説明

改良肥料及びその製造方法

本発明は、改良肥料に関する。特に本発明は、肥料粒子と乳酸菌とバチルス科のバクテリアを含む改良肥料に関する。本発明はまた、肥料の改良剤と植物の成長を増進するための土壌添加剤とに関する。さらに、本明細書では、植物の成長、発育、又は収穫高を増強するための方法と、植物の成長、発育、又は収穫高を増強するために土壌を改良する方法とに関して記載している。改良肥料の生産方法についても記載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良肥料(enhanced fertilizer)と、植物の成長、発育、又は収穫高を増強するための方法と、土壌を改良する方法とに関する。本発明は、かかる改良肥料を生産する方法にもまた関する。特に本発明は、共存可能な(compatible)バクテリア種であって、植物の成長、発育、又は収穫高を増進するために協同して、好ましくは相乗的に(synergistically)働くバクテリア種の組合せを含む改良肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
農業における肥料の使用は十分に確立している。肥料の科学(art and science)は十分に発達し、現代の大規模農業においては、肥料は極めて特定の目的のために処方されている。
【0003】
近年、植物の成長を促進する様々な微生物の役割について研究がされてきている。ある種のタイプの微生物を土壌に供給することにより、作物収穫量の増加が達成され、植物の根による無機質肥料の摂取が増加し、有機質の異化作用が増加し(及び植物に対する他の有益な要因の強調)、並びに人工肥料を用いることの結果としておこるいくつかの土壌の劣化を克服する手助けにもなるという非常に有益な結果がもたらされることが見い出されている。
【0004】
土壌に対して有益な多くの異なる種類の微生物が、当該技術分野では既に知られている。かかる微生物としては、例えば、窒素固定細菌(nitrogen fixing bacteria)を挙げることができる。窒素固定細菌は、植物がタンパク質合成に利用できる有機窒素に、空気から窒素を直接変換(又は固定)することができる。かかる窒素固定細菌は、後の作物のために土壌中に有機窒素物質を残すことで、植物の周辺の土壌の質を高めることもできる。
【0005】
これまで、土壌への肥料とバクテリアの施用(application)は、液体肥料、並びに特に肥料中に含まれる無機窒素(mineral nitrogen)及び他の無機物が高濃度である場合にバクテリアに対して有毒であるので、別々の工程で行われるものとみなされてきた。肥料の施用は、乾燥状態(最も一般的)で、又は液状でスプレーすることにより行ってもよい。同様に、土壌へのバクテリアの施用は、乾燥した休眠状態のバクテリアを用いること、又は不活性な担体とバクテリアを混合することにより用いることが提案されてきた。スプレーは、野外において、特に植物にむけて又は土壌中に注入によるなどの様々な条件下においても実践される。
【0006】
スプレーの問題の一つは、紫外線が、バクテリアに対して悪影響を有することがあり、それゆえ条件をコントロールすることが重要であるということである。加えて、スプレーで施用されたバクテリアが、雨で洗い流されることもある。さらに、バクテリアは、乾燥工程を経た後の休眠状態においてしばしば施用され、細胞障害が多く起こり、それゆえバクテリアは最も活性化した状態ではない。実際、バクテリアは、その活性を回復する前に、酵素系(enzymatic systems)を再開するために、またバクテリアを乾燥するために発酵物(ferment)に行われた処理若しくは長期の保存の間に、損傷を受けた酵素系の機能を修復するために誘導期(lag time)を有することが必要である。多くの場合、処理条件によって、発酵物は胞子しか含まなくなる。バクテリアが完全な活性を回復するために必要な誘導期(若しくは遅滞期(lag phase))は2時間以上より長い場合もある。
【0007】
単一のステップでバクテリアの送達し、肥料を施すことができる改良肥料を提供することが非常に望ましい。
【0008】
土壌を改良する方法と、植物の成長、発育、又は収穫高を増強する方法とを提供することが非常に望ましい。
【0009】
改良肥料を生産する方法を提供することも望ましい。
【0010】
共存可能なバクテリア種であって、改良のために協同して、好ましくは相乗的に作用するバクテリア種の組み合せることで、肥料又は土壌の特性を改良する方法を提供することも非常に望ましい。
【0011】
(発明の概要)
本発明の第一の目的は、植物のための改良肥料を提供することである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、植物の成長、発育、又は収穫高を増進するための方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、土壌から成長している植物の成長、発育、又は収穫高を増強するために土壌を改良する方法を提供することである。
【0014】
さらなる本発明の目的は、改良肥料を生産する方法を提供することである。
【0015】
さらに別の本発明の目的は、肥料又は土壌の特性を改良する方法を提供することである。
【0016】
第一の態様によれば、本発明は、植物のための改良肥料であって、肥料粒子と、乳酸菌とバチルス科(Baciliaceae family)のバクテリアとを含む肥料を提供する。一実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、再水和により活性化する。別の実施態様では、乳酸菌は、ラクトバチルス(Lactobacillaceae)、ストレプトコッカス(Streptococcaceae)、ラクトコッカス(Lactococcaceae)、ロイコノストック(Leuconostoc)、及びビフィドバクテリア(Bifidobacteriaceae)からなる群から選択される科に由来する。また別の実施態様では、乳酸菌は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ストレプトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・ジアセチラクティス(Streptococcus diacetylactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ロイコノストック・クレモリス、ロイコノストック・ジアセチラクティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)及びビフィドバクテリウム・ブレビス(Bifidobacterium brevis)からなる群から選択される種に由来する。さらに別の実施態様では、乳酸菌は、ラクトバチルス・アシドフィルス種に由来する。さらなる別の実施態様では、バチルス科のバクテリアは、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)からなる群から選択される種に由来する。さらにまた別の実施態様では、改良肥料は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)種に由来するバクテリアをさらに含む。別の実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子にスプレーされ、さらに別の実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に一斉に(concurrently)又は独立して(independently)スプレーされる。他の一実施態様では、乳酸菌を含む第一発酵物が、肥料粒子にスプレーされる。