチル-デオキシウリジン-、5-メチル-デオキシシトシン-、デオキシシュードウリジン-、デオキシリボースプリン-、2-アミノ-デオキシリボースプリン-、6-S-デオキシグアニン-、2-ジメチル-デオキシグアノシン-またはN-イソペンテニル-デオキシアデノシンから選択される2'-デオキシヌクレオシドであり、
aおよびbは0〜100の整数であるが、ただし、a+bは4〜150であり、
BおよびEは核酸分子(以下、「I-/U-ODN」とも称する)の一般的な5'または3'末端基である]を含有する。
【0023】
当然のことながら、本発明のワクチンは、他の物質、例えば適当な製薬上許容される希釈剤またはキャリア、緩衝剤または安定化物質などをさらに含有してもよい。
【0024】
本発明のワクチンはさらなるアジュバント、特にAl(OH)3アジュバント(Alum)をさらに含有してもよい。
【0025】
本明細書で用いるAlumは、ヒト及び動物の医薬及び研究において用いられる全ての形態のAl3+ベースのアジュバントを含む。特に、Roempp、第10版、139/140頁に規定の水酸化アルミニウム形態、そのゲル形態、リン酸アルミニウム等の全ての形態を含む。
【0026】
これは、既に市販されており、上記Al(OH)3アジュバントを含むワクチンに対して特に好ましい。このような場合、本発明のImmunisersの組合せは、上記の既存のワクチンに単純に添加することができる。
【0027】
本発明の抗原はウィルス抗原であることが好ましい。明らかな(または唯一の)Th1の1型反応が特に必須であるべきならば、T細胞エピトープ(上記導入部を参照)が抗原として好ましい。好ましくは、抗原はウィルス抗原である。実施例の章において、本発明は原則として、そして特にインフルエンザおよび肝炎ウィルス抗原(すなわち、B型肝炎表面抗原およびC型肝炎抗原、これらは本発明において好ましい抗原である)で有効であると証明されている。
【0028】
当然のことながら、医薬調製物はまた、所望の免疫反応に応じて2種以上の抗原を含有してもよい。また、抗原は免疫反応をさらに増強するために改変されていてもよい。
【0029】
ウィルスまたは細菌病原体由来、真菌類または寄生虫由来、ならびに腫瘍抗原(癌ワクチン)または自己免疫疾患に関わっていると推定される抗原に由来するタンパク質またはペプチドは抗原として使用することができる(グリコシル化、脂質付加、糖脂質付加または水酸化された抗原のような誘導体化抗原を含む)。さらに、炭水化物、脂質または糖脂質は、それら自体を抗原として使用することができる。誘導体化プロセスは、特定のタンパク質またはペプチドの病原体からの精製、病原体の不活化ならびにこのようなタンパク質またはペプチドのタンパク質分解による、または化学的誘導体化または安定化を含みうる。あるいは、病原体自体もまた、抗原として使用することができる。抗原は、好ましくはペプチドまたはタンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質またはそれらの混合物である。
【0030】
好ましい態様において、T細胞エピトープを抗原として用いる。あるいは、T細胞エピトープとB細胞エピトープの組合せもまた好ましい。
【0031】
当然のことながら、異なる抗原の混合物も本発明において使用することができる。好ましくは、ウィルスもしくは細菌病原体、または真菌もしくは寄生虫から単離したタンパク質またはペプチド(またはそれらの組換え対応物)をそのような抗原として使用することができる(誘導体化抗原またはグリコシル化もしくは脂質化抗原もしくはポリサッカリドもしくは脂質を含む)。別の好ましい抗原供給源は腫瘍抗原である。好ましい病原体は、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、A型またはB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス(HCV)または他のフラビウィルス科(例えば、日本脳炎ウィルス (JCV)、ラウス肉腫ウィルス (RSV)、エプスタインバールウィルス (EBV) インフルエンザウィルス、ヒトパピローマウィルス (HPV)、ロタウィルス、黄色ブドウ球菌、クラミジア・ニューモニア(Chlamydia pneumonias)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ヒト型結核菌((Mycobacterium tuberculosis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonias)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、マラリア原虫種(Plasmodium sp.)(熱帯熱マラリア原虫(Pl. falciparum)、三日熱マラリア原虫(Pl. vivax)等)、アスペルギルス種(Aspergillus sp)またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)から選択する。ペプチド抗原の場合はペプチドのミモトープ(mimotope)/アゴニスト/スーパーアゴニスト/アンタゴニストまたは特定の位置で免疫原特性に影響を与えることなく変更されているペプチド、あるいは非ペプチドのミモトープ/アゴニスト/スパーアゴニスト/アンタゴニストを用いることも本発明に含まれる。また、ペプチド抗原は、ペプチド抗原のカルボキシ末端またはアミノ末端のいずれかに、ポリカチオン性化合物または免疫賦活性化合物との相互作用を容易にする伸長を含んでいるかもしれない。
【0032】
また、抗原は、抗原提示を向上させる分子、および抗原提示細胞に抗原を標的化する分分子を含むように誘導体化されているかもしれない。
【0033】
本発明に用いられるインフルエンザ抗原または肝炎抗原は、通常は特定の形態に限定されず、おそらく本発明の効果はインフルエンザ、B型肝炎またはC型肝炎に対して病原体特異的に向上されているが、このインフルエンザまたはHBV病原体由来の特定の抗原型に対して特異的であるわけではない。しかしながら、標準インフルエンザまたはHBV抗原もまた、本発明のワクチン(すなわち、血球凝集素(haemagglutinin)抗原、ノイラミニダーゼ抗原、複合抗原またはこれらの抗原の1種以上の組合せ)で使用することが好ましい。
【0034】
