説明

放射線感受性組成物およびそれを含む平板印刷版

【目的】 従来の放射線感受性組成物を更に改良し、特にスペクトルの紫外領域の感受性を高めた、平板印刷版に使用する放射線感受性組成物を提供する。
【構成】 紫外線および赤外線の両方に感受性を有し、ポジ型もしくはネガ型のいずれにも機能することができる平板印刷版を調製するのに適した(1)レゾール樹脂、(2)ノボラック樹脂、(3)ハロアルキル置換されたs−トリアジン、および(4)赤外線吸収剤を含んでなる放射線感受性組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般的に、新規な放射線感受性組成物、特に、平板印刷版におけるそのような組成物の使用に関する。より具体的には、本発明は、レゾール樹脂およびノボラック樹脂の両方を有する放射線感受性組成物、並びにそのような放射線感受性組成物から形成される画像生成層を含んでなる平板印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】平板印刷の技術は油と水の不混和性に基づいており、油性材料もしくはインクは、画像領域によって優先的に保持され、水もしくはファウンテン(fountain)溶液は、非画像領域によって優先的に保持される。適切に調製された面を水で湿らし、そしてインクを塗布する場合、背景もしくは非画像領域は水を保持しインクをはじくのに対し、画像領域はインクを受け入れ水をはじく。画像領域上のインクは、その後、画像が再生される材料(例えば、紙、織物等)の面に転写される。通常、インクは、次にこのインクを画像を再生する材料面に転写する、ブランケットと呼ばれる中間体に転写される。
【0003】非常に広範囲に使用されている平板印刷版のタイプは、アルミニウムベース支持体に塗布した感光性塗膜を有する。この塗膜は、露光される部分を有することにより光に応答することができ、現像プロセスで除去されるように可溶性になる。このような版をポジ型と呼ぶ。反対に、露光される塗膜のその部分が硬化する場合、その版をネガ型と呼ぶ。両方の場合とも、残っている画像領域は、インク−受容性もしくは親油性であり、非画像領域もしくは背景は、水−受容性もしくは親水性である。画像および非画像領域の違いは、良好な接触を保証するために減圧しながら版にフィルムを適用する露光過程において作られる。この版を、その後、光源(紫外線から構成され部分)に露光する。ポジ型版を使用する場合では、版上の画像に対応するフィルム上の領域を、光が版に当たらないように不透明にするのに対し、非画像領域に対応するフィルム上の領域は透明であり、後により可溶性になり除去される塗膜まで光を透過させる。ネガ型版を使用する場合では、逆である。画像領域に対応するフィルム上の領域は透明であり、一方、非画像領域は不透明である。フィルムの透明領域下の塗膜は、光の作用によって硬化され、光が当たらない領域は除去される。従って、ネガ型版の光硬化面は、親油性であり、インクを受け入れるが、現像液の作用を介して除去される塗膜を有していた非画像領域は、不感脂化されるので親水性である。
【0004】ポジ型版もしくはネガ型版としていずれにも使用することができる印刷版の製造が、従来から提案されている。このような版は、ポジもしくはネガのいずれの原画も使用することができるので、用途が広がる利点を有する。ポジ型版もしくはネガ型版としていずれにも使用することができる印刷版の一例は、英国特許第2,082,339号(1982年3 月3 日発行)および米国特許第4,927,741号(1990年5 月22日発行)の各明細書に記載されているものである。これらの特許明細書には、画像生成層が、レゾール樹脂およびオルトキノンジアジドを含み、並びに必要応じてノボラック樹脂も含有する平板印刷版が記載されている。このような版を、像様露光工程、そして水性アルカリ性現像液で現像して露光済み領域から塗膜を除去する工程を有する処理により、ポジ型版として使用することができる。あるいは、像様露光工程、その版を加熱して露光済み領域の塗膜を不溶性形態に変え、版全体を放射線に露光し、前もって未露光の領域を可溶性にし、そして水性アルカリ性現像液で現像してその溶解性領域を除去する工程を含む処理により、ネガ型版として使用することができる。
