説明

放出制御された肥料組成物の提供方法

【課題】肥料を施用される植物の成長率パターンと本質的に調和するガウス分布の放出率曲線に従って肥料組成物から養分を放出するような放出特性を示し、肥料を施された植物の特定の養分要求に従って養分を与えるようにS−型つまりS字状曲線に従って養分を放出する単一被覆層を備える放出制御された肥料組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの水溶性の肥料組成物から成る粒状のコア材と、前記コア材上に施される実質的に水に不溶な被覆層とを有し、しかも前記被覆層は、その中に一体な付加物が含まれておらず、一層であって均一な実質的に連続する高分子フィルムから構成される肥料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出制御された肥料組成物に関する。もっと詳細には、本発明は、肥料を施用される植物の成長率パターンと本質的に調和するガウス分布の放出率曲線に従って肥料組成物から養分を放出するような放出特性を示す、肥料組成物に関する。また本発明は、このような肥料組成物の提供方法に関する。さらに、この発明は、施肥植物の成長率パターンと調和する養分放出パターンを示す肥料を野外条件下でその植物に施すための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
被覆(即ちカプセル化)された肥料は、植物生育用養分を制御放出する非常に有効な源であることが知られている。養分は、制御された速度で肥料の被覆を介して放出され、植物の生育を持続させる。その結果、これらのいわゆる放出制御された肥料の1回の施用で、溶解性肥料の複数回の施用を必要とする植物に必要な養分を供給することができる。広範囲に使用されている1つの型の被覆肥料は、米国特許第4,042,366号、第4,636,242号及び第5,405,426号に開示されているような硫黄被覆肥料である。硫黄被覆肥料からは、硫黄被覆の不完全さと被覆崩壊とを介する拡散によって養分が放出される。硫黄被覆肥料の主な利点はそれらのコストがかなり低いことである。
【0003】
第2の型の放出制御された肥料は、溶媒と共に塗布されるポリマー被覆を用いている。塗布されるポリマー材料は、熱硬化性樹脂又は熱可塑物である。溶媒と共に塗布される熱硬化性樹脂で被覆された現在用いられている肥料の実例は米国特許第3,223,518号、第4,657,576号及び第4,880,455号に開示されており、一方熱可塑性被覆を有する肥料の実例は米国特許第4,019,890号に開示されている。良好に制御された放出特性を示す他の型のカプセル化された肥料は、米国特許第4,549,897号及び第5,186,732号に開示されている肥料のようなラテックス被覆粒状肥料である。溶媒と共に塗布されたポリマー被覆肥料及びラテックスと共に塗布されたポリマー被覆肥料の両方が、放出率の不変性に関して硫黄被覆生成物よりも重要な利益を提供する。大部分の養分放出が、被覆の不完全さを介する放出よりも、ポリマー被覆中の孔を介する拡散によって行われる。
【0004】
放出制御された肥料におけるポリマー被覆の存在は、もしそのポリマーの遮断性が十分であれば、むしろ均一で且つ不変の養分放出を見越している。しかし、一般に、これらの放出肥料は、植物への施用後に、養分の初期急速放出を示し、後続期間中における減少する放出率とその後の十分なレベルでの一定の放出とが続く。最終的に、肥料粒体が消耗して、放出率の更なる減少が生じる。一般に、累積養分放出曲線は、数学的には滑らかな2次(凸)曲線によって特徴付けることができる。このような2次放出曲線は、養分放出の連続減少を示す放出率曲線に変換されてきた。
【0005】
時間の経過に伴って最大レベルへ増加しその後にこの最大レベルから減少するというガウス分布パターンに植物の成長率が従うことを示している図1に特に示されているように、多数の植物成長率パターンがガウス分布型曲線に類似することを、大学及び試験所から入手できるデータが示しているので、実際上は、上記のことは、そのような放出制御された肥料は肥料を施される植物の成長のための特定の養分要求に従って養分を放出しないということを意味している。従って、肥料を施される植物種又は植物変種の成長率パターンと調和するガウス分布の放出率特性を示す肥料を提供することがこれまで要望されてきた。このような放出パターンは、植物の成長が最も高い(即ち、植物の要求量が最も高い)時に肥料組成物からの最大養分放出率が一致することを意味している。
【0006】
