説明

改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの製造方法

【課題】改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの製造方法を提供すること。
【解決手段】O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートと、酸水溶液と、を接触させて、該O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートを改質する工程を含む改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエート(以下、場合により「ホスホロチオエート」という)は土壌殺菌剤として有用な化合物である。該ホスホロチオエートは、たとえば、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノールと、O,O−ジメチルクロロホスホロチオエートと、を塩化銅の存在下、アルカリ水溶液中で反応させることにより得られることが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−17324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は前記特許文献1で開示されている製造方法で得られるホスホロチオエートは、その熱安定性が低いことを見出した。
そこで本発明の目的は、熱安定性に優れた改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートと、
酸水溶液と、
を接触させて、該O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートを改質する工程、
を含む改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの製造方法;
を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱安定性に優れた改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、特許文献1に記載されている従来の製造方法により得られるホスホロチオエートは加熱処理を行うと、その特性が劣化することを見出した。そして、その原因が、該ホスホロチオエートは加熱により、その一部がO−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,S−ジメチルホスフェート(以下、場合により「S−メチル体」という)に変換されていることを突き止めた。かかるホスホロチオネート及びS−メチル体の構造はいかに示すものである。

【0008】
本発明者らは、さらにホスホロチオエートの熱安定性を改良する方法に関して検討したところ、該ホスホロチオエートと、酸水溶液と、を接触させるという簡便な操作によれば、加熱処理を行ったとしても、該ホスホロチオエートがS-メチル体に変換することを良好に抑制して、熱安定性に優れた改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエート(以下、場合により「改質ホスホロチオエート」という)が得られるという驚くべき知見を得、当該知見に基づいて本発明に至った。
【0009】
本発明でいう改質ホスホロチオエートは、加熱処理を行ったとしても、その一部がS−メチル体に変換されることが十分抑制されている。該改質ホスホロチオエートは、例えば、60℃程度の温度で、20時間以上加熱処理したとしても、加熱処理する前のS−メチル体含有比率(C)と、改質ホスホロチオエート中に含有されるS−メチル体の含有比率(C)と、から求められる加熱処理前後のS−メチル体含有比率の増加比(C/C)は、5以下という極めて熱安定性に優れたものとなる。
なお、ここでいうS−メチル体の含有比率は、改質ホスホロチオエート(又は加熱処理後の改質ホスホロチオエート)を、ガスクロマトグラフィー分析に供して求められるものである。具体的には、5%フェニルメチルポリシロキサンを担体とするキャピラリーカラムを分離カラムとするガスクロマトグラフィー分析(検出:FID(水素炎イオン化型検出器))を行えばよい。この分析により、ホスホロチオエート及びS−メチル体に各々由来するピークを検出し、そのピーク面積をApt(ホスホロチオエートに由来するピークの面積)、Asm(S−メチル体に由来するピークの面積)としたとき、S−メチル体の含有比率は、

(S−メチル体の含有比率)=Asm/(Asm+Apt)

から求めることができる。また、改質ホスホロチオエートを60℃で加熱処理する際には、改質ホスホロチオエートを含むトルエン溶液を用い、該トルエン溶液を加熱処理することもできる。この場合のトルエン溶液中の改質ホスホロチオエート濃度は、10〜78重量%の範囲から選択される。
【0010】
以下、本発明の製造方法について、具体的に説明する。
本発明では、ホスホロチオエートと、酸水溶液と、を接触させる工程を含むことを特徴とする。以下、場合により、ホスホロチオエートと、酸水溶液と、を接触させる工程を「接触工程」という。
