放射線検出器
【課題】臨界事象と宇宙線入射を弁別して宇宙線による誤警報を防止することのできる臨界警報装置用の放射線検出器を提供する。
【解決手段】放射線を検出して検出信号を発生する検出部(8,9)と、前記検出部に接続されて前記検出信号に含まれる宇宙線の信号を除去する演算回路(12,13,14,15,16)と、前記演算回路に接続されて臨界の信号を出力する出力部(10,11)とを備えている構成とする。
【解決手段】放射線を検出して検出信号を発生する検出部(8,9)と、前記検出部に接続されて前記検出信号に含まれる宇宙線の信号を除去する演算回路(12,13,14,15,16)と、前記演算回路に接続されて臨界の信号を出力する出力部(10,11)とを備えている構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を取扱う場所に設置されて臨界事故検出のために使用される放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
臨界警報装置は、臨界事故が発生した場合に放出される放射線を検知し、区域作業者に対して警報等により臨界事故の発生を知らせて速やかな退避を促し、外部から区域への接近を防止することにより作業員等の被曝を可能な限り低減することを目的としている。このように重要な位置づけであるために、臨界事象を確実に捉えることが必要であり、警報の影響が大きいため、ノイズなど別の要因による誤警報を極力避ける必要があり、高い信頼性が要求されている。従来、臨界の検知は発生するガンマ線の強度が所定の値以上になったことにより行われている。下記特許文献1にも示されているように、検出器を3本一組として、その内の2本以上の検出器が所定の値以上の数値を示した時に警報が発報されるようになっている。
【0003】
図12に従来の臨界警報装置の構成を示す。放射線検出器1は3台一組となっている。3台の放射線検出器1の各信号は3つの信号に分岐され3台の2/3論理回路2に接続される。2/3論理回路2は、3台の放射線検出器1の内2台以上の検出器が所定のレベル以上の信号となった場合に出力を出す。警報発生ユニット3は、3台の2/3論理回路2の出力を内部の2/3論理回路4で信号処理し、3系統の内2つ以上で信号が出た場合に臨界信号をホーンブロア6および回転灯7に出力し区域作業者に退避を促し、外部から区域への接近を防止する。放射線検出器1および2/3論理回路2が3台あるのは、1台が故障しても残りの2台で機能を維持し、また2台以上の信号を必要条件として、ノイズまたは故障などによる誤警報を防止するためである。
【0004】
図13に放射線検出器1の従来の構成を示す。検出部はプラスチックシンチレータ8と光電子増倍管9からなり、外部からのガンマ線がプラスチックシンチレータ8で光に変換され、光電子増倍管9で光電子増倍され電気信号に変換される。電電気信号は出力部を構成するOPアンプ10で電流―電圧変換され、次段の比較器11で所定の値以上のレベルになった場合に検出器信号が出力される。
【特許文献1】特開平5−264737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、臨界警報装置のバックグランド信号として頻度は低いが波高値の高い信号が測定されており、波高値が高くなるほど頻度が低くなる傾向がある。このバックグランド信号の原因としては宇宙線が考えられている。宇宙線の場合、半径数mの領域に強度の高い部分を持つカスケード現象があり、放射線検出器1が比較的短距離に配置されている場合には、3台中1台または2台の検出器で臨界レベルの信号が検出される可能性がある。3台中1台の場合は、検出器の故障または外来ノイズ環境の変化などの可能性があり必要により検出器の交換、環境ノイズ調査などが必要となる。3台の放射線検出器の内2台以上の検出器で臨界レベルの信号が出た場合は、臨界条件が成立し、誤警報の発報となり、大きな問題となる。
【0006】
臨界事象は、放射性物質が所定の密度を超えて一ヶ所に集まった場合に発生する。臨界状態になった場合、発熱などの効果で物質が散逸し臨界が停止する。当該物質が散逸するには、慣性などにより所定の時間を要する。所定の時間としては、臨界事象の場合、1〜3msと言われている(最小継続時間)。一方、宇宙線の場合、高エネルギーの一次宇宙線が大気中のN,Oなどの原子と相互作用し、カスケード現象を発生し、地上に二次宇宙線として到達し、放射線検出器で検出される。このため、宇宙線による信号の時間幅は、短く、10−9s程度と言われている。
【0007】
臨界事象による信号と宇宙線事象による信号の関係を図14に示す。光電子増倍管9の出力信号は宇宙線の場合、波高値の高い短パルスとなり、臨界事象の場合には長パルスで波高値の低い信号となる。次段のOPアンプ10の出力信号では、回路の時定数の関係から光電子増倍管9の信号波形が積分される。臨界事象として検知される宇宙線事象の波形の場合、面積がほぼ等しく、図14に示すように積分された波形はほぼ同じ波形となっている。OPアンプ10の出力が一定値を超えた場合、比較器11から、事象の区別なく臨界信号が出力されるため宇宙線事象でも臨界警報の誤警報が出る可能性がある。
【0008】
