説明

放射性ダストモニタ

【課題】試料ガスに含まれるダストをサクションヘッド上の濾紙で捕集する際に、サクションヘッドから離れたところで試料ガスを噴出するため、ダストがサクションヘッドに至るまでに飛散することが無視できず、試料の代表性に問題があった。
【解決手段】放射性ダストモニタにおいて、ダストを含む試料ガスを導入管12を通じて気密ボックス70内に取り込み、そのガス噴出口16をダスト捕集手段20であるサクションヘッド22の上面に吸入細孔222と近接して配置し、ガス噴出口16から噴出した試料ガスに含まれるダストをサクションヘッド22上を移動する濾紙21で捕集し、ダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を放射線検出器31で検出して、放射能濃度を算出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所や使用済燃料再処理施設等において、ダストを含む試料ガスを捕集し、捕集したダストに含まれる粒子状放射性物質の放射能濃度を測定する放射性ダストモニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や使用済燃料再処理施設等において、ダストを含む試料ガスをサンプリングして連続的または間欠的に移動する濾紙上にダストを捕集し、捕集したダストに含まれる粒子状放射性物質から放出される放射線を検出して粒子状放射性物質の放射能濃度を測定する放射性ダストモニタが知られている。
【0003】
このような放射性ダストモニタにおいて、従来は、図5に示すように、入口弁11、導入管12および入気ヒータ13からなり、ダストを含む試料ガスを箱体の気密ボックス70に取り込むガス取り込み手段10、捕集材としてロール状に巻いた濾紙21と、試料ガスを吸引して試料ガスに含まれるダストを濾紙21上に捕集するサクションヘッド22と、濾紙21を連続的または間欠的に駆動する濾紙駆動機構23とで構成されたダスト捕集手段20、濾紙21に対向して設けられ、濾紙21に捕集されたダストに含まれる粒子状放射性物質から放出される放射線を検出する放射線検出器31、サクションヘッド22を囲繞するように配置された下部遮蔽体41と、放射線検出器31を囲繞するように配置された上部遮蔽体42と、下部遮蔽体41と上部遮蔽体42の間に配置され中間遮蔽体43とで構成された遮蔽手段40、ダスト捕集手段20でダストを捕集した後の試料ガスを排出するために排出管53とポンプ54と出口弁55からなる試料ガス排出手段50を備えている。(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
このような構成により、ガス取り込み手段10の導入管12の先端であるガス噴出口12aから試料ガスを噴出させ、この試料ガスのダストをダスト捕集手段20のサクションヘッド22上の濾紙21で捕集し、濾紙21に付着したダストから放出される粒子状放射性物質の放射線を放射線検出器31で検出する。放射線検出器31で検出された放射線の計測データは計測・制御部60に送られ、試料ガス排出手段50に設けられた圧力計56と流量計57で測定されたサンプリング試料ガスの圧力及び流量のデータを基に、計測・制御部60で放射性同位元素の放射能濃度が演算されて出力される。
【0005】
さらに、特許文献1では、ガス取り込み手段10およびサクションヘッド22にヒータ13(サクションヘッド22のヒータは図示省略)を設けると共に、気密ボックス70に除湿装置(図示省略)を設けて、低湿度の環境とすることで腐食性ガスによる生成物の発生を防止している。