ガウス分布の放出率曲線を累積放出曲線に変換することによって、S−型(つまりS字状)曲線が得られる。従来、このようなS−型曲線に従って養分を放出する放出制御された肥料は、多重被覆及び/又は被覆中における特定の添加物の組み入れの存在を必要としていた。例えば、1992年、日本、仙台のKonno印刷社によって出版され、Sadao Shoji及びAmbrosio T.Gandezaによって編集された文献「ポリオレフィン樹脂被覆を有する放出制御された肥料」は、30頁で、多層ポリオレフィン被覆の放出制御された肥料が被覆中における特定の化学物質の組み入れの結果としてS−型つまりS字状の放出曲線を示すことを教示している。S−型放出曲線を示す第1及び第2被覆を有する生成物が米国特許第5,652,196号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,042,366号
【特許文献2】米国特許第4,636,242号
【特許文献3】米国特許第5,405,426号
【特許文献4】米国特許第3,223,518号
【特許文献5】米国特許第4,657,576号
【特許文献6】米国特許第4,880,455号
【特許文献7】米国特許第4,019,890号
【特許文献8】米国特許第4,549,897号
【特許文献9】米国特許第5,186,732号
【特許文献10】米国特許第5,652,196号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sadao Shoji及びAmbrosio T.Gandeza著「ポリオレフィン樹脂被覆を有する放出制御された肥料」Konno印刷社 1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、肥料を施された植物にこの植物の特定の養分要求に従って養分を与えるようにS−型つまりS字状曲線に従って養分を放出する、養分肥料コア粒体に塗布された単一被覆層を備える放出制御された肥料は、従来知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
既述のように、ガウス分布の放出率特性を示す肥料生成物は、広範囲の植物にとって極めて有益である。しかしながら現在、ガウス分布型曲線に従う養分放出率を示す被覆肥料生成物は、多重被覆の塗布に基づいて及び/又は被覆中に組み入れられている特定の添加物の応用によって知られているだけである。
【0011】
従って、この発明の第1の目的は、ガウス分布の時間−放出率曲線に従って養分を放出し、如何なる添加物も組み入れられておらず肥料粒体に塗布されている単一被覆層を備える、新規で改善された放出制御された肥料組成物を提供することである。これらの組成物は、ガウス分布放出率の生成物又は中間体として後述される。
【0012】
この発明の他の目的は、ガウス分布の時間−放出率曲線に従って養分を放出するそのような新規で改善された単一被覆層の放出制御された肥料生成物を製造する方法を提供することである。
【0013】
この発明の更なる目的は、植物の要求が最も高い時に最高の養分放出率が生じるように、肥料を施された植物種又は植物変種の成長率パターンと調和する養分放出率パターンを野外条件下で示す肥料組成物を、植物種又は植物変種に施す方法を提供することである。数学的には、これは、植物の成長が最も高い時に肥料組成物からの最大養分放出率が一致することを意味している。
【0014】
本発明の前述の目的及びその他の目的は、
i)少なくとも1つの肥料養分配合物を含む粒状コア材と、
ii)均一で実質的に連続している単一層のポリマーフィルムからなっており、特定の添加物を組み入れられておらず、コア材上に塗布されている、実質的に水不溶性の被覆とを備える放出制御された肥料組成物であって、この肥料組成物がガウス分布の養分放出率曲線に従って肥料養分配合物を放出するように構成されている、放出制御された肥料組成物を提供することによって達成される。
【0015】
本発明の生成物は、特定の添加物が存在しないただ一層の被覆材の存在によって特徴付けられている。この肥料組成物は、ガウス分布曲線に従う養分放出率パターンを示す。この結果、組成物の放出率(y)は、次の等式で表すことができる。
【0016】
y=C exp(−C'(x−a)2
但し、xは時間であり、aはxの全ての値の平均であり、C及びC’は定数である。
【0017】