好ましくは、インフルエンザウィルス、HBVまたはHCV供給源(例えば、細胞培養物)から単離したタンパク質またはペプチドあるいはそれらの組換え対応物を上記抗原(誘導体化抗原を含む)として使用する。
【0035】
本発明のワクチンは、好ましくは、(または、具体的にはインフルエンザ、HCVまたはHBVの場合、さらにはペプチドAの代わりに)ポリカチオン性ペプチドを含有する。
【0036】
本発明で用いるポリカチオン性のペプチドまたは化合物は、WO 97/30721に記載の特徴的な効果を示す任意のポリカチオン性化合物であってもよい。
【0037】
好ましいポリカチオン性化合物は、塩基性ポリペプチド、有機ポリカチオン、塩基性ポリアミノ酸またはそれらの混合物から選択される。これらのポリアミノ酸は少なくとも4アミノ酸残基の鎖長を有するべきである。ポリリジン、ポリアルギニン、および8を超える、特に20を超えるアミノ酸残基またはそれらの混合物のその範囲内において20%を超えて、特に50%を超えて塩基性アミノ酸残基を含有しているポリペプチドのようなペプチド結合を含む物質が特に好ましい。他の好ましいポリカチオンおよびそれらの医薬組成物は、WO 97/30721 (例えば、ポリエチレンイミン)およびWO 99/38528に記載されている。好ましくは、これらのポリペプチドは20〜500アミノ酸残基、特に30〜200アミノ酸残基を含む。
【0038】
これらのポリカチオン性化合物は、化学的または組換え技術により産生することができるか、または天然の供給源に由来するかもしれない。
【0039】
カチオン性(ポリ)ペプチドはまた、ポリカチオン性抗菌性微生物ペプチドであり得る。これらの(ポリ)ペプチドは原核生物起源または真核生物起源のものであり得、化学的または組換え技術により産生されうる。また、ペプチドは天然の抗菌性ペプチドのクラスに属するものであり得る。このような宿主防御ペプチドまたは防御手段もまた、好ましい形態の本発明のポリカチオン性ポリマーである。通常、好ましくはAPC(樹状細胞を含む)により媒介される適応免疫系の最終産物活性化(またはダウンレギュレーション)を可能とする化合物はポリカチオン性ポリマーとして使用することができる。
【0040】
さらに、(ヒト)成長ホルモン(例えば、WO01/24822に記載)のような神経作動性化合物を免疫賦活剤(Immunizers)として使用することができる。
【0041】
天然供給源由来のポリカチオン性化合物としては、HIV-REVまたはHIV-TAT (誘導体型カチオン性ペプチド、アンテナペディアペプチド、キトサンまたは他のキチン誘導体)または生化学的産生または組換え産生によるこれらのペプチドまたはタンパク質に由来する他のペプチドが挙げられる。他の好ましいポリカチオン性化合物はカトラン(cathelin)あるいはカテリシジン(cathelicidin)に関連する又は由来する物質化合物(特に、マウス、ウシまたは特にヒトカテリシジン)および/またはカテリシジンである。関連または由来するカテリシジン物質は、カテリシジン配列の全体または一部を少なくとも15〜20アミノ酸残基を含む。誘導体化には、天然のアミノ酸の、20個の標準的なアミノ酸の中に含まれないアミノ酸での置換または修飾を含みうる。さらに、このようなカテリシジン分子にさらなるカチオン性残基を導入することができる。これらのカテリシジン分子は本発明の抗原/ワクチン組成物と組み合わせることが好ましい。しかしながら、これらのカトラン分子は、驚くべきことに、さらなるアジュバントを添加することなく、抗原に対するアジュバントとしても有効であることが明らかになった。従って、このようなカテリシジン分子を有効なアジュバントとしてワクチン製剤中で、さらなる免疫賦活化物質を用いて、または用いずに、使用することが可能である。
【0042】
好ましくは、本発明のワクチンはペプチドA、KLKL5KLKとして、およびI-/U-ODNオリゴ-d (IC)13として含有する(ペプチドAおよびオリゴ-d (IC)13の組合せもまた、IC31と称する)。これら2種の物質は、本発明に従う実験において特に有利な結果を示した。
【0043】
本発明のワクチンは、さらに、(または、具体的にはインフルエンザ、HCVまたはHBVの場合、さらにはU-/I-ODNの代わりに)免疫調節核酸としてCpG-モチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを含有しうる。本発明で用いる免疫調節核酸は、合成性、原核生物起源、または真核生物起源のものであり得る。真核生物起源の場合、系統樹に基づくとDNAは低級種(less developed species)(例えば、昆虫など。しかし、これに限定しない)由来のものである。本発明の好ましい態様において、免疫原性オリゴデオキシヌクレオチド (ODN) は、合成により産生したDNA分子またはそのような分子の混合物である。ODNの誘導体または修飾物(例えば、例えば、米国特許US 5,723, 335およびUS 5,663, 153に記載されるようなチオホスフェート置換型アナログ(チオホスフェート残基がホスフェートと置き換わっている)および他の誘導体および改変体)(好ましくは免疫賦活化組成物を安定化するが、その免疫学的特性を変化させないもの)もまた、含まれる。好ましい配列モチーフは2個の5'プリンおよび2個の3'ピリミジン(5'-Pur-Pur-C-G-Pyr-Pyr-3')が隣接する(非メチル化) CpGジヌクレオチドを含有する6塩基DNAモチーフである。本発明のODNに含まれるCpGモチーフは高等脊椎動物のDNAにおけるよりも微生物においてより一般的なものであり、メチル化パターンに差異を示す。驚くべきことに、マウスAPCを刺激する配列はヒト細胞に関してはあまり効率のよいものではない。本発明に用いる好ましいパリンドロームまたは非パリンドロームODNは、例えば、オーストリア特許出願A 1973/2000、同A 805/2001、EP 0 468 520 A2、WO 96/02555、WO 98/16247、WO 98/18810、WO 98/37919、WO 98/40100、WO 98/52581、WO 98/52962、WO 99/51259およびWO 99/56755に開示されており、これらは全て本明細書中に参照して組み込む。ODN/DNAは、化学的または組換え技術により製造することができるか、または天然の供給源に由来してもよい。好ましい天然供給源は昆虫である。
【0044】
