説明

放射免疫コンジュゲートおよびその使用

本発明は、ヒトCD37に結合する放射免疫コンジュゲートに関する。癌、特にB細胞悪性腫瘍を処置するための薬学的組成物およびその使用は本発明の局面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、予想外に高い細胞障害性を有する放射標識モノクローナル抗体による血液癌の放射免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
放射標識抗体による治療は、非ホジキンリンパ腫(NHL)に対して導入されており、今日承認されている方法である。2つの製剤、すなわちZevalin(商標)およびBexxar(商標)が市販されており、いずれもCD20抗原を標的とする(Jacene et al., 2007)。
【0003】
同様に、免疫療法剤であるリツキシマブ(Rituxan(商標)/Mabthera(商標))もCD20抗原を標的とする。同じ標的に対する処置に関する1つの問題は、疾患の過程で免疫表現型のドリフトが起こる可能性であり(Ngo et al., 2009)、このドリフトは、リツキシマブ療法の場合のように一定期間繰り返される場合、または長期間のリツキシマブ療法後にCD20に基づく放射免疫療法(RIT)を施す場合に、CD20療法の効果の減弱を引き起こしうる。
【0004】
CD20を標的とする療法を受けている多数の患者が最終的に再発を経験するであろう(Buchegger et al., 2006; Gordon et al 2004)。このように、NHL患者では、CD20ではない別の抗原を標的とするRITが明らかに必要である。
【0005】
RITの初期の開発では、2つの抗原CD37およびCD20が標的として評価された(Press et al., 2001)。CD20を標的とするRITのほうが適切であるという結論に達したことから、CD37を標的とするRITの開発は断念された。このため、モノクローナル抗体はリンパ腫に対するRITにおいて用いるために適しているが、CD20を標的とする放射免疫コンジュゲート(RIC)は、CD37を標的とするRICより優れていることは当技術分野において公知である(Press et al., 2001)。
【0006】
近年、CD37は、主にキメラ抗体構築物またはヒト化抗体構築物を用いる免疫療法の標的としていくつかの新しい関心を集めている(Heider et al., 2009; Grosmaire, 2007)。マウスの抗体は、患者に免疫療法の不快感および効能の低減を引き起こし得るヒト抗マウス抗体(HAMA)の産生を誘導する可能性があることから、これらの研究は、従来のマウスIgGモノクローナル抗体を用いないことを教示している。
【0007】
RITの場合、用いられるタンパク質の用量は一般的に低く、免疫療法と同程度まで処置を繰り返す必要がないことから、従来のマウスモノクローナル抗体はなおも興味深いと考えられている。同様に、マウスIgGのクリアランスは、一般的に同じIgGのヒト化またはキメラ型よりわずかに速く、これは少なくともいくつかの状況においてRITによって全身が放射線に曝露されることを考慮すれば、より適切でありうる。BexxarおよびZevalinは、いずれもマウス抗体に基づいていることに注意すべきである。
【0008】
本発明は、放射性同位元素の担体としての抗CD37マウス抗体HH1を提供する。マウス抗CD37抗体HH1を産生する当初のハイブリドーマクローンは、1980年代に開発されており(Smeland et al., 1985)、HH1抗体は、免疫組織化学においてインビトロで使用するために数年前から販売されている。
【0009】
HH1は、放射免疫療法の場合の生体分布および細胞障害性に関してこれまで評価されていない。それゆえ、本研究は、放射免疫療法においてHH1が適しているか否かを評価するために行われた。クロラミンT/Iodogen法を用いてチロシン残基に直接放射標識された131Iを用いる抗CD37 RICのこれまでの臨床研究および前臨床研究とは対照的に、HH1を、ハロゲンの代わりに金属放射性核種を用いてキレート化剤により放射標識した。
【0010】
キレート化剤-リンカーにより標識された金属放射性核種を用いることは、131I-標識抗体を用いることが、RICから放出される様々な量のヨウ素に対する甲状腺の曝露に関連していることから、有利となりうるであろう。
【0011】
HH1が放射免疫コンジュゲートを産生するために適しているか否かを評価するためのこれまでの試験では、CHX-A-DTPAをHH1にコンジュゲートさせて、インビトロモデリング目的のためにコンジュゲートを205、206Biによって標識した(Henriksen et al., 1997)。
【0012】
細胞株Rajiにおける取込みを、HH1またはストレプトアビジンにコンジュゲートさせたビスマスに関して比較した。後者の場合、細胞をビオチニル化HH1によって予め飽和させた。
【0013】
212Biまたは213Biによって標識する場合、機能的RICを確保するために必要なキレート化剤の数が制限因子であることが見いだされた。それゆえ、HH1に基づくRICの代わりにビオチニル化HH1を用いることが示唆された。ビオチニル化HH1は、細胞に一度結合すると、放射標識ストレプトアビジンによって標的とされうるであろう。
【0014】
このように、それらの研究は、α粒子を放出する放射性核種によって標識したHH1が、十分な結合能を保持するためにHH1にとって認容可能と思われるキレート化剤濃度での不十分な比放射能により、あまり有用でなかったことを示唆している。
【0015】
α放出体と比べてβ放出体は機能的RICの構築にとってさらに適していないことも論文において示されており(Henriksen et al, 1997)、当該著者らは、十分な効果を得るためにはクロスファイア(cross-fire)が必須であることを理由に、β放出体による標的放射線療法は播種性疾患では劣るはずであると述べている。
【0016】
このように、先に引用した研究は、ラジオイムノアッセイにおいて直接キレート化したHH1を用いないこと、および同様にβ放出体に基づくRICにおいてHH1を用いないことを教示している。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、マウスモノクローナル抗体HH1、リンカー、および211At、213Bi、212Bi、212Pb、225Ac、227Th、90Y、186Re、188Re、199Au、194Ir、166Ho、159Gd、153Sm、149Pm、142Pr、111Ag、109Pd、77As、67Cu、47Sc、および177Luからなる群より選択される放射性核種を含む、ヒトCD37に結合する放射免疫コンジュゲートに関する。
【0018】
本発明の1つの態様において、リンカーはキレート化リンカーであり、放射性核種は177Luである。
【0019】
本発明の1つの局面は、本発明の放射免疫コンジュゲートと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。
【0020】
本発明の1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、1つまたは複数の追加の抗体または放射免疫コンジュゲートを含む。
【0021】
本発明の別の態様において、1つまたは複数の追加の抗体または放射免疫コンジュゲートはCD20を標的とする。
【0022】
本発明のさらなる態様は、CD37抗原を発現するB細胞悪性細胞を処置するための本発明の薬学的組成物に関する。
【0023】
本発明の1つの態様において、薬学的組成物は、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ性白血病を処置するためのものである。
【0024】
本発明の1つの局面は、B細胞悪性腫瘍を処置するために本発明の放射免疫コンジュゲートを用いることに関する。
【0025】
本発明の1つの態様は、他の治療と組み合わせて、または他の治療に加えて投与される本発明の放射免疫コンジュゲートを用いることに関する。
【0026】
本発明の1つの態様において、治療は、前処置、化学療法、モノクローナル抗体療法、手術、放射線療法、および/または光力学療法から選択される。
【0027】