別の実施態様では、第一発酵物と肥料粒子との比(L/トン)は、約1である。第一発酵物のバクテリア濃度は、1mLあたり約10〜約1011細胞であり、また別の実施態様では、1mLあたり約10〜約10細胞である。一実施態様では、バチルス科のバクテリアを含む第二発酵物が、肥料粒子にスプレーされる。一実施態様では、第二発酵物と肥料粒子との比(L/トン)は、約1である。別の一実施態様では、第二発酵物は、シュードモナス・プチダ種のバクテリアをさらに含む。別の実施態様では、第二発酵物のバクテリア濃度は、1mLあたり約10〜約1011細胞であり、また別の実施態様では、1mLあたり約10〜約10細胞である。一実施態様では、改良剤(enhancer)は、乳酸菌とバチルス科のバクテリアのための栄養素を含む。改良肥料は、干草、綿花(cotton)、カリフラワー、トウモロコシ、及び大豆からなる群から選択される植物に用いてもよい。一実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、肥料粒子に付着することができ、さらなる実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、肥料粒子に直接又はバインダーに結合することのいずれかにより付着している。一実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、指数増殖期(exponential growth phase)にある。
【0017】
別の態様では、本発明は、植物のための肥料の改良剤を提供し、改良剤は、本明細書に記載している乳酸菌と本明細書に記載しているバチルス科のバクテリアとを含む。一実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、肥料粒子に付着することができる。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、植物の成長、発育、又は収穫高を増進するための土壌添加剤(soil additive)を提供する。一実施例では、土壌添加剤は、本明細書に記載している乳酸菌と本明細書に記載しているバチルス科のバクテリアとを含む。別の実施例では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、本明細書に記載している肥料粒子に付着することができる。
【0019】
さらにまた別の態様では、本発明は、植物の成長、発育、又は収穫高を増進するための方法を提供し、かかる方法は、植物の根の周辺の土壌に本明細書に記載している改良肥料を施用することを含む。
【0020】
さらにまた別の態様では、本発明は、植物の成長、発育、又は収穫高を増進するための方法を提供し、かかる方法は、植物の種子の下に本明細書に記載している改良肥料を施用することを含む。
【0021】
さらに別の態様では、土壌から成長している植物の成長、発育、又は収穫高を増強するために土壌を改良する方法を提供する。一実施態様では、かかる方法は、本明細書に記載している改良肥料を土壌に添加するステップを含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、改良肥料を生産する方法を提供する。一実施態様では、かかる方法は、肥料粒子を乳酸菌とバチルス科のバクテリアと混合することを含む。別の実施態様では、乳酸菌を含む第一発酵物を肥料粒子と混合する。別の実施態様では、第一発酵物と肥料粒子との比(L/トン)は、約1である。別の実施態様では、肥料粒子と混合する前に第一発酵物を冷却する。さらに別の実施例では、第一発酵物を約0℃〜約12℃に冷却し、又は約0℃〜約5℃に冷却する。別の実施態様では、バチルス科のバクテリアを含む第二発酵物を肥料粒子と混合する。また別の実施態様では、第二発酵物は、シュードモナス・プチダ種のバクテリアをさらに含む。さらに別の実施態様では、第二発酵物と肥料粒子との比(L/トン)は、約1である。一実施態様では、肥料粒子と混合する前に第二発酵物を冷却する。さらに別の実施例では、第二発酵物を約0℃〜約12℃に冷却し、又は約0℃〜約5℃に冷却する。別の実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、指数増殖期にある。別の実施態様では、第一発酵物のバクテリア濃度は、1mLあたり約10〜約1011細胞であり、また別の実施態様では、第一発酵物のバクテリア濃度は、1mLあたり約10〜約10細胞である。そしてさらに別の実施態様では、第二発酵物のバクテリア濃度は、1mLあたり約10〜約1011細胞であり、別の実施態様では、第二発酵物のバクテリア濃度は、1mLあたり約10〜約10細胞である。一実施態様では、乳酸菌は、ラクトバチルス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、及びビフィドバクテリアからなる群から選択される科に由来する。また別の実施態様では、乳酸菌は、ストレプトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・ジアセチラクティス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ロイコノストック・クレモリス、ロイコノストック・ジアセチラクティス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、及びビフィドバクテリウム・ブレビスからなる群から選択される種に由来する。さらに別の実施態様では、乳酸菌は、ラクトバチルス・アシドフィルス種に由来する。さらなる別の実施態様では、バチルス科のバクテリアは、バチルス・サブチリス及びバチルス・リケニホルミスからなる群から選択される種に由来する。さらに別の実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアのための栄養素を肥料粒子と混合する。さらにまた別の実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子にスプレーされる。さらに別の実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に一斉に又は独立してスプレーされる。
【0023】
本発明の目的において、以下の用語は、次のように定義される。
【0024】
「発酵物(ferment)」という用語は、バクテリアの菌株(strain)による有機基質の発酵の生産物を意味する。かかる生産物はいかなる形態をとることもできるが、好ましくは液状であり、容易に粉砕し、霧状にすることができる。「混合発酵物(mixed ferment)」という用語は、2以上のバクテリアの菌株による有機基質の発酵の生産物を意味する。かかる生産物はいかなる形態をとることもできるが、好ましくは液状であり、容易に粉砕し、霧状にすることができる。
【0025】
本明細書に記載している「発酵(fermentation)」という用語は、通常は酵素による、より好ましくはバクテリアによる、有機基質の制御された変換(controlled transformation)を意味する。
【0026】
「活性化したバクテリア菌株(active bacterial strain)」という用語は、ほとんど又はまったく誘導期がなく(通常2時間未満で活性化した増殖及び成長を再開できる)、発酵を迅速に再開できるバクテリア菌株を意味する。
【0027】
「肥料(fertilizer)」という用語は、化学物質の凝集固体粒子(agglomerated solid particles)を意味する。一実施態様では、肥料粒子は、窒素(N)、リン酸(phosphate)(P)、及びカリウム(potassium)(K)の組合せ又はすべての、いずれかを含んでもよい。「肥料粒子(fertilizer particle)」という用語は、肥料を構成する固形物をいう。肥料粒子は、窒素(N)、リン酸(P)、及びカリウム(K)のいずれかの組合せ又はすべてを含んでもよい。肥料に含まれる粒子は、窒素(N)、リン酸(P)、及びカリウム(K)の含有量に関して均質(homogeneous)であっても、部分的に均質であっても、部分的に不均質(heterogenous)であっても、又は不均質であってもよい。