また、特許文献2では、図5および図6に示すように、ダスト捕集手段20と遮蔽手段40の下部遮蔽体41を支持台75に支持し、この支持台75をスライド機構76により気密ボックス70から一体に引き出し可能にして、ダスト捕集手段20で使用される濾紙21の交換作業およびサクションヘッド22の清掃作業などのメンテンナスを容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−331380号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2006−64657号公報(図1、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の放射性ダストモニタは以上のように構成されており、試料ガス取り込み手段10で導入された試料ガスは、ダスト捕集部20のサクションヘッド22を囲繞する下部遮蔽体41とその上部に位置する中間遮蔽体43の隙間近傍で、導入管12の開放先端であるガス噴出口12aから噴出させ、その隙間を通してサクションヘッド22上の濾紙21でダストを捕集している。このようにサクションヘッド22から離れたところで試料ガスを噴出するため、試料ガスに含まれるダストがサクションヘッド22に至るまでに飛散することが無視できず、試料の代表性に問題があった。
また、濾紙21が吸湿するのを防止するためにヒータ13で試料ガスを加熱しているが、試料ガスが遮蔽手段40の下部遮蔽体41と中間遮蔽体43との隙間を通過する際に温度が低下するという問題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、捕集前の測定対象のダストの飛散を抑制し、ヒータからサクションヘッドの間の試料ガスの温度低下を抑制した高信頼の放射性ダストモニタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の放射性ダストモニタは、ダストを含む試料ガスをサンプリングして取り込む試料ガス取込手段と、この試料ガス取込手段で取り込んだ試料ガスに含まれるダストを、多数の吸入細孔を有するサクションヘッド上を移動する捕集材上に捕集するダスト捕集手段と、このダスト捕集手段で捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を検出する放射線検出手段と、この放射線検出手段で検出した放射線の検出信号から放射能濃度を算出する計測・制御部と、環境放射線から放射線検出手段およびダスト捕集手段のサクションヘッドを遮蔽する遮蔽手段と、遮蔽手段の一部とダスト捕集手段を搭載して移動させるスライド手段と、ダスト捕集手段を気密に収納する気密ボックスと、ダスト捕集手段でダストを捕集した後の試料ガスを排出する試料ガス排出手段とを備え、試料ガス取込手段は、気密ボックスに設けられたボックス入口に接続された導入フレキシブルホースと、この導入フレキシブルホースに接続されて遮蔽手段を貫通する固定ホースと、この固定ホースに接続されサクションヘッドの上面に吸入細孔と近接して配置して一体的に設けられたガス噴出口とで構成し、試料ガス排出手段は、サクションヘッドの下部に接続されて遮蔽手段を貫通する固定ホースと、この固定ホースと気密ボックスに設けられたボックス出口とを接続する排出フレキシブルホースとで構成したものである。
【0010】
また、この発明の放射性ダストモニタは、ダストを含む試料ガスをサンプリングして取り込む試料ガス取込手段と、この試料ガス取込手段で取り込んだ試料ガスに含まれるダストを、多数の吸入細孔を有するサクションヘッド上を移動する捕集材上に捕集するダスト捕集手段と、このダスト捕集手段で捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を検出する放射線検出手段と、この放射線検出手段で検出した放射線の検出信号から放射能濃度を算出する計測・制御部と、環境放射線から放射線検出手段およびダスト捕集手段のサクションヘッドを遮蔽する遮蔽手段と、遮蔽手段の一部とダスト捕集手段を搭載して移動させるスライド手段と、ダスト捕集手段を気密に収納する気密ボックスと、ダスト捕集手段でダストを捕集した後の試料ガスを排出する試料ガス排出手段とを備え、試料ガス取込手段は、サクションヘッド及び遮蔽手段の一部に設けられた切り欠きに固定配管を立ち上げて、その先端をサクションヘッドの吸入細孔に近接配置して構成したガス噴出口と、このガス噴出口と気密ボックスに設けられたボックス入口とを接続して遮蔽手段を貫通する固定ホースとで構成し、試料ガス排出手段は、サクションヘッドの下部に接続されて遮蔽手段を貫通する固定ホースと、この固定ホースと気密ボックスに設けられたボックス出口とを接続する排出フレキシブルホースとで構成したものである。
【0011】
