説明

改良型排水空間を備えたトレッド

本発明は、ホイールトレッド(10)を備えたタイヤ用のトレッド(1)であって、トレッドの本体中にオーバーラップした少なくとも2つの摩耗層(C1,C2,C3)を有し、第1の摩耗層(C1)が複数個の隆起要素(21,22)で形成され、各隆起要素が接触領域を有し、第1の層が、少なくとも、周方向溝(20,20′)を有し、トレッドが新品であるときに第1の摩耗層が路面に接触し、第1の摩耗層(C1)が完全に摩滅した後、少なくとも1つの他の摩耗層(C2,C3)が路面に接触し、他の摩耗層が周方向に延びる少なくとも1本のチャネル(30)を有し、他の摩耗層に達するといつでも少なくとも1本のチャネル(30)がホイールトレッド(10)に通じ、他の摩耗層(C2,C3)の各々は、周方向に分布して配置された複数個の横方向切れ目(31)を有し、各横方向切れ目は、他の摩耗層の摩耗レベルとは無関係に少なくとも1つの他の周方溝中に完全に又は部分的に開口するよう問題の摩耗層のチャネル(30)から周方向ではない方向に延びることを特徴とするトレッドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッドバンドの分野に関し、特に、本発明は、重量物運搬車両型の車両用タイヤトレッドバンドに関し、これらトレッドバンドは、幾何学的形状が摩耗につれて変化する踏み面(トレッド表面)を有している。本発明は又、かかるトレッドを成形するモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッドバンドは、タイヤと路面との接触をもたらすようタイヤの外側で周方向に延びている。タイヤトレッドバンドと路面の接触は、接触パッチで起こる。トレッドバンドは、タイヤがスリップするのを阻止するために十分なグリップを提供する役割を持ち、このスリップ(滑り)は、加速中、制動中又はコーナリング中に起こる。タイヤトレッドバンドは、隆起要素例えばリブ又はブロックを有し、これら隆起要素は、溝(即ち、平均幅が2mmを超える切れ目)により画定されている。さらに、これら隆起要素は、切込み、即ち、幅がせいぜい2mmに等しい切れ目を備える場合がある。これら切込みの役割は、追加のエッジを作ると同時に多量のゴムコンパウンドを維持することにある。これら切込みは、遮断型のものであるのが良く、即ち、これら切込みを画定する対向した壁上にこれら壁の相対運動を制限する手段を有するのが良い。
【0003】
各タイヤ製造業者が解決しようとしている1つの課題は、タイヤを交換しなければならない時点までのタイヤトレッドバンドの走行可能距離を増大させるということである。一解決手段は、トレッドバンドの厚さを増大させることであり、即ち、この増大量は、直角方向における一ステップ分であるが、これにより摩滅可能な材料が増えるので、ヒステリシス損及びかくして転がり抵抗(即ち、タイヤが転動しているときにタイヤにより消費されるエネルギーの量)の相当な増大も又観察される。したがって、どちらかといえば、タイヤトレッドバンドの厚さを減少させることのほうが望ましい。というのは、これは、トレッドバンドの剛性を増大させる作用効果及びかくしてヒステリシスによる熱損失を減少させるという作用効果があるからである。この別の方式では、良好な耐摩耗性を有するゴムを主成分とするコンパウンドを用いることが可能である。トレッドバンドの厚さを減少させることにより、高いヒステリシスをもつゴムコンパウンドの使用が可能になる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ製造業者の直面している別の共通の課題は、タイヤの有効寿命全体を通じ、即ち、トレッドバンドの摩耗レベルとは無関係にタイヤの性能を維持するという課題である。通常、濡れた路面上での運転時に水の良好な排出を保証するのに必要な溝の中空容積は、トレッド摩耗につれて減少する。本発明の目的は、部分的摩耗に続くグリップの面における性能を維持すると同時にトレッドが低い転がり抵抗及び良好な耐摩耗性を維持するトレッドバンドを提供することにある。