好ましくは、本発明のワクチンはポリカチオン性ペプチドおよびCpG-モチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチドを組み合わせて含みうる。本発明の過程において、CpG-ODNおよびポリカチオン性ペプチドの併用はインフルエンザワクチン組成物の効果の改善を示し、これはペプチドAおよびI-/U-ODNの併用効果に匹敵し、ペプチドAおよびI-/U-ODNと組み合わせるのみならず、その代わりに使用することさえできる。当然のことながら、異なる免疫賦活化核酸(I-/U-ODN、CpG-ODN、...)およびペプチドA改変体(ならびに他のImmunizers)の混合物もまた、本発明で用いることができる。
【0045】
別の局面において、本発明はまた、ウィルス病原体、特にインフルエンザウィルス、HCVまたはHBV、HIV、HPVまたはJEVに対するワクチンの防御効率を改善するためのペプチドAおよびI-/U-ODNの組合せ(これらは両方とも本発明に従い定義する通りである)の使用に関する。具体的には、ウィルス病原体、特にインフルエンザウィルス、HCVまたはHBV、HIV、HPVまたはJEVに対するワクチンの抗原特異的1型反応、特にIgG2抗体反応またはIFN-γ反応が特に改善され、同時にこのワクチンの2型反応(特にIgG1-抗体反応またはインターロイキン4(IL-4)反応)が維持されうるか、または好ましくはこれも向上する。
【0046】
これまでに、天然のカテリシジン由来抗菌ペプチドまたはそれらの誘導体は免疫反応刺激活性を有し、それゆえ非常に有効性の高い1型誘導アジュバント (Immunizer)を構成することが知られていた(WO02/13857)。抗菌ペプチドの主な供給源は好中球および気道、胃腸管および尿生殖路の内側を成す上皮細胞の顆粒である。通常、これらは身体構造上最も微生物侵襲にさらされている部位で見出され、内部体液中に分泌されるか、またはプロフェッショナル食細胞(professional phagocyte;好中球)の細胞質顆粒内に保存される。
【0047】
WO 02/32451は、特定の同時投与抗原に対する免疫反応を強く増強することができ、それゆえ非常に有効性の高いアジュバントを構成する1型誘発アジュバント (Immunizer)である、配列R1-XZXZNXZX-R2を含むペプチドAを開示する。特に好ましいペプチドはKLKLLLLLKLKである。天然の抗菌ペプチドのほかに、合成性抗菌ペプチドが製造され、研究されている。合成性抗菌ペプチドであるKLKLLLLLKLK-NH2は、黄色ブドウ球菌感染マウスにおいて顕著な化学療法活性を有することが示されており、ヒト好中球は細胞表面カルレティキュリン(calreticulin)を介してスーパーオキシドアニオン(O2−)を産生するように活性化されている。KおよびLの正確な数および位置が合成ペプチドの抗菌活性に重要であることが見出されている (Nakajima, Y. (1997); Cho, J-H. (1999))。
【0048】
本発明は併用医薬を皮下、筋肉内、皮内または経皮的などにより投与する場合に、特に有益である。しかしながら、他の適用形態(例えば、非経口、静脈内、鼻腔内、経口または局所適用)もまた、本発明に適している。
【0049】
インフルエンザ抗原は本発明のアジュバント(Immunizer) (組成物)と混合してもよいし、あるいは具体的にはリポソーム、遅延製剤などとして製剤化してもよい。
【0050】
本発明のワクチンはインフルエンザワクチン接種の分野の当業者に公知の有効量で個体に投与することができる。抗原量およびImmunizer量の最適化は、確立されている量から、利用可能な方法を用いて開始することができる。
【0051】
本発明を以下の実施例および図面によりさらに詳細に記載するが、当然のことながら本発明の限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、異なるODNと同時注射したカチオン性ペプチドが、市販のインフルエンザ-ワクチンに対して強い体液性1型反応(IgG2b)を相乗的に誘発することを示す。
【図2】図2は、KLK/o-d (IC)13が市販のインフルエンザワクチンの有効性を強く改善することを示す。
【図3a】図3aは、KLK/o-d (IC)13の単回注射が、市販のインフルエンザワクチンに対する細胞性1型反応および体液性1型および2型反応を相乗的に強く誘導することを示す。
【図3b】図3bは、KLK/o-d (IC)13の単回注射が、市販のインフルエンザワクチンに対する細胞性1型反応および体液性1型および2型反応を相乗的に強く誘導することを示す。
【図4】図4は、KLK/o-d (IC)13の単回注射が、市販のインフルエンザワクチンの有効性を強く改善することを示す。
【図5a】図5aは、インフルエンザAウィルスからのncORF誘導体ペプチドをKLK/o-d (IC)13と組み合わせて用いたワクチン接種が強力なIFN-γ産生T細胞を誘発し、ウィルス接種に対する防御を誘発することを示す。
【図5b】図5bは、インフルエンザAウィルスからのncORF誘導体ペプチドをKLK/o-d (IC)13と組み合わせて用いたワクチン接種が強力なIFN-γ産生T細胞を誘発し、ウィルス接種に対する防御を誘発することを示す。
【図6】図6は、KLK/o-d (IC)13がHCV-ペプチド特異的1型細胞性免疫反応を誘発することを示す。
【図7】図7は、異なるODNと同時投与したカチオン性ペプチドがHBsAg特異的細胞性1型反応(IFN-γ産生)を誘発し、他方、HBsAg誘発2型反応(IL-4産生)は影響を受けないか、または減少することを示す。
【図8a】図8aは、カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチドo-d (IC)13 (ODN1a)と少量の市販のインフルエンザワクチン(Agrippal S1) の組合せとの単回注射の結果としてワクチン特異的細胞性1型免疫反応が強く相乗的に誘発されることを示す。
【図8b】図8bは、カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)と少量の市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)との組合せの単回注射の結果として、1型/2型混合型の体液性免疫反応が相乗的に強く誘発されることを示す。