また、この発明の放射性ダストモニタは、ダストを含む試料ガスをサンプリングして取り込む試料ガス取込手段と、この試料ガス取込手段で取り込んだ試料ガスに含まれるダストを、多数の吸入細孔を有するサクションヘッド上を移動する捕集材上に捕集するダスト捕集手段と、このダスト捕集手段で捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を検出する放射線検出手段と、この放射線検出手段で検出した放射線の検出信号から放射能濃度を算出する計測・制御部と、環境放射線から放射線検出手段およびダスト捕集手段のサクションヘッドを遮蔽する遮蔽手段と、遮蔽手段の一部とダスト捕集手段を搭載して移動させるスライド手段と、ダスト捕集手段を気密に収納する気密ボックスと、ダスト捕集手段でダストを捕集した後の試料ガスを排出する試料ガス排出手段とを備え、試料ガス取込手段は、放射線検出手段を遮蔽する遮蔽手段の側壁を貫通するガス導入管と、このガス導入管の先端を放射線検出手段の側面と遮蔽手段の間の空間に設けたガス噴出口とで構成し、ガス噴出口からサクションヘッドの上面に向かって試料ガスを吹き降ろすようにすると共に、試料ガス排出手段は、サクションヘッドの下部に接続されて遮蔽手段を貫通する固定ホースと、この固定ホースと気密ボックスに設けられたボックス出口とを接続する排出フレキシブルホースとで構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明による放射性ダストモニタは、試料ガス取込手段のガス噴出口をサクションヘッドの上面に吸入細孔と近接して配置したので、捕集材上に捕集される前の測定対象のダストの飛散を抑制した高信頼の放射性ダストモニタを得ることができる。
また、発明による放射性ダストモニタは、試料ガス取込手段のガス噴出口を、放射線検出手段の側面と遮蔽手段の間の空間に設け、ガス噴出口からサクションヘッドの上面に向かって試料ガスを吹き降ろすようにしたので、サクション捕集前の測定対象のダストの飛散を抑制した高信頼の放射性ダストモニタを得ることができる。
さらに試料ガスの導入または排出にフレキシブルホースを使用してダスト捕集手段がスライドできるようにしているから、ダスト捕集手段で使用される濾紙の交換作業およびサクションヘッドの清掃作業などのメンテンナスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1の放射性ダストモニタの全体構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1の放射性ダストモニタにおけるサクションヘッドとその周辺の構成を示す上面図と側面図である。
【図3】この発明の実施の形態2の放射性ダストモニタにおけるサクションヘッドとその周辺の構成を示す上面図と側面図である。
【図4】この発明の実施の形態3の放射性ダストモニタの全体構成を示す図である。
【図5】従来の放射性ダストモニタの全体構成を示す図である。
【図6】従来の放射性ダストモニタのダスト捕集部および検出部の概観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における放射性ダストモニタを図1および図2により説明する。図1は放射性ダストモニタの全体構成を示す図であり、図2は放射性ダストモニタにおけるサクションヘッドとその周辺の構成を示す(a)上面図と(b)側面図である。
なお、図1および図2において、従来の放射性ダストモニタを示す図5と同じまたは相当する構成については同じ符号を付している。
【0015】
放射性ダストモニタは、図1に示すように、ダストを含む試料ガスをサンプリングして後述する気密ボックス70に取り込む試料ガス取込手段10と、この試料ガス取込手段1
0で取り込んだ試料ガスに含まれるダストを捕集材上に捕集するダスト捕集手段20と、このダスト捕集手段20で捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を検出する放射線検出器からなる放射線検出手段30と、環境放射線から放射線検出器およびダスト捕集手段20の一部を遮蔽する遮蔽手段40と、ダスト捕集手段20でダストを捕集した後の試料ガスを排出する試料ガス排出手段50と、放射線検出器で検出した放射線の検出信号から放射能濃度を算出する計測・制御部60と、遮蔽手段30の一部とダスト捕集手段20を気密に収納する気密ボックス70で構成される。