【0005】
したがって、タイヤトレッドバンドが部分的に摩耗した後に所与の容積の切れ目を有するが、その摩耗レベルとは無関係に、特に、新品状態においてタイヤの性能を損なうことのないタイヤトレッドバンドが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、路面に接触する踏み面を備えたタイヤトレッドバンドであって、トレッドバンドがトレッドの厚み中に重ね合わされた少なくとも2つの摩耗層を有し、各摩耗層が厚さを有するタイヤトレッドバンドにある。新品状態において、このトレッドバンドは、
‐第1の摩耗層を有し、第1の摩耗層は、複数個の隆起要素で形成され、各隆起要素は、接触面を有し、第1の層は、少なくとも、全体として周方向の向きの溝を有し、第1の摩耗層は、トレッドが新品であるとき及びこの摩耗層の厚さに対応した摩耗レベルに至るまでは路面と接触関係をなすようになっており、
‐少なくとも1つの他の摩耗層を有し、かかる他の摩耗層は各々、第1の摩耗層が完全に摩滅した後、路面に接触し、他の摩耗層は、全体として周方向に延びる少なくとも1本のチャネルを有し、少なくとも1本のチャネルは、他の摩耗層に先行する摩耗層が完全に摩滅した後、他の摩耗層に達するやいなや踏み面上に開口する。
【0007】
このレッドバンドは、第1の摩耗層とは別個の各摩耗層が周方向に分布して配置された複数個の横方向切込みを有し、各横方向切込みが他の摩耗層の摩耗レベルとは無関係に少なくとも1つの他の周方向に差し向けられたチャネル又は溝中に完全に又は部分的に開口するよう問題の摩耗層のチャネルから周方向ではない方向に延びるようなものである。
【0008】
かくして、新品状態における長手方向溝の深さを減少させることができ、それにより、部分摩耗により第1の摩耗層が摩滅した後に新たな溝が現れ、それと同時に、横方向切込みが新たな摩耗層に現れるようになる。この場合、これにより、トレッドの圧縮性がかなり制限され、新品状態におけるトレッド中におけるエネルギーの散逸がそれに応じて一層制限される。というのは、切込みが新品状態では踏み面上に開口せず、その使用の第2段階においてトレッドに満足の行くトラクションを与えるよう部分摩耗に続いて現れるに過ぎないからである。
【0009】
また、各新たな横方向切込みは、この切込みの各側に位置したトレッドバンドの要素相互間の機械的結合解除を達成するよう別の溝中に開口することが必要不可欠である。この理由は、接触パッチから出ていっている要素の部分が切込みの他方の側に位置した同一要素の部分を同伴するのを阻止するためである。
【0010】
有利な変形形態では、各摩耗層の最大排水容積は、第1の摩耗層の最大排水容積、即ち、新品状態におけるトレッドバンドの排水容積の少なくとも60%に等しい。摩耗層の最大排水容積は、公称の使用条件下における接触パッチの平均長さに踏み面上に開口した考察対象の摩耗層の溝の断面積の和を乗算することによって評価される。
【0011】
本発明の改造形態では、第1の摩耗層は、複数個の穴を有し、各穴は、トレッドが新品状態であるときに踏み面上に開口し、第1の摩耗層に続く内側の摩耗層のチャネル内に開口する。各穴は、穴が開口しているチャネルの横方向寸法の少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%に等しい主要な断面寸法を有する。この場合の穴の主要断面寸法は、穴が円形断面である場合にはその直径を意味し、その断面が長円形である場合にはその長軸及び短軸を意味し、或いは、これが長方形断面の場合にはその幅及び長さを意味している。
【0012】
