説明

改質硫黄資材およびその製造方法

【課題】非危険物としての取り扱いが可能で、優れた難燃性を示し、溶融時に過度な粘度上昇を抑制でき、安全に且つ容易に改質硫黄を用いた土木・建築製品を製造する際の資材として利用可能な改質硫黄資材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】改質硫黄資材は、硫黄及び硫黄改質剤を反応させて得たポリスルフィドを含む改質硫黄結合材と、JIS標準ふるいの公称目開き1.00mmを通過する粒径の細骨材とを含む、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下である改質硫黄資材であって、前記細骨材として、ブレーン比表面積が3000〜5500cm2/gの石炭灰を含有することを特徴とする。このような改質硫黄資材は、土木・建設製品の資材として利用でき、非危険物扱いとして貯蔵可能で運搬が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質硫黄結合材を利用した土木・建設製品の資材として利用でき、小ガス炎着火試験によって検定される非危険物として優れた難燃性を示す、貯蔵可能で運搬が容易な改質硫黄資材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄資材は、コンクリートに比べて優れた強度を有する材料として知られている。しかし、硫黄は危険物扱いであり、現場で溶融し打設することが困難であった。
そこで、硫黄資材を非危険物とし、更に強度等の改善を目的に、硫黄を硫黄改質剤により重合反応させた改質硫黄を用いる技術が多数提案されている。
例えば、特許文献1には、安全に且つ容易に硫黄製品の製造に利用でき、小ガス炎着火試験において非危険物としての取り扱いが可能な改質硫黄と細骨材とを用いた改質硫黄資材及びその製造方法が提案されている。
しかし、このような改質硫黄を用いて、骨材と溶融混合する場合、溶融改質硫黄の反応による粘度変化が生じ易く、その製造時における制御が困難である。そこで、このような粘度変化を制御するために、硫黄改質剤の種類等を検討した技術も提案されている。また、特許文献1に提案される、小ガス炎着火試験において非危険物と判定された改質硫黄資材の更なる難燃性の向上が望まれている。
【0003】
ところで、特許文献2〜4には、硫黄組成物の固化時の収縮による亀裂発生を抑制し、高強度で高緻密な硫黄コンクリートを製造する方法として、硫黄と、ブレーン比表面積2000cm2/g以上のフライアッシュ等の鉱物質微粉末とを特定割合で混合する技術が提案されている。
しかし、これらの文献に記載された特定のブレーン比表面積を有する鉱物質微粉末の配合は、強度等を得るためであって、これらに記載された硫黄コンクリートは、製造時における硫黄改質剤の使用については意図しておらず、製造時における溶融改質硫黄の反応制御や、得られる硫黄コンクリートの難燃性の点については何等検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−82475号公報
【特許文献2】特開平11−349372号公報
【特許文献3】特開2000−72523号公報
【特許文献4】特開2000−281425号公報
【特許文献5】特開2002−255623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、非危険物としての取り扱いが可能で、優れた難燃性を示し、溶融時に過度な粘度上昇を抑制でき、安全に且つ容易に改質硫黄を用いた土木・建築製品を製造する際の資材として利用可能な改質硫黄資材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、硫黄及び硫黄改質剤を反応させて得たポリスルフィドを含む改質硫黄結合材と、JIS標準ふるいの公称目開き1.00mmを通過する粒径の細骨材とを含む、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下である改質硫黄資材であって、
前記細骨材として、ブレーン比表面積が3000〜5500cm2/gの石炭灰を含有することを特徴とする改質硫黄資材が提供される。