【0016】
試料ガス取込手段10は、入口弁11が設けられた導入管12と、この導入管12の周囲に配置されて取り込んだ試料ガスを加熱するヒータ13と、図2に示すように導入管12の取付部である気密ボックス70に設けられたボックス入口71と吸気口72との間に接続され螺旋状に巻かれた導入フレキシブルホース14と、導入フレキシブルホース14と吸気口72で接続され、遮蔽手段40の下部遮蔽体41を貫通する固定ホース15と、固定ホース15の他端に設けられたガス噴出口16で構成されている。
【0017】
試料ガス取込手段10のガス噴出口16は、ダスト捕集手段20の後述するサクションヘッド22の上面に吸入細孔222と近接して配置されている。またガス噴出口16はサクションヘッド22に穴を設けて構成することで、サクションヘッド22に一体的に設けられている。
【0018】
ダスト捕集手段20は、ダストの捕集材としてロール状に巻いた濾紙21と、試料ガスを吸引して試料ガスに含まれるダストを濾紙21上に捕集するサクションヘッド22と、濾紙21を連続的または間欠的に駆動する濾紙駆動機構23とで構成されている。
サクションヘッド22は、図2に示すように、上部は円盤状に形成され、その上面には濾紙21をガイドする濾紙ガイド溝221が設けられており、濾紙ガイド溝221の面には円盤状部を貫通する多数の密接した吸入細孔222が設けられている。サクションヘッド22の下部は濾斗状に形成され、ダストを捕集した後の試料ガスを排出する試料ガス排出手段50に接続されている。
【0019】
サクションヘッド22には、その吸入細孔222に近接してサクションヘッド22の上面に、サクションヘッド22と一体的に試料ガス取込手段10のガス噴出口16が設けられるようにされている。
試料ガス取込手段10のガス噴出口16は、遮蔽手段40の下部遮蔽体41を貫通する固定ホース15に接続され、この固定ホース15は気密ボックス70に設けられたボックス入口71と吸気口72との間に接続された導入フレキシブルホース14に接続されている。
【0020】
放射線検出手段30は、ダスト捕集手段20の濾紙21と対面して設けられた放射線検出器31で構成され、濾紙21で捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を検出する。また放射線検出器31と気密ボックス70との間に検出器筒32を設けて、気密ボックス70内の気密性を保持している。
【0021】
遮蔽手段40は、サクションヘッド22を囲繞するように配置された下部遮蔽体41と、放射線検出器31を囲繞するように配置された42と、下部遮蔽体41と上部遮蔽体42の間に配置された中間遮蔽体43とで構成され、上部遮蔽体42と中間遮蔽体43は気密ボックス70で支持されている。
放射線検出器31は、上部遮蔽体42で上面方向の環境放射線が遮蔽され、中間遮蔽体43で側面方向の環境放射線が遮蔽され、下部遮蔽体41で下面方向の環境放射線が遮蔽される。
放射線検出器31を囲む検出器筒32は、中間遮蔽体43と放射線検出器31の間に設
けられ、この検出器筒32と中間遮蔽体43をバウンダリーとして気密ボックス70の気密性を保持している。
【0022】
試料ガス排出手段50は、サクションヘッド22の下部の濾斗状に形成された部分に接続されて遮蔽手段40の下部遮蔽体41を貫通する固定ホース51と、この固定ホース51に接続されて気密ボックス70に設けられた排気口73とボックス出口74との間に設けられ螺旋状に巻かれた排出フレキシブルホース52と、ボックス出口74に接続された排出管53と、排出管53に設けられたポンプ54と出口弁55で構成されている。
なお、排出管53には、排出される試料ガスの圧力を測定する圧力計56と、試料ガスの流量を測定する流量計57が設けられている。
【0023】
計測・制御部60は、放射線検出器31で検出した放射線の検出データを受信し、また圧力計56と流量計57からサンプリングした試料ガスの圧力と流量のデータを受信し、これら放射線の検出データと試料ガスの圧力と流量のデータを基に、ダストに含まれる放射性同位元素の放射能濃度を算出する。