本発明の別の態様において、治療は、本発明の放射免疫コンジュゲートによる処置の前に、抗CD20および/または抗CD37モノクローナル抗体を用いる前処置を含む。
【0028】
本発明の1つの局面は、本発明の薬学的組成物の有効量を投与する段階を含む、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病から選択されるB細胞悪性腫瘍を処置するための方法に関する。
【0029】
本発明の別の局面は、2つまたはそれより多くのバイアルを含む、本発明の放射免疫コンジュゲートを産生するためのキットであって、1つのバイアルがマウスモノクローナル抗体HH1に連結されたキレート化剤を含むコンジュゲートを含有し、第二のバイアルが放射性核種を含有するキットに関する。
【0030】
本発明の1つの態様は、1つまたはいくつかのバイアルの内容物が凍結乾燥されているかまたは溶液である、本発明のキットに関する。
【0031】
本発明の別の態様において、放射免疫コンジュゲートは、2つのバイアルの内容物を混合することによって生成される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】Raji細胞、Rael細胞およびDaudi細胞を111In-HH1、111In-リツキシマブ、125I-HH1および125I-リツキシマブとインキュベートした場合の洗浄直後(A)および96時間後(B)の細胞に結合した抗体。
【図2】177Lu-HH1または177Lu-リツキシマブと共に2時間(A)および18時間(B)インキュベーションした後のDaudi細胞に結合した放射能。ブロックされた細胞は、100 μg/mlの非標識抗体によってブロックされた細胞である。
【図3】洗浄前に177Lu-HH1(A)または177Lu-リツキシマブ(B)と共に2時間インキュベートしたDaudi細胞の増殖。
【図4】洗浄前に177Lu-HH1(A)または177Lu-リツキシマブ(B)と共に18時間インキュベートしたDaudi細胞の増殖。
【図5】Daudi異種移植片を有するマウスにおける、キレート化剤によって111In標識したHH1の生体分布。
【図6】非標識Daudi細胞、二次抗体のみによって標識したDaudi細胞、またはHH1、ON.108、IPO.24、もしくは6D263によって標識したDaudi細胞のFITCヒストグラム。
【図7】Daudi腫瘍を有する雌性ヌードマウスにおける177Luの生体分布。
【図8】静脈内に注射したDaudi細胞を有するマウスの治療。50および100 MBq/kg 177Lu-HH1、コールドHH1、コールドリツキシマブおよびNaClによって処置したマウスの生存。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
本発明は、放射免疫療法において抗体HH1を用いることに関する。
【0034】
金属放射性核種、リンカー、および抗CD37モノクローナル抗体の組み合わせは、驚いたことに放射標識HH1が、異種移植片/ヌードマウスモデルにおいて、妥当な生体分布および腫瘍の取込みを有することを示している。
【0035】
これは、放射免疫療法に用いるために適していることを示す重要な情報である。
【0036】
放射免疫コンジュゲート
本発明は、驚いたことに、放射免疫コンジュゲート177Lu-HH1が播種性腫瘍細胞に対して有意な細胞障害性を示したこと、および177Lu-HH1が所定の用量で腫瘍細胞に対して177Lu-リツキシマブより細胞障害性であったことを示している。
【0037】
177Lu-リツキシマブは、細胞あたりに結合した放射活性がより強く、かつ結合した放射性核種の保持が類似または良好であったことから、この知見は予想外であった。
【0038】
このことは、放射免疫療法に関して抗CD20抗体が抗CD37抗体よりも良好であるという当技術分野における共通の知識とは反対を教示する。さらに、本研究は、β放出体の場合、十分な効果を得るためには、播種性細胞では得ることができないクロスファイアが必須であろう(Henriksen et al., 1997)という点においてこれまでの考え方とは異なる。
【0039】
観察された効果の理由は明確ではない。様々な用量の非標識HH1およびリツキシマブに関する実験データは、用いた増殖アッセイにおいて非標識抗体によるいかなる効果も示さなかった。
【0040】
可能性がある1つの説明は、用いた細胞株においてCD20は平均してより強く発現されているが、CD20よりCD37の方が、非常に低い抗原密度を有する細胞が少ないことであろう。
【0041】
ある程度のインターナリゼーションがCD37抗原について報告されていることから(Press et al., 2001)、保持データはCD37のインターナリゼーションが原因で良好な保持を示唆しなかったが、そうでなければインターナリゼーションは可能性がある説明であろう。
【0042】
このように、本発明は、マウスモノクローナル抗体HH1、リンカー、ならびに211At、213Bi、212Bi、212Pb、225Ac、227Th、90Y、186Re、188Re、199Au、194Ir、166Ho、159Gd、153Sm、149Pm、142Pr、111Ag、109Pd、77As、67Cu、47Sc、および177Luからなる群より選択される放射性核種を含む、ヒトCD37に結合する放射免疫コンジュゲートに関する。
【0043】
本発明の態様において、リンカーは、キレート化リンカーである。
【0044】
本発明の別の態様において、放射性核種は177Luである。
【0045】
なお別の態様において、放射性核種は別のβ放出体またはα放出体である。
【0046】
本発明は、インビトロデータによって、放射標識リツキシマブがCD20抗原に結合する場合よりも有効に放射標識HH1がCD37抗原に結合すること、すなわち必要な血液中の抗体がより少なくても抗原に対する最大結合に達したことを示唆している(表2、図2)。
【0047】
同様に最大の結合に達するまでに要する時間もより短かった(図2)。このことは、血中抗体がより低濃度であっても、固形腫瘍があまり存在しない領域において起こりうる状況であっても、正常組織の離れた領域に位置する単一の腫瘍細胞および微小転移巣に関しても、腫瘍細胞がRICを捕捉することができることを意味することから、これらはインビボにおいても同様に重要な特徴であろう。
【0048】
これは、別の抗CD37抗体では、抗原を飽和して都合のよい生体分布を得るためには、HH1より高い抗体濃度が必要であること(Bernstein et al., 1990)、同様に抗CD20抗体と比較しても高い抗体濃度が必要であること(Press et al., 1993)を示したこれまでのデータとは有意に異なる。
【0049】
加えて、本発明は、それらの抗体が全て同じエピトープに実質的に結合するにもかかわらず、異なる3つの抗CD37抗体のパネルと比較して、HH1がいくつかの異なる抗原結合特性を有することを示している。
【0050】
ブロッキング実験、すなわち非標識抗体によって予め飽和した細胞を用いる実験により、HH1が、生きている細胞上で他の3つの抗CD37抗体より実質的に良好に、放射標識HH1に結合しないようCD37をブロックするであろうことが示された。
【0051】
放射標識抗体を比較する細胞アッセイにおいて、HH1は、他の3つの抗体と比較した場合にはるかに良好な免疫反応率を示した。免疫反応率とは、抗原が無限に過剰量存在する場合に、抗原に結合することができる抗体の割合を意味する。異なる抗体は、標識技法を終えた後の免疫反応性の維持について異なる能力を有することができる。実施例6、実験IV、表5は、HH1の免疫反応性が、3つの市販の抗体の免疫反応性より良好に維持されたことを示している。
【0052】
一方、免疫組織化学分析により、3つの抗体が、パラフィン包埋された固定腫瘍試料の組織切片を染色するが、HH1は染色することができなかったことが示された。抗体抗原相互作用の差は、フローサイトメトリーでは検出できなかった。
【0053】
フローサイトメトリーヒストグラムは、HH1および他の3つの抗CD37抗体に関して類似であった(図6)。全体的にこれらのデータは、HH1が、いくつかの局面において、他の抗CD37抗体による研究からは予想することができない有意な個々の抗原相互作用を有することを示している。
【0054】
