説明

改質炭の石炭化度の推定及び評価方法

【課題】非微粘結炭に重質油を添加して石炭改質した際の改質効果を正確に確認することを可能にできる改質炭の石炭化度の推定及び評価方法を提供する。
【解決手段】低石炭化度炭を粘結炭相当品に変換させる低石炭化度炭の改質方法で利用される改質炭の石炭化度の推定・評価方法であり、石炭化度が段階的に異なる4種以上の石炭を、空気を絶った状態で1,000℃以上の温度に保持して熱処理して得た標準試料のX線回折による平均積層数N或いは層面の結晶子の大きさLaと、各石炭の石炭化度RoとからRo−N或いはRo−Laの回帰直線を予め求め、粉状の低石炭化度炭と、改質剤である芳香族性に富む重質油との混合物からなる成型体を作製し、成型体について標準試料の場合と同じ熱処理をして得た測定用試料のX線回折により求めたN或いはLaと、回帰直線を用いて、混合物のNあるいはLaから石炭化度Roを求める改質炭の石炭化度の推定及び評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質炭の石炭化度の推定及び評価方法に関し、さらに詳しくは、粉状の低石炭化度炭に芳香族性に富む重質油を配合した配合物の石炭化度の推定及び評価方法に関する。本発明は、製鉄用コークスの製造に用いる原料炭として、非微粘結炭を重質油により改質して粘結炭に変換したものを用いる技術の実施化において特に有用な、改質材である重質油と、原料炭である非微粘結炭との配合物の石炭化度を簡易にかつ正確に推定できる重質油配合の非微粘結炭の石炭化度の推定及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用を図る目的から、製鉄用コークスの原料として、従来その使用が進んでいなかった、低石炭化度炭に分類される非粘結炭或いは微粘結炭(これらをまとめて非微粘結炭とする)を積極的に用いることが検討されている。
【0003】
なお、本発明における用語は、JIS M0104(石炭利用技術用語)によるが、主な用語の定義は以下の通りである。
・粘結炭;石炭の性状による分類において、粘結性を示す石炭。
・微粘結炭;石炭の性状による分類において、わずかに粘結性を示す石炭。
・非粘結炭;石炭の性状による分類において、粘結性を示さない石炭。
・粘結性;石炭を乾留した時、軟化溶融状態(plastic stage)において観測される性質(粘着性、流動性、膨張性など)の総称。
・粘着性:石炭を乾留した時に、軟化溶融し、融着結合する性質。
上記の粘結性や粘着性に関しては、測定装置として、ギーセラープラストメーター(JIS M8801(石炭類の試験方法))を使用し、流動度を測定する。流動度は通常ddpm単位で表す。石炭の特性値としては最高流動度(MF)を用いる。慣用的にこれを流動度という場合が多い。またddpmの常用対数を使用することもある。
・反射率:光が物体の表面に入射するとき、反射光のエネルギーと入射光のエネルギーとの比で、百分率で示す。
石炭の場合、JIS M 8816では、546nmの光を用い、微細組織成分の油浸最大反射率を顕微鏡下で測定し、平均最大反射率を算出する。通常、石炭の反射率と言う場合、ビトリニットの油浸最大反射率を意味することが多い。石炭の石炭化度を表す。表示は、RoあるいはRomaxで表す。
【0004】
以上はJIS M0104の定義であるが、石炭について、実際的には下記のように考えられている。粘結炭(通常原料炭と称する)は、350〜500℃の温度で軟化溶融してそれ以上の温度に加熱すると最終的に塊状のコークスとなるものである。非粘結炭は、加熱していくと溶融状態を示さず固体のまま推移して炭素(通常チャーと称する。)になり、加熱しても塊状のコークスにならないものである。微粘結炭は、粘結炭と非粘結炭の中間に位置するが、現在、鉄鋼業界では、粘結炭と非粘結炭の中間に位置するものとして非微粘結炭が粘結炭と併用する形態で使用されている。粘結炭は、高価で産出量が非粘結炭と比較すると少ないといったこともあって、より積極的な使用を促進させるために、非微粘結炭を簡単に粘結炭に変換して改質できる技術が強く求められている。ここで、非微粘結炭は、鉄鋼業界ではRoが0.85以下でlogMFが2.5以下、或いは、Roが0.85以上logMFが0.5以下と定義している。
【0005】
非微粘結炭を粘結炭に変換する技術については種々の提案があるが、いずれの方法によっても完全に非微粘結炭のみで強度の高いコークスが製造できるわけではない。従来の方法についての報告によれば、高々20−50%程度の非微粘結炭の使用に甘んじているし、現実はもっとその比率は低いと言われている。
【0006】
