説明

放射線検出装置

【課題】小型化を達成でき、光検出器19と回路基板13との接続信頼性を向上し、接続基板14に起因するノイズ要因を抑制できるX線検出装置11を提供する。
【解決手段】光検出器19と回路基板13とを接続する接続基板14を、フレキシブル回路基板28と集積回路半導体素子29を搭載したIC搭載基板30とを接続して構成する。フレキシブル回路基板28は光検出器19に電気的に接続し、IC搭載基板30は回路基板13に電気的に接続する。フレキシブル回路基板28の屈曲性を利用し、X線検出装置11の小型化を達成する。IC搭載基板30は、剛性を有し、多層構造が採れ、搭載する集積回路半導体素子29との接続信頼性が向上し、ノイズ要因を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を検出する放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線、特にX線を光に変換する蛍光体膜と、その光を電気信号に変換する光電変換素子とをその構成要素として含む放射線検出装置が実用化されてきている。
【0003】
これは、放射線検出装置全体の小型軽量化に貢献するとともに、放射線を介した検査対象物からの画像情報を当該放射線検出装置によりデジタル電気情報に変換し、デジタル画像処理やデジタル画像保存など、デジタル情報処理の多くの利便性を享受することができるためである。
【0004】
この放射線検出装置は、患者の診断や治療に使用する医療用や歯科用、非破壊検査などの工業用、構解析などの科学研究用など、広い分野で使われつつある。
【0005】
それぞれの分野において、デジタル情報処理による高精度な画像抽出、高速度な画像検出が可能となることにより、不要な放射線被爆量の低減や、迅速な検査、診断などの効果が期待できる。
【0006】
これら放射線検出装置の蛍光体膜には、従来のX線イメージ管で用いられているCs及びIを主成分とするシンチレータ材の技術を転用することが多い。これは、主成分であるヨウ化セシウム(以下CsI)が柱状結晶を成すため、他の粒子状結晶からなるシンチレータ材に比較し、光ガイド効果による感度と解像度の向上を成すことができるためである。
【0007】
また、従来のX線イメージ管では真空管内の電子レンズ構成を必要としたため、大きく重い構成となっていたが、当該放射線検出装置では光電変換素子を有する光検出器をアモルファスシリコンなどからなる薄膜素子で構成することにより、2次元的な薄い放射線検出装置を形成することが可能となっている。
【0008】
この薄く軽い特徴をより高度に実現するためには、例えば、蛍光体膜を搭載した光検出器とこの光検出器を電気的に駆動しかつ光検出器からの出力信号を電気的に処理する回路基板とを並行配置とする構造とし、この光検出器と回路基板との間をシフトレジスタと信号検出用集積回路半導体素子(IC)を実装したフレキシブル回路基板にて接続し、装置全体の小型化を図った事例がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
一方、放射線検出装置の特性向上のための改善も検討されている。特に、出力信号の安定性向上とS/N特性の改善に重要な電源ノイズの低減策が必要とされ、例えば、各基準電源にローパスフィルタを接続することにより各基準電圧のランダムノイズを低減し、これら基準電圧のノイズに起因する出力信号の変動や出力信号のS/N特性劣化の防止を狙った考案である(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−116044号公報(第33頁、図52)
【特許文献2】特開2003−163343号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、以上に説明した従来技術によると以下のような問題が生じる。
【0011】
フレキシブル回路基板は、その柔軟な屈曲性により並列配置した光検出器と回路基板との電気接続に有効であるが、実装した信号検出用集積回路半導体素子などの電気的接続部には局所的な引き剥がし応力が集中する危険性を有しており、剥れなど電気的接続部の信頼性低下を誘発するという問題がある。
【0012】
また、外力が加わった場合には、フレキシブル回路基板の柔軟な屈曲性にゆえに、実装した信号検出用集積回路半導体素子などが容易に位置を移動し、これら検出用集積回路半導体素子などの質量により、より大きな振動や衝撃などが生じやすい。このような大きな振動や衝撃が発生した場合には、電気的接続部などが機械的ダメージを受けるという問題がある。
【0013】