また本発明によれば、ポリスルフィドを含む改質硫黄結合材を得るために、硫黄と硫黄改質剤とを120〜150℃で混合反応させる工程(a)と、工程(a)で得られた改質硫黄結合材の溶融物と、ブレーン比表面積が3000〜5500cm2/gの石炭灰を含む、JIS標準ふるいの公称目開き1.00mmを通過する粒径の細骨材とを加熱混合する工程(b)と、工程(b)で得られた混合物を、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下となるように冷却・固化する工程(c)とを含むことを特徴とする改質硫黄資材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の改質硫黄資材は、ポリスルフィドを含む改質硫黄結合材と、特定のブレーン比表面積を有する石炭灰とを含有するので、非危険物とすることが可能で、優れた難燃性を示し、且つ改質硫黄を用いた土木・建築製品を製造する際の粗骨材との混合性に優れ、その際の溶融改質硫黄資材の過度な粘度上昇を抑制することができる。従って、管理、保管、運搬、硫黄製品の製造に極めて有用である。
本発明の改質硫黄資材の製造方法は、上記工程(a)〜(c)を含むので、本発明の改質硫黄資材を、容易な制御で、効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の改質硫黄資材は、硫黄及び硫黄改質剤を反応させて得たポリスルフィドを含む改質硫黄結合材と、JIS標準ふるいの公称目開き1.00mmを通過する粒径の特定のブレーン比表面積を有する細骨材とを含み、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下の大きさを有する。
本発明の改質硫黄資材は、140℃で加熱溶融した際の粘度が、通常0.05〜3.0Pa・s、好ましくは0.2〜2.0Pa・s、特に好ましくは0.5〜1.5Pa・sである。該粘度が低い場合には、土木・建築製品を製造する際の溶融改質硫黄の粘度制御が困難になる恐れがあり、一方、該粘度が高い場合には、土木・建築製品を製造する際の粗骨材との混合性が低下し、均一製品の製造が困難になる恐れがある。
ここで、該粘度は、B型粘度計により測定した値である。
【0009】
本発明の改質硫黄資材に用いることができる改質硫黄結合材は、硫黄改質剤により硫黄を重合したポリスルフィドを含むものであって、硫黄と硫黄改質剤との反応物である。該硫黄は、通常の硫黄単体であり、例えば、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄を用いることができる。
改質硫黄結合材に含まれるポリスルフィドとは、得られる改質硫黄結合材に大過剰のトルエンを用いて室温で4時間抽出を行い、不溶分(ポリスルフィド量)を測定した値を意味する。
改質硫黄結合材に含まれるポリスルフィドの含有割合は、改質硫黄結合材全量基準で、通常5〜30質量%、好ましくは8〜25質量%、更に好ましくは12〜25質量%である。ポリスルフィドの含有割合が、5質量%未満では、所望の難燃性確保が困難になる恐れがあり、30質量%を超えると、粘度が上昇し、細骨材との混合が困難になる恐れがある。
【0010】
改質硫黄結合材の製造に用いる硫黄改質剤としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPDと略す)、テトラハイドロインデン(THIと略す)、エチリデンノルボルネン(ENBと略す)又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
DCPDとしては、DCPD単体、若しくはDCPDと、シクロペンタジエンの2〜5量体を主体に構成される混合物が挙げられる。混合物中のDCPDの含有量は、通常70質量%以上、好ましくは85質量%以上である。従って、いわゆるジシクロペンタジエンと称する市販品の多くは使用可能である。
【0011】
THIとしては、例えば、THI単体、若しくはTHIと、シクロペンタジエンの単体、シクロペンタジエン又はブタンジエンの重合物、シクロペンタジエンの2〜4量体からなる群より選択される1種又は2種以上を主体に構成されるものとの混合物が挙げられる。該混合物中のTHIの含有量は、通常50質量%以上、好ましくは65質量%以上である。従って、いわゆるテトラハイドロインデンと称する市販品やENBの製造プラントから排出される副生成油の多くは本発明に用いるTHIとして使用可能である。
【0012】
ENBとしては、いわゆるエチリデンノルボルネンと称する市販品や、ENBの純度が通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上のものが挙げられる。従って、製造プラントにおいてENBを精製する前段の粗ENBは、微量のビニルノルボルネンを含み得るが、前記純度を満足すれば使用可能である。また、ENB製造プラントにおける副生油としての、THI等の副生物を20質量%以上含む混合物も使用可能である。
【0013】