【0028】
「植物の成長、発育、又は収穫高を増進する(enhancing the growth, yield or development of plant)」という用語は、植物の成長、植物の発育、又は植物の収穫高に有利に働き、加速させ、又は増加させる物質の能力を意味するものである。
【0029】
「土壌を改良する(enhancing a soil)」という用語は、植物の成長、植物の発育、又は植物の収穫高に有利に働き、加速させ、又は増加させるために土壌を豊かにする作用を意味するものである。
【0030】
「バインダー」という用語は、バクテリアと肥料粒子を結合するために用いられる不活性物質を意味する。例えば、滑石(talc)をバインダーとして用いてもよい。「滑石(talc)」という用語は、マグネシウムの天然ケイ酸塩(natural silicate)の粉末の通常名(usual name)である。「滑石(talc)」という用語はまた、優れた速い吸湿吸収力を有する任意の粉末培地を意味するものである。農業分野において滑石は、しばしばバインダーとして用いられ、特に農薬の分野において滑石は、通常迅速に水を固定するものである。
[発明の詳細な説明]
【0031】
微生物が相違すれば、例えば、バクテリアが相違すれば、生産される酵素が相違しうる。かかる相違は、例えば共生関係(symbiosis)において有益である。農業的及び工業的に、かかる酵素的な相違は、生物由来物質(biological material)の生分解の過程、並びにタンパク質、脂肪酸、芳香族誘導体及び環状誘導体の複合糖類、又は有害物質の生分解過程で蓄積した二次的ラジカルの閉塞(blockage)による不完全異化の過程において相補的に適用される。相違する微生物は、特定の無機要素の能動輸送において異なる役割を果たすこともある。有機物と有害物質の分解だけでなく、肥料に存在する可溶性で同化できる栄養素や無機要素の放出をも加速させ、及び/又は植物による同化可能な栄養素と無機要素の摂取を増加させるために、協同して、好ましくは相乗的に作用する2以上の異なるしかし共存可能なバクテリア種を含む微生物カクテル(microbial cocktails)、又は様々な混合物を用いることにより、かかる相違を利用することができる。
【0032】
本発明によれば、望ましいバクテリア種は、同じ種の親株(mother stock)に由来するものであって、まず発酵過程に供され、その後肥料と混合する。様々なバクテリア種は別々に、又は共培養として(as a co-culture)一緒に培養(インキュベート)される。概して、バクテリアの発酵過程は、所望の栄養素がバクテリアの成長を可能とする適切な培地で行われる。かかる培地は、バクテリア細胞の成長を支える炭水化物(ラクトース、スクロース、又はグルコースなど)、バクテリアによって容易に代謝されるタンパク質源(大豆、ペプトン、乳タンパク質、魚タンパク質、又は動物性タンパク質)及び無機質源を含んでいなければならない。選択された培地は、バクテリアの成長を阻害するものであってはならない。一実施態様では、培地は、タンパク質が強化されたホエー(5%の乾燥物を含むホエーのような)、又は粉乳が基本となった培地である。
【0033】
バクテリアをまず培地に撒くと通常最大2時間は休眠期を呈し、ほとんど又はまったくバクテリアの増殖は観察されない。最初の増殖期(growth phase)のことを当業者は誘導期(1ag phase)とよぶ。その後、バクテリアは通常、指数関数的又は対数的再生産期(指数関数的成長期)に入り、バクテリアの集団は、1mLあたり約10〜1011細胞(好ましくは1mLあたり約10〜約10細胞)の濃度に到達する。かかる濃度に到達した後、バクテリアは、成長停滞期(growth plateau stage)に入り増殖の減速を通常示す。当該技術分野では、かかる成長停滞期は、栄養素の欠如、又は有害な発酵副産物の蓄積によると通常説明されている。
【0034】
改良肥料に存在するバクテリアは、指数関数的成長期に到達するまで、しかし、成長停滞期に到達する前まで培養された。一実施態様では、肥料粒子に添加した発酵物のバクテリア濃度は、1mLあたり約10〜1011細胞であり、好ましくは1mLあたり約10〜約10細胞である。本明細書に記載しているように、肥料と組み合わせて指数関数的成長期のバクテリアを使用することにより、土壌に改良肥料を施用した後に(それゆえバクテリアが再水和されて)、バクテリアが確実にその成長及び/又は(2時間未満で)代謝活動を回復する。
【0035】
改良肥料(及び関連した方法)は、様々なバクテリア種を含んでもよいが、より好ましくは、植物若しくは作物の成長、収穫量、又は発育に有益な効果を有するものであるとよい。本発明で用いることのできるバクテリア又は微生物の特定のタイプとしては、上記の処理を首尾よく行うことができる、望ましい公知のバクテリア種のいずれかであってもよい。かかる公知のバクテリア種としては、窒素固定細菌、土壌バイオレメディエーションで用いられている微生物、酪農業界で用いられている微生物等を挙げることができる。
【0036】
本明細書に記載している組成物及び方法の利点の一つは、微生物が通常の肥料に混合されるときに健全な状態にあるということである。バクテリア細胞は、本明細書に記載している方法によって損傷が最小限であり、再水和によりその成長及び/又は代謝活動を回復することができる。当業界で周知の他の方法や組成物と比較すると、バクテリアの成長のための誘導期は最短である。
【0037】
一実施態様では、改良肥料は、肥料粒子と、乳酸菌とバチルス科のバクテリアとを含む。乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、及び/又はビフィドバクテリアの科を挙げることができる。乳酸菌種としては、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス、ストレプトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・ジアセチラクティス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ロイコノストック・クレモリス、ロイコノストック・ジアセチラクティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、及び/又はビフィドバクテリウム・ブレビスを挙げることができる。バチルス科のバクテリア種としては、例えば、コアグラーゼ陰性のバチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サブチリス、及び/又はバチルス・リケニホルミスを挙げることができる。バチルス科のバクテリアは、多様な外酵素(exoenzymes)を生産することができる。当業者であれば、溶血素(haemolysin)を生産できる菌株と、敗血症の特徴を有する菌株を用いることを避けることが健康上の理由から必要であることを理解するであろう。別の実施態様では、改良肥料は、植物の成長、収穫高、及び発育に有益な効果を与えるバクテリアをさらに含んでいてもよい。一実施態様では、バクテリアはシュードモナス・プチダ種に由来してもよい。シュードモナス・プチダ種に由来するバクテリアは、バイオレメディエーション過程においてしばしば用いられる。共培養において8〜9%を構成し、植物のための無機物の吸収において好ましいそして有益な作用を及ぼすことができる。土壌に存在しうる炭化水素及び他の汚染物質などの有害物質の分解を容易にすることもできる。
