説明

放射線モニタ装置及びモニタ方法

【課題】ろ紙集塵部からのバイパスリーク量を高精度で算出することにより、ダスト放射線濃度を正確に測定する。
【解決手段】サンプリング気体をダスト放射線モニタの本体部1内に導くサンプリング配管9と、前記サンプリング配管9に設けられサンプリング気体中のダストを捕集するろ紙集塵部7a及び放射線検出器8と、前記ろ紙集塵部7aの上流側のサンプリング配管9aに設置された三方切換弁10と、前記ろ紙集塵部7aの下流側のサンプリング配管9bに設置された第1の流量計と、前記本体部1内の空気を第2の流量計を介して前記三方切換弁10に導く本体部内配管16と、前記第1の流量計と第2の流量計の測定値に基づいてバイパスリーク量を算出し前記ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求める演算部13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所等の放射線源取り扱い施設で使用され、施設内の空気に含まれるダストの放射能濃度を測定する放射線モニタ装置及びモニタ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の放射線を取り扱い施設では、施設内の空気中に含まれる粒子状放射性物質(以下、「ダスト」という。)の放射能濃度を測定するダスト放射線モニタ装置が使用されている。
【0003】
従来のダスト放射線モニタでは、図3に示すように、ダストを含む試料空気はサンプリング配管9を介して放射線モニタ装置の本体1内に導入され、サンプリング配管9の途中に設けられた巻き取り可能なろ紙7に空気中のダストを集塵させ、放射線検出器8によりその放射能濃度を測定している。
【0004】
このような放射線モニタ装置では、モニタリング箇所以外の空気の流入を阻止し、試料空気のみを測定するために気密保持する必要があり、例えば、図3に示すようにダストをろ紙7に集塵する際に駆動機構により押圧用突起部14をろ紙を介してシール部15に押圧して集塵部の気密性を確保する手段(特許文献1)、及び放射線モニタ装置の本体を気密容器内に収納する手段(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−162319号公報
【特許文献2】特開2000−214312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のダスト放射線モニタ装置において、放射線モニタ装置の本体を気密容器内に収納するためには大型の気密容器が必要となり、装置が大型化するという課題がある。
【0007】
また、ろ紙をシール部材で挟み込むことにより集塵部のみを気密を保つようにした放射線測定方法は、ろ紙とシール部材の接触面でリーク(バイパスリーク)が多少なりとも発生するため、正確な放射線濃度を測定することができない。そのために、ろ紙の上流側に流量計を設置し、放射性ダストを集塵する前の流量を測定し、その測定値を用いて放射能濃度測定を行えば、バイパスリークを考慮はしなくても済む。しかしながら、流量計として一般に用いられている熱式流量計は、ダストにより測定誤差が生じ、正確な流量測定ができなくなるという課題があった。
【0008】
したがって、現状では、ろ紙の下流側に流量計を配置することにより流量を測定し、その流量を用いて放射能濃度の測定を行っている。その場合、バイパスリークが微少な場合でも、また、ろ紙の押圧箇所が損傷などしてバイパスリークが大きくなった場合でも、その状態は検知されず、正確な放射線測定ができないという課題がある。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたもので、ろ紙集塵部からのバイパスリーク量を高精度で算出することにより、ダスト放射線濃度を正確に測定することができる放射線モニタ装置及びモニタ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る放射線モニタ装置は、サンプリング気体をダスト放射線モニタの本体部内に導くサンプリング配管と、前記サンプリング配管に設けられサンプリング気体中のダストを捕集するろ紙集塵部及び放射線検出器と、前記ろ紙集塵部の上流側のサンプリング配管に設置された三方切換弁と、前記ろ紙集塵部の下流側のサンプリング配管に設置された第1の流量計と、前記本体部内の空気を第2の流量計を介して前記三方切換弁に導く本体部内配管と、前記第1の流量計と第2の流量計の測定値に基づいてバイパスリーク量を算出し前記ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求める演算部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る放射線モニタ装置は、サンプリング気体をダスト放射線モニタの本体部内に導くサンプリング配管と、前記サンプリング配管に設けられサンプリング気体中のダストを捕集するろ紙集塵部及び放射線検出器と、前記ろ紙集塵部の下流側のサンプリング配管に設置された第1の流量計及び第1の圧力計と、前記ろ紙集塵部の上流側のサンプリング配管に設置された第2の圧力計及び三方切換弁と、前記本体部内の空気を第2の流量計を介して前記三方切換弁に導く本体部内配管と、前記第1及び第2の流量計と前記第1及び第2の圧力計の測定値に基づいてバイパスリーク量を算出し前記ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求める演算部