その他に、振動などが発生した場合には、フレキシブル回路基板の変形は当該フレキシブル回路基板上の電気配線が持つ浮遊容量の変化が発生し、結果として、実装した信号検出用集積回路半導体素子などの基準電源電圧や入力信号、出力信号のノイズ発生要因となる。そのため、回路上のノイズ対策を講じても、十分その機能を果たせないという問題もある。
【0014】
また、フレキシブル回路基板への信号検出用集積回路半導体素子などの実装には、TCP(Tape Carrier Package)やCOF(Chip On Film)の構造を用いるため、信号検出用集積回路半導体素子などに必要な基準電位を作るための電子部品やコンデンサなどの電子部品をフレキシブル回路基板の信号検出用集積回路半導体素子の近傍に配置、実装することができず、ノイズが増加するという問題もある。
【0015】
さらに、電源配線、GND配線、基準電位配線、制御信号配線、検出信号配線は多層構造を取り難いため平面で配置され、ノイズの影響を受けやすい検出信号配線にノイズが混入しやすくなる。
【0016】
信号検出用集積回路半導体素子などの電源配線、GND配線においては、インピーダンスが高くなり信号検出用集積回路半導体素子などの入力端子部分での電源電圧の低下、GNDのオフセットなど動作、固定ノイズなどへの悪影響も生じる。
【0017】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、小型化を達成できるとともに、光検出器と回路基板との接続信頼性を向上し、接続基板に起因するノイズ要因を抑制できる放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、放射線を光に変換する蛍光体膜、および光を電気信号に変換する光電変換素子が形成された光検出器と、この光検出器を電気的に駆動し、かつ光検出器からの出力信号を電気的に処理する少なくとも1つの回路基板と、フレキシブル回路基板とこのフレキシブル回路基板より可撓性が小さく集積回路半導体素子が搭載されたIC搭載基板とが接続されて形成され、前記光検出器と前記回路基板とを電気的に接続する接続基板とを具備しているものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光検出器と回路基板とを接続する接続基板を、フレキシブル回路基板と集積回路半導体素子を搭載したIC搭載基板とを接続して構成したことにより、フレキシブル回路基板の屈曲性を利用して放射線検出装置の小型化を達成できるとともに、集積回路半導体素子はIC搭載基板に搭載することにより接続信頼性を向上でき、さらに接続基板に起因するノイズ要因を抑制し、出力信号の安定とS/N特性の向上も果たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1には、放射線検出装置としてのX線検出装置11の一部の断面図を示す。このX線検出装置11は、放射線検出パネルとしてのX線検出パネル12、このX線検出パネル12(光検出器)を電気的に駆動しかつX線検出パネル12(光検出器)からの出力信号を電気的に処理する回路基板13、これらX線検出パネル12と回路基板13とを接続する接続基板14、これらX線検出パネル12および回路基板13を支持する支持基板15、および支持基板15を介してこれらを収容する筐体16を備えている。
【0022】
そして、X線検出パネル12は、光検出器19のX線20の入射側に図示しない蛍光体膜を成膜し、さらに蛍光体膜を覆う防湿カバー21を封着した構造となっている。光検出器19は、0.7mm厚のガラス基板上にアモルファスシリコン(a−Si)を基材とした複数の薄膜トランジスタ素子(TFT)とフォトダイオード素子とを形成して構成されている。図2に示すように、この光検出器19の外周部には、光検出器19の駆動のための電気信号の入力および出力信号の出力のために外部と接続する複数の端子パッド22が形成されている。
【0023】
また、回路基板13は、光検出器19を電気的に駆動しかつ光検出器19からの出力信号を電気的に処理するものであり、外周部には接続基板14が電気接続されるコネクタ25が配設されている。
【0024】
また、図1ないし図3に示すように、接続基板14は、配線のみを形成したフレキシブル回路基板28と、このフレキシブル回路基板28より可撓性が小さく集積回路半導体素子29などを搭載したIC搭載基板30とを備え、これらフレキシブル回路基板28の一端側とIC搭載基板30の一端側とを接続して構成されている。
【0025】
フレキシブル回路基板28は、例えばポリイミド製フィルム上にCuフィルムから成る配線パターンを形成した屈曲性に優れた柔軟性を有する回路基板である。フレキシブル回路基板28の他端側である先端側には、配線パターンが露出するとともにその露出部分には電気接続の安定性を確保するために金メッキが施された接続部31が形成されている。このフレキシブル回路基板28の接続部31が光検出器19の端子パッド22に接続されている。このフレキシブル回路基板28の接続部31と端子パッド22との接続には、非等方性導電フィルム(以下ACFと記す)による熱圧着法が用いられる。この方法により、複数の微細な信号線の電気的接続が確保される。