本発明は、臨界事象と宇宙線入射を弁別して宇宙線による誤警報を防止することのできる臨界警報装置用の放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線検出器は、放射線を検出して検出信号を発生する検出部と、前記検出部に接続されて前記検出信号に含まれる宇宙線の信号を除去する演算回路と、前記演算回路に接続されて臨界の信号を出力する出力部とを備えている構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、臨界事象と宇宙線入射を弁別して宇宙線による誤警報を防止することのできる臨界警報装置用の放射線検出器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の第1の実施例の放射線検出器は、図1に示すように、プラスチックシンチレータ8および光電子増倍管9からなる検出部と、この検出部に接続された高速OPアンプ12とスイッチ13と比較器14と遅延回路15とタイマー16からなる演算回路と、この演算回路に接続されたOPアンプ10と比較器11からなる出力部を備えている。プラスチックシンチレータ8の光信号を光電子増倍管9で電気信号に変換し高速OPアンプ12で電流−電圧変換する。高速OPアンプ12の出力を分岐し一方はスイッチ13に、もう一方は比較器14で図2に示すように信号処理する。更に遅延回路15で所定の時間ΔT2だけ時間を遅らせ、次段のタイマー16でΔT2後に信号を出力する。スイッチ13はタイマー16の信号を起点として所定の時間ΔT3だけONになる。
【0012】
ΔT3は、臨界事象の最小継続時間1〜3msの数倍程度である。ΔT2は、高速OPアンプ12の宇宙線信号出力の時間幅の2倍程度の幅とする。宇宙線の場合、信号の幅ΔT0(図14に図示)がΔT0<<ΔT2であり、高速OPアンプ12の出力があるときはスイッチ13がoffであり、OPアンプ10には信号入力はないため、警報信号は出力されない。
【0013】
一方通常の臨界事故の場合、図3の示すように、光電子増倍管9の出力信号および高速OPアンプ12の出力信号の時間幅ΔT4は、ΔT4>>ΔT2であるので、OPアンプ10には信号入力があり臨界信号が出力される。図3のOPアンプ10の出力信号の破線は従来の場合のOPアンプ10の出力を示す。わずかに波高値が低くなり、信号の時間遅れがあるが、臨界事象の時間スケール(ms)に比較して非常に短いため、臨界警報機能を損なうことはない。
【0014】
図4に、本実施の形態の第2の実施例を示す。前記第1の実施例(図1)では、スイッチ13は回路に直列に接続され、常時off、イベント発生時にonとなる動作をするが、この第2の実施例では、スイッチ13は回路に並列に接続され常時on、イベント発生時offとなる。on状態で信号を遮断し、off状態で信号を通過させる。動作は第1の実施例の図2,図3と同じである。
【0015】
図5に本実施の形態の第3の実施例を示す。第1の実施の形態の場合、宇宙線事象に係わる短パルス信号の影響を演算回路により自動的に除去しており、除去した事実が記録に残らない。この第3の実施例では比較器14によって接点出力17を発生し宇宙線事象の発生を出力する。
【0016】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の第1の実施例の放射線検出器は、図6に示すように、プラスチックシンチレータ8と光電子増倍管9からなる検出部の出力側に高速OPアンプ12とクリップ回路18からなる演算回路とOPアンプ10と比較器11からなる出力部を順次接続した構成である。
【0017】
宇宙線事象の場合の動作は、図7に示すように、高速OPアンプ12の出力端に回路に並列に接続したクリップ回路18で、所定の波高値(クリップ電圧)以上の信号をクリップする。クリップされた信号は短パルスでしかも波高値が低くなり、波形の面積が小さいため、OPアンプ10で積分された出力信号は、波高値が所定のレベル(比較器11の参照電圧)以下となり出力部信号は発生しない。
【0018】
臨界事象の場合の動作は、図8に示すように、光電子増倍管9の出力および高速OPアンプ12の出力信号の波高値が低いため、クリップ回路18を経ても大部分の信号が生き残る。そのうえ波形の面積が大きいため、OPアンプ10出力は、比較器11の所定のレベル(参照電圧)以上となり臨界警報信号が発生する。
【0019】
本実施の形態の第2の実施例の放射線検出器の構成を図9に示す。第1の実施例(図6)の場合、クリップ回路18により、宇宙線事象による信号は自動的に削除されるため、記録に残らないが、この第2の実施例では、クリップ回路18が動作した信号により接点出力19を出すので記録を残すことができる。
【0020】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の放射線検出器の構成を図10に示す。本発明の放射線検出器は、プラスチックシンチレータ8および光電子増倍管9からなる検出部に接続された高速OPアンプ12と遅延回路15とスイッチ13と比較器14とタイマー16からなる演算回路とOPアンプ10と比較器11からなる出力部を備えている。
【0021】