【図9a】図9aは、カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)との組合せを低用量で単回注射した結果として、市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)に対する強い細胞性免疫反応が相乗的に誘発されることを示す。
【図9b】図9bは、カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)と少量の市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)の組み合わせを低用量で単回注射した結果として、1型/2型の混合型の体液性免疫反応が相乗的に強く誘発されることを示す。
【図10】図10は、カチオン性抗菌ペプチドKLKおよび合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)と組み合わせた市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)の単回注射の結果を、他のアジュバントと比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
実施例1:
異なるオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(CpI、ntCpI、o-d(IC)13)とカチオン性ペプチド(pRまたはKLK)との同時注射は、市販のインフルエンザワクチン (Fluvirin)に対する1型体液性反応(IgG2b)を相乗的に強く誘発する。
【表1】
【0054】
実験群(12マウス/群):
1.未投薬
2.Fluワクチン
3.Fluワクチン+pR
4.Fluワクチン+KLK
5.Fluワクチン+Al(OH)3
6.Fluワクチン+o-d(IC)13
7.Fluワクチン+I-ODN2
8.Fluワクチン+I-ODN2b
9.Fluワクチン+pR+I-ODN 2
10.Fluワクチン+KLK+o-d(IC)13
11.Fluワクチン+KLK+I-ODN 2
12.Fluワクチン+KLK+I-ODN 2b
【0055】
0、28および56日目に、C57BL/6マウスの両後肢足蹠部に総体積100μl/マウス(50μl/足蹠部)で上記化合物を含有する注射(s.c.)を行った。26、54および82日目に血清を回収し、インフルエンザワクチン特異的IgG1およびIgG2b抗体についてELISAで分析した。力価はOD405nmの最大半量を得た血清の希釈率に対応する。
【0056】
図1は、カチオン性ペプチド(pRまたはKLK)と異なるODN(I-ODN 2、I-ODN 2bまたはo-d (IC)13)との併用注射により、非常に強力な抗原(インフルエンザワクチン)特異的体液性1型反応(IgG2b)が相乗的な様式で誘発されることを示す。インフルエンザワクチン(の単独またはAl(OH)3(カチオン性ペプチド(pR、KLK))のみまたは異なるODN (I-ODN 2を除く)のみとの組み合わせを注射すると、非特異的IgG2b反応が検出される。追加免疫接種は、観察可能な反応を強く上昇させる。
【0057】
インフルエンザワクチンのAl(OH)3、KLKまたはpR/I-ODN 2、KLK/I-ODN 2、KLK/I-ODN 2bもしくはKLK/o-d (IC)13の組合せとの同時投与により、インフルエンザワクチン特異的IgG1の産生を誘発する (2型反応)。
【0058】
実施例2:
KLK/o-d (IC)13との組合せにより、市販のインフルエンザ-ワクチン (Fluvirin)の有効性は強く改善される。
【表2】
【0059】
実験群(12マウス/群):
1.未接種
2.Fluワクチン
3.Fluワクチン+Al(OH)3
4.Fluワクチン+KLK+o-d (IC)13
【0060】
0、28および56日目に、BALB/cマウスの両後肢足蹠部に総体積100μl/マウス(50μl/足蹠部)で上記化合物を含有する注射を行った(s.c.)。26、54および82日目に血清を回収し、標準赤血球凝集阻害アッセイを用いて抗血球凝集素中和抗体について分析した。簡単に説明すると、ウィルス表面に血球凝集素が存在すると赤血球の血球凝集が誘発され、これは抗血球凝集素中和抗体により阻害することができる。異なるウィルス株の血球凝集素に対する抗体力価 (Al=A/ニューカレドニア/20/99 (H1N1)様株;A2=A/パナマ/2007/99RESVIR-17;B=B/四川/379/99様株)を測定した。血清の力価は阻害を示す最終希釈に対応する。
【0061】
インフルエンザワクチンの単独注射またはAl(OH)3と組み合わせての注射とは反対に、インフルエンザワクチン+KLKおよびo-d (IC)13の同時注射により試験した3種の血球凝集素全てに対する中和抗体が高レベルで誘発される(図2)。インフルエンザワクチンの有効性は抗血球凝集素抗体の血清力価と対応することが示されているので、得られた結果により、インフルエンザに対する防御の誘発についてKLK/o-d (IC)13は非常に強力であることが示される。
【0062】
実施例3
カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13の組合せの単回注射は、市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)に対する強い細胞性1型および体液性1型/2型免疫反応を相乗的に誘発する。
【0063】
材料
【表3】
【0064】
実験設定(マウス10匹/群)
1.未接種
2.Agrippal S1
3.Fluad
4.Agrippal S1+KLK+o-d(IC)13
0日目に、BALB/cマウスの両後肢大腿筋に、上記化合物を含有する総体積100μlワクチン/マウス(50μl/筋肉)を筋肉内注射した。21日目に血清を回収し、インフルエンザワクチン特異的IgG1およびIgG2a抗体についてELISAで分析した。力価はOD405nmの最大半量を得た血清希釈に対応する。さらに、各実験群の脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。脾細胞のアリコートを、磁性ソーティング(magnetic sorting)(CD4 MACSソート, Miltenyi)によりCD4+ T細胞に分けた。未分離の脾細胞および分離したCD4+ T細胞を非照射抗原提示細胞(APC;未接種マウス由来)と組み合わせて96ウェルELIspotプレート中で刺激して、各実験群についてAgrippal S1抗原特異的サイトカイン産生細胞の数を数えた。以下のサイトカイン産生を分析した:
