説明

改質土の製造方法及び水域環境修復施工法

【課題】製鋼スラグ材料を用いて改質土を製造するにあたり、製鋼スラグ材料の搬入単位が切り替わった際に、発現する改質土の強度を予測するようにして改質土を製造する方法を提供する。また、これを利用して水域環境の修復を行う方法を提供する。
【解決手段】泥土に混合して改質土を得る途中で製鋼スラグ材料の搬入単位が切り替わった際、切り替え前の搬入単位L1の製鋼スラグ材料で得られた改質土の一軸圧縮強度Q1と、その製鋼スラグ材料に含まれる製鋼スラグ粒子の粒子総表面積S1を基準にして、切り替え後の搬入単位L2の製鋼スラグ材料の粒子総表面積S2を用いて得られる改質土の一軸圧縮強度Q2を予測するようにする。また、上記方法によって改質土を製造し、これを水中に投入して水域環境の修復工事を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫工事や建設工事等で発生する泥土の強度を改善して、改質土を製造する方法、及び、水域環境を修復する水域環境修復施工法に関し、詳しくは、泥土に製鋼スラグ材料を混合して改質土を製造する方法、及び、この方法を利用して改質土を得て、干潟や浅場の造成工事、深堀れ窪地を処理する埋め戻し工事等を行う水域環境修復施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫工事や建設工事等で発生する泥土を改質してその強度を改善し、改質土として再利用する技術が進みつつある。これらの泥土は、主に水と土粒子とからなり、水と土粒子との質量比率(水/土粒子)で表される含水比が70〜250%程度と極めて高いことから、ダンプトラック等に山積みして搬送するのは困難である。そのため、これまで泥土の処理が問題とされてきた。ところが、近年では、泥土の強度を向上させる改質材料を加えて、干潟や浅場の造成工事に使用したり、海底の深堀れ窪地を処理するための埋め戻し工事に使用するなど、改質土として利用されるようになっている。
【0003】
そのひとつに、改質材料として製鋼スラグを使用し、泥土に製鋼スラグを混合して改質土を得る技術が知られている。これは、製鋼スラグ中の遊離石灰(フリーライム:f-CaO)が、泥土に含まれるシリカ分と水和固化して、カルシウムシリケート系水和物(C-S-H)やカルシウムアルミネート系水和物(AFm)等を形成する反応を利用すると考えられており、泥土の強度を改善することができる。
【0004】
泥土と製鋼スラグを混合して改質土を得るために、一般的には、先ず、改質土の用途に応じて、その強度を設計する。その際、特開2009−121167号公報(特許文献1)によれば、改質土の強度を発現させるために、フリーライム含有率が少なくとも0.5質量%必要であると記載されるように、製鋼スラグの配合割合を決める上で、フリーライム量がひとつの指標になる。そして、設計した通りに強度が発現するかどうかを確認するために、供試体を形成して所定の期間(一般的には28日程度)養生し、一軸圧縮強度を設計用強度指標とした強度試験を行って、最終的な泥土と製鋼スラグの配合割合を決定する。
【0005】
ここで、得られた改質土を干潟や浅場の造成工事や深堀れ窪地を処理する埋め戻し工事に利用する場合には、高pH水の溶出や環境への影響を考慮する必要があることから、製鋼スラグに含まれる硫化物やf-CaO等の成分範囲は管理される。一方で、製鋼スラグは製鋼工程の副産物であるため、粒径の異なる大小の製鋼スラグ粒子が混合した状態であり、主な用途であるアスファルト混合物の骨材や路盤材として利用するに際して、JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」の規格が定められており、実用的には、粒径の異なる製鋼スラグ粒子を所定の粒度範囲に調整した製鋼スラグ材料が使用されている。下記の表1は、JIS A 5015の規格に定められた製鋼スラグ材料の一例を示すものである(鐵鋼スラグ協会ホームページhttp://slg.jp/slag/green/g_roban.htmlより引用)。
【0006】
【表1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−121167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、製鋼スラグを用いて改質土を得る際には、改質土の用途を決めた上でその強度を設計し、供試体による強度試験を経て、泥土と製鋼スラグの配合割合を決定する。ここで、製鋼スラグは、得られる改質土の用途等を考慮しながら、成分範囲と共に粒度範囲が管理された製鋼スラグ材料が使用される。
【0009】
ところが、改質土を製造する際、例えば水域環境の修復を行うような施工現場において原料のひとつである製鋼スラグ材料が底を突き、土運船等によって搬入された新しい製鋼スラグ材料を泥土に混合すると、当然のことながら、それまで使用していたものと同じ規格で同一製品の製鋼スラグ材料を同じ配合割合で混合しても、材料が切り替わった前後で改質土の強度が変わってしまうことがある。そのため、新たな製鋼スラグ材料が搬入されると、供試体を作製して強度試験を行って改質土の強度を把握する必要がある。この強度試験を行わないと、ときに製造した改質土が所望する強度に達していなかったという問題が生じる。しかし、干潟、浅場等の造成工事や、深堀れ窪地の埋め戻し工事等のように、水域環境の修復施工の場合には、現場水域の船上で改質土を製造しなければならないことがあり、新たに製鋼スラグ材料が搬入されるたびに強度試験を行うのでは手間がかかり、また、供試体を養生するための期間が必要となることから、工期を遅らせる要因にもなる。
【0010】
本発明は、このような従来技術を鑑みてなされたものであり、製鋼スラグ材料を用いて改質土を製造するにあたり、例えば土運船等によって搬入される製鋼スラグ材料の搬入単位が切り替わった際に従来行なわれているような供試体を作製しての強度試験のかわりに、発現する改質土の強度を予測できるようにして、改質土を製造することができる方法を提供することを目的とする。また、この方法によって改質土を製造して現場での強度試験をできるだけ省きながら、水域環境の修復を行う水域環境修復施工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上述したような問題を解決するために鋭意検討した結果、粒度範囲が管理された製鋼スラグ材料に含まれる製鋼スラグ粒子の粒度分布が、改質土の強度に大きく影響する事実を突き止めた。そして、単位質量あたりに含まれる製鋼スラグ粒子の表面積を合計した粒子総表面積と改質土の強度との相関性に基づいて見出した関係式によれば、製鋼スラグ材料の搬入単位が切り替わったとしても、切り替え後での改質土の強度を予測することができ、現場での品質管理のための強度試験を省略することも可能となることから、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)粒径の異なる製鋼スラグ粒子を含んで粒度範囲が管理された製鋼スラグ材料を泥土と混合して改質土を得る際、途中で搬入単位の異なる製鋼スラグ材料に切り替わる工程を含む改質土の製造方法において、
切り替え前の搬入単位L1の製鋼スラグ材料を混合して得られた改質土の一軸圧縮強度Q1、及び、搬入単位L1の製鋼スラグ材料の単位質量あたりに含まれる製鋼スラグ粒子の表面積を合計した粒子総表面積S1に対して、
切り替え後の搬入単位L2の製鋼スラグ材料の単位質量あたりに含まれる粒子総表面積S2を用いて、下記式(1)から搬入単位L2の製鋼スラグ材料を混合して得られる改質土の一軸圧縮強度Q2を予測するようにして、製鋼スラグ材料を異なる搬入単位Lnに切り替えるごとに、搬入単位L1の製鋼スラグ材料を基準にして下記式(1)から改質土の一軸圧縮強度Qnを予測することを特徴とする改質土の製造方法。
【数1】