このような問題点を解決するため、本発明者らは、既に、乾燥した粉状の低石炭化度炭と、石油系又は石炭系の改質材とを併存させた状態で350℃〜450℃の温度で加熱して、低石炭化度炭を改質する技術について提案している(特許文献1、特許文献2参照)。その中で、改質する対象となる低石炭化度炭についての検討や、改質材として重質油の検討などを重ねた結果、かかる技術によれば、製鉄用コークス製造時において、改質材として芳香族性に富む重質油を用いることで、非微粘結炭を改質して粘結炭相当品に効率よく変換することを可能にしている。
【0007】
具体的には、本発明者らは、非微粘結炭に対して配合する改質材の比率削減、改質速度の改善、できるだけ安価で改質効率に優れる改質材の選択、さらに、原料の石炭として有用な非微粘結炭の選択などについての検討を行い、下記の結果を得ている。まず、より安価で軟化点の高い改質材として、例えば、石油精製工程で副生するSDAピッチのような重質油の利用が有効であることを見出した。より具体的には、軟化点が200℃以下80℃以上、QIが10%以下で、芳香族指数faが0.3%以上の重質油が有用である。さらに、原料の石炭の性質としては、Roが0.85以下で、logMFが2.5以下の低石炭化度非微粘結炭の利用が有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−132895号公報
【特許文献2】国際公開第2010/090230号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らは、上記したような方法で非微粘結炭を粘結炭に変換できたとしても、変換した粘結炭相当品を判定し評価する確実な方法が無いという新たな課題を認識するに至った。すなわち、非微粘結炭を粘結炭に変換できたことが判定できなければ、その実用化において円滑な操業を難しくする。すなわち、現状の評価技術では、使用する非微粘結炭の種類による影響や、重質油の種類や配合量による影響などを的確に評価できず、最適なコークス製造原料の設計が難しくなるという課題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、非微粘結炭に重質油を添加して石炭の改質を行った際の改質効果を正確に確認することを可能にできる。すなわち、これらの配合物における石炭化度の推定及び評価を行うことを可能とする改質炭の石炭化度の推定及び評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、低石炭化度炭を粘結炭相当品に変換させるための低石炭化度炭の改質方法において利用される改質炭の石炭化度の推定及び評価方法であって、石炭化度が段階的に異なる4種以上の石炭を用い、該石炭を、空気を絶った状態で1,000℃以上の温度に保持して熱処理して得た標準試料について、X線回折によって得た平均積層数N或いは層面の結晶子の大きさLaと、各石炭について測定した石炭化度Roとから、Ro−N或いはRo−Laの回帰直線を予め求めておき、粉状の低石炭化度炭と、改質剤である芳香族性に富む重質油とを混合して得た混合物からなる成型体を作製し、該成型体について、上記標準試料の場合と同じ熱処理をして得た測定用試料について、X線回折によりN或いはLaを求め、上記で得た回帰直線を用いて上記混合物のNあるいはLaから石炭化度Roを求めることを特徴とする改質炭の石炭化度の推定及び評価方法を提供する。
【0012】
上記の改質炭の石炭化度の推定及び評価方法の好ましい形態としては、前記成型体が、乾燥粉砕した粉状の低石炭化度炭試料に、芳香族性に富む重質油を適宜な量で混合した配合物を成型してなる成型体であること、或いは、前記低石炭化度炭が、非微粘結炭であることが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非微粘結炭に重質油を添加して石炭の改質を行った際の改質効果を正確に確認することを可能にできる、これらの配合物における石炭化度の推定及び評価を確実に行うことを可能とする改質炭の石炭化度の推定及び評価方法が提供される。より具体的には、本発明によれば、コークス製造の際に、その原料炭として用いる改質石炭の石炭化度と粘結性を正確に表示できる手法の技術提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の改質炭の石炭化度の推定及び評価方法において使用するRo−Nの回帰直線の一例である。