本明細書において記述される強い細胞障害特性を有する新規抗CD37放射免疫コンジュゲートは、マウスモノクローナル抗体HH1、キレート化リンカー、およびβ放出体177Luからなる。
【0055】
二官能性キレート化剤、たとえばp-SCN-bn-DOTA(Macrocyclics, Tx, USA)を抗体と最初に反応させた後、コンジュゲートを形成していないキレート化剤を除去するために精製を行って、次にキレート化剤-抗体コンジュゲートを放射性核種と反応させた後、コンジュゲートを形成していない放射性核種を除去するために精製を行うことによって、放射性核種を抗体に付着させてもよい。
【0056】
または、キレート化剤および放射性核種を最初に化合させて、その後で抗体にコンジュゲートさせることができる。
【0057】
たとえばp-SCN-bn-DOTAなどのキレート化リンカーを、177Luに関して記述される様式と類似の様式で、他の金属放射性核種をHH1にコンジュゲートさせるために用いることができる。
【0058】
十分な錯体形成能およびタンパク質またはペプチドに対する直接または間接的コンジュゲーションを可能にする官能基を有する任意のタイプのリンカーを用いることができるであろう。そのようなリンカーの例は、文献に記述されている(たとえば、Brechbiel, 2008; Liu, 2008)。いくつかの有用な例は、p-SCN-bn-DOTA、DOTA-NHS-エステルのような二官能性環状キレート化剤;p-SCN-Bn-DTPAおよびCHX-A"-DTPAのような二官能性直線状キレート化剤である。
【0059】
本発明における放射性核種は、好ましくは二官能性キレート化剤を用いることによって標的分子にコンジュゲートされるであろう。
【0060】
これらは、環状、直線状、または分枝キレート化剤でありうる。骨格窒素に酸性(たとえば、カルボキシアルキル)基が結合した直線状、環状、または分枝ポリアザアルカン骨格を含むポリアミノポリ酸キレート化剤は特に言及されうる。
【0061】
適したキレート化剤の例には、p-イソチオシアナトベンジル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(p-SCN-Bz-DOTA)などのDOTA誘導体およびp-イソチオシアナトベンジル-ジエチレントリアミン五酢酸(p-SCN-Bz-DTPA)などのDTPA誘導体が挙げられ、前者の誘導体は環状キレート化剤であり、後者は直線状キレート化剤である。
【0062】
錯体形成部分を標的部分にコンジュゲートする前または後に、錯体形成部分のメタレーションを行ってもよい。
【0063】
放射標識技法は一般的に、放射標識が起こる前にキレート化剤を抗体にコンジュゲートすれば用いる時間等に関してより簡便であろう。
【0064】
抗体に付着させたキレート化剤を用いて放射標識コンジュゲートを調製する原理は、たとえばLiu, 2008においてより広く記述されている。このように、HH1は、放射特性および有効半減期が異なる放射免疫コンジュゲートを調製するために用いることができる。
【0065】
たとえば、マウスモノクローナル抗体HH1、キレート化リンカー、ならびに177Lu、211At、213Bi、212Bi、212Pb、225Ac、227Th、90Y、186Re、188Re、199Au、194Ir、166Ho、159Gd、153Sm、149Pm、142Pr、111Ag、109Pd、77As、67Cu、47Scが挙げられるがこれらに限定されないβまたはα放出放射性核種からなる抗CD37放射免疫コンジュゲートを調製して、薬学的調製物を調製するために用いることができ、かつ治療用途で用いることができる。
【0066】
薬学的組成物
HH1に基づく放射免疫治療物質は典型的に、放射免疫コンジュゲートの化学的完全性を実質的な程度まで維持し、かつ患者に注入するために生理学的に許容可能である、緩衝液中に溶解したマウスモノクローナル抗体HH1にキレート化剤によって連結された先の記述に従う放射性核種からなる薬学的組成物として提供されるであろう。
【0067】
このように、本発明の1つの局面は、本発明の放射免疫コンジュゲート、ならびに薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む薬学的組成物に関する。
【0068】
許容される薬学的担体には、非毒性の緩衝液、増量剤、等張溶液等が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。より具体的には、薬学的担体は、生理食塩液(0.9%)、低張生理食塩液、乳酸リンゲル液、5%デキストロース、3.3%デキストロース/0.3%食塩水でありうるが、これらに限定されるわけではない。生理的に許容される担体は、貯蔵および輸送の際に放射性薬剤の完全性を保護する放射線分解安定化剤、たとえばアスコルビン酸を含有することができる。
【0069】
本発明の1つの態様は、本発明の薬学的組成物と1つまたは複数の追加の抗体または放射免疫コンジュゲートとを含む。抗体には、リツキシマブ、エプラツズマブ、L19、F8、F16、ガリキシマブ、トラリズマブ、アレムツズマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、アフツズマブ、トシツモマブ、Reditux、およびイブリツモマブが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。放射免疫コンジュゲートには、ZevalinおよびBexxarが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0070】
本発明の別の態様において、1つまたは複数の追加の抗体または放射免疫コンジュゲートはCD20を標的とする。抗体には、リツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、アフツズマブ、トシツモマブ、Reditux、およびイブリツモマブが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。放射免疫コンジュゲートには、ZevalinおよびBexxarが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0071】
本発明のさらなる態様は、CD37抗原を発現するB細胞悪性細胞を処置するための本発明の薬学的組成物に関する。
【0072】
本発明の1つの態様において、薬学的組成物は、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病を処置するためのものである。
【0073】
配列同一性
一般的に定義される「同一性」は、本明細書においてヌクレオチドまたはアミノ酸レベルでそれぞれ、遺伝子またはタンパク質のあいだの配列同一性として定義される。
【0074】
このように、本発明の文脈において「配列同一性」は、アミノ酸レベルでのタンパク質間の同一性の測定およびヌクレオチドレベルでの核酸間の同一性の測定である。タンパク質配列同一性は、配列を整列させた場合に各配列における所定の位置でのアミノ酸配列を比較することによって決定されうる。
【0075】
同様に、核酸配列同一性は、配列を整列させた場合に各配列における所定の位置でのヌクレオチド配列を比較することによって決定されうる。
【0076】
2つの核酸配列または2つのアミノ酸の同一性の割合を決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(たとえば、第二のアミノ酸または核酸配列との最適なアラインメントのために第一のアミノ酸または核酸配列の配列にギャップを導入してもよい)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置でのアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。
【0077】
第一の配列における1つの位置が、第二の配列における対応する位置で同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性の割合は、その配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性の割合 = 同一の位置の数/位置の総数(たとえば、重なり合う位置)×100)。1つの態様において、2つの配列は同じ長さである。