IFN-γ(細胞性1型反応についての指標として)、
IL-4およびIL-5(細胞性2型反応についての指標として)。
【0065】
結果(図3a)
少量のインフルエンザワクチンAgrippal S1 (非アジュバント加)およびFluad (MF59 アジュバント加(adjuvanted))のみを少量注射した場合、CD4+ T細胞によるワクチン (Agrippal S1)特異的IFN-γ産生は誘発することはできなかったが、KLK/o-d (IC)13と組み合わせてAgrippal S1を注射すると、CD4+ T細胞による強力なワクチン(Agrippal S1)特異的IFN-γ産生が観察された。未接種のマウスと比較すると、Agrippal S1単独ではCD4+ T細胞によるIL-4の産生はわずかに誘発するのみであり、KLK/o-d (IC)13のワクチンへの添加によるさらなる上昇は示されなかった。しかしながら、FluadはCD4+ T細胞によるIL-4産生および未分離の脾細胞によるIL-5産生の強力な誘導因子である。IL-5はAgrippal Slの単独注射の際に非常に低レベルでのみ検出可能であるが、KLK/o-d (IC)13と組合せた場合は検出可能ではない。未分離の脾細胞の再刺激の際に、同様の結果が得られた。
【0066】
結果 (図3b)
図3bは、アジュバント加インフルエンザワクチンFluadの単独注射は強力なワクチン(Agrippal Sl)特異的体液性2型反応(IgG1)を誘発するが、1型反応(IgG2a)は弱い反応のみであった。しかしながら、アジュバント加インフルエンザワクチンのKLK/o-d (IC)13との併用注射により、非常に強力なワクチン(Agrippal S1)特異的IgG2a (体液性1型免疫反応)およびAgrippal S1単独の場合よりも高レベルのIgG1を誘発する。インフルエンザに対する防御はワクチン抗原特異的IgG2a抗体の存在と相関するので、得られた結果はインフルエンザワクチンに対する強力なアジュバントとして非常に強力なKLK/o-d (IC)13を示す。
【0067】
実施例4:
KLK/o-d (IC)13の組み合わせは、市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)の有効性を単回注射で非常によく改善する。
【0068】
材料
【表4】
【0069】
実験設定 (マウス10匹/群)
1.未接種
2.Agrippal S1
3.Fluad
4.Agrippal S1+KLK+o-d(IC)13
【0070】
0日目に、BALB/cマウスの両後肢大腿筋に、全体積100μlワクチン/マウス(50μl/筋肉)で上記化合物を含有する筋肉内注射を行った。21日目に血清を回収し、ヒト血清に対する標準血球凝集素阻害(HI)アッセイを用いて抗血球凝集素中和抗体について分析した。異なるウィルス株由来であるインフルエンザワクチンAggripal S1およびFluad (材料の項を参照)の両方に由来する、血球凝集素に対する抗体力価を測定した。
【0071】
結果(図4)
Agrippal S1の単独注射とは反対に、インフルエンザワクチンを少量のKLK/o-d (IC)13と同時注射すると、試験したインフルエンザA株2種(A/ニューカレドニア/20/99; A/パナマ/2007/99)に対する中和抗体レベルの強い上昇が誘発される。しかしながら、Fluadでの免疫感作により、Agrippal S1と少量のKLK/o-d (IC)13との同時注射の場合と同レベルの中和抗体が誘発される。インフルエンザワクチンの有効性は抗血球凝集素抗体の血清力価と相関することが示されているので、本発明の結果は、KLK/o-d (IC) 13がインフルエンザに対する防御を誘発するためのアジュバントである可能性が高いことを示す。
【0072】
実施例5:
KLK/o-d (IC)13と組み合わせてのインフルエンザAウィルス由来のncORF由来ペプチドを用いたワクチン接種。特異的T細胞反応をワクチン接種の7日後に測定し、続けて動物にマウス順化インフルエンザAウィルス(x31)を致死用量で接種した。15日間に生存をモニターする。
【0073】
材料
【表5】
【0074】
実験設定(マウス15匹/群)
1.p1574+KLK+o-d(IC)13
2.p1569+KLK+o-d(IC)13
3.p1600+KLK+o-d(IC)13
4.p1664+KLK+o-d(IC)13
5.p1600+p1569+KLK+o-d(IC)13
【0075】
0日目に、マウスの両後肢足蹠部にワクチン総体積100μl/マウス(50μl/足蹠部)で上記化合物を含有する注射(s.c.)を行った。7日目に、マウス5匹由来の未分離の脾細胞を96ウェルELIspotプレート中で刺激し、ペプチド特異的IFN-γ産生細胞の数を各実験群について数えた。残りのマウス10匹にマウス順化x31 インフルエンザAウィルス(5*10E5 pfu)を抗原投与した。15日間、生存をモニターした。
【0076】
結果(ELIspot(図5a))
第1群および第3群(ペプチドsp1574およびp1600) 由来の脾細胞は個々のペプチドでの再刺激の後では何ら特異的なスポットは示さなかった。第2群および第4群(p1569およびp1664) は、再刺激後に特にIFN-γを遊離する。第5群には2種のペプチドを個別にワクチン接種した(p1600およびp1569の混合物としてではない)。両方のペプチドの混合物またはp1569のいずれかを用いて再刺激すると、特異的なサイトカイン放出が検出される。反対に、p1600単独での再刺激の際には、IFN-γスポットは検出されない。これは第3群(p1600単独)と一致する。
【0077】
結果(抗原投与(図5b))
図5bは、マウス順化インフルエンザAウィルスx31を致死用量で抗原投与したマウスの生存率を示す。第1群(p1574、H2-Dbに対する防御エピトープと報告されている)は、抗原投与した全マウスの30%を防御する。ペプチドp1569は全く防御しなかった(0%)。反対に、ペプチドsp1600およびp1664は抗原投与した動物をそれぞれ50%および62%で防御した。動物に2種の異なるペプチド(第5群、ペプチドsp1600および1569)をワクチン接種すると、最大70%の動物が防御される。