【0024】
気密ボックス70は、濾紙21とサクションヘッド22と濾紙駆動機構23からなるダスト捕集手段20と、遮蔽手段40の下部遮蔽体41を搭載して支持する支持台75、およびこの支持台75を移動させるためにレールとレール受けの間に設けられたベアリングからなるスライド手段76(またはローラと溝からなるスライド手段76)を収納している。
【0025】
以上のように構成されたこの発明の放射性ダストモニタの動作について説明する。
導入管12を経由してサンプリングしたダストを含む試料ガスは吸気弁11を開いて導入され、その試料ガスをヒータ13で加熱しながら、気密ボックス70の箱体に設けられたボックス入口71に取り込む。ボックス入口71に導入された試料ガスは、導入フレキシブルホース14および固定ホース15を経由して、サクションヘッド22の上面に設けられたガス噴出口16から噴出される。
ガス噴出口16から噴出される試料ガスは、図2の矢印に示すように、ガス噴出口16がサクションヘッド22の吸入細孔222に近接して配置されているので、試料ガスは周囲に飛散することなく、吸入細孔222の方に吸い込まれる。
【0026】
ガス噴出口16から噴出した試料ガスは、サクションヘッド22上を移動する濾紙21でダストが濾過されて捕集され、吸入細孔222に吸入される。
濾紙21でダストを捕集した後に吸入細孔222を通過した試料ガスは、サクションヘッド22の下部に接続された固定ホース51および排出フレキシブルホース52を経由して気密ボックス70に設けられたボックス出口74から排出される。気密ボックス70から排出された試料ガスは、排出管53を通じて排出されるが、その途中で図1に示すように圧力計56で圧力が測定され、さらに流量計57で流量が測定され、ポンプ54で昇圧されて出口弁55から排気される。
【0027】
一方、濾紙21に捕集されたダストは、濾紙21と対面する放射線検出器31で、捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線が検出され、計測・制御部60で放射線検出信号がパルス計数され、その結果に基づき工学値が演算されて出力される。
具体的には計測・制御部60は、放射線検出器31で検出した放射線の検出データと、圧力計56と流量計57で計測したサンプリング試料ガスの圧力と流量のデータとから、ダストに含まれる放射性同位元素の放射能濃度を算出する。
【0028】
なお、濾紙21はロール状に巻かれて濾紙駆動機構23に装着されて駆動されるようになっており、その駆動によりサクションヘッド22の上面に設けられた濾紙ガイド溝22
1に沿って滑りながら移動する。
したがって濾紙21に捕集されたダストに含まれる放射性物質から放出される放射線が検出された後は、濾紙21は移動されて新しい濾紙21が放射線検出器31と対面するようになる。濾紙21の移動は濾紙駆動機構23により連続的に駆動してもよいし、また間欠的に駆動してもよい。
【0029】
以上のようにして、気密ボックス70のボックス入口71から吸入された試料ガスは、導入フレキシブルホース14および固定ホース15を経由してサクションヘッド22に設けたガス噴出口16から噴出され、ガス噴出口16から噴出した試料ガスは濾紙21でダストが濾過されて吸入細孔222に吸入され、固定ホース51および排出フレキシブルホース52を経由して気密ボックス70のボックス出口74から排出される。
このように試料ガス取込手段10と試料ガス排出手段50は、試料ガスをサンプリングして循環させると共に、試料ガスの移送状況のパラメータ(圧力や流量)を計測するサンプリング手段を構成している。
【0030】
気密ボックス70の内部のスライド機構76は、下部遮蔽体41とダスト捕集部20を搭載して図2のブロック矢印に示す方向にスライドさせて移動することにより、下部遮蔽体41内側のサクションヘッド22の保守面が見える状態で濾紙21の交換ができる。
このとき、導入フレキシブルホース14及び排出フレキシブルホース52は、通常時において螺旋状に巻かれた形をしており、スライド機構76によりダスト捕集部20を移動させる際、螺旋状の巻きが伸びることによりダスト捕集部20の移動を可能としている。