【0026】
IC搭載基板30は、例えばガラスエポキシ材に多層のCuフィルムを積層して構成された剛性を有する多層配線基板であり、一面に集積回路半導体素子29などが搭載されるとともにフレキシブル回路基板28の一端側が接続され、他面に回路基板13のコネクタ25と電気接続されるコネクタ32が配設されている。このIC搭載基板30は、コネクタ32を介して回路基板13に固定されることにより、その回路基板13との位置関係が定められ、筐体16内において空間的に所定位置に固定される。また、IC搭載基板30は、多層配線基板のため、搭載される集積回路半導体素子29との多数の端子接続と、フレキシブル回路基板28との多数の端子接続、および回路基板13との多数の端子接続とを適切に配線することが可能となっている。
【0027】
集積回路半導体素子29としては、光検出器19を電気的に駆動する光検出器駆動用集積回路半導体素子29a、光検出器19からの出力信号を処理する信号検出用集積回路半導体素子29bが用いられている。信号検出用集積回路半導体素子29bは、光検出器19から出力する微細な出力信号を増幅する電気的増幅機能を有している。
【0028】
また、支持基板15は、例えばAl合金からなり、一面にはX線検出パネル12の光検出器19がゲル状材としての粘着性を有するゲルシート35を介して固定され、他面にはX線遮蔽用の鉛プレート37と放熱絶縁シート38とを介して回路基板13が固定されている。また、図4に示すように、支持基板15の外周部近傍にはX線検出パネル12の光検出器19と回路基板13とを接続する接続基板14のフレキシブル回路基板28を通すための開口部40が形成され、支持基板15の角部には複数の取付孔41が形成されている。
【0029】
また、図1に示すように、筐体16は、カバー部44とカバー部45とを有し、これらカバー部44とカバー部45との周縁部間で支持基板15の周縁部を挟持し、これらカバー部44とカバー部45との周縁部間および支持基板15の各取付孔41を通じてねじやボルト・ナットなどの取付具42によって結着している。
【0030】
次に、X線検出装置11を構成する手順の概要を説明する。
【0031】
まず、IC搭載基板30上に集積回路半導体素子29を半田リフロー法などを用いてバンプ接続を行い、図3に示す接続基板14を作製する。
【0032】
続いて、図4に示すように、接続基板14のフレキシブル回路基板28の接続部31をX線検出パネル12の光検出器19の端子パッド22上にACFを介して加熱圧着する。ACFは接着剤成分と導電フィラーとから構成され、加熱圧着することにより、導電フィラーがフレキシブル回路基板28の接続部31の所定の端子と光検出器19の端子パッド22の所定の端子とを電気的に導通した状態で、接着剤成分が硬化し、電気接続が成される。
【0033】
通常は、光検出器駆動用集積回路半導体素子29aを搭載した接続基板14と、信号検出用集積回路半導体素子29bを搭載した接続基板14とを別々に作製し、それぞれ複数個をX線検出パネル12の光検出器19に加熱圧着して固定する。
【0034】
このように接続基板14を固定したX線検出パネル12を支持基板15上にゲルシート35を用いて固定する。このとき、各接続基板14を支持基板15の開口部40を通して支持基板15の反対面側に出す。なお、支持基板15には予め鉛プレート37を接着しておく。
【0035】
続いて、支持基板15の反対面側の鉛プレート37上に、放熱絶縁シート38を介して回路基板13をねじなどで固定する。回路基板13には、各接続基板14に対応するコネクタ25が実装してあり、それぞれのコネクタ25に対応する所定の接続基板14のコネクタ25が接続される。これにより、X線検出パネル12と接続基板14上の集積回路半導体素子29と回路基板13とが電気的に接続される。
【0036】
最後に、カバー部44とカバー部45との周縁部間で支持基板15の周縁部を挟持し、これらカバー部44とカバー部45との周縁部間および支持基板15の各取付孔41を通じて取付具42によって結着し、X線検出装置11の筐体構造を形成できる。
【0037】
そして、接続基板14のIC搭載基板30は剛性を有し、搭載される集積回路半導体素子29との間の多数の端子接続を安定して均一に接続することができる。さらに、接続基板14に外部応力が加わった場合には、IC搭載基板30の剛性が保護となり、集積回路半導体素子29との端子接続部分への直接的な負荷が軽減される。例えば、フレキシブル回路基板28に見られるような引き剥がし方向の力は大幅に軽減される。この結果、接続基板14は、外部応力に対する集積回路半導体素子29との端子接続の信頼性を大幅に向上できる。