【0078】
実施例6
強力なHCV特異的1型細胞性反応が、5種の異なるHCV由来ペプチド、抗菌性ペプチドKLKおよび合成デオキシヌクレオチドo-d (IC)13の混合注射により誘発される。
【表6】
【0079】
実験設定(マウス5匹/群):
1.HCVペプチド
2.HCVペプチド+KLK+o-d (IC)13
【0080】
0、14および28日目に、HHD.1マウスの両後肢足蹠部に合計100μl/マウス(50μl/足蹠部)の上記化合物を含有する注射(s.c.)を行った。35日目(最後のワクチン接種から7日目)に、CD4+およびCD8+ T細胞を磁気分離(MACS, Miltenyi)により脾細胞の単一細胞懸濁液から単離した。T細胞を培地(バックグラウンドコントロール)と共にインキュベートするか、またはワクチン接種に用いた異なるペプチドまたは無関係なペプチドp1274のいずれかの存在下で未接種のHHD.1マウス由来の非照射脾細胞をAPCとして用いて再度刺激した。一晩インキュベートした後、IFN-γ産生をELIspotアッセイを用いて分析した。図6は、5個のHCV由来ペプチドをKLK/o-d (IC)13と共に同時注射すると、CD4+細胞によりp84、p87、p89、p1426に対する大量のIFN-γの産生が誘導された。さらに、CD8+ T細胞によるp87、p89に対する強いIFN-γ産生を検出した。
【0081】
実施例7
異なるオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(CpI、ntCpI、o-d (IC)13)と同時注射したカチオン性ペプチド(pRまたはKLK)はB型肝炎表面抗原に対する強い1型細胞性反応(IFN-γ)を相乗的に誘発する。
【表7】
【0082】
実験設定 (マウス5匹/群/1時点):
1.HBsAg
2.HBsAg+Alum
3.HBsAg+I-ODN 2
4.HBsAg+I-ODN 2b
5.HBsAg+o-d(IC)13
6.HBsAg+pR
7.HBsAg+KLK
8.HBsAg+pR+I-ODN 2
9.HBsAg+pR+I-ODN 2b
10.HBsAg+pR+o-d(IC)13
11.HBsAg+KLK+I-ODN 2
12.HBsAg+KLK+I-ODN 2b
13.HBsAg+KLK+o-d(IC)13
【0083】
0日目および56日目に、マウス右脇腹に上記化合物を含有する皮下注射を全体積100μl/マウスで行った。免疫応答の分析を、1回目の注射および2回目の注射の7日目、21日目および50日目にそれぞれ行った。各時点あたり1群5匹のマウスの脾細胞を10μg/ml HbsAgで生体外で再度刺激し、HBsAg特異的IFN-γ(1型免疫反応)およびIL-4 (2型免疫反応)の産生を分析するためにELIspotアッセイを行った。
【0084】
結果(図7)
単独またはAlumと組み合わせてのHBsAg注射はIFN-γを誘発しないか、または非常に低いレベルでのみ誘発する。他方、pR/ODNまたはKLK/ODNと組み合わせてHBsAgを注射すると、HBsAg特異的IFN-γ産生が誘発され、これは追加免疫感作によりさらに増加させることができる。追加免疫の後のAlum、pRおよびKLKの同時注射、ならびにKLK/ODN組合せの同時注射の際に、HBsAg単独注射の場合と比較してわずかにIL-4産生の増加を観察することができる。
【0085】
実施例8
カチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC) 13 (ODN1a)、および少量の市販インフルエンザワクチン (Agrippal S1) の組合せは、単回注射により相乗的に、強いワクチン特異的細胞性1型免疫反応を誘発する。
材料
【表8】
【0086】
実験設定(マウス10匹/群)
1.未接種
2.9μg Agrippal S1
3.0.1μg Agrippal S1
4.0.1μg Agrippal S1+100nmol KLK+4nmol ODN1a
5.0.1μg Agrippal S1+35nmol KLK+1.4nmol ODN1a
6.0.1μg Agrippal S1+10nmol KLK+0.4nmol ODN1a
【0087】
0日目に、BALB/cマウスの両後肢大腿筋に、上記化合物を含有する合計100μlワクチン/マウス(50μl/筋肉)を筋肉内注射した。21日目に、血清を回収し、インフルエンザワクチン特異的IgG1およびIgG2a抗体についてELISAで分析した。力価はOD405nmの最大半量を得た血清の希釈率に対応する。さらに、各実験群の脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。脾細胞のアリコートを、磁性ソーティング(magnetic sorting)(CD4およびCD8 MACSソート, Miltenyi)によりCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞に分けた。未分離の脾細胞または分離したCD4+ TおよびCD8+ T細胞のいずれかを非照射抗原提示細胞(APC;未接種マウス由来)と組み合わせて96ウェルELIspotプレート中で刺激して、各実験群についてAgrippal S1抗原特異的サイトカイン産生細胞の数を数えた。以下のサイトカイン産生を分析した:
IFN-γ(細胞性1型反応についての指標として)、
IL-4およびIL-5(細胞性2型反応についての指標として)。
【0088】
結果(図8a)
Agrippal S1を単独で9μgおよび0.1μgで用いてマウスにワクチン接種した場合、CD4+脾細胞によるワクチン特異的IFN-γを誘導することができなかったが、他方、Agrippal S1を異なる濃度のKLK/o-d (IC)13と組み合わせて注射した場合は、CD4+脾細胞によるIFN-γの強い産生を観察した。しかしながら、CD8+脾細胞はIFN-γを誘導することはできなかった。未接種のマウスと比較して、Agrippal S1単独では非分離の脾細胞およびCD4+脾細胞によるIL-4の産生をわずかに誘導するのみであり、KLK/o-d (IC)13のワクチンへの添加によるさらなる増加は示されなかった。しかし、Agrippal S1が誘導したIL-5はKLK/o-d (IC)13との同時注射の際に完全には停止しなかった。非分離の脾細胞の再刺激の際に、同様の結果が得られる。