(2)前記第(1)項に記載の方法によって改質土を製造し、得られた改質土を水中に投入して水域環境の修復工事を行うことを特徴とする水域環境修復施工法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の改質土の製造方法では、単位質量あたりに含まれる製鋼スラグ粒子の表面積を合計した粒子総表面積と改質土の強度との相関性に基づき見出した関係式を用いることで、改質土の強度を予測することができる。そのため、改質土の用途に応じて、一旦、その強度を設計して供試体による強度試験を経て、泥土と製鋼スラグ材料の配合割合を決定してしまえば、泥土に製鋼スラグ材料を混合して改質土を得る際に、例えば土運船等によって新たな製鋼スラグ材料が搬入されてきたとしても、一度配合割合を決定した搬入単位の製鋼スラグ材料での値を基に、切り替え後の製鋼スラグ材料から得られる改質土の一軸圧縮強度を予測することができ、従来行っていたような供試体を作製しての強度試験を省くことができる。
【0014】
また、本発明の水域環境修復施工法では、干潟、浅場等の造成や、深堀れ窪地の埋め戻し処理等のように水域環境の修復施工において、水中に投入する改質土の製造を短期に連続して行うことができるため、従来に比べて施工期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明において関係式(1)の適用例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。
本発明における改質土の製造方法では、先ず、強度を改善する対象の泥土に対して加える製鋼スラグ材料について、用途に応じた目標強度が得られるように、フリーライム含有率をひとつの指標にしながら、使用する製鋼スラグ材料の粒度範囲を決める。粒度範囲が管理された製鋼スラグ材料として、好適には、JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」の規格に定められたものを使用することができる。この規格の製鋼スラグ材料は、例えば上記表1に示したように粒度範囲によって分類されており、それぞれ、JIS Z 8801に規定される網ふるいで篩い分けされる粒子が所定の質量割合で含有されるように定められている。そして、使用する製鋼スラグ材料を決定したところで、泥土と製鋼スラグ材料との配合設計を行い、供試体を作製して所定の期間養生し(一般的には28日程度)、一軸圧縮強度を確認する強度試験を経て、泥土と製鋼スラグ材料の配合割合を決定する。
【0017】
上記のように、供試体による強度試験等を経て、配合割合を決定した製鋼スラグ材料を用いて改質土を製造していくが、本発明では、製鋼スラグ材料の搬入単位が変わったところで、先の配合設計で使用した搬入単位での製鋼スラグ材料(配合設計に使用した搬入単位を搬入単位L1と呼ぶ)を基準にして、搬入単位が切り替わった後の製鋼スラグ材料(ここで切り替わった搬入単位を搬入単位L2とする)での一軸圧縮強度を予測するようにする。すなわち、搬入単位L1の製鋼スラグ材料を混合して得られた改質土の一軸圧縮強度Q1と、搬入単位L1の製鋼スラグ材料の単位質量あたりに含まれる製鋼スラグ粒子の表面積を合計した粒子総表面積S1とを基に、搬入単位L2の製鋼スラグ材料の粒子総表面積S2から、下記式(1')に従って、搬入単位L2の製鋼スラグ材料を混合して得られる改質土の一軸圧縮強度Q2を予測する。
【数2】