動作は図11に示すように、高速OPアンプ12の出力を比較器14で、通常の臨界事象信号の波高値より高い電圧を参照電圧として信号処理する。タイマー16は、比較器14の出力信号を起点としてΔT3(=ΔT2+宇宙線事象信号の時間幅の約2倍)の間だけ信号を出力する。スイッチ13は、その間だけ開状態となる。一方、高速OPアンプ12の出力信号は、遅延回路15でΔT2だけ遅延されており、ΔT2<ΔT3の関係から、遅延回路15出力がある間はスイッチ13が開となっておりOPアンプ10への入力はゼロとなる。通常の臨界事象信号の場合、比較器14の参照電圧が波高値より高く、比較器14は信号を出力せず、スイッチ13は閉のままであり、正常に信号が伝送され臨界警報信号が出力される。このようにしてパルス幅が短く波高値の高い宇宙線事象信号のみが除去される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の第1実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図2】本発明の第1の実施形態の第1実施例の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【図3】本発明の第1の実施形態の第1実施例の放射線検出器の臨界事象の場合の動作を示す波形図。
【図4】本発明の第1の実施形態の第2実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図5】本発明の第1の実施形態の第3実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図6】本発明の第1の実施形態の第1実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図7】本発明の第2の実施形態の第1実施例の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【図8】本発明の第2の実施形態の第1実施例の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【図9】本発明の第2の実施形態の第2実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図10】本発明の第3の実施形態の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図11】本発明の第3の実施形態の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【図12】従来の臨界警報装置の構成を示すブロック図。
【図13】従来の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図14】従来の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【符号の説明】
【0023】
1…放射線検出器、2,4…2/3論理回路、3…警報発生ユニット、5…OR回路、6…ホーンブロア警報器、7…回転灯警報器、8…プラスチックシンチレータ、9…光電子増倍管、10…OPアンプ、11,14…比較器、12…高速OPアンプ、13…スイッチ、15…遅延回路、16…タイマー、17,19…接点出力、18…クリップ回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を取扱う場所に設置されて臨界事故検出のために使用される放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
臨界警報装置は、臨界事故が発生した場合に放出される放射線を検知し、区域作業者に対して警報等により臨界事故の発生を知らせて速やかな退避を促し、外部から区域への接近を防止することにより作業員等の被曝を可能な限り低減することを目的としている。このように重要な位置づけであるために、臨界事象を確実に捉えることが必要であり、警報の影響が大きいため、ノイズなど別の要因による誤警報を極力避ける必要があり、高い信頼性が要求されている。従来、臨界の検知は発生するガンマ線の強度が所定の値以上になったことにより行われている。下記特許文献1にも示されているように、検出器を3本一組として、その内の2本以上の検出器が所定の値以上の数値を示した時に警報が発報されるようになっている。
【0003】
図12に従来の臨界警報装置の構成を示す。放射線検出器1は3台一組となっている。3台の放射線検出器1の各信号は3つの信号に分岐され3台の2/3論理回路2に接続される。2/3論理回路2は、3台の放射線検出器1の内2台以上の検出器が所定のレベル以上の信号となった場合に出力を出す。警報発生ユニット3は、3台の2/3論理回路2の出力を内部の2/3論理回路4で信号処理し、3系統の内2つ以上で信号が出た場合に臨界信号をホーンブロア6および回転灯7に出力し区域作業者に退避を促し、外部から区域への接近を防止する。放射線検出器1および2/3論理回路2が3台あるのは、1台が故障しても残りの2台で機能を維持し、また2台以上の信号を必要条件として、ノイズまたは故障などによる誤警報を防止するためである。
【0004】