【0089】
結果(図8b)
図8bに示すように、少量の非アジュバント加インフルエンザワクチンと異なる濃度のKLK/o-d (IC)13との混合注射は、非常に強力なワクチン (Agrippal S1)特異的IgG2a (体液性1型免疫反応)を誘導し、少量のAgrippal S1単独の場合よりも高レベルでIgG1を誘導した。しかし、高用量のAgrippal S1の場合に、最も高い力価のワクチン特異的IgG1抗体が示された。インフルエンザに対する防御はワクチン抗原特異的IgG2a抗体の存在と関連しているので、得られた結果はKLK/o-d (IC)13がインフルエンザワクチンに対する強力なアジュバントである可能性が高いことを示す。
【0090】
実施例9
低用量のカチオン性抗菌ペプチドKLKと合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13 (ODN1a)との単回注射により、市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)に対する強力なワクチン特異的細胞性I型免疫反応を相乗的に誘発する。
【0091】
材料
【表9】
【0092】
実験の設定(マウス5匹/群)
1.未接種
2.9pg Agrippal S1
3.1μg Agrippal S1
4.1μg Agrippal S1+10nmol KLK+0.4nmol ODN1a
5.1μg Agrippal S1+5nmol KLK+0.2nmol ODN1a
6.1μg Agrippal S1+1nmol KLK+0.04nmol ODN1a
【0093】
0日目に、BALB/cマウスの両後肢大腿筋に、上記化合物を含有する総体積100μlワクチン/マウス(50μl/筋肉)で筋肉内注射を行った。21日目に、血清を回収し、インフルエンザワクチン特異的IgG1およびIgG2a抗体についてELISAで分析した。力価はOD405nmの最大半量を得た血清の希釈率に対応する。さらに、各実験群の脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。各実験群についてAgrippal S1抗原特異的サイトカイン産生細胞の数を数えるために96ウェルELIspotプレート中で脾細胞を刺激した。以下のサイトカイン産生を分析した:
IFN-γ(細胞性1型反応についての指標として)、
IL-4およびIL-5(細胞性2型反応についての指標として)。
【0094】
結果(図9a)
Agrippal S1(9μgおよび1μg)単独でマウスにワクチン接種するとやはりマウス脾細胞によるワクチン特異的IFN-γの誘導は可能ではなかったが(図8aをも参照のこと)、他方、異なる濃度(低用量)のKLK/o-d (IC)13と併用してAgrippal S1を注射すると、強力なIFN-γ産生が観察された。未接種のマウスと比較すると、Agrippal S1単独のみがマウス脾細胞によるIL-4の産生をほんのわずか増加させ、KLK/o-d(IC)13のワクチンへの添加は効果がなかった。Agrippal S1が誘発したIL-5は、KLK/o-d(IC)13との同時注射の際に濃度依存的に停止した。非常に低い投与量の場合でさえ、KLK/o-d(IC)13の組合せは強い細胞性I型免疫反応を誘発する。
【0095】
結果(図9b)
少量の非アジュバント加インフルエンザワクチンを異なる濃度のKLK/o-d (IC)13と混合注射することにより、非常に強力なワクチン (Agrippal S1)特異的IgG2a (体液性1型免疫反応) および少量のAgrippal S1単独の場合とほぼ匹敵するレベルのIgG1を誘発した。しかしながら、高用量のAgrippal S1単独ではワクチン特異的IgG1抗体の力価はわずかな上昇を示し、Agrippal S1および最低濃度のKLK/o-d (IC)13を同時注射した場合と同等レベルのIgG2a抗体が示された。インフルエンザに対する防御はワクチン抗原特異的IgG2a抗体の存在と相関関係があり、得られた結果は、非常に低い用量でさえ、KLK/o-d (IC)13のインフルエンザワクチン用の強力なアジュバントとしての高い可能性を示す。
【0096】
実施例10
カチオン性抗菌ペプチドKLKおよび合成オリゴデオキシヌクレオチド o-d (IC)13(ODN1a)と組み合わせた場合の市販のインフルエンザワクチン (Agrippal S1)単回注射の、他のアジュバントとの比較
【0097】
材料
【表10】
【0098】
実験の設定(マウス5匹/群)
1.未接種
2.9μg Fluad
3.9μg Agrippal S1
4.1μg Agrippal S1
5.1μg Agrippal S1+10nmol KLK+0.4nmol ODN1a
6.1μg Agrippal S1+5nmol CpG1668
7.1μg Agrippal S1+100μg pR43
8.1μg Agrippal S1+100nmol KLK
9.1μg Agrippal S1+Alum
10.1μg Agrippal S1+CFA
11.1μg Agrippal S1+IFA
【0099】
0日目に、BALB/cマウスの両大腿筋に上記化合物を含むワクチンを総量100μl/マウス(50μl/筋肉)で筋肉内注射した。21日目に各実験群の脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。各実験群についてAgrippal S1抗原特異的サイトカイン産生細胞数を測定するために、脾細胞を96-ウェルELIspotプレート中で刺激した。以下のサイトカインの産生を分析した:
IFN-γ(細胞性1型反応についての指標として)、
IL-4およびIL-5(細胞性2型反応についての指標として)。
【0100】
結果(図10)
少量の非アジュバント加インフルエンザワクチンを低用量のKLK/o-d (IC)13と混合注射すると、Agrippal S1およびFluad単独で免疫感作させた場合と比較して、マウス脾細胞によるワクチン (Agrippal S1)-特異的IFN-γが高レベルで誘導された。
【0101】