【0031】
以上のように、実施形態1の発明は、サクションヘッド22の上面に吸入細孔222とガス噴出口16を近接して配置し、試料ガスをサクションヘッド22に直接的に導入するようにしたので、測定対象の試料ガスのダストの飛散を抑制でき、信頼性の高い放射性ダストモニタを得ることができる。また、気密ボックス70に導入された試料ガスは、サクションヘッド22の上面から噴出されるまでは完全に密閉されたホースまたは管で送られるため、試料ガスの温度が低下することも少ない。さらに、試料ガス取込手段10の導入フレキシブルホース14および試料ガス排出手段50の排出フレキシブルホース52は、螺旋状に巻かれ、スライド手段76の動きに応じて伸縮するようになっているから、サクションヘッド22の保守面が見える状態で濾紙21の交換が簡単にできる。
【0032】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2における放射性ダストモニタを図3により説明する。図3は放射性ダストモニタにおけるサクションヘッドとその周辺の構成を示す(a)上面図と(b)側面図である。
実施の形態1では、サクションヘッド22において、同じサクションヘッド22の上面に吸入細孔222とガス噴出口16を一体的に構成して近接配置させ、螺旋状の導入フレキシブルホース14を設けてスライド機構76の可動性を維持したが、実施の形態2の発
明はサクションヘッド22とガス噴出口16とが分離できるようにしたものである。
【0033】
図3において、サクションヘッド22の上部の円盤状の一部に切り欠き部223を設けると共に、下部遮蔽体41の一部にも切り欠き部411を設ける。このサクションヘッド22の切り欠き部223と下部遮蔽体41の切り欠き部411に、一端がL型になった固定ホース(固定配管)15を配置し、この固定ホース15の先端をガス噴出口16として、サクションヘッド22の上面に吸入細孔222と近接配置させる。
なお、固定ホース(固定配管)15は、下部遮蔽体41の切り欠き部411及びサクションヘッド22の切り欠き部223に斜めに接近させながら立ち上げて、その先端を斜めに切断してガス噴出口16とし、ガス噴出口16がサクションヘッド22の円盤面と水平になるように位置してもよい。
固定ホース(固定配管)15の他端は気密ボックス70のボックス入口71に直接接続する。また、固定ホース15を貫通させた遮蔽ブロック44を下部遮蔽体41の切り欠き部411に接近して設け、下部遮蔽体41の切り欠き部411による遮蔽性能低下を補償する。その他の構成は実施の形態1と同じにつき、同じまたは相当する部分には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0034】
以上の構成で、下部遮蔽体41内側のサクションヘッド22の保守面が見える状態で濾紙21の交換をするために、気密ボックス70の内部のスライド機構76により、下部遮蔽体41とダスト捕集部20をスライドさせて移動する場合は、ガス噴出口16を有した固定ホース15を気密ボックス70に残した形でスライド機構76を引き出し可能とする。このとき、排出フレキシブルホース52は、通常時において螺旋状に巻かれた形をしており、スライド機構76によりダスト捕集部20を移動させる際、螺旋状の巻きが伸びることによりダスト捕集部20の移動を可能とする。
一方、スライド機構76を気密ボックス70内に挿入する際は、サクションヘッド22の切り欠き部223及び下部遮蔽体41の切り欠き部411がガス噴出口16及び固定ホース15に嵌まり込むようにしてスライドさせる。
【0035】
以上のように、実施形態2の発明は、試料ガスの導入管である固定ホース15とその開放先端のガス噴出口16を固定としても、ガス噴出口16をサクションヘッド22の上面に吸入細孔222と近接して配置することができるから、測定対象の試料ガスのダストの飛散を抑制でき、信頼性の高い放射性ダストモニタを得ることができる。また、必要に応じて導入管である固定ホース15にヒータを追加することが可能になり、試料ガスに酸性腐食性ガスを含む場合に酸露点以上に維持する等の対応が広がる効果を奏する。