好ましくは、チャネル中に開口した穴の数は、トレッドバンドが路面と接触する領域に複数個の穴が存在するよう選択される。この数は、2つの連続して位置する穴相互間の間隔が接触パッチの平均長さの1/5以下であるように選択されることが有利である。接触パッチの平均長さは、かかるトレッドバンドを備えたタイヤの用いられる公称条件(これら条件は、特にETRTOによって提供されている)に対応した圧力及び加重条件について定められる。これら穴が設けられていることは、トレッドを通気することによってトレッド中の温度を減少させる利点とこの真上(即ち、チャネルを備えた摩耗層とトレッドバンドの踏み面との間)に位置した摩耗層がいったん完全に摩滅すると、新たな溝を良好に出現させる利点の両方が得られる。確かに、新たな溝がチャネルから現れる仕方を先の層が摩滅した後に最初に路面に接触するチャネル画定部分上に不連続部と言えばよいようなものを作る穴の存在によって改善することができる。
【0013】
有利には、各穴は、チャネル中に開口した少なくとも1つの横方向切込みの開始箇所のところでこのチャネル中に開口する。
【0014】
本発明の他の特徴及び他の利点は、非限定的な例として本発明の幾つかの実施形態を記載した添付の図面を参照して以下に与えられる説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】厚み中に2つの摩耗層を有する本発明のトレッドバンドの部分図である。
【図2】図1に示されているトレッドバンドのII‐II線矢視断面図である。
【図3】図1に示されているトレッドバンドの第2の摩耗層に達したときの踏み面の平面図である。
【図4】各チャネルを新品状態のトレッドの踏み面に結合する複数個の穴を有する本発明の変形形態の図である。
【図5】図4に示された変形形態の断面図である。
【図6】厚み中に3つの摩耗層を有する本発明のトレッドバンドの変形形態を示す図である。
【図7】本発明のトレッドの別の変形形態の踏み面の図であり、切込みがこの踏み面上に開口している状態を示す図である。
【図8】図7に示されたトレッドのVIII‐VIII線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
【0017】
‐タイヤの赤道面は、タイヤの回転軸線に垂直であり、タイヤを2つのタイヤ半部に分ける平面である。この赤道面は、特に、回転軸線から見て半径方向最も遠くに位置するタイヤ上の箇所を含む。
‐第1の箇所は、この第1の箇所が回転軸線からの第2の箇所の距離よりも長い回転軸線からの距離のところに位置している場合、第2の箇所の半径方向外側に位置していると言える。
‐タイヤの子午線断面は、タイヤの回転軸線を含む平面内で取られたタイヤの断面である。
‐周方向は、この場合、回転軸線上に中心をもつ円のあらゆる箇所における接線方向を意味している。
‐半径方向は、この場合、回転軸線に垂直な方向を意味している。
‐軸方向又は横方向は、この場合、半径方向に垂直であり且つタイヤの回転軸線に平行な方向を意味している。
【0018】
読みやすくするために、以下の説明全体にわたって同一の参照符号が全ての変形形態について用いられており、ただし、この参照符号が同一の構図を有すると共に同一の機能を実行する要素を示すものとする。
【0019】
図1は、本発明に従って構成されたタイヤのトレッドバンド1の平面図である。このトレッド1は、3つの主要な溝20により形成されたトレッドパターンを有し、これら溝は、周方向に差し向けられていて、中間部リブ22を画定すると共にこれら中間部リブの軸方向各側に縁部リブ21を画定しており、これら溝は、走行中、路面に接触するようになっている踏み面(トレッド表面)10上に開口している。図示のトレッド1は、摩耗していない新品状態のトレッドに対応している。この条件では、溝は全て、同一の深さP20及び幅L20を有し、これらの寸法は、特に、雨天下において路面上に存在する水を排出するのに有効である。また、この図1では、2つの中間部リブ22中に周方向に差し向けられたチャネル30の存在が見て取れ、加うるに、これらチャネルは、溝20中に開口した切込み31と交差している。
【0020】
図2は、図1に示されたトレッドバンドの踏み面10上のそのII‐II線に沿って取った断面平面における断面図である。この断面図では、チャネル30が新品状態の踏み面から距離H1のところに位置していることが理解でき、この厚さH1は、溝20だけが存在していて作用状態にある第1の摩耗層を定めている。チャネル30は、トレッドの厚さの方向に測定して高さH2を有し、この高さH2は、主要な溝20とトレッド摩耗レベルが少なくとも高さH1に等しくなるやいなや生じる新たな溝の両方を働かせる第2の摩耗層C2を定めている。