【0005】ポジ型版もしくはネガ型版としていずれにも使用することができる印刷版の更なる例は、米国特許第4,708,925号(1987年11月24日発行)明細書に記載されているものである。この特許明細書には、画像生成層が、フェノール樹脂および放射線感受性オニウム塩を有する平板印刷版が記載されている。この特許明細書に記載されているように、フェノール樹脂およびオニウム塩の相互作用が、オニウム塩が光分解するときにアルカリ溶解性にもどるアルカリ不溶性組成物を生成する。英国特許第2,082,339号および米国特許第4,927,741号各明細書に記載される版に関して上記するように、同じ処理工程を用いてポジ型版もしくはネガ型版として、印刷版を使用することができる。
【0006】米国特許第4,708,925号明細書に記載される放射線感受性組成物は、ダイレクトレーザーアドレス可能な版の調製に有用である。ディジタル画像形成情報を用いて、写真透明画のような画像形成マスターを用いる必要無しに、版を作ることができる。ポジ型版もしくはネガ型版としていずれにも用いることができる従来技術の上記印刷版は、一つ以上の望ましい特徴を欠いている。それ故、英国特許第2,082,339号明細書に記載される版は、赤外線感受性でなく、このため、赤外領域で放射するレーザーによりディジタルに画像を描くことができない。その上、英国特許第2,082,339号および米国特許第4,708,925号明細書記載の版の両方とも、ネガ型版として使用するために二つの露光工程(即ち、像様露光およびその後の全体露光)を必要とする。このことは、処理のコストおよび複雑性を非常に高める。高速処理のための商業上の要求に合わせながら、複数露光工程を必要とする処理を実施することの困難さが、米国特許第4,927,741号明細書に記載されている。
【0007】(1)レゾール樹脂、(2)ノボラック樹脂、(3)潜伏性ブロンステッド酸、および(4)赤外線吸収剤を含んでなる放射線感受性組成物が、米国特許第5,372,907号(1994年12月13日発行)明細書に記載されている。この組成物は、ポジ型版もしくはネガ型版のいずれにも用いることができる平板印刷版を調製するのに有用である。ポジ型版としてこの平板印刷版を用いるためには、これを活性放射線に対して像様露光することにより、露光済み領域をアルカリ可溶性にし、水性アルカリ性現像液に接触させて、露光済み領域を除去することが必要である。ネガ型版としてこの平板印刷版を用いるためには、これを活性放射線に対して像様露光し、この版を加熱して露光済み領域の溶解性を小さくし、未露光領域の溶解性を高め、水性アルカリ性処理液に接触させて、未露光領域を除去する工程が必要である。英国特許第2,082,339号明細書および米国特許第4,708,925号明細書の印刷版とは反対に、レゾール樹脂およびノボラック樹脂の両方を用いることが、必須であり、二つの露光工程を用いることは必要でない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】米国特許第5,372,907号明細書の放射線感受性組成物は、当該技術分野の大きな進歩を示すが、その特性を更に改良すること、特にスペクトルの紫外領域における感受性を高める改良により、利益が得られるであろう。本発明の目指すところは、そのような追加の改良を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によると、新規放射線感受性組成物は、(1)レゾール樹脂、(2)ノボラック樹脂、(3)潜伏性ブロンステッド酸、および(4)赤外線吸収剤を含んでなり、前記潜伏性ブロンステッド酸が、ハロアルキル置換されたs−トリアジンであることを特徴とする。この組成物は多種多様の用途を有し、例えば、フォトレジストとして有用であるが、支持体および前記放射線感受性組成物から形成される画像生成層を含んでなる平板印刷版の製造に特に有用である。得られる印刷版は有利な特性を多く有する。特に、この版は:(1)赤外線に対する露光によるディジタル画像形成を容易にする赤外線感受性であり、(2)画像形成マスターを通して紫外線に露光することによる光学的画像形成を容易にする紫外線感受性であり、そして(3)室内光での取扱を容易にするように、可視放射線に対して実質的に不感受性である。
【0010】本明細書に記載する新規印刷版の特徴は、活性放射線に対して像様露光し、次ぎに加熱すると、露光済みおよび未露光領域において逆の効果を与えることである。特に、露光済み領域では、画像生成層は水性アルカリ性現像液においてほとんど可溶性にならないが、未露光領域では、それはその溶液中でより可溶性となる。これらの逆の効果は、高スピードおよび高コントラストの双方に寄与し、その両方とも、平板印刷版において望ましい特性である。