【図2】本発明を利用できるコークス製造方法を工業化した場合の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、従来におけるコークス化性評価手法について簡単に説明する。コークス化性の評価は、対象とする石炭を乾留してコークスにしてその強度を測定するのを原則としている。これまで原料炭の評価の方法は、原料炭の石炭化度と粘結性から行われていた。その中で最有力の方法は、石炭化度は石炭のビトリニットの反射率Roによって行われており、また、粘結性は、ギーセラープラストメーターの最高流動度(MF)で評価されている。本発明の改質炭の石炭化度の推定及び評価方法では、改質した石炭について、そのうちの石炭化度(Ro)の推定を可能とするものである。
【0016】
本発明が利用の対象としている低石炭化度炭を粘結炭相当品に変換させるための低石炭化度炭の改質方法では、乾燥粉砕した非微粘結炭に重質油(以下、ピッチとも言う)を加えて成型し、コークス炉へ装入して加熱させており、その改質の効果は、ピッチによる非微粘結炭の改質時における石炭化度Roと粘結性MFがわかれば判定できる。ここで、粘結性MFは、ピッチと乾燥粉砕した非微粘結炭の混合成型物のMFを測定すれば簡単に分る。しかし、Roに相当する値を推定する方法は問題となる。
【0017】
ここで、従来知られている石炭についての評価方法の一つとして、熱処理炭の微細組織を調べる目的で、1,000℃以上に石炭を加熱した後、X線回折を行い、平均積総数Nと結晶子の大きさLa(nmで表す)を測定した例がある。また、石炭化度を石炭の炭素含有量(C%)で表わし、C%からRoを求めることを記載した例もある。これに対し、本発明者らは、低石炭化度炭を粘結炭相当品に変換させる検討を行う過程において、X線回折を行って得た石炭のNとLaと、該石炭の石炭化度Roとの関係を求めると、これらはお互いに非常によい相関関係を示すことを見出した。そして、本発明者らは、かかる知見に基づき、本発明者らが開発した低石炭化度炭を粘結炭相当品に変換させることを可能とする、粉状の低石炭化度炭と、改質剤である芳香族性に富む重質油とを混合して得た混合物(配合物)について、石炭化度の推定及び評価が可能であるか否かについて鋭意検討を行った。その結果、N値或いはLa値からRoに相当する値を求めることで、改質炭の石炭化度を推定及び評価する手法を確立できることを見出して本発明に至った。ここで、Laを求めるときは、原料を1,000℃以上に炭化した後、HClを使い、炭化物を脱灰して2%以下にする必要がある。これは灰分が測定の精度を下げるため、測定試料から除去する必要があるからである。このため、La値を利用するよりもN値を用いる方が、推定及び評価方法としては簡便であると言える。
【0018】
本発明では、まず、石炭化度が段階的に異なる4種以上の石炭を用い、該石炭を、空気を絶った状態で1,000℃以上の温度に保持して熱処理して得たコークス化した標準試料について、X線回折によって得た平均積層数N或いは層面の結晶子の大きさLaと、各石炭について測定した石炭化度Roとから、Ro−N或いはRo−Laの回帰直線を予め求めておく。その一方で、乾燥した粉状の低石炭化度炭と、芳香族性に富む重質油とを混合して得た混合物(配合物)からなる成型体を作製し、該成型体について、上記標準試料の場合と同じ熱処理を行い、得られたものを測定用試料とし、該試料についてX線回折によりN或いはLaを求める。そして、上記で得た回帰直線を用いて、上記成型体について測定したN値あるいはLa値から石炭化度Roを求めることで、上記改質石炭について正確に石炭化度の推定及び評価をすることが可能なる。
【0019】
上記において、回帰直線を求めるときに使用する石炭種は、石炭化度が段階的に異なる4種以上を用いればよいが、できれば5種以上がより好ましい。これは回帰直線の精度を上げるためである。
【0020】
さらに、本発明では、その評価対象となる測定用試料として、低石炭化度炭に、芳香族性に富む重質油を配合してなる配合物からなる成型体を作製し、該成型体について、回帰直線を求めたと同じ温度条件で加熱してコークス化した測定用試料を調製する。このようにして得られた成型体からなる試料について、X線回折によって平均積層数N或いは層面の結晶子の大きさLaを得る。本発明では、上記の試料調製に一つの特徴があり、成型体とした上加熱してコークス化し、これについてX線回折を行った点にある。具体的には、乾燥粉砕した石炭試料に、芳香族性に富む重質油を適宜な量で混合した混合物を成型してなる成型体とし、該成型体を加熱して測定試料を調製することが好ましい。本発明は、改質炭の石炭化度の推定及び評価方法に関するため、上記における重質油の量は、試験対象とする改質炭を構成するものであるので、石炭の種類と共に、試料毎に異なり、改質に必要な適宜な量となる。