【0038】
本明細書に記載している改良肥料は、乳酸菌とバチルス科のバクテリアとを含む。肥料粒子と組み合わせる前に乳酸菌とバチルス科のバクテリアとを別々に培養又は共培養してもよい。一実施態様では、二種以上の乳酸菌を通常の肥料とバチルス科のバクテリアと組み合わせてもよい。肥料粒子とバチルス科のバクテリアと組み合わせる前に、様々な種の乳酸菌を別々に培養又は共培養してもよい。一実施態様では、二種以上のバチルス科のバクテリアを肥料粒子と乳酸菌とを組み合わせてもよい。肥料粒子と乳酸菌とを組み合わせる前に、様々な種のバチルス科のバクテリアを別々に培養又は共培養してもよい。別の実施態様では、シュードモナス・プチダ種に由来するバクテリアを肥料粒子と乳酸菌(又は様々な種の乳酸菌)とバチルス科のバクテリア(又は様々な種のバチルス科のバクテリア)と組み合わせてもよい。肥料粒子と乳酸菌とバチルス科のバクテリアとを組み合わせる前に、シュードモナス・プチダ種のバクテリアを別々に培養又は共培養してもよい。
【0039】
共培養発酵工程において成長するバクテリアは、「共存可能(compatible)」でなければならない。本明細書において、「共存可能(compatible)」という用語は、様々なバクテリア種がそれら各自の成長特性又は生物活性(biological activity)に悪影響を及ぼすことなしに共に成長できることを意味する。
【0040】
様々なバクテリア種は、別々の発酵工程においても成長できるし、後から肥料粒子と組み合わせてもよい。
【0041】
肥料粒子と組み合わせたバクテリアは、土壌に施用したときにそれぞれの成長特性又は生物活性を維持することができなければならない。
【0042】
一実施態様では、いったん土壌に施用した場合に、成長及び/又は代謝活性を回復することができるバクテリアを選択することが好ましい。かかる効果を得るためには、いったんバクテリアが指数増殖期に到達したときに、発酵工程におけるバクテリアの成長を遮断してもよい。かかる遮断は、当該技術分野で知られた冷却又は他のいずれの手段により達成してもよい。
【0043】
バクテリア集団(bacterial population)が、1mLあたり10〜1011細胞(好ましくは1mLあたり10〜10細胞)の範囲の地点に達した後に、バクテリア細胞は、最大限の発育の可能性に到達したものと教示されている。この時点において、発酵物をバクテリアの増殖を停止する作用に供することが好ましい。発酵は、迅速に停止することが好ましい(例えば1時間以内、30分以内、又は好ましくは10〜25分の間)。発酵工程が迅速に停止した場合、発酵物のバクテリアに起こる損傷は最小となり、バクテリアは休眠期に入ったり又は胞子形成を行ったりする傾向を示さない。それゆえ、発酵工程が迅速に停止した場合は肥料粒子と混合した後に再水和により、発酵物に存在するバクテリアはより迅速に復活する(reactivate)。一実施態様では、発酵は、0℃〜12℃の温度で行われるのが好ましく、0℃〜5℃の温度で行われるのがより好ましい。発酵物の温度を低下させるには、当該技術分野で知られたいずれかの冷却手段により発酵工程を冷却すればよい。一実施態様では、発酵物はアイスバス(ice bath)の中に置いてもよい。一実施態様では、バクテリア濃度が適切な場合、発酵物が、肥料粒子に直接スプレーされてもよく、それによって発酵物の温度を下げてもよい。発酵物は、増殖がもはや可能とならないほど急速にバクテリアを乾燥させるために、吸湿材に微細な液滴状で(into fine droplets)スプレーされてもよい。あるいは、冷却を、緩衝培養液(buffered medium)中でダイアフィルトレーション又は高速遠心分離によって行ってもよい。さらに当業者であれば、液相の凍結(cryogenization)後の昇華(sublimation)によって擬似的凍結乾燥(peudo-lyophilization)が模倣(mimic)される冷凍保護法(cryo-protectants)による急速深冷法(rapid cryogenic method)を用いるであろう。かかる方法により乾燥したバクテリアが、その後肥料にスプレーされる直前に再水和してもよい。本明細書に記載している冷却技術は、バクテリアのストレス(胞子形成を起こすこと、又は休眠期へはいること)を防止することと、バクテリアが、再水和により最短の誘導期で十分に活性及び機能を確実に保つことを目的とする。
【0044】
バクテリアの増殖が遮断されている発酵物を、乾燥顆粒状肥料に施用してもよい。一実施態様では、バクテリア発酵物は、乾燥肥料粒子上で揮発する。それぞれの物理的/化学的特性により、肥料粒子は、発酵物のバクテリアの液滴の急速な乾燥を可能にする。その代わり、バクテリアの液滴の急速な乾燥は、バクテリアの生存能力と活性に好ましく、それゆえバクテリアは、再度再水和した場合(例えば改良肥料を土壌に施用した場合)、その活性を迅速に回復することができる。
【0045】
発酵物を迅速に冷却した後、発酵物を肥料粒子に72時間以内に組み合わせることが好ましく、48時間以内がより好ましい。一実施態様では、発酵物は、肥料粒子にスプレーされる。異なるバクテリア種の個々の発酵物を、施用前若しくは施用中に個々の発酵物と混合して、又は、例えば、別々の噴霧器からスプレーして個々の発酵物を同時に(一斉に)施用して、同時に施用してもよい。あるいは、個々の発酵物は、別々に又は連続的に(独立して)施用してもよい。
【0046】
肥料粒子への施用がより高い濃度で要求される場合には(例えば1mLあたり10〜10細胞より高い場合)、1mLあたり約1010細胞に濃度を増加するため、発酵物をダイア遠心分離などの濃縮ステップに供してもよい。
【0047】
この時点では、一実施態様では、共培養(又は混合)された発酵物又は異なる種の個々の発酵物は、バクテリアが肥料粒子に付着するように固体の肥料粒子にスプレーされる。別々のバクテリア種の発酵物を、施用前若しくは施用中に別々の発酵物を混合して、又は、例えば、別々の噴霧器からスプレーして別々の発酵物を同時に施用して同時に施用してもよい。あるいは、別々の発酵物を互いに独立して施用してもよい。肥料粒子は比較的乾燥しているのでバクテリア粒子が吸収され、水蒸気が分散し、バクテリアは、潜伏安定状態(latent stable state)を保つこととなろう。肥料粒子1トンあたり0.2〜4.0L、又は好ましくは肥料粒子1トンあたり約2.0Lの割合で、発酵物を肥料粒子にスプレーしなければならない。これより高い濃度でスプレーすると肥料の化学作用により、部分的に可溶化をひき起こし、濃縮したミクロ環境ではバクテリアの周辺の肥料の表面で、バクテリアに対し有毒な濃縮された窒素の放出をひき起こす場合もある。
【0048】
さらに、本発明の異なる態様としては、本発明の肥料は、種子粒子にスプレーされてもよい。
【0049】
スプレーの代わりに、デンプン若しくは滑石のような結合剤(binding agent)によって、又は種子製品にバクテリアを結合させるために機能する別の適当ないずれかの製品によって、発酵物を施用してもよい。かかる施用には粉乳を特に好適に例示することができる。実際、滑石、小麦粉、砂糖、デンプン、又は粉乳などのいずれの乾燥粉末に、乾燥粉末がバクテリアと肥料に結合することができるように、例えば油又は乳脂肪などの結合剤を補充してもよい。本発明により用いることができる乾燥粉末は、それゆえ、接触により湿気を吸収することができ、バクテリアに対して無毒であり、かつバインダーとして作用できる乾燥粉末である。バクテリアがいったんバインダーに付着したならば、土壌への施用前又は土壌へ施用する前に肥料と組み合わせてもよい。
【0050】