本発明の改質硫黄資材に含まれる細骨材は、ブレーン比表面積3000〜5500cm2/g、好ましくは3500〜4500cm2/g、更に好ましくは3800〜4500cm2/gの石炭灰を含む。該石炭灰のブレーン比表面積が低い場合には、得られる改質硫黄資材が、易燃性になり、一方、ブレーン比表面積が高い場合には、本発明の改質硫黄資材の製造時において、短時間で粘度上昇が生じ、得られる改質硫黄資材の上述の140℃に加熱した際の粘度が上昇し、土木・建築製品の製造に支障をきたすおそれがある。
【0014】
本発明に用いる前記石炭灰は、発電用、加熱用の各種石炭焚燃焼炉から排出され、コンクリートや土木資材混合材として従来から利用されているフライアッシュを用いることができ、ブレーン比表面積を上記範囲となるように、規格品をブレンド等することにより得ることができる。尚、従来、改質硫黄資材に用いられることがあったフライアッシュは、通常、ブレーン比表面積が2500cm2/g以上と称される、ブレーン比表面積が3000cm2/g未満のものであった。このような石炭灰を用いた場合にも、特許文献1に記載されるとおり、小ガス炎着火試験において非危険物としての取り扱いが可能な改質硫黄資材を製造することができるが、本発明の場合は、その難燃性を更に改善することができ、しかも、土木・建築製品を製造する際の溶融改質硫黄の粘度制御が容易な、上述の140℃における粘度範囲を有する改質硫黄資材を容易に得ることが可能である。
ここで、ブレーン比表面積は、JIS A6201(コンクリート用フライアッシュ)に規定される方法により測定した値である。
【0015】
本発明に用いる細骨材は、上記石炭灰の他に、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属製造時に生成する副生物、燃料焼却灰、電気集塵灰、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上の細骨材や、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、石英質岩石、粘土鉱物、活性炭、ガラス粉末やこれらと同等の有害物質を含有しない無機系、有機系等の他の細骨材を含んでいても良い。
これら他の細骨材の含有割合は、細骨材全量基準で、通常、0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%程度である。
【0016】
本発明の改質硫黄資材において、前記改質硫黄結合材と前記細骨材との配合割合は、改質硫黄結合材100質量部に対して、前記細骨材25〜300質量部、好ましくは30〜250質量部である。細骨材の配合割合が少ない場合には、小ガス炎着火試験によって検定される非危険物を充足させることが困難になる恐れがあり、一方、細骨材の配合割合が多い場合には、改質硫黄結合材と細骨材とが分離して均一な材料が得られ難いおそれがある。
【0017】
本発明の改質硫黄資材は、例えば、以下に説明する本発明の製造方法により得ることができる。
本発明の製造方法は、ポリスルフィドを含む改質硫黄結合材を得るために、硫黄と硫黄改質剤とを120〜150℃で混合反応させる工程(a)を含む。
工程(a)において、硫黄と硫黄改質剤とを混合反応させる際の硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、0.1〜25質量%、好ましくは1.0〜5.0質量%である。
硫黄改質剤の使用割合が少ない場合は、反応時間が長くなり、また、所望の優れた物性及び性能が得られないおそれがある。一方、硫黄改質剤の使用割合が多い場合は、反応制御が困難になり、更に経済的に不利になるおそれがある。
【0018】
工程(a)における反応条件は、120〜150℃、好ましくは130〜150℃、より好ましくは135〜140℃の温度条件で、硫黄改質剤の種類や使用割合に応じて、好ましくは、反応により生成するポリスルフィド量が上述の範囲となる反応時間で行うことができる。このような反応時間は、通常、1〜10時間、好ましくは2〜6時間程度である。
【0019】
上記混合反応は、例えば、先ず硫黄を加熱溶融した後、所定量の上記硫黄改質材を少しずつ添加する方法により行うことができる。
通常、固体硫黄を加熱していくと119℃で固体から液体への相変化が始まるので、硫黄を液化させてから全体を撹拌し、適当な粘度計、例えばB型粘度計で粘度を測定しながら、130℃程度まで温度を上昇させた後に、上記硫黄改質材を添加することが、反応制御が容易な点で好ましい。
【0020】
前記混合反応時の溶融物の粘度上昇速度は、反応温度に関係し、温度が高いほど速い。溶融混合温度が120℃未満では硫黄は容易に変性しない。一方、溶融混合温度が150℃を超えると、粘度上昇が急激で制御が困難になる傾向が高い。溶融混合温度が130℃程度では、硫黄と硫黄改質材との重合反応は遅く、急な発熱及び粘度上昇は起こらず、僅かな温度上昇と粘度上昇がみられるだけで、ほぼ一定の粘度を維持する。従って、発熱の起こらないことを確認後、前記温度範囲まで次第に温度上昇させることにより工程(a)の混合反応を行うことができる。