ここで用いられる酸水溶液には、無機酸、有機酸又はこれらの混合物を含む酸水溶液が例示されるが、接触工程で排出される排水を処理することが容易であることから、無機酸を含む酸水溶液が好ましい。当該無機酸の中でも、低コストであることから、塩酸、硫酸又はリン酸を含むものが好ましく、これらの中でも塩酸水溶液がさらに好ましい。該酸水溶液中の酸濃度は、0.1重量%〜10重量%が好ましく、0.1重量%〜3.5重量%であるとさらに好ましい。このような酸濃度の酸水溶液を使用する場合、酸水溶液の使用量は、接触させるホスホロチオエートの重量に対して、0.1重量倍以上が好ましく、該接触工程に係る酸水溶液等の操作性が良好である点では、0.1〜1重量倍が好ましい。酸水溶液の使用量が多すぎると、排水の排出量も多くなるために、排水処理の負荷が大きくなる傾向がある。接触させるホスホロチオエートの重量と、かかる排水処理の負荷と、を考慮して酸水溶液の使用量は適宜調節できる。また、該酸水溶液には、微量であれば有機溶媒を含んでいてもよい。
【0011】
ホスホロチオエートと、酸水溶液と、を接触するには、
(i)ホスホロチオエートの粉体又は結晶に、酸水溶液を加えて混合することにより、該ホスホロチオエートと、該酸水溶液と、を接触させる方法
又は、
(ii)ホスホロチオエートを適当な有機溶媒に溶解又は分散させて、ホスホロチオエートの溶液又は分散液を調製し、この溶液又は分散液と、酸水溶液と、を混合する方法;
が採用される。
これらの中でも、(ii)の方法が好ましく、接触工程後の後処理を考慮すると、有機溶媒としてホスホロチオエートが溶解可能なものを用いてホスホロチオエート溶液を調製した後、該ホスホロチオエート溶液と酸水溶液とを混合する方法がさらに好ましい。また、かかる有機溶媒として、疎水性有機溶媒を用いると、酸水溶液を接触させた後、静置・分液するといった、より簡便な操作により、酸水溶液とホスホロチオエート溶液とを分離できるので特に好ましい。該疎水性有機溶媒としては、例えばトルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル及びメチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;ジクロロメタン、ジクロロベンゼン及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒が例示される。当該疎水性溶媒の使用量は、ホスホロチオエートが十分溶解できる量であればよい。
【0012】
ホスホロチオエートと、酸水溶液と、を接触させる際の温度は、該ホスホロチオエートが分解したり、酸水溶液が蒸散したり、しないような範囲から適宜調節できるが、0℃〜90℃の範囲であると好ましく、40℃〜60℃の範囲がさらに好ましい。また、ホスホロチオエート溶液を用いる場合には、当該ホスホロチオエート溶液に含有される有機溶媒が蒸散しないようにして、当該ホスホロチオエート溶液と、酸水溶液と、を接触させる際の温度を調節することが好ましい。
【0013】
以下、前記疎水性有機溶媒を用いてホスホロチオエート溶液を調製し、これに酸水溶液を接触させる接触工程の操作について説明する。
まず、該疎水性有機溶媒にホスホロチオエートを十分溶解させて、ホスホロチオエート溶液を調製する。この場合の調製温度も、ホスホロチオエートが分解等しないよう、40℃〜60℃の範囲が好ましい。なお、ホスホロチオエートを疎水性有機溶媒に溶解したホスホロチオエート溶液が、当該ホスホロチオエートを製造した際に得られる場合には、そのホスホロチオエート溶液をそのまま使用することもできる。このようなホスホロチオエートの製造方法については後述する。
【0014】
かくして得られるホスホロチオエート溶液と、酸性水溶液と、を混合した後、十分に攪拌することが好ましい。攪拌時間は、用いたホスホロチオエートの量、使用する疎水性有機溶媒の種類及びその量、あるいは用いる攪拌装置の攪拌能力等を勘案して調節することができるが、15分〜60分の範囲が好ましい。
続いて、攪拌を停止し、ホスホロチオエートを含む有機層と、酸性水溶液を含む水層と、が層分離するまで十分静置する。有機層と水層とが層分離したことは、目視により確認することができる。また、適切な予備実験を行うことにより、有機層と水層とが層分離するまでの静置時間を求めておくこともできる。前記有機層と前記水層とが十分層分離した後、分液操作を行うことにより前記有機層と前記水層とを分離する。なお、前記水層と分離した前記有機層に、さらに水を加え、攪拌、静置及び分液といった一連の操作を行うことにより、前記有機層をさらに水洗することもできる。
【0015】
かくして得られた有機層には改質ホスホロチオエートが含まれている。当該改質ホスホロチオエートを、有機層から取り出すには、蒸留、再沈殿又は再結晶等の精製操作、あるいはこれらを組み合わせた精製操作を行えばよい。
【0016】
以上、本発明の改質ホスホロチオエートの製造方法において、ホスホロチオエートを含む溶液と、酸水溶液と、を接触させる接触工程に関して説明したが、ここで、本発明に用いるホスホロチオエートを得るための製造方法についても、簡単に説明しておく。