【0018】
そして、製鋼スラグ材料の搬入単位が切り替わるごとに、下記式(1)を用いて、搬入単位L1の製鋼スラグ材料を基準にしながら、搬入単位Lnの製鋼スラグ材料での一軸圧縮強度Qnを予測して、改質土を製造する。一軸圧縮強度Qnの予測値が当初の配合設計で許容するような値に達していれば、その搬入単位Lnの製鋼スラグ材料を用いて所定の割合で泥土と混合し、改質土を製造していく。もし、一軸圧縮強度Qnの予測結果が当初の配合設計で許容されるような所望の値に達しないような場合には、例えば、処理単位Lnの製鋼スラグ材料の配合量を増やしたり、高炉スラグ微粉末や別途セメントを添加するなどして改質土を得るようにすればよい。
【数3】

【0019】
ここで、製鋼スラグ材料の搬入単位とは、施工現場に搬入される状態での各まとまりで考えることができる。例えば、干潟や浅場の造成工事、深堀れ窪地を処理する埋め戻し工事等を行う水域環境の修復施工現場では、製鋼スラグ材料は土運船やトラック等に載せて搬入され、配合設計に基づき所定の割合で泥土と混合されて改質土を得る。この流れを模式的に示したものが図1である。すなわち、改質土の用途に応じて決定された製鋼スラグ材料1は土運船やトラック等の搬入手段4によって施工現場に搬入される。例えば土運船の場合、一般的には一隻あたり100m3〜700m3程度の製鋼スラグ材料1が運搬される。そして、施工現場では、図1に示したように搬入された製鋼スラグ材料1を複数回に分けて泥土2と混合したり、コンベア等を用いて連続的に供給しながら泥土と混合するなどして、改質土3を製造する。その際、運搬手段4によって搬入された搬入単位L1の製鋼スラグ材料1を用いて供試体を作製し、強度試験をするなどして泥土2と製鋼スラグ材料1との配合割合を決定してしまえば、次の搬入単位L2の製鋼スラグ材料1に切り替わったとしても、上記式(1)を使えば改質土3の強度を予測することができ、新たに供試体を作製して強度試験を行うような手間を省くことができる。
【0020】
上記の説明は、搬入単位ごとの製鋼スラグ材料1はJIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」の規格等で同じ粒度範囲に管理された同一製品であるとして考えるものであり、フリーライム量についても一定の範囲内に調整された製鋼スラグ材料である。したがって、フリーライム量等の成分値が別の設定値で管理されたような異なる製鋼スラグ材料に変更された場合には、供試体を作製して強度試験をするなどして新たに配合設計を行うようにすれば良い。また、本発明における改質土の製造方法は上記以外にも、例えば、現地で泥土と製鋼スラグ材料を直接バックホー等で混合するような施工現場や、管中混合工法等の大量施工方法にて改質土を製造する場合に適用することができる。
【0021】
製鋼スラグ材料の粒子総表面積Sn(nは1以上の整数)については、例えばJIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」の規格に定められた製鋼スラグ材料を用いる場合には、JIS Z 8801規定の網ふるいで粒径分けされた製鋼スラグ粒子の表面積を算出し、粒径ごとの質量比に応じて、各製鋼スラグ粒子の表面積を合計して求めることができる。このようにして求めた合計が、搬入単位Lnの製鋼スラグ材料の単位質量あたりに含まれる製鋼スラグ粒子の粒子総表面積Snである(nは1以上の整数)。なお、製鋼スラグ粒子の表面積については、網ふるいで粒径分けされた各スラグの粒径を計測して求めることができるほか、後述の実施例に記載した様な簡便法を用いるようにしても良い。
【0022】
泥土は、主に水と土粒子とからなり、浚渫土や建設排土等を例示することができる。このうち浚渫土は、港湾、河川、運河等の航路や泊地を拡げる目的や、河川、湖沼、ダム等の水底や海底の汚泥・底質汚染を除去する目的等を含めて、総じて浚渫により生じたものである。また、建設排土は、掘削等の建設工事で排出されたものである。これらはいずれも、その高い含水比(一般には含水比70〜250%程度)によって、ダンプトラック等に山積みして搬送するのが困難であったり、その上を人が歩けない程度のものであり、このような高含水比の泥土を用いて、改質土を得ることができる。泥土を用いると、製鋼スラグ材料との混合によって強度が発現することから、好適である。