【0021】
また、各チャネルの各側において、溝20まで延びている切込みが見て取れる。かくして、摩耗レベルが第2の摩耗層C2に達すると、即ち、第1の摩耗層C1が完全に摩滅した後、チャネルは、溝20を補完する新たな溝を形成する。このように、路面と接触状態にある溝の領域がかなり増大し、それと同時に、新品状態であったときの容積に実質的に等しい溝容積が再び得られる。さらに、横方向切込み31が第2の摩耗層にのみ設けられていることにより、初期状態にあるトレッドは、変形によるヒステリシス損を減少させるのに有利な全体的に高い剛性を有すると同時に第2の摩耗層が路面と接触関係をなして作用状態にあるとき、これら切込みの各側に位置した新たなリブの部分相互間の機械的結合解除をもたらすことができる。
【0022】
図3は、トレッドバンドの第2の摩耗層が作用状態になったときの新たな踏み面10′の平面図である。各リブ22は、新たなリブ22′,22″で置き換えられており、これら新たなリブは、新たな踏み面10′上に開口したチャネル30により形成される溝を画定している。この図3で理解できるように、これら新たなリブは、溝20とチャネル30の両方中に開口した切込み31が設けられることによって生じる周方向の不連続部を有しており、複数個の切込みが永続的に接触状態にあるので、これら不連続部は、各切込みの各側に周方向に位置した同一の新たなリブ22′又はリブ22″の部分相互間の機械的結合解除をもたらす。
【0023】
図2は、溝20が新品状態におけるトレッドバンドの踏み面10上に開口し、全て、同一の幅L20及び同一の深さP20を有することを示しており、この深さP20は、第1の摩耗層C1の高さH1と第2の摩耗層C2の高さH2の合計に実質的に等しい。この特定の場合、第1の摩耗層の排水容積は、各周方向溝20により提供される排水容積の3倍に等しい。各溝20の容積は、図の紙面で見てこの溝の断面積に実質的に比例する。この第1の摩耗層が摩滅すると、即ち、第2の摩耗層が現れると、排水容積は、新品状態の第1の摩耗層の容積の実質的に75%に等しいレベルにある。この新たな排水容積は、チャネル30により形成される新たな溝の容積を残りの深さH2の3つの周方向溝20の排水容積に加えることによって得られる。
【0024】
図4及び図5に示された変形形態では、図1〜図3の変形形態と比較して新たな要素が導入されており、これは、円筒形の形をしていると共に円形断面を有する穴の存在であり、これら穴は、新品状態におけるトレッドバンドの踏み面上に開口すると共にチャネル30中に開口するよう第1の摩耗層を貫通している。
【0025】
これら穴は、チャネル30の幅L30の少なくとも30%に等しい直径を有している。この特定の場合、この直径は、幅L30に等しい。これら穴は、この場合、半径方向に差し向けられているが、当業者であれば、必要に応じてこれらの穴に角度を付けることができる。各穴の断面形状は、楕円形であっても良く、有利には、楕円の長軸は、周方向に差し向けられる。
【0026】
かかる穴の数が十分であることにより、即ち、穴がトレッドを備えたタイヤの公称条件下で得られる接触パッチの長さの1/5よりも短い間隔Pで設けられていることにより、新たな溝の生成具合は、トレッドバンドが摩耗状態になったときに相当改善される。図示の例の場合のように、これら穴は、チャネルを他のチャネル又は溝に結合する切込みの位置と一致することが有利である。
【0027】
ちょうど今説明した2つの変形実施形態の場合、成形は、摩耗タイヤの更生(山掛け)に用いられるのと同一な仕方でトレッドをタイヤブランク上に取り付ける前にトレッドの半径方向外面及び半径方向内面を成形するモールドを用いて種々の溝、チャネル、切込み及び穴を成形により成形することによって実施可能である。
【0028】