【0021】
本発明によれば、乾燥粉砕した非微粘結炭にピッチを混合した配合物からなる上記成型体について、加熱して良質な粘結炭相当品に変換したもののX線回折を行ってN値或いはLa値を求めるという簡便な方法で、Roが求められる。なお、MF値については、成型体を作製するための配合物のMF測定によって簡単に求められる。したがって、以上の簡便な方式により、改質した粘結炭相当品のRoとMFが分かり、この値から、乾燥粉砕した非微粘結炭とピッチとの混合物のコークス原料としての評価が決定できる。
【0022】
本発明の改質炭の石炭化度の推定及び評価方法を適用することができる低石炭化度炭を粘結炭相当品に変換させるための低石炭化度炭の改質方法を企業化した時の一例のイメージ図を、図2に示した。図2は成型炭法である。簡単に説明すると、非微粘結炭は乾燥粉砕機で乾燥と粉砕が同時に行われる。粉砕品はサイクロンで集められ、スクリュウコンベアにて運ばれ、加熱された改質材(重質油)を添加された後、混練機にて充分に混合され、その後ブリケット装置で20mmのブリケットを製造する。製品のブリケットはコークス炉に装入され、加熱されて非微粘結炭が改質される。また、コークス炉に装入時に上記のように乾燥粉砕成型せずに単純に配合しても同じような結果が得られる。但し、この場合は改質用の重質油の配合量が増大する。
【0023】
以上のような方式で低石炭化度炭の改質方法が行われ、コークスの製造がなされるが、その時のコークス炉に装入される成型物の評価に本発明の評価方法を導入すれば、連続的に確実に粘結炭相当品である改質された石炭を原料として用いることができるようになる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、%とあるのは質量基準である。
【0025】
[実施例1]
下記のようにして、原料とする非微粘結炭とピッチとのピッチ混合石炭についてのN値(平均積層数)から、該改質石炭のRo値(平均反射率=石炭化度)を推定することが可能であることを検証した。
【0026】
表1に、回帰分析を行って回帰直線を求めるために用いた石炭化度の異なるA〜Gの6種の石炭について、通常の標準化されている方法で測定した、Ro(平均反射率)とMF(ギーセラー最高流動度)の分析値をそれぞれ示した。また、下記の手順で焼成処理を行ってコークス化して得た試料についてX線回折することによって、それぞれ原料とした石炭のN値(平均積層数)を求めた。表1中に、このようにして得られたN値の測定結果を合わせて示した。具体的には、各石炭試料について、電気炉を用い、0.1L/minのアルゴン流通下、10℃/minの速度で1,000℃まで昇温させ、該温度で1時間保持し、その後、室温まで試料を自然冷却させて測定用の試料を得、該試料についてX線回折を行ってN値を得た。
【0027】

【0028】
回帰直線を求めるために用いた石炭のうちのRo値の低いA、BおよびCの各石炭を用い、これに、表2に示した性状のピッチを、それぞれ10%添加して混合したピッチ混合石炭を得た。さらに、得られたピッチ混合石炭をそれぞれに用いて改質用の石炭試料を調製した。具体的には、まず、A、BおよびCの石炭試料を縮分した後、35mesh以下の試料に調製し、これを室温で72時間減圧乾燥させた。得られた乾燥粉砕した石炭試料に、それぞれピッチを10%の割合で混合したものを一軸成型し、成型体を改質用の試料とした。
【0029】

【0030】
上記のようにして得た改質用のピッチ混合石炭A〜Cについて、下記の焼成処理を行ってコークス化してX線回折の試料を調製した。すなわち、上記で得た改質用のピッチ混合石炭をアルミナ製ボートに取り、電気炉を用い、0.1L/minでアルゴンの流通下、10℃/minの速度で1,000℃まで昇温させ、その温度で1時間保持した後、室温まで試料を自然冷却させることで得たものをX線回折の試料とした。これらの試料についてX線回折を実施して縮合多環芳香族の積層数の評価を行った。得られた値を表3に示した。また、上記で一軸成型する前におけるピッチ混合石炭A〜Cについて、流動度試験器を用いてギーセラー最高流動度の測定を行った。表3中に、得られたMF値を合わせて示した。
【0031】
この結果、表1と表3とから、原料とした非微粘結炭と、ピッチ混合石炭との平均積層数Nでは、ピッチを添加することによって積層数が多少増加する傾向があることがわかった。また、表3に示されているように、石炭化度の低い石炭A〜Cにピッチを添加した状態のピッチ混合石炭とすることで、いずれの石炭においてもMF値が顕著に増大し、改質されることが確認できた。特に、ピッチ混合石炭Aにおいては、測定限界を超える驚くべき値を確認した。
