説明

放射線動画処理装置、放射線動画撮影装置、放射線動画撮影システム、放射線動画処理方法、及び放射線動画撮影プログラム

【課題】適切な関心領域を容易に設定することを目的とする。
【解決手段】動画の各フレームの画像を縮小して縮小ボケ画像(1/2縮小ボケ画像及び1/4縮小ボケ画像)を生成し(502)、再拡大して元画像と合成し(504、506)、合成した画像から構造物候補を検出する(508)。そして、フレーム間の差分を算出して(510)、変動が所定値以上の構造物を関心領域として特定して、関心領域を判別可能にディスプレイに動画を表示する(512〜518)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線動画処理装置、放射線動画撮影装置、放射線動画撮影システム、放射線動画処理方法、及び放射線動画撮影プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線量をデジタルデータ(電気信号)に変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器(「電子カセッテ」等という場合がある)が実用化されており、この放射線検出器を用いて、照射された放射線量により表わされる放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置が実用化されている。
【0003】
なお、放射線量は、例えば、互換をもって発光量に変換され、その後、電気信号に変換される間接変換方式と、放射線量から直接電気信号に変換される直接変換方式とがあり、適宜選択して採用される。
【0004】
また、このような放射線画像撮影装置では、一定時間毎に放射線検出器で検出した画像情報を連続して再生することで、所謂動画像を表示する。動画像を撮影する場合には、撮影した画像情報に基づき、放射線量を制御して、放射線検出器による検出状態を最適に維持するフィードバック制御(ABC「Auto Brightness Control」制御)を行うことにより、適切な画像を得ることができる。
【0005】
また、動画撮影時にABC制御を行うためには、関心領域(ROI:Region Of Interest)を特定して、関心領域に対してABC制御を行うことにより、医師が読影しやすい画像を得ることができる。
【0006】
関心領域の設定は、操作入力などによって設定する場合もあるが、撮影画像に基づいて、関心領域を特定する技術も提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の技術では、異なる時間に撮影した複数枚の画像間の濃度値特徴量の大小に基づいて、ROIを特定することが提案されている。具体的には、2枚の画像の差分画像を複数のブロックに分けて、各ブロックの濃度値の2乗和を算出して、算出した2乗和が閾値以上のブロックをROIとして抽出することが提案されている。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、2方向から観察できるX線診断装置を設け、これにより、2方向の画像から抽出した撮影画像内の特徴的構造である、例えばカテーテル先端の画像座標に基づいて、カテーテルが存在する三次元位置座標を計算して、その点を中心にしてROIを設定することが記載されている。また、カテーテル先端を抽出する技術としては、カテーテル先端部に付けられている吸収係数の高い物質を検出する技術や、時間差分を取る等の技術を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6-209926号公報
【特許文献2】特開2000-217035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術では、濃度値特徴量の大小に基づいて、ROIを特定することが提案されているが、ABC制御などによる撮影条件によって濃度値特徴量が左右される可能性があるため、適切なROIを抽出するためには改善の余地がある。
【0011】
また、特許文献2に記載の技術では、カテーテル先端に吸収係数の高い物質を設ける必要があると共に、カテーテル以外の臓器などはROIとして抽出することができないので、改善の余地がある。
【0012】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、適切な関心領域を容易に設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1に記載の放射線動画撮影装置は、設定された設定値に応じた放射線照射エネルギーで放射線を照射する放射線照射手段から照射されて被検体を通過した放射線量を、複数の画素を備えた放射線検出器で受け、当該画素毎に受ける放射線量に応じた階調信号を出力する放射線画像撮影手段から出力される前記階調信号に基づいて、1フレームの静止画像情報を生成すると共に、前記静止画像情報を連続的に複数フレーム組み合わせて動画像情報を生成する画像情報生成手段と、前記画像情報生成手段によって生成された前記動画像情報における各フレームの前記静止画情報に基づいて、注目対象の構造物を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記構造物についてフレーム間の差分を算出し、算出した差分が所定値以上の構造物を関心領域として設定する関心領域設定手段と、前記関心領域設定手段によって設定された前記関心領域を判別可能に、前記動画像情報に基づく動画を表示部に表示するように制御する表示制御手段と、を備える。
【0014】
請求項1に記載の放射線動画処理装置によれば、放射線照射手段では、設定された設定値に応じた放射線照射エネルギーで放射線が照射され、放射線画像撮影手段では、放射線照射手段から照射されて被検体を通過した放射線量が放射線検出器に照射される。また、放射線検出器では、放射線が照射されると画素毎に受ける放射線量に応じた階調信号が出力される。
【0015】
また、画像情報生成手段では、放射線画像撮影手段から出力される階調信号に基づいて静止画像情報が生成されると共に、静止画像情報を連続的に組み合わせて動画像情報が生成される。
【0016】
また、検出手段では、画像情報生成手段によって生成された動画像情報における各フレームの静止画像情報に基づいて、注目対象の構造物が検出される。すなわち、関心領域の候補となる構造物を検出する。
【0017】
ここで、動画における関心領域は、動きがある構造物であることが想定される。そこで、関心領域設定手段では、検出手段によって検出された構造物についてフレーム間の差分が算出され、算出された差分が所定値以上の構造物が関心領域として設定され、表示制御手段では、設定された関心領域を判別可能に、動画情報に基づく動画を表示部に表示するように制御される。このように関心領域を設定することで、適切な関心領域を容易に設定することができる。
【0018】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記関心領域設定手段は、フレーム間の前記構造物の大きさの差分を算出するようにしてもよい。この場合、請求項3に記載の発明のように、前記関心領域設定手段は、前記検出手段によって検出された前記構造物のうち最も差分(変動量)が大きい構造物を関心領域として設定するようにしてもよい。これによって、動きのある関心領域を設定することができる。