【0036】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3における放射性ダストモニタを図4により説明する。図4は放射性ダストモニタの全体構成を示す正面図である。
実施の形態1および実施の形態2では、サクションヘッド22の上面に吸入細孔222とガス噴出口16を近接配置させたが、実施の形態3の発明は、ガス噴出口を放射線検出器の側面と中間遮蔽体43の間の空間に設け、ガス噴出口からサクションヘッドの上面に向かって試料ガスを吹き降ろすようにしたものである。
【0037】
図4において、試料ガス取込手段10の導入管12の先端を、放射線検出器31の側面の気密ボックス70を構成する検出器筒32と中間遮蔽体43の間の空間に配置することにより、ガス噴出口17としている。なお、このガス噴出口17は、サクションヘッド22の上面に近接配置した構成とする。
このようにすることにより、ガス噴出口17から噴出された試料ガスは、中間遮蔽体43と下部遮蔽体41で閉じられた空間において、サクションヘッド22の上面に向かって吹き降ろすようになり、測定対象の試料ガスのダストの飛散を抑制することができる。なお、図4には記載していないが、気密ボックス70内の試料ガス排出手段50の構成は、図2および図3と同様に固定ホース51と排出フレキシブルホース52で構成されている。その他の構成は実施の形態1と同じにつき、同じまたは相当する部分には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0038】
以上のように、実施形態3の発明は、放射線検出器31の検出器筒32と中間遮蔽体43の間の空間に、試料ガスのガス噴出口17を設け、サクションヘッド22の上部から試料ガスを噴出させるようにしたので、測定対象のダストの飛散を抑制でき、信頼性の高い放射性ダストモニタを得ることができる。また、導入フレキシブルホース14をなくすことができ、サクションヘッド22の加工が減ることによりコスト低減できる。さらに濾紙21へのダスト捕集が均一になり、校正用線源の均一性が再現できるため測定精度が向上する効果を奏する。
【符号の説明】
【0039】
10:試料ガス取込手段
11:吸気弁 12:導入管
13:ヒータ 14:導入フレキシブルホース
15:固定ホース 16:ガス噴出口
17:ガス噴出口
20:ダスト捕集手段
21:濾紙 22:サクションヘッド
23:濾紙駆動機構 221:濾紙ガイド溝
222:吸入細孔 223:切り欠き部
30:放射線検出手段
31:放射線検出器 32:検出器筒
40:遮蔽手段
41:下部遮蔽体 42:上部遮蔽体
43:中間遮蔽体 44:遮蔽ブロック
50:試料ガス排出手段
51:固定ホース 52:排出フレキシブルホース
53:排気管 54:ポンプ
55:出口弁 56:圧力計
57:流量計
60:計測・制御部
70:気密ボックス
71:ボックス入口 74:ボックス出口
75:支持台 75:スライド機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダストを含む試料ガスをサンプリングして取り込む試料ガス取込手段と、この試料ガス取込手段で取り込んだ試料ガスに含まれるダストを、多数の吸入細孔を有するサクションヘッド上を移動する捕集材上に捕集するダスト捕集手段と、このダスト捕集手段で捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を検出する放射線検出手段と、この放射線検出手段で検出した放射線の検出信号から放射能濃度を算出する計測・制御部と、環境放射線から上記放射線検出手段および上記ダスト捕集手段のサクションヘッドを遮蔽する遮蔽手段と、上記遮蔽手段の一部と上記ダスト捕集手段を搭載して移動させるスライド手段と、上記ダスト捕集手段を気密に収納する気密ボックスと、上記ダスト捕集手段でダストを捕集した後の試料ガスを排出する試料ガス排出手段とを備え、上記試料ガス取込手段は、上記気密ボックスに設けられたボックス入口に接続された導入フレキシブルホースと、この導入フレキシブルホースに接続されて上記遮蔽手段を貫通する固定ホースと、この固定ホースに接続され上記サクションヘッドの上面に上記吸入細孔と近接して配置して一体的に設けられたガス噴出口とで構成し、上記試料ガス排出手段は、上記サクションヘッドの下部に接続されて上記遮蔽手段を貫通する固定ホースと、この固定ホースと上記気密ボックスに設けられたボックス出口とを接続する排出フレキシブルホースとで構成したことを特徴とする放射性ダストモニタ。