【0011】本発明の印刷版は、赤外線感受性であるので、ディジタル画像形成情報を都合良く用いて、赤外領域でのレーザーダイオード放射のような適切な赤外線源を使用する、連続もしくはハーフトーン画像を形成することができる。本発明の印刷版は、紫外線感受性でもあるので、ハロゲン化銀フィルムのような適切な画像形成マスターを通して紫外線露光することにより、連続もしくはハーフトーン画像を形成するように都合良く画像を形成することもできる。これらの特徴のため、同じ版を、レーザーで描くことにより電子データのインプットを意図する装置、もしくは平板印刷版の紫外線露光を実施するのに一般的に用いられるタイプの装置において用いることができる。このように、ディジタルもしくは電子画像形成技法を通常の光学的画像形成技法と組み合せること(即ち、同じ印刷版で両方のタイプの画像形成を用いる)は容易なことである。従って、電子フォーマットでは得られない情報を、光学的画像形成技法により追加し(そのようにすることが望ましい場合)平板印刷版の画像形成を完成する。
【0012】本発明の平板印刷版をポジ型版として使用するためには、それを活性放射線に対して像様に露光し、それにより露光済み領域をアルカリ可溶性にし、そして、水性アルカリ性現像液と接触させて、露光済み領域を除去することが必要である。それをネガ型版として使用するためには、活性放射線に対して像様に露光し、この版を加熱して露光済み領域の可溶性を減らし、未露光領域の可溶性を高め、そして、水性アルカリ性処理液と接触させて、未露光領域を除去する工程が必要である。英国特許第2,082,339号明細書および米国特許第4,708,925号明細書に記載の印刷版と比較すると、レゾール樹脂およびノボラック樹脂の両方の使用が、必須であり、そして二つの露光工程を使用することは必要でない。
【0013】出願人は、本発明が機能する方法を理論的説明することによって、限定することは望まないが、本発明が、露光済み版を加熱するときに生じる酸触媒された化学的増幅メカニズムに基づいていることが信じられる。このメカニズムは、樹脂混合物を硬化することにより、露光済み領域の溶解性を減少させる。同時に、未露光領域の溶解性を高める。これによっては後者の効果を達成するメカニズムは、はっきりとは理解されない。
【0014】ネガ型版としての版のはたらきは、決定的に、レゾール樹脂およびノボラック樹脂の混合物を使用することに依存する。それは、いずれか一方の樹脂を単独で用いても、有効な現像画像を提供しないからである。赤外線に版を露光することは、露光済み領域の赤外線吸収剤およびハロアルキル置換したs−トリアジンの両方を分解すると信じられる。分解生成物が、レゾール樹脂とノボラック樹脂との間の反応を触媒して、加熱後に、水性アルカリ性現像液中で不溶性であるマトリックスを形成すると信じられる。
【0015】また紫外線に露光すると、ハロアルキル置換したs−トリアジンが分解されて、レゾール樹脂とノボラック樹脂との間のマトリックス生成反応を触媒するハロゲン酸を生じる結果となる。この版は、スペクトルの紫外および赤外領域の両方において、高い等級の感受性を有する。言い替えれば、それは、二つの異なる波長で露光することができる。
【0016】
【具体的な態様】上記のように、本発明の放射線感受性組成物は、(1)レゾール樹脂、(2)ノボラック樹脂、(3)ハロアルキル置換したs−トリアジンおよび(4)赤外線吸収剤を含んでなる。レゾール樹脂は、周知であり、広く市販されている。レゾール樹脂は、フェノール化合物をアルデヒド類に反応させて得られるフェノール樹脂である。本発明の有用なレゾール樹脂の典型的な例は、ビスフェノールAおよびホルムアルデヒドから調製される樹脂である。市販されている好ましいレゾール樹脂は、ユニオンカーバイドコーポレーション(Union Carbide Corporatioin)から入手できるUCARフェノール樹脂BKS−5928である。ノボラック樹脂もまた周知であり、商業ベースで広く用いられている。これらもまた、フェノール化合物をアルデヒド類に反応させて(しかし、レゾール樹脂を生成するのとは異なる反応条件下)得られるフェノール樹脂である。本発明に有用なノボラック樹脂の典型的な例は、m−クレゾールおよびホルムアルデヒドから調製される樹脂である。市販の好ましいノボラック樹脂は、イーストマンコダック(Eastman Kodak Company )から入手可能なN−9P NOVOLAKである。