図13に放射線検出器1の従来の構成を示す。検出部はプラスチックシンチレータ8と光電子増倍管9からなり、外部からのガンマ線がプラスチックシンチレータ8で光に変換され、光電子増倍管9で光電子増倍され電気信号に変換される。電電気信号は出力部を構成するOPアンプ10で電流―電圧変換され、次段の比較器11で所定の値以上のレベルになった場合に検出器信号が出力される。
【特許文献1】特開平5−264737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、臨界警報装置のバックグランド信号として頻度は低いが波高値の高い信号が測定されており、波高値が高くなるほど頻度が低くなる傾向がある。このバックグランド信号の原因としては宇宙線が考えられている。宇宙線の場合、半径数mの領域に強度の高い部分を持つカスケード現象があり、放射線検出器1が比較的短距離に配置されている場合には、3台中1台または2台の検出器で臨界レベルの信号が検出される可能性がある。3台中1台の場合は、検出器の故障または外来ノイズ環境の変化などの可能性があり必要により検出器の交換、環境ノイズ調査などが必要となる。3台の放射線検出器の内2台以上の検出器で臨界レベルの信号が出た場合は、臨界条件が成立し、誤警報の発報となり、大きな問題となる。
【0006】
臨界事象は、放射性物質が所定の密度を超えて一ヶ所に集まった場合に発生する。臨界状態になった場合、発熱などの効果で物質が散逸し臨界が停止する。当該物質が散逸するには、慣性などにより所定の時間を要する。所定の時間としては、臨界事象の場合、1〜3msと言われている(最小継続時間)。一方、宇宙線の場合、高エネルギーの一次宇宙線が大気中のN,Oなどの原子と相互作用し、カスケード現象を発生し、地上に二次宇宙線として到達し、放射線検出器で検出される。このため、宇宙線による信号の時間幅は、短く、10−9s程度と言われている。
【0007】
臨界事象による信号と宇宙線事象による信号の関係を図14に示す。光電子増倍管9の出力信号は宇宙線の場合、波高値の高い短パルスとなり、臨界事象の場合には長パルスで波高値の低い信号となる。次段のOPアンプ10の出力信号では、回路の時定数の関係から光電子増倍管9の信号波形が積分される。臨界事象として検知される宇宙線事象の波形の場合、面積がほぼ等しく、図14に示すように積分された波形はほぼ同じ波形となっている。OPアンプ10の出力が一定値を超えた場合、比較器11から、事象の区別なく臨界信号が出力されるため宇宙線事象でも臨界警報の誤警報が出る可能性がある。
【0008】
本発明は、臨界事象と宇宙線入射を弁別して宇宙線による誤警報を防止することのできる臨界警報装置用の放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線検出器は、放射線を検出して検出信号を発生する検出部と、前記検出部に接続されて前記検出信号に含まれる宇宙線の信号を除去する演算回路と、前記演算回路に接続されて臨界の信号を出力する出力部とを備えている構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、臨界事象と宇宙線入射を弁別して宇宙線による誤警報を防止することのできる臨界警報装置用の放射線検出器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の第1の実施例の放射線検出器は、図1に示すように、プラスチックシンチレータ8および光電子増倍管9からなる検出部と、この検出部に接続された高速OPアンプ12とスイッチ13と比較器14と遅延回路15とタイマー16からなる演算回路と、この演算回路に接続されたOPアンプ10と比較器11からなる出力部を備えている。プラスチックシンチレータ8の光信号を光電子増倍管9で電気信号に変換し高速OPアンプ12で電流−電圧変換する。高速OPアンプ12の出力を分岐し一方はスイッチ13に、もう一方は比較器14で図2に示すように信号処理する。更に遅延回路15で所定の時間ΔT2だけ時間を遅らせ、次段のタイマー16でΔT2後に信号を出力する。スイッチ13はタイマー16の信号を起点として所定の時間ΔT3だけONになる。
【0012】
ΔT3は、臨界事象の最小継続時間1〜3msの数倍程度である。ΔT2は、高速OPアンプ12の宇宙線信号出力の時間幅の2倍程度の幅とする。宇宙線の場合、信号の幅ΔT0(図14に図示)がΔT0<<ΔT2であり、高速OPアンプ12の出力があるときはスイッチ13がoffであり、OPアンプ10には信号入力はないため、警報信号は出力されない。
【0013】
一方通常の臨界事故の場合、図3の示すように、光電子増倍管9の出力信号および高速OPアンプ12の出力信号の時間幅ΔT4は、ΔT4>>ΔT2であるので、OPアンプ10には信号入力があり臨界信号が出力される。図3のOPアンプ10の出力信号の破線は従来の場合のOPアンプ10の出力を示す。わずかに波高値が低くなり、信号の時間遅れがあるが、臨界事象の時間スケール(ms)に比較して非常に短いため、臨界警報機能を損なうことはない。
【0014】