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る放射線モニタ方法は、請求項1記載のダスト放射線モニタ装置を用いたダスト放射線モニタ方法において、ダスト放射線の非測定時に本体部内の空気を三方切換弁を介してサンプリング配管内に導入し、第1の流量計と第2の流量計の測定値の差からバイパスリーク量を算出し、ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求めることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る放射線モニタ方法は、請求項2記載のダスト放射線モニタ装置を用いたダスト放射線モニタ方法において、ダスト放射線の非測定時に第1の圧力計及び第2の圧力計の差圧とバイパスリーク量との関係式を求め、ダスト放射線の測定時の第1の圧力計及び第2の圧力計の差圧と前記関係式からバイパスリーク量を算出し、ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ろ紙集塵部からのバイパスリーク量を高精度で算出することにより、ダスト放射線濃度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る放射線モニタ装置の全体構成図。
【図2】第2の実施形態に係る流量と差圧の関係図。
【図3】従来の放射線モニタ装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る放射線モニタ装置及びモニタ方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
(構成)
本第1の実施形態の放射線モニタ装置は、図1に示すように、放射線モニタ装置の本体部1と吸引ポンプ2と演算部3から構成される。
吸引ポンプ2は、施設内のサンプリング箇所(図示せず)からサンプリング気体をサンプリング配管9を介して本体部1内に導入し、その後本体部1の外部へ排出する。
【0018】
本体部1の内部には、放射線検出器8及び巻き取り可能なろ紙7がサンプリング配管9に設置されている。ろ紙7のろ紙集塵部7aでは、ろ紙7を交換する際にろ紙7を巻き取る必要があるため、サンプリング配管9はこのろ紙集塵部7bを境界として上流側の導入配管9aと下流側の排出配管9bに分割されている。この分割部の気密性を保つために、ろ紙の押圧用突起部14及びシール部15からなる気密保持部材が分割部に取り付けられている。
導入配管9aには圧力計5が設置され、排出配管9bには流量計4及び圧力計6が設置されている。
【0019】
また、導入配管9aには三方切替弁10が設けられ、本体部1内の空気を導入するために、流量計3、流量調整弁12及びエアフィルタ11からなる本体部内配管16が三方切替弁10に接続されている。ここで、エアフィルタ11は本体部1内のダストが導入配管9aに混入されるのを防止し、流量調整弁12は三方切替弁10における圧力損失を調整する。
【0020】
この三方切替弁10の切換操作により、サンプリング気体又は本体部内の気体を選択的にろ紙集塵部7aに供給する。
演算部13は、流量計3、4、圧力計5、6及び放射線検出器8からの各測定値が入力され、バイバスリーク量及びダスト放射線濃度を演算する。
【0021】
(作用)
上述のように構成された本実施形態の放射線モニタ装置の作用を説明する。
まず、測定前などのダスト放射線の非測定時に、ろ紙7の上流側に設置された三方切替弁10を本体部内配管16に切換えて、本体部1内の気体をサンプリング配管9a、ろ紙集塵部7a、9bに導入する。その際、ろ紙7のろ紙集塵部7aは押圧用突起部14及びシール部15により気密状態となっている。
【0022】
この状態で、演算部13は、本体部内配管16の流量計3とサンプリング配管9bに設置された流量計4の測定値の差分を算出し、ろ紙集塵部7aから漏洩したバイパスリーク量を演算する。
【0023】
次に、ダスト放射線を測定する際は、三方切替弁10を切換えてサンプリング気体を導入配管9aに導入し、ろ紙集塵部7aに捕捉したダストの放射線強度を放射線検出器8により測定する。
【0024】
演算部13は、上記で求めたバイパスリーク量と流量計4の測定値から、ろ紙集塵部7aに流入したサンプリング気体量を算出し、その値と放射線検出器8の測定値に基づいてろ紙集塵部7aに捕捉したダストの放射線濃度を求める。
【0025】
バイパスリーク量の検出タイミングついては、ダストをろ紙集塵部7aに集塵・測定した後、ろ紙7を新しいろ紙面に変更し、バックグランド放射線の測定を行うが、その直後に三方切替弁を切り替えてバイパスリーク量を検出するのが望ましい。
【0026】
なお、ろ紙集塵部7aの押圧用突起部14又はシール部15の劣化、損傷などが原因で、分割部の気密性が保たれなくなる場合がある。そのような場合においても、算出したバイパスリーク量が所定値を超えていないかどうかを演算部13で監視し、当該所定値を超えていた場合には警報処理等を行うようにしてもよい。
【0027】
(効果)
本第1の実施形態によれば、ろ紙集塵部におけるバイパスリーク量を高精度で算出し、このバイパスリーク量に基づいて放射線濃度を補正することにより、ダスト放射線濃度を正確に測定することができる。
【0028】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の放射線モニタ装置を図2により説明する。