上記の過程において、肥料は必要であれば用いてもよい。前述の通り、肥料製品は、過剰な湿気を吸収し、この目的を達成するために肥料をかかる性能(capability)を有するように処方してもよい。当然のことながら、肥料製品は、液体肥料の粒子よりも少なくとも数倍の容量を通常有するものである。言い換えれば、液体肥料を霧状にして肥料製品にスプレーしてもよく、湿気は肥料製品全体に吸収され、それゆえバクテリアを乾燥して、ほとんど細胞の損傷がない比較的健全な状態のまま潜伏期の安定状態にする。当該状況において、土壌の再水和の適切な条件下で、バクテリアは安定状態及び活性状態を保ち、かついつでもその活性を回復できる状態に保たれる。
【0051】
一実施態様では、発酵物における栄養素の濃度を、発酵過程が停止したときに、一定量の栄養素が発酵物において保たれるように調整してもよい。微生物と栄養物(nutritive material)とを肥料粒子にその後スプレーしてもよい。肥料粒子が土壌において水和した場合、栄養物を十分に利用できる望ましい条件下で、バクテリア又は微生物は、その活性を回復するであろう。当然のことながら、栄養物は、土壌において用いるためにも利用できる。
【0052】
発酵によるアプローチにおける栄養物は、種々のミルクや、人工培地を含むいずれかの微生物培養を発酵するための発酵培地において通常用いられ認識されている成分や、動物と魚の副産物及び糖などを含む多数の公知の原料から選択してもよい。
【0053】
本発明のさらに別の態様としては、肥料が施用されていてもいなくても、かかる土壌から成長している植物の成長又は収穫高を増進するための土壌添加剤として、混合発酵物又は別々のバクテリア種の別々の発酵物としてのいずれかの発酵物を、土壌に直接施用してもよい。発酵物が土壌において再水和した場合、バクテリア又は微生物はその活性を回復して、有機物と有害物質の分解を加速し、又は、植物が用いる可溶性の吸収される栄養素や無機要素を放出し、或いは植物に吸収されうる栄養素と無機要素の摂取を増加するであろう。当然のことながら、栄養物を土壌において用いるために利用もできる。
【0054】
本発明のさらなる態様としては、他のいずれの従来の肥料の前後に又は一斉に、本明細書に記載している改良肥料を施用してもよい。
【0055】
別の態様では、本発明は、植物のための肥料のための改良剤を提供する。改良剤は、乳酸菌とバチルス科のバクテリアとを含んでもよい。乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、肥料粒子に付着するように適用されなければならない。かかる適用としては、例えば、肥料に結合することができるバインダー分子に固定できる乳酸菌とバチルス科のバクテリアを挙げることできる。土壌に肥料を施用する前に、同時に、又は後に改良剤を土壌に施用してもよい。
【0056】
さらに別の態様では、本発明は、植物の成長、発育、又は収穫高を増進するための土壌添加剤を提供する。土壌添加剤は、乳酸菌とバチルス科のバクテリアとを含んでもよい。乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、肥料粒子に付着するように適用されなければならない。かかる適用は、例えば、乳酸菌とバチルス科のバクテリアを、肥料に結合することができるバインダー分子に固定してもよいし、肥料に結合することができる物質に封入してもよい。土壌添加剤を土壌に施用する前に肥料と混合してもよい。土壌へ肥料を施用する前に、同時に、又は後に土壌添加剤を土壌に施用してもよい。
【0057】
本発明のさらなる利点は、土壌の総質量(total mass)におけるバクテリアの分散を防ぎ、肥料粒子に近接近したバクテリア細胞の濃度が局所的に増加しているように、土壌における肥料粒子の場所に的確に又はその近辺に、バクテリアを土壌へ送達する方法を提供することである。
【0058】
一実施態様では、本明細書に記載している方法は、肥料、土壌、又は種子にバクテリアをスプレーする複数のスプレーのステップを使用することを提供する。この点で、肥料、土壌、種子について興味深い若しくは有益な結果をもたらすために、公知の酵素的又は機能的特性によってそれぞれ選択される2以上の異なるタイプのバクテリアを用いる。かかる可能性により、それゆえ、異なる発酵条件下で2以上の異なる発酵過程を有することを許容することになる。ゆえに当該技術分野で知られているように、異なるタイプの微生物については異なるパラメーターがあり、肥料、土壌、又は種子粒子に連続的、又は一緒にスプレーするときに異なる条件下で別々の多数の発酵過程を行うことができる。多数の発酵物を用いるとき、多数の発酵物を独立して又は一斉にスプレーしてもよく、この場合、肥料、土壌、又は種子にスプレーする直前に混合することが好ましい。
【0059】
土壌への施用について、費用が最小になるように従来機を用いてもよいが、かかる過程が達成されるのは、さらに節約できる単機運転においてである。
【0060】
前述のように微生物を良好な条件で土壌に施用することと、土壌が水和したときに成長を再開する用意がある(最短の誘導期で)ことは、高度に有利なことである。
【0061】
改良肥料はいかなる植物にも施用できる。例えば、改良肥料は、観葉植物(leafy plant)、果物、野菜、観賞用庭園に用いられている植物、芝、穀類、花、樹木、及び潅木に施用できる。改良肥料は、干草、キャベツ、コーヒーの木、ヘウェア属セロリ、キャベツ、ポテト、レタス、きゅうり、米、トウモロコシ、大豆、カリフラワー及び綿花などの多種の製品に施用できる。上記の植物は、すべて収穫高の増加又は良質な収穫を示した。
【0062】
肥料粒子は、肥料の液滴の湿気を迅速に捕捉する環境である。しかしながら、入手可能な他の顆粒状若しくはパウダー状の製品で同様のことが可能なものはある。例えば、滑石、砂糖や小麦粉、並びに急速に発酵物の液滴を乾燥させ、最終的な水和によって、生成物が十分な湿気と再び接触して代謝を再開するまで、いかなるなる成長や代謝活動さえもできない状態とするような市販の吸収剤等の吸収物質を挙げることができる。滑石、砂糖、小麦粉及び他の吸収剤は、肥料に付着するように肥料と混合してもよい。
【0063】
施用は、付着特性のある顆粒状若しくはパウダー状吸収剤製品により選択されるので多種にわたり、パウダー又は粒子は、中和若しくは限外濾過などのような濃縮過程によって得られた濃縮発酵物で強化し、最終的に例えば、土壌、肥料又は種子に混合してもよい。かかる過程を、土壌、肥料又は種子に単に機械のミキサーを用いて適用してもよいし、発酵物で強化した粉末を肥料工場から分離した中心部で生産してもよい。これにより投資ニーズは減少する。さらに、混合物の各発酵構成物質は別々に再生産して、その濃度を制御した後に、正確に一緒に混合してもよい。かかる改良技術をたい肥や農業に活用されるいずれの物質に適用してもよい。例えば本発明の方法を、種子をコーティングするため、又は微生物、微生物の混合物若しくはカクテルで土壌を処理するために、必要に応じて用いてもよい。
【0064】
本発明のさらなる態様によれば、本発明は、土壌から成長している植物の成長、発育、又は収穫高を増強するために土壌を改良する方法を提供する。かかる方法は、本明細書に記載している改良肥料を土壌に添加するステップを含む。
【0065】
さらに別の態様においては、本発明は、改良肥料を生産する方法を提供する。かかる方法は、肥料粒子を乳酸菌とバチルス科のバクテリアと混合することを含む。一実施態様では、乳酸菌が第一発酵物に存在する。肥料1トンあたり、約1Lの比で肥料粒子と第一発酵物を混合する。好ましくは、バクテリアが再水和によりその成長及び代謝活動を確実に回復するために、肥料粒子と混合する前に、第一発酵物を冷却する(約0℃〜約12℃に、又は約0℃〜約5℃に)。別の実施態様では、バチルス科のバクテリアが第二発酵物に存在する。第二発酵物は、シュードモナス・プチダ種のバクテリアを含んでいてもよい。肥料1トンあたり、約1Lの比で肥料粒子と第二発酵物を混合する。好ましくは、バクテリアが再水和によりその成長及び代謝活動を確実に回復するために、肥料粒子と混合する前に、第二発酵物を冷却する(約0℃〜約12℃に、又は約0℃〜約5℃に)。乳酸菌とバチルス科のバクテリアは、肥料粒子とそれらを組み合わせる前に指数増殖期にあることが好ましい。第一発酵物と第二発酵物のバクテリア濃度は、1mLあたり約10〜約1011細胞である。一実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアのための栄養素を肥料粒子と混合してもよい。別の実施態様では、乳酸菌とバチルス科のバクテリアとを肥料粒子にスプレーし、好ましくは、肥料粒子に一斉にスプレーする。