肥料組成物がガウス分布の養分放出率曲線を示すと本明細書中で言及される場合には、その肥料が植物に施用された後に、特定期間後に最大率(即ち、前述の等式に従ってx=aの時に養分放出率が最も高い)になるまで養分放出率が増加するのみであることが意味されていることに留意すべきである。その後、養分放出率は、その肥料組成物の養分含量が完全に消耗した時のゼロになるまで減少する。この発明のガウス分布放出率の肥料生成物は、特定植物の肥料として、或は特定植物(即ち、前述の等式における時間x=aで最も成長する植物)の成長パターンに従って養分放出率を示すように設計される他の肥料組成物を製造するための構成単位として、有用であることがわかった。
【0018】
本発明の肥料組成物は、実質的に球形のコア材に標準的な被覆工程を実行することによって、或は、実質的に球形の粒体を得るように標準的な被覆粒状材料を処理することによって、調製されてよい。これの代わりに、この発明の肥料組成物は、被覆塗布期間の経過に伴って被覆材の固形含量を低固形含量から高固形含量へ変化させることによって(例えば、粒状コア養分材への被覆の塗布期間の経過に伴ってフィルム形成樹脂の固形含量を約50パーセントから60パーセントへ増加させることによって)標準的な粒状材料に単一層被覆を塗布するという被覆工程によって、製造されてもよい。
【0019】
この発明の好ましい実施例では、ガウス分布放出の肥料組成物は、
i)少なくとも1つの水溶性肥料配合物を備える粒状コア材を供給することと、
ii)施用後の特定時に養分放出が最大になるガウス分布の養分放出率曲線を与えるように肥料組成物が構成されるように、均一で実質的に連続している単一層のポリマーフィルムからなる実質的に水不溶性の被覆をコア材に塗布することとを備える方法によって調製される。
【0020】
詳細には、結果の肥料組成物を施される植物種又は植物変種の成長率曲線にその肥料組成物の養分放出率曲線が調和するように、予め決められているレベルでこの粒体が被覆される。
【0021】
この発明の更なる形態によれば、この発明は、植物種又は植物変種の成長率パターンと調和する養分放出率パターンを実際的な野外条件下で有する肥料組成物を提供するための方法に関する。この方法は、
i)本発明の肥料組成物を施される植物種又は植物変種の、成長期の関数として1日当りの百分率で表現される成長率パターンを決定する段階と、
ii)その植物種又は植物変種の成長率パターンにおける最大値(即ち上述の等式における要素a)を決定する段階と、
iii)その植物種又は植物変種の成長率パターンと調和する養分放出率を有する放出制御された肥料組成物を選択する段階と、
iv)その施肥植物種又は植物変種の成長を促進するための量および条件下でその植物種又は植物変種にその肥料を施用する段階とを備えている。
【0022】
植物に肥料を施すこの方法は、苗木で栽培される植物種もしくは植物変種、並びに/又は針葉樹及び常緑樹のグループに属する植物のようにガウス分布の成長率曲線を示すことが知られている植物種又は植物変種に、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ガウス分布の成長率曲線を示す2種の植物(即ちThuja Brabant及びJuniperis)の典型的な成長率パターンを示している。
【図2】塗布された7.5pph被覆及び10pph被覆を有する被覆された17−10−13+微量の標準肥料組成物の養分放出率曲線と、実施例1で詳述されている通りに本発明に従って肥料が製造されることを除いて標準と同じである7.5重量pph被覆及び10重量pph被覆を有する17−10−13+微量の肥料組成物の養分放出率曲線との比較を示している。
【図3】7.5pphで被覆された17−10−13+微量の標準肥料組成物の養分放出率曲線と、実施例2で詳述されている通りに本発明に従って製造されて7.5pphで被覆された17−10−13+微量の肥料組成物の養分放出率曲線との比較を示している。
【図4】7.5pphで被覆された17−10−13+微量の標準肥料組成物の養分放出率曲線と、実施例3で詳述されている通りに本発明に従って製造されて7.5pphで被覆された17−10−13+微量の肥料組成物の養分放出率曲線との比較を示している。
【図5】オランダにおけるThuja Brabant植物の成長率と、ガウス分布の放出率を示しており且つ実施例5で説明されている技術に従って製造された本発明の放出制御された肥料生成物の放出率との調和を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで使用される粒状コア材は、任意の型の肥料コア配合物を含んでいてよい。硝酸カリウム、硫酸カリウム、尿素、硝酸アンモニウム、硫酸1カリウム、リン酸アンモニウムを含む公知の化学肥料又は、これらの肥料の混合物の配合から得られる肥料を使用することができる。好ましい実施例では、これらの肥料は微量養分即ち微量要素を含んでいる。
【0025】