【0021】
工程(a)の混合反応に使用する混合機は、混合が十分に行えるものであれば公知のものが使用でき、改質硫黄結合材の製造には、主に液体撹拌用の混合機の使用が好ましい。例えば、インターナルミキサー、ロールミル、ドラムミキサー、ポニーミキサー、リボンミキサー、ホモミキサー、スタティックミキサーが挙げられる。
【0022】
本発明の製造方法は、工程(a)で得られた改質硫黄結合材の溶融物と、ブレーン比表面積が3000〜5500cm2/gの石炭灰を含む、JIS標準ふるいの公称目開き1.00mmを通過する粒径の細骨材とを加熱混合する工程(b)を含む。
工程(b)において、工程(a)で得られた改質硫黄結合材と、上記細骨材との混合割合は、質量比で通常10〜50:90〜50、好ましくは15〜30:85〜70である。最も望ましいのは、細骨材が最密充填構造をとった場合のその空隙を埋める量の改質硫黄結合材が配合された場合であり、この際に強度は最も高くなる。改質硫黄結合材の混合割合が前記範囲に満たない場合は、細骨材の表面を十分に濡らすことができず、強度が十分発現しないと共に遮水性が維持できないおそれがある。一方、混合割合が前記範囲を超える場合は、強度が低下する傾向にある。
【0023】
工程(b)において加熱混合は、得られる改質硫黄資材の溶融物が、例えば、140℃に換算した際に通常0.05〜3.0Pa・s、好ましくは0.2〜2.0Pa・s、特に好ましくは0.5〜1.5Pa・sの範囲内の粘度となるように行うことができる。このような粘度範囲とすることにより、得られえる改質硫黄資材を、上述の140℃で過熱した際の粘度を示す物性にすることができる。
このような加熱混合は、好ましくは120〜150℃、特に好ましくは130〜140℃に加熱溶融した改質硫黄結合材と細骨材とを、予め、120〜155℃に予熱した混合機を用いて行うことができる。
前記混合は、予熱した各成分をほぼ同時に混合機に投入し、通常120〜150℃、好ましくは130〜140℃の温度条件で行うことができる。
混合の時間は、通常1分〜1時間、好ましくは5〜30分間程度である。改質硫黄結合材の重合反応による高粘度化、更には硬化を避けるため、混合は極力短時間による混合が望ましい。しかし、混合時間が1分間未満の場合は、均一な混合が困難である傾向にあり、一方、混合時間が1時間を超える場合は、改質硫黄結合材の高粘度化が進行する恐れがある。
【0024】
工程(b)に用いる混合機は、混合が十分に行えるものであれば特に限定されず、好ましくは固液撹拌用が使用できる。例えば、インターナルミキサー、ロールミル、ボールミル、ドラムミキサー、スクリュー押出し機、パグミル、ポニーミキサー、リボンミキサー、ニーダーが使用できる。
【0025】
本発明の製造方法は、工程(b)で得られた混合物を、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下となるように冷却・固化する工程(c)を含む。
工程(c)において、冷却・固化は、120℃未満に冷却することにより行うことができる。該冷却時に、工程(b)で得られた混合物を、成型物、ペレット、破砕物若しくは粒状物等の所望の形態とすることができる。また、工程(b)で得られた混合物を不定形に冷却し、塊状固化物を得、該固化物を上記大きさとなるように破砕して改質硫黄資材を得ることもできる。
【0026】
本発明の製造方法により得られる改質硫黄資材は、再加熱することにより、任意の構造に作製可能であり、また、優れた難燃性を示すので、例えば、パネル材、床材、壁材、瓦、水中構造物とすることができる他、粒状物として、埋立材、路盤材、盛土材、コンクリート用骨材として利用することもできる。更に、この優れた難燃性の点から、運搬がより安全で容易となり、現場以外の場所での大量生産が可能である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。例中の評価は、以下に示す方法に従い行なった。
耐着火性:消防法における可燃性固体(危険物第2類)評価のための着火性試験に準拠して評価した。3秒以内に着火し、かつ10秒以上燃焼を継続する第1種可燃性固体並びに3秒を超えて10秒以内に着火し、かつ燃焼を継続する第2種可燃性固体に相当するものを「着火性あり」、10秒を超えて着火するもの及び燃焼を継続しないものを「危険性なし」とした。結果を表1に示す。
粘度:B型粘度計により測定した値である。
尚、用いた細骨材は、事前にJISふるいを用いて、JIS標準ふるいの公称目開き1.00mmを通過する粒径に調整した。