【0023】
本発明の改質土の製造方法では、泥土と製鋼スラグ材料のほかに、高炉スラグ微粉末やセメントなどの他の改質材料を添加することもできる。勿論、製鋼スラグ材料以外の改質材料が添加される場合は、得られる改質土の強度は他の改質材料の影響を受けるが、製鋼スラグ材料の搬入単位の切り替えに起因する改質土の強度変化については、上述した式(1)を用いた本発明の方法によって正しく評価することができる。
【0024】
また、本発明では、上記の方法によって改質土を製造しながら、水域環境の修復を行うことができる。すなわち、得られた改質土を水中に投入して、干潟や浅場の造成工事、深堀れ窪地を処理する埋め戻し工事など、各種水域環境の修復を行うことができる。
【0025】
改質土を施工場所の水中に投入する具体的な施工手段については、公知の方法を採用することができる。代表的な工法として、例えば、作業船上の混合プラントにて泥土と製鋼スラグを予め混合し、水中に投入する工法(プレミックス方式)のほか、空気圧送船にて泥土を揚土する際に、製鋼スラグ材料を添加し、圧送管内で泥土と製鋼スラグ材料を攪拌混合して、トレミー管で水中に投入する工法(管中混合方式)、揚土船のベルトコンベアにて泥土と製鋼スラグ材料をトレミー船へ搬送し、連続式ミキサーで泥土と製鋼スラグ材料を混合して、トレミー管で水中に投入する工法(連続ミキサー混合方式)、土運船内にてバックホーにより製鋼スラグ材料と泥土を混合攪拌し、混合土を土運船から底開にて水中に直接投入する工法(バックホー混合+底開バージ投入方式)等が挙げられる。
【0026】
いずれの工法を採用する場合でも、一度配合設計をして泥土と製鋼スラグ材料の配合割合を決定し、改質土を得る途中で製鋼スラグ材料の搬入単位が切り替わったところで、上記式(1)を用いて一軸圧縮強度を予測しながら、水域環境の修復工事を行うようにする。もし、一軸圧縮強度の予測結果が目標強度よりも低い場合、製鋼スラグ材料の配合量を増やしたり、あるいは、高炉スラグ微粉末又はセメントを添加して、改質土の強度を増加させるような調整を実施すれば良い。それ以外であれば、製鋼スラグ材料の搬入単位の切り替えの際に、式(1)を用いて改質土の強度を予測するだけで、連続施工が可能になる。
【実施例】
【0027】
以下、試験用製鋼スラグ材料による試験例に基づきながら、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、下記試験例の内容に限定されるものではないことは勿論である。
【0028】
[試験用材料の準備]
泥土として、東京湾で回収された3種類の浚渫土a〜cを用意した(a:含水比197.80質量%,湿潤密度1.258g/cm3、b:含水比53.80質量%,湿潤密度1.689g/cm3、c:含水比95.80質量%,湿潤密度1.422g/cm3)。また、製鋼スラグ材料としては、JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」に基づくCS−20の規格品であって、フリーライム含有率が異なる3種類の製鋼スラグ材料A〜C(A:f-CaO含有率5.97質量%,表乾密度3190kg/m3、B:f-CaO含有率3.53質量%,表乾密度3980kg/m3、C:f-CaO含有率2.23質量%,表乾密度3510kg/m3)を用いて、以下のようにして粒度分布を調整して、製鋼スラグ材料A〜Cごとに、それぞれ粒度分布タイプI〜IIIの試験用製鋼スラグ材料(A-I〜III,B-I〜III,C-I〜III)を準備した。
【0029】
先ず、JIS Z 8801に規定する網ふるいを用いて、上記の製鋼スラグ材料A〜Cを、それぞれ表2に示すようなタイプI〜IIIの粒度分布になるように調整して、試験用製鋼スラグ材料とした。ここで、例えば粒度分布タイプIの試験用製鋼スラグ材料については、100質量%の製鋼スラグ粒子が篩い目26.5mmの網ふるいと篩い目19mmの網ふるいを通過し、90質量%の製鋼スラグ粒子が篩い目13.2mmの網ふるいを通過し、50質量%の製鋼スラグ粒子が篩い目4.75mmの網ふるいを通過し、及び、35質量%の製鋼スラグ粒子が篩い目2.36mmの網ふるいを通過することを表す。
【0030】
【表2】