塗布される被覆材は、均一で連続しているポリマーフィルムを形成することのできる任意の種類の材料、熱可塑物又は熱硬化物、を主成分とすることができる。
【0026】
本発明では、熱可塑性被覆材は、
ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(ビニルメチルアセトアミド)のようなビニル樹脂、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンのようなポリオレフィン、
スチレン系ポリマー、
アクリルポリマー、
ポリ(テレフタル酸アルキレン)、ポリ(カプロラクトン)のようなポリエステル、
ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)のようなポリ(オキシアルキレン)、
酢酸セルロースのようなセルロース誘導体、
ポリアミド、
ポリアミン、
ポリカーボネット、
ポリイミド、
ポリスルホン、
ポリスルフィド、
多糖
を含んでいてよい。
【0027】
本発明では、熱硬化性被覆材は、
アルキド又は変性アルキドのようなポリエステル、
エポキシ樹脂、
ウレタン樹脂、
アミノプラスチック
を含んでいてよい。
【0028】
任意に、タルクのような非特異性添加物(不活性充填剤)を、被覆材が含んでいてよい。
【0029】
被覆材は、溶液から或は分散液から塗布されてよい。溶液から塗布される場合には、樹脂が全温度で溶解する溶媒を使用することが好ましく、従って比較的高い固形含量(40重量%より多い)の樹脂溶液を使用することができる。
【0030】
被覆材は、種々の方法で肥料に塗布されてよい。しかしながら、この発明の最も好ましい実施例では、ソーセージ型カラムのような被覆ドラム又は流動床で被覆工程が実行される。肥料粒体に塗布される被覆の(全)厚さは、約5〜110μmであることが好ましく、約25〜90μmであることが更に好ましい。一般に、これらの値は、それぞれ、約1〜約20重量pphおよび約4〜約15重量pphの塗布された被覆材の量に相当する。
【0031】
施用後の特定時期に養分放出が最大になり且つ施肥植物の成長パターンに従うガウス分布の養分放出率曲線を示す被覆肥料組成物を得るためには特定の被覆レベルが必要である、ということが見出された。本発明によって必要とされる被覆レベルは、特定レベルの丸み度を有する特定のコア材を使うことによって、及び/又は詳細に後述される特定の被覆手順を使用することによって、一層の被覆材で得られる。
【0032】
本発明の好ましい実施例では、粒状コア材は、均一で実質的に連続しているポリマーフィルム被覆を形成することのできる規則正しい形状、より好ましくは実質的な球形状を有している。実質的に丸い粒状コア材は、スパイラルセパレータ内で粒状の出発原料を処理することによって得られてもよい。
【0033】
粒状コア材の丸み度つまり球形度を判定するためにここで使用されている試験は、カーペンタ及びダイツによって開発され(1951年9月のNBS41(37)のRes.の3.の2238頁の研究論文)下記のように球形粒体と非球形粒体とを分離するために改造された粒子形状分類器に基づいている。
【0034】
直径20”のターンテーブルからなる装置が水平面に対して9度の角度で取付られた。このターンテーブルは4rpmで回転させられた。粒体が、11.5グラム/分で小型ベルト供給装置から、回転しているターンテーブルの中央から反時計回り側へ約1”の縁上へ供給された。この低供給速度は、互いの干渉が最小の状態で個々の粒体がターンテーブル上を転がることを可能にした。球形粒体は、まっすぐに転がって、ターンテーブルの下部から回収槽内へ落下した。殆どの非球形粒体は、短い不規則な部分を転がり、ターンテーブル上で止まる傾向があり、ぐるぐる運ばれて、ターンテーブルの表面と平行に向けられた空気流によってターンテーブルから別の回収槽内へ吹き飛ばされた。
【0035】
この試験のために、粒体が、供給装置から、7mmの開口を有し約100度の角度で急に曲がっているガラス製漏斗内へ供給された。この漏斗の先端は、ターンテーブルの縁から1/4”以内にあり、ターンテーブルに接触することなく可能な限り接近していた。100グラムのサンプルが使用され、ターンテーブルは、摩擦を減少させるために、ガラス清浄剤によって各サンプル後に清浄化された。球形粒体が秤量され、このようにして球形粒体のパーセントが測定された。
【0036】
スパイラルセパレータ内で粒状の出発原料を処理すれば、少なくとも98%の球形粒子を有するか、または本質的に完全に丸い粒子から成ってさえいる、生成物を得ることができる。
【0037】