【請求項2】
上記試料ガス取込手段の導入フレキシブルホースおよび上記試料ガス排出手段の排出フレキシブルホースは、螺旋状に巻かれ、上記スライド手段の動きに応じて伸縮するようにした請求項1に記載の放射性ダストモニタ。
【請求項3】
ダストを含む試料ガスをサンプリングして取り込む試料ガス取込手段と、この試料ガス取込手段で取り込んだ試料ガスに含まれるダストを、多数の吸入細孔を有するサクションヘッド上を移動する捕集材上に捕集するダスト捕集手段と、このダスト捕集手段で捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を検出する放射線検出手段と、この放射線検出手段で検出した放射線の検出信号から放射能濃度を算出する計測・制御部と、環境放射線から上記放射線検出手段および上記ダスト捕集手段のサクションヘッドを遮蔽する遮蔽手段と、上記遮蔽手段の一部と上記ダスト捕集手段を搭載して移動させるスライド手段と、上記ダスト捕集手段を気密に収納する気密ボックスと、上記ダスト捕集手段でダストを捕集した後の試料ガスを排出する試料ガス排出手段とを備え、上記試料ガス取込手段は、上記サクションヘッド及び上記遮蔽手段の一部に設けられた切り欠きに固定配管を立ち上げて、その先端を上記サクションヘッドの吸入細孔に近接配置して構成したガス噴出口と、このガス噴出口と上記気密ボックスに設けられたボックス入口とを接続して上記遮蔽手段を貫通する固定ホースとで構成し、上記試料ガス排出手段は、上記サクションヘッドの下部に接続されて上記遮蔽手段を貫通する固定ホースと、この固定ホースと上記気密ボックスに設けられたボックス出口とを接続する排出フレキシブルホースとで構成したことを特徴とする放射性ダストモニタ。
【請求項4】
ダストを含む試料ガスをサンプリングして取り込む試料ガス取込手段と、この試料ガス取込手段で取り込んだ試料ガスに含まれるダストを、多数の吸入細孔を有するサクションヘッド上を移動する捕集材上に捕集するダスト捕集手段と、このダスト捕集手段で捕集したダストに含まれる放射性物質から放出される放射線を検出する放射線検出手段と、この放射線検出手段で検出した放射線の検出信号から放射能濃度を算出する計測・制御部と、環境放射線から上記放射線検出手段および上記ダスト捕集手段のサクションヘッドを遮蔽する遮蔽手段と、上記遮蔽手段の一部と上記ダスト捕集手段を搭載して移動させるスライド手段と、上記ダスト捕集手段を気密に収納する気密ボックスと、上記ダスト捕集手段でダストを捕集した後の試料ガスを排出する試料ガス排出手段とを備え、上記試料ガス取込手段は、上記放射線検出手段を遮蔽する上記遮蔽手段の側壁を貫通するガス導入管と、こ
のガス導入管の先端を上記放射線検出手段の側面と上記遮蔽手段の間の空間に設けたガス噴出口とで構成し、上記ガス噴出口から上記サクションヘッドの上面に向かって試料ガスを吹き降ろすようにすると共に、上記試料ガス排出手段は、上記サクションヘッドの下部に接続されて上記遮蔽手段を貫通する固定ホースと、この固定ホースと上記気密ボックスに設けられたボックス出口とを接続する排出フレキシブルホースとで構成したことを特徴とする放射性ダストモニタ。
【請求項5】
上記ダスト捕集手段は、捕集材としてロール状に巻いた濾紙と、試料ガスを吸引して試料ガスに含まれるダストを濾紙上に捕集するサクションヘッドと、上記濾紙を連続的または間欠的に駆動する濾紙駆動機構とで構成された請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の放射性ダストモニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2940(P2013−2940A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133993(P2011−133993)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】