【0019】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記検出手段は、前記静止画像情報に基づいてボケ画像を生成し、生成したボケ画像に基づいて前記構造物を検出するようにしてもよい。この場合には、請求項5に記載の発明のように、前記検出手段は、ガウシアンピラビミッド形成手段及びラプラシアンピラビミッド形成手段の少なくとも一方を用いて前記構造物を検出するようにしてもよいし、請求項6に記載の発明のように、前記検出手段は、方向性フィルタを用いて前記構造物を検出するようにしてもよい。
【0020】
さらに、本発明は、請求項7に記載の発明のように、前記関心領域設定手段によって設定された前記関心領域における前記階調信号に基づいて、少なくとも1フレームの前記静止画像情報の一部における前記階調信号の演算値が予め定めた範囲の値になるように、前記放射線照射手段から照射される前記放射線エネルギーの設定値を所定の制御周期でフィードバック制御する制御手段を更に備えるようにしてもよい。これによって、設定された関心領域へ照射する放射線量を適切に制御することが可能となる。
【0021】
なお、本発明は、請求項8に記載の発明のように、設定された設定値に応じた放射線照射エネルギーで放射線を照射する放射線照射手段から照射されて被検体を通過した放射線量を、複数の画素を備えた放射線検出器で受け、当該画素毎に受ける放射線量に応じた階調信号を出力する放射線画像撮影手段と、請求項1〜7の何れか1項に記載の放射線動画処理装置と、を備えた放射線動画撮影装置としてもよいし、請求項9に記載の発明のように、設定された設定値に応じた放射線照射エネルギーで放射線を照射する放射線照射手段と、請求項8に記載の放射線動画撮影装置と、を備えた放射線動画撮影システムとしてもよい。
【0022】
一方、請求項10に記載の放射線動画撮影方法は、設定された設定値に応じた放射線エネルギーで被検体に向けて放射線照射手段から放射線を照射し、被検体を通過した放射線量を、複数の画素を備えた放射線検出器で受け、当該画素毎に受ける放射線量に応じた階調信号に基づいて、1フレームの静止画像情報を生成すると共に、前記静止画像情報を連続的に複数フレーム組み合わせて動画像情報を生成し、生成した前記動画像情報における各フレームの前記静止画像情報に基づいて、注目対象の構造物を検出し、検出した前記構造物についてフレーム間の差分を算出して、算出した差分が所定値以上の構造物を関心領域として設定し、設定した前記関心領域を判別可能に、前記動画像情報に基づく動画を表示部に表示するように制御する。
【0023】
請求項10に記載の放射線動画撮影方法によれば、設定された設定値に応じた放射線エネルギーで被検体に向けて放射線を照射し、被検体を通過した放射線量を、複数の画素を備えた放射線検出器で受ける。
【0024】
また、放射線検出器の画素毎に受ける放射線量に応じた階調信号に基づいて、静止画像情報を生成すると共に、1フレームの前記静止画像情報を連続的に複数フレーム組み合わせて動画像情報を生成する。
【0025】
また、生成した動画像情報における各フレームの静止画像情報に基づいて、注目対象の構造物を検出する。すなわち、関心領域の候補となる構造物を検出する。
【0026】
ここで、動画における関心領域は、動きがある構造物であることが想定される。そこで、検出した構造物についてフレーム間の差分を算出し、算出した差分が所定値以上の構造物を関心領域として設定し、設定した関心領域を判別可能に、動画情報に基づく動画を表示部に表示するように制御する。このように関心領域を設定することで、適切な関心領域を容易に設定することができる。
【0027】
なお、前記差分は、請求項11に記載の発明のように、フレーム間の前記構造物の大きさの差分を算出するようにしてもよい。この場合、請求項12に記載の発明のように、検出した前記構造物のうち最も差分(変動量)が大きい構造物を関心領域として設定するようにしてもよい。これによって、動きのある関心領域を設定することができる。
【0028】
また、前記構造物は、請求項13に記載の発明のように、前記静止画像情報に基づいてボケ画像を生成し、生成したボケ画像に基づいて検出するようにしてもよい。この場合には、請求項14に記載の発明のように、ガウシアンピラビミッド形成手段及びラプラシアンピラビミッド形成手段の少なくとも一方を用いて検出するようにしてもよいし、請求項15に記載の発明のように、方向性フィルタを用いて検出するようにしてもよい。
【0029】
さらに、請求項10〜15の何れか1項に記載の発明は、請求項16に記載の発明のように、設定された前記関心領域における前記階調信号に基づいて、少なくとも1フレームの前記静止画像情報の一部における前記階調信号の演算値が予め定めた範囲の値になるように、前記放射線照射手段から照射される前記放射線エネルギーの設定値を所定の制御周期で更にフィードバック制御するようにしてもよい。これによって、設定された関心領域へ照射する放射線量を適切に制御することが可能となる。
【0030】
一方、請求項17に記載の放射線動画撮影プログラムは、コンピュータを請求項1〜7の何れか1項に記載の放射線動画処理装置を構成する各手段として機能させるためのものである。
【0031】
従って、本発明によれば、コンピュータを請求項1〜7の何れか1項に記載の放射線動画処理装置を構成する各手段として機能させることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、適切な関心領域を容易に設定することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明した如く本発明では、適切な関心領域を容易に設定することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態に係る放射線情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る放射線画像撮影システムの放射線撮影室における各装置の配置状態の一例を示す側面図である。
【図3】実施の形態に係る放射線検出器の3画素部分の概略構成を示す断面模式図である。
【図4】実施の形態に係る撮影システムの制御ブロック図である。
【図5】実施の形態に係る撮影システムにおける、放射線画像撮影のための制御系に特化した機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る構造物検出部及び関心領域抽出部の詳細な機能を示す機能ブロック部である。
【図7】実施の形態に係る放射線画像撮影準備制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】実施の形態に係る放射線照射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る画像処理制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】実施の形態に係る構造物検出及び関心領域抽出ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】構造物の検出を説明するための図である。
【図12】関心領域の特定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本実施の形態に係る放射線情報システム(以下、「RIS」(Radiology Information System)という。)10の概略構成図である。このRIS10は、静止画に加え、動画を撮影することが可能である。なお、動画の定義は、静止画を高速に次々と表示して、動画として認知させることを言い、静止画を撮影し、電気信号に変換し、伝送して当該電気信号から静止画を再生する、というプロセスを高速に繰り返すものである。従って、前記「高速」の度合いによって、予め定められた時間内に同一領域(一部又は全部)を複数回撮影し、かつ連続的に再生する、所謂「コマ送り」も動画に包含されるものとする。