本発明のトレッドバンドの別の変形形態が図6に断面で示されている。この断面図では、トレッドバンドが3つの摩耗層C1,C2,C3を有し、これら摩耗層は、それぞれ、新品状態のトレッド上に見える第1の摩耗層C1から始まっていることが理解できる。これら摩耗層は、それぞれの厚さH1,H2,H3を有し、これらの厚さは、第1の摩耗層からトレッドの内側寄りに最も遠くに位置する最後の層まで増大している。トレッドが新品であるとき、別の溝20′と一緒に深さP20の溝20だけが踏み面10上に開口し、溝20′の深さP20′は、第1の摩耗層C1の厚さH1に実質的に等しい。
【0029】
この溝P20′の半径方向内側には、長さL30′及び第3の摩耗層C3の厚さに実質的に等しい深さP30′のチャネル30′が形成されている。溝P20′とこのチャネル30′との間には、複数個の穴40′が形成され、これら穴40′は、溝P20′及びチャネル30′中に開口している。
【0030】
溝20と溝20′との間で軸方向には深さP30及び幅L30のチャネル30が設けられていることが理解でき、各チャネルは、各側に深さ中に設けられたジグザグの切込み31を備えると共に一方の側が溝20中に開口すると共に他方の側が部分的に溝20′中に開口すると共に部分的にチャネル30′中に開口している。チャネル30は、穴40を備え、これら穴は、第1の摩耗層C1中への半径方向外方のチャネルの延長部として設けられている。
【0031】
溝20′の下に形成されているチャネル30′は、各側に、深さ中に設けられた複数個のジグザグの切込み31′を備え、これら切込み31′は、チャネル30中に開口している。
【0032】
高さH2の第2の摩耗層C2は、チャネル30の最も外側の部分と溝20′の下に半径方向に位置したチャネル30′の最も外側の部分との間に形成されている。
【0033】
図7及び図8に示されている最後の変形形態は、図6の変形形態と極めて類似しており、切込み31が新品状態のトレッドバンドの踏み面まで延長されているという少なくとも1つの相違点がある。この変形形態では、第1の摩耗層以外の摩耗層の横方向切込みの延長部として、相補切込みが設けられ、これら相補切込みは、少なくとも1つの他の摩耗層を貫通している。このトレッドバンドは、315/70R22.5サイズのタイヤに装着され、公称使用条件は、膨張圧力が8バール、支持荷重は、3000daNである。これら公称条件下において、接触パッチの平均長さは、200mmに等しい。
【0034】
新品状態のトレッドバンドの踏み面10の平面図である図7で理解できるように、3つの周方向溝20,20′は、トレッドの軸方向エッジを形成する溝21を画定すると共に縁部リブ相互間に軸方向に位置するリブ22を画定している。この図7では、複数個の穴40が各中間部リブ22に形成されていることが理解でき、これら穴の各側における軸方向延長部として、切込み31が設けられ、踏み面10上におけるこれら切込みの線は、これら切込みがVを形成するよう傾けられている。この特定の場合、中間部リブ22の切込み31は、他の中間部リブの切込みにより形成されたVとは逆の方向に向いたVを形成している。実質的にトレッドバンドの子午線平面内に位置する溝20′の底部には、円筒形の形をした穴40′が設けられていることが理解できる。トレッド踏み面上で見て、切込み31,31′のなす角度は、この場合、横方向(即ち、トレッドを備えたタイヤの回転軸線の方向)に対して30°である。
【0035】
さらに、穴40,40′は、各リブ22上で且つ溝20′の底部で追加のジグザグの形をした切込み50,50′によりそれぞれ互いに結合されている。これら切込み50,50′は、トレッドの内側でそれぞれチャネル30,30′中に開口している。この場合、第1の摩耗層C1は、その高さ全体にわたって、トレッドが新品状態にあるときに踏み面上に開口すると共に次の摩耗層のチャネル上に開口するようこの次の摩耗層まで延びる周方向に差し向けられた切込み(又は、これは、均等例として長手方向に差し向けられた切込み)を備えている。これら追加の切込み50,50′は、摩耗層C2,C3が摩耗に続いて踏み面のところに現れたときに新たな溝の良好な形成を可能にするようこれら切込みが互いに結合する穴(40)により提供される有利な作用効果を高めている。