【0078】
配列を手動で整列させて、同一の核酸またはアミノ酸の数を計数してもよい。または、同一性の割合を決定するための2つの配列のアラインメントを、数学的アルゴリズムを用いて達成してもよい。そのようなアルゴリズムは、NBLASTおよびXBLASTプログラムに組み入れられている。本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12によるBLASTヌクレオチド検索を行ってもよい。本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3によるBLASTタンパク質検索を行ってもよい。
【0079】
比較目的のためにギャップのあるアラインメントを得るために、ギャップドBLASTを利用してもよい。または分子間の遠縁の関係を検出するPSI-Blastを用いて、繰り返し検索を行ってもよい。NBLAST、XBLAST、およびギャップドBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを用いてもよい。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。または、たとえばEMBLデータベースにおけるBLASTプログラム(www.ncbi.nlm.gov/cgi-bin/BLAST)によって配列を整列させた後に、配列同一性を計算してもよい。
【0080】
全般的に、たとえば「スコア行列」、および「ギャップペナルティ」に関するデフォルトの設定をアラインメントに用いてもよい。本発明の文脈において、BLASTNおよびPSI BLASTのデフォルト設定は都合がよいであろう。
【0081】
2つの配列間の同一性の割合は、ギャップを加えて、または加えずに、上記の技術と類似の技術を用いて決定されうる。同一性の割合を計算する場合、厳密な一致のみを計数する。
【0082】
本発明の1つの態様は、HH1抗体VH配列(SEQ ID NO:1)および/またはVL配列(SEQ ID NO:3)と80%の配列同一性を共有する配列を含む単離された核酸に関する。
【0083】
本発明の1つの態様は、HH1抗体VH配列(SEQ ID NO:1)および/またはVL配列(SEQ ID NO:3)を有する配列を含む単離された核酸に関する。
【0084】
本発明の別の態様において、単離された核酸は、HH1抗体VH配列(SEQ ID NO:1)および/またはVL配列(SEQ ID NO:3)と、90%同一性、91%同一性、92%同一性、93%同一性、94%同一性、95%同一性、96%同一性、97%同一性、98%同一性、または99%同一性などの少なくとも90%の配列同一性を共有する配列を含む。
【0085】
本発明の別の態様は、HH1抗体VH配列(SEQ ID NO:2)および/またはVL配列(SEQ ID NO:4)と80%の配列同一性を共有するポリペプチド配列を含む抗体に関する。
【0086】
本発明の別の態様は、HH1抗体VH配列(SEQ ID NO:2)および/またはVL配列(SEQ ID NO:4)を有するポリペプチド配列を含む抗体に関する。
【0087】
本発明の別の態様において、抗体は、HH1抗体VH配列(SEQ ID NO:2)および/またはVL配列(SEQ ID NO:4)と、90%同一性、91%同一性、92%同一性、93%同一性、94%同一性、95%同一性、96%同一性、97%同一性、98%同一性、または99%同一性などの少なくとも90%の配列同一性を共有する配列を含む。
【0088】
遺伝的バリエーション
遺伝的バリエーションは、遺伝子におけるヌクレオチドの塩基の順序のバリエーションによって引き起こされる。このバリエーションは、遺伝子において、およびその後そのような遺伝子がコードするタンパク質において変異を引き起こす。
【0089】
これらの変異は、センス変異もしくは置換またはミスセンス変異もしくは置換のいずれかでありうる。
【0090】
本発明の1つの態様は、20個などの、10個などの、5個などの、4個などの、3個などの、2個などの、1個などの少なくとも50個のセンス変異を含む、HH1モノクローナル抗体VH鎖(SEQ ID NO:1)および/またはVL鎖(SEQ ID NO:3)の単離された核酸配列に関する。
【0091】
本発明の別の態様は、1〜50個などの、0〜20個などの、1〜20個などの、0〜10個などの、1〜10個などの、0〜5個などの、1〜5個などの、3個などの、1個などの0〜50個のセンス変異を含むHH1モノクローナル抗体VH鎖(SEQ ID NO:1)および/またはVL鎖(SEQ ID NO:3)の単離された核酸配列に関する。
【0092】
ミスセンス変異(非同義的変異の1つの型)は、1つのヌクレオチドが変化して、それによって異なるアミノ酸をコードするコドンを生じる点突然変異である(アミノ酸を終止コドンに変化させる変異は、ミスセンス変異ではなくてナンセンス変異であると見なされる)。ミスセンス変異は、得られたタンパク質を非機能的にすることができる。
【0093】
しかし、必ずしも全てのミスセンス変異が認識可能なタンパク質の変化を生じるわけではない。アミノ酸は、非常に類似の化学的特性を有するアミノ酸に交換されうるが、この場合、タンパク質はなおも通常に機能しうる;これは、中立的、「静的」、または保存的変異と呼ばれる。
【0094】
または、アミノ酸置換は、タンパク質の二次構造または機能に有意に影響を及ぼさないタンパク質の領域で起こりうるであろう。アミノ酸が、1つより多くのコドン(いわゆる「縮重コード」)によってコードされうる場合、コドンの変異は、翻訳のいかなる変化も生じない可能性があり、これは同義的変異(サイレント変異の1つの型)であり、ミスセンス変異ではないであろう。
【0095】
本発明の1つの態様は、20個などの、10個などの、5個などの、4個などの、3個などの、2個などの、1個などの少なくとも50個のミスセンス変異を含むHH1モノクローナル抗体VH鎖(SEQ ID NO:1)および/またはVL鎖(SEQ ID NO:3)のポリペプチド配列を含む抗体に関する。
【0096】
本発明の1つの態様は、1〜50個などの、0〜20個などの、1〜20個などの、0〜10個などの、1〜10個などの、0〜5個などの、1〜5個などの、3個などの、1個などの0〜50個のミスセンス変異を含むHH1モノクローナル抗体VH鎖(SEQ ID NO:1)および/またはVL鎖(SEQ ID NO:3)のポリペプチド配列を含む抗体に関する。
【0097】
保存的置換は、全体的な機能性がおそらく大きく影響を受けないように、1つのアミノ酸と、全般的に類似の特性を有する別のアミノ酸との置換である。
【0098】
本発明の別の態様において、ミスセンス変異は保存的な変異または置換である。
【0099】
本発明のさらなる態様は、配列のバリエーションが保存的置換である、HH1の可変重鎖(SEQ ID NO:2)および/または可変軽鎖(SEQ ID NO:4)配列と80%の配列同一性を有する単離された核酸配列またはポリペプチド配列に関する。
【0100】
本発明の別の態様において、配列同一性は、90%同一性、91%同一性、92%同一性、93%同一性、94%同一性、95%同一性、96%同一性、97%同一性、98%同一性、または99%同一性などの80%の配列同一性であり、配列のバリエーションは保存的置換である。
【0101】
放射標識段階を改善するために、余分のリジンをたとえばHH1のFc部分に導入することが有益でありうる。これは、リジン結合キレート化剤が抗体の抗原結合部位に付着する可能性を低減させて、それによって放射標識の際に免疫反応性を損なうリスクを低減させることができるであろう。
【0102】
リジンをたとえばHH1のFc部分に導入する方法は、当技術分野において、たとえばHemminki et al., 1995により公知である。
【0103】
本発明の1つの態様は、HH1のFc部分においてリジン8個、リジン6個、リジン5個、リジン4個、リジン3個、リジン2個、リジン1個などのリジン10個によって改変されている本発明の放射免疫コンジュゲートに関する。
【0104】
処置
本発明に従う薬学的溶液の治療用途は、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病が挙げられるがこれらに限定されないCD37抗原を発現する悪性細胞に対する処置用でありうる。