【0031】
次に、上記で粒度分布タイプI〜IIIに調整した試験用製鋼スラグ材料について、それぞれの試験用製鋼スラグ材料100gあたりに含まれる製鋼スラグ粒子の合計表面積(すなわち「粒子総表面積S」)を算出するために、以下では全ての製鋼スラグ粒子を完全な球体としてみなし、製鋼スラグ粒子の直径を次のように定義した。ある網ふるいを通過しない製鋼スラグ粒子の直径については、その網ふるいの篩い目と同じとした。つまり、例えば篩い目19mmの網ふるいを通過しない製鋼スラグ粒子は、全て直径19mmである。また、篩い目2.36mmの網ふるいを通過した製鋼スラグ粒子については、本実施例では全て直径425μmとした。そして、各粒径の製鋼スラグ粒子について、それぞれ、表3に示した体積及び表面積を有する球体とした。なお、本試験例では、このような製鋼スラグ粒子の直径の設定が、製鋼スラグ粒子の表面積を求める上で実測値と良好に合致することを確認して上記方法を採用しているが、例えば、ある網ふるいを通過しない製鋼スラグ粒子の直径をひと段上の網ふるいの篩い目との中間値に設定するなどして、製鋼スラグ粒子の表面積を求めるようにしてもよい。
【0032】
【表3】

【0033】
次いで、表2に記したタイプI〜IIIの粒度分布に従い、各粒径の製鋼スラグ粒子の質量比(%)を表乾密度に基づき体積(mm3)に換算し、各粒径の製鋼スラグ粒子の体積を求めて、体積と粒径の関係から粒径ごとの粒子個数を算出した。そして、この粒子個数から、各粒径の製鋼スラグ粒子の表面積(mm2)を算出し、各粒径の製鋼スラグ粒子の表面積を合計して、粒度分布タイプI〜IIIの製鋼スラグ材料の粒子総表面積Sを求めた。表4には、これら一連の計算結果をまとめて示しており、「製鋼スラグ粒子合計」欄における「表面積」が、この『粒子総表面積S』である。
【0034】
【表4】