【0066】
以下の実施例は、いかなる面でも本発明の範囲を限定することなく、本発明の特定の実施形態を説明するものである。
【実施例1】
【0067】
改良肥料の調製
発酵物I(FermentI)は、ラクトバチルス・アシドフィルスのみを含むものであった。約30±3℃の温度にてホエーをベースとした培地でラクトバチルス・アシドフィルスを培養した。かかるバクテリアは、5℃から最高致死温度(maximum lethal temperature)の間で培養してもよい。当業者であれば、別の菌株が用いられた場合は、適宜至適温度が相違し、成長範囲が変化することを理解するであろう。
【0068】
発酵物II(Ferment II)は、バチルス・サブチリス、バチルス・リケニホルミス、及びシュードモナス・プチダを含むものであった。約27±2℃の温度にてホエーをベースとした培地でバチルス・サブチリス、バチルス・リケニホルミス、及びシュードモナス・プチダを共培養した。一番の活動状態にあることから、非胞子形成体(non-sporulatingform)のバチルス科(Bacillus family)のメンバーを選択した。かかるバクテリアは、成長範囲内の別の温度で培養してもよい。当業者であれば、別の菌株が用いられた場合は、適宜至適温度が相違し、成長範囲が変化することを理解するであろう。
【0069】
バクテリアの培養物が、1mLあたり10〜10バクテリア細胞に達したところで発酵物I及びIIを冷却し(アイスバスで)、肥料粒子に対して同時にスプレーした。スプレーされる肥料は、特定の植物に対する土壌分析の結果により畑の肥料の専門家により推薦されたいずれの無機質肥料でもよい。各発酵物を別々に霧化し、動いている肥料粒子に同時にスプレーした。表1は、以下の実施例に用いられた肥料にスプレーした発酵物の様々な組合せを示す。
【0070】
【表1】

【実施例2】
【0071】
干草(hay)と綿花(cotton)に対する改良肥料の施用
干草フィールド野外実験(field trial)に対しては、20−13−19の割合のN−P−Kを含む肥料を実施例1に記載している組合せCとスプレーした。組合せとスプレーしなかったコントロールの肥料もまた用いられた。無機質肥料を事前に100kg/エーカー施用した干草フィールドの野外実験に対しては、100kg/エーカーの割合で両方の肥料を施用した。
【0072】
干草の刈取り時期に、各発酵物のうち組合せCが一番よい結果を示した。刈取り時期に、組合せCで処理した干草はより濃色になり、ほぼ6インチの高さに達した。組合せCを施用した干草は、処理されていない干草(スプレーしていない肥料で処理した干草)よりも緑が濃くなり、健康であった。これらの結果は、組合せにおいて存在する異なるバクテリア菌株間の相乗相互作用(synergistic interaction)を示すものである。
【0073】
綿花フィールド野外実験(trail)に対しては、2kgの硫黄を含む20−13−19の割合のN−P−Kを含む肥料を実施例1に記載している組合せとスプレーした。その後肥料を綿花フィールドに施用した。処理は2回行った。組合せB、D及びEとスプレーした肥料の施用は、綿花についてはある程度の効果をもたらしたが、組合せCにより得られた結果よりは劣っており、通常以下であった。これらの結果もまた、肥料において用いられる発酵物間の相乗効果(synergy)を示すものである。
【実施例3】
【0074】
バクテリアの生存能力試験
肥料にスプレーしたバクテリアの生存能力(viable)を検証するため、コーティングをした肥料(50g)を40リットルの滅菌したリン酸緩衝液に溶解した。別の40リットルの滅菌したリン酸緩衝液を用いて、溶解した肥料をその後限外濾過に供した。次に、濾液をLBSとMRSとで培養した。結果はバクテリアが、その成長を実際に再開することができるということを示した。
【実施例4】
【0075】
カリフラワーの成長及び発育への改良肥料の効果
野外実験は、ボソン(Boson)コミューン(BacNinh town, Bacninh province, Vietnam)で行った。調査したカリフラワーは中国種であった。カリフラワーは85〜95日で成長した(苗床(nursery time)を含む)。カリフラワーは、2005年11月3日に移植し、2006年1月23日に収穫した。栽植距離は、70cm×40cmであった。ヘクタールあたり36000苗の密度であった。苗を5回処理し、デザインを4回繰り返した。敷地のサイズは24mであった。表2は、様々な処理において用いられた総合肥料(total fertilizer)を示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表2に記載している肥料にスプレーした組合せは基本施用についてのみである。1〜4の処理について、様々な組合せとスプレーする肥料の最初の基本施用(総合肥料の20%)は、播種した種子のすぐ下に施用した。1回目の追肥は、15kg/haのリン酸二アンモニウム(diammonium phosphate)(DAP)と40%のtotal 肥料(スプレーしていない)であって、播種後15日に畝(side hill)に施用した。2回目の追肥は、35kg/haのリン酸二アンモニウム(DAP)と20%の総合肥料(スプレーしていない)であって、播種後35日に畝に施用した。3回目の追肥は、5kg/haのリン酸二アンモニウム(DAP)と20%の総合肥料(スプレーしていない)であって、播種後50日に畝に施用した。
【0078】
処理5(コントロール)については、FYM肥料(堆肥化された有機物(manure)及び野菜残渣)の最初の基本施用は、50kg/haのP2と、20kg/haのNと、20kg/haのK2Oとであって、播種した種子の下に施用した。1回目の追肥は、40kg/haのリン酸二アンモニウム(DAP)と40kg/haのK2Oとであって、播種後15日に畝に施用した。2回目の追肥は、35kg/haのリン酸二アンモニウム(DAP)と、50kg/haのP2と、20kg/haのNと、20kg/haのK2Oとであって、播種後35日に畝に施用した。3回目の追肥は、50kg/haのリン酸二アンモニウム(DAP)と、20kg/haのNと、20kg/haのK2Oとであって、播種後50日に畝に施用した。
【0079】
処理後、カリフラワーを収穫し、いくつかのパラメーターについて測定した。表3は、総バイオマス(幹、葉、及び花)、並びに収穫したカリフラワーの花の質量(mass)の収穫時のデータを示す。表4は、カリフラワーバイオマス(CV%は4.43、LSD0.05は0.61)に対する処理の効果、及びカリフラワーの花の質量(市場性のある製品、CV%4.78、LSD0.05、0.25)に対する処理の効果を示す。
【0080】
組合せC(処理1)で処理した植物は、一番高い総バイオマスを有していただけでなく、一番高い花の質量をも有しており、したがって、一番高い市場インデックス(marketable Index)を有した。組合せCで処理した植物の市場製品インデックスは、コントロール処理(処理5)に対して14%以上増加する。組合せ(処理2)で処理した植物の市場製品インデックスは、コントロール処理(処理5)に対して12%以上増加する。