【0035】
RIS10は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS」(Hospital Information System)という。)の一部を構成する。
【0036】
RIS10は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」という。)12、RISサーバー14、および病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された複数の放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」という。)16を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク18に各々接続されて構成されている。なお、病院内ネットワーク18には、HIS全体を管理するHISサーバー(図示省略)が接続されている。また、前記放射線画像撮影システム16は、単一、或いは3以上の設備であってもよく、図1では、撮影室毎に設置しているが、単一の撮影室に2台以上の放射線画像撮影システム16を配置してもよい。
【0037】
端末装置12は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧等を行うためのものであり、放射線画像の撮影依頼や撮影予約は、この端末装置12を介して行われる。各端末装置12は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバー14と病院内ネットワーク18を介して相互通信が可能とされている。
【0038】
一方、RISサーバー14は、各端末装置12からの撮影依頼を受け付け、撮影システム16における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース14Aを含んで構成されている。
【0039】
データベース14Aは、患者(被検者)の属性情報(氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)、病歴、受診歴、過去に撮影した放射線画像等の患者に関する情報、撮影システム16で用いられる、後述する電子カセッテ20の識別番号(ID情報)、型式、サイズ、感度、使用開始年月日、使用回数等の電子カセッテ20に関する情報、および電子カセッテ20を用いて放射線画像を撮影する環境、すなわち、電子カセッテ20を使用する環境(一例として、放射線撮影室や手術室等)を示す環境情報を含んで構成されている。
【0040】
なお、医療機関が管理する医療関連データをほぼ永久に保管し、必要なときに、必要な場所から瞬時に取り出すシステム(「医療クラウド」等と言う場合がある)を利用して、病院外のサーバーから、患者(被検者)の過去の個人情報等を入手するようにしてもよい。
【0041】
撮影システム16は、RISサーバー14からの指示に応じて医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム16は、放射線照射制御ユニット22(図4参照)の制御により放射線Xを照射する放射線照射源22Aから、照射条件に従った線量とされた放射線Xを被検者に照射する放射線発生装置24と、被検者の撮影対象部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する放射線検出器26(図3参照)を内蔵する電子カセッテ20と、電子カセッテ20に内蔵されているバッテリを充電するクレードル28と、電子カセッテ20および放射線発生装置24を制御するコンソール30と、を備えている。
【0042】
コンソール30は、RISサーバー14からデータベース14Aに含まれる各種情報を取得して後述するHDD88(図4参照。)に記憶し、必要に応じて当該情報を用いて、電子カセッテ20および放射線発生装置24の制御を行う。
【0043】
図2には、本実施の形態に係る撮影システム16の放射線撮影室32における各装置の配置状態の一例が示されている。
【0044】
図2に示される如く、放射線撮影室32には、立位での放射線撮影を行う際に用いられる立位台34と、臥位での放射線撮影を行う際に用いられる臥位台36とが設置されており、立位台34の前方空間は立位での放射線撮影を行う際の被検者38の撮影位置とされ、臥位台36の上方空間は臥位での放射線撮影を行う際の被検者40の撮影位置とされている。
【0045】
立位台34には電子カセッテ20を保持する保持部42が設けられており、立位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ20が保持部42に保持される。同様に、臥位台36には電子カセッテ20を保持する保持部44が設けられており、臥位での放射線画像の撮影を行う際には、電子カセッテ20が保持部44に保持される。
【0046】
また、放射線撮影室32には、単一の放射線照射源22Aからの放射線によって立位での放射線撮影も臥位での放射線撮影も可能とするために、放射線照射源22Aを、水平な軸回り(図2の矢印A方向)に回動可能で、鉛直方向(図2の矢印B方向)に移動可能で、さらに水平方向(図2の矢印C方向)に移動可能に支持する支持移動機構46が設けられている。この図2の矢印A〜C方向へ移動(回動を含む)させる駆動源は、支持移動機構46に内蔵されており、ここでは、図示を省略する。
【0047】
一方、クレードル28には、電子カセッテ20を収納可能な収容部28Aが形成されている。
【0048】
電子カセッテ20は、未使用時にはクレードル28の収容部28Aに収納された状態で内蔵されているバッテリに充電が行われ、放射線画像の撮影時には放射線技師等によってクレードル28から取り出され、撮影姿勢が立位であれば立位台34の保持部42に保持され、撮影姿勢が臥位であれば臥位台36の保持部44に保持される。
【0049】
ここで、本実施の形態に係る撮影システム16では、図4に示される如く、放射線発生装置24とコンソール30との間、および電子カセッテ20とコンソール30との間で、無線通信によって各種情報の送受信を行う(詳細後述)。
【0050】
なお、電子カセッテ20は、立位台34の保持部42や臥位台36の保持部44で保持された状態のみで使用されるものではなく、その可搬性から、腕部,脚部等を撮影する際には、保持部に保持されていない状態で使用することもできる。
【0051】
図3は、電子カセッテ20に装備される放射線検出器26の3画素部分の構成を概略的に示す断面模式図である。
【0052】
図3に示される如く、放射線検出器26は、絶縁性の基板50上に、信号出力部52、センサ部54(TFT基板74)、およびシンチレータ56が順次積層しており、信号出力部52、センサ部54によりTFT基板74の画素群が構成されている。すなわち、複数の画素は、基板50上にマトリクス状に配列されており、各画素における信号出力部52とセンサ部54とが重なりを有するように構成されている。なお、信号出力部52とセンサ部54との間には、絶縁膜53が介在されている。
【0053】