【0017】レゾール樹脂およびノボラック樹脂の違い、並びにそれらの調製において用いられる方法は、米国特許第4,708,925号明細書および英国特許第2,082,339号明細書に記載されている。これらの特許明細書に詳細に記載されているレゾール樹脂およびノボラック樹脂はまた本発明においても有用であるが、本発明が、レゾール樹脂およびノボラック樹脂を両方共必要とするのに対して、これらの特許のいずれにおいても両方の樹脂の使用は必要でない。
【0018】本発明の放射線感受性組成物は、レゾール樹脂およびノボラック樹脂を両方共含有しなければならない。レゾール樹脂が除かれると、水性アルカリ性現像液と接触させても、未露光領域から塗膜を除去せず、この方法で処理された印刷版は有効でないので、像様露光工程および加熱工程はネガ画像形成の有用な手段を提供できない。ノボラック樹脂が除かれる場合は、水性アルカリ性現像液と接触させると、露光済みおよび未露光領域の両方から塗膜が除去され、この方法で処理された印刷版は有効でないので、この像様露光工程および加熱工程もまた、ネガ画像形成の有用な手段を提供できない。
【0019】本発明の放射線感受性組成物の三番目の必須の構成要素は、ハロアルキル置換したs−トリアジンである。ハロアルキル置換したs−トリアジンは、周知の光分解性酸発生剤である。この目的でのこれらの化合物の使用は、例えば、米国特許第3,779,778号明細書に記載されている。本発明に使用するのに好ましいハロアルキル置換したs−トリアジン類は、次式の化合物である:
【0020】
【化1】


【0021】(式中、R1 は、置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族基であり、R2 およびR3 は、独立して、ハロアルキル基である)
上記式では、R2 およびR3 が、炭素数1〜4のハロアルキル基であることが特に好ましい。R1 は、s−トリアジン化合物の光分解性酸発生能力に悪い影響を与えないいずれの置換基も含むことができる。そのような置換基には、アルキル基およびアルコキシ基が含まれる。
【0022】本発明に使用するのに特に好ましいハロアルキル置換したs−トリアジン類は、次式の化合物である:
【0023】
【化2】


【0024】(式中、R1 は、置換もしくは非置換の脂肪族または芳香族基であり、各Xは、独立して、ハロゲン原子である)
本発明に使用するのに最も好ましいハロアルキル置換したs−トリアジン類は、次式の化合物である:
【0025】
【化3】


【0026】(式中、Rは、例えば、フェニルもしくはナフチル等の炭素数6〜15のアリール基である)
本発明に使用するのに好ましいハロアルキル置換したs−トリアジン類の特定の例には、次式の化合物が含まれる:
【0027】
【化4】


【0028】
【化5】


【0029】本発明の放射線感受性組成物の四番目の必須の構成要素は、赤外線吸収剤である。赤外線吸収剤は、この組成物を赤外線に対して感受性にし、赤外領域で放射するレーザーーに露光することにより画像形成することができるダイレクトレーザーアドレス可能な版として、その版を有効にする。赤外線吸収剤は、色素もしくは顔料であっても良い。そのような化合物の多くは当該技術分野において周知であり、スクアリリウム(squarylium)、クロコネート、シアニン、メロシアニン、インドリジン、ピリリウムおよび金属ジチオレン類が含まれる。分解生成物が、画像および非画像領域の間の高められたコントラストを促進し、それにより現像処理を助けるので、活性放射線に露光するとき、赤外線吸収剤が、断片化することが好ましい。
【0030】本発明において実用的である、追加の赤外線吸収剤には、米国特許第5,166,024号(1992年11月24日発行)明細書に記載されるものが含まれる。この明細書に記載されるように、特に有用な赤外線吸収剤は、フタロシアニン顔料である。既に説明したように、本発明の放射線感受性組成物の四つの必須の構成要素は、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、ハロアルキル置換したs−トリアジンおよび赤外線吸収剤である。必要に応じて、この組成物に、組み入れても良いその他の成分には、着色剤、安定剤、追加の増感剤、露光指持薬および界面活性剤が含まれる。