本発明の他の好ましい実施例では、ガウス分布の養分放出特性を示す本発明の肥料を製造するために、実質的に球形状で予め被覆されている標準的な粒状材料が用いられてもよい。このような被覆粒体はスパイラルセパレータ内で標準的な被覆粒体を処理することによって得られてもよく、その被覆粒体の球形度は前述のカーペンタ及びダイツ試験手順によって判定される。
【0038】
本発明の目的上、本発明のガウス分布放出率の肥料の製造のために実質的に球形のコア材が必要であれば、前述のカーペンタ及びダイツ試験手順によって判定される少なくとも95重量%の丸い粒体又は被覆粒体を含むコア材及び/又は被覆粒状材料を用いることが好ましい。
【0039】
本発明の方法の更に好ましい実施例では、被覆段階の間、時間の経過に伴ってポリマー被覆材の塗布速度が増加するように、ポリマーの溶液又は分散液としてポリマー被覆材が粒状コアに塗布される。ポリマー材料の塗布速度は、種々の方法で増加されてよい。粒状コア材に塗布される液体被覆材の量が被覆工程の間に変化するこの方法に従って、この発明の肥料組成物を達成するためには、カーペンタ及びダイツ球形度試験手順によって判定される丸い粒体をコア材が少なくとも50重量%含むことが好ましい。
【0040】
この発明の一実施例では、粒状コアを被覆するために使用される溶液又は分散液のポリマー含量が、被覆段階の間に増加される。例えば、アルキド樹脂溶液を使用する場合は、この溶液の樹脂含量が被覆段階の初期での45〜55重量%超のレベルから被覆段階の終期での約60〜70重量%に増加される。好ましい実施例では、樹脂含量が線型に増加される。
【0041】
他の実施例では、ポリマー溶液又は分散液の付加速度は、被覆工程の間、ポリマー含量とは逆に増加される。
【0042】
以下の実施例は、本発明の実践を説明している。全ての部は、異なって表示されない限り重量による。
【0043】
実施例1
約75重量%の丸い粒子を含む粒状NPK肥料が、被覆工程前にスパイラルセパレータ内で処理された。この肥料の組成は、17%のNと、10%のP25と、13%のK2Oとであった。さらにこの粒体には、微量要素(Fe、Mn、Zn、Cu、B及びMgO)が存在していた。この肥料は、以下において17−10−13+微量と略称されている。粒子の転がりで発生する運動量を用いて丸い粒子と丸くない粒子とを分離するように設計されているスパイラルセパレータ内での処理後に、丸い粒子を含む分級物が被覆試験で使用された。
【0044】
被覆試験で使用するために選択された10kgの丸みを付けられた粒子が、ドラム被覆機内に置かれて加熱された。80℃の温度に到達した後に、変性不飽和油共重合体系アルキド樹脂(ジシクロペンタジエン及び大豆油からのアルキド樹脂の共重合体であって、米国特許第4,657,576号に記載されているように『Osmocote−被覆』として知られており、参照によってその開示が本明細書中に組み入れられている)のホワイトスピリット溶液が、肥料粒体の回転床上への被覆材の計量された滴下によってその粒体上へポンプで送り込まれた。被覆工程中は被覆内の樹脂の固形含量が約60パーセントのレベルに維持された。合計で、0.81kgの固体が被覆工程中に肥料に加えられて、7.5pph(重量基準で100分の1)の被覆レベルを得た。被覆後に肥料は室温まで冷却された。被覆(17−10−13+微量)肥料の放出は、閉じたプラスチックボトル内の21℃で400mlの水の中に20gのこの生成物を置くことによって試験された。ある時間間隔でその水が交換されて、その溶液の伝導率が測定された。測定された伝導率は、適切な校正定数を使って、放出された養分の全量に変換された。これらの校正定数は、ある型の肥料に特有であり、実験的に決定する必要がある。しかしながら、放出された養分の量を標準的な化学分析法を使用して測定することによっても、放出を測定することができる。
【0045】
上記方法を使用して被覆及び試験された17−10−13+微量の放出率曲線が、被覆前にスパイラルセパレータ内で処理されなかったNPK基体を主成分とする7.5pph被覆標準生成物の放出データと共に、図2に与えられている。図2に示されているように、最大放出率の時間(曲線の形状)は、被覆レベルを変化させることによって植物の要求に従って変化させることができる。同じ手順を使って17−10−13+微量がより高い被覆レベル(10pph)で被覆されると、この発明の7.5pphの被覆生成物で達成された最大放出率よりも遅い時にその最大放出率が観察された。逆に、7.5pph被覆生成物と同じ方法で製造された10pph標準被覆生成物は、7.5pph生成物によって示されるのと同じ非ガウス分布の養分放出パターンを示した。
【0046】