シンチレータ56は、センサ部54上に透明絶縁膜58を介して形成されており、上方(基板50の反対側)または下方から入射してくる放射線を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。このようなシンチレータ56を設けることで、被写体を透過した放射線を吸収して発光することになる。
【0054】
シンチレータ56が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器26によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0055】
シンチレータ56に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmにあるCsI(Tl)(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0056】
センサ部54は、上部電極60、下部電極62、および当該上下の電極間に配置された光電変換膜64を有し、光電変換膜64は、シンチレータ56が発する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。
【0057】
上部電極60は、シンチレータ56により生じた光を光電変換膜64に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ56の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極60としてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極60は、全画素で共通の一枚構成としてもよく、画素毎に分割してもよい。
【0058】
光電変換膜64は、有機光電変換材料を含み、シンチレータ56から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含む光電変換膜64であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ56による発光以外の電磁波が光電変換膜64に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜64で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0059】
光電変換膜64を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ56で発光した光を最も効率よく吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ56の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ56の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ56から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ56の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0060】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物およびフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ56の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜64で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0061】
各画素を構成するセンサ部54は、少なくとも下部電極62、光電変換膜64、および上部電極60を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜66および正孔ブロッキング膜68の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0062】
電子ブロッキング膜66は、下部電極62と光電変換膜64との間に設けることができ、下部電極62と上部電極60間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極62から光電変換膜64に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。電子ブロッキング膜66には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0063】
正孔ブロッキング膜68は、光電変換膜64と上部電極60との間に設けることができ、下部電極62と上部電極60間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極60から光電変換膜64に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。正孔ブロッキング膜68には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0064】
信号出力部52は、下部電極62に対応して、下部電極62に移動した電荷を蓄積するコンデンサ70と、コンデンサ70に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力する電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に薄膜トランジスタという場合がある。)72が形成されている。コンデンサ70および薄膜トランジスタ72の形成された領域は、平面視において下部電極62と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素における信号出力部52とセンサ部54とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器26(画素)の平面積を最小にするために、コンデンサ70および薄膜トランジスタ72の形成された領域が下部電極62によって完全に覆われていることが望ましい。
【0065】
図4は、本実施の形態に係る撮影システム16の制御ブロック図である。
【0066】
コンソール30は、サーバー・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ80と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル82と、を備えている。
【0067】
また、本実施の形態に係るコンソール30は、装置全体の動作を司るCPU84と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM86と、各種データを一時的に記憶するRAM87と、各種データを記憶して保持するHDD(ハードディスク・ドライブ)88と、ディスプレイ80への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ92と、操作パネル82に対する操作状態を検出する操作入力検出部90と、を備えている。
【0068】
また、コンソール30は、無線通信により、画像処理装置23及び放射線発生装置24との間で後述する照射条件等の各種情報の送受信を行うと共に、電子カセッテ20との間で画像データ等の各種情報の送受信を行うI/F(例えば、無線通信部)96及びI/O94を備えている。