図4に、本実施の形態の第2の実施例を示す。前記第1の実施例(図1)では、スイッチ13は回路に直列に接続され、常時off、イベント発生時にonとなる動作をするが、この第2の実施例では、スイッチ13は回路に並列に接続され常時on、イベント発生時offとなる。on状態で信号を遮断し、off状態で信号を通過させる。動作は第1の実施例の図2,図3と同じである。
【0015】
図5に本実施の形態の第3の実施例を示す。第1の実施の形態の場合、宇宙線事象に係わる短パルス信号の影響を演算回路により自動的に除去しており、除去した事実が記録に残らない。この第3の実施例では比較器14によって接点出力17を発生し宇宙線事象の発生を出力する。
【0016】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の第1の実施例の放射線検出器は、図6に示すように、プラスチックシンチレータ8と光電子増倍管9からなる検出部の出力側に高速OPアンプ12とクリップ回路18からなる演算回路とOPアンプ10と比較器11からなる出力部を順次接続した構成である。
【0017】
宇宙線事象の場合の動作は、図7に示すように、高速OPアンプ12の出力端に回路に並列に接続したクリップ回路18で、所定の波高値(クリップ電圧)以上の信号をクリップする。クリップされた信号は短パルスでしかも波高値が低くなり、波形の面積が小さいため、OPアンプ10で積分された出力信号は、波高値が所定のレベル(比較器11の参照電圧)以下となり出力部信号は発生しない。
【0018】
臨界事象の場合の動作は、図8に示すように、光電子増倍管9の出力および高速OPアンプ12の出力信号の波高値が低いため、クリップ回路18を経ても大部分の信号が生き残る。そのうえ波形の面積が大きいため、OPアンプ10出力は、比較器11の所定のレベル(参照電圧)以上となり臨界警報信号が発生する。
【0019】
本実施の形態の第2の実施例の放射線検出器の構成を図9に示す。第1の実施例(図6)の場合、クリップ回路18により、宇宙線事象による信号は自動的に削除されるため、記録に残らないが、この第2の実施例では、クリップ回路18が動作した信号により接点出力19を出すので記録を残すことができる。
【0020】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の放射線検出器の構成を図10に示す。本発明の放射線検出器は、プラスチックシンチレータ8および光電子増倍管9からなる検出部に接続された高速OPアンプ12と遅延回路15とスイッチ13と比較器14とタイマー16からなる演算回路とOPアンプ10と比較器11からなる出力部を備えている。
【0021】
動作は図11に示すように、高速OPアンプ12の出力を比較器14で、通常の臨界事象信号の波高値より高い電圧を参照電圧として信号処理する。タイマー16は、比較器14の出力信号を起点としてΔT3(=ΔT2+宇宙線事象信号の時間幅の約2倍)の間だけ信号を出力する。スイッチ13は、その間だけ開状態となる。一方、高速OPアンプ12の出力信号は、遅延回路15でΔT2だけ遅延されており、ΔT2<ΔT3の関係から、遅延回路15出力がある間はスイッチ13が開となっておりOPアンプ10への入力はゼロとなる。通常の臨界事象信号の場合、比較器14の参照電圧が波高値より高く、比較器14は信号を出力せず、スイッチ13は閉のままであり、正常に信号が伝送され臨界警報信号が出力される。このようにしてパルス幅が短く波高値の高い宇宙線事象信号のみが除去される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の第1実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図2】本発明の第1の実施形態の第1実施例の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【図3】本発明の第1の実施形態の第1実施例の放射線検出器の臨界事象の場合の動作を示す波形図。
【図4】本発明の第1の実施形態の第2実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図5】本発明の第1の実施形態の第3実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図6】本発明の第1の実施形態の第1実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図7】本発明の第2の実施形態の第1実施例の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【図8】本発明の第2の実施形態の第1実施例の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【図9】本発明の第2の実施形態の第2実施例の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図10】本発明の第3の実施形態の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図11】本発明の第3の実施形態の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【図12】従来の臨界警報装置の構成を示すブロック図。