【0105】
他の用途は、自己免疫疾患の処置および移植関連効果の処置でありうるであろう。治療は、β粒子放射もしくはα粒子放射、またはこれらの組み合わせに基づくが、これらに限定されるわけではないであろう。
【0106】
治療は、単剤治療または他の治療、好ましくは標準的な処置との併用のいずれかとして施されうるであろう。そのような他の治療は、前処置、手術、化学療法、免疫療法、光力学療法、放射免疫療法、またはこれらの2つもしくはそれより多くの組み合わせでありうるであろう。投与したとは、静脈内注入または静脈内注射を意味する。より具体的には、本発明の放射免疫コンジュゲートは、空気塞栓を防止して、患者への流速を概算することができるドリップチャンバーに接続した末梢カニューレによって静脈内に直接投与することができる。
【0107】
1つの態様において、放射免疫コンジュゲートは、繰り返し投与することができる。
【0108】
本発明の別の態様において、放射免疫コンジュゲートは、異なる放射性核種についても繰り返し投与することができ、たとえばβ放射免疫療法の後にα放射免疫療法を行うことができ、またはその逆を行うことができるであろう。
【0109】
本発明の1つの局面は、B細胞悪性腫瘍を処置するために本発明の放射免疫コンジュゲートを用いることに関する。
【0110】
本発明の1つの態様は、他の治療と組み合わせてまたはそれに加えて投与される本発明の放射免疫コンジュゲートを用いることに関する。
【0111】
本発明の1つの態様において、他の治療は前処置、化学療法、モノクローナル抗体療法、手術、放射線療法、および/または光力学療法から選択される。
【0112】
本発明の別の態様において、他の治療は骨髄移植または幹細胞移植および/または治療である。
【0113】
本発明の別の態様は、本発明の放射免疫コンジュゲートによる処置の前に、抗CD20および/または抗CD37モノクローナル抗体を用いる治療的前処置を含む。
【0114】
本発明の1つの局面は、本発明の薬学的組成物の有効量の投与を含む、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病から選択されるB細胞悪性腫瘍を処置する方法に関する。
【0115】
本発明の1つの態様において、抗体の用量は患者あたり1〜1000 mg、より好ましくは患者あたり5〜50 mgであり、177Luの量は1〜200 MBq/kgに等しく、より好ましくは10〜100 MBq/kg体重に等しい。
【0116】
キット
本発明の1つの局面は、2つまたはそれより多くのバイアルを含む本発明の放射免疫コンジュゲートを産生するためのキットであって、1つのバイアルがマウスモノクローナル抗体HH1に連結されたキレート化剤を含むコンジュゲートを含有し、第二のバイアルが放射性核種を含有するキットに関する。
【0117】
キットは、いくつかの処置を行う必要があってもよく、たとえば注入前に放射標識および/または精製を行ってもよい。
【0118】
本発明の1つの態様は、1つまたはいくつかのバイアルの内容物が凍結乾燥されているかまたは溶液である、本発明のキットに関する。
【0119】
放射免疫コンジュゲートを生成するために、2つのバイアルの内容物を混合することによって、最終産物が出現するであろう。このように、本発明の別の態様において、放射免疫コンジュゲートは、2つのバイアルの内容物を混合することによって産生される。この産物は使用前に精製する必要がありうる。
【実施例】
【0120】
実施例1−HH1の放射標識
ヨウ素化: IODOGENプレコーティングヨウ素化試験管(Pierce, Rockford, IL)を製造元の説明に従って使用する間接的ヨウ素化によって、抗体を125Iで標識した。
【0121】
111Inおよび177Luによる標識:抗体を最初にキレート化剤(p- SCN-Bn-DTPAまたはp-SCN-Bn-DOTA)と反応させた。
【0122】
DTPAまたはDOTAキレート化剤を0.05 M HClに溶解した後、抗体に加えて、炭酸塩緩衝液によって5:1の比率で洗浄することによってpHをおよそ8に調節した。pHを再度チェックして、必要であれば調節した。溶液を室温で60分間振とうさせた後、200 mMグリシン溶液50μl(抗体1 mgあたり)を加えることによって、反応を終了させた。遊離のキレート化剤を除去するために、コンジュゲートした抗体をPBS(PAA)によって4〜5回洗浄した後、酢酸アンモニウムによる洗浄によってpH 5に調節した。次に、111Inまたは177Lu(Perkin Elmer, Boston, Ma, USA)をDOTA-Ab 0.5 mgに加えて、42℃で1時間振とうさせた。最後に、産物をゲル濾過カラム、たとえばSephadex G-25 PD10(GE health)または類似のカラム上で溶出させることによって精製した。全体的な標識収率は、17%から63%にわたっていた。
【0123】

放射免疫コンジュゲートの質を、リンパ腫細胞および改変Lindmo法を用いて測定した。111Inコンジュゲートの高くない比放射能を補うために、108個/mlまでの細胞濃度を用いた。125I-コンジュゲート(より高い比放射能を有する)の場合、4×107個/mlまでの細胞濃度を用いることで十分であった。
【0124】
放射免疫コンジュゲートの免疫反応性および比放射能は表1において見ることができる。
【0125】
実施例2−結合パラメータ
結合速度定数ka、平衡解離定数Kd、および平均結合部位数Bmaxを、一段階曲線適合法(Dahle et al., 2007)によって決定した。HH1およびリツキシマブに関する結合パラメータを、異なる3つのリンパ腫細胞株:Raji、Rael、およびDaudi細胞について測定した(表2)。特異的結合を時間および抗体濃度の関数として測定し、抗原-抗体複合体の真の形成速度を記述する微分式の解を、パラメータとして結合速度定数ka、平衡解離定数Kd、および平均結合部位数Bmaxを用いて実験データポイントに適合させた。細胞500万個/ml、4つの濃度の125I-標識抗体(100 ng/ml、1000 ng/ml、5000 ng/ml、および10000 ng/ml)および7つのインキュベーション時点(5分、10分、20分、30分、1時間、1.5時間、および2時間)を用いた。インキュベーション後、細胞をPBSによって2回洗浄した後、γカウンターにおいて計数した。
【0126】
実施例3−細胞に結合した抗体の保持
Raji細胞、Rael細胞およびDaudi細胞を、111In-HH1、111In-リツキシマブ、125I-HH1、および125I-リツキシマブと共にインキュベートした後に、洗浄の直後および96時間後において細胞に結合した抗体の保持を測定した(図1)。
【0127】
10%仔ウシ胎児血清、1%L-グルタミン、および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有するRPMI 1640培地1 ml中で、細胞100万個を1 μg/ml 125Iまたは111Inで標識したHH1またはリツキシマブと共に1時間インキュベートし、培地によって2回洗浄し、さらに4日間インキュベートした。洗浄直後(図1A)および4日間インキュベーション後(図1B)に、細胞数を測定(Vi Cell Viability Analyzer, Beckman Coulter, Fullerton, CA, USA)することによって、および校正したγ検出器(Cobra II自動γ検出器、Packard Instrument Company, Meriden, CT, USA)によって放射活性量を測定することによって、細胞への結合活性を決定した。
【0128】
実施例4−177Lu-HH1または177Lu-リツキシマブによるインビトロでのリンパ腫細胞の処置
実験I:Daudi細胞に対する177Lu-HH1の結合
Daudi細胞浮遊液1 ml(細胞100万個/ml)を24本の試験管に播種して、試験管の半数を100 μg/ml HH1またはリツキシマブによってブロックして、37℃で30分間インキュベートした。次に、各試験管に177Lu-HH1または177Lu-リツキシマブのいずれかを最終濃度0、1、2.5、5、10、または20μg/mlとなるように加えて37℃でさらにインキュベートした。比放射能は、177Lu-HH1に関しては91.6 kBq/μgであり、177Lu-リツキシマブに関しては136.6 kBq/μgであった。