匹敵する量のIFN-γはCFAでのワクチン接種の場合でのみで達成され、他の全ての実験群はAgrippal S1単独の場合と比較してマウス脾細胞によるIFN-γ産生はほとんど上昇しなかった(pR43、Alum、IFA)か、またはわずかに上昇した(CpG1668、KLK)。未接種のマウスと比較すると、Fluadのみがマウス脾細胞によるIL-4の産生を顕著に誘導したが、他の全ての実験群ではほとんど同じ低レベルのIL-4を示した。ワクチン抗原特異的IL-5は、マウスのFluadでのワクチン接種に基づいて非常に高いレベルで検出され、Agrippal S1単独またはKLKとの組み合わせての注射の際には中程度のレベルで検出された。Agrippal S1とpR、AlumまたはIFAとの同時注射は、IL-5のレベルをわずかに上昇させるのみであり、他の全ての群はIL-5産生の減少を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザウイルス感染を予防するためのワクチンであって、
−インフルエンザ抗原、
−アミノ酸配列KLKL5KLKを含むペプチド、ならびに
−tcc atg acg ttc ctg atg ctおよびチオホスフェート置換tcc atg acg ttc ctg atg ctから選ばれる免疫刺激オリゴデオキシ核酸分子(ODN)を含有するワクチン。
【請求項2】
Al(OH)3アジュバントをさらに含有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
該抗原が血球凝集素抗原またはノイラミニダーゼ抗原である請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項4】
インフルエンザウイルス感染に対する防御効果を改善するインフルエンザウイルスに対するワクチンを製造するための、インフルエンザ抗原、アミノ酸配列KLKL5KLKを含むペプチド、ならびにtcc atg acg ttc ctg atg ctおよびチオホスフェート置換tcc atg acg ttc ctg atg ctから選ばれる免疫刺激オリゴデオキシ核酸分子(ODN)の組合せの使用。
【請求項5】
インフルエンザウイルス感染に対するワクチンの抗原特異的1型反応を改善し、同時に該ワクチンの2型反応を維持するか、または増加させる、インフルエンザウイルスに対するワクチンを製造するための、インフルエンザ抗原、アミノ酸配列KLKL5KLKを含むペプチド、ならびにtcc atg acg ttc ctg atg ctおよびチオホスフェート置換tcc atg acg ttc ctg atg ctから選ばれる免疫刺激オリゴデオキシ核酸分子(ODN)の組合せの使用。
【請求項6】
該抗原特異的1型反応がIgG2抗体反応またはIFN-γ反応であり、および/または該2型反応がIgG1抗体反応またはインターロイキン-4(IL-4)である請求項5記載の使用。
【請求項7】
該ワクチンが血球凝集素抗原またはノイラミニダーゼ抗原を含む請求項4〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項1】
インフルエンザウイルス感染を予防するためのワクチンであって、
−インフルエンザ抗原、
−アミノ酸配列KLKL5KLKを含むペプチド、ならびに
−tcc atg acg ttc ctg atg ctおよびチオホスフェート置換tcc atg acg ttc ctg atg ctから選ばれる免疫刺激オリゴデオキシ核酸分子(ODN)を含有するワクチン。
【請求項2】
Al(OH)3アジュバントをさらに含有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
該抗原が血球凝集素抗原またはノイラミニダーゼ抗原である請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項4】
インフルエンザウイルス感染に対する防御効果を改善するインフルエンザウイルスに対するワクチンを製造するための、インフルエンザ抗原、アミノ酸配列KLKL5KLKを含むペプチド、ならびにtcc atg acg ttc ctg atg ctおよびチオホスフェート置換tcc atg acg ttc ctg atg ctから選ばれる免疫刺激オリゴデオキシ核酸分子(ODN)の組合せの使用。
【請求項5】
インフルエンザウイルス感染に対するワクチンの抗原特異的1型反応を改善し、同時に該ワクチンの2型反応を維持するか、または増加させる、インフルエンザウイルスに対するワクチンを製造するための、インフルエンザ抗原、アミノ酸配列KLKL5KLKを含むペプチド、ならびにtcc atg acg ttc ctg atg ctおよびチオホスフェート置換tcc atg acg ttc ctg atg ctから選ばれる免疫刺激オリゴデオキシ核酸分子(ODN)の組合せの使用。
【請求項6】
該抗原特異的1型反応がIgG2抗体反応またはIFN-γ反応であり、および/または該2型反応がIgG1抗体反応またはインターロイキン-4(IL-4)である請求項5記載の使用。
【請求項7】
該ワクチンが血球凝集素抗原またはノイラミニダーゼ抗原を含む請求項4〜6のいずれかに記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【公開番号】特開2011−42678(P2011−42678A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237719(P2010−237719)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【分割の表示】特願2006−504798(P2006−504798)の分割
【原出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【出願人】(502270718)インターツェル・アクチェンゲゼルシャフト (26)
【氏名又は名称原語表記】INTERCELL AG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【分割の表示】特願2006−504798(P2006−504798)の分割
【原出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【出願人】(502270718)インターツェル・アクチェンゲゼルシャフト (26)
【氏名又は名称原語表記】INTERCELL AG
【Fターム(参考)】
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