前記ホスホロチオエートは、前記特許文献1に記載された製造方法により製造することが好ましい。この特許文献1に記載された製造方法においては、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノールと、O,O−ジメチルクロロホスホロチオエートと、を塩化第一銅(以下場合により、「塩化銅」という)の存在下に縮合させることにより、ホスホロチオエートが得られる。反応溶媒としてはトルエン等が使用される。また、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノールと、O,O−ジメチルクロロホスホロチオエートと、の縮合で副生する塩化水素を中和するためにアルカリを用いることが好ましい。かかるホスホロチオエート製造に係る一連の操作を説明すると、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノール、O,O−ジメチルクロロホスホロチオエート、塩化銅及びトルエンを反応器中に仕込んで混合し、この混合物を所定温度(40〜60℃程度)まで昇温した後、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム濃度 10〜40重量%)を滴下する。さらに同温度で1〜5時間程度保温する。同温度を保持したまま、トルエン層と水層(アルカリ水溶液層)とを層分離するまで静置し、次いで分液することにより、トルエン層を分取する。特許文献1に記載された製造方法では、分取したトルエン層から、トルエンを蒸留することによりホスホロチオエートを得ているが、このようにして得られるホスホロチオエートは、製造直後のS−メチル体の含有量は少ないものの、当該ホスホロチオエートを加熱処理した場合、S−メチル体の含有量が著しく増加するという熱安定性に乏しいものである。一方、本発明の製造方法により得られる改質ホスホロチオエートは、たとえ加熱されたとしても、S−メチル体への変換が極めて抑制されているので、熱安定性が向上したホスホロチオエートといえる。
【0017】
上述のとおり、特許文献1に記載された製造方法では、水層(アルカリ水溶液層)を分液して除去した後に得られるトルエン層は、ホスホロチオエートを含むトルエン溶液である。したがって、トルエンを蒸留して除去することなく、このトルエン溶液を前記ホスホロチオエート溶液として用い、これと酸水溶液と、を接触させれば、当該トルエン溶液に含まれているホスホロチオエートを改質することもできる。また、酸水溶液と接触させる前に、前記トルエン溶液に水を加えて攪拌し、静置・分液という一連の操作により、前記トルエン溶液を水洗してもよい。
【0018】
本発明の製造方法により得られた改質ホスホロチオエートは、上記加熱処理前後のS−メチル体含有比率の増加比(C/C)は、5以下という極めて熱安定性に優れたものとなる。かかる熱安定性に優れるという特性を備えた改質ホスホロチオエートは、土壌殺菌剤に製剤化する際に加熱処理したり、比較的高温環境下で保管したり、しても、S-メチル体への変換を十分抑制することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例における、ホスホロチオエート及びS−メチル体それぞれの含有比率の測定はガスクロマトグラフィー分析による。このガスクロマトグラフィー分析の分析条件は以下のとおりである。カラムは5%フェニルメチルポリシロキサンを担体とするキャピラリーカラムを使用し、キャリアーガスにはヘリウムを使用した。ホスホロチオエートの含量は、内部標準法による分析値である。S−メチル体の含有比率は、ガスクロマトグラフィー分析におけるホスホロチオエートのピーク面積値(Apt)に対するS−メチル体のピーク面積値(Asm)から、Asm/(Asm+Apt)により算出した。
【0020】
実施例1
攪拌装置、温度計、冷却管を備えた5ツ口のセパラブルフラスコに、O,O−ジメチルクロロホスホロチオエート溶液(トルエン溶液、含量76.5重量%)を69.7g、2,4―ジクロロ−4−メチルフェノール溶液(トルエン溶液、含量64.6重量%)を98.1g、トルエン24.4gを仕込んだ後、45℃まで加熱した。続いて、塩化第一銅0.2gを仕込んだ後、内温45〜50℃で、27重量%水酸化ナトリウム水溶液50.4gを3時間かけて滴下した。同温度で1時間保温した後、水3.7g、トルエン38.0g、27重量%水酸化ナトリウム水溶液60.0g加え、さらに同温度で30分保温した。反応液を分液ロートに移し、分液により水層を分離した。有機層に0.6重量%塩酸水溶液42.3gを加えて30分攪拌し、静置、分液して、水層(塩酸層)を分離するという一連の操作により、ホスホロチオエートを改質して、改質ホスホロチオエートを含むトルエン溶液(改質ホスホロチオエート溶液)を得た。得られた改質ホスホロチオエート溶液0.5gを測りとり、クロロホルム10mlで希釈してガスクロマトグラフィーで分析した。S−メチル体含有比率は0.02%(C)であった。
この改質ホスホロチオエートを含むトルエン溶液(改質ホスホロチオエート含量:48.7重量%)を60℃で96時間、加熱処理した。室温まで冷却後、加温処理後のトルエン溶液を0.5g測りとり、クロロホルム10mlで希釈して、再度ガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、S−メチル体含有比率は0.09%(C)であった。したがって、この改質ホスホロチオエートは、上記のような加熱処理を行ったとしても、S−メチル体含有比率の増加比(C/C)は4.5であり、極めて熱安定性に優れていることが判明した。
【0021】
実施例2