この実施例は、肥料粒体にアルキド樹脂被覆を塗布する前にこれらの肥料粒体をスパイラルセパレータ内で処理することによって生じるガウス分布の放出率曲線を示す放出制御された肥料組成物の調製を説明している。
【0047】
実施例2
被覆前にスパイラルセパレータ内で処理されていない粒状NPK肥料(17−10−13+微量)が、実施例1に記載されているように被覆ドラム内においてアルキド樹脂で被覆されて、7.5pphの被覆を有する肥料粒体を供給した。この肥料粒体が被覆された後に、この被覆粒体がスパイラルセパレータ内で処理されて、実質的に丸い7.5pph被覆粒体からなる分級物を分離した。
【0048】
スパイラルセパレータ内で処理される前に取り去られた標準の7.5pph被覆生成物と比較した丸い分級物の放出(図3参照)が、実施例1に記載されているように測定された。図3からは、実施例2からの生成物の放出率曲線が最大(ガウス分布曲線)を示し、一方標準の生成物の放出率が非ガウス分布の放出率パターンで連続的に減少することが明白である。
【0049】
実施例3
75重量%の粒体が既述のカーペンタ及びダイツ試験手順によって判定される通りに丸い粒状NPK肥料(17−10−13+微量)が、被覆ドラム内においてアルキド樹脂で被覆された。ドラム被覆機内では、10kgのこの生成物が置かれて加熱された。80℃の温度に到達した後に、変性不飽和油共重合体系アルキド樹脂(Osmocote−被覆)のホワイトスピリット溶液が肥料上へポンプで送り込まれた。被覆工程の初期では、被覆工程の終期よりも希釈された溶液(即ち、より少ない樹脂固形含量しか含まない溶液)が使用された。合計で0.81kgの固体が被覆工程中に肥料に加えられて、7.5pph(重量基準で100分の1)の被覆レベルを得た。被覆後に肥料は室温まで冷却された。
【0050】
実施例1に記載されている通りに測定された養分の放出率が、図4に示されている。比較のために、同じ被覆レベル(7.5pph)で標準手順によって被覆された生成物が、図4に示されている。標準被覆手順は、被覆工程中に標準固形濃度が使用されることを除いて、上記の被覆手順と同等である。固形濃度は、被覆手順中に変えられない。図4から、本発明の生成物の放出率曲線が最大(ガウス分布曲線)を示し、一方標準生成物の放出率が連続的に減少してガウス分布の放出パターンを示さないことが明白である。
【0051】
実施例4
粒状NPK肥料(16−10−20)が、流動床内で、非常に低い蒸気透過率を有する被覆を得るのに有用なアクリル分散液で被覆された。9kgのこの粒状16−10−20肥料が、実験規模の流動床ソーセージ型カラム中へ加えられて、70℃で14分間予熱された。3200g(乾燥固形基準で1250g)のアクリル分散液が、42g/分の開始速度で流動床の底からの噴霧によって、流動化されているNPK粒体に塗布された。付加速度は、63g/分(37分後)に、その後84g/分(58分後)に徐々に増加された。乾燥空気流量は8L/分であって、70℃の温度で流動床に入った。合計被覆時間は58分であり、70℃の空気入口温度での追加の15分の乾燥と周囲空気を用いる5分の冷却相とが続いて、12pphの被覆レベルを有する生成物が得られた。
【0052】
結果の生成物の放出が、実施例1に記載されている通りに測定された。表1に示されている放出率データは、この実施例の生成物については最大放出率が38日後に生じるガウス分布型の放出が得られたことを示している。
【0053】
実施例4からの被覆生成物の養分の放出率
【0054】
【表1】

【0055】
実施例5
この実施例は、放出制御された肥料の養分放出率曲線によって植物の成長率パターンの調和を説明するためのものである。図5において、Thuja Brabant植物の成長率パターンが、本発明に従って調製された生成物の養分放出率パターンと共に示されている。この特定の放出制御された肥料生成物は、実施例1に示されている通りの被覆工程に従って得られた。図5の図面から分かるように、この発明の被覆肥料組成物の放出率は、その植物の成長率パターンと実質的に等しい。
【0056】
本発明がある程度の詳細さでその好ましい形態において記述されたが、この開示が実施例としてのみなされたことが理解されるべきである。組成物の詳細及びそれらの調製方法の種々の変更が、添付の特許請求の範囲中で限定されているように発明の精神及び範囲から逸脱することなく明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
この肥料組成物が適用される植物種または植物系の成長パターンと整合する滋養物の放出パターンを示す制御された放出を行なう肥料組成物の提供方法において、