【0129】
加えられた放射能の量を、γ検出器(Cobra II自動γ検出器、Packard Instrument Company)によってインキュベーション期間中に測定した。細胞の半分は2時間後に洗浄して細胞に結合した放射能を測定し(図2A)、細胞の半分は終夜(18時間)インキュベートした後に洗浄して細胞に結合した放射能を測定した(図2B)。
【0130】
細胞に結合した放射能は、2時間のインキュベーション後においては、HH1と共にインキュベートした細胞と、リツキシマブと共にインキュベートした細胞の間に差はなかったが、18時間のインキュベーション後においては、リツキシマブと共にインキュベートした細胞では、HH1と共にインキュベートした細胞より2倍高かった(図2)。
【0131】
表3および4は、放射標識HH1が、リツキシマブより速やかにしかも低い抗体濃度で抗原を飽和することを示している。非特異的結合は、2つの放射免疫コンジュゲート(RIC)に関してほぼ同等であるようであり、これは培地中のRIC濃度が増加すると増加する。
【0132】
特異的に結合した177Luの最大数は、HH1と比較してリツキシマブでは約2倍大きかった。しかし、用量1 μg/mlでは特異的に結合した放射活性原子の数にほとんど差がなかった。
【0133】
実験II:177Lu-IgGとの2時間のインキュベーション:細胞増殖データ
Daudi細胞を実験Iと同様に放射免疫コンジュゲートと共にインキュベートした(図2A)。
【0134】
177Lu-HH1または177Lu-リツキシマブと共に2時間インキュベーションした後のDaudi細胞の増殖を、各試験管からの細胞50,000個を12ウェルプレート6枚においてウェル3個に播種することによって測定した。細胞の量を、翌14日間のいくつかの時点で、自動撮像システム(Clone Select Imager, Gentix Ltd, Hampshire, UK)を用いて測定した。
【0135】
非標識抗体単独では、細胞の増殖に効果を及ぼさなかった。しかし、ブロックされた細胞を177Lu-抗体によって処置したものは明らかに、無処置の対照細胞ほど急速には増殖せず、このことは結合しなかった177Lu-抗体または非特異的に結合した177Lu-抗体が細胞に効果を及ぼしたことを示している(図3)。
【0136】
ブロックされていない細胞を177Lu-抗体によって処置すると、増殖の遅れが、10μg/ml 177Lu-HH1によって処置した細胞では44%大きくなり(図3A)、10μg/ml 177Lu-リツキシマブによって処置した細胞では31%大きくなった(図3B)。
【0137】
20 μg/mlによる処置では、177Lu-HH1によって処置した細胞では再増殖が見られなかったことから、2つの抗体のあいだの差は、さらに大きかった。細胞を標識した抗体量は同じであった(図2A)ことから、この結果は予想外であった。
【0138】
実験III:177Lu-IgGによる18時間インキュベーション:細胞増殖データ。
Daudi細胞を実験Iと同様に放射免疫コンジュゲートと共にインキュベートした(図2B)。177Lu-HH1または177Lu-リツキシマブと共に18時間インキュベートした後のDaudi細胞の増殖を、各試験管からの細胞50,000個を12ウェルプレート6枚において3つのウェルに播種することによって測定した。
【0139】
細胞の量を、自動撮像システム(Clone Select Imager, Gentix Ltd, Hampshire, UK)を用いて、翌14日間に数回の時点で測定した。非標識抗体単独では、細胞増殖に対して効果を及ぼさなかった。
【0140】
ブロックされた細胞を177Lu-抗体によって処置したものに対する細胞増殖阻害は、この実験(図4)では、培地中での放射免疫コンジュゲートとのインキュベーション時間が16時間増加したために、実験II(図3)より大きかった。
【0141】
ブロックされていない細胞を177Lu-抗体によって処置すると、増殖の遅れが、2.5 μg/ml 177Lu-HH1によって処置した細胞では107%大きくなり(図4A)、2.5μg/ml177Lu-リツキシマブによって処置した細胞に関して52%大きくなった(図4B)。この結果は、18時間のインキュベーション後では、177Lu-リツキシマブによって標識した細胞は、177Lu-HH1によって標識した細胞(図2B)に関する細胞に結合した放射能より2倍多かったことから予想外であった。
【0142】
実施例5−HH1の生体分布
111In-標識HH1の生体分布を、試験開始時32〜256 mm3の大きさのDaudi異種移植片を有するBALB/cヌード(nu/nu)マウスにおいて調べた。
【0143】
二官能キレート化剤としてpSCN-Bz-DOTAを用いて、放射性核種と複合体を形成させて、これを抗体に付着させることによって、放射標識を行った(実施例1を参照されたい)。調製物を、各動物に溶液100μlの尾静脈注射によって投与した。
【0144】
各動物に、放射能120 kBqを注射した。1時点あたり動物5匹を用いた。注射後の様々な時点で頸椎脱臼後に剖検を行った。各組織試料の重量を決定して、校正したγ検出器(Cobra II自動γ検出器、Packard Instrument Company, Meriden, CT, USA)によって111Inを測定した。注入物の試料を、測定技法の基準として用いた。
【0145】
Daudi異種移植片を有するマウスに注射後24時間での111In-HH1の取込みおよび正常組織における生体分布を図5に表す。放射標識抗体は、妥当な腫瘍標的化および生体分布を有する。キレート化剤-コンジュゲート111In-HH1は、インビボで良好な安定性を示す。
【0146】
実施例6−HH1と他の3つの抗CD37抗体との比較
実験I:放射標識HH1に対する抗CD37抗体の抗原ブロック能
HH1抗原相互作用を、他の抗CD37抗体によってブロックすることができるか否かを調べるために、Daudi細胞を、HH1、O.N.108、IPO-24、または6D263抗体のいずれかとのプレインキュベーションによってブロックした。Daudi細胞(200万個/ml)をHH1、O.N.108、IPO-24、または6D263抗体(20μg/ml)のいずれかと共に15分間インキュベートし、125I-標識HH1抗体を加えて1時間インキュベートした。
【0147】
その後、細胞を遠心沈降させて3回洗浄し、上清および細胞沈降物中の放射能をX-線/γカウンターを用いて計数した。HH1でブロックされた細胞と比較すると、125I-標識HH1の結合率は、O.N.108、IPO-24、または6D263でブロックされた細胞に関してそれぞれ48%、44%、および51%高かった。
【0148】
このように、125I-HH1の抗原結合は、HH1によって他の3つの抗体より良好にブロックされ、このことは抗原相互作用に何らかの差があることを示唆している。結論すると、HH1は、他の3つの抗CD37モノクローナル抗体のパネルと比較して有意に異なる抗原結合特性を有する。
【0149】
実験II:パラフィン包埋リンパ腫組織試料に対する抗体の結合
HH1および市販の3つのCD37抗体の固定リンパ腫試料に対する結合能を比較するために、リンパ腫患者からの生検をホルマリン中で固定して、パラフィンに包埋し、10μmの切片に切断して、これを対物ガラスに載せた。
【0150】
試料を抗体HH1、IPO.24、ON.108、および6D263抗体によって標識して、標識の程度を、ウサギ抗マウスポリクローナル抗体およびペルオキシダーゼ染色を用いて検出した。
【0151】
抗体IPO.24およびON.108によって、リンパ腫試料の最も強い標識が起こった。6D263抗体による試料の標識はいくぶん弱かった。切片のHH1抗体による標識は有意ではなかった。
【0152】
このように、HH1は結合しなかったが、他の3つの抗CD37抗体は結合したことから、HH1は有意に異なる抗原相互作用を有すると結論することができる。
【0153】
実験III:HH1、IPO.24、ON.108、および6D263抗体のフローサイトメトリー