【図13】従来の放射線検出器の構成を示す回路図。
【図14】従来の放射線検出器の宇宙線事象の場合の動作を示す波形図。
【符号の説明】
【0023】
1…放射線検出器、2,4…2/3論理回路、3…警報発生ユニット、5…OR回路、6…ホーンブロア警報器、7…回転灯警報器、8…プラスチックシンチレータ、9…光電子増倍管、10…OPアンプ、11,14…比較器、12…高速OPアンプ、13…スイッチ、15…遅延回路、16…タイマー、17,19…接点出力、18…クリップ回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出して検出信号を発生する検出部と、前記検出部に接続されて前記検出信号に含まれる宇宙線の信号を除去する演算回路と、前記演算回路に接続されて臨界の信号を出力する出力部とを備えていることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記演算回路は、前記検出部と前記出力部の間に直列に接続され、常時offであり、宇宙線の信号の時間幅より長く臨界の信号の最小継続時間より短い時間ΔT2後から前記ΔT2より長い時間幅の間onとなるスイッチを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記演算回路は、前記検出部と前記出力部の間に並列に接続され、常時onであり、宇宙線の信号の時間幅より長く臨界の信号の最小継続時間幅より短い時間ΔT2後から前記ΔT2より長い時間幅の間offとなるスイッチを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記出力部は前記スイッチの動作信号を出力することを特徴とする請求項2または3に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記演算回路は、所定の波高値以上の高い信号をクリップするクリップ回路を備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記出力部は前記クリップ回路の動作信号を出力することを特徴とする請求項5記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記演算回路は、前記検出信号を所定の時間ΔT2遅延させる遅延回路と、前記検出信号が臨界の信号より高い波高値を有するときに比較信号を出力する比較器と、前記遅延回路の出力側に接続され前記比較信号を受けて前記比較信号が入射した時点から前記遅延時間ΔT2より長い時間ΔT3前記検出信号を遮断するスイッチとを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項1】
放射線を検出して検出信号を発生する検出部と、前記検出部に接続されて前記検出信号に含まれる宇宙線の信号を除去する演算回路と、前記演算回路に接続されて臨界の信号を出力する出力部とを備えていることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記演算回路は、前記検出部と前記出力部の間に直列に接続され、常時offであり、宇宙線の信号の時間幅より長く臨界の信号の最小継続時間より短い時間ΔT2後から前記ΔT2より長い時間幅の間onとなるスイッチを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記演算回路は、前記検出部と前記出力部の間に並列に接続され、常時onであり、宇宙線の信号の時間幅より長く臨界の信号の最小継続時間幅より短い時間ΔT2後から前記ΔT2より長い時間幅の間offとなるスイッチを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記出力部は前記スイッチの動作信号を出力することを特徴とする請求項2または3に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記演算回路は、所定の波高値以上の高い信号をクリップするクリップ回路を備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記出力部は前記クリップ回路の動作信号を出力することを特徴とする請求項5記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記演算回路は、前記検出信号を所定の時間ΔT2遅延させる遅延回路と、前記検出信号が臨界の信号より高い波高値を有するときに比較信号を出力する比較器と、前記遅延回路の出力側に接続され前記比較信号を受けて前記比較信号が入射した時点から前記遅延時間ΔT2より長い時間ΔT3前記検出信号を遮断するスイッチとを備えていることを特徴とする請求項1記載の放射線検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−78636(P2007−78636A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270340(P2005−270340)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]