攪拌装置、温度計、冷却管を備えた5つ口のセパラブルフラスコに、O,O−ジメチルクロロホスホロチオエート溶液(トルエン溶液、含量76.5重量%)を69.7g、2,4―ジクロロ−4−メチルフェノール溶液(トルエン溶液、含量58.3重量%)を112.2g、トルエン10.0gを仕込んだ後、45℃まで加熱した。続いて、塩化第一銅0.2gを仕込んだ後、45〜50℃の内温で27重量%水酸化ナトリウム水溶液50.4gを3時間かけて滴下した。同温度で1時間保温した後、水3.7g、トルエン38.0g、27重量%水酸化ナトリウム水溶液53.2g加え、さらに同温度で30分保温した。反応液を分液ロートに移し、分液により水層を分離した。有機層に0.3重量%塩酸水溶液42.3gを加え、30分攪拌し、静置、分液して、水層(塩酸層)を分離するという一連の操作により、ホスホロチオエートを改質して、改質ホスホロチオエートを含むトルエン溶液(改質ホスホロチオエート溶液)を得た。得られた改質ホスホロチオエート溶液0.5gを測りとり、クロロホルム10mlで希釈してガスクロマトグラフィーで分析した。S−メチル体含有比率は0.03%(C)だった。
この改質ホスホロチオエートを含むトルエン溶液(改質ホスホロチオエート含量:48.7重量%)を60℃で23時間、加熱処理した。室温まで冷却後、加温処理後のトルエン溶液を0.5g測りとり、クロロホルム10mlで希釈して、再度ガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、S−メチル体含有比率は0.04%(C)であった。したがって、この改質ホスホロチオエートは、上記のような加熱処理を行ったとしても、S−メチル体含有比率の増加比(C/C)は1.3であり、極めて熱安定性に優れていることが判明した。
【0022】
比較例1
実施例1において、0.6重量%塩酸水溶液の代わりに水を用いた以外は実施例1と同じ実験を行った。得られたホスホロチオエートを含むトルエン溶液(ホスホロチオエート溶液)のS−メチル体含有比率は0.02%(C)であり、60℃、96時間の加熱処理後のS−メチル体含有比率は1.99%(C)であった。したがって、このホスホロチオエートは、上記のような加熱処理を行った場合、S−メチル体含有比率の増加比(C/C)は99.5であり、熱安定性に劣るものであることが判明した。
【0023】
比較例2
実施例2において、0.3重量%塩酸水溶液の代わりに水を用いた以外は実施例2と同じ実験を行った。得られたホスホロチオエートを含むトルエン溶液(ホスホロチオエート溶液)のS−メチル体含有比率は0.04%(C)であり、60℃、23時間の加熱処理後のS−メチル体含有比率は0.85%(C)であった。したがって、このホスホロチオエートは、上記のような加熱処理を行った場合、S−メチル体含有比率の増加比(C/C)は21.3であり、熱安定性に劣るものであることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により得られる改質ホスホロチオエートは熱安定性に優れるため、該改質ホスホロチオエートをたとえば、比較的高温環境下で保管したり、加熱処理したり、してもその特性が損なわれることはない。したがって、土壌殺菌剤の製剤化等をより簡便に実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートと、
酸水溶液と、
を接触させて、該O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートを改質する工程、
を含む改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの製造方法。
【請求項2】
O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートを含むトルエン溶液と、
酸水溶液と、
を混合することにより、該O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートと前記酸水溶液とを接触させて、該O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートを改質する工程、
を含む、改質O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの製造方法。
【請求項3】
前記酸水溶液が、塩酸水溶液である請求項1又は2に記載される製造方法。
【請求項4】
前記O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートが、
2,6−ジクロロ−4−メチルフェノールと、
O,O−ジメチルクロロホスホロチオエートと、
を、塩化銅の存在下で接触させることにより製造されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載される製造方法。
【請求項5】
O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートと、
酸水溶液と、
と接触させる工程、
を含むO−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル)−O,O−ジメチルホスホロチオエートの安定性の向上方法。

【公開番号】特開2010−168346(P2010−168346A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179000(P2009−179000)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】