HH1によって検出された抗原発現と、異なるCD37抗体によって検出された抗原発現との差を調べるために、Daudi細胞を、5%仔ウシ胎児血清を有するRPMI 1640培地によって2回洗浄して、氷中で10%FCSを有する培地0.2 ml中で10μg/mlの一次抗体HH1、IPO.24、ON.108、および6D363によって0.5時間標識した。
【0154】
次に細胞を、0.25%FCSを有するPBSによって2回洗浄して、FITC標識ポリクローナルウサギ抗マウスIgG Fab'2(1:20希釈)によって氷中で0.5時間標識した(図6)。FITC標識からの蛍光を、フローサイトメーターにおいて488 nmレーザーによって励起することによって検出した。
【0155】
死細胞およびダブレットを、前方散乱、側方散乱、およびヨウ化プロピジウムシグナルを用いてゲート設定することにより除去した。様々なCD37抗体の異なるFITCヒストグラムに有意な変動を認めなかった(図6)。
【0156】
結論すると、HH1および他の3つの抗CD37抗体IPO.24、ON.108、および6D363は、類似のフローサイトメトリーヒストグラムを生じる。
【0157】
実験IV:HH1および市販の3つの抗CD37抗体の結合率。
HH1の結合率をO.N.108、IPO-24、または6D263抗体(Santa Cruz Biotechnology)と比較するためにDaudi細胞を用いた。大過剰の抗原を発現する、5%仔ウシ胎児血清を有するRPMI 1640培地0.2 ml中のDaudi細胞6000万個からなる細胞浮遊液を、抗体の非特異的結合を説明するために、HH1、O.N.108、IPO-24、または6D263抗体(500μg/ml)によって15分間ブロックした。他の並行実験はブロックしなかった。
【0158】
続いて、125Iで標識したHH1、O.N.108、IPO-24、または6D263抗体(5〜10 ng/ml)を加え、細胞を軽く振とうさせながら4℃で2時間インキュベートした。次に、細胞を遠心沈降させて、1%FCSを有するPBSによって2回洗浄した。細胞沈降物をきれいな試験管に移して、γカウンターを用いて計数した。
【0159】
加えた放射能に対する、ブロックされていないバイアルおよびブロックされたバイアルの放射能の差として、結合率を決定した。HH1は、他のCD37抗体と比較してかなり高い結合率を示した(表5)。結論すると、HH1は、抗体を類似の様式で放射標識した場合に、IPO.24、ON.108、および6D363と比較して、生きている細胞に対してかなり高い免疫反応性を示した。この結果は、HH1が、他の3つの抗体とは異なる抗原相互作用を有することを示している。
【0160】
実施例7−軽鎖および重鎖可変領域のDNA配列およびアミノ酸配列
HH1抗CD37抗体の可変領域の遺伝子配列およびタンパク質配列は以下のとおりである:
VHαCD37遺伝子配列はSEQ ID NO:1に対応し、VHαCD37タンパク質配列はSEQ ID NO:2に対応する。

【0161】
VLαCD37遺伝子配列はSEQ ID NO:3に対応し、VLαCD37タンパク質配列はSEQ ID NO:4に対応する。

【0162】
アミノ酸配列は、CD37結合抗体A0のアミノ酸配列とは有意に異なる(Heider et al., 2009)。HH1の可変軽鎖とA0とのオーバーラップは56%であるが、可変重鎖とのオーバーラップは82%である。
【0163】
実施例8−CD20抗体リツキシマブによって飽和した細胞における放射標識HH1の結合
背景
非ホジキンリンパ腫患者はしばしば、標準治療としてリツキシマブを投与される。たとえリツキシマブ療法を受けている患者であっても、放射標識HH1を用いることができれば有利であろう。CD20抗原とCD37抗原の双方を発現するDaudiリンパ腫細胞をモデルとして用いた。
【0164】
方法
Daudiリンパ腫細胞(330万個/0.5 ml)を過剰量のリツキシマブ(100μg/ml)によって前処置および同時処置のいずれかを5分間行った後、125I-標識HH1 1μgを加えたか、またはリツキシマブ前処置を行わずに125I-標識HH1を与えた。125I-HH1の非特異的結合を決定するために、上記と同じ構成であるが標識していないHH1(10 μg/mlを用いた)による前処置を行った。細胞をPBS中で室温で2時間インキュベートしてγカウンターで計数し、PBS 1 ml中で3回洗浄後、遠心沈降させて、細胞に結合した放射活性を最終的に再度計数した。
【0165】
結果
リツキシマブの前処置/同時処置によって、加えた125I-HH1の26.0%(総結合27.4%−非特異的結合1.4%)が細胞に特異的に結合した。
【0166】
リツキシマブの前処置/同時処置を行わない場合、25.5%(26.9−1.4)が特異的に結合した(数字は全て3回の並行実験の平均値を表す)。すなわち、125I-HH1の結合において、リツキシマブの存在による有意な差はなかった。
【0167】
結論
過剰量のリツキシマブによって前処置および同時処置しても、放射標識HH1の細胞への結合能は変化せず、このようにCD37抗原に対するアクセスを遮断しなかった。
【0168】
このことは、放射標識HH1による放射免疫療法が、抗CD20抗体による免疫療法後または療法中の患者ならびにリツキシマブによって処置していない患者において適している可能性があることを示している。
【0169】
実施例9−Daudiリンパ腫細胞を静脈内に接種したSCIDマウスの177Lu-HH1を用いた処置
背景
現行のCD20に対する放射免疫療法によるリンパ腫患者の処置は、抗原ドリフトおよびCD20抗原の起こりうるブロックのために、リツキシマブによって既に処置された患者において問題でありうる。それゆえ、他の抗原を標的とする放射免疫療法がより有効である可能性がある。重度の複合免疫欠損(SCID)マウスにヒトリンパ腫細胞を静脈内注射することにより、本発明者らは、静脈内腫瘍モデルを作製した。SCIDマウスにDaudiリンパ腫細胞を静脈内に接種すると、マウスは、Daudi腫瘍細胞の増殖により後肢麻痺を発症するであろう。
【0170】
実験
SCIDマウスに、Daudi細胞1000万個を静脈内注射した1週間後に50または100 MBq/kgの177Lu-HH1、50 μg HH1、50 μgリツキシマブ、またはNaClを投与した。マウスを後肢の麻痺および体重減少ならびにWBC数に関して2週間毎にモニターした。無症状生存期間の停止をエンドポイントとして用いた。放射標識抗体を調製するために、まずHH1をp-SCN-Bn-DOTAによって標識して精製した。緩衝液を交換した後、177Lu(Perkin Elmer, Boston, Ma, USA)をDOTA-HH1に加えて、40℃で40分間振とうした。最終産物の比放射能はおよそ3200 MBq/mkgであった。各調製物を等張食塩水に溶解し、注射全量を100μl/動物とした。
【0171】
結果
無症状生存期間の中央値は、食塩水では26日(範囲21日〜33日)、HH1では40日(範囲23〜44日)、リツキシマブでは40日(33〜44日)であった(図8)。50 kBq/kg 177Lu-HH1では動物の80%が79日後に生存していた。100 kBq/g群のマウス2匹は、食塩水群のいかなる動物も死亡するより前に死亡し、血球計算により放射線毒性が示された。100 kBq/g群の第3の動物は49日目に死亡した。他の動物(70%)は、79日目で生存していた。177Lu-HH1によって処置したマウスの生存率は、NaCl、HH1、またはリツキシマブによって処置したマウスの生存率より有意に高かった(p<0.005、マンホイトニーログランク検定)。
【0172】
結論
データは、177Lu-HH1を50または100 kBq/g体重の用量で投与された群が、食塩水を投与された群またはHH1もしくはリツキシマブによる免疫療法を受けた群より極めて良好な生存を有したことを示している。毒性のデータは、放射能を100 kBq/g体重より下に維持すべきであることを示している。これらのデータは、177Lu-HH1がインビボ放射免疫療法に関して妥当な特性を有することを示している。
【0173】
実施例10−CD37発現腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける177Lu-HH1の生体分布
背景
ルテチウム177標識HH1抗体をインビボ組織分布および腫瘍標的化に関して評価した。
【0174】
実験技法
放射性核種による抗体の標識