【0069】
CPU84、ROM86、RAM87、HDD88、ディスプレイドライバ92、操作入力検出部90、I/O94、無線通信部96は、システムバスやコントロールバス等のバス98を介して相互に接続されている。従って、CPU84は、ROM86、RAM87、HDD88へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ92を介したディスプレイ80への各種情報の表示の制御、および無線通信部96を介した放射線発生装置24および電子カセッテ20との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。また、CPU84は、操作入力検出部90を介して操作パネル82に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0070】
一方、画像処理装置23は、コンソール30との間で照射条件等の各種情報を送受信するI/F(例えば無線通信部)100と、照射条件に基づいて、電子カセッテ20及び放射線発生装置24を制御する画像処理制御ユニット102と、を備えている。また、放射線発生装置24は、放射線照射源22Aからの放射線照射を制御する放射線照射制御ユニット22を備えている。
【0071】
画像処理制御ユニット102は、システム制御部104、パネル制御部106、画像処理制御部108を備え、相互にバス110によって情報をやりとりしている。パネル制御部106では、前記電子カセッテ20からの情報を、無線又は有線により受け付け、画像処理制御部108で画像処理が施される。
【0072】
一方、システム制御部104は、コンソール30から照射条件には管電圧、管電流等の情報を受信し、受信した照射条件に基づいて放射線照射制御ユニット22の放射線照射源22Aから放射線Xを照射させる制御を行う。
【0073】
ところで、放射線画像を撮影するにあたり、全撮影領域に対して、注目するべき領域(関心領域)が限定される場合がある。例えば、特に動画撮影の場合、ほぼ静止している臓器や骨格が注目される画像である場合は少ない。言い換えれば、例えば、心臓等、鼓動している臓器、或いは、血管内を案内されて移動するカテーテル管等が注目される画像である場合が多い。
【0074】
このため、本実施の形態における、撮影システム16では、撮影画像の動作状態に基づいて、自動的に関心領域を設定する機能を備えており、撮影指示があると、放射線画像撮影準備制御の後、関心領域(以下、「ROI」という場合がある)を設定するための制御が実行されるようになっている。
【0075】
また、本実施の形態の撮影システム16では、ABC「Auto Brightness Control」制御によって、被検者への放射線の放射線量をフィードバック補正して、適正な画像情報を得ることがなされている。
【0076】
図5は、撮影システム16(主として、電子カセッテ20、コンソール16、画像処理装置23、放射線発生装置24)における、放射線画像撮影(ROI設定を含む)のための制御系に特化した機能ブロック図である。なお、このブロック図は、放射線画像撮影制御を機能別に分類したものであり、ハード構成を限定するものではない。
【0077】
撮影システム16は、図5に示すように、放射線量照射制御ユニット22、放射線量調整部120、TFT基板74、信号取得部122、構造物検出部138、関心領域抽出部140、静止画像生成部128、動画編集部130、ディスプレイドライバ92、ディスプレイ80、平均QL値演算部132、ABC制御部134、及び基準QL値メモリ136の機能を有する。
【0078】
放射線照射制御ユニット22では、放射線量調整部120によって調整された放射線量に基づいて、放射線照射源22Aから放射線を照射する。
【0079】
放射線照射制御ユニット22から被験者に照射された放射線は、被験者を透過して電子カセッテ20の放射線検出器26(図3参照)へ至るようになっている。放射線検出器26では、蛍光体膜56(図3参照)によって放射線量に応じた光量の光で発光し、TFT基板74によって光電変換されて階調信号が生成される。
【0080】
信号取得部122では、TFT基板74によって生成された階調信号を取得して静止画像生成部128へ送出する。なお、この光電変換信号は、アナログ信号であってもよいし、電子カセッテ20内の制御部において、デジタル信号に変換した後の信号であってもよい。
【0081】
静止画像生成部128では、1フレーム分の階調信号に基づいて静止画像を順次生成する。なお、動画像撮影の場合と静止画撮影の場合とでは、電子カセッテ20から送られる光電変換信号そのものが異なり、例えば、本実施の形態のように、動画像撮影の場合には、転送速度を優先するため、ビニング処理がなされる。一方、仮に、静止画撮影をする場合には、画質を優先するため、TFT基板74における最大の画素数に基づく画像データが生成される。
【0082】
動画編集部130では、静止画像生成部128によって生成された1フレーム毎の画像データを組み合わせて動画編集を行う。編集された動画像は、ディスプレイドライバ92を介してディスプレイ80に表示されるようになっている。なお、静止画を表示する場合には、静止画像生成部128によって生成された静止画がディスプレイドライバ92を介してディスプレイ80に表示されるようになっている。
【0083】
また、構造物検出部138では、動画編集部130によって生成された動画像の各フレームに基づいて、注目対象の構造物(関心領域の候補となる構造物)を検出する。例えば、ヒストグラムや空間フィルタなどの処理を利用して、ユーザによって操作されたメニュー等から想定される構造物を検出する。
【0084】
関心領域抽出部140では、構造物検出部138によって検出された構造物の中から、変化の大きい構造物を関心領域として抽出し、抽出結果を動画編集部130へ送出する。これにより、動画編集部130では、関心領域を判別可能とするための処理を施すようになっている。
【0085】
平均QL値演算部132では、動画像の各フレーム(或いは、適宜抜き取った1フレーム)のQL値の平均値を演算する。平均値QL値演算部132の演算結果は、ABC制御部134へ送出されるようになっている。なお、QL値は、放射線を照射して得られた放射線画像のフィルムの濃度に相当する値であり、階調信号そのものであってもよいし、階調信号に対して所定の処理を行った信号であってもよい。
【0086】
ABC制御部134では、平均QL値演算部132によって演算されたQL平均値と、基準QL値メモリ136に格納された基準QL値とを比較して、QL平均値を基準QL値に収束させるための補正情報ΔXを生成する。この補正情報ΔXは、放射線照射源22Aから照射される放射線量(放射線エネルギー)を増減させるための補正係数として適用される。
【0087】
ABC制御部134で生成された補正情報ΔXは、放射線量調整部120へ送出される。放射線量調整部120では、補正情報ΔXに基づいて放射線量XNを増減させる(XN←XN×ΔX)。すなわち、放射線量調整部120は、照射指示があった時点では、予め定めた初期値から照射を開始し、補正情報ΔXに基づいて放射線量を増減して、基準QL値になるように補正する。なお、本実施の形態では、放射線量XNの補正の際、補正情報ΔXを乗(除)算の係数としたが、加(減)算係数(XN←XN+ΔXN)としてもよい。
【0088】