【0028】
実施例1
攪拌混合槽の中に固体硫黄970gを入れ、140℃で溶融した後、ENB 30gをゆっくりと添加した。反応が開始され、約5℃の温度上昇が見られたが、その後温度は下降し、140℃で反応を続行した。次第に粘度が上昇し、4時間後、粘度が0.06Pa・sに達したところで直ちに加熱を停止し、適当な型又は容器に流し込んで室温で冷却し、改質硫黄結合材Aを得た。
なお、改質硫黄結合材Aを粉末状とし、大過剰のトルエンを用いて室温で4時間抽出を行い、不溶分(ポリスルフィド量)を測定したところ、15.2質量%であった。
次いで、140℃で予熱したブレーン表面積4040cm2/gの石炭灰413gと、改質硫黄結合材A840gを140℃に再加熱した溶融物とを、140℃に保った混錬機内にほぼ同時に投入した。続いて、5分間混連し、これを適当な型又は容器に流し込んで室温で冷却し、改質硫黄資材(A)を調製した。得られた改質硫黄資材(A)の140℃における粘度は、0.73Pa・sであった。
【0029】
実施例2
改質硫黄結合材の4時間の反応時間を2.5時間として、改質硫黄結合材Bを得、また、用いた石炭灰のブレーン表面積を3720cm2/gとした以外は、全て実施例1と同様に操作して改質硫黄資材(B)を調製した。改質硫黄資材(B)の140℃における粘度は、0.53Pa・sであった。
また、対応する改質硫黄結合材Bのポリスルフィド量は、11.5質量%であった。
【0030】
比較例1
用いた石炭灰のブレーン表面積を1880cm2/gとした以外は、全て実施例1と同様に操作して改質硫黄資材(C)を調製した。改質硫黄資材(C)の140℃における粘度は、0.47Pa・sであった。尚、改質硫黄結合材のポリスルフィド量は、実施例1と同様に15.2質量%であった。
【0031】
比較例2
ENBを用いず、結合材を純硫黄としたこと以外は、全て実施例2と同様に操作して硫黄資材(D)を調製した。硫黄資材(D)の140℃における粘度は、0.08Pa・sであった。
【0032】
比較例3
用いた石炭灰のブレーン表面積を5990cm2/gとした以外は、全て実施例1と同様に操作して改質硫黄資材(E)を調製した。改質硫黄資材(E)の140℃における粘性は、48Pa・s程度と極めて高く、石炭灰を均一に分布させることは困難であり、取り扱い性は劣悪であった。尚、改質硫黄結合材のポリスルフィド量は、実施例1と同様に15.2質量%であった。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄及び硫黄改質剤を反応させて得たポリスルフィドを含む改質硫黄結合材と、JIS標準ふるいの公称目開き1.00mmを通過する粒径の細骨材とを含む、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下である改質硫黄資材であって、
前記細骨材として、ブレーン比表面積が3000〜5500cm2/gの石炭灰を含有することを特徴とする改質硫黄資材。
【請求項2】
前記石炭灰のブレーン比表面積が3500〜4500cm2/gである請求項1記載の改質硫黄資材。
【請求項3】
前記改質硫黄結合材中のポリスルフィド量が、5〜30質量%である請求項1又は2記載の改質硫黄資材。
【請求項4】
140℃で加熱溶融した際の粘度が、0.05〜3.0Pa・sの範囲内となる物性を示すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の改質硫黄資材。
【請求項5】
ポリスルフィドを含む改質硫黄結合材を得るために、硫黄と硫黄改質剤とを120〜150℃で混合反応させる工程(a)と、
工程(a)で得られた改質硫黄結合材の溶融物と、ブレーン比表面積が3000〜5500cm2/gの石炭灰を含む、JIS標準ふるいの公称目開き1.00mmを通過する粒径の細骨材とを加熱混合する工程(b)と、
工程(b)で得られた混合物を、JIS標準ふるいで最大寸法が101.6mm以下となるように冷却・固化する工程(c)とを含むことを特徴とする改質硫黄資材の製造方法。
【請求項6】
工程(a)の反応を、得られる改質硫黄結合材に含まれるポリスルフィド量が、5〜30質量%となるように制御することを特徴とする請求項5記載の改質硫黄資材の製造方法。
【請求項7】
工程(b)に用いる細骨材が、ブレーン比表面積が3500〜4500cm2/gの石炭灰を含む請求項5又は6記載の改質硫黄資材の製造方法。
【請求項8】
工程(b)の加熱混合条件を、得られる改質硫黄資材を140℃で加熱溶融した際に、0.05〜3.0Pa・sの粘度を示すように制御することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の改質硫黄資材の製造方法。