まず抗体をキレート化剤p-SCN-Bn-DOTAによって標識した。DOTAを0.05 M HCl中に溶解し、5:1の比率で抗体に加え、分子量カットオフ30 kDaのAmicon遠心フィルター(Millipore, USA)を用いて炭酸緩衝液により洗浄することによってpHを8〜9に調節した。
【0175】
次に、pHを再度チェックして、必要であれば調節した。溶液を室温で60分間振とうさせた後、200 mMグリシン溶液50μl(抗体1 mgあたり)を加えることによって反応を終了させた。遊離のキレート化剤を除去するために、コンジュゲートした抗体をPBS(PAA)によって4〜5回洗浄した後(Amiconを用いて遠心)、酢酸アンモニウムによる洗浄によってpH 5に調節した。177Lu(Perkin Elmer, Boston, Ma, USA)を、2 mlポリプロピレン試験管(Eppendorf, Germany)中でDOTA-HH1 0.5 mgと混合して、40℃で1時間振とうさせた。比放射能は、177Lu-コンジュゲートに関して典型的に25〜120 MBq/kgであった。
【0176】
免疫反応性
放射免疫コンジュゲートの質を、リンパ腫細胞および改変Lindmo法を用いて測定した。細胞108個/mlまでの細胞濃度を用いた。実験に用いたコンジュゲートは、50%超の免疫反応性を有した。
【0177】
放射免疫コンジュゲートの生体分布
177Lu-HH1の生体分布を、3週間前に1×1×1 mmのDaudi腫瘍異種移植片を埋め込んだ雄性BALB/cヌード(nu/nu)マウスにおいて決定した。調製物を、各動物に溶液100μlの尾静脈注射により投与した。177Lu-HH1に関してマウス1匹あたり500 kBqの平均放射能であった。動物4匹から5匹を各時点で用いた。注射後の様々な時点で頸椎脱臼後に剖検を行った。各組織試料の重量を決定して、校正したγ検出器(Cobra II自動γ検出器、Packard Instrument Company, Meriden, CT, USA)によって177Luを測定した。注入物の試料を、測定技法の基準として用いた。
【0178】
結果および考察
Daudi異種移植片を有するBALB/cヌード(nu/nu)雌性マウスの正常組織における177Lu-標識HH1の取込みおよび保持を図7に表す。放射免疫コンジュゲートの初回取込み後に任意の臓器から/任意の臓器に核種が再分布する徴候は認められなかったが、このことは放射免疫コンジュゲートが安定であったことを示している。
【0179】
腫瘍を有するヌードマウスに177Lu-HH1を注射すると、骨での低い取込みを示した。遊離の177Luは骨に蓄積することが知られ、そのためこの結果は、放射免疫コンジュゲートがインビボで安定であったことを示している。腫瘍での取込みは、後の時点で他の臓器より有意に高かった。
【0180】
このことは、177LuがHH1抗体を用いる放射免疫療法に関して妥当な半減期を有することを示している。
【0181】
177Lu-HH1の生体分布は、正常組織における妥当な取込みおよびクリアランス、ならびにCD37を発現している腫瘍異種移植片における有意な保持を示す。
【0182】
HH1抗体は、放射免疫療法にとって十分に適しているように思われる。177Lu-HH1コンジュゲートは、放射性核種の大部分が崩壊する前に、腫瘍と正常組織との好ましい比率が得られたことから、特に適しているように思われる。
【0183】

(表1)放射免疫コンジュゲートの免疫反応性および比放射能

【0184】
(表2)抗体リツキシマブおよびHH1に関する、Raji細胞、Rael細胞、およびDaudi細胞における平均抗原数(Bmax)、平衡解離定数(Kd)、ならびに結合速度定数(ka

【0185】
(表3)2時間インキュベーション後のDaudi細胞1個あたりに結合した177Lu原子数

a 対照試料の異なる計数は、カウンターに対するバックグラウンド放射線の変動を示している)
【0186】
(表4)18時間インキュベーション後のDaudi細胞1個あたりに結合した177Lu原子数

【0187】
(表5)4つの抗CD37抗体の結合率

【0188】
参考文献




【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)マウスモノクローナル抗体HH1、
b)リンカー、ならびに
c)177Lu、211At、213Bi、212Bi、212Pb、225Ac、227Th、90Y、186Re、188Re、199Au、194Ir、166Ho、159Gd、153Sm、149Pm、142Pr、111Ag、109Pd、77As、67Cu、および47Scからなる群より選択される放射性核種
を含む、ヒトCD37に結合する放射免疫コンジュゲート。
【請求項2】
リンカーがキレート化リンカーである、請求項1記載のCD37結合放射免疫コンジュゲート。
【請求項3】
放射性核種が177Luである、請求項1または2記載のCD37結合放射免疫コンジュゲート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の放射免疫コンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項5】
1つまたは複数の追加の抗体または放射免疫コンジュゲートをさらに含む、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
1つまたは複数の追加の抗体または放射免疫コンジュゲートがCD20を標的とする、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
CD37抗原を発現するB細胞悪性細胞を処置するための、請求項4〜6のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項8】
非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病を処置するための、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
B細胞悪性腫瘍を処置するための、請求項1〜3のいずれか一項記載の放射免疫コンジュゲートの使用。
【請求項10】
放射免疫コンジュゲートが、他の治療と組み合わせて、または他の治療に加えて投与される、請求項9記載の使用。
【請求項11】
前記治療が前処置、化学療法、モノクローナル抗体療法、手術、放射線療法、および/または光力学療法から選択される、請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記治療が、請求項1〜3のいずれか一項記載の放射免疫コンジュゲートによる処置の前に、抗CD20モノクローナル抗体および/または抗CD37モノクローナル抗体を用いる前処置を含む、請求項10または11記載の使用。
【請求項13】
請求項4〜8のいずれか一項記載の薬学的組成物の有効量の投与を含む、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病から選択されるB細胞悪性腫瘍を処置するための方法。
【請求項14】
1つのバイアルがマウスモノクローナル抗体HH1に連結されたキレート化剤を含むコンジュゲートを含有し、第二のバイアルが放射性核種を含有する、2つまたはそれより多くのバイアルを含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の放射免疫コンジュゲートを産生するためのキット。
【請求項15】
1つまたはいくつかのバイアルの内容物が、凍結乾燥されているかまたは溶液であるかのいずれかである、請求項14記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−518086(P2013−518086A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550464(P2012−550464)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051231
【国際公開番号】WO2011/092295
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512197261)
【Fターム(参考)】