【0032】

【0033】
表1に示した各分析値について検討した。その結果、表1に示したRoとNとの値の間に明確な相関が認められたので、この関係について回帰分析して回帰直線を求めた。この結果、両者の関係は下記の式(1)のようになった。なお、下記式(1)は、RoとNの間に統計的に1%有意であることが確認されている。このことは、下記式(1)を利用すれば、X線回折によって得たN値から、Roを推定できることを意味している。
Ro=0.84N−1.48 (1)
【0034】
そこで、回帰分析して得た上記式(1)を利用して、改質したピッチ混合石炭についての評価を試みた。すなわち、表3に示したピッチ混合石炭A〜Cを焼成してコークス化した試料について行ったX線回折分析により得た平均積層数Nを用い(表4の上段に転載)、上記式(1)の回帰直線を使用して、これらの石炭A〜CについてのRoをそれぞれ算出した。この結果を表4に示した。表4のRo値(回帰直線からの算出値)は、表1に示したそれぞれについての原料の石炭のRo値に比べて、いずれの場合も値が増大しており、ピッチを混合しての改質処理によって石炭化度が向上したことが明確に示された。
【0035】

【0036】
[実施例2]
下記のようにして、原料とする非微粘結炭とピッチとのピッチ混合石炭についてのLa値から、該改質石炭のRo値(平均反射率=石炭化度)を推定することが可能であることを検証した。
【0037】
本実施例では、実施例1で使用したN値に代えてLa値を使用した。検討に使用したピッチは、実施例1の場合と同じである。また、回帰直線の策定のために使用した石炭の分析値は、表5に示した通りである。表5に、用いた石炭化度が段階的に異なる4種の石炭についてのRo(平均反射率)とMF(ギーセラー最高流動度)をそれぞれ示した。
【0038】

【0039】
La値の測定では、表5に示した石炭をコーク化後、脱灰していずれも灰分を2%以下に落とした。この際、コークス化は、1,000℃まで3℃/minで昇温して行った。そして、X線回折によってLa(nm)を測定した。その値は以下の通りである。
【0040】

【0041】
表5のRoと表6のLa(Å)から回帰直線は次のようであった。
Ro=0.98La−1.068 (2)
実施例1で使用した石炭Aに、実施例1で用いたと同じピッチを10%配合し、実施例1で述べたと同様にして成型後、焼成してコークス化した試料のLaは19.40(Å)(=1.940nm)となった。なお、このコークスは脱灰している。このLa値を用いて、上記で得た回帰直線式(2)からRoを求めると、0.83となり、実施例1で行ったN値を用いて推定した場合と同様であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低石炭化度炭を粘結炭相当品に変換させるための低石炭化度炭の改質方法において利用される改質炭の石炭化度の推定及び評価方法であって、
石炭化度が段階的に異なる4種以上の石炭を用い、該石炭を、空気を絶った状態で1,000℃以上の温度に保持して熱処理して得た標準試料について、X線回折によって得た平均積層数N或いは層面の結晶子の大きさLaと、各石炭について測定した石炭化度Roとから、Ro−N或いはRo−Laの回帰直線を予め求めておき、
粉状の低石炭化度炭と、改質剤である芳香族性に富む重質油とを混合して得た混合物からなる成型体を作製し、該成型体について、上記標準試料の場合と同じ熱処理をして得た測定用試料について、X線回折によりN或いはLaを求め、上記で得た回帰直線を用いて上記混合物のNあるいはLaから石炭化度Roを求めることを特徴とする改質炭の石炭化度の推定及び評価方法。
【請求項2】
前記成型体が、乾燥粉砕した粉状の低石炭化度炭試料に、芳香族性に富む重質油を適宜な量で混合した配合物を成型してなる成型体である請求項1に記載の改質炭の石炭化度の推定及び評価方法。
【請求項3】
前記低石炭化度炭が、非微粘結炭である請求項1又は2に記載の改質炭の石炭化度の推定及び評価方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193319(P2012−193319A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60059(P2011−60059)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所;社団法人 日本エネルギー学会、刊行物名;第47回石炭科学会議 発表論文集、発行日;平成22年9月21日
【出願人】(505077448)
【Fターム(参考)】