【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【実施例5】
【0083】
トウモロコシと大豆の収穫物(crops)への改良肥料の施用
トウモロコシ野外実験に対しては、20−10−20の割合のN−P−Kを含む肥料(以下、「総合」(“TOTAL”)という)(Synagri社より購入)、又はカルシウム、マグネシウム及び多様な賦形剤を含む肥料の画分(以下、「画分」(“FRACTION”)という)のいずれかに、実施例1に記載した組合せCをスプレーした。通常の播種手順をふんだ畑の傍らのトウモロコシ畑に325kg/エーカーの濃度の肥料をその後施用した。
【0084】
大豆野外実験に対しては、15−20−20の割合のN−P−Kを含む肥料(以下、「総合」(“TOTAL”)という)(Synagri社より購入)、又はカルシウム、マグネシウム及び多様な賦形剤を含む肥料の画分(以下、「画分」(“FRACTION”)という)のいずれかに、実施例1に記載した組合せCをスプレーした。大豆畑に140kg/エーカーの濃度の肥料をその後施用した。
【0085】
トウモロコシと大豆収穫物を収穫し、その総バイオマスを測定した。表5と表6は得られた、収穫基本データ(raw harvested data)を示す。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
組合せCをスプレーした肥料(総合又は画分)で処理したトウモロコシ収穫物の総バイオマスは、コントロールのとうもろこし(スプレーしていない肥料で処理)の総バイオマスに対して1.8〜7%増加した。組合せCをスプレーした肥料(画分の合計(total of fraction))で処理した大豆収穫物の総バイオマスは、コントロールの大豆(スプレーしていない肥料で処理)の総バイオマスに対して約10%増加した。
【0089】
本発明は特定の実施形態との関連において説明されているが、本発明においてはさらなる変更が可能であり、本発明は、以下の発明のあらゆる変更、使用、又は応用全般、及び本発明の原理をその範囲に含むことを意図し、本発明の開示から当業者に知られるようになるか若しくは慣例となる、上記に記載の本質的な特徴に適用される、又は以下のクレームの範囲に付随する逸脱は、本発明の範囲に含まれると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料が以下の
a)肥料粒子
b)乳酸菌、及び
c)バチルス科のバクテリア
を含む、植物のための改良肥料。
【請求項2】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、再水和により活性化することを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項3】
乳酸菌が、ラクトバチルス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、及びビフィドバクテリアからなる群から選択される科に由来することを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項4】
乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス、ストレプトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・ジアセチラクティス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ロイコノストック・クレモリス、ロイコノストック・ジアセチラクティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、及びビフィドバクテリウム・ブレビスからなる群から選択される種に由来することを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項5】
乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス種に由来することを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項6】
バチルス科のバクテリアが、バチルス・サブチリス及びバチルス・リケニホルミスからなる群から選択される種に由来することを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項7】
改良肥料が、シュードモナス・プチダ種由来のバクテリアをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項8】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子にスプレーされることを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項9】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に一斉にスプレーされることを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項10】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に独立してスプレーされることを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項11】
乳酸菌を含む第一発酵物が、肥料粒子にスプレーされることを特徴とする請求項8記載の改良肥料。
【請求項12】
第一発酵物と肥料粒子との比(L/トン)が、約1であることを特徴とする請求項11記載の改良肥料。
【請求項13】
第一発酵物のバクテリア濃度が、1mLあたり約10〜約1011細胞であることを特徴とする請求項11記載の改良肥料。
【請求項14】
第一発酵物のバクテリア濃度が、1mLあたり約10〜約10細胞であることを特徴とする請求項11記載の改良肥料。
【請求項15】
バチルス科のバクテリアを含む第二発酵物が、肥料粒子にスプレーされることを特徴とする請求項8記載の改良肥料。
【請求項16】
第二発酵物と肥料粒子との比(L/トン)が、約1であることを特徴とする請求項15記載の改良肥料。
【請求項17】
第二発酵物が、シュードモナス・プチダ種のバクテリアをさらに含むことを特徴とする請求項15記載の改良肥料。
【請求項18】
第二発酵物のバクテリア濃度が、1mLあたり約10〜約1011細胞であることを特徴とする請求項15記載の改良肥料。
【請求項19】
第二発酵物のバクテリア濃度が、1mLあたり約10〜約10細胞であることを特徴とする請求項15記載の改良肥料。
【請求項20】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアのための栄養素をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項21】
植物が、干草、綿花、カリフラワー、トウモロコシ、及び大豆からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項22】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に付着することができることを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項23】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に直接付着することを特徴とする請求項22記載の改良肥料。
【請求項24】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に付着することができるバインダーに結合していることを特徴とする請求項22記載の改良肥料。