前記方法が、
i)成長期の関数として、日に対するパーセントで表現される成長割合をプロットすることによって植物種または植物系の成長パターンを決定する工程と、
ii)前記成長パターン中における最大値を決定する工程と、
iii)前記成長パターンに整合する滋養物の放出割合のガウス分布の滋養放出を行なう肥料組成物を選択する工程と、を有し、
前記肥料組成物が、少なくとも1つの水溶性の肥料組成物から成る粒状の滋養のあるコア材と、前記コア材上に施される実質的に水に不溶な被覆層とを有し、前記肥料組成物は、時間に対してガウス分布型の滋養放出曲線を発現し、しかも前記被覆層は、その中に一体な付加物が含まれておらず、一層であって均一な実質的に連続する高分子フィルムから構成される肥料組成物の提供方法。
【請求項2】
前記被覆の厚さが5〜110μmである、請求項1に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項3】
前記粒状のコア材が、均一で実質的に連続する高分子フィルムの被覆を提供するのを可能にする形状である請求項1に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項4】
前記コア材の粒子の少なくとも95%が実質的に球状である請求項3に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項5】
前記コア材が実質的に平滑な外表面を有する請求項1に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項6】
前記コア材が実質的に球状の形状を有する請求項1に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項7】
実質的に球状であって粒状のコア材が、粒状の材料を螺旋状のセパレータで処理することによって得られる請求項6に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項8】
前記コア材の粒子は実質的に平滑な表面を有する請求項7に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項9】
前記被覆された粒子の少なくとも98%が実質的に球状である請求項8に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項10】
前記被覆材料は、高分子物質の溶液または分散液として用いられ、前記コア材の被覆の過程で適用される割合を増加させる請求項1に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項11】
前記溶液または分散液の高分子物質の量が、前記コア材の被覆の過程で増加する請求項10に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項12】
前記コア材がアルキド樹脂溶液によって被覆され、前記溶液の樹脂の含有量が、前記コア材に対する被覆の初期の45〜55重量%から前記コア材に対する被覆の終期の60〜70重量%まで増加する請求項11に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項13】
前記溶液の樹脂の含有量は、初期から終期にかけて直線的に増加する請求項12に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項14】
前記コア材の被覆の過程で、前記溶液または分散液の添加の割合が増加する請求項10に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項15】
前記植物種または植物系は、生育群体として生育される請求項1に記載の肥料組成物の提供方法。
【請求項16】
前記植物種または植物系は、針葉樹または常緑樹から選ばれる請求項15に記載の肥料組成物の提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−6831(P2012−6831A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181073(P2011−181073)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【分割の表示】特願2000−575364(P2000−575364)の分割
【原出願日】平成11年10月12日(1999.10.12)
【出願人】(511227093)
【Fターム(参考)】