【0038】
すなわち、図5は、X線検出装置11の外部応力に対する信頼性向上を説明するための模式図であって、図5(a)はIC搭載基板30上に集積回路半導体素子29を搭載した接続基板14の模式図、図5(b)はフレキシブル回路基板F上に集積回路半導体素子29を搭載した従来例に相当する模式図である。
【0039】
図5(b)に示すように、フレキシブル回路基板Fは剛性が小さく屈曲性を有するため、僅かな曲げ応力に対してもフレキシブル回路基板Fは大きく曲がり、引き剥がし方向の力の一部はフレキシブル回路基板Fと集積回路半導体素子29とを接続する各端子・バンプBに集中する。その結果、各端子・バンプBの破断が生じやすくなる。
【0040】
一方、図5(a)に示すように、IC搭載基板30は剛性があり曲げ応力に対してIC搭載基板30の曲率を大きく保つことができるため、IC搭載基板30と集積回路半導体素子29とを接続する各端子・バンプB全体に引き剥がし方向の力が分散することにより破断を防止し、信頼性を大きく向上できる。
【0041】
また、接続基板14のIC搭載基板30は、空間的に所定位置に固定される。本例ではコネクタ25,32を介して回路基板13との位置関係が定められる。この結果、IC搭載基板30上の各信号配線および基準電位供給配線と回路基板13、筐体16などとの間に生じる浮遊容量の変動を防止でき、出力信号の安定とS/N特性の向上も果たすことができる。
【0042】
このように、光検出器19と回路基板13とを接続する接続基板14を、フレキシブル回路基板28と集積回路半導体素子29を搭載したIC搭載基板30とを接続して構成したことにより、フレキシブル回路基板28の屈曲性を利用してX線検出装置11の小型化を達成できるとともに、集積回路半導体素子29は剛性を有するIC搭載基板30に搭載することにより接続信頼性を向上でき、さらに接続基板14に起因するノイズ要因を抑制し、出力信号の安定とS/N特性の向上も果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態を示す放射線検出装置の一部の断面図である。
【図2】同上放射線検出装置の光検出器と接続基板を示す一部の展開図である。
【図3】同上放射線検出装置の接続基板を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図4】同上放射線検出装置の支持基板の一部の正面図である。
【図5】同上放射線検出装置の外部応力に対する信頼性向上を説明するための模式図であって、(a)はIC搭載基板上に集積回路半導体素子を搭載した接続基板の模式図、(b)はフレキシブル回路基板上に集積回路半導体素子を搭載した従来例に相当する模式図である。
【符号の説明】
【0044】
11 放射線検出装置としてのX線検出装置
13 回路基板
14 接続基板
15 支持基板
19 光検出器
28 フレキシブル回路基板
29 集積回路半導体素子
30 IC搭載基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を光に変換する蛍光体膜、および光を電気信号に変換する光電変換素子が形成された光検出器と、
この光検出器を電気的に駆動し、かつ光検出器からの出力信号を電気的に処理する少なくとも1つの回路基板と、
フレキシブル回路基板とこのフレキシブル回路基板より可撓性が小さく集積回路半導体素子が搭載されたIC搭載基板とが接続されて形成され、前記光検出器と前記回路基板とを電気的に接続する接続基板と
を具備していることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
フレキシブル回路基板は光検出器に電気的に接続され、IC搭載基板は回路基板に電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
IC搭載基板と回路基板との電気的接続はコネクタ方式である
ことを特徴とする請求項1または2記載の放射線検出装置。
【請求項4】
集積回路半導体素子は、電気的増幅機能を有する信号検出用集積回路半導体素子である
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−122058(P2009−122058A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298864(P2007−298864)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】