なお、本実施の形態では、1フレームのQL値の平均値が基準QL値になるようにABC制御部134によって放射線量を補正するものとして説明するが、ABC制御部134は、少なくとも1フレームの静止画像情報の一部における階調信号の演算値が予め定めた範囲の値になるように放射線量を補正するようにしてもよい。例えば、ABC制御部134は、1フレームの階調信号の発生頻度をヒストグラム(例えば、横軸を階調信号とし、縦軸をその発生頻度としたヒストグラム)にしたときに、発生頻度が最大の階調(或いは最大の階調を含む所定の範囲の階調)が予め定めた範囲の値に収まるように放射線量を補正するようにしてもよい。
【0089】
続いて、上述の構造物検出部138及び関心領域抽出部140の詳細な構成について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係る構造物検出部138及び関心領域抽出部140の詳細な機能を示す機能ブロック部である。
【0090】
構造物検出部138は、図6に示すように、フレームメモリ142、1/2縮小ボケ画像生成部144、1/4縮小ボケ画像生成部146、2倍再拡大部148、4倍再拡大部150、及び合成部152の機能を備えている。
【0091】
フレームメモリ142は、動画編集部130によって生成された動画像の各フレームが順次格納されて、1フレームずつ1/2縮小ボケ画像生成部144へ送出される。
【0092】
1/2縮小ボケ画像生成部144では、各フレームの画像を1/2に縮小して1/4縮小ボケ画像生成部146へ送出すると共に、2倍再拡大部148へ送出する。
【0093】
1/4縮小ボケ画像生成部146では、1/2に縮小された画像を更に1/2に縮小することによって、元の画像に対して1/4の縮小画像を生成して4倍再拡大部150へ送出する。
【0094】
2倍再拡大部148では、1/2に縮小された画像を再度元のサイズに戻すために2倍に拡大して合成部152へ送出する。すなわち、元画像が1/2に縮小されることにより、画素情報が間引かれる。そして再度拡大されることにより、元画像に対してぼけた画像が生成される。
【0095】
同様に、4倍再拡大部150では、1/4に縮小された画像を再度元のサイズに戻すために4倍に拡大して合成部152へ送出する。これによって、2倍再拡大部148によって生成された画像よりも更にぼけた画像が生成される。
【0096】
そして、合成部152では、元画像、2倍再拡大部148、及び4倍再拡大部150で生成された各画像を合成して、関心領域候補となる構造物を検出して、関心領域抽出部140へ結果を送出する。このように合成された画像では、臓器などの関心領域の対象となる構造物は、ある程度の塊を持った画像となるので、これを検出することによって関心領域候補となる構造物を検出する。
【0097】
また、関心領域抽出部140は、図6に示すように、フレーム間差分処理部154及び関心領域特定部156の機能を備えている。
【0098】
フレーム間差分処理部154では、フレーム間の差分を算出することによって、動きのある構造物を特定する。より具体的には、構造物検出部138によって検出された構造物についてフレーム間の差分を求めることによって構造物の変化量を求める。
【0099】
関心領域特定部156では、フレーム間差分処理部154で算出された構造物の変化量を比較して、所定値以上の変化量の構造物を関心領域として特定する。すなわち、動画における、心臓や血管中のカテーテルなどの関心領域とされる構造物は、動きがある対象物であることが想定されるため、各フレーム間の構造物の差分を算出して、時間による変動が最も大きい構造物を関心領域として特定することで、動きのある関心領域を特定することができる。
【0100】
なお、本実施の形態では、最も変動が大きい構造物候補を関心領域として特定するが、これに限るものではなく、例えば、所定値以上の変動がある構造物候補を全て関心領域として特定するようにしてもよい。すなわち、関心領域は1つではなくて複数の構造物を関心領域としてもよい。
【0101】
また、本実施の形態では、画像を縮小してから再拡大することにより、ボケ画像を生成して構造物を検出するようにしたが、ボケ画像生成のフィルタリング処理として用いられるガウシアンピラミッド形成手段及びラプラシアンピラミッド形成手段の少なくとも一方のフィルタ処理を用いて構造物を検出するようにしてもよいし、デジタルカメラの手ぶれ方向検出等で用いる方向性フィルタを用いて構造物を検出するようにしてもよい。
【0102】
続いて、本実施の形態の作用を図7〜図10のフローチャートに従い説明する。
【0103】
図7は、放射線画像撮影準備制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0104】
ステップ200では、撮影指示があったか否かが判断され、該判定が否定された場合にはこのルーチンは終了し、肯定された場合にはステップ202へ移行する。
【0105】
ステップ202では、初期情報入力画面がディスプレイ80に表示されてステップ204へ移行する。すなわち、予め定められた初期情報入力画面をディスプレイ80により表示させるようにディスプレイドライバ92を制御する。
【0106】
ステップ204では、所定情報が入力されたか否かが判定され、該判定が肯定されるまで待機してステップ206へ移行する。初期情報入力画面では、例えば、これから放射線画像の撮影を行う被検者の氏名、撮影対象部位、撮影時の姿勢、および撮影時の放射線Xの照射条件(本実施の形態では、放射線Xを照射する際の管電圧および管電流)の入力を促すメッセージと、これらの情報の入力領域が表示される。
【0107】
初期情報入力画面がディスプレイ80に表示されると、撮影者は、撮影対象とする被検者の氏名、撮影対象部位、撮影時の姿勢、および照射条件を、各々対応する入力領域に操作パネル82を介して入力する。
【0108】
撮影者は、被検者と共に放射線撮影室32に入室し、例えば、臥位である場合は、対応する臥位台36の保持部44に電子カセッテ20を保持させると共に放射線照射源22Aを対応する位置に位置決めした後、被検者を所定の撮影位置に位置(ポジショニング)させる。なお、撮影対象部位が腕部、脚部等の電子カセッテ20を保持部に保持させない状態で放射線画像の撮影を行う場合は、当該撮影対象部位を撮影可能な状態に被検者、電子カセッテ20、および放射線照射源22Aを位置決め(ポジショニング)させる。
【0109】
その後、撮影者は、放射線撮影室32を退室し、例えば、初期情報入力画面の下端近傍に表示されている終了ボタンを、操作パネル82を介して指定する。撮影者によって終了ボタンが指定されると、前記ステップ204が肯定されてステップ206へ移行する。なお、図7のフローチャートでは、ステップ204を無限ループとしたが、操作パネル82上に設けたキャンセルボタンの操作によって、強制終了させるようにしてもよい。
【0110】
ステップ206では、上記初期情報入力画面において入力された情報(以下、「初期情報」という。)を電子カセッテ20に無線通信部96を介して送信した後、次のステップ208へ移行して、前記初期情報に含まれる照射条件を放射線発生装置24へ無線通信部96を介して送信することにより当該照射条件を設定する。これに応じて放射線発生装置24の画像処理制御ユニット102は、受信した照射条件での照射準備を行う。
【0111】
次のステップ210では、ABC制御の起動を指示し、次いで、ステップ212へ移行して、放射線の照射開始を指示する指示情報を放射線発生装置24へ無線通信部96を介して送信し、このルーチンは終了する。
【0112】