【0031】本発明の印刷版の画像生成層の厚さは、非常に広範囲に変わることができる。典型的には、約0.5〜約2μm、より好ましくは約1〜1.5μmの範囲の乾燥厚が適当である。本発明の平板印刷版は、アルミニウムもしくはその他の金属から形成される支持体、ポリエステルのようなポリマーから形成される支持体、そしてポリマーコート紙から形成される支持体を包含する平板印刷版のために通常使用されるいずれの支持体も用いることができる。好ましい支持体材料は、研磨された陽極処理アルミニウムである。
【0032】印刷版を作るため、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、ハロアルキル置換したs−トリアジンおよび赤外線吸収剤を、適当な割合で、適当な溶媒に溶解するか分散して、スピンコートもしくはホッパーコートのような周知のコーティング技法を用いて支持体に塗布する。好ましい溶媒には、アセトンおよび1−メトキシ−2−プロパノールが含まれる。レゾール樹脂およびノボラック樹脂を塗膜組成物中にそれぞれ、約1.5〜約6重量%、より好ましくは約2.5〜約5.5重量%、そして最も好ましくは、約4.5〜約5.3重量%の量で混合する。ハロアルキル置換したs−トリアジンを、塗膜組成物中に、約0.1〜約2重量%、より好ましくは約0.3〜約1.5重量%、そして最も好ましくは、約0.5〜約1重量%の量で混合する。赤外線吸収剤を、塗膜組成物中に、約0.15〜約1.1重量%、より好ましくは約0.45〜0.9重量%、そして最も好ましくは、約0.68重量%〜約0.88重量%の量で混合する。
【0033】この層を乾燥する適切な条件として、約20℃〜約150℃の範囲の温度で、約0.5〜約10分間の加熱を必要とする。本発明の平板印刷版を、スペクトルの近赤外領域において放射線を放出するレーザーダイオードを用いて露光することができる。このようなレーザーダイオードは、低コストおよび低エネルギー消費の両方において利点を提供する。この平板印刷版は、カーボンアーク灯、水銀蒸気灯、蛍光灯、タングステンフィラメントランプおよび写真電球を含む通常の紫外線源を用いて露光することもできる。
【0034】この印刷版を露光すると、結果として、明るい緑色の背景上に赤みがかった黄色として典型的に目に見える画像を形成する。特に適切な露光装置は、約800nmで最大出力を有するレーザーダイオードである。このような装置は、典型的に、露光済み領域のハロアルキル置換したs−トリアジンおよび赤外線吸収剤を分解することができる。この熱分解に由来する生成物は、主として、前記樹脂を架橋するのに有効な強酸であり、それにより水性アルカリ性現像液中での溶解性を変える。
【0035】既に記載したように、ネガ型処理では、像様露光した版を、後露光焼付け(post-exposure bake)すなわちPEBと呼ぶ工程で加熱する。この加熱工程を、約75℃〜約150℃の温度範囲で、約15〜約300秒間行う。より好ましくは、この加熱は、約90℃〜110℃の温度範囲で、約30〜約90秒間である。PEBが完了した後、水性アルカリ性現像液中で、版を非画像領域が除去されるまで手処理するかもしくは機械処理するかのいずれかを行う。この処理は、典型的に約30〜約120秒を必要とする。好ましい水性アルカリ性現像液は、メタ珪酸ナトリウムの6重量%水溶液のような珪酸塩溶液である。この目的のための市販されている適当な珪酸塩溶液は、イーストマン コダック カンパニーにより販売されているKODAK AQUA-IMAGE POSITIVE DEVELOPER MX-1406-1 である。水性アルカリ性現像液に接触させた後、この版をアラビアゴムのような仕上げ剤で、普通に処理する。
【0036】得られる刷りの回数は、主として、後露光焼付け工程の使用に依存する。そのような焼付け工程を用いない場合、この版は典型的に約60000〜70000刷りを与えるが、250℃で約5分間、後現像焼付けをすると約300000〜約350000刷りを与える。摩耗が見つかる前に達成することができる刷りの回数は、また、塗膜重量を増やすことによっても増加させることができる。
【0037】レゾール樹脂およびノボラック樹脂の混合物を用いることにより、後露光加熱するとき、露光済み領域の溶解性を抑制し、そして未露光領域の溶解性を高める両方の反応を行う印刷版を提供することを見出したことは、驚きであった。この特徴は、紫外線および赤外線感受性の両方の特徴と相まって、非常に用途の広い印刷版を提供する。このように、例えば、この印刷版に関して、使用される主な画像形成技法は、赤外線を用いるディジタル画像形成となることができるが、そのような情報がディジタルフォーマットで利用できない場合、通常の紫外線露光を用いて、非ディジタル情報を印刷処理に加えることができる。画像および非画像領域が、同時に反対方向に作用するので、より高いスピード、より大きいコントラスト、そしてより簡単な処理条件が達成される。本発明以前は、公知の平板印刷版はこれらの望ましい特徴をすべて持っていなかった。