【0035】
[試験例1]
先ず、上記で準備した2,365gの浚渫土aと、1,914gの試験用製鋼スラグ材料A-IIとを、2軸強制練りミキサーを用いて2分間攪拌混合して試験用泥土改質材1-1を得た。この試験用泥土改質材1-1をモールドに詰めて成型し、大気中で28日間養生して直径100mm×高さ200mmのサイズを有した円柱状の供試体1-1を作製した。この供試体1-1を一軸圧縮試験機を用いて一軸圧縮強度Qを測定したところ、222kN/m2であった。
【0036】
次に、試験用製鋼スラグ材料A-IIのかわりに、1,922gの試験用製鋼スラグ材料A-IIIを用いた以外は、上記試験用改質土1-1の場合と同様にして、試験用改質土1-2を得た。次いで、得られた試験用改質土1-2を用いて、上記試験用改質土1-1の場合と同様にして、供試体1-2を作製した。ここで、1回目に使用した試験用製鋼スラグ材料A-IIの粒子総表面積S(138,942mm2)及び供試体1-1の一軸圧縮強度Q(222kN/m2)と、2回目に使用した試験用製鋼スラグ材料A-IIIの粒子総表面積S(78,205mm2)とを用いて、上述した式(1)に従えば、供試体1-2の一軸圧縮強度Qは78,205mm2/138,942mm2×222kN/m2=125kN/m2と予測することができる。これに対して、供試体1-2の一軸圧縮強度Qを、実際に一軸圧縮試験機を用いて測定したところ、118kN/m2であった。これらの結果を表5に示す。
【0037】
つまり、予測した一軸圧縮強度の値に対して実際の一軸圧縮強度は118(kN/m2)/125(kN/m2)×100(%)=94%であり、実際の施工現場において粒度分布が異なる製鋼スラグ材料に切り替わった場合でも、本発明における式(1)を使えば、切り替え後の製鋼スラグ材料で得られる改質土の一軸圧縮強度を実測値に近い値で予測できることが分かる。
【0038】
【表5】

【0039】
[試験例2〜6]
試験用製鋼スラグ材料(A-I〜III,B-I〜III,C-I〜III)と浚渫土a〜cとの組み合わせを、表5に示したように変更した以外は上記試験例1と同様にして、それぞれ試験用改質土及び供試体を得た。そして、各試験例において、粒度分布が異なる製鋼スラグ材料を使用した2回目に、本発明における式(1)を用いて供試体の一軸圧縮強度を予測すると共に、一軸圧縮試験機によって実際の一軸圧縮強度を測定した。結果を表5にまとめて示す。いずれの試験例においても、2回目の製鋼スラグ材料を用いて得られる改質土の一軸圧縮強度を実測値に近い値で予測できることが分かる。
【0040】
以上の試験例から明らかなように、泥土に混合して改質土を得る途中で、粒度分布の異なる製鋼スラグ材料に切り替わった際、当初配合設計した製鋼スラグ材料の粒子表面積を合計した粒子総表面積と、それを用いて得られた改質土の一軸圧縮強度とを基準にして、切り替え後の製鋼スラグ材料の粒子総表面積から、得られる改質土の一軸圧縮強度を予測することが可能である。そのため、本発明によれば、改質土の用途に応じて、一旦、その強度を設計し、供試体による強度試験を経て、泥土と製鋼スラグ材料の配合割合を決定してしまえば、途中で製鋼スラグ材料の搬入単位が切り替わったとしても、得られる改質土の一軸圧縮強度を予測しながら改質土を製造できるため、従来に比べて必要な強度試験を減らすことができ、改質土の製造工程を短縮することができる。また、このような改質土の製造方法を利用すれば、干潟、浅場等の造成や、深堀れ窪地の埋め戻し処理等のように水域環境の修復施工現場において、水中に投入する改質土の製造を短期に連続して行うことができるため、従来に比べて施工期間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:製鋼スラグ材料
2:泥土
3:改質土
4:搬入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径の異なる製鋼スラグ粒子を含んで粒度範囲が管理された製鋼スラグ材料を泥土と混合して改質土を得る際、途中で搬入単位の異なる製鋼スラグ材料に切り替わる工程を含む改質土の製造方法において、
切り替え前の搬入単位L1の製鋼スラグ材料を混合して得られた改質土の一軸圧縮強度Q1、及び、搬入単位L1の製鋼スラグ材料の単位質量あたりに含まれる製鋼スラグ粒子の表面積を合計した粒子総表面積S1に対して、
切り替え後の搬入単位L2の製鋼スラグ材料の単位質量あたりに含まれる粒子総表面積S2を用いて、下記式(1)から搬入単位L2の製鋼スラグ材料を混合して得られる改質土の一軸圧縮強度Q2を予測するようにして、製鋼スラグ材料を異なる搬入単位Lnに切り替えるごとに、搬入単位L1の製鋼スラグ材料を基準にして下記式(1)から改質土の一軸圧縮強度Qnを予測することを特徴とする改質土の製造方法。
【数1】

【請求項2】
請求項1に記載の方法によって改質土を製造し、得られた改質土を水中に投入して水域環境の修復工事を行うことを特徴とする水域環境修復施工法。

【図1】
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