次に、図8のフローチャートに従い、放射線画像撮影制御の流れを説明する。図8は、放射線照射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0113】
ステップ300では、照射開始指示があった否かが判断され、否定判定された場合はこのルーチンは終了し、肯定判定された場合はステップ302へ移行する。
【0114】
ステップ302では、定常時放射線量(初期値)XNが読み出されて、ステップ304へ移行する。
【0115】
ステップ304では、読み出された定常時放射線量で照射が開始されてステップ306へ移行する。すなわち、コンソール30から受信した照射上限に応じた管電圧及び管電流を放射線発生装置24に印加することにより、放射線照射源22Aからの照射を開始する。放射線照射源22Aから射出された放射線Xは、被検者を透過した後に電子カセッテ20に到達する。
【0116】
ステップ306では、現在格納されている放射線量補正情報が読み出されてステップ306へ移行する。この放射線量補正情報は、ABC制御によって生成されるものであり、補正係数ΔXとして格納されている。
【0117】
次のステップ308では、ABC制御に基づく補正処理が実行されてステップ310へ移行する。すなわち、電子カセッテ20から得た階調信号(QL値)に基づいて、関心領域画像のQL値の平均値を演算し、このQL値の平均値が予め定めたしきい値と比較され、しきい値に収束するように、放射線量にフィードバック制御される。
【0118】
ステップ310では、撮影終了の指示があったか否かが判断され、該判定が肯定された場合には、ステップ312へ移行し、否定された場合にはステップ306に戻って上述の処理が繰り返される。
【0119】
そして、ステップ312では、照射を終了し、放射線画像撮影制御を終了する。
【0120】
続いて、図9のフローチャートに従い、画像処理制御の流れを説明する。図9は、画像処理制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0121】
上述のように放射線画像撮影制御が行われるとステップ400では、1フレーム分の階調情報が順次取り込まれてステップ402へ移行する。すなわち、電子カセッテ20のTFT基板74によって生成された階調信号が信号取得部122によって順次取り込まれる。
【0122】
ステップ402では、静止画が生成されてステップ404へ移行する。すなわち、1フレーム分の階調信号を取り込んだところで静止画像生成部128によって静止画像を生成する。なお、静止画の生成の際には、後述する階調調整制御によって調整された結果が反映された静止画が生成される。
【0123】
ステップ404では、動画編集処理が行われてステップ406へ移行する。動画編集処理は、静止画像生成部128によって生成された1フレーム毎の静止画像を組み合わせて動画編集が動画編集部130によって行われる。
【0124】
ステップ406では、画像表示処理が行われてステップ408へ移行する。画像表示処理は、動画編集処理によって生成された動画像をディスプレイドライバ92へ送出することにより、ディスプレイドライバ92によってディスプレイ80への表示が行われる。
【0125】
ステップ408では、関心領域設定が行われてステップ410へ移行する。関心領域の設定は、後述する構造物検出及び関心領域抽出処理によって行われる。
【0126】
ステップ410では、関心領域特定部156で特定された関心領域の階調信号が抽出されてステップ412へ移行する。
【0127】
ステップ412では、関心領域の階調信号の平均QL値が平均QL値演算部132によって演算されてステップ414へ移行し、基準QL値メモリ136に格納された基準QL値が読み出されてステップ416へ移行する。
【0128】
ステップ416では、演算された平均QL値と、読み出された基準QL値とがABC制御部134によって比較されて、補正の可否が判定されてステップ418へ移行する。例えば、補正の可否の判定は、比較の結果において、差が所定以上のであれば予め定めた量の補正を行い、差が所定未満であれば補正しないといった所謂オン/オフ判定であってもよいし、差に基づいて、予め定めた演算式(例えば、PID制御等に基づく演算式)による演算の解であってもよい。
【0129】
ステップ418では、ステップ416の比較・補正可否判定結果に基づいて、放射線量の補正情報ΔXがABC制御部134によって生成されて、ステップ420へ移行する。
【0130】
そして、ステップ420では、生成した補正情報ΔXが放射線量調整部120に送出されることにより格納されて、画像処理制御を終了する。
【0131】
次に、図10のフローチャートに従い、構造物検出及び関心領域抽出処理の流れを説明する。図10は、構造物検出及び関心領域抽出ルーチンを示すフローチャートである。
【0132】
ステップ500では、動画編集部130によって生成された動画像の各フレームがフレームメモリ142に順次格納されてステップ502へ移行する。
【0133】
ステップ502では、縮小ボケ画像が生成されてステップ504へ移行する。すなわち、図11に示すように、1/2縮小ボケ画像生成部144によって各フレームの画像が1/2に縮小されると共に、1/4縮小ボケ画像生成部146によって更に1/2縮小されて1/4の画像が生成される。
【0134】
ステップ504では、再拡大画像が生成されてステップ506へ移行する。すなわち、図11に示すように、2倍再拡大部148によって1/2に縮小された画像が2倍に拡大されると共に、4倍再拡大部150によって1/4に縮小された画像が4倍に拡大される。
【0135】
ステップ506では、再拡大された画像が合成されてステップ508へ移行する。すなわち、図11に示すように、元画像、2倍再拡大部148によって拡大された画像、及び4倍再拡大部150によって拡大された画像が合成部152によって合成されてステップ508へ移行する。
【0136】
ステップ508では、構造物候補が合成部152によって検出されてステップ510へ移行する。合成部152では、臓器などの注目対象となる構造物は、ある程度の塊を持った画像となり、ステップ506で合成された画像は、ぼけた画像となるので、図11に示すように、これを検出することによって関心領域候補となる構造物を検出することができる。例えば、所定の面積以上の濃度の塊を構造物として検出することにより、容易に構造物候補を検出することができる。
【0137】
ステップ510では、フレーム間差分処理部154によってフレーム間の差分が算出されてステップ512へ移行する。フレーム間の差分は、図12に示すように、構造物検出部138によって検出された構造物についてフレーム間の差分を求める。例えば、構造物候補の大きさの差分を求めることにより、構造物の変動量を求めることができる。
【0138】
ステップ512では、構造物候補が複数存在するか否かが関心領域抽出部140で判定される。該判定は、ステップ510で検出された構造物候補のうち所定値以上の変動量を有する構造物候補が複数あるか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ514へ移行し、肯定された場合にはステップ516へ移行する。
【0139】
ステップ514では、検出された構造物候補が関心領域特定部156によって関心領域として特定されてステップ518へ移行する。
【0140】
一方、ステップ516では、最も変動量が大きい構造物が関心領域特定部156によって関心領域として特定されてステップ518へ移行する。なお、本実施の形態では、変動が所定値以上で最も変動量が大きい構造物候補を関心領域として特定するが、所定値以上の変動量の構造物が複数存在する場合には、各構造物をそれぞれ関心領域として設定するようにしてもよい。