本第2の実施形態の放射線モニタ装置は、測定中にバイパスリーク量が変化した場合においても、リアルタイムでバイパスリーク量を算出可能な構成としている。
【0029】
まず、非測定時に、本体内配管16の流量計3の測定値F、サンプリング配管9aの圧力計5の測定値P、サンプリング配管9bの流量計4の測定値F’及び圧力計6の測定値P′により、ろ紙の上流側と下流側の差圧ΔP(P−P′)とバイパスリーク量ΔF(F−F′)の関係を予め算出する。
その際、ろ紙7の下流側の圧力が変わればこの関係は変わるため、ろ紙の下流側の圧力を数パターン変えて測定する。
【0030】
この差圧ΔPとバイパスリーク量ΔFとの関係式(1)を図2示す関係曲線から導く。
ΔF (バイパスリーク量)=f(ΔP)・・・・(1)
ここで、ΔF=F−F′,ΔP=P−P′
【0031】
次に、演算部13は、ダスト放射線の測定時において、圧力計5と圧力計6の測定値からその差圧ΔPを求め、式(1)を用いてリアルタイムでバイパスリーク量ΔFを算出する。
【0032】
これにより、測定中にバイパスリーク量が変化した場合においても、リアルタイムでそのバイパスリーク量を算出し濃度演算補正に利用することができる。また、測定された圧力値を異常監視に利用することが可能となる。
【0033】
なお、測定チャンネルが複数台ある場合は、ろ紙7の上流側に配置された流量計3、圧力計5、流量調整弁12、エアフィルタ11などは適宜脱着可能な構造とし、試験時にのみ取り付けるようにしてもよい。
【0034】
本実施形態によれば、ろ紙集塵部におけるバイパスリーク量をリアルタイムで算出することができるため、より正確なダスト放射線濃度の測定及び異常監視が可能となる。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、組み合わせ、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1…放射性モニタ装置の本体、2…吸引ポンプ、3、4…流量計、5、6…圧力計、7…ろ紙、7a…ろ紙集塵部、8…放射線検出器、9、9a、9b…サンプリング配管、10…三方切替弁、11…エアフィルタ、12…流量調整弁、13…演算部、14…押圧用突起部、15…シール部、16…本体部内配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング気体をダスト放射線モニタの本体部内に導くサンプリング配管と、前記サンプリング配管に設けられサンプリング気体中のダストを捕集するろ紙集塵部及び放射線検出器と、前記ろ紙集塵部の上流側のサンプリング配管に設置された三方切換弁と、前記ろ紙集塵部の下流側のサンプリング配管に設置された第1の流量計と、前記本体内の空気を第2の流量計を介して前記三方切換弁に導く本体部内配管と、前記第1の流量計と第2の流量計の測定値に基づいてバイパスリーク量を算出し前記ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求める演算部と、を有することを特徴とする放射線モニタ装置。
【請求項2】
サンプリング気体をダスト放射線モニタの本体部内に導くサンプリング配管と、前記サンプリング配管に設けられサンプリング気体中のダストを捕集するろ紙集塵部及び放射線検出器と、前記ろ紙集塵部の下流側のサンプリング配管に設置された第1の流量計及び第1の圧力計と、前記ろ紙集塵部の上流側のサンプリング配管に設置された第2の圧力計及び三方切換弁と、前記本体部内の空気を第2の流量計を介して前記三方切換弁に導く本体部内配管と、前記第1及び第2の流量計と前記第1及び第2の圧力計の測定値に基づいてバイパスリーク量を算出し前記ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求める演算部と、を有することを特徴とする放射線モニタ装置。
【請求項3】
前記ろ紙集塵部を気密に保持する気密保持部材を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線モニタ装置。
【請求項4】
前記演算部は前記バイパスリーク量が所定値を超えた場合に警報を発することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の放射線モニタ装置。
【請求項5】
請求項1記載のダスト放射線モニタ装置を用いたダスト放射線モニタ方法において、ダスト放射線の非測定時に本体部内の空気を三方切換弁を介してサンプリング配管内に導入し、第1の流量計と第2の流量計の測定値の差からバイパスリーク量を算出し、ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求めることを特徴とする放射線モニタ方法。
【請求項6】
請求項2記載のダスト放射線モニタ装置を用いたダスト放射線モニタ方法において、ダスト放射線の非測定時に第1の圧力計及び第2の圧力計の差圧とバイパスリーク量との関係式を求め、ダスト放射線の測定時の第1の圧力計及び第2の圧力計の差圧と前記関係式からバイパスリーク量を算出し、ろ紙集塵部に捕集されたダストの放射線濃度を求めることを特徴とする放射線モニタ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19750(P2013−19750A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152893(P2011−152893)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】