【0036】
図8は、図7の線が線VIII‐VIIIに続く断面平面におけるこのトレッドの断面図である。この図8は、切込み31が新品状態のトレッドの踏み面上にも開口している点を除き、図6に示されているのと実質的に同一の断面を示している。さらに、切込み31′は、各側に軸方向に位置した切込み31の連続部中に形成されている。この構成により、このトレッドを溝、切込み及び下に位置するチャネルの成形に適した凸状要素を備えたモールドで成形することによりこのトレッドを成形することが容易である。
【0037】
考察対象のリブがどのようなものであれ、穴相互間の間隔Pは、25mmに等しい(この間隔は、この場合、横方向切込み相互間の間隔でもある)。リブ22中に形成された穴は、円形の断面を有すると共に4mmの直径を有している。溝20の幅L20は、6mmに等しく、これらの深さP20は、15mmに等しく、チャネル30の幅L30は、5mmに等しく、チャネル30′の幅L30′は、8mmに等しい(この幅L30′は、チャネル30′の半径方向外側に位置した溝20′の幅に等しい)。3つの摩耗層の厚さH1,H2,H3は、全て、5mmに等しい。接触パッチの平均長さについて計算された新品状態のトレッドバンドの排水容積は、実質的に44cm3に等しい。第1の摩耗層C1が摩滅した後であって第2の摩耗層C2が現れた時点における接触パッチの同一の平均長さについて計算されたトレッドバンドの排水容積は、実質的に44cm3に等しい。第2の摩耗層C2が摩滅した後であって第3の摩耗層C3が現れた時点における接触パッチの同一の平均長さについて計算されたトレッドバンドの排水容積は、実質的に30cm3に等しい。
【0038】
理解できるように、本発明のトレッドバンドにより、新品状態の排水容積を減少させる一方で、当然のことながら、濡れた路面上を運転しているときに良好な排水性能を発揮するのに十分な容積を依然として有することが可能である。この減少により、従来型トレッドバンドと比較して剛性の高いトレッドを得ることができる。さらに、各新たな摩耗層について新たな溝が出現することは、同一摩耗度後に従来型トレッドバンドと比較して高い排水容積を保つことが可能であるということを意味している。この特定の場合、第2の摩耗層の排水容積は、新品状態の排水容積に等しく、第3の摩耗層の排水容積は、技術の現状のトレッドバンドの排水容積と比較した場合、比較的高いレベルに保たれる。というのは、この排水容積は、新品状態の排水容積の68%に等しいからである。
【0039】
有利には、摩耗層中の横方向切込みは、少なくとも一方向が遮断されている切込み、例えば、深さ方向に又は幾つかの互いに異なる方向にジグザグ部又は起伏部を有し、例えば、切込みの深さ方向と長さ方向の両方向において二重ジグザグ部又は二重起伏部を有する切込みである。
【0040】
図示していない別の変形形態では、横方向切込みのうちの少なくとも幾つかのトレッドの内側における延長部として、両端が開口した全体として横方向の向きのチャネルを形成する広幅部分が設けられている。
【0041】
本発明は、図示すると共に説明した実施例には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなくこれら実施例の種々の改造例を想到できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接触する踏み面(10)を備えたタイヤトレッドバンド(1)であって、前記トレッドバンドが前記トレッドの厚み中に重ね合わされた少なくとも2つの摩耗層(C1,C2,C3)を有し、前記トレッドバンド(1)が第1の摩耗層(C1)及び少なくとも1つの他の摩耗層(C2,C3)を有し、前記第1の摩耗層(C1)が複数個の隆起要素(21,22)で形成され、各隆起要素が接触面を有し、前記第1の層が、少なくとも、全体として周方向の向きの溝(20,20′)を有し、前記トレッドが新品であるときに前記第1の摩耗層が路面と接触関係をなすようになっており、前記第1の摩耗層(C1)が完全に摩滅した後、他の摩耗層(C2,C3)が各々、路面に接触し、前記他の摩耗層が全体として周方向に延びる少なくとも1本のチャネル(30)を有し、前記他の摩耗層に先行する前記摩耗層が完全に摩滅した後、前記他の摩耗層に達するやいなや前記少なくとも1本のチャネル(30)が前記踏み面上に開口する、トレッドバンドにおいて、前記第1の摩耗層(C1)とは別個の各摩耗層(C2,C3)は、周方向に分布して配置された複数個の横方向切込み(31)を有し、各横方向切込みは、前記他の摩耗層の摩耗レベルとは無関係に少なくとも1つの他の周方向に差し向けられたチャネル又は溝中に完全に又は部分的に開口するよう問題の前記摩耗層のチャネル(30)から周方向ではない方向に延びる、トレッドバンド。
【請求項2】
前記第1の摩耗層(C1)は、複数個の穴(40)を有し、各穴は、トレッドが新品状態であるときに前記踏み面(10)上に開口し、前記第1の摩耗層(C1)に続く内側の前記摩耗層(C1)のチャネル(30)内に開口し、各穴(40)は、前記穴が開口している前記チャネル(30)の横方向寸法の少なくとも30%に等しい主要な断面寸法を有する、請求項1記載のトレッドバンド。
【請求項3】
各穴(40)は、チャネル(30)中に開口した少なくとも1つの横方向切込み(31)の開始箇所のところで当該チャネル(30)中に開口する、請求項2記載のトレッドバンド。
【請求項4】
2つの連続して位置する穴相互間の間隔(P)は、接触パッチの平均長さの1/5以下である、請求項2又は3記載のトレッドバンド。
【請求項5】
前記第1の摩耗層(C1)は、前記トレッドが新品状態にあるときに前記踏み面(10)上に開口し、次の摩耗層(C2)のチャネル(30)中に開口するよう前記次の摩耗層(C2)まで延びている1つの長手方向に差し向けられた切込み(50)を備え、前記長手方向に差し向けられた切込み(50)は、前記穴(40)を互いに結合している、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。
【請求項6】
前記摩耗層の前記横方向切込みは、少なくとも1つの方向が遮断されている切込みである、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。
【請求項7】
前記第1の摩耗層以外の摩耗層中の前記横方向切込みの延長部として、少なくとも1つの他の摩耗層を貫通する相補切込みが設けられている、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。
【請求項8】
前記トレッドの内側における前記横方向切込みのうちの少なくとも幾つかの延長部として、両端が開口した全体として横方向の向きのチャネルを形成する広幅部分が設けられている、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。
【請求項9】
各摩耗層の最大排水容積は、前記第1の摩耗層の最大排水容積、即ち、新品状態における前記トレッドバンドの排水容積の少なくとも60%に等しい、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のトレッドバンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−513328(P2012−513328A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541288(P2011−541288)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066219
【国際公開番号】WO2010/072523
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)