【0141】
ステップ518では、ROI表示処理が行われて、構造物検出及び関心領域抽出処理を終了する。なお、ROI表示処理としては、動画編集部130へ関心領域が特定された動画像の各フレームを送出することにより、動画編集部130では、特定した関心領域を判別可能とするための処理が施される。そして、ディスプレイドライバ92へ各フレームが送出されることでディスプレイ80へ動画表示される。例えば、図12に示すように、特定された関心領域を点滅する等の処理を行って関心領域を判別可能として、特定された関心領域を動画表示する。
【0142】
このように、本実施の形態では、注目対象の構造物を検出して、検出した構造物についてフレーム間の差分を算出して、差分が所定値以上の構造物を関心領域として特定するようにしている。これによって、動きのある関心領域を特定することができるので、心臓や血管中のカテーテルなどを関心領域として容易に設定することができる。
【0143】
なお、上記の実施の形態における各フローチャートで示した処理は、プログラムとして各種記憶媒体に記憶して流通するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0144】
10 放射線情報システム
16 撮影システム
20 電子カセッテ
22 放射線照射制御ユニット
22A 放射線照射源
24 放射線発生装置
26 放射線検出器
30 コンソール
74 TFT基板
80 ディスプレイ
92 ディスプレイドライバ
102 画像処理制御ユニット
104 システム制御部
106 パネル制御部
108 画像処理制御部
120 放射線量調整部
122 信号取得部
128 静止画像生成部
130 動画編集部
132 平均QL値演算部
134 ABC制御部
136 基準QL値メモリ
138 構造物検出部
140 関心領域抽出部
144 1/2縮小ボケ画像生成部
146 1/4縮小ぼけ画像生成部
148 2倍再拡大部
150 4倍再拡大部
152 合成部
154 フレーム間差分処理部
156 関心領域特定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された設定値に応じた放射線照射エネルギーで放射線を照射する放射線照射手段から照射されて被検体を通過した放射線量を、複数の画素を備えた放射線検出器で受け、当該画素毎に受ける放射線量に応じた階調信号を出力する放射線画像撮影手段から出力される前記階調信号に基づいて、1フレームの静止画像情報を生成すると共に、前記静止画像情報を連続的に複数フレーム組み合わせて動画像情報を生成する画像情報生成手段と、
前記画像情報生成手段によって生成された前記動画像情報における各フレームの前記静止画情報に基づいて、注目対象の構造物を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記構造物についてフレーム間の差分を算出し、算出した差分が所定値以上の前記構造物を関心領域として設定する関心領域設定手段と、
前記関心領域設定手段によって設定された前記関心領域を判別可能に、前記動画像情報に基づく動画を表示部に表示するように制御する表示制御手段と、
を備えた放射線動画処理装置。
【請求項2】
前記関心領域設定手段は、フレーム間の前記構造物の大きさの差分を算出する請求項1に記載の放射線動画処理装置。
【請求項3】
前記関心領域設定手段は、前記検出手段によって検出された前記構造物のうち最も差分が大きい構造物を関心領域として設定する請求項2に記載の放射線動画処理装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記静止画像情報に基づいてボケ画像を生成し、生成したボケ画像に基づいて前記構造物を検出する請求項1〜3の何れか1項に記載の放射線動画処理装置。
【請求項5】
前記検出手段は、ガウシアンピラビミッド形成手段及びラプラシアンピラビミッド形成手段の少なくとも一方を用いて前記構造物を検出する請求項4に記載の放射線動画処理装置。
【請求項6】
前記検出手段は、方向性フィルタを用いて前記構造物を検出する請求項4に記載の放射線動画処理装置。
【請求項7】
前記関心領域設定手段によって設定された前記関心領域における前記階調信号に基づいて、少なくとも1フレームの前記静止画像情報の一部における前記階調信号の演算値が予め定めた範囲の値になるように、前記放射線照射手段から照射される前記放射線エネルギーの設定値を所定の制御周期でフィードバック制御する制御手段を更に備えた請求項1〜6の何れか1項に記載の放射線動画処理装置。
【請求項8】
設定された設定値に応じた放射線照射エネルギーで放射線を照射する放射線照射手段から照射されて被検体を通過した放射線量を、複数の画素を備えた放射線検出器で受け、当該画素毎に受ける放射線量に応じた階調信号を出力する放射線画像撮影手段と、
請求項1〜7の何れか1項に記載の放射線動画処理装置と、
を備えた放射線動画撮影装置。
【請求項9】
設定された設定値に応じた放射線照射エネルギーで放射線を照射する放射線照射手段と、
請求項8に記載の放射線動画撮影装置と、
を備えた放射線動画撮影システム。
【請求項10】
設定された設定値に応じた放射線エネルギーで被検体に向けて放射線照射手段から放射線を照射し、被検体を通過した放射線量を、複数の画素を備えた放射線検出器で受け、
当該画素毎に受ける放射線量に応じた階調信号に基づいて、1フレームの静止画像情報を生成すると共に、前記静止画像情報を連続的に複数フレーム組み合わせて動画像情報を生成し、
生成した前記動画像情報における各フレームの前記静止画像情報に基づいて、注目対象の構造物を検出し、
検出した前記構造物についてフレーム間の差分を算出して、算出した差分が所定値以上の構造物を関心領域として設定し、
設定した前記関心領域を判別可能に、前記動画像情報に基づく動画を表示部に表示するように制御する放射線動画処理方法。
【請求項11】
前記差分は、フレーム間の前記構造物の大きさの差分を算出する請求項10に記載の放射線動画処理方法。
【請求項12】
検出した前記構造物のうち最も差分が大きい構造物を関心領域として設定する請求項11に記載の放射線動画処理方法。
【請求項13】
前記構造物は、前記静止画像情報に基づいてボケ画像を生成し、生成したボケ画像に基づいて検出する請求項10〜12の何れか1項に記載の放射線動画処理方法。
【請求項14】
前記構造物は、ガウシアンピラビミッド形成手段及びラプラシアンピラビミッド形成手段の少なくとも一方を用いて検出する請求項13に記載の放射線動画処理方法。
【請求項15】
前記構造物は、方向性フィルタを用いて検出する請求項13に記載の放射線動画処理方法。
【請求項16】
設定された前記関心領域における前記階調信号に基づいて、少なくとも1フレームの前記静止画像情報の一部における前記階調信号の演算値が予め定めた範囲の値になるように、前記放射線照射手段から照射される前記放射線エネルギーの設定値を所定の制御周期で更にフィードバック制御する請求項10〜15の何れか1項に記載の放射線動画処理方法。
【請求項17】
コンピュータを請求項1〜7の何れか1項に記載の放射線動画処理装置を構成する各手段として機能させるための放射線動画撮影プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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