【請求項25】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、指数増殖期にあることを特徴とする請求項1記載の改良肥料。
【請求項26】
植物のための肥料の改良剤であって、乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に付着することができることを特徴とする乳酸菌とバチルス科のバクテリアを含む改良剤。
【請求項27】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアを含む、植物の成長、発育、又は収穫高を増進するための土壌添加剤であって、乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に付着することができることを特徴とする土壌添加剤。
【請求項28】
植物の成長、発育、又は収穫高を増進するための方法であって、植物の根の周辺の土壌に請求項1記載の改良肥料を施用することを含む方法。
【請求項29】
植物の成長、発育、又は収穫高を増進するための方法であって、植物の種子の下に請求項1記載の改良肥料を施用することを含む方法。
【請求項30】
土壌から成長している植物の成長、発育、又は収穫高を増強するために土壌を改良する方法であって、請求項1記載の改良肥料を土壌に添加するステップを含む方法。
【請求項31】
改良肥料を生産するための方法であって、肥料粒子を乳酸菌とバチルス科のバクテリアと混合することを含む方法。
【請求項32】
乳酸菌を含む第一発酵物を肥料粒子と混合することを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
第一発酵物と肥料粒子との比(L/トン)が、約1であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
肥料粒子と混合する前に、第一発酵物を冷却することを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項35】
第一発酵物を約0℃〜約12℃に冷却することを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
第一発酵物を約0℃〜約5℃に冷却することを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項37】
バチルス科のバクテリアを含む第二発酵物を肥料粒子と混合することを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項38】
第二発酵物が、シュードモナス・プチダ種のバクテリアをさらに含むことを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
第二発酵物と肥料粒子との比(L/トン)が、約1であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項40】
肥料粒子と混合する前に、第二発酵物を冷却することを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項41】
第二発酵物を約0℃〜約12℃に冷却することを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項42】
第二発酵物を約0℃〜約5℃に冷却することを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項43】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、指数増殖期にあることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項44】
第一発酵物のバクテリア濃度が、1mLあたり約10〜約1011細胞であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項45】
第一発酵物のバクテリア濃度が、1mLあたり約10〜約10細胞であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項46】
第二発酵物のバクテリア濃度が、1mLあたり約10〜約1011細胞であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項47】
第二発酵物のバクテリア濃度が、1mLあたり約10〜約10細胞であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項48】
乳酸菌が、ラクトバチルス、ストレプトコッカス、ラクトコッカス、ロイコノストック、及びビフィドバクテリアからなる群から選択される科に由来することを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項49】
乳酸菌が、ストレプトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・ジアセチラクティス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ロイコノストック・クレモリス、ロイコノストック・ジアセチラクティス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、及びビフィドバクテリウム・ブレビスからなる群から選択される種に由来することを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項50】
乳酸菌が、ラクトバチルス・アシドフィルス種に由来することを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項51】
バチルス科のバクテリアが、バチルス・サブチリス及びバチルス・リケニホルミスからなる群から選択される種に由来することを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項52】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアのための栄養素を肥料粒子と混合することを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項53】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子にスプレーされることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項54】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に一斉にスプレーされることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項55】
乳酸菌とバチルス科のバクテリアが、肥料粒子に独立してスプレーされることを特徴とする請求項31記載の方法。

【公表番号】特表2008−537531(P2008−537531A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555432(P2007−555432)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000264
【国際公開番号】WO2006/089416
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507279451)イーブイエル インク (1)
【氏名又は名称原語表記】EVL INC.
【Fターム(参考)】