説明

改質ポリアミド系繊維の製造方法

【目的】 ポリアミド系繊維にカルボキシル基を導入する方法を提供する。
【構成】 ポリアミド系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合させるものであって、過酸化水素と二価鉄塩を含む水溶液中において、ポリアミド系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合させることを特徴とする改質ポリアミド系繊維の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は改質ポリアミド系繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系繊維にカルボキシル基を導入する技術は、例えば特開昭55−107514、59−187620があるが、反応開始剤としては古くからある羊毛、絹等に種々のビニル化合物をグラフト共重合する時に使用せれている過硫酸塩と還元剤が用いられている。また、ビニル化合物として、アクリル酸とメタクリル酸の混合物が用いられている。その理由として二者の混合物を用いる事ににより、グラフト化率を向上させることが出来る為と説明されている。しかしながらその利用率(使用したモノマーと繊維に着いてポリマーになった物の比率)は70%に達しない。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリアミド系繊維はその成分が羊毛、絹に類似している為に合成繊維の中では最もグラフト共重合させ易い繊維である。しかしながら、モノマーの利用率は50〜70%と低いのが現状である。
【課題を解決する為の手段】
【0004】
本発明は特許3309299「改質アクリロニトリル繊維及びその製造法」並びに特許3194241「改質セルロース繊維及びその製造方法」を基にして研究を重ね、ポリアミド系繊維についても、過酸化水素と二価鉄塩を開始剤として用いてメタクリル酸をグラフト共重合させることによりその利用率が飛躍的に向上することを見出し本発明に至ったものである。過酸化水素と二価の鉄塩との組み合わせはフェントン試薬と呼ばれ有機化合物の反応に有用な酸化剤として夙に有名である。アクリロニトリル繊維、セルロース繊維は過硫酸塩と還元剤の組み合わせに依る開始剤では殆どグラフト重合させる事が出来ないが過酸化水素と二価鉄塩との組み合わせを用いる事によって可能になり特許3309299及び特許3194241として技術が確立された。
【0005】
本発明においてはポリアミド系繊維にカルボキシル基を導入する為に、過酸化水素と二価鉄塩を含む水溶液中でメタクリル酸をグラフト共重合させる方法を提案する。従来の技術では反応開始剤に過硫酸塩と還元剤、モノマーとしてアクリル酸とメタクリル酸の混合物が用いられているが本発明ではメタクリル酸のみを使用するので極めて単純である。
過酸化水素としては市販の過酸化水素水を用い事が出来る。二価鉄塩としては、水中に於いて二価の鉄イオンを放出し得る物であれば任意の物が使用できる。
例えば、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、塩化第一鉄、硝酸第一鉄等が挙げられる。水溶液中の過酸化水素の濃度は、0.01〜0.1mol/l好ましくは0.02〜0.05mol/l,鉄塩濃度としては、0.7〜6.0mmol/l好ましくは1.0〜4.0mmol/lである。
この水溶液中に酸を添加することができる。酸としては硫酸、塩酸、燐酸、蟻酸等が挙げられる。濃度としては、2.0〜4.0mmol/l好ましくは、2.5〜3.5mmol/lである。酸の添加はグラフト率の向上に有効である。また、金属イオン封鎖剤例えば EDTA,NTA,重合燐酸塩等を添加する事が出来る。
反応温度は20℃〜100℃好ましくは40℃〜90℃である。反応時間は40〜120分好ましくは60〜90分である。反応時間が長過ぎると解重合を起こし不利である。
【本発明の効果】
【0006】
過酸化水素と二価鉄塩を用いてメタクリル酸をグラフト共重合する事により容易に高水準のカルボキシル基を導入する事が出来る。過酸化水素は分解して水になり、二価鉄塩は一部繊維に吸着され一部は三価鉄塩になる。モノマーの利用率が上がると言う事は廃棄されるものが少なくなる、即ち環境によりやさしいと言う事である。その結果として親水性の向上、金属イオンをはじめとする陽イオンの捕捉効果、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性の臭気の吸着、銅、亜鉛などを結合させる事により硫化水素、メチルメルカプタン等の酸性の臭気を吸着する事ができる様になる。又、銅、銀等を結合させる事により抗菌性を持たせる事も出来る。
【実施例】
【0007】
次に実施例により本発明を詳細に説明する。
【0008】
実施例1
過酸化水素水(35%)30ml、硫酸第一鉄(FeSO.7HO)1.0gr、メタクリル酸(99.9%)120ml、硫酸(50°Be)2.5ml、キレストNTB(キレスト化学(株)製金属イオン封鎖剤)2.5grを含む水溶液5.0lにナイロン6ステープル5.6dTex×76mm(東レ(株)製)500grを浸漬し常温より徐々に昇温し85℃で45分間処理する。次いで湯洗水洗して乾燥する。
グラフト化率、利用率は纏めて別表に比較例と対比して示した。
【0009】
実施例2
ナイロン6ステープル11dTx×76mm 500gr,メタクリル酸200mlに変更した以外は実施例1と同一条件で処理した。
【0010】
実施例3
実施例1のナイロンをナイロン66ステープル 1.7dTx×44mmに変えて同様に処理した。
【比較例】
【0011】
比較例1
アクリル酸10%、メタクリル酸90%の混合物(以下MAA90と略称)を150ml、過硫酸アンモニュウム5.0gr、スーパーライトC15.0gr、 キレストNTB1.5grを含む水溶液5.0lにナイロン6ステープル5.6dTx×76mm 500grを浸漬し常温より徐々に昇温し80℃で60分間処理した。グラフト化率、利用率は別表に実施例と対比して示した。
比較例2
ナイロン繊維をナイロン6 11dTx×76mmに変えMAA90の使用量を250mlにして比較例1と同様に処理した。
比較例3
ナイロン繊維をナイロン66 1.7dTx×44mmに変え,MAA90を150ml使用量して比較例1と同様に処理した。
【0012】
別表


【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素と二価鉄塩を含む水溶液中で、ポリアミド系繊維にメタクリル酸をグラフト共重合させることを特徴とする改質ポリアミド繊維の製造方法。

【公開番号】特開2006−37320(P2006−37320A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240175(P2004−240175)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000231224)日本蚕毛染色株式会社 (8)
【Fターム(参考)】