【0038】
【実施例】本発明を、次ぎの実施例によりさらに説明する。
例11−メトキシ−2−プロパノール100mlに:(1)2−ブタノンおよび1−メトキシ−2−プロパノールの混合物中のレゾール樹脂(ユニオンカーバイドコーポレーションから入手可能なUCARフェノール樹脂BKS−5928)の30重量%溶液10ml;
(2)アセトン中のノボラック樹脂(イーストマンコダックカンパニーから入手可能なN−9P NOVOLAK樹脂)の30重量%溶液10ml;
(3)アセトニトリル2ml中、2gのトリアジン T−2;そして(4)1−メトキシ−2−プロパノール10ml中に溶解した、次ぎの構造式:
【0039】
【化6】


【0040】を有する赤外線吸収色素0.5g;を加える。得られた溶液を、電気化学的研磨しかつ陽極処理したアルミニウム板上に、30回転/分で、1分間、スピンコートして、100℃で1分間、強制空気オーブン中で、乾燥した。冷却後、この版を、830nmを中心とする変調パルスを放射する500mwダイオードレーザーを用いて画像形成した。画像形成後、この版を、100℃で1分間、強制空気オーブン中で加熱、冷却して、KODAK AQUA IMAGEポジ機械現像液 MX-1406-1を用いて、機械処理装置で処理した。得られた画像をアラビアゴムの5%溶液を塗ることにより仕上げ、クロスで手磨きした。この画像は、促進摩耗テストに基づいて、70000刷りの予想ランレングスを有した。2番目の版を、1番目と同じように、250℃で5分間焼付けし、これは350000刷りの予想ランレングスを有した。
【0041】米国特許第5,372,907号明細書の例1に記載する印刷版との比較では、上記印刷版は、焼出し濃度が低い以外は、より大きな現像のラティチュード、より速い巻き取り、およびより高い画像濃度を示した。
【0042】例22.0gのトリアジン T−2にの代わりに、1.0gのトリアジン T−3を用いた以外は、例1に記載したものと同様の平板印刷版を調製した。焼出し濃度がより高かった以外は、例1に記載したものと同じような結果を達成した。
【0043】例32.0gのトリアジン T−2にの代わりに、0.3gのトリアジン T−5を用いた以外は、例1に記載したものと同様の平板印刷版を調製した。例1に記載したものと同じような結果を達成した。
【0044】例42.0gのトリアジン T−2にの代わりに、0.5gのトリアジン T−1を用いた以外は、例1に記載したものと同様の平板印刷版を調製した。焼出し濃度がより低く、そして処理後の画像濃度がより低かった以外は、例1に記載したものと同じような結果が得られた。
【0045】比較例Aレゾール樹脂を省略し、そして追加の1−メトキシ−2−プロパノール10mlを加えた以外は、例1に記載したものと同様の平板印刷版を調製した。例1に記載したのと同じ方法で露光し、処理した後、非画像領域が残存した、役に立たない印刷版を生じた。
【0046】比較例Bノボラック樹脂を省略し、そして追加の1−メトキシ−2−プロパノール10mlを加えた以外は、例1に記載したものと同様の平板印刷版を調製した。例1に記載したのと同じ方法で露光し、処理した後、画像および非画像領域両方の全体の塗膜が版から除去され、役に立たない印刷版を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (1)レゾール樹脂、(2)ノボラック樹脂、(3)ハロアルキル置換されたs−トリアジン、および(4)赤外線吸収剤を含んでなる放射線感受性組成物。
【請求項2】 支持体、並びに紫外線および赤外線の両方に感受性を有しそしてポジ型もしくはネガ型方法のいずれにも機能することができる(1)レゾール樹脂、(2)ノボラック樹脂、(3)ハロアルキル置換されたs−トリアジン、および(4)赤外線吸収剤を含んでなる画像生成層を含んでなり、前記画像生成層が、活性放射線に対する像様露光工程および加熱工程により、水性アルカリ性現像液中での前記画像生成層の溶解性が露光済み領域で低下し、未